説明

信号処理装置、レーダ装置、車両制御装置、及び信号処理方法

【課題】周波数変化率が異なる複数の周波数変調を用いる場合であっても、検出結果の出力が遅れることを防止する。
【解決手段】周波数変化率が異なる2とおりの周波数変調を用いるFM−CWレーダ装置は、送信信号の周波数変化率が同じビート信号に基づき目標物体の相対距離または相対速度を検出する検出処理と、周波数変化率が異なるときのビート信号同士を用いて相対距離または相対速度を検出する検出処理とを行う距離・速度検出手段と、前記検出処理で検出される相対距離または相対速度に評価点を加算し、前記評価点が基準点に達した前記相対距離または相対距離を確定する距離・速度確定手段とを有するので、1検出サイクル内でより多くのデータを得ることができ、複数の検出サイクルを実行したのと同じ効果が得られる。よって、レーダ装置から車両制御装置への検出結果の出力が遅れることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数が上昇及び下降するような周波数変調を施した送信信号の反射信号を受信し、前記送信信号と受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置等に関し、特に、送信信号の周波数変化率が異なるときに生成されるビート信号を用いて目標物体の相対距離または相対速度を検出する信号処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両における障害物検出手段として、FM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式のレーダ装置が車両に搭載されて用いられる。FM−CW方式のレーダ装置は、周波数が上昇及び下降するような周波数変調を施したレーダ信号を送受信し、目標物体の相対距離、相対速度を検出する。
【0003】
図1は、FM−CW方式のレーダ装置による相対距離、相対速度の検出原理を説明する図である。図1において横軸は時間、縦軸は周波数を示す。まず、図1(A)に、FM−CW方式のレーダ装置が送出する送信信号と受信信号の周波数変化を示す。送信信号は、実線で示すように、周波数fmの三角波の周波数変調信号に従って、中心周波数f0、周波数変調幅ΔFで周波数が直線的に上昇及び下降する。これに対し、目標物体で反射されて戻ってくる受信信号は、破線で示すように、相対距離による時間的遅延ΔTと、相対速度に応じたドップ周波数γ分の周波数偏移を受ける。その結果、送受信信号には、送信信号のアップ期間(アップ期間)で周波数差α、ダウン期間(ダウン期間)で周波数差βが生じる。レーダ装置は、送受信信号を混合することにより両者の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成し、ビート信号の周波数(ビート周波数)を解析してこの周波数差を検出する。そして、次の式により目標物体の相対距離R、相対速度Vを検出する。ここで、Cは光速である。
【0004】
R=C・(α+β)/(8・ΔF・fm)
V=C・(β−α)/(4・f0)
ここで、図1(A)の状態で目標物体の正または負の相対速度が大きくなると、受信信号におけるドップ周波数分の周波数偏移幅が大きくなり、アップ期間またはダウン期間での送受信信号の周波数差が小さくなる。そして、図1(B)のように、周波数偏移幅がγ1またはγ2となると、ビート周波数検出できなくなる。また、図1(A)の状態で目標物体の相対距離が大きくなると、図1(C)のように、受信信号における時間的遅延(ΔT1)が大きくなり、その結果、ビート周波数、特にダウン期間のビート周波数が大きくなる(β1)。そして、信号処理装置における基準クロックのナイキスト周波数をビート周波数が超えると、ビート周波数を検出できなくなる。さらに相対距離が大きくなると、図1(D)のように、遅延時間が三角波の2分の1波長を上回り、送受信信号のアップ期間同士またはダウン期間同士が重複せず、ビート周波数が検出できなくなる。このように、FM−CW方式の原理上、検出可能な相対距離と相対速度に限界がある。
【0005】
図2は、上記の方式により検出可能な相対距離と相対速度の範囲を示す図である。横軸は相対距離、縦軸は相対速度を示す。そして、境界線b1、b2はそれぞれ図1(B)、(C)、で示した状態に対応し、限界点b3は図1(D)で示した状態に対応する。よって、境界線b1、b2及び限界点b3で囲まれた検出可能範囲内で、相対距離と相対速度が検出される。
【0006】
ここで、車載用レーダ装置においては、衝突回避制御または衝突対応制御の必要から、近距離において急速に接近する(負の相対速度が大きい)目標物体を検出することが要求される。すなわち、図2に示す検出可能範囲の外側の領域a1において目標物体の相対距離、相対速度を検出することが要求される。あるいは、渋滞時の追従走行制御の必要から、近距離において急速に遠ざかる(正の相対距離が大きい)目標物体を検出することが要求される。すなわち、図2に示す検出可能範囲の外側の領域a2において目標物体の相対距離、相対速度を検出することが要求される。
【0007】
かかる要求に対し、周波数変化率が大きい周波数変調と周波数変化率が小さい周波数変調を送信信号に施して、それぞれの場合に得られるビート信号を組み合わせて相対距離、相対速度を検出する方法が提案されており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0008】
この方法では、図3(A)に示すように、送信信号の周波数変化率が大きい(つまり三角波の傾きとして表される周波数の変化率の絶対値が大きい)送信信号を送信する送信期間T1と、周波数変化率が小さい(つまり三角波の傾きとして表される周波数の変化率の絶対値が大きい)送信信号を送信する送信期間T2を設ける。そして、それぞれの送信期間においてアップ期間で生成されるビート信号のビート周波数同士、あるいはダウン期間で生成されるビート信号のビート周波数同士を組合せ、次の式(1)〜(4)により、相対距離Rと相対速度Vを算出する。
[ダウン期間でのビート周波数同士の組合せの場合]
R=(2・α2−α1)/(2・4・ΔF2・fm2/C) …式(1)
V={ΔF1・fm1・α2/(ΔF2・fm2−ΔF1・fm1)−α1}/(4・f0/C) …式(2)
[ダウン期間でのビート周波数同士の組合せの場合]
R=(2・β2−β1)/(2・4・ΔF2・fm2/C) …式(3)
V={ΔF1・fm1・β2/(ΔF2・fm2−ΔF1・fm1)−β1}/(4・f0/C) …式(4)
なお、式(1)〜(4)では、送信期間T1における送信信号の周波数変調幅をΔF1、アップ期間のビート周波数をα1、ダウン期間のビート周波数をβ1、三角波の周波数をfm1とし、送信期間T2における送信信号の周波数変調幅をΔF2、アップ期間のビート周波数をα2、ダウン期間のビート周波数をβ2、三角波の周波数をfm2とする。また、両期間における送信信号の中心周波数をf0、光速をCとする。
【0009】
かかる方法における相対距離、相対速度検出可能範囲は、図3(B)に示される。すなわち、式(1)、(2)により検出可能範囲a2内で相対距離、相対速度が検出される。また、式(3)、(4)により検出可能範囲a1内で相対距離、相対速度が検出される。
【特許文献1】特開2004−151022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、車載用のレーダ装置においては、ある程度連続した回数の検出サイクルで一定の誤差範囲内で相対距離、相対速度が検出されたときに、検出結果に連続性があるとみなして車両側の制御装置に出力する。そうすることで、検出結果の正確性を担保する。
【0011】
ここで、上述の方法においては、周波数変化率が大きい送信期間T1と周波数変化率が小さい送信期間T2とを1検出サイクルとして処理する。すると、例えば、連続性判定に必要とされる検出サイクルの回数を3回とすると、出力可能な検出結果を得るためには送信期間T1、T2ともに3回実行する時間が必要となる。すなわち、2通りの周波数変調を用いたことにより検出サイクルが長くなるので、その分検出結果の出力が遅くなる。その結果、車両制御の時期が遅くなるという問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、複数の異なる周波数変化率を用いる場合であっても、検出結果の出力が遅れることを防止する信号処理装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、周波数が上昇及び下降する周波数変調が施された送信信号の反射信号を受信し、前記送信信号と受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置であって、前記送信信号の周波数変化率が異なる複数の送信期間を含む検出サイクルごとに、前記送信期間のいずれかで生成されるビート信号に基づき目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理と、異なる前記送信期間で生成されるビート信号の組合せに基づき前記目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理とを行う距離・速度検出手段と、前記検出される相対距離または相対速度に評価点を設定し、前記評価点に基づいて当該相対距離または相対距離を確定する距離・速度確定手段とを有する信号処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
上記側面によれば、距離・速度検出手段は、検出サイクルごとに前記送信期間のいずれかで生成されるビート信号に基づき目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理と、異なる前記送信期間で生成されるビート信号の組合せに基づき前記目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理とを行うので、1回の検出サイクルで同じ相対距離と相対速度を異なる処理で検出できる。そして、距離・速度確定手段は、前記検出される相対距離または相対速度に評価点を設定し、前記評価点の累計が基準点に達したときに前記相対距離または相対距離を確定するので、少ない検出サイクルで複数の検出サイクルを実行したのと同じ連続性判定を行うことができる。よって、レーダ装置から車両制御装置への検出結果の出力が遅れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0016】
図4は、本発明が適用されるレーダ装置の使用状況を説明する図である。FM−CW方式のレーダ装置10は、一例として、車両1の前部フロントグリル内、あるいはバンパー内に搭載され、フロントグリルやバンパー前面に形成されるレドームを透過して車両1前方の走査対象領域にミリ波長のレーダ信号(電磁波)を送信し、走査対象領域からの反射信号を受信する。
【0017】
そして、レーダ装置10は、送受信信号からビート信号を生成して、これをマイクロコンピュータなどの信号処理装置により処理することで、走査対象領域内の目標物体の相対距離、相対速度を検出する。目標物体は、例えば車両1の先行車両、対向車や出会い頭に出くわす他車両などである。そして、検出結果に基づいて、車両制御装置100が、先行車両に追従走行したり、他車両との衝突を回避または乗員を保護したりするように車両1の各種アクチュエータを制御する。
【0018】
なお、本図に示す使用状況は一例であり、レーダ装置10を車両1の側面に搭載して車両1の側方を監視するために用いたり、車両1の後部に搭載して車両1の後方を監視するために用いたりすることも可能である。あるいは、レーダ装置10を車両1の前側部に搭載して車両1の前側方を監視するために用いたり、車両1の後側部に搭載して車両1の後側方を監視するために用いたりすることも可能である。
【0019】
図5は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を説明する図である。レーダ装置10は、FM−CW方式で周波数変調を施した送信信号を送信してその反射信号を受信し、送受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成するレーダ送受信機30と、レーダ送受信機30が生成するビート信号を処理する信号処理装置14とを有する。
レーダ送受信機30では、周波数変調指示部16が三角波状の周波数変調信号を生成すると、電圧制御発振器(VCO)18が、周波数変調指示部16が生成する信号に従って三角波の上昇区間で周波数が直線的に上昇し、三角波の下降区間で周波数が直線的に下降する送信信号を出力する。この送信信号は分配器20により電力分配され、その一部が送信アンテナ11から送出される。そして、反射信号が受信用アンテナ12により受信され、受信信号がミキサ22に入力される。ミキサ22は、電力分配された送信信号の一部と受信信号とを混合し、両者の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成する。そして、ビート信号は、AD変換器によりデジタルデータ化され、信号処理装置14に出力される。
【0020】
信号処理装置14は、デジタルデータ化されたビート信号に対しFFT(高速フーリエ変換)処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)などの演算処理装置と、ビート信号の周波数スペクトルを処理して目標物体の位置等をするマイクロコンピュータを有する。このマイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する各種処理プログラムや制御プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUが各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)とを有する。
【0021】
よって、ビート信号の周波数を用いて目標物体の相対距離、相対速度を検出する距離・速度検出手段14a、検出した相対距離、相対速度を確定する距離・速度確定手段14bは、各処理手順を定めたプログラムと、これを実行するCPUにより構成される。
【0022】
上記のように構成されるレーダ装置10の動作について説明する。
【0023】
図6は、レーダ送受信機30の送信信号の周波数変化と、ビート信号の周波数変化を示す。まず、レーダ送受信機30は、図6上段に示すように、送信信号(実線で示す)の周波数変化率が大きい送信信号を送信する送信期間T1と、周波数変化率が小さい送信信号を送信する送信期間T2を反復する。そして、周波数変化率が小さい送信期間T1では、送信信号の周波数は、周波数fm1の三角波に従い、中心周波数をf0とする周波数変調幅ΔF1で直線的に上昇及び下降する。また、周波数変化率が小さい送信期間T2では、送信信号の周波数は、周波数fm2の三角波に従い、中心周波数をf0とする周波数変調幅ΔF2で直線的に上昇及び下降する。ただしここでは、fm1>fm2またはΔF1>ΔF2とする。
【0024】
そして、レーダ送受信機30は、それぞれの送信期間において、アップ期間とダウン期間ごとに送信信号と受信信号(破線で示す)の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成する。ここで、説明の便宜上、送信期間T1、T2における受信信号の周波数偏移量が同じとすると、ビート信号の周波数は、図6下段に示すように、送信期間T1のアップ期間でビート周波数α1、ダウン期間でビート周波数β1となり、送信期間T2のアップ期間でビート周波数α2、ダウン期間でビート周波数β2となる。
【0025】
上記のようなビート周波数を有するビート信号が生成されると、信号処理装置14の距離・速度検出手段14aは、送信期間T1、T2を1検出サイクルとしてビート信号の周波数解析を行い、検出したビート周波数に基づいて目標物体の相対距離、相対速度を検出する。本実施形態では、1検出サイクルで次の4通りの検出処理を実行して、相対距離と相対速度とを検出する。
【0026】
まず第1の検出処理では、距離・速度検出手段14aは、送信期間T1におけるアップ期間でのビート周波数α1とダウン期間でのビート周波数β1を用いて、次の式を解く演算処理により相対距離R1、相対速度V1を求める。以下、Cは光速を示す。
【0027】
R1=C・(α1+β1)/(8・ΔF1・fm1) …式(5)
V1=C・(β1−α1)/(4・f0) …式(6)
次に第2の検出処理では、距離・速度検出手段14aは、送信期間T2におけるアップ期間でのビート周波数α2とダウン期間でのビート周波数β2を用いて、次の式を解く演算処理により相対距離R2、相対速度V2を求める。
【0028】
R2=C・(α2+β2)/(8・ΔF2・fm2) …式(7)
V2=C・(β2−α2)/(4・f0) …式(8)
また第3の検出処理では、距離・速度検出手段14aは、送信期間T1におけるアップ期間でのビート周波数α1と、送信期間T2におけるダウン期間でのビート周波数β2を用いて、次の式を解く演算処理により相対距離R3、相対速度V3を求める。以下、Cは光速を示す。
【0029】
R3=C・(α1+β2)/(8・ΔF1・fm1) …式(9)
V3=C・(β2−α1)/(4・f0) …式(10)
そして第4の検出処理では、距離・速度検出手段14aは、送信期間T1におけるアップ期間でのビート周波数α1と、送信期間T2におけるアップ期間でのビート周波数α2を用いて、次の式(上述した式(1)、(2))を解く演算処理により相対距離R4、相対速度V4を求める。
【0030】
R4=(2・α2−α1)/(2・4・ΔF2・fm2/C) …式(1)
V4={ΔF1・fm1・α2/(ΔF2・fm2−ΔF1・fm1)−α1}/(4・f0/C) …式(2)
さらに第5の検出処理では、距離・速度検出手段14aは、送信期間T1におけるダウン期間でのビート周波数β1と、送信期間T2におけるダウン期間でのビート周波数β2を用いて、次の式(上述した式(3)、(4))を解く演算処理により相対距離R5、相対速度V5を求める。
【0031】
R5=(2・β2−β1)/(2・4・ΔF2・fm2/C) …式(3)
V5={ΔF1・fm1・β2/(ΔF2・fm2−ΔF1・fm1)−β1}/(4・f0/C) …式(4)
図7は、上述の5通りの検出処理により検出可能な相対距離、相対速度の範囲を示す図である。横軸に相対距離、縦軸に相対速度を示す。ここでは、送信期間T1、T2での送信信号の周波数変調幅ΔF1、ΔF2はともに400MHzであり、送信期間T1での三角波の周波数fm1が400Hz、送信期間T2での三角波の周波数fm2が200Hzである場合を例おとして、図7(A)に第1の検出処理、図7(B)に第2の検出処理、図7(C)に第3の検出処理、図7(D)に第4、第5の検出処理の場合の検出可能範囲を示し、図7(E)は、全範囲を重ねた場合の検出可能範囲を示す。すると、図7(E)に示すように、複数の検出可能範囲が重複する。よって、かかる重複範囲では、複数の検出処理で同じペアが検出される。
【0032】
本実施形態では、距離・速度検出手段14aは、1検出サイクルで5通りのビート信号の組合せにより相対距離と相対速度とを求めて、距離・速度確定手段14bは、異なる検出処理ごとに検出された相対距離、相対速度のペアに評価点を設定し、その評価点を加算して累計する。すると、異なる検出処理で重複して検出されるペアには、評価点が重複して加算される。
【0033】
このように、1検出サイクル内で5通りの検出処理を行うことで、5通りの検出可能範囲を重ねることにより全体としての検出可能範囲を拡大できるだけでなく、複数の検出可能範囲に属するペアがそれぞれの検出処理で検出される。すなわち、1検出サイクルで、数回分の検出サイクルを実行したのと同じ結果が得られる。
【0034】
そして、距離・速度確定手段14bは、評価点が基準点に達したペアを車両制御装置100に出力する。ここにおいて、1検出サイクルごとに第3または第4の検出処理でペアを検出し、検出回数が規定数(例えば4回)に達した場合に連続性有りと判断する従来の方法では、少なくとも4検出サイクル分の処理時間が必要となるが、上記の方法によれば、検出回数を評価点として累計することで、より少ない検出サイクルで基準点(例えば4点)に達したペアの連続性判定が可能となる。よって、より早い時期に車両制御装置に検出結果を出力できるので、車両制御の遅れを防止できる。
【0035】
なお、本実施形態は、第1〜第3の検出処理での検出可能範囲と第5の検出処理での検出可能範囲が重複していることで、第1〜第3の検出処理では相対距離、相対速度が検出できないときでも、第5の検出処理でこれを検出できるという効果を有する。これは、比較的周波数が低いアップ期間でのビート信号は直流成分や静止物からの反射信号に基づくビート信号に埋もれ易く、したがって検出できない場合があるため、アップ期間でのビート信号を用いる第1〜第3の検出処理では相対距離、相対速度が検出できない場合があるのに対し、比較的周波数が高いダウン期間でのビート信号は検出され易いため、送信期間T1、T2におけるダウン期間でのビート周波数β1、β2を用いる第5の検出処理では第1〜第3の処理で検出できない相対距離、相対速度を検出できることによる。
【0036】
具体例を図8に示す。図8(A)には、1検出サイクルで検出される相対速度、相対距離のペアを検出可能範囲に対応付けて示す。ここにおいて、ペアP1は第2の検出処理で検出され、ペアP2は第3の検出処理で検出され、ペアP3は第4の検出処理で検出され、ペアP4は第5の検出処理で検出され、ペアP6は第1、第3、第4の検出処理で検出され、ペアP7は第1、第3、第5の検出処理で検出され、ペアP8は第1、第2、第3、第4の検出処理で検出され、ペアP9は第1、第2、第3、第5の検出処理で検出されたことが示される。
【0037】
上記のペアP1〜P9に対する1検出サイクルでの評価点は、検出された検出処理の数ごとに加算されるので、図8(B)のようになる。そして、ペアP8、P9の評価点は基準点「4」以上であるので、1回の検出サイクルで連続性が有りと判定され、車両の制御対象として車両制御装置100に出力される。また、ペアP6、P7の評価点は「3」であるので、あと一回の検出サイクルで一回検出されれば、基準点「4」以上となり連続性有りと判断される。さらに、ペアP5の評価点は「2」であるので、あと一回の検出サイクルで2とおりの検出処理で検出されるか、あるいはあと二回の検出サイクルで検出されれば、基準点「4」以上となり連続性有りと判断される。このように、4回の検出サイクルを実行することなく、早い時期に連続性を判定することができる。
【0038】
図9は、本実施形態における信号処理装置の動作手順を示すフローチャート図である。この動作手順は、1検出サイクルごとのビート信号がレーダ送受信機30から入力されたときに実行される。すなわち、信号処理装置14は、ビート信号をFFT処理してビート周波数を検出すると(S2)、距離・速度の検出を行う(S4)。そして、送信信号または受信信号を走査することにより目標物体の方位角の検出を行う(S6)。そして、検出結果が制御対象に該当するか否かにより出力可否を判定し(S8)、出力可と判定した検出結果を車両制御装置100に出力する(S10)。
【0039】
図10は、上記手順S4における相対距離、相対速度検出処理の詳細な手順を示すフローチャート図である。
【0040】
距離・速度検出手段14aは、ビート周波数を用いて上述の5通りの検出処理を行い(S20〜S28)、各検出処理結果から一致する相対速度と相対距離のペアを検出する(S30)。そして、距離・速度検出手段14bは、検出したペアに評価点を加算し(S32)、評価点が基準点(例えば4点)に達したペアを(S34のYES)検出結果として確定する(S36)。
【0041】
本実施形態においては、相対速度と相対距離のペアに対し、検出されたときの検出処理の種類に応じて異なる重みの評価点を加算することができる。そのとき、次の2通りの方法による重み付けが可能である。
【0042】
第1の方法として、相対速度と相対距離の分解能に応じて評価点を加算することができる。すなわち、送信信号の周波数変化率が大きいほど、相対速度または相対距離の一定量の変化に対するビート周波数の変化量が大きくなる。つまり、分解能が高くなる。よって、周波数変化率が大きい送信期間T1で得られたビート信号を用いる第1の検出処理の方が、周波数変化率が小さい送信期間T2で得られたビート信号を用いる第2の検出処理より、検出される相対距離、相対速度の精度が高い。従って、第1の検出処理で検出されたペアに対し、第2の処理で検出されたペアより高い評価点を加算する。そうすることで、高い精度のペアの方が低い精度のペアより早く基準点に達する。よって、単に検出された回数だけで検出結果の連続性を判断する場合よりも、より正確性の高い検出結果をより早く車両制御に用いることが可能となる。逆に、低い精度のペアは、検出サイクルの回数を重ねることで相対的な精度の低さを補う。
【0043】
なお、この場合、周波数変化率が大きい送信期間T1で得られたビート信号と、周波数変化率が小さい送信期間T2で得られたビート信号とを用いる第3の検出処理により検出されるペアに対しては、第1の検出処理で得られたペアに対する評価点より小さく、かつ、第2の検出処理で得られたペアに対する評価点より大きい評価点を加算する。
【0044】
図11は、かかる第1の方法に基づく評価点の例を示す。図11(A)は、1検出サイクルで検出される相対速度、相対距離のペアを第1〜第3の検出処理の検出可能範囲に対応付けて示す。ここにおいて、ペアP1は第2の検出処理で検出され、ペアP2は、第3の検出処理で検出され、ペアP3は第1、第3の検出処理で検出され、ペアP4は第2、第3の検出処理で検出され、ペアP5は、第1、第2、第3の検出処理で検出されたことが示される。
【0045】
図11(B)には、第1〜第3の検出処理で検出されるペアに対する評価点を示す。すると、1検出サイクルでの上記ペアP1〜P6の評価点合計は、図11(C)のようになる。すなわち、ペアP1は第2の検出処理に対応する評価点「1」が加算され、ペアP2は、第3の検出処理に対応する評価点「2」が加算され、ペアP3は第1の検出処理に対応する評価点「3」と、第3の検出処理に対応する評価点「1」の合計「4」が加算され、ペアP4は第2の検出処理に対応する評価点「2」と、第3の検出処理に対応する評価点「1」の合計「3」が加算され、ペアP5は、第1の検出処理に対応する評価点「3」と、第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」の合計「6」が加算される。
【0046】
よって、この場合、図10に示した手順によれば、ペアP3、P5は評価点が基準点「4」以上であるので、1回の検出サイクルで連続性が有りと判定され、車両の制御対象として車両制御装置100に出力される。また、ペアP4の評価点は「3」であるので、あと一回の検出サイクルで一回検出されれば、連続性有りと判断される。さらに、ペアP2の評価点は「2」であるので、あと一回の検出サイクルで2とおりの検出処理で検出されるか、あるいはあと二回の検出サイクルで検出されれば、連続性有りと判断される。このように、4回の検出サイクルを実行することなく、早い時期に連続性を判定することができる。
【0047】
第2の方法として、車両の制御対象としての重要度に応じて評価点を加算することができる。例えば、安全性を最優先した場合には、衝突回避・対応制御において近距離の目標物体が重要となる。特に、急接近する(負の相対速度が大きい)目標物体が最重要となる。よってかかる観点から、より近距離が検出可能な第4、5の検出処理で検出されたペアに対し、他の検出処理、例えば近距離での検出可能範囲が制限される第2の検出処理で検出されたペアに対する評価点より大きい評価点を加算する。
【0048】
さらに、近距離が検出可能な第4、5の検出処理のうち、負の相対速度を有する(つまり接近する)目標物体を検出可能な第5の検出処理で検出されたペアに対し、正の相対速度を有する(つまり遠ざかる)目標物体を検出可能な第4の検出処理で検出されたペアに対する評価点より大きい評価点を加算する。そうすることで、制御の目的に応じて重要度の高い検出結果を早い時期で連続性有りと判定し、出力することができる。
【0049】
図12は、かかる第2の方法に基づく評価点の例を示す。図12(A)には、1検出サイクルで検出される相対速度、相対距離のペアを第2の検出処理、及び第4、第5の検出処理の検出可能範囲に対応付けて示す。ここにおいて、ペアP1は第2の検出処理で検出され、ペアP2は第4の検出処理で検出され、ペアP3は第5の検出処理で検出され、ペアP4は第2、第4の検出処理で検出され、ペアP5は第2、第5の検出処理で検出されたことが示される。
【0050】
図12(B)には、第2、第4、及び第5の検出処理で検出されるペアに対する評価点を示す。すると、1検出サイクルでの上記ペアP1〜P5の評価点合計は、図12(C)のようになる。すなわち、ペアP1は第2の検出処理に対応する評価点「1」が加算され、ペアP2は第4の検出処理に対応する評価点「4」が加算され、ペアP3は第5の検出処理に対応する評価点「3」が加算され、ペアP4は第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第4の検出処理に対応する評価点「4」の合計「5」が加算され、ペアP5は、第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第5の検出処理に対応する評価点「3」の合計「4」が加算される。
【0051】
よって、この場合、図10に示した手順によれば、ペアP2、P4、及びP5は評価点が基準点「4」以上であるので、1回の検出サイクルで連続性が有りと判定され、車両の制御対象として車両制御装置100に出力される。また、ペアP3は評価点が「3」であるので、あと一回の検出サイクルで検出されれば、連続性有りと判定される。このように、4回の検出サイクルを実行することなく、早い時期に連続性を判定することができる。
【0052】
図13は、上記第1、第2の方法を組み合わせた場合の評価点の例を示す。図13(A)は、図8(A)で示した相対速度、相対距離のペアと検出可能範囲との対応付けが示される。
【0053】
ここでは、上記のペアP1〜P9に対する評価点は、図13(B)のように加算される。すなわち、相対距離、相対速度の分解能と制御上の重要度とに基づいて、評価点の大きい順に、第1の検出処理、第4の検出処理、第5の検出処理、第3の検出処理、そして第2の検出処理となる。
【0054】
すると、1検出サイクルでの上記ペアP1〜P5の評価点合計は、図12(C)のようになる。すなわち、ペアP1は第2の検出処理に対応する評価点「1」が加算され、ペアP2は第3の検出処理に対応する評価点「2」が加算され、ペアP3は第4の検出処理に対応する評価点「3」が加算され、ペアP4は第5の検出処理に対応する評価点「4」が加算され、ペアP5は第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」の合計「3」が加算される。そして、ペアP6は第1の検出処理に対応する評価点「5」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」と、第4の検出処理に対応する評価点「3」の合計「10」が加算され、ペアP7は第1の検出処理に対応する評価点「5」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」と、第5の検出処理に対応する評価点「4」の合計「11」が加算される。さらに、ペアP8は第1の検出処理に対応する評価点「5」と、第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」と、第4の検出処理に対応する評価点「4」の合計「12」が加算され、ペアP9は第1の検出処理に対応する評価点「5」と、第2の検出処理に対応する評価点「1」と、第3の検出処理に対応する評価点「2」と、第5の検出処理に対応する評価点「5」の合計「13」が加算される。
【0055】
このように、ペアP4及びP6〜P9の評価点は基準点「4」以上であるので、1回の検出サイクルで連続性が有りと判定され、車両の制御対象として車両制御装置100に出力される。また、他のペアについても、より早い時期に連続性有りと判定することができる。
【0056】
さらに、目標物体が多数存在する場合において、車両制御装置100の処理量の制約上、出力すべき検出結果を制限する必要があるような場合に、評価点が大きい順に出力するようにすることもできる。
【0057】
さらに、本実施形態において、いわゆるクロスオーバ現象によるビート周波数の折返しに起因して検出される虚偽の相対速度を排除できる。クロスオーバ現象は、正または負の相対速度が大きくなることでアップ期間またはダウン期間の送受信信号の周波数差が小さくなり、やがて図1(B)に示したビート周波数が検出できなくなる時点を経て、アップ期間またはダウン期間での送受信信号の周波数の大小が逆転することをいう。したがって、クロスオーバが生じると、ビート周波数の符号が逆転する。
【0058】
一方、信号処理装置14によるFFT処理では、正の周波数を検出するので、負の符号に反転したビート周波数は、絶対値が同じで正の符号のビート周波数として検出される。すなわち、目標物体の真の相対速度を反映しない虚偽のビート周波数が検出される。すると、かかる虚偽のビート周波数からは、虚偽の相対速度が検出される。
【0059】
ここで、周波数折返しが生じたときに、真のビート周波数から検出されるべき真の相対速度と、折返しによる虚偽のビート周波数から検出される虚偽の相対速度との関係を、検出処理ごとの検出可能範囲に対応づけると、図14のようになる。
【0060】
図14(A)は、第1の検出処理で真の相対速度Vt1と虚偽の相対速度Vt2が検出されたときに、第1の検出処理の検出可能範囲を含む第4の検出処理では真の相対速度Vt1が検出された場合を示す。なお、ここでは説明の明確化のため、第3の検出処理については考慮しない。ここで、第1の検出処理だけ実行した場合には、相対速度Vt2を虚偽と判断するための基準が存在しないので、断定ができない。しかしこの場合、第4の検出処理では相対速度Vt1は検出されているが相対速度Vt2が検出されていない。相対速度Vt2が真の相対速度であれば、第4の検出処理の検出可能範囲内であるので、検出されるはずである。
【0061】
よって、このことを判断基準として、本実施形態では相対速度Vt2を虚偽と判断することができる。具体的には、図13で示した評価点を例とすると、相対速度V1には第1の検出処理の評価点「5」と、第4の検出処理の評価点「4」の合計「9」が加算されるが、相対速度V2には第1の検出処理の評価点「5」のみが加算される。よって、例えば6点未満の相対速度を排除することで、虚偽の相対速度を制御対象から排除することができる。よって、虚偽の相対速度に基づく車両の誤制御を防止できる。
【0062】
さらに、別の例として、第1の検出処理で虚偽の相対速度Vt2が検出されたときに、第4の検出処理では第1の検出処理の検出可能範囲外で真の相対速度Vt1が検出された場合を図14(B)に示す。この場合、相対速度Vt2が検出されたときのビート周波数の符号を逆転して相対速度を再計算し、相対速度Vt1が得られるかを確認することも可能である。相対速度Vt1が得られれば、相対速度Vt2は虚偽の相対速度と判断できるだけでなく、第1の検出処理で再計算された相対速度Vt1に対し、第1の検出処理の評価点を加算することで、相対速度Vt1の評価点を増加させることができる。その結果、相対速度Vt1をより早い時期に出力することが可能となる。ここで、第1の検出処理では、小さい相対距離で相対速度の絶対値が大きい場合にクロスオーバが生じる。しかし、かかる相対距離と相対速度は、車両の制御上重要度が大きい。よって、上記のような方法によれば、相対速度Vt2を第1の検出処理における虚偽の相対速度と判定するだけでなく、真の相対速度Vt1をより早い時期に車両制御に用いることができる。よって、車両制御上の安全性が向上する。
【0063】
図15は、かかる相対速度の再計算を含む距離・速度検出手段14aの動作手順を示すフローチャート図である。図10で示した手順に、第1〜第3の検出処理で上記のような周波数折返しを考慮した相対速度の再計算を行う手順S291〜S293が追加される。そして、この場合には、再計算された相対速度には各検出処理での評価点が加算されるので、第1〜第3の検出処理の検出可能範囲外で第4または第5の検出処理の検出可能範囲内に真の相対速度が存在すれば、その真の相対速度に対する評価点を加算できる。よって、その相対速度が早い時期に出力されるようになる。
【0064】
上述の説明では、送信信号の周波数変化率が異なる送信期間T1、T2を1検出サイクルとしたが、1検出サイクル内に送信期間T1、T2が複数回実行される場合にも、本実施形態は適用できる。そして、相対距離、相対速度を検出する第1〜第5の検出処理を1検出サイクル内で複数回実行することで、検出結果の正確性を高めるようにしてもよい。
以上、説明したように、本実施形態によれば、複数の異なる周波数変化率を用いる場合であっても、1検出サイクルで複数のビート信号の組合せにより相対距離と相対速度とを求めるので、1検出サイクル内でより多くのデータを得ることができ、複数の検出サイクルを実行したのと同じ効果が得られる。よって、レーダ装置から車両制御装置への検出結果の出力が遅れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】FM−CW方式のレーダ装置による相対距離、相対速度の検出原理を説明する図である。
【図2】FM−CW方式により検出可能な相対距離と相対速度の範囲を示す図である
【図3】送信信号に施される2通りの周波数変調を示す図である。
【図4】本発明が適用されるレーダ装置の使用状況を説明する図である。
【図5】本実施形態におけるレーダ装置の構成を説明する図である。
【図6】レーダ送受信機30の送信信号の周波数変化と、ビート信号の周波数変化を示す図である。
【図7】検出処理により検出可能な相対距離、相対速度の範囲を示す図である。
【図8】本実施形態における評価点の加算方法を説明する図である。
【図9】本実施形態における信号処理装置の動作手順を示すフローチャート図である。
【図10】相対距離、相対速度検出処理の詳細な手順を示すフローチャート図である。
【図11】第1の方法に基づく評価点の例を示す図である。
【図12】第2の方法に基づく評価点の例を示す図である。
【図13】第1、第2の方法を組み合わせた場合の評価点の例を示す図である。
【図14】周波数折返しが生じた場合の処理について説明する図である。
【図15】相対速度の再計算を含む距離・速度検出手段14aの動作手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0066】
1:車両、10:レーダ装置、14:信号処理装置、14a:距離・速度検出手段、14b:距離・速度確定手段、30:レーダ送受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が上昇及び下降する周波数変調が施された送信信号の反射信号を受信し、前記送信信号と受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置であって、
前記送信信号の周波数変化率が異なる複数の送信期間を含む検出サイクルごとに、前記送信期間のいずれかで生成されるビート信号に基づき目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理と、異なる前記送信期間で生成されるビート信号の組合せに基づき前記目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理とを行う距離・速度検出手段と、
前記検出される相対距離または相対速度に評価点を設定し、前記評価点に基づいて当該相対距離または相対距離を確定する距離・速度確定手段とを有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記距離・速度確定手段は、前記周波数変化率が第1の値の送信期間で生成されるビート信号に基づいて検出される前記相対距離または相対速度に対し、前記周波数変化率が前記第1の値より小さい第2の値である送信期間で生成されるビート信号に基づいて検出される前記相対距離または相対速度に対する評価点より大きい評価点を設定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記距離・速度確定手段は、第1の送信期間の周波数下降時でのビート信号と第2の送信期間の周波数下降時でのビート信号とに基づき検出される前記相対距離または相対速度に対し、前記第1の送信期間の周波数上昇時でのビート信号と前記第2の送信期間の周波数上昇時でのビート信号とに基づき検出される前記相対距離または相対速度に対する評価点より大きい評価点を設定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ送受信機と信号処理装置とを備えるレーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたレーダ装置により確定された前記目標物体の相対距離または相対速度に基づいて車両の動作を制御する車両制御装置。
【請求項6】
周波数が上昇及び下降するような周波数変調が施された送信信号の反射信号を受信するレーダ送受信機にて生成されるとともに前記送信信号と受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号の信号処理方法であって、
前記送信信号の周波数変化率が異なる複数の送信期間を含む検出サイクルごとに、前記送信期間のいずれかで生成されるビート信号に基づき目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理と、異なる送信期間で生成されるビート信号の組合せに基づき前記目標物体の相対距離または相対速度を検出する処理とを行う距離・速度検出工程と、
前記検出される相対距離または相対速度に評価点を設定し、前記評価点に基づいて当該相対距離または相対距離を確定する距離・速度確定工程とを有することを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−38705(P2010−38705A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201380(P2008−201380)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】