説明

信号処理装置

【課題】 外部からの基準信号の周波数変化が安定している状態であるかどうかをユーザが容易に判別可能とする。
【解決手段】 外部機器から供給された基準信号を入力する入力手段と、前記入力手段により入力された基準信号とクロックとの位相差を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段の出力に応じた周波数の前記クロックを発生する発生手段と、前記位相検出手段の出力に基づいて前記入力手段により入力された基準信号の周波数と前記クロックの周波数との誤差を検出し、前記検出した誤差に基づいて前記基準信号の周波数変化の状態を示す情報を表示装置に表示する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送分野等で用いられる業務用のビデオカメラでは、外部で発生した基準信号に対してカメラ内部のクロックを同期させることで、複数のビデオカメラで扱うビデオ信号の位相や周波数を合わせる機能を持っている(例えば、特許文献1参照)。この種の機能をゲンロック(Generator Lock)機能と呼ぶ。
【0003】
また、業務用のビデオカメラでは、一旦、外部の基準信号に対してゲンロックを行った後、基準信号が無くなった状態でも、クロックの周波数が複数のビデオカメラの間で数時間にわたってずれないことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−042586号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、基準信号を発生する機器が複数のビデオカメラに対して同時に基準信号を供給できない場合がある。そのような場合、複数のビデオカメラを順次接続しながら、各ビデオカメラのゲンロックを行うことがある。
【0006】
しかし、基準信号を発生する機器が電源を投入したばかりで、基準信号の周波数変動がまだ安定していない状態で各ビデオカメラがゲンロックを行うと、ビデオカメラの間でクロックの周波数が異なってしまう。
【0007】
そのため、数時間経過すると、ビデオカメラの間で撮影され、記録されるビデオ信号の同期がずれるという問題があった。
【0008】
そのため、ユーザは、基準信号の周波数変化が安定するまで待ってから、ビデオカメラに対する基準信号の供給を停止してゲンロック機能を停止させる必要がある。
【0009】
しかし、従来は、基準信号の周波数が安定しているのかどうかをユーザが確認することができないので、必要以上に長い間、ゲンロックを行っているという問題もあった。
【0010】
本発明はこの様な問題を解決し、外部からの基準信号の周波数の状態をユーザが容易に判別可能な装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、外部機器から供給された基準信号を入力する入力手段と、前記入力手段により入力された基準信号とクロックとの位相差を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段の出力に応じた周波数の前記クロックを発生する発生手段と、前記位相検出手段の出力に基づいて前記入力手段により入力された基準信号の周波数と前記クロックの周波数との誤差を検出し、前記検出した誤差に基づいて前記基準信号の周波数変化の状態を示す情報を表示装置に表示する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
外部からの基準信号の周波数の状態をユーザが容易に判別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるビデオカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】タイミング生成部の構成を示すブロック図である。
【図3】ゲンロック処理を示すフローチャートである。
【図4】電圧制御水晶発振器の周波数変化の様子を示す図である。
【図5】ゲンロック処理を示すフローチャートである。
【図6】ゲンロック処理を示すフローチャートである。
【図7】外部の基準信号の周波数ずれと2フレームずれるのに要する時間、及び2時間後のフレームずれ量の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る信号処理装置としてのビデオカメラ100の構成を示すブロック図である。図1において、撮像部101はCPU106の指示に従い、被写体の画像を撮影し、動画像信号を生成して画像処理部102に出力する。画像処理部102はCPU106の指示に従い、撮影時においては撮像部101から出力された動画像信号に対して公知の圧縮符号化処理を施して記録再生部107に出力する。また、撮影時には、画像処理部102は撮影された動画像信号を表示制御部104に出力し、表示制御部104は表示部105に対して被写体の動画像を表示する。また、画像処理部102は、再生時においては、再生された動画像信号を復号、伸張処理して出力部109に出力する。また、画像処理部102は、再生された動画像信号を表示制御部104に送り、表示制御部104は表示部105に再生画像を表示する。
【0015】
メモリ103は、画像処理部102による処理のために動画像信号を一時的に記憶する。表示制御部104は、記録時においては撮影された動画像を表示部105に表示し、再生時においては再生された動画像を表示部105に表示する。また、表示制御部104は、CPU106の指示により、メニュー情報等の各種の情報を表示部105に表示する。表示部105は液晶パネル等の表示装置を有する。
【0016】
CPU106は、不図示の不揮発メモリに記憶されたプログラムに基づいてビデオカメラ100の各部の動作を制御する。また、CPU106は操作部110からの指示に基づいて各部を制御する。記録再生部107は、記録時においては画像処理部102からの動画像信号を記録媒体108に記録し、再生時においては記録媒体108から動画像信号を再生して画像処理部102に出力する。
【0017】
出力部109は、画像処理部102から出力された動画像信号を外部機器に出力する。操作部110は電源スイッチや撮影開始、停止を指示するスイッチ、再生スイッチ等の各種のスイッチを備える。ユーザは操作部110を操作することにより、ビデオカメラ100の動作を指示する。
【0018】
タイミング生成部111は、入力端子112に対して外部の基準信号発生装置から供給された基準信号に従って、基準クロックを生成する。タイミング生成部111からの基準クロックは、ビデオカメラ100の各部の動作クロックとして使われる。
【0019】
次に、ビデオカメラ100における基本的な記録再生処理について説明する。
【0020】
操作部110により電源が投入されると、撮像部101が被写体を撮影し、デジタル信号として動画像信号を出力する。画像処理部102は撮影された動画像信号を表示制御部104に送り、表示制御部104は被写体の動画像を表示部105に表示して、撮影待機状態となる。撮影待機状態において、操作部110から撮影開始の指示があると、CPU106は画像処理部102、記録再生部107に対し、撮影開始を指示する。画像処理部102は撮影開始の指示に応じて、撮像部101により撮影された動画像信号を圧縮し、記録再生部107に出力する。記録再生部107は、撮影開始の指示に応じて、画像処理部102からの動画像信号を記録媒体108に記録する。本実施形態では、記録媒体108としてフラッシュメモリを用いるが、もちろんこれ以外の記録媒体を用いることも可能である。また、不図示の装着、排出機構により、記録媒体108を容易に装着、排出可能な構成としてもよい。CPU106は操作部110により撮影停止の指示があると、画像処理部102と記録再生部107に対し、撮影停止を指示する。撮影停止の指示に応じて、画像処理部102は動画像信号の圧縮処理を停止して、記録再生部107は動画像信号の記録を停止する。本実施形態では、撮影開始から撮影停止までの間に記録された動画像信号を一つのファイルとして記録媒体108に記録する。
【0021】
CPU106はタイミング生成部111から出力される基準クロックや垂直同期信号、水平同期信号に従って各部の動作タイミングを制御する。また、CPU106はタイマを内蔵し、タイミング生成部111から出力された基準クロックに従って記録開始からの経過時間(時、分、フレーム)を示すタイムコードを生成し、記録再生部107に送る。記録再生部107は、動画像信号の各フレームに対してタイムコードを付加して記録する。
【0022】
次に、再生時の処理を説明する。操作部110により記録媒体108に記録された動画像の再生指示があると、CPU108は、指定された動画像信号を記録媒体108から再生するように記録再生部107に指示する。記録再生部107は記録媒体108から指定された動画像信号を再生し、画像処理部102に出力する。画像処理部102は、再生された動画像信号を復号し、表示制御部104に出力する。表示制御部104は再生された動画像を表示部105に表示する。また、画像処理部102は、再生された動画像信号を出力部109に出力する。出力部109は、画像処理部102から出力された動画像信号を外部機器に対して出力する。
【0023】
次に、タイミング生成部111によるゲンロック処理について説明する。本実施形態では、ユーザが操作部110を操作してゲンロックモードを設定した後、CPU106が、入力端子112に対して基準信号発生装置からの基準信号が供給されたことを検出すると、タイミング生成部111によるゲンロック処理を開始する。
【0024】
図2はタイミング生成部111を含む信号処理装置100の要部構成を示すブロック図である。図2において、入力端子112から入力された基準信号が同期分離部201に供給される。同期分離部201は、入力された基準信号から水平同期信号を検出し、位相検出部202に出力する。また、同期分離部201は、基準信号が入力されると、その旨をCPU106に知らせる。
【0025】
位相検出部202には、同期信号生成部211により基準クロックから生成された水平同期信号も供給される。位相検出部202は、同期分離部201からの水平同期信号と同期信号生成部211からの水平同期信号との位相差を検出し、位相差を示す信号をループフィルタ203の乗算器221、222に出力する。
【0026】
位相検出部202からの位相差信号は乗算器221により所定の係数が乗算され、加算器226に出力される。また、位相検出部202からの位相差信号は乗算器222に供給され、乗算器222、加算器223、リミッタ224、レジスタ225から構成される積分回路にて積分処理される。そして、リミッタ224からの位相差信号の積分値が加算器226に出力される。加算器226は、乗算器221からの位相差信号と、リミッタ224からの積分値とを加算し、スイッチ204のa端子に出力する。
【0027】
レジスタ225に蓄積された位相差信号の積分値は、CPU106から読み出せるように構成されている。基準クロックを外部からの基準信号の位相が同期している時には、外部からの基準信号と基準クロックとの周波数のずれの平均値がレジスタ225に蓄えられる。そのため、レジスタ225の出力を読み出すことにより、外部からの基準信号の周波数と基準クロックの周波数とのずれをCPU106により検出することができる。また、一定期間ごとのレジスタ225の出力を比較することで、外部からの基準信号の変化の状態を検出することができる。レジスタ225の値は、位相差信号を積分した結果であるので、読み出される数値は急変することは無く、安定している。
【0028】
スイッチ204のb端子には、CPU106からの設定値が供給される。スイッチ204はCPU106により制御される。CPU106は、外部からの基準信号が供給されている間はスイッチ204をa端子に接続する。また、基準信号の供給が停止されると、スイッチ204をb端子に接続する。
【0029】
スイッチ204からの出力はデジタル発振器(DVCO)205に供給される。DVCO205は、温度補償された水晶発振器(TCXO)206からのタイミング信号に従って動作し、基準信号とクロックとの位相差に応じた周波数の正弦波信号を発生する。TCXO206は温度補償された水晶発振器であり、温度変化の影響をほとんど受けずに一定周波数のクロックを発生する。TCXOの温度特性は、例えば摂氏−30度〜85度で±1.5ppm(parts per million:100万分の1)である。ここでは、TCXO206は26メガヘルツ(MHz)のクロックを発生するものとして説明する。
【0030】
加算器231は、TCXO206からのクロックが入力される度にスイッチ204からの位相差信号とレジスタ233の出力を加算して、加算器232に出力する。加算器232は、TCXO206からのクロックが入力される度に、加算器231からの出力に対して所定値を加算する。なお、加算器232に対しては、CPU106から所定値が供給される。
【0031】
本実施形態では、ループフィルタ203からの出力が2048のときにDVCO205からの正弦波信号の周波数が中心周波数となる。また、ループフィルタ203からの出力が0のときにDVCO205から出力される正弦波信号の周波数が最小周波数となり、4095のときにDVCO205から出力される正弦波信号の周波数が最大周波数となる。また、本実施形態では、加算器232に供給する所定値を8709219(16進数で84E463)とする。また、加算器231、232、並びにレジスタ233のビット幅を31ビットとし、加算したときに生じるオーバーフローは無視する。
【0032】
そして、加算器232の加算結果の上位8ビットをサイン波テーブル234に出力する。サイン波テーブル234は、入力された8ビットの値に応じて正弦波信号を発生する。サイン波テーブル234では、入力された8ビットの値がそれぞれ、正弦波の1周期における位相に対応している。
【0033】
31ビットのレジスタ233が一周する周期は、例えば、DVCO205に対してスイッチ204から値2048が供給されている場合には、2^31÷(8709219+2048)÷26e6=9.48146e−6となる。そのため、サイン波テーブル234から出力される正弦波信号の周波数は、加えられる数値をnとすると、(1)式に示す通りとなる。
周波数=26E6×(8709219+n)÷2^31…(1)
この様に、ループフィルタ203から出力された、0〜4095の12ビットの値によって、(1)式で関連付けられた周波数のサイン波を発生する。従って、DVCO205からの正弦波信号の周波数は、ループフィルタ203からの位相差信号の値によって変動する。
【0034】
DVCO205からの正弦波信号は位相検出部207の乗算器241に出力される。乗算器241には、後述する比較信号生成部210からの正弦波信号が加えられる。位相検出部207は、これら二つの正弦波信号の間の位相差を検出し、位相差を示す信号をDA変換器208に出力する。
【0035】
位相検出部207は、乗算器241とローパスフィルタ(LPF)242で構成されている。そして、二つの正弦波信号を乗算した時に、以下に示す積和の公式(2)により生成される位相差に相当する差の成分cos(α−β)と2倍周波数成分cos(α+β)のうち、2倍周波数成分をLPF242で除去することにより、低域の位相差成分を抽出する。
sinαsinβ=−1/2{cos(α+β)−cos(α−β)}…(2)
【0036】
DA変換器208は位相差信号をアナログ信号に変換、電圧制御水晶発振器(VCXO)209に出力する。VCXO209は、加えられた電圧に応じて、発振周波数を±150ppm程度、変化させることが可能な水晶発振器である。ここではVCXO209の中心周波数は27MHzであるとする。VCXO209の発生したクロックは、ビデオカメラ100の基準クロックとして各部に供給される。また、VCXO209からのクロックは、比較信号生成部210と同期信号生成部211にも出力される。
【0037】
比較信号生成部210は、VCXO209からの出力を8ビットのカウンタで構成される分周器251で分周する。そして、分周した結果の0〜255の数値をサイン波テーブル252に加えることで、0〜255で1周期となる正弦波信号を発生する。27MHzのクロックを256分周しているので、発生する正弦波信号の周波数は、ここでは105468.75Hz±150ppmである。この正弦波信号を位相検出部207に出力する。
【0038】
同期信号生成部211は、VCXO209が出力する27MHzのクロックを分周することで、水平同期信号と垂直同期信号を生成し、各部に出力する。なお、本実施形態では、ビデオカメラ100においてはNTSC方式の動画像信号を扱うものとし、同期信号生成部211は、NTSC方式に対応した周波数の水平同期信号と垂直同期信号を生成する。
【0039】
このように、位相検出部202により検出した位相差信号をループフィルタ203で平均化する。ループフィルタ203の出力を、TCXO206が発生するクロックに従って動作するDVCO205に加えることで、温度補償された正弦波信号を発生し、位相検出部207に加える。そして、位相検出部207の出力をDA変換器208によりデジタル信号に変換してVCXO209に出力することで、外部からの基準信号に、同期信号生成部211から出力される水平同期信号を位相ロックさせるようなフィードバックループを構成している。
【0040】
ここで、VCXO209の中心周波数が27MHzであるので、DVCO205の発生した正弦波信号の周波数は、(3)式に示すように27MHzに逓倍される。
VCXO209の発振周波数=DVCO205の周波数×分周器251の分周比…(3)
このように、DVCO205に供給する定数(加算器232に供給される値)により、温度補償され、かつ周波数が可変できる27MHzのクロックを、基準クロックとして、VCXO209の出力に得ることができる。
【0041】
そのため、CPU106から加算器232に供給した定数に従い、温度ドリフトの影響をほとんど受けず、与える数値対周波数特性が線形なVCXO209により基準クロックを生成することができる。
【0042】
また、図2の構成では、大きなフィードバックループ(位相検出部202→ループフィルタ203→DVCO205→位相検出部207→DA変換器208→VCXO209→同期信号生成部211→位相検出部202)を備える。そして、この大きなループの中に、小さなフィードバックループ(位相検出部207→DA変換器208→VCXO209→比較信号生成部段210→位相検出部207)を構成している。そのため、後者のループ利得は、前者のループ利得より、数倍以上大きく設計しておく必要がある。
【0043】
次に、CPU106によるゲンロック処理について説明する。図3はCPU106によるゲンロック処理を示すフローチャートである。
【0044】
ユーザが操作部110を操作して、ゲンロックモードが設定されると、CPU106は、ループフィルタ203の積分値の初期値として、所定値を設定する(S301)。ここで設定する初期値は、外部からの基準信号が供給されるまでの間、VCXO209を自走で発振させるための値であり、工場出荷時等に設定されてCPU106内部のメモリに保存される。
【0045】
次に、CPU106は、入力端子112に対して外部の基準信号発生装置から基準信号が供給されたかどうかを判別する(S302)。外部からの基準信号が供給されていない場合には、CPU106は、S301で設定した初期値をスイッチ204のb端子に出力し、更に、スイッチ204をb端子に接続して初期値をDVCO205に供給する(S311)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S309)。
【0046】
また、外部からの基準信号が供給されていた場合、CPU106は、スイッチ204をa端子に接続し、ループフィルタ203の出力をDVCO205に供給する。また、このとき、位相検出部202によりクロックと外部からの水平同期信号との位相差が検出され、ループフィルタ203のレジスタ225には位相差信号の積分値が蓄積される。そこで、CPU106は、所定のタイミングでレジスタ225の出力信号(積分値)を取得し、内部のレジスタに保存する(S303)。そして、保存した積分値に基づいて、外部から供給されている基準信号の周波数の変化を検出し、周波数の変化が安定しているかどうかを判別する(S304)。
【0047】
例えば、CPU106は、所定のタイミングで定期的にレジスタ225の値を取得して保存する。そして、CPU106は、所定回数、レジスタ225の値を取得すると、保存された所定回数分の値の差分を算出する。そして、CPU106は、差分値を複数の閾値と比較し、外部からの基準信号の状態が、安定している状態、安定途中の状態、不安定な状態の何れの状態であるかを判別する。
【0048】
判別の結果、安定状態であった場合、CPU106はレジスタ225の値を取得し、内部のレジスタに保存する(S310)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御して、基準信号が供給されており、基準信号の周波数変化が安定している旨の情報を表示部105に表示する(S306)。そして、CPU106は、再度、基準信号が入力されているかどうかを検出し(S307)、入力されている場合にはS303に戻る。また、外部の基準信号の供給が停止されると、CPU106は、スイッチ204をb端子に接続し、S310にて保存した積分値をDVCO205に出力する(S308)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S309)。
【0049】
このように、外部からの基準信号が無くなった際には、基準信号が入力されている間に最後に保存したレジスタ255の値を、スイッチ204経由でDVCO205に出力することにより、温度補償された基準クロックを発生することができる。
【0050】
また、S304で、外部からの基準信号の周波数変化が安定途中であると判別した場合、CPU106は、保存していたレジスタ225の値に基づいて、周波数変化が安定した場合の積分値を予測して算出する(S305)。
【0051】
例えば、外部の基準信号発生装置が、VCXOを使って基準信号を発生している場合、図4に示す様に、VCXOの発振周波数は、電源投入後、30分程度かかって安定する特性を持つ。これを式(4)に示す指数関数曲線で表す。
y=a・exp(−b・x)+c…(4)
【0052】
CPU106は、保存された積分値に基づいて式(4)の変数を演算し、安定する時点の数値を算出して保存する。そして、CPU106は、表示制御部104を制御して、基準信号が供給されており、基準信号の周波数変化が安定している旨の情報を表示部105に表示する(S306)。その後、CPU106は、再度、基準信号が入力されているかどうかを検出し(S307)、CPU106は、入力されている場合にはS303に戻る。また、外部の基準信号の供給が停止されると、スイッチ204をb端子に接続し、S310にて保存した積分値をDVCO205に出力する(S308)。
【0053】
このように、本実施形態では、外部から供給されている基準信号に対して内部のクロックを同期させるゲンロック処理の際に、位相差信号に基づいて、基準信号の周波数変化を検出する。そして、基準信号の周波数変化が安定しているかどうかを判別し、判別結果を表示しているので、ユーザは、基準信号の周波数変化が安定した状態でゲンロックしているかどうかを容易に判別することができる。
【0054】
そのため、基準信号の周波数変化が安定した状態でゲンロックした後に、ビデオカメラに対する基準信号の供給を停止し、他のビデオカメラへ基準信号を供給することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態においても、ビデオカメラ100の構成は図1、図2に示した構成と同様であり、また、基本的な記録、再生処理についても第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、ゲンロック処理が第1の実施形態とは異なる。
【0056】
図5は、第2の実施形態におけるゲンロック処理を示すフローチャートである。図5の処理は、CPU106が各部を制御することにより実行される。
【0057】
ユーザが操作部110を操作して、ゲンロックモードが設定されると、CPU106は、ループフィルタ203の積分値の初期値として、所定値を設定する(S501)。ここで設定する初期値は、外部からの基準信号が供給されるまでの間、VCXO209を自走で発振させるための値であり、工場出荷時等に設定されてCPU106内部のメモリに保存される。
【0058】
次に、CPU106は、入力端子112に対して外部の基準信号発生装置から基準信号が供給されたかどうかを判別する(S502)。外部からの基準信号が供給されていない場合には、CPU106は、S501で設定した初期値をスイッチ204のb端子に出力し、更に、スイッチ204をb端子に接続して初期値をDVCO205に供給する(S509)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S508)。
【0059】
また、外部からの基準信号が供給されていた場合、CPU106は、スイッチ204をa端子に接続し、ループフィルタ203の出力をDVCO205に供給する。また、このとき、位相検出部202によりクロックと外部からの水平同期信号との位相差が検出され、ループフィルタ203のレジスタ225には位相差信号の積分値が蓄積される。そこで、CPU106は、所定のタイミングで定期的にレジスタ225の出力信号(積分値)を取得し、内部のレジスタに保存する(S503)。そして、保存した積分値に基づいて、外部から供給されている基準信号の周波数ずれ量を算出する。そして、この周波数ずれ量に基づいて、外部の基準信号により計測した時間(フレーム数)とVCXO209からの基準クロックにより計測した時間(フレーム数)とが、N(Nは1以上の所定の整数)フレームずれるのに要する時間を算出する(S504)。そして、CPU106は、表示制御部104により、算出した時間の情報を表示部105に表示する(S505)。
【0060】
そして、CPU106は、再度、基準信号が入力されているかどうかを検出し(S506)、入力されている場合にはS503に戻る。これにより、外部からの基準信号が入力されている間、CPU106は、Nフレームずれるのに要する時間を周期的に算出し、表示部105に表示させる。また、外部の基準信号の供給が停止されると、CPU106は、スイッチ204をb端子に接続し、S503にて保存した積分値をDVCO205に出力する(S507)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S508)。
【0061】
次に、S504における算出処理と、S505における表示処理について説明する。周波数ずれをΔf、Nフレームずれるまでの時間経過をTとすると、これらの関係式は以下の通りである。
T=X÷Δf÷108000(放送方式がNTSCの場合)
T=X÷Δf÷90000(放送方式がPALの場合) …(5)
この様に、周波数ずれ量Δfが分かれば、Nフレームずれるのに要する時間Tは、(5)式で算出可能である。例えば、信号処理装置100で扱う動画像信号の放送方式がNTSCで、2フレームずれるのに要する時間Tと周波数ずれ量Δfの様子を図7(a)に示す。
【0062】
本実施形態では、温度補償された基準クロックを発生しているので、基準クロックの周波数変動は極めて少ない。例えば、前述の様に、VCXO209からの基準クロックの周波数変動が1.5ppmとすると、図7(a)に示す様に、2フレームずれるのにかかる時間は10時間以上(12時間20分)となる。一方、外部の基準信号を発生する装置が、温度補償されていないVCXOを使って基準信号を発生している場合、基準信号の周波数変動は10ppm程度の場合もある。そのため、図7(a)の様に、周波数変動が5ppmなら3時間42分、10ppmなら1時間51分と、2時間も経たないうちに2フレームの誤差が出る可能性があることが分かる。
【0063】
また、本実施形態の信号処理装置100では、外部からの基準信号に基づいてゲンロックした後、基準信号が停止されてもその周波数を保持するので、外部の基準信号もその状態が保たれれば外部の基準信号との誤差は出ない。しかし、元々数ppm〜数十ppmずれているような外部の基準信号の生成装置は、概して温度などの環境変化に対しても周波数がずれやすい。そこで、外部からの基準信号の周波数の変動に基づき、Nフレームずれるのにどれだけの時間かかるかを表示することで、ユーザは、Nフレームずれるまでの時間の目安を容易に認識することができる。
【0064】
更に、図7(a)からわかるように、周波数のずれ量とNフレームずれるのにかかる時間は反比例の関係を持っている。そのため、ずれが無いところから、ずれが増え始めると、ある程度まで急激に減少する関係を持っている。外部の基準信号を発生する装置の中にはTCXOや、水晶振動子を常温より高いオーブンに入れて一定温度に保つことで精度を高めるようなものもある。
【0065】
一方で、数十ppm程度の周波数ずれやドリフトを許容しているものもある。この様な場合、本実施形態では、Nフレームずれるのに要する時間として、常に低い値、即ち、Nフレームずれるまでに要する時間が短い状態が表示される。また、外部からの基準信号の周波数ずれ量は少ないが、変動(ドリフト)がある場合、表示される時間は安定せずに変動する。
【0066】
この様に、ゲンロック中に表示される時間を確認することで、ユーザは、長時間撮影してもずれる心配が問題ない、固定的なずれにより短い時間でNフレームずれる可能性がある、ずれは少ないが変動がある、などの情報を容易に確認することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、操作部110を操作することにより、S504,S505で用いるフレーム数Nをユーザが任意に変更することが可能である。CPU106は、ユーザによりNが変更されると、式(5)により、Nフレームずれるまでに要する時間を再度算出し、表示部105に表示する。
【0068】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態においても、ビデオカメラ100の構成は図1、図2に示した構成と同様であり、また、基本的な記録、再生処理についても第1の実施形態と同様である。第3の実施形態では、ゲンロック処理が第1、第2の実施形態とは異なる。
【0069】
図6は、第2の実施形態におけるゲンロック処理を示すフローチャートである。図6の処理は、CPU106が各部を制御することにより実行される。
【0070】
ユーザが操作部110を操作して、ゲンロックモードが設定されると、CPU106は、ループフィルタ203の積分値の初期値として、所定値を設定する(S601)。ここで設定する初期値は、外部からの基準信号が供給されるまでの間、VCXO209を自走で発振させるための値であり、工場出荷時等に設定されてCPU106内部のメモリに保存される。
【0071】
次に、CPU106は、入力端子112に対して外部の基準信号発生装置から基準信号が供給されたかどうかを判別する(S602)。外部からの基準信号が供給されていない場合、CPU106は、S601で設定した初期値をスイッチ204のb端子に出力し、更に、スイッチ204をb端子に接続して初期値をDVCO205に供給する(S609)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S608)。
【0072】
また、外部からの基準信号が供給されていた場合、CPU106は、スイッチ204をa端子に接続し、ループフィルタ203の出力をDVCO205に供給する。また、このとき、位相検出部202によりクロックと外部からの水平同期信号との位相差が検出され、ループフィルタ203のレジスタ225には位相差信号の積分値が蓄積される。そこで、CPU106は、所定のタイミングで定期的にレジスタ225の出力信号(積分値)を取得し、内部のレジスタに保存する(S603)。そして、CPU106は、保存した積分値に基づいて、外部から供給されている基準信号の周波数ずれ量を算出する。CPU106は、この周波数ずれ量に基づいて、T秒(Tは所定値)後における、外部の基準信号により計測した時間とVCXO209からの基準クロックにより計測した時間との誤差(フレーム数)を算出する(S604)。そして、CPU106は、表示制御部104により、算出したフレーム数の情報を表示部105に表示する(S605)。
【0073】
CPU106は、再度、基準信号が入力されているかどうかを検出し(S606)、入力されている場合にはS603に戻る。これにより、外部からの基準信号が入力されている間、CPU106は、周期的に誤差を算出し、表示部105に表示させる。また、外部の基準信号の供給が停止されると、CPU106は、スイッチ204をb端子に接続し、S603にて保存した積分値をDVCO205に出力する(S607)。そして、CPU106は、表示制御部104を制御し、外部からの基準信号が無い旨を示す情報を表示部105に表示する(S608)。
【0074】
次に、S604における算出処理と、S605における表示処理について説明する。周波数ずれをΔf、T秒後における誤差(フレームずれ量)をXとすると、これらの関係式は以下の通りである。
X=Δf×108000×T(放送方式がNTSCの場合)
X=Δf×90000×T(放送方式がPALの場合)…(6)
【0075】
放送方式がNTSCで、2時間経過した際のフレームずれ量Xと周波数ずれ量Δfの様子を図7(b)に示す。図7(b)において、横軸は外部からの基準信号とVCXO209からの基準クロックとの周波数ずれ量の絶対値であり、縦軸は所定時間T(ここでは2時間)経過した際のフレームずれ量を示している。
【0076】
ユーザは、ゲンロック中の表示を確認することにより、指定した時間後のフレームずれ量を容易に確認することができる。そのため、例えば、所定時間後のフレームずれ量を少なくしたい場合には、頻繁にゲンロック処理を行った方がよい、といった判断を行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態では、操作部110を操作することにより、S604,S605で用いる時間Tをユーザが任意に変更することが可能である。CPU106は、ユーザによりNが変更されると、式(6)により、T時間後におけるフレームずれ量を再度算出し、表示部105に表示する。
【0078】
また、第1〜第3の実施形態では、本発明をビデオカメラに適用した場合について説明したが、これ以外にも、例えば外部の基準信号に同期したクロックを生成する装置に対しても同様に本発明を適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器から供給された基準信号を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された基準信号とクロックとの位相差を検出する位相検出手段と、
前記位相検出手段の出力に応じた周波数の前記クロックを発生する発生手段と、
前記位相検出手段の出力に基づいて前記入力手段により入力された基準信号の周波数と前記クロックの周波数との誤差を検出し、前記検出した誤差に基づいて前記基準信号の周波数変化の状態を示す情報を表示装置に表示する制御手段とを備える信号処理装置。
【請求項2】
前記発生手段は、温度補償された発振器からの信号を用いて前記クロックを発生することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記基準信号の周波数変化が安定していると判別した場合に前記位相検出手段の出力信号の値を保存し、前記入力手段に対する基準信号の供給が停止されると、前記位相検出手段の出力にかえて、前記保存した値を前記発生手段に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、所定の間隔で前記位相検出手段の出力信号を取得し、複数の前記取得した位相検出手段の出力信号に基づいて前記基準信号の周波数変化を検出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、電圧制御水晶発振器の発振周波数の変化を示す関数に基づいて前記基準信号の周波数変化を検出することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出した誤差に基づいて、前記クロックにより計測した時間と前記基準信号により計測した時間との差がNフレーム(Nは所定値)ずれるまでに要する時間を示す情報を前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出した誤差に基づいて、T秒(Tは所定値)後における、前記クロックにより計測した時間と前記基準信号により計測した時間との差を示す情報を前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−124975(P2011−124975A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183270(P2010−183270)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】