説明

保護膜形成用材料及びホトレジストパターン形成方法

【課題】環境に与える影響が小さく、かつ、ホトレジストパターンへのダメージが少なく、良好な矩形形状のホトレジストパターンを形成可能とする保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料として、(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)テルペン系溶剤と、前記テルペン系溶剤以外の第二の溶剤との混合溶剤を含有するものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たなリソグラフィー技術として、液浸露光プロセスが報告されている(非特許文献1〜3参照)。この液浸露光プロセスによれば、従来の露光光路空間を、いわゆる液浸露光用液体(例えば、純水やフッ素系不活性液体等)で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より高解像度で、かつ、焦点深度にも優れるホトレジストパターンを形成することができる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、特定溶剤にのみ溶解可能な樹脂を用いた保護膜を用いることによって、液浸露光用液体によるホトレジスト膜の変質や、液浸露光用液体の屈折率変動を同時に防止することを目的とした技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに最近では、ホトレジストパターン形成工程の簡略化、製造効率向上等の観点から、アルカリに可溶な保護膜を用いることによって、液浸露光後のアルカリ現像時に、保護膜の除去と、ホトレジストパターンの形成とを同時に行う技術が提案されている(特許文献3参照)。
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
【非特許文献3】「プロシーディングス・オブ・エスピーアイイー(Proceedings of SPIE)」、(米国)、2002年、第4691巻、459−465頁
【特許文献1】国際公開第2004/068242号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/074937号パンフレット
【特許文献3】特開2005−264131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2に開示されている保護膜形成用材料では、フッ素系の特殊溶剤が必要とされる。このフッ素系の特殊溶剤は地球温暖化係数が高い等、環境に与える影響が大きいという問題がある。
【0006】
また、特許文献3に開示されている保護膜形成用材料で使用されている溶剤は、アルコール系溶剤が主流である。しかしながら、アルコール系溶剤を用いた場合、形成されたホトレジストパターンへのダメージが大きく、得られるホトレジストパターンがT−トップ形状となったり、ホトレジストパターンの表面荒れや膨潤が生じてしまったりすることがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、環境に与える影響が小さく、かつ、ホトレジストパターンへのダメージが少なく、良好な矩形形状のホトレジストパターンを形成可能とする保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、保護膜形成用材料中の溶剤としてテルペン系溶剤と、テルペン系溶剤以外の第二の溶剤との混合溶剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
本発明の第一の態様は、ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)テルペン系溶剤と、前記テルペン系溶剤以外の第二の溶剤との混合溶剤を含有することを特徴とする保護膜形成用材料である。
【0010】
本発明の第二の態様は、液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設ける工程と、このホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光する工程と、現像液により前記保護膜を除去して、露光後の前記ホトレジスト膜を現像する現像工程と、を有するホトレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境に与える影響が小さく、かつ、ホトレジストパターンへのダメージが少ない保護膜形成用材料を提供することができる。このような保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成することにより、良好な矩形形状のホトレジストパターンを形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の保護膜形成用材料は、(a)アルカリ可溶性ポリマーと、(b)混合溶剤とを含有している。以下、本発明の保護膜形成用材料に含まれる各成分について説明する。
【0013】
<(a)アルカリ可溶性ポリマー>
(a)アルカリ可溶性ポリマーとしては、具体的には以下の態様が挙げられる。
まず、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第一の態様としては、少なくとも下記一般式(A−1)で表されるモノマー単位を構成単位として有するポリマーを用いることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
上記式(A−1)中、Rは単結合、又は炭素数1から6のアルキレン鎖若しくはフルオロアルキレン鎖であり、Rは水素原子、又は炭素数1から6の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、Zは炭素数1から2のアルキレン鎖又は酸素原子であり、nは0から3の整数である。
【0016】
特に、Rとして具体的には、メチレン鎖、エチレン鎖、n−プロピレン鎖、n−ブチレン鎖、n−ペンチレン鎖、n−ヘキシレン鎖等の直鎖状のアルキレン鎖、1−メチルプロピレン鎖、2−メチルプロピレン鎖等の分岐鎖状のアルキレン鎖等が挙げられる。これらアルキレン鎖の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。中でもメチレン鎖であることがより好ましい。
【0017】
また、Rとして具体的には、水素原子のほかに、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。これらアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。中でも、撥水性向上の点から、これらアルキル基の水素原子全部がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0018】
さらに、上記一般式(A−1)中、Zは好ましくはメチレン鎖であり、nは好ましくは0である。
【0019】
第一の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、上記一般式(A−1)で表されるモノマー単位と、下記一般式(A−2)、(A−3)、及び(A−4)で表されるモノマー単位の中から選ばれる少なくとも1種とを構成単位として有するコポリマーであってもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
上記一般式(A−2)、(A−3)、及び(A−4)中、Rは単結合又は炭素数1から6のアルキレン鎖若しくはフルオロアルキレン鎖であり、Rは炭素数1から6のアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、R及びRは単結合又は炭素数1から6のアルキレン鎖若しくはフルオロアルキレン鎖であり、R、R、及びRは炭素数1から15の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基(但し、アルキル基の一部がエーテル結合を介してもよく、さらにはアルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)であり、R、Z、及びnは上記一般式(A−1)と同義である。
【0022】
上記一般式(A−2)、(A−3)、及び(A−4)で表されるモノマー単位は、それぞれ、下記一般式(A−5)、(A−6)、及び(A−7)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
上記一般式(A−5)、(A−6)、及び(A−7)中、R10はメチル基又はトリフルオロメチル基であり、R11は炭素数2から10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基又はフルオロアルキル基であり(但し、アルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)、R12は炭素数5から10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基又はフルオロアルキル基(但し、アルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)であり、R、R、Z、及びnは上記一般式(A−1)及び(A−2)と同義である。
【0025】
中でも、R11は、−CH、−C(CH)CHC(CFOH、−CH7、−CHの中から選ばれる置換基であることが好ましく、R12は、−C15、−CFCF(CF)CFCFCFCF(CF、−CFCF(CF)CFC(CFの中から選ばれる置換基であることが好ましい。
【0026】
アルカリ可溶性ポリマー中に上記一般式(A−1)で表されるモノマー単位を組み入れることにより、特に液浸露光プロセスに適用した場合、要求される基本特性を備えた保護膜を形成することが可能となる。保護膜に要求される基本特性とは、液浸露光用液体への耐性が高く、かつ、下層に設けられるホトレジスト膜との相溶性が低いこと、等が挙げられる。
【0027】
また、アルカリ可溶性ポリマー中に上記一般式(A−2)で表されるモノマー単位を組み入れることにより、後述する混合溶剤に対する溶解性を高めることができ、上記一般式(A−3)及び(A−4)で表されるモノマー単位の中から選ばれる少なくとも1種を組み入れることにより、撥水性の特性をさらに向上させた保護膜を形成することが可能となる。
【0028】
アルカリ可溶性ポリマーをコポリマーとして用いる場合、上記一般式(A−1)で表されるモノマー単位と、上記一般式(A−2)、(A−3)、及び(A−4)で表されるモノマー単位から選ばれる少なくとも1種との構成比(モル比)は10:90〜90:10であることが好ましく、15:85〜85:15であることがより好ましい。
【0029】
次に、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第二の態様としては、フッ素原子又はフルオロアルキル基、及びアルコール性水酸基又はアルコキシ基を共に有する脂肪族環式化合物から構成されるアルカリ可溶性の構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0030】
すなわち、上記構成単位は、フッ素原子又はフルオロアルキル基、及びアルコール性水酸基又はアルコキシ基が、脂肪族環式化合物上にそれぞれ結合し、脂肪族環が主鎖を構成しているものである。
【0031】
上記フッ素原子又はフルオロアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられるが、工業的には、フッ素原子やトリフルオロメチル基が好ましい。また、アルコキシ基としては、具体的には、炭素数1から15の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルコキシ基又はアルコキシアルコキシ基である。
【0032】
炭素数1から15のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、炭素数1から15のアルコキシアルコキシ基としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロトキシメトキシ基、ブトキシメトキシ基等が挙げられる。
【0033】
このような構成単位を有するポリマーは、水酸基とフッ素原子とを有するジエン化合物の環化重合により形成される。ジエン化合物としては、透明性、耐ドライエッチング性に優れる5員環や6員環を有する重合体を形成しやすいヘプタジエンであることが好ましく、さらには、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン(CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH)の環化重合により形成される重合体であることが工業上最も好ましい。
【0034】
以下に、上記ポリマーを表す一般式(A−8)を示す。
【0035】
【化4】

【0036】
上記一般式(A−8)中、R13は水酸基、又は炭素数1から15の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルコキシ基若しくはアルコキシアルコキシ基であり、l、mはそれぞれ10モル%から90モル%である。
【0037】
次に、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第三の態様としては、下記一般式(A−9)及び(A−10)で表される構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0038】
【化5】

【0039】
上記式(A−9)及び(A−10)中、R14は炭素数1から5の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基であり、R15は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1から5の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、これらR14、R15の少なくともいずれかがフッ素原子を有する基である。R16は水素原子又はメチル基であり、pは繰り返し単位である。
【0040】
上記一般式(A−9)及び(A−10)で表される構成単位としては、より具体的には、それぞれ下記一般式(A−11)及び(A−12)で表される構成単位が好ましく用いられる。
【0041】
【化6】

【0042】
また、上記(A−9)及び(A−10)で表される構成単位は、下記一般式(A−13)で表される構成単位との共重合体及び/又は混合ポリマーであってもよい。このような共重合体及び/又は混合ポリマーとすることにより、さらにアルカリ可溶性を向上させることができる。
【0043】
【化7】

【0044】
上記式(A−13)中、R17はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1から5の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、pは繰り返し単位である。
【0045】
次に、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第四の態様としては、下記一般式(A−14)で表される構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0046】
【化8】

【0047】
上記式(A−14)中、Cはアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、R18は炭素数1〜5の直鎖、分岐鎖、又は環状のフルオロアルキル基であり、qは0〜3の整数であり、pは繰り返し単位である。なお、上記式(A−14)中、環骨格を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部はフッ素原子により置換されていてもよい。
【0048】
上記式(A−14)で表される構成単位としては、具体的には、下記式(A−15)で表される構成単位が特に好ましく用いられる。
【0049】
【化9】

【0050】
次に、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第五の態様としては、下記一般式(A−16)で表される構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0051】
【化10】

【0052】
上記式(A−16)中、R19は水素原子又はメチル基であり、R20は炭素数1から5のアルキレン鎖であり、R21は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数1から10のフルオロアルキレン鎖であり、pは繰り返し単位である。
【0053】
上記一般式(A−16)で表される構成単位としては、具体的には、下記一般式(A−17)及び(A−18)の中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0054】
【化11】

【0055】
次に、(a)アルカリ可溶性ポリマーの第六の態様としては、下記一般式(A−19)で表される構成単位を有するポリマーを用いることができる。
【0056】
【化12】

【0057】
上記式(A−19)中、Cはアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、R22は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されている炭素数1から5の直鎖、分岐鎖、又は環状のフルオロアルキル基であり、R23は水素原子、又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子に置換されている炭素数1から5の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のフルオロアルキル基であり、qは0〜3の整数であり、pは繰り返し単位である。なお、上記一般式(A−19)中、環骨格を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部はフッ素原子により置換されていてもよい。
【0058】
上記一般式(A−19)で表される構成単位としては、具体的には、下記式(A−20)で表される構成単位が好ましく用いられる。
【0059】
【化13】

【0060】
本発明において、上述した(a)アルカリ可溶性ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の任意のモノマー単位と共重合又は混合して得た共重合ポリマー又は混合ポリマーとしてもよい。
【0061】
このような(a)アルカリ可溶性ポリマーは、公知の方法によって合成することができる。また、このポリマーのGPCによるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、特に限定するものではないが、2000から80000であり、3000から50000であることがより好ましい。
【0062】
(a)アルカリ可溶性ポリマーの配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1質量%から20質量%程度とすることが好ましく、0.3質量%から10質量%とすることがより好ましい。
【0063】
<(b)混合溶剤>
(b)混合溶剤としては、テルペン系溶剤と、テルペン系溶剤以外の第二の溶剤との混合溶剤が用いられる。このような混合溶剤は、アルコール系溶剤よりもSP値(溶解度パラメータ)が小さいことから、アルコール系溶剤を単独で用いた場合に比べ、極性基を有するホトレジスト組成物中の樹脂や酸発生剤との相溶性が小さくなる。その結果、形成されたホトレジストパターンへのダメージを抑制でき、良好なホトレジストパターンを形成することが可能となる。また、非フッ素系の溶剤の中から選択することで、環境に与える影響を小さくすることができる。
【0064】
上記第二の溶剤としては、アルコール系溶剤、及びエーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0065】
テルペン系溶剤としては、具体的には、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、イソメントール、ネオメントール、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、1,4−テルピン、1,8−テルピン、カルボン、ヨノン、ツヨン、ボルナン、ボルネオール、ノルボルナン、ピナン、α−ピネン、β−ピネン、ツジャン、α−ツジョン、β−ツジョン、カラン、ロンギホレン、1,4−シネオール、1,8−シネオール等のモノテルペン類、アビエタン、アビエチン酸等のジテルペン類等が挙げられる。中でも、1,4−シネオール及び1,8−シネオールが、工業的な入手の容易さ等から好ましい。
【0066】
アルコール系溶剤としては、炭素数が1から14であることが好ましく、2から12であることがより好ましい。このアルコール系溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−オクタノール等の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキルアルコールが挙げられる。中でも、イソブタノール及び4−メチル−2−ペンタノールが好ましい。
【0067】
エーテル系溶剤としては、炭素数が2から14であることが好ましく、3から12であることがより好ましい。このエーテル系溶剤としては、具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル等のアルキルエーテルが挙げられる。中でも、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、及びジイソアミルエーテルが好ましい。
【0068】
炭化水素系溶剤としては、炭素数が3から15であることが好ましく、3から13であることがより好ましい。この炭化水素系溶剤としては、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、n−ノナン、メチルオクタン、n−デカン、シクロデカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロドデカン、n−トリデカン等の、直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素が挙げられる。中でも、n−デカンが好ましい。
【0069】
(b)混合溶剤における、テルペン系溶剤と第二の溶剤との含有比率は、質量比で5:95から95:5が好ましく、10:90から90:10がより好ましい。含有比率を上記の範囲とすることにより、(a)アルカリ可溶性ポリマーを良好に溶解しつつ、形成されたホトレジストパターンへのダメージを抑制することができる。
【0070】
<(c)架橋剤>
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに(c)架橋剤を含有していてもよい。この(c)架橋剤としては、水素原子がヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたアミノ基を有する含窒素化合物、及び水素原子がヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたイミノ基を有する含窒素化合物、の中から選ばれる少なくとも1種の含窒素化合物を用いることができる。
【0071】
これら含窒素化合物としては、例えばアミノ基の水素原子がメチロール基及び/又はアルコシキメチル基で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体等が挙げられる。
【0072】
これらの含窒素化合物は、例えば、上述の含窒素化合物を沸騰水中においてホルマリンと反応させてメチロール化することにより、或いはこれにさらに低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を反応させてアルコキシル化することにより得られる。中でも好適な架橋剤は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルである。
【0073】
さらに、(c)架橋剤として、水酸基及びアルコキシ基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換された炭化水素化合物と、モノヒドロキシモノカルボン酸化合物と、の縮合反応物も好適に用いることができる。上記モノヒドロキシモノカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基とが、同一の炭素原子、又は隣接する2つの炭素原子のそれぞれに結合しているものが好ましい。
【0074】
(c)架橋剤を配合する場合、その配合量は、(a)アルカリ可溶性ポリマーの配合量に対して、0.5質量%から10質量%程度とすることが好ましい。
【0075】
<(d)酸性化合物>
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに(d)酸性化合物を配合してもよい。この(d)酸性化合物を添加することにより、ホトレジストパターンの形状改善の効果が得られ、さらには液浸露光を行った後、現像する前にホトレジスト膜が微量のアミンを含有する雰囲気中に曝された場合であっても(露光後の引き置き)、保護膜の介在によってアミンによる悪影響を効果的に抑制することができる。これにより、その後の現像によって得られるホトレジストパターンの寸法に大きな狂いを生じることを未然に防止することができる。
【0076】
このような(d)酸性化合物としては、例えば下記一般式(D−1)、(D−2)、(D−3)、及び(D−4)の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0077】
【化14】

【0078】
上記一般式(D−1)、(D−2)、(D−3)、及び(D−4)中、sは1から5の整数であり、tは10から15の整数であり、uは2から3の整数であり、vはそれぞれ2から3の整数であり、R24は炭素数1から15のアルキル基又はフルオロアルキル基(水素原子又はフッ素原子の一部は、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、又はアミノ基により置換されていてもよい。)である。
【0079】
このような酸性化合物は、いずれも重要新規利用規則(SNUR)の対象となっておらず、人体に対する悪影響がないとされている。
【0080】
上記一般式(D−1)で表される酸性化合物としては、具体的には、(CSONH、(CSONH等が好ましく、上記一般式(D−2)で表される酸性化合物としては、具体的には、C1021COOH等が好ましい。
【0081】
また、上記一般式(D−3)及び(D−4)で表される酸性化合物としては、具体的には、それぞれ下記式(D−5)及び(D−6)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【化15】

【0083】
(d)酸性化合物を配合する場合、その配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1質量%から10質量%程度とすることが好ましい。
【0084】
<(e)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤>
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに(e)酸発生補助剤を配合してもよい。この(e)酸発生補助剤とは、単独で酸を発生する機能はないものの、酸の存在化で酸を発生させるものをいう。これにより、ホトレジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が保護膜に拡散した場合であっても、この酸により保護膜中の酸発生補助剤から発生した酸が、ホトレジスト膜中の酸の不足分を補填し、ホトレジストパターンの解像性の劣化や、焦点深度幅の低下を抑制することが可能となり、より微細なホトレジストパターン形成が可能となる。
【0085】
このような(e)酸発生補助剤は、分子内にカルボニル基及びスルフォニル基を共に有する脂環式炭化水素化合物であることが好ましい。
【0086】
このような(e)酸発生補助剤は、具体的には、下記一般式(E−1)及び(E−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0087】
【化16】

【0088】
上記一般式(E−1)及び(E−2)中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1から10の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、Xはスルフォニル基を有する求電子基である。
【0089】
ここで、「炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等の直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0090】
また、Xは、「スルフォニル基を有する求電子基」である。ここで、「スルフォニル基を有する求電子基」は、−O−SO−Yであることが好ましい。Yは、炭素数1から5のアルキル基又は炭素数1から10のハロゲン化アルキル基である。中でも、Yがフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0091】
上記一般式(E−1)及び(E−2)で表される化合物としては、具体的には、下記式(E−3)から(E−10)で表される化合物が挙げられる。
【0092】
【化17】

【0093】
(e)酸発生補助剤を配合する場合、その配合量は、(a)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、0.1質量部から50質量部とすることが好ましく、1質量部から20質量部とすることがより好ましい。このような範囲とすることにより、塗布むらを発生することなく、ホトレジスト膜から溶出した酸に対して効果的に酸を発生させ、ホトレジストパターン形状を改善することが可能となる。
【0094】
<(f)その他>
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに(f)界面活性剤を配合してもよい。この界面活性剤としては、「XR−104」(商品名:大日本インキ化学工業社製)等が挙げられるが、これに限定されるものでない。このような界面活性剤を配合することにより、塗膜性や溶出物の抑制能をより一層向上させることができる。
【0095】
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、(a)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して0.001質量部から10質量部とすることが好ましい。
【0096】
[ホトレジスト組成物]
ホトレジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型ホトレジストを含めて、アルカリ水溶液で現像可能なホトレジスト組成物を任意に使用できる。
このようなホトレジスト組成物としては、(i)ナフトキノンジアジド化合物及びノボラック樹脂を含有するポジ型ホトレジスト組成物、(ii)露光により酸を発生する酸発生剤、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト組成物、(iii)露光により酸を発生する酸発生剤、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト組成物、並びに(iv)露光により酸を発生する酸発生剤、架橋剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型ホトレジスト組成物、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
[ホトレジストパターン形成方法]
本発明のホトレジストパターン形成方法は、基板上にホトレジスト膜を設ける工程と、このホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、上記基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び保護膜を介して、ホトレジスト膜を選択的に露光する工程と、現像液により保護膜を除去して、露光後のホトレジスト膜を現像する現像工程と、を有する。
【0098】
まず、基板上にホトレジスト膜を設ける。具体的には、シリコンウェハ等の基板に、公知のホトレジスト組成物を、スピンナー等の公知の方法を用いて塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行ってホトレジスト膜を形成する。なお、基板上に有機系又は無機系の反射防止膜(下層反射防止膜)を設けてから、ホトレジスト膜を形成してもよい。
【0099】
ホトレジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型ホトレジストを含めて、アルカリ水溶液で現像可能なホトレジスト組成物を任意に使用できる。このようなホトレジスト組成物としては、上述したホトレジスト組成物を用いることが可能である。
【0100】
次に、ホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する。具体的には、ホトレジスト膜の表面に、本発明に係る保護膜形成用材料を上述と同様の方法で均一に塗布し、ベークして硬化させることにより保護膜を形成する。
【0101】
次に、基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置する。液浸露光用液体は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、使用されるホトレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば、特に限定されるものでない。このような液浸露光用液体としては、水(純水、脱イオン水)、フッ素系不活性液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸露光用液体も使用可能である。フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題、及び汎用性の観点からは、水(純水、脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光(例えばFエキシマレーザー等)を用いる場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
【0102】
次に、液浸露光用液体及び保護膜を介して、ホトレジスト膜を選択的に露光する。このとき、ホトレジスト膜は、保護膜によって液浸露光用液体から遮断されているため、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸露光用液体中に成分を溶出させて液浸露光用液体自体の屈折率等の光学的特性が変化してしまうことが防止される。
【0103】
露光に用いる波長は、特に限定されるものではなく、レジスト膜の特性によって適宜選択される。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0104】
液浸状態での露光が完了したら、基板を液浸露光用液体から取り出し、基板から液体を除去する。なお、露光後のホトレジスト膜上に保護膜を積層したまま、ホトレジスト膜に対してポストベーク(PEB処理)を行うことが好ましい。
【0105】
次に、アルカリ現像液により保護膜を除去して、露光後のホトレジスト膜を現像する。アルカリ現像液は公知の現像液を適宜選択して用いることができる。このアルカリ現像処理により、保護膜はホトレジスト膜の可溶部分と同時に溶解除去される。
【0106】
最後に、純水等を用いてリンスを行う。このリンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下又は噴霧して、基板上の現像液、及びこの現像液によって溶解した保護膜成分とホトレジスト組成物とを洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、ホトレジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、ホトレジストパターンが得られる。
【0107】
このように、本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成して得られたホトレジストパターンは、従来のアルコール系溶剤を含有する保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成して得られたホトレジストパターンに比べ、表面荒れが少なく、良好な矩形形状となる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0109】
<実施例1>
まず、膜厚77nmのARC29(Brewer社製)が形成された基板上に、アクリル系樹脂を含有するホトレジスト組成物であるTArF−7a128(東京応化工業社製)を塗布し、110℃にて60秒間加熱し、膜厚150nmのホトレジスト膜を形成した。そして、このホトレジスト膜を1,8−シネオールとジイソペンチルエーテルとの混合溶剤(質量比=50:50)に30秒間浸漬した。混合溶剤への浸漬前後におけるホトレジスト膜の膜厚を比較したところ、膜厚の減少は1nm以下と小さく、ホトレジスト膜へのダメージが小さいことが確認された。
【0110】
次に、下記式(X−1)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量4000)を上記の混合溶剤に溶解させ、固形分濃度2質量%の保護膜形成用材料を調製した。そして、上述と同様にして形成したホトレジスト膜上に保護膜形成用材料を塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚35nmの保護膜を形成した。
【0111】
【化18】

【0112】
この基板に対して、露光機NSR−S302A(ニコン株式会社製)を用いて露光し、露光後、保護膜上に1分間純水を滴下し、擬似液浸環境下においた。そして、100℃にて60秒間加熱し、NMD−3(東京応化工業社製)を用いて30秒間現像処理を行い、さらにリンス処理を行うことにより、ホトレジストパターンを形成した。このホトレジストパターンをSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察したところ、パターン形状は良好な矩形形状であり、表面荒れも認められなかった。
【0113】
<実施例2>
まず、実施例1と同様にして形成したホトレジスト膜を1,8−シネオールとイソブタノールとの混合溶剤(質量比=75:25)に30秒間浸漬した。混合溶剤への浸漬前後におけるホトレジスト膜の膜厚を比較したところ、膜厚の減少は1nm以下と小さく、ホトレジスト膜へのダメージが小さいことが確認された。
【0114】
次に、溶剤を1,8−シネオールとイソブタノールとの混合溶剤(質量比=75:25)としたほかは、実施例1と同様にして保護膜形成用材料を形成した。そして、実施例1と同様にしてホトレジスト膜上に保護膜を形成し、露光・現像・リンス処理を行うことにより、ホトレジストパターンを形成した。このホトレジストパターンをSEMにて観察したところ、パターン形状は良好な矩形形状であり、表面荒れも認められなかった。
【0115】
<比較例1>
まず、実施例1と同様にして形成したホトレジスト膜をイソブタノールに30秒間浸漬した。イソブタノールへの浸漬前後におけるホトレジスト膜の膜厚を比較したところ、膜厚の減少は10nm以上と大きく、実施例1,2の混合溶剤を用いたものと比較するとホトレジスト膜へのダメージが大きいことが確認された。
【0116】
次に、溶剤をイソブタノールとしたほかは、実施例1と同様にして保護膜形成用材料を形成した。そして、実施例1と同様にしてホトレジスト膜上に保護膜を形成し、露光・現像・リンス処理を行うことにより、ホトレジストパターンを形成した。このホトレジストパターンをSEMにて観察したところ、実施例1,2よりもパターン形状は丸みを帯びており、膜減りが確認された。
【0117】
<比較例2>
まず、実施例1と同様にして形成したホトレジスト膜をジイソアミルエーテルに30秒間浸漬した。ジイソアミルエーテルへの浸漬前後におけるホトレジスト膜の膜厚を比較したところ、膜厚の減少は2nm程度であり、実施例1,2の混合溶剤を用いたものと比較するとホトレジスト膜へのダメージが大きいことが確認された。
【0118】
次に、溶剤をジイソアミルエーテルとしたほかは、実施例1と同様にして保護膜形成用材料を形成した。そして、実施例1と同様にしてホトレジスト膜上に保護膜を形成し、露光・現像・リンス処理を行うことにより、ホトレジストパターンを形成した。このホトレジストパターンをSEMにて観察したところ、実施例1,2よりもパターン形状はやや丸みを帯びており、膜減りが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、
(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)テルペン系溶剤と、前記テルペン系溶剤以外の第二の溶剤との混合溶剤を含有することを特徴とする保護膜形成用材料。
【請求項2】
液浸露光プロセスに用いられるものであることを特徴とする請求項1記載の保護膜形成用材料。
【請求項3】
前記第二の溶剤が、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の保護膜形成用材料。
【請求項4】
前記(b)混合溶剤における、前記テルペン系溶剤と前記第二の溶剤との含有比率は、質量比で5:95から95:5であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の保護膜形成用材料。
【請求項5】
前記アルコール系溶剤が、炭素数1から14のアルコール系溶剤であることを特徴とする請求項3記載の保護膜形成用材料。
【請求項6】
前記エーテル系溶剤が、炭素数2から14のエーテル系溶剤であることを特徴とする請求項3記載の保護膜形成用材料。
【請求項7】
前記炭化水素系溶剤が、炭素数3から15の炭化水素系溶剤であることを特徴とする請求項3記載の保護膜形成用材料。
【請求項8】
液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、
基板上にホトレジスト膜を設ける工程と、
このホトレジスト膜上に請求項1から7のいずれか1項記載の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、
前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光する工程と、
現像液により前記保護膜を除去して、露光後の前記ホトレジスト膜を現像する現像工程と、
を有するホトレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−134173(P2009−134173A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311428(P2007−311428)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】