説明

個片化された電子部品の搬送装置及び搬送方法

【課題】ステージ上に格子状に置かれている個片化された電子部品を、効率よくテーブルの上に搬送して千鳥状に配置し、更にテーブルの上から効率よく搬送することである。
【解決手段】個片化された電子部品の搬送装置のテーブルTAに、複数の電子部品Pのうち市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品Pを収容する第1の収容部S1と、市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品Pを収容する第2の収容部S2とが、隣接して設けられている。また、テーブルTAに2pのピッチで千鳥状に収容された複数の電子部品PのうちX方向に沿う1ライン分(5個)の電子部品Pを、一括して吸着して搬送する搬送機構が設けられている。搬送機構には、1ライン分の電子部品Pを各々吸着する複数の吸着機構が2pのピッチで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個片化された電子部品の搬送装置及び搬送方法に関するものである。特に、基板において格子状に設けられた複数の領域に各々装着された半導体チップ等を樹脂封止することによって封止済基板を形成し、その封止済基板を領域毎に個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用される搬送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5を使用して、複数の電子部品を効率よく製造する目的で従来から実施されている方式の1つである、封止済基板を個片化する方式を説明する。図5(1)は封止済基板がステージに固定された状態を、図5(2)は個片化された電子部品が2つのテーブルに搬送されて配置された状態を、それぞれ示す概略平面図である。なお、本出願書類に含まれるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0003】
封止済基板Mは、プリント基板、リードフレーム等からなる基板と基板の片方の面に形成された封止樹脂とを有する(いずれも図示なし)。また、図5(1)に示されているように、封止済基板Mは、基板に設けられた複数の領域を有し、それらの領域が複数の電子部品P(図5(2)に示された電子部品Pを参照)にそれぞれ相当する。図5(1)においては複数の電子部品に相当する各領域に便宜的に11〜15、21〜25、・・・、81〜85の符号を付し、図5(2)においては複数の電子部品Pに11〜15、21〜25、・・・、81〜85の符号を付している。封止済基板Mの各領域には、それぞれ半導体チップ等のチップ状部品(図示なし)が装着されている。各領域は、仮想線Lによって区切られ、X方向及びY方向における一定のピッチ(中心間間隔)に従って格子状に設けられている。図5においては、各領域の平面形状を正方形として、X方向及びY方向における一定のピッチをpで示している。
【0004】
電子部品の製造工程において、封止済基板Mは、吸着や粘着等の手段によってステージSTに固定されて、回転刃を使用したダイサ等によって仮想線Lに沿って切断(フルカット)される。このことにより、個片化された複数の電子部品(図5(2)の電子部品Pを参照)が製造される。個片化された電子部品は、図5(1)に示されたステージSTの上に格子状に置かれる。そして、それらの電子部品は、吸着治具によって固定され、ステージSTの上から保管用のトレイや次工程で使用されるテーブル(いずれも図示なし)に搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、近年、電子機器に対する低価格化や小型化等の要請から、電子部品が小型化する傾向にある。この傾向に伴い、次の問題が生じている。第1に、吸着治具の先端に設けられた吸着ヘッド同士の間隔が小さくなり、吸着治具の製作が困難になってきた。第2に、電子部品が保管されるトレイや次工程で使用されるテーブルにおいて、電子部品がそれぞれ収納される凹部の内底部の周辺に設けられる斜面部の製作が困難になってきた。この斜面部は、凹部の内底部の周辺において電子部品を案内するために設けられている。なお、これらの問題は、電子部品の平面寸法が一辺3mm以下である場合に顕著である。
【0006】
図5と図6とを参照して、これらの問題に対処すべく行われている、複数の電子部品を搬送して千鳥状に配置する従来の方式を説明する。図6(1)〜(3)は、個片化された複数の電子部品をステージから搬送して、2個のテーブルの上にそれぞれ千鳥状に配置する過程を説明する概略正面図である。
【0007】
ところで、複数の電子部品を「千鳥状に配置する」とは、ある電子部品の斜め上及び斜め下に他の電子部品が存在し、上下左右には他の電子部品が存在しないように、複数の電子部品を配置することをいう。言い換えれば、複数の電子部品を「千鳥状に配置する」とは、市松模様の一の色に相当する位置に複数の電子部品を配置することをいう。そして、「市松模様」とは、本来、「紺と白とを打違えに碁盤縞を並べた文様」を意味する(例えば「広辞苑 第五版」、新村出編、岩波書店、1998年11月11日、P.159)。また、本出願書類に含まれる図において、横方向(X方向)に沿う並びを「行」と呼び、縦方向(Y方向)に沿う並びを「列」と呼ぶことにする。図5(1)のステージSTには、8行×5列の合計40個の電子部品が配置される。
【0008】
図6において、搬送機構PUには、5個の吸着ヘッドH1〜H5が設けられている。吸着ヘッドH1〜H5には、それぞれ吸着管V1〜V5が設けられている。また、吸着管V1〜V5は、それぞれ弁を経由して減圧タンク(いずれも図示なし)に接続されている。減圧タンクと弁と吸着管V1〜V5とは、電子部品を固定するとともにその固定を解除する固定・固定解除機構に含まれる。
【0009】
まず、図6(1)に示された状態から搬送機構PUが下降して、5個の吸着ヘッドH1〜H5のそれぞれによって、ステージST上における個片化された電子部品11〜15を一括して吸着する。そして、搬送機構PUが上昇し、次工程で使用される2個のテーブルのうちのテーブルT1の上に移動し、下降し、吸着管V1、V3、V5において吸着を解除する。これにより、図6(2)に示すように、テーブルT1の上において、2pのピッチを有するようにして電子部品11、13、15が配置される。
【0010】
次に、図6(2)に示すように、搬送機構PUが上昇し図の右方向に移動して、次工程で使用される2個のテーブルのうちのテーブルT2の上まで移動する。そして、搬送機構PUが下降し、吸着管V2、V4において吸着を解除する。これにより、テーブルT2の上において、2pのピッチを有するようにして電子部品12、14が配置される。ここまでの工程によって、図5(2)において各テーブルT1、T2の最もYの正方向寄り(図では上方)の行に電子部品11〜15が配置される。具体的には、テーブルT1には電子部品11、13、15が、テーブルT2には電子部品12、14が、各テーブルT1、T2においてそれぞれ2pのピッチを有するようにして配置される。
【0011】
その後に、2pのピッチを有する吸着ヘッドを有する別の吸着治具(図示なし)が、電子部品11、13、15と、電子部品12、14とを、順次一括して吸着し、トレイや次工程で使用されるテーブルに搬送する。すなわち、まず電子部品11、13、15を一括して吸着して搬送し、次に電子部品12、14を一括して吸着して搬送する。この従来の技術によれば、各テーブルT1、T2の1つの行にそれぞれ配置された3個及び2個の電子部品11、13、15と電子部品12、14との合計5個の電子部品Pを、2回に分けて搬送する。そして、図5(2)に示された場合には、合計40個の電子部品を16回に分けて搬送することになる。したがって、個片化され千鳥状に配置された電子部品を搬送する効率を上げることが困難である。
【0012】
【特許文献1】特開2000−100757号公報(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、ステージの上に格子状に置かれている個片化された電子部品をテーブルの上に搬送して千鳥状に配置し、更にテーブルの上から搬送する際の効率が低いことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、「課題を解決するための手段」と「発明の効果」と「発明を実施するための最良の形態」との説明におけるかっこ内の符号等は、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの符号等は、「図面に示された構成要素に限定して、説明における用語の意義を解釈すること」を意味するものではない。
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明に係る個片化された電子部品の搬送装置は、基板において格子状に設けられた複数の領域に各々装着されたチップを樹脂封止することによって封止済基板(M)を形成し、封止済基板(M)を領域毎に個片化することによって製造された複数の電子部品(P)を搬送する個片化された電子部品の搬送装置であって、封止済基板(M)が個片化された後に、市松模様の各四角形のように配置された複数の電子部品(P)を下面に一括して吸着する固定部材(HA)と、固定部材(HA)に固定された複数の電子部品(P)の吸着を選択的に解除して複数の電子部品(P)を固定されない状態にする固定解除機構(V1〜V5)と、固定部材(HA)の下方に位置することができ複数の電子部品(P)を収容することができるテーブル(TA)と、テーブル(TA)に設けられ複数の電子部品(P)のうち市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品(P)を収容する第1の収容部(S1)と、テーブル(TA)において第1の収容部(S1)に隣接して設けられ複数の電子部品(P)のうち市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品(P)を収容する第2の収容部(S2)と、テーブル(TA)において千鳥状に収容された複数の電子部品(P)のうち市松模様における1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)を一括して吸着して搬送する搬送機構(PU)と、搬送機構(PU)において所定の中心間間隔(2p)で設けられ1ライン分の電子部品(P)を各々吸着する複数の吸着機構(H1〜H5)とを備えるとともに、1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)は等しい中心間間隔(2p)で配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る個片化された電子部品の搬送装置は、上述の搬送装置において、固定部材(HA)とテーブル(TA)とを相対的に移動させる移動機構を備えるとともに、移動機構は、1ライン分の電子部品(P)が奇数個である場合には第1の収容部(S1)及び第2の収容部(S2)に電子部品(P)を収容する期間中に停止しており、1ライン分の電子部品(P)が偶数個である場合には第1の収容部(S1)と第2の収容部(S2)とのいずれか一方に先に電子部品(P)が収容され終わった後に市松模様における他方向(Y方向)に沿って1ライン分の中心間間隔(p)だけ移動することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る個片化された電子部品の搬送装置は、上述の搬送装置において、搬送機構(PU)における所定の中心間間隔(p,2p)は変更可能であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る個片化された電子部品の搬送方法は、基板において格子状に設けられた複数の領域に各々装着されたチップを樹脂封止することによって封止済基板(M)を形成し、封止済基板(M)を領域毎に個片化することによって製造された複数の電子部品(P)を搬送する個片化された電子部品の搬送方法であって、封止済基板(M)が個片化された後に、市松模様の各四角形のように配置された複数の電子部品(P)を固定部材(HA)の下面に一括して吸着する工程と、固定部材(HA)と複数の電子部品(P)を収容することができるテーブル(TA)に設けられた第1の収容部(S1)とを位置合わせする工程と、固定部材(HA)に固定された複数の電子部品(P)の吸着を選択的に解除して複数の電子部品(P)のうち市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品(P)を第1の収容部(S1)に収容する工程と、固定部材(HA)とテーブル(TA)に設けられた第2の収容部(S2)とを位置合わせする工程と、固定部材(HA)に固定された複数の電子部品(P)の吸着を選択的に解除して複数の電子部品(P)のうち市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品(P)を第2の収容部(S2)に収容する工程と、搬送機構(PU)を使用して、テーブル(TA)において千鳥状に収容された複数の電子部品(P)のうち市松模様における1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)を一括して吸着して搬送する工程とを備えるとともに、第1の収容部(S1)と第2の収容部(S2)とは隣接して設けられ、1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)は等しい中心間間隔(2p)で配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る個片化された電子部品の搬送方法は、上述の搬送方法において、固定部材(HA)とテーブル(TA)とを場合に応じて相対的に移動させる工程を備えるとともに、移動させる工程では、1ライン分の電子部品(P)が偶数個である場合には第1の収容部(S1)と第2の収容部(S2)とのいずれか一方に先に電子部品(P)が収容され終わった後に市松模様における他方向(Y方向)に沿って1ライン分の中心間間隔(p)だけ移動することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る個片化された電子部品の搬送方法は、上述の搬送方法において、搬送機構(PU)において所定の中心間間隔(p,2p)で設けられ1ライン分の電子部品(P)を一括して吸着する複数の吸着機構(H1〜H5)におけるその所定の中心間間隔(p,2p)を変更する工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1に、固定部材(HA)によって、個片化された複数の電子部品(P)を一括して吸着して搬送し、テーブル(TA)において千鳥状に収容されるようにして配置する。第2に、テーブル(TA)において1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)を、搬送機構(PU)が一括して吸着して搬送する。したがって、テーブル(TA)に千鳥状に配置された複数の電子部品(P)を、ライン数に等しい回数の動作で搬送することができる。これらによって、個片化された電子部品(P)を搬送する効率が大幅に向上する。
【0022】
また、本発明によれば、テーブル(TA)に千鳥状に収容された複数の電子部品(P)において、1方向(X方向)に沿う1ライン分の個数が偶数である場合と奇数である場合とのいずれにおいても、その1ライン分の電子部品(P)を搬送機構(PU)が一括して吸着して搬送する。したがって、テーブル(TA)に収容された複数の電子部品(P)を、ライン数にほぼ等しい回数の動作で搬送することができるので、個片化され千鳥状に配置された電子部品(P)を搬送する効率が大幅に向上する。
【0023】
また、本発明によれば、搬送機構(PU)が有する複数の吸着機構(H1〜H5)における所定の中心間間隔(p,2p)は変更可能である。したがって、個片化された複数の電子部品(P)の中心間間隔(p)が様々に異なる場合においても、複数の吸着機構(H1〜H5)における中心間間隔(p,2p)を変更することによって、それらの複数の電子部品(P)を搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
個片化された電子部品の搬送装置に、複数の電子部品(P)のうち市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品(P)を収容する第1の収容部(S1)と、市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品(P)を収容する第2の収容部(S2)とが、テーブル(TA)において隣接して設けられている。また、テーブル(TA)において等しい中心間間隔(2p)で千鳥状に収容された複数の電子部品(P)のうち、市松模様における1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)を一括して吸着して搬送する搬送機構(PU)が設けられている。搬送機構(PU)には、所定の中心間間隔(2p)で設けられ1ライン分の電子部品(P)を各々吸着する複数の吸着機構(H1〜H5)が設けられている。1方向(X方向)に沿う1ライン分の電子部品(P)は等しい中心間間隔(2p)で配置されている。
【実施例1】
【0025】
本発明に係る電子部品の搬送装置の実施例1を、図1と図2とを参照して説明する。図1(1)は本実施例に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図1(2)は電子部品が搬送される途中の状態を示す、それぞれ平面図である。図2(1)〜(3)は、千鳥状に配置された複数の電子部品をテーブルから搬送する過程を説明する概略正面図である。本実施例は、図5(1)のステージSTにおいて1行分(1ライン分)に相当する電子部品Pが奇数個である場合を対象としている。
【0026】
図1(1)に示されているように、本実施例に係る電子部品の搬送装置は、図5(1)に示されたステージSTに置かれていた複数の電子部品を一括して吸着して固定する固定部材HAを有する。図5(1)のステージSTにおいて、回転刃を使用したダイサによって切断(個片化)された複数の電子部品は5個/行であって8行だけ並ぶので、合計40個が配置されることになる。
【0027】
固定部材HAは、図のX,Y,Zの各方向に移動可能に設けられている。また、固定部材HAは、その下面に複数の電子部品P(電子部品11〜15、21〜25、・・・、81〜85)を一括して吸着して固定するとともに、それらの固定を選択的に解除する固定・固定解除機構(図示なし)を有する。この固定・固定解除機構は、各電子部品Pに対応して設けられた吸着管と、それらにそれぞれ接続された弁を介して接続された減圧タンクとを有する。
【0028】
また、図1(2)に示されているように、本実施例に係る電子部品の搬送装置には、固定部材HAの下方に位置することができ、固定部材HAから複数の電子部品を受け取る1個のテーブルTAが設けられている。テーブルTAには、2つの収容部である第1の収容部S1と第2の収容部S2とが、図1(2)において破線で示されているように隙間なく隣接して設けられている。各収容部S1,S2には、それぞれ収容されるべき複数の電子部品に対応する凹部(図示なし)が設けられている。図1(2)には、全ての凹部に電子部品Pが収容された状態が示されている。
【0029】
それらの凹部は、第1の収容部S1と第2の収容部S2とのそれぞれにおいて2pのピッチを有するようにして、かつ、第1の収容部S1と第2の収容部S2との全体にわたって千鳥状に(市松模様の一の色に相当する位置に)なるようにして、設けられている。更に、第1の収容部S1と第2の収容部S2とは隙間なく隣接して設けられているので、同じ行において第1の収容部S1と第2の収容部S2との境界をはさんで隣接する2個の電子部品Pの間のピッチも2pになる。これらのことによって、第1の収容部S1と第2の収容部S2との全体において、複数の電子部品Pがそれぞれ収容される凹部が2pのピッチで千鳥状に設けられていることになる。
【0030】
以下、本実施例に係る電子部品の搬送装置の動作を図1と図2とを参照して説明する。まず、固定部材HAが、図5(1)に示されたステージSTに置かれていた複数の電子部品Pを一括して吸着して、固定部材HAの下面に固定する。この時点で、図1(1)に示されているように、固定部材HAの下面には電子部品11〜15、21〜25、・・・、81〜85が、X方向とY方向とにおいてpのピッチで、吸着して固定されている。詳細に説明すれば、5個の電子部品11〜15が1つの行に並び、以下同様に5個の電子部品21〜25、・・・、5個の電子部品81〜85がそれぞれ1つの行に並んで、吸着されて固定されている。
【0031】
次に、固定部材HAがテーブルTAにおける第1の収容部S1の上方に移動して、各電子部品Pと第1の収容部S1において各電子部品Pに対応して設けられた凹部とを位置合わせした後に下降する。そして、後述する一部の電子部品Pに対する吸着を解除して、それらの電子部品Pを第1の収容部S1に2pのピッチで配置する。吸着が解除されて第1の収容部S1に配置される電子部品は、電子部品11、13、15、22、24、〜、71、73、75、82、84である。
【0032】
次に、固定部材HAがテーブルTAにおける第2の収容部S2の上方に移動して、各電子部品Pと第2の収容部S2において各電子部品Pに対応して設けられた凹部とを位置合わせした後に下降する。この移動において、固定部材HAはY方向には移動しない。そして、後述する一部の電子部品Pに対する吸着を解除して、それらの電子部品Pを第2の収容部S2に2pのピッチで配置する。吸着が解除されて第2の収容部S2に配置される電子部品は、電子部品12、14、21、23、25、〜、72、74、81、83、85である。ここまでの工程により、図1(2)に示されているように、テーブルTAにおいて電子部品Pが、各行R1、〜、R8において5個ずつ配置されるとともに、X方向とY方向とにおいて2pのピッチで千鳥状に配置されたことになる。
【0033】
次に、図2(1)に示されているように、pのピッチを有する吸着ヘッドH1〜H5を有する搬送機構PUにおいて、ピッチを2pに変更する。ここで、搬送装置においてピックアップユニットのピッチを可変にする公知の技術を採用して、吸着ヘッドH1〜H5のピッチを変更可能であるようにすることができる(例えば、特開2004−039706号公報参照)。
【0034】
次に、図2(2)に示されているように搬送機構PUが下降する。そして、図2(3)に示されているように、X方向に沿って並ぶ1行分(行R1の1ライン分)の電子部品Pを、すなわち電子部品11、13、15、12、14を吸着ヘッドH1〜H5がそれぞれ吸着した後に、搬送機構PUが上昇する。
【0035】
次に、搬送機構PUは、トレイや次工程で使用されるテーブルに5個の電子部品Pを搬送する。搬送機構PUはこの動作を合計8回繰り返すことによって、テーブルTAに配置された40個の電子部品P(図1(2)参照)をすべて搬送する。
【0036】
ここまで説明したように、本実施例によれば、第1に、固定部材HAによって、個片化された複数の電子部品Pを一括して吸着して搬送し、テーブルTAにおいて千鳥状に収容されるようにして配置する。第2に、1行分(1ライン分)に相当する電子部品Pが奇数個である場合において、従来技術の動作回数に比較して半分の回数の動作で、千鳥配置された電子部品Pを搬送する。これらによって、個片化された電子部品Pを搬送する効率を大幅に向上させることができる。
【実施例2】
【0037】
本発明に係る電子部品の搬送装置の実施例2を、図3と図4とを参照して説明する。図3(1)は本実施例に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図3(2)、(3)は電子部品が搬送される途中に発生する不具合を示す、それぞれ平面図である。図4(1)は本実施例に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図4(2)、(3)は電子部品が搬送される途中の状態を示す、それぞれ平面図である。本実施例は、図5(1)のステージSTにおいて1行分(1ライン分)に相当する電子部品Pが偶数個である場合を対象としている。
【0038】
図3(1)に示されているように、固定部材HAは、4個/行であって8行だけ並んでいる32個の電子部品Pを、一括して吸着して固定する。ここで、1個のテーブルTAに2pのピッチで電子部品Pを千鳥状に配置しようして、図1について説明した動作と同様の動作を行った場合には、次の2つの不具合が発生する。
【0039】
第1の不具合は、図3(2)の行R1、行R3、・・・において電子部品11、13、12、14、31、33、32、34、・・・を2pのピッチで配置した場合には、行R2、R4、・・・の「X」と記載された位置において、2個の電子部品Pが重なって配置されることである。例えば、行R2の「X」と記載された位置において、電子部品24と電子部品21とが重なってしまう。第2の不具合は、第1の不具合を回避しようとして、行R2、・・・において電子部品22、24、21、23、・・・を2pのピッチで配置した場合には、行R1、R3、・・・における破線の正方形が記載された位置において電子部品Pが配置されないことである。
【0040】
これらの不具合を解消するための搬送装置の動作を、図4を参照して説明する。まず、固定部材HAが、ステージ(図5(1)に示されたステージSTを参照)に置かれていた複数の電子部品Pを一括して吸着して、固定部材HAの下面に固定する。この時点で、図4(1)に示されているように、固定部材HAの下面には電子部品11〜14、21〜24、・・・、81〜84が、X方向とY方向とにおいてpのピッチで、吸着して固定されている。
【0041】
次に、固定部材HAが、テーブルTAにおける第1の収容部S1の上方に移動し、各電子部品PとテーブルTAにおいて各電子部品Pに対応して設けられた凹部とを位置合わせした後に下降する。そして、後述する一部の電子部品Pに対する吸着を解除して、それらの電子部品Pを第1の収容部S1に2pのピッチで配置する。図4(2)に示されているように、吸着が解除されて第1の収容部S1に配置される電子部品は、電子部品11、13、22、24、〜、71、73、82、84である。この時点で、固定部材HA(図4(1)を参照)には、電子部品12、14、21、23、〜、72、74、81、83が引き続き固定されている。これらの電子部品は、図4(2)において正方形で囲まれていない符号によって便宜的に示されている。
【0042】
次に、図4(2)に示されている状態から、固定部材HA(図4(1)参照)とテーブルTAとが、Y方向のピッチpに等しい距離だけ、Y方向に相対的に移動する。具体的には、固定部材に引き続き固定されている電子部品12、14、・・・が、本来の対応する行よりも図において1行分だけ下方(又は上方)に位置するように移動する。図4(2)では、電子部品12、14が行R2に相当する位置に移動する。この移動は、モータ等の移動機構によって行われる。また、固定部材HAとテーブルTAとのいずれか一方がY方向に移動してもよく、双方がY方向に移動してもよい。
【0043】
次に、固定部材HAが、テーブルTAにおける第2の収容部S2の上方に移動し、各電子部品PとテーブルTAにおいて各電子部品Pに対応して設けられた凹部とを位置合わせした後に下降する。そして、後述する一部の電子部品Pに対する吸着を解除して、それらの電子部品Pを第2の収容部S2に2pのピッチで配置する。吸着が解除されて第2の収容部S2に配置される電子部品は、電子部品12、14、21、23、〜、72、74、81、83である。これにより、例えば電子部品12、14が、図4(2)で破線の矢印によって示したように移動して第2の収容部S2に配置される。これらの動作によって、最終的には、電子部品Pは図4(3)に示されているように配置される。したがって、電子部品Pは、上端の行であるR1と下端の行(図示なし)とにおいてはそれぞれ2個、残りの行であるR2、R3、・・・においてはそれぞれ4個が配置されるとともに、テーブルTA全体においては9行にわたって2pのピッチで千鳥状に配置されたことになる。
【0044】
次に、図2について説明した場合と同様にして、テーブルTAに千鳥状に配置された電子部品Pを搬送する。具体的には、搬送機構PU(図2(2)参照)によって、1回の動作あたり1行分(1ライン分)の電子部品P(2個又は4個)を搬送する。そして、この動作を合計9回繰り返すことによって、テーブルTAに配置された32個の電子部品Pをすべて搬送する。
【0045】
ここまで説明したように、本実施例によれば、第1に、実施例1と同様に固定部材HAによって、個片化された複数の電子部品Pを一括して吸着して搬送し、テーブルTAにおいて千鳥状に収容されるようにして配置する。第2に、1行分(1ライン分)に相当する電子部品Pが偶数個である場合において、従来技術の動作回数に比較してほぼ半分の回数の動作で、千鳥配置された電子部品Pを搬送する。これらによって、個片化された電子部品Pを搬送する効率を大幅に向上させることができる。
【0046】
なお、各実施例に関する説明では、図5(1)に示されたステージSTから、固定部材HAが複数の電子部品を一括して吸着して搬送することとした。これに限らず、ステージST自体を反転させて、そのステージSTを第1の収容部S1と第2の収容部S2との上まで移動させてもよい。
【0047】
また、吸着ヘッドH1〜H5のピッチを変更可能であるようにするには、異なるピッチを有する複数の吸着ヘッドをそれぞれ備えた複数種類の搬送機構PUを準備して、電子部品のピッチに応じて搬送機構PUを選択して使用してもよい。これにより、複数の吸着ヘッドのピッチが変更可能になる。
【0048】
また、基板に設けられた複数の領域のピッチ、すなわち個片化された複数の電子部品のピッチは、X方向とY方向とにおいていずれもpであることとした。これに限らず、複数の電子部品のピッチがX方向とY方向とにおいて異なる場合においても、本発明を適用することができる。
【0049】
また、封止済基板Mを切断(個片化)する工程においては、回転刃を使用する切断装置(ダイサ)を使用することとした。これに限らず、レーザ光、ウォータージェット、ワイヤソー、バンドソー等による切断装置を使用してもよい。加えて、仮想線Lにおいて封止済基板Mを切削して溝を形成し(ハーフカットし)、その後に封止済基板Mに外力を加えて各電子部品に分離することもできる。
【0050】
また、切断線に相当する仮想線Lが直線であって、個片化された電子部品Pの平面形状が正方形であることとした。これに限らず、個片化された電子部品Pの平面形状は長方形であってもよい。更に、切断線に相当する仮想線Lに曲線又は折れ線が含まれていてもよい。例えば、平面形状の外縁に曲線又は折れ線が含まれている電子部品(例えば、ある種のメモリカード)を製造する場合においても、本発明を適用することができる。
【0051】
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(1)は実施例1に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図1(2)は電子部品が搬送される途中の状態を示す、それぞれ平面図である。
【図2】図2(1)〜(3)は、千鳥状に配置された複数の電子部品をテーブルから搬送する過程を説明する概略正面図である。
【図3】図3(1)は実施例2に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図3(2)、(3)は電子部品が搬送される途中に発生する不具合を示す、それぞれ平面図である。
【図4】図4(1)は実施例2に係る搬送装置の搬送対象である電子部品の当初の状態を上方から透視して示し、図4(2)、(3)は電子部品が搬送される途中の状態を示す、それぞれ平面図である。
【図5】図5(1)は、従来技術において、封止済基板がステージに固定された状態を、図5(2)は個片化された電子部品が2つのテーブルに搬送されて配置された状態を、それぞれ示す概略平面図である。
【図6】図6(1)〜(3)は、従来技術において、個片化された電子部品をステージから搬送して2個のテーブルの上にそれぞれ千鳥状に配置する過程を説明する概略正面図である。
【符号の説明】
【0053】
11〜15、21〜25、・・・、81〜85 電子部品
H1〜H5 吸着ヘッド(吸着機構)
HA 固定部材
L 仮想線
M 封止済基板
P 電子部品
PU 搬送機構
R1〜R8 行
S1 第1の収容部
S2 第2の収容部
ST ステージ
TA テーブル
V1〜V5 固定・固定解除機構(固定解除機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板において格子状に設けられた複数の領域に各々装着されたチップを樹脂封止することによって封止済基板を形成し、前記封止済基板を前記領域毎に個片化することによって製造された複数の電子部品を搬送する個片化された電子部品の搬送装置であって、
前記封止済基板が個片化された後に、市松模様の各四角形のように配置された前記複数の電子部品を下面に一括して吸着する固定部材と、
前記固定部材に固定された複数の電子部品の吸着を選択的に解除して前記複数の電子部品を固定されない状態にする固定解除機構と、
前記固定部材の下方に位置することができ前記複数の電子部品を収容することができるテーブルと、
前記テーブルに設けられ前記複数の電子部品のうち前記市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品を収容する第1の収容部と、
前記テーブルにおいて前記第1の収容部に隣接して設けられ前記複数の電子部品のうち前記市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品を収容する第2の収容部と、
前記テーブルにおいて千鳥状に収容された複数の電子部品のうち前記市松模様における1方向に沿う1ライン分の電子部品を一括して吸着して搬送する搬送機構と、
前記搬送機構において所定の中心間間隔で設けられ前記1ライン分の電子部品を各々吸着する複数の吸着機構とを備えるとともに、
前記1方向に沿う1ライン分の電子部品は等しい中心間間隔で配置されていることを特徴とする個片化された電子部品の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の個片化された電子部品の搬送装置において、
前記固定部材と前記テーブルとを相対的に移動させる移動機構を備えるとともに、
前記移動機構は、前記1ライン分の電子部品が奇数個である場合には前記第1の収容部及び前記第2の収容部に前記電子部品を収容する期間中に停止しており、前記1ライン分の電子部品が偶数個である場合には前記第1の収容部と前記第2の収容部とのいずれか一方に先に前記電子部品が収容され終わった後に前記市松模様における他方向に沿って1ライン分の中心間間隔だけ移動することを特徴とする個片化された電子部品の搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の個片化された電子部品の搬送装置において、
前記搬送機構における前記所定の中心間間隔は変更可能であることを特徴とする個片化された電子部品の搬送装置。
【請求項4】
基板において格子状に設けられた複数の領域に各々装着されたチップを樹脂封止することによって封止済基板を形成し、前記封止済基板を前記領域毎に個片化することによって製造された複数の電子部品を搬送する個片化された電子部品の搬送方法であって、
前記封止済基板が個片化された後に、市松模様の各四角形のように配置された前記複数の電子部品を固定部材の下面に一括して吸着する工程と、
前記固定部材と前記複数の電子部品を収容することができるテーブルに設けられた第1の収容部とを位置合わせする工程と、
前記固定部材に固定された複数の電子部品の吸着を選択的に解除して前記複数の電子部品のうち前記市松模様の一の色に相当する位置にある電子部品を前記第1の収容部に収容する工程と、
前記固定部材と前記テーブルに設けられた第2の収容部とを位置合わせする工程と、
前記固定部材に固定された複数の電子部品の吸着を選択的に解除して前記複数の電子部品のうち前記市松模様の他の色に相当する位置にある電子部品を前記第2の収容部に収容する工程と、
搬送機構を使用して、前記テーブルにおいて千鳥状に収容された複数の電子部品のうち前記市松模様における1方向に沿う1ライン分の電子部品を一括して吸着して搬送する工程とを備えるとともに、
前記第1の収容部と前記第2の収容部とは隣接して設けられ、
前記1方向に沿う1ライン分の電子部品は等しい中心間間隔で配置されていることを特徴とする個片化された電子部品の搬送方法。
【請求項5】
請求項4記載の個片化された電子部品の搬送方法において、
前記固定部材と前記テーブルとを場合に応じて相対的に移動させる工程を備えるとともに、
前記移動させる工程では、前記1ライン分の電子部品が偶数個である場合には前記第1の収容部と前記第2の収容部とのいずれか一方に先に前記電子部品が収容され終わった後に前記市松模様における他方向に沿って1ライン分の中心間間隔だけ移動することを特徴とする個片化された電子部品の搬送方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の個片化された電子部品の搬送方法において、
前記搬送機構において所定の中心間間隔で設けられ前記1ライン分の電子部品を一括して吸着する複数の吸着機構における前記所定の中心間間隔を変更する工程を備えることを特徴とする個片化された電子部品の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−135259(P2009−135259A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309905(P2007−309905)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】