説明

側突荷重伝達構造

【課題】側面衝突時の荷重伝達部材の下降を抑制し、該荷重伝達部材を通じてより多くの側突荷重がトンネル部に伝達されるようにし、側突荷重に対する荷重伝達経路を確実に確保することを目的とする。
【解決手段】側面衝突時の側突荷重Fにおける下向きの荷重成分Fdが荷重伝達部材28に作用しても、下降抑制手段42により荷重伝達部材28の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少ない。従って、より多くの側突荷重Fが荷重伝達部材28を通じてトンネル部22に伝達されるので、側面衝突に対する車体剛性が高く、側面衝突して来た相手車輌44を車幅方向へ押し返すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時に車体に加わる荷重を、ピラーからシート骨格を通じてフロアパネルのトンネル部に伝達して受け止めるようにした側突荷重伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
側面衝突時に車体に加わる荷重を受け止める構造として、シートに設けた荷重方向変換部材により側突荷重をトンネルに伝達させ、その際荷重方向変換部材とピラーとが嵌合するようにしたものが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−130446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例は、側面衝突時にシートの車幅方向外側(衝突側)が上方へ持ちあがることを抑制しようとしたものであり、荷重伝達部材の衝突側が下降することについては、何ら示唆されていない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、側面衝突時の荷重伝達部材の下降を抑制し、該荷重伝達部材を通じてより多くの側突荷重がトンネル部に伝達されるようにし、荷重伝達経路を確実に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、キャビンに配設された車輌用シートと、前記キャビン内に上方に突出して設けられ車体の前後方向に延びるトンネル部と、前記車輌用シートの下側に設けられ側面衝突時に車体側部に加わる側突荷重を荷重受け部により受けて前記トンネル部に伝達させるように構成された荷重伝達部材と、前記側突荷重のうち下向きの荷重成分による前記荷重伝達部材の下降を抑制する下降抑制手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の側突荷重伝達構造では、側面衝突時の側突荷重に下向きの荷重成分が生じ、該荷重成分が荷重伝達部材に作用しても、下降抑制手段により荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少ない。従って、より多くの側突荷重が荷重伝達部材を通じてトンネル部に伝達される。
【0007】
即ち、衝突して来た相手車輌からの側突荷重を、車体側部だけでなく、トンネル部においても受け止めるので、側突荷重に対する荷重伝達経路が確実に確保されており、該相手車輌を車幅方向へ押し返す(相手車輌に十分な反力を与える)ことができる。このため、車体側部のキャビン内への侵入が少ない。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の側突荷重伝達構造において、前記下降抑制手段は、前記荷重受け部とは異なる位置に設けられていることを特徴としている。
【0009】
従来のように、側面衝突時に車体側部と荷重伝達部材の荷重受け部とを直接的に係合させるようにしたのでは、車体側部と荷重受け部とが正しく係合する極く限られた衝突条件のときでなければ、荷重伝達部材の動きを抑制することができないが、請求項2に記載の側突荷重伝達構造では、下降抑制手段が荷重伝達部材における荷重受け部とは異なる位置に設けられているので、車体側部と荷重受け部との当たり方に依存することなく、荷重伝達部材の下降を抑制することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造において、前記下降抑制手段は、前記荷重伝達部材の下側に設けられた支持部材であることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の側突荷重伝達構造では、側突荷重のうち下向きの荷重成分が荷重伝達部材に作用すると、支持部材により該荷重伝達部材が支持され、該荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少ない。従って、より多くの側突荷重が荷重伝達部材を通じてトンネル部に伝達される。
【0012】
荷重伝達部材の下側に支持部材を設けることで、該荷重伝達部材の位置ずれを抑制しているので、低コストで側突荷重に対する荷重伝達経路を確保することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載の側突荷重伝達構造において、前記車体幅方向外側に位置し前記車輌用シートを車輌前後方向にスライド可能に支持するシートレールと前記荷重伝達部材との間に配設されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の側突荷重伝達構造では、側突荷重のうち下向きの荷重成分が荷重伝達部材に作用すると、荷重伝達部材とシートレールとの間に配設された支持部材により該荷重伝達部材が支持され、下向きの荷重成分は、支持部材及びシートレールを通じてフロアパネルにより伝達され、受け止められる。これにより荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少なくなり、より多くの側突荷重がトンネル部に伝達される。
【0015】
また、支持部材は、フロアパネルに取り付けられるのではなく、荷重伝達部材とシートレールとの間に配設されるので、シートのユニットとして構成できる。このため車体に対するシートの組付け性は良好である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の側突荷重伝達構造において、前記支持部材は、前記荷重伝達部材に一体的に設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の側突荷重伝達構造では、支持部材が荷重伝達部材に一体的に設けられているので、シートユニットの組立て性は従来と変わらず良好である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造において、前記下降抑制手段は、前記下向きの荷重成分が該荷重伝達部材に作用した際に、前記車体側部へ上方から係合するように前記荷重伝達部材に設けられた係合部であることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の側突荷重伝達構造では、側面衝突発生前は、荷重伝達部材の係合部と車体側部とは接触しておらず、側面衝突により車体側部がキャビン内部側に変形し、側突荷重のうち下向きの荷重成分が荷重伝達部材に作用すると、該荷重伝達部材の係合部が車体側部に上方から係合する。すると、車体側部から荷重伝達部材に作用した下向きの荷重成分は、該荷重伝達部材の係合部を通じて再び車体側部に作用し、結局該車体側部が該荷重成分を受け持つことになる。
【0020】
これによって、荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少なくなり、より多くの側突荷重がトンネル部に伝達される。
【0021】
なお、荷重伝達部材の係合部は、シートの前後位置調整及び高さ調整がどのようになされていても、側面部衝突発生時には車体側部と係合できるようになっていることが望ましい。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造において、前記下降抑制手段は、前記車体側部の前記キャビン側に設けられたストッパ部と、前記荷重伝達部材に設けられ前記側面衝突時に前記車体側部が変形して前記ストッパ部が前記キャビン内に侵入した際に該ストッパ部へ上方から係合する係合部とを有することを特徴としている。
【0023】
請求項7に記載の側突荷重伝達構造では、側面衝突により側突荷重のうち下向きの荷重成分が荷重伝達部材に作用して、該荷重伝達部材が一定量下降すると、該荷重伝達部材の係合部が車体側部のストッパ部に上方から係合し、互いに支え合う状態となる。
【0024】
これによって、荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少なくなり、より多くの側突荷重がトンネル部に伝達される。
【0025】
なお、荷重伝達部材の係合部は、シートの前後位置調整及び高さ調整がどのようになされていても、側面部衝突発生時にはストッパ部と係合できるようになっていることが望ましい。例えば、車体前後方向におけるストッパ部の範囲は、シートの前後移動に伴って荷重伝達部材の係合部が移動する範囲とし、シートの高さは荷重伝達部材とは無関係に調整できるようにすることが望ましい。
【0026】
請求項8の発明は、請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造において、前記下降抑制手段は、前記車体側部に設けられ前記側面衝突時に前記荷重伝達部材の前記荷重受け部と当接すると共に該荷重受け部と係合するように変形する変形係合部材であることを特徴としている。
【0027】
請求項8に記載の側突荷重伝達構造では、側面衝突時に車体側部が変形して変形係合部材が荷重伝達部材の荷重受け部に当接すると、変形係合部材が荷重受け部からの反力により変形し、荷重受け部が該変形係合部材にくい込んで互いに係合した状態となる。
【0028】
これによって、荷重伝達部材の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材の位置ずれが少なくなり、より多くの側突荷重がトンネル部に伝達される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明の側突荷重伝達構造によれば、側面衝突時の荷重伝達部材の下降を抑制し、該荷重伝達部材を通じてより多くの側突荷重がトンネル部に伝達されるようにでき、荷重伝達経路を確実に確保できる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施の形態]
図1において、車体10は、フロアパネル12と、該フロアパネル12の車体側部に配設されたロッカー14と、該ロッカー14から車体上方向に立設されたピラー16(例えば、センターピラー)と、車体側部のアウタパネル18とを有し、車体10におけるフロアパネル12の上方空間がキャビン20とされている。
【0031】
フロアパネル12の車体幅方向略中央には、キャビン20内に上方に突出して設けられ車体10の前後方向に延びるトンネル部22が形成され、下面には、例えば車体前後方向に延びるフロアアンダリインフォースメント24が設けられている。
【0032】
本実施の形態に係る側突荷重伝達構造S1は、キャビン20内(例えば、フロアパネル12上)に配設された車輌用シート26(以下、単に「シート26」という。図示されているのはシート骨格である。)と、トンネル部22と、シート26に設けられ側面衝突時に例えばピラー16(車体側部)に加わる側突荷重F(図2)をトンネル部22に伝達させるように構成された荷重伝達部材28とを有している。
【0033】
シート26は、フロアパネル12上の例えばピラー16とトンネル部22の間に配設され、フロアパネル12上のブラケット30に一対設けられたシートレール32,34に沿って車体前後方向に移動可能な一対の脚部36に取り付けられている。これによって、シート26は、所定範囲内で車体前後方向に位置調整可能に構成されている。なお、シート26は、座面高さが調整可能な構成であってもよい。また、シート26におけるシートバック38の支持軸40は、荷重伝達部材28の上方に位置している。
【0034】
図1に示されるように、荷重伝達部材28は、例えばパイプ状の部材であって、シート26とシートレール32,34との間となる脚部36に車体幅方向と平行に、即ち水平に固定され、例えば外側端部である荷重受け部28Aと内側端部28Bとが夫々脚部36から突出するように配置されている。荷重受け部28A及び内側端部28Bは、夫々例えば拡径されてフランジ状に形成され、通常時(側突前の状態)はピラー16及びトンネル部22と夫々離間している。荷重受け部28A及び内側端部28Bの脚部36からの突出量は、シート26とピラー16及びトンネル部22との間隔や、側面衝突時のピラー16の変形許容量等によって定められるため、図示のものには限られない。
【0035】
荷重伝達部材28の荷重受け部28Aとピラー16側のシートレール32との間には、該荷重伝達部材28の下面に、側面衝突時の側突荷重F(図2を参照)のうち下向きの荷重成分Fdによる荷重伝達部材28の下降を抑制する支持部材42(下降抑制手段)が、該荷重伝達部材28に例えば溶接により一体的に形成されている。
【0036】
なお、側突荷重Fにおける下向きの荷重成分Fdが特に大きくなるのは、図2に示されるように、車体10におけるシート26の取付け位置が低いセダン型等の一般乗用車に対して、バンパー44Aの取付け位置が高いSUV車やRV車のような相手車輌44が側面衝突してきた場合である。
【0037】
支持部材42は、下向きの荷重成分Fdに耐え得る程度の強度を有する、例えばブロック状の部材であって、その車体幅方向位置は、例えばシートレール32よりもピラー16寄りである。これは、図2に示されるように、側面衝突時にピラー16により荷重伝達部材28が車体内側に押し込まれ、内側端部28Bがトンネル部22に当接したときに、支持部材42がシートレール32上に乗るようにするためである。なお、支持部材42は、フロアパネル12やブラケット30と当たってもよい。
【0038】
側突時の荷重伝達部材28の下降量を少なくするためには、通常時における支持部材42とシートレール32との間隔は、なるべく少ない方が望ましい。但し、シート26の前後位置調整時の摩擦を考慮すると、初めから当接しているよりも、若干の初期隙間があった方がよい。
【0039】
シート26に座面高さの調整機能がある場合、シート26を上下動させても荷重伝達部材28は上下動しない(高さ調整は荷重伝達部材28とは無関係に行われる)ことが望ましい。このため、座面高さの調節機能は、例えば荷重伝達部材28が取り付けられた脚部36の位置と、シート26との間の位置に設ける。
【0040】
ピラー16のうち、荷重伝達部材28の荷重受け部28Aの正面よりも若干斜め上方となる位置には、相手車輌44による側面衝突時にピラー16が車体内側に変形したときに該荷重受け部28Aと当接する、例えばブロック状の当接部46(例えば、リトラクターカバー)が設けられている。
【0041】
なお、当接部46は、例えばシートベルトのリトラクターカバーのようなものであってもよく、またあえて当接部46を設けなくても、側面衝突時にピラー16の一部が荷重受け部28Aに当接し、側突荷重Fが荷重伝達部材28に伝達されるようになっていればよい。
(作用)
図2において、シート26よりも高い位置にバンパー44Aを有する相手車輌44が、側突荷重伝達構造S1を有する車体10のピラー16の位置に側面衝突すると、該ピラー16は、衝突位置から下側の部分が比較的強固なロッカー14付近を支点にして車体内部に倒れ込むように屈曲変形する。これによって、ピラー16の当接部46が斜め下を向いた状態で荷重伝達部材28に接近して行き、荷重受け部28Aの斜め上方から該荷重伝達部材28に当接する。このとき荷重受け部28Aに対して斜め下方に作用する側突荷重Fは、下向きの荷重成分Fdと横向きの荷重成分Fhとに分解することができる。
【0042】
荷重伝達部材28の荷重受け部28Aは、該下向きの荷重成分Fdによって下側に押されるが、このとき支持部材42は、シートレール32との間の初期隙間の分だけ下降したところで該シートレール32の上に当接し、該シートレール32が取り付けられているブラケット30及びフロアパネル12によって支持された状態となる。
【0043】
これによって、荷重伝達部材28のそれ以上の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材28の位置ずれが少なく、該荷重伝達部材28はほとんど水平状態を維持したまま、横向きの荷重成分Fhによって車体内側に押し込まれ、内側端部28Bがトンネル部22に当接する。これで、荷重伝達経路が確保されるので、横向きの荷重成分Fhは、荷重伝達部材28を通じてトンネル部22に伝達可能な状態となり、ピラー16は、該トンネル部22及び荷重伝達部材28によって支えられ補強された状態となる。
【0044】
このように、側突荷重伝達構造S1を有する車体10では、側突荷重に対する荷重伝達経路が確実に確保されており、衝突して来た相手車輌44を車幅方向へ押し返す(相手車輌44に対して十分な反力を与える)ことができる。このため、ピラー16のキャビン20内への侵入が少ない。
【0045】
従来のように、側面衝突時に車体側部と荷重伝達部材の荷重受け部とを直接的に係合させるようにしたのでは、車体側部と荷重受け部とが正しく係合する極く限られた衝突条件のときでなければ、荷重伝達部材の動きを抑制することができないが、本実施形態に係る側突荷重伝達構造S1では、支持部材42が荷重伝達部材28における荷重受け部28Aとは異なる位置に設けられているので、ピラー16と荷重受け部28Aとの当たり方に依存することなく、荷重伝達部材28の下降を抑制することができる。
【0046】
なお、シート26がドア(図示せず)の内側にあり、該ドアに対して相手車輌44が側面衝突した場合には、該ドアが荷重伝達部材28及びトンネル部22によって支持され、これによって該ドアのキャビン20内への侵入が阻止される。
【0047】
支持部材42は、荷重伝達部材28の下側に、荷重伝達部材28と一体的に設けられているので、低コストであり、また、シート26のユニットとして構成できるので、シート26の組立て性及び車体10に対するシート26の組付け性が良好である。
[第2の実施の形態]
図3において、本実施の形態に係る側突荷重伝達構造S2は、下降抑制手段として、ピラー16(車体側部)のキャビン20側に設けられたストッパ部50(例えば、リトラクターカバー)と、荷重伝達部材28に設けられ側面衝突時にピラー16が変形してストッパ部50がキャビン20内に侵入した際に該ストッパ部50へ、例えば上方側からのみ係合する係合部48とを有している。
【0048】
ストッパ部50は、ピラー16のうち、荷重伝達部材28の荷重受け部28Aの略正面となる位置に、例えばキャビン20側に突出して設けられている。なお、ストッパ部50は、荷重伝達部材28の係合部48と係合可能であればよいので、キャビン20側に突出しているものに限られず、例えば車体前後方向と平行に設けられた板状体や棒状体であってもよい。
【0049】
荷重伝達部材28の係合部48は、シート26の前後位置調整がどのようになされていても、側面部衝突発生時には車体側部と係合できるようになっていることが望ましいので、車体前後方向におけるストッパ部50の範囲は、シート26の前後移動に伴って荷重伝達部材28の係合部48が移動する範囲とされる。従って、シート26の前後位置調整に伴う荷重伝達部材28の移動範囲が、例えばドア(図示せず)からピラー16までの範囲にわたる場合には、ピラー16だけでなく該ドアの内面にもストッパ部50を設けることが望ましい。
【0050】
係合部48は、例えば荷重伝達部材28の荷重受け部28A付近から上側に立設されると共に、先端48Aが荷重受け部28Aよりもピラー16側に突出したフック状部材であって、荷重伝達部材28に例えば一体的に設けられている。
【0051】
側突荷重伝達構造S2では、通常時(側面衝突発生前)は、荷重伝達部材28の係合部48とピラー16のストッパ部50とは接触しておらず、側面衝突により下向きの荷重成分Fdが荷重伝達部材28に作用した際に、ピラー16(車体側部)のストッパ部50へ、係合部48が、例えば上方からのみ係合するようになっている。
【0052】
その他の部分は、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
(作用)
図4において、相手車輌44が、側突荷重伝達構造S2を有する車体10のピラー16の位置に側面衝突すると、屈曲変形したピラー16のストッパ部50が斜め下を向いた状態で荷重伝達部材28に接近して行き、荷重受け部28Aの斜め上方から該荷重伝達部材28に当接する。
【0053】
荷重伝達部材28の荷重受け部28Aは、側突荷重Fの下向きの荷重成分Fdによって下側に押されるが、このとき係合部48がストッパ部50へ上方から係合するので、ストッパ部50と荷重伝達部材28とが互いに支え合う状態となる。
【0054】
これによって、荷重伝達部材28のそれ以上の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材28の位置ずれが少なく、該荷重伝達部材28はほとんど水平状態を維持したまま、横向きの荷重成分Fhによって車体内側に押し込まれ、内側端部28Bがトンネル部22に当接する。これで荷重伝達経路が確保されるので、横向きの荷重成分Fhは、荷重伝達部材28を通じてトンネル部22に伝達可能な状態となり、ピラー16は、該トンネル部22及び荷重伝達部材28によって支えられ補強された状態となる。
[第3の実施の形態]
図5及び図6において、本実施の形態に係る側突荷重伝達構造S3では、ピラー16(車体側部)のキャビン20側に例えば板状の変形係合部材52が設けられ、荷重伝達部材28に第1実施形態と同様の支持部材42が設けられている。側面衝突時に変形係合部材52が当たる荷重伝達部材28の荷重受け部28Aは、該荷重伝達部材28の直径よりも大きく広がるように例えば傾斜状に形成されている。
【0055】
変形係合部材52は、車体幅方向に板厚を有すると共に、車体上下方向に幅を有し、例えばピラー16内に取り付けられたシートベルト56のリトラクター54に被せられるようにして、該ピラー16にスポット溶接されている。
【0056】
変形係合部材52の高さ位置は、荷重伝達部材28の荷重受け部28Aの正面又は斜め上方であり、通常時(側面衝突前)は荷重受け部28Aと変形係合部材52とは離間している。
【0057】
図5及び図6に示されるように、シート26におけるシートバック38の支持軸40は、荷重伝達部材28の上方に位置している。
【0058】
なお、図5では、荷重伝達部材28が脚部36と離れて描かれているが、これは荷重伝達部材28の支持部42を示すために脚部36を破断して示しているためである。
【0059】
その他の部分は、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
(作用)
図5、図7及び図8において、相手車輌44が、側突荷重伝達構造S3を有する車体10のピラー16の位置に側面衝突すると、屈曲変形したピラー16の変形係合部材52が斜め下を向いた状態で荷重伝達部材28に接近して行き、荷重受け部28Aの斜め上方から該荷重伝達部材28に当接する。変形係合部材52は板状体であるので、荷重受け部28Aからの反力により該荷重受け部28Aの端面形状に沿って変形し、該荷重受け部28Aが変形係合部材52にくい込んだ状態となる。
【0060】
一方、荷重受け部28Aは、側突荷重における下向きの荷重成分(図示せず)によって下側に押されるが、このとき支持部材42は、シートレール32との間の初期隙間の分だけ下降したところで該シートレール32の上に当接し、該シートレール32が取り付けられているブラケット30及びフロアパネル12によって支持された状態となる。
【0061】
即ち、荷重伝達部材28における荷重受け部28Aと変形係合部材52とのくい込みによる係合と、支持部材42とシートレール32との当接とによって、荷重伝達部材28のそれ以上の下降が抑制されるので、該荷重伝達部材28の位置ずれが少なく、該荷重伝達部材28はほとんど水平状態を維持したまま、横向きの荷重成分(図示せず)によって車体内側に押し込まれ、内側端部(図示せず)がトンネル部22に当接する。これで、荷重伝達経路が確保されるので、横向きの荷重成分は、荷重伝達部材28を通じてトンネル部22に伝達可能な状態となり、ピラー16は、該トンネル部22及び荷重伝達部材28によって支えられ補強された状態となる。
【0062】
このように、側突荷重伝達構造S3を有する車体10では、側突荷重に対する荷重伝達経路が確実に確保され、衝突して来た相手車輌44を車幅方向へ押し返すことができる。このため、ピラー16のキャビン20内への侵入が少ない。
【0063】
シート26がドア(図示せず)の内側にあり、該ドアに対して相手車輌44が側面衝突した場合には、該ドアが荷重伝達部材28及びトンネル部22によって支持され、これによって該ドアのキャビン20内への侵入が阻止される。
【0064】
なお、図示は省略したが、上記した何れの実施形態においても、ピラー16は、通常時はピラートリムに覆われ、当接部46,52や係合部48は露出していない。同様に、荷重伝達部材28も、通常時はシート26の座面下部両側のカバーに覆われ、露出はしていない。
【0065】
また、荷重伝達部材28は、脚部36に取り付けられるものに限られず、シート26の前後位置調整に伴って移動しないように、例えばフロアパネル12に固定するように取り付けてもよい。更に、支持部材42は、荷重伝達部材28の下面に一体的に設けられるものに限られず、例えばシートレール32、フロアパネル12又はブラケット30等の上にに、荷重伝達部材28側に突出するように設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係り、図1は側面衝突前における側突荷重伝達構造を示す断面図である。
【図2】相手車輌による側面衝突後における側突荷重伝達構造を示す断面図である。
【図3】図3及び図4は、本発明の第2実施形態に係り、図3は側面衝突前における側突荷重伝達構造を示す断面図である。
【図4】相手車輌による側面衝突後における側突荷重伝達構造を示す断面図である。
【図5】図5から図8は、本発明の第3実施形態に係り、図5は側面衝突前における側突荷重伝達構造を示す斜視図である。
【図6】側面衝突前における側突荷重伝達構造を示す拡大斜視図である。
【図7】相手車輌により側面衝突されてピラーが変形し、当接部が荷重伝達部材の荷重受け部に当接した状態を示す斜視図である。
【図8】図7の状態から更にピラーが変形し、支持部材がシートレールに当接した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 車体
16 ピラー(車体側部)
20 キャビン
22 トンネル部
26 車輌用シート
28 荷重伝達部材
28A 荷重受け部
32 シートレール
42 支持部材(下降抑制手段)
48 係合部(下降抑制手段)
50 ストッパ部(下降抑制手段)
52 変形係合部材(下降抑制手段)
F 側突荷重
Fd 下向きの荷重成分
S1 側突荷重伝達構造
S2 側突荷重伝達構造
S3 側突荷重伝達構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンに配設された車輌用シートと、
前記キャビン内に上方に突出して設けられ車体の前後方向に延びるトンネル部と、
前記車輌用シートの下側に設けられ側面衝突時に車体側部に加わる側突荷重を荷重受け部により受けて前記トンネル部に伝達させるように構成された荷重伝達部材と、
前記側突荷重のうち下向きの荷重成分による前記荷重伝達部材の下降を抑制する下降抑制手段と、
を有することを特徴とする側突荷重伝達構造。
【請求項2】
前記下降抑制手段は、前記荷重受け部とは異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項3】
前記下降抑制手段は、前記荷重伝達部材の下側に設けられた支持部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項4】
前記支持部材は、前記車体幅方向外側に位置し前記車輌用シートを車輌前後方向にスライド可能に支持するシートレールと前記荷重伝達部材との間に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項5】
前記支持部材は、前記荷重伝達部材に一体的に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項6】
前記下降抑制手段は、前記下向きの荷重成分が該荷重伝達部材に作用した際に、前記車体側部へ上方から係合するように前記荷重伝達部材に設けられた係合部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項7】
前記下降抑制手段は、前記車体側部の前記キャビン側に設けられたストッパ部と、前記荷重伝達部材に設けられ前記側面衝突時に前記車体側部が変形して前記ストッパ部が前記キャビン内に侵入した際に該ストッパ部へ上方から係合する係合部とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造。
【請求項8】
前記下降抑制手段は、前記車体側部に設けられ前記側面衝突時に前記荷重伝達部材の前記荷重受け部と当接すると共に該荷重受け部と係合するように変形する変形係合部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の側突荷重伝達構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−248388(P2006−248388A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68117(P2005−68117)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】