説明

充放電回路、二次電池の劣化診断装置、加温装置および電池パック

【課題】外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池の充放電を可能にする。
【解決手段】二次電池10の充放電回路30は、蓄電素子31と、二次電池を放電させ、その放電された電力を蓄電素子に蓄積させる放電動作を行う放電回路と、蓄電素子に蓄積された電力により二次電池を充電する充電動作を行う充電回路と、放電動作と充電動作とを交互に切り替える切替回路32,33と、を備えることにより、外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池の充放電を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充放電するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流電源からの交流電力を、サイリスタ整流器により直流電力に整流して二次電池(蓄電池 例えばリチウムイオン電池)を充電しつつ、その充電電圧を上昇させることにより発生するリプル電流およびリプル電圧を測定することにより、インピーダンスを算出し、その算出結果により二次電池の劣化度合いを診断する直流無停電電源装置がある(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、二次電池は、一般的に低温環境下では内部インピーダンスが上昇し、充放電の効率が低下するという特性がある。そこで、従来より、外部電源からの電力を利用して、二次電池の充電と放電とを交互に繰り返すことにより発生する熱によって二次電池を加温する加温装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−101571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の直流無停電電源装置および加温装置はいずれも、交流電源等の外部電源からの電力を利用しなければ、二次電池の充放電を行うことができないという問題があった。
【0006】
本願明細書は、外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池の充放電が可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、二次電池の充放電回路は、蓄電素子と、二次電池を放電させ、その放電された電力を前記蓄電素子に蓄積させる放電動作を行う放電回路と、前記蓄電素子に蓄積された電力により前記二次電池を充電する充電動作を行う充電回路と、前記放電回路の前記放電動作と前記充電回路の前記充電動作とを交互に切り替える切替回路と、を備える。
【0008】
この構成によれば、二次電池を放電させ、その放電された電力を蓄電素子に蓄積させる放電動作と、蓄電素子に蓄積された電力により二次電池を充電する充電動作とが交互に切り替えられる。即ち、二次電池自身に蓄積された電力を利用して充放電を繰り返す。このため、外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池を充放電させることができる。即ち、外部電源の電力を利用しなくても二次電池を充放電させることができる。また、外部電源の電力を利用する構成において当該外部電源の消費電力を節約することができる。
【0009】
二次電池の劣化診断装置は、上記充放電回路と、前記二次電池の端子間電圧を検出し、その検出信号を出力する検出回路と、前記切替回路を動作させつつ、前記検出信号に基づき、前記充放電回路による前記放電動作および前記充電動作の少なくとも一方の動作期間における前記二次電池の端子間電圧の変化量を算出し、当該変化量に基づき、前記二次電池の劣化度合いを診断する診断回路と、備える。
【0010】
この構成によれば、二次電池自身に蓄積された電力を利用して充放電を繰り返すため、外部電源の電力の利用を低減しつつ、二次電池の劣化度合いを診断することができる。
【0011】
上記二次電池の劣化診断装置は、前記診断回路が、前記検出信号に基づき、前記動作期間のうち前記放電動作と前記充電動作との切替期間を除いた期間における前記端子間電圧の変化量を算出する構成でもよい。
【0012】
放電動作と充電動作との切替期間での端子間電圧の変化は、主として二次電池のインダクタンス(L)成分による影響であり、充放電期間のうち当該切替期間を除く期間での端子間電圧の変化は、主として二次電池のリアクタンス(R)成分による影響である。そして、二次電池の劣化は、主としてリアクタンス成分に影響を与える。
そこで、この構成によれば、放電動作および充電動作の少なくとも一方の動作期間のうち、上記切替期間を除いた期間における端子間電圧の変化量に基づき、二次電池の劣化度合いを診断する。従って、上記切替期間を含めた期間における端子間電圧の変化量に基づき劣化度合いを診断する構成に比べて、劣化度合いの診断精度を高めることができる。
【0013】
更に、上記二次電池の劣化診断装置は、当該劣化診断装置が、前記二次電池から電力を供給される負荷に並列接続される構成であり、前記二次電池と前記負荷との電気的接続を入り切りするスイッチング素子を有し、前記診断回路は、前記スイッチング素子をオフさせて前記二次電池と前記負荷とを電気的に遮断した後に、前記検出信号に基づき前記二次電池の劣化度合いを診断する構成でもよい。
【0014】
この構成によれば、二次電池と負荷とを電気的に遮断した後に、検出信号に基づき二次電池の劣化度合いを診断するため、負荷のインピーダンス成分による影響を抑制しつつ、二次電池の劣化度合いを診断することができる。
【0015】
加温装置は、上記充放電回路と、前記切替回路を動作させることにより前記二次電池を加温する加温制御回路と、を備える。
【0016】
この構成によれば、二次電池自身に蓄積された電力を利用して充放電を繰り返すため、外部電源の電力の利用を低減しつつ、二次電池を加温することができる。
【0017】
電池パックは、二次電池と、上記充放電回路、二次電池の劣化診断装置、および、加温装置の少なくも1つの装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池の充放電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る電池パックの概要構成を示す回路図
【図2】二次電池の劣化診断処理を示すフローチャート
【図3】放電動作および充電動作時における放電電流および端子間電圧の変化を示すグラフ
【図4】実施形態2に係る電池パックの概要構成を示す回路図
【図5】放電動作および充電動作時における充放電電流及びインダクタ電流I2の波形図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
実施形態1について図1〜図3を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る電池パック1(バッテリー)の概要構成を示す回路図である。電池パック1は、例えば図示しない自動車や航空機などに搭載された電気機器などの負荷70に電力を供給するために利用される。
【0021】
1.電池パックの構成
電池パック1は、二次電池10と、劣化診断装置20とを備えて構成されている。図1に示された二次電池10は、複数の電池セル11が直列接続された組電池であるが、二次電池(蓄電池)であれば、1つの電池セルからなる単電池や、複数の電池セルが並列接続されたものでもよい。
【0022】
劣化診断装置20は、充放電回路30、電圧検出回路40(検出回路の一例)、制御回路50(診断回路の一例)およびコンタクタ60(スイッチング素子の一例)を備える。なお、充放電回路30、電圧検出回路40、制御回路50およびコンタクタ60は、例えば電池パック1に収容された制御基板(図示せず)上に搭載されている。
【0023】
充放電回路30は、二次電池10および負荷70に並列接続されている。充放電回路30は、フライバック型(入出力の位相が逆)のトランス31(蓄電素子の一例)を有し、二次電池10を放電させ、その放電された電力をトランス31に磁気エネルギーとして蓄積させる放電動作と、そのトランス31に蓄積された磁気エネルギーを開放することにより二次電池10を充電する充電動作とを交互に繰り返し行うことが可能である。
【0024】
具体的には、トランス31の一次側コイル31Aは、その一端側が、ダイオード32を介して二次電池10の正極側端子10Aに電気的に接続される。また、その他端が、二次電池10の負極性端子10Bに電気的に接続されている。二次側コイル31Bは、その一端側が、二次電池10の正極性端子10A(上記ダイオード32のカソード)に接続されるとともに、コンタクタ60を介して負荷70の高電位側端子70Aに接続される。また、その他端側が、FET33を介して二次電池10の負極性端子10Bおよび負荷70の低電位側端子70Bに電気的に接続されている。
【0025】
なお、上記ダイオード32は整流素子の一例であり、当該ダイオード32以外に、例えばFETをダイオード接続したもの等でもよい。また、FET33は、半導体スイッチ素子の一例であり、高速制御が可能であればユニポーラトランジスタ以外に、バイポーラトランジスタでもよい。
【0026】
また、二次電池10の正極性端子10Aから二次側コイル31BおよびFET33を介して二次電池10の負極性端子10Bに繋がる電流経路が上記放電動作時における放電電流経路であり、この放電電流経路を含む回路が放電回路の一例である。一方、二次電池10の負極性端子10Bから一次側コイル31Aおよびダイオード32を介して二次電池10の正極性端子10Aに繋がる電流経路が上記充電動作時における充電電流経路であり、この充電電流経路を含む回路が充電回路の一例である。また、ダイオード32およびFET33が、放電動作と充電動作とを切り替えるための切替回路の一例である。
【0027】
電圧検出回路40は、例えば図示しない電圧検出用抵抗を有し、二次電池10の端子間電圧Vを検出し、その検出電圧(検出結果)に応じた検出信号SG1を出力する。
【0028】
制御回路50は、その信号入力端子50Aが、電圧検出回路40の出力側に接続され、当該電圧検出回路40から検出信号SG1を受けることができる。また、制御回路50は、その第1信号出力端子50Bが、駆動用バッファ34を介してFET33のゲートに接続されており、当該FET33を高周波(例えば数kHz〜数十kHz程度)でオンオフさせることができる。
【0029】
更に、制御回路50は、その第2信号出力端子50Cがコンタクタ60の制御端子に接続されており、当該コンタクタ60を開閉動作させることができる。なお、コンタクタ60は、スイッチング素子の一例であり、半導体スイッチ素子でも、機械スイッチでもよい。また、制御回路50は、その第3信号出力端子50Dが、図示しない外部機器(例えば表示装置)に接続されており、二次電池10の劣化診断結果に応じた診断結果信号SG2を出力する。外部機器は、診断結果信号SG2に基づき、例えば、二次電池10の劣化度合いに応じた表示や警告等を行う。なお、制御回路50は、1または複数のCPUとメモリを備えて構成したものでも、ハード回路(例えばASIC)を備えて構成したものでもよい。
【0030】
2.二次電池の劣化診断処理
図2は、二次電池10の劣化診断処理を示すフローチャートであり、図3は、放電動作および充電動作時における放電電流I(図1の符号I参照)および端子間電圧Vの変化を示すグラフである。同図に示すように、放電動作と充電動作とを交互に繰り返すことにより、放電電流Iは、正の値と負の値とを交互に示すように増減する電流になり、また、端子間電圧Vは、変動成分(リプル成分)を含んだ波形を示す電圧(リプル電圧)になる。後述するように、二次電池の劣化診断では、その端子間電圧Vから、放電動作と充電動作との切替期間における電圧サージ分を除外することが好ましい。即ち、後述する非切替期間における端子間電圧Vの変化量に基づき、劣化診断を行うことが好ましい。
【0031】
制御回路50は、随時、劣化診断開始条件を満たすか否かを判断し、当該劣化診断開始条件を満たすと判断した場合に、図2に示す劣化診断処理を実行する。劣化診断開始条件の一例としては、制御回路50がタイマを有すれば、前回の劣化診断処理の実行時から所定時間が経過したことが挙げられる。また、その他に、外部機器(ユーザによる操作部や上位機器など)から劣化診断開始指令を受けたことでもよい。
【0032】
制御回路50は、まずコンタクタ60を開動作させて(S1)、二次電池10および劣化診断装置20と、負荷70との間の電流経路を遮断する。次に、パルス信号SG3(例えばデューティ比50%)を出力し(S2)、前述したようにFET33を高周波でオンオフさせる。本実施形態では、FET33に入力されているパルス信号SG3がハイレベルであるとき、FET33はターンオン(導通)し、上記放電動作が開始される(図3の放電期間を参照)。一方、FET33に入力されているパルス信号SG3がローレベルであるとき、FET33はターンオフ(遮断)し、上記充電動作が開始される(図3の充電期間を参照)。
【0033】
次に、制御回路50は、第1検出タイミングが到来したかどうかを判断し(S3)、到来すれば(S3:YES)、電圧検出回路40からの検出信号SG1に基づき、上記第1検出タイミングでの端子間電圧V(このときの端子間電圧Vの検出値を「第1検出値V1」とする)を検出し(S4)、S5に進む。第1検出タイミングが到来していなければ(S3:NO)、端子間電圧Vを検出せずにS5に進む。
【0034】
その後、制御回路50は、第2検出タイミングが到来したかどうかを判断し(S5)、到来すれば(S5:YES)、電圧検出回路40からの検出信号SG1に基づき、上記第2検出タイミングでの端子間電圧V(このときの端子間電圧Vの検出値を「第2検出値V2」とする)を検出する(S6)。次に、制御回路50は、上記第1検出値V1と第2検出値V2との差である電圧差(=|V1−V2| 端子間電圧の変化量の一例)を算出し(S7)、その電圧差に基づき二次電池10の劣化度合いを診断する(S8)。
【0035】
二次電池10が劣化すると、当該二次電池10の内部インピーダンスが増加し、それに伴って、充電期間および放電期間の少なくとも一方の動作期間において互いに異なるタイミングでの端子間電圧の電圧差は増加する。そこで、上述したように、本実施形態では、第1検出タイミングと第2検出タイミングでの端子間電圧Vの電圧差を算出している。
【0036】
ここで、第1検出タイミングおよび第2検出タイミングは、上記動作期間のうち、放電動作と充電動作との切替期間(端子間電圧Vの変化が急峻な期間 図3のTA−TB期間,TC−TD期間,TE−TF期間,TG−TH期間)を除いた期間内とすることが好ましい。理由は次の通りである。放電動作と充電動作との切替期間での端子間電圧Vの変化量は、主として二次電池10のインダクタンス(L)成分による変化量であり、充放電期間のうち当該切替期間を除く期間(図3の0−TA期間,TB−TC期間,TD−TE期間,TF−TG期間 以下、「非切替期間」という)での端子間電圧Vの変化量は、主として二次電池10のリアクタンス(R)成分による変化量である。
【0037】
そして、二次電池10が劣化すると、インダクタンス成分はほとんど変化せず、主としてリアクタンス成分が変化する。このため、第1検出タイミングおよび第2検出タイミングは、非切替期間内に設定することが好ましい。これにより、切替期間を含めた期間における端子間電圧の変化量に基づき劣化度合いを診断する構成に比べて、劣化度合いの診断精度を高めることができる。
【0038】
第1検出タイミングと第2検出タイミングの組み合わせの例としては次のパターンが挙げられる。
第1パターン:第1検出タイミング=TD(放電動作から充電動作への切替期間の直後)、第2検出タイミング=TF(充電動作から放電動作への切替期間の直後)
第2パターン:第1検出タイミング=TD、第2検出タイミング=TG(放電動作から充電動作への切替期間の直前)
第3パターン:第1検出タイミング=TE(充電動作から放電動作への切替期間の直前)、第2検出タイミング=TF
第4パターン:第1検出タイミング=TE、第2検出タイミング=TG
なお、各検出タイミングは、例えば実験や、回路定数等に基づく計算によって求めることができる。
【0039】
制御回路50には、図示しないメモリが内蔵されており、このメモリには、予め実験等により求めた、電圧差と劣化度合いパラメータ(例えば容量保持率)との対応関係情報(例えば対応テーブルや計算式)が記憶されている。制御回路50は、上記対応関係情報を参照して、S7で算出した電圧差に対応する劣化度合いパラメータを抽出し、当該劣化度合いパラメータに応じた診断結果信号SG2を外部機器に出力し、S9に進む。
【0040】
一方、制御回路50は、第2検出タイミングが到来していなければ(S5:NO)、端子間電圧Vの検出や劣化度合いの診断をせずにS9に進む。S9では、診断停止指令を外部機器から受けたかどうかを判断し、受けていなければ(S9:NO)、S3に戻り、受けていれば(S9:YES)、本劣化診断処理を終了し、コンタクタ60を閉動作させて、二次電池10から負荷70への電力供給を可能にする。
【0041】
3.本実施形態の効果
本実施形態によれば、充放電回路30により、二次電池10自身に蓄積された電力(磁気エネルギー)を利用して充放電を繰り返す。このため、外部電源の電力の利用を低減しつつ二次電池10を充放電させることができる。即ち、外部電源の電力を利用しなくても二次電池10を充放電させることができる。また、外部電源および充放電回路30の両方の電力を利用する構成において外部電源の消費電力を節約することができる。
【0042】
また、二次電池10自身に蓄積された電力を利用して充放電を繰り返すため、外部電源の電力の利用を低減しつつ、二次電池10の劣化度合いを診断することができる。
【0043】
更に、放電動作および充電動作の少なくとも一方の動作期間のうち、非切替期間における端子間電圧Vの変化量に基づき、二次電池10の劣化度合いを診断する。非切替期間は、二次電池10の劣化に応じて変化するリアクタンス成分の影響を特に受けるから、切替期間を含めた期間における端子間電圧Vの変化量に基づき劣化度合いを診断する構成に比べて、劣化度合いの診断精度を高めることができる。
【0044】
また、二次電池10と負荷70とを電気的に遮断した後に、検出信号SG1に基づき二次電池10の劣化度合いを診断するため、負荷70のインピーダンス成分による影響を抑制しつつ、二次電池10の劣化度合いを診断することができる。
【0045】
<実施形態2>
実施形態2について図4および図5を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態に係る電池パック100の概要構成を示す回路図である。電池パック100は、例えば図示しない自動車や航空機などに搭載された電気機器などの負荷70に電力を供給するために利用される。
【0046】
1.電池パックの構成
電池パック100は、二次電池10と、加温装置110とを備えて構成されている。なお、二次電池10は、上記実施形態1のものと同じであり、詳細な説明は割愛する。
【0047】
加温装置110は、充放電回路120、サーミスタ130、制御回路140(加温制御回路の一例)およびレベルシフタ150を備える。なお、充放電回路120、制御回路140およびレベルシフタ150は、例えば電池パック100に収容された制御基板(図示せず)上に搭載されている。サーミスタ130は、二次電池10に接触するように配置されていることが好ましい。
【0048】
充放電回路120は、二次電池10に接続されている。充放電回路120は、インダクタ121およびFETブリッジ回路を有し、二次電池10を放電させ、その放電された電力をインダクタ121に磁気エネルギーとして蓄積させる放電動作と、そのインダクタ121に蓄積された磁気エネルギーを開放することにより二次電池10を充電する充電動作とを交互に繰り返し行うことが可能である。
【0049】
具体的には、充放電回路120は、二次電池10の正極側端子10Aと負極性端子10Bとの間において直列接続されるFET122およびダイオード123を有する。更に、充放電回路120は、二次電池10の正極側端子10Aと負極性端子10Bとの間において直列接続されるダイオード124およびFET125を有する。
【0050】
インダクタ121は、FET122およびダイオード123の接続点と、ダイオード124およびFET125の接続点との間に接続されている。なお、上記ダイオード123,124は整流素子の一例であり、当該ダイオード123,124以外に、例えばFETをダイオード接続したもの等でもよい。また、FET122,125は、半導体スイッチ素子の一例であり、高速制御が可能であればユニポーラトランジスタ以外に、バイポーラトランジスタでもよい。
【0051】
また、二次電池10の正極性端子10AからFET122、インダクタ121およびFET125を介して二次電池10の負極性端子10Bに繋がる電流経路が上記放電動作時における放電電流経路であり、この放電電流経路を含む回路が放電回路の一例である。一方、二次電池10の負極性端子10Bからダイオード123、インダクタ121およびダイオード124を介して二次電池10の正極性端子10Aに繋がる電流経路が上記充電動作時における充電電流経路であり、この充電電流経路を含む回路が充電回路の一例である。また、FET122,125が、放電動作と充電動作とを切り替えるための切替回路の一例である。
【0052】
サーミスタ130は、感熱素子の一例であり、二次電池10の温度に応じた温度検出信号SG11を出力する。制御回路140は、その信号入力端子140Aが、サーミスタ130の出力側に接続され、当該サーミスタ130から温度検出信号SG11を受けることができる。
【0053】
また、制御回路140は、その信号出力端子140Bが、バッファ141、レベルシフタ150、駆動用バッファ126を介してFET122のゲートに接続されている。また、信号出力端子140Bは、バッファ141、駆動用バッファ127を介してFET125のゲートに接続されている。レベルシフタ150は、バッファ141からの信号レベルを、FET122のソース電位を基準とした信号にシフトさせる。これにより、バッファ141からの信号レベルに応じて、FET122とFET125とを略同時にオンオフさせることができる。
【0054】
制御回路50は、サーミスタ130からの温度検出信号SG11に基づき二次電池10の温度が所定温度以下になったと判断した場合に、信号出力端子140Bからパルス信号SG12(例えばデューティ比50%)の出力を開始し、FET122,125を高周波(例えば数kHz〜数十kHz程度)でオンオフさせる。
【0055】
本実施形態では、FET122,125に入力されているパルス信号がハイレベルであるとき、FET122,125はターンオン(導通)し、上記放電動作が開始される。一方、FET122,125に入力されているパルス信号がローレベルであるとき、FET122,125はターンオフ(遮断)し、上記充電動作が開始される。
【0056】
図5は、放電動作および充電動作が繰り返し実行されているときにおける充放電電流I1(図5の破線波形)及びインダクタ電流I2(図5の実線波形)の波形図である。このような放電動作および充電動作を交互に繰り返すことにより二次電池10の内部にジュール熱(Q[J]=I1(充放電電流I1の電流値[A])×R(二次電池10の内部抵抗[Ω])×t(充放電時間[s]))を発生させて、当該二次電池10を加温させることができる。
【0057】
2.本実施形態の効果
本実施形態によれば、二次電池10自身に蓄積された電力を利用して充放電を繰り返すため、外部電源の電力の利用を低減しつつ、二次電池10を加温することができる。これにより、低温度環境下において内部インピーダンスが上昇し、高出力放電・急速充電ができないという事態になることを抑制することができる。
【0058】
また、充放電回路120は、高周波トランスを使用しないため、大電流充放電を小型軽量の回路で実現することができる。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
【0060】
(1)上記実施形態1では、劣化診断装置20が電池パック1に内蔵された構成としたが、本発明はこれに限られない。例えば充放電回路30、電圧検出回路40、制御回路50およびコンタクタ60のうち、少なくとも充放電回路30および制御回路50を電池パック1の外部に設けた構成でもよい。更に、少なくとも充放電回路30および制御回路50を備える独立の劣化診断装置とし、二次電池10の劣化診断時のみ、当該二次電池10に接続する構成でもよい。
【0061】
(2)上記実施形態1において、充放電回路30の代わりに、実施形態2の充放電回路120を利用した構成でもよい。また、逆に、上記実施形態2において、充放電回路120の代わりに、実施形態1の充放電回路30を利用した構成でもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、トランス31やインダクタ121を有する充放電回路30,120を例に挙げたが、本発明の「充放電回路」はこれに限られない。例えばコンデンサやキャパシタを蓄電素子として有する充放電回路でもよい。
【0063】
(4)上記実施形態1では、二次電池10の端子間電圧Vを直接検出する構成であったが、当該端子間電圧Vと相関関係がある他の電圧や電流を測定することにより、端子間電圧Vを間接的に検出する構成でもよい。
【0064】
(5)上記実施形態1では、第1検出タイミングおよび第2検出タイミングの2点における端子間電圧Vの電圧差に基づき二次電池10の劣化度合いを診断したが、本発明はこれに限られない。例えば、図3における放電期間内における端子間電圧Vの平均値と、充電期間内における端子間電圧Vの平均値との差に基づき二次電池10の劣化度合いを診断する構成でもよい。なお、平均値に限らず、各期間内における端子間電圧Vの中間値、実効値などでもよい。また、同期間は、上記切替期間を含んでもよいが、切替期間を除いた方が劣化度合いの診断精度を高めることができる。
【0065】
(6)上記実施形態1では、劣化診断装置20は、コンタクタ60を有する構成であったが、本発明はこれに限られず、コンタクタ60を有しない構成でもよい。即ち、例えば電池パック1と負荷70との間に既存のスイッチング素子(図示せず)が配置されていれば、コンタクタ60が無くても、当該スイッチング素子を開閉動作させればよい。
【0066】
(7)電池パックに、実施形態1の劣化診断装置20および実施形態2の加温装置の両方を内蔵したものでもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,100:電池パック、10:二次電池、20:劣化診断装置、30,120:充放電回路、40:電圧検出回路(検出回路の一例)、50:制御回路(診断回路の一例)、60:コンタクタ(スイッチング素子の一例)、31:トランス(蓄電素子の一例)、32:ダイオード(切替回路の一例)、33:FET(切替回路の一例)、V:端子間電圧、SG1:検出信号、110:加温装置、140:制御回路(加温制御回路の一例)、122,125:FET(切替回路の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
二次電池を放電させ、その放電された電力を前記蓄電素子に蓄積させる放電動作を行う放電回路と、
前記蓄電素子に蓄積された電力により前記二次電池を充電する充電動作を行う充電回路と、
前記放電回路の前記放電動作と前記充電回路の前記充電動作とを交互に切り替える切替回路と、を備える二次電池の充放電回路。
【請求項2】
請求項1に記載の充放電回路と、
前記二次電池の端子間電圧を検出し、その検出信号を出力する検出回路と、
前記切替回路を動作させつつ、前記検出信号に基づき、前記充放電回路による前記放電動作および前記充電動作の少なくとも一方の動作期間における前記二次電池の端子間電圧の変化量を算出し、当該変化量に基づき、前記二次電池の劣化度合いを診断する診断回路と、備える、二次電池の劣化診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池の劣化診断装置であって、
前記診断回路は、前記検出信号に基づき、前記動作期間のうち前記放電動作と前記充電動作との切替期間を除いた期間における前記端子間電圧の変化量を算出する、二次電池の劣化診断装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の二次電池の劣化診断装置であって、
当該劣化診断装置は、前記二次電池から電力を供給される負荷に並列接続される構成であり、
前記二次電池と前記負荷との電気的接続を入り切りするスイッチング素子を有し、
前記診断回路は、前記スイッチング素子をオフさせて前記二次電池と前記負荷とを電気的に遮断した後に、前記検出信号に基づき前記二次電池の劣化度合いを診断する、劣化診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の充放電回路と、
前記切替回路を動作させることにより前記二次電池を加温する加温制御回路と、を備える、加温装置。
【請求項6】
二次電池と、
請求項1に記載の充放電回路、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の二次電池の劣化診断装置、および、請求項5に記載の加温装置の少なくも1つの装置と、を備える、電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78181(P2012−78181A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223038(P2010−223038)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】