光ハイブリッド回路、光受信器および光カプラ
【課題】安定した特性を得ることが可能であるとともに設計の自由度を高めることが可能な光ハイブリッド回路および光受信器ならびに、その光ハイブリッド回路に好適に用いられうる光カプラを提供する。
【解決手段】光ハイブリッド回路100は、平行四辺形形状の2:2光カプラ1と、平行四辺形形状の4:4多モード干渉カプラ2と、長方形形状の出力側2:2光カプラ3とを備える。これらを従属接続することにより、出力チャンネルを構成する2つの出力導波路19,20が隣接した構造を有する光90°ハイブリッド回路を実現できる。平行四辺形の傾斜角度に応じて2つの出力光の間の相対的位相差を変更できる。したがって複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【解決手段】光ハイブリッド回路100は、平行四辺形形状の2:2光カプラ1と、平行四辺形形状の4:4多モード干渉カプラ2と、長方形形状の出力側2:2光カプラ3とを備える。これらを従属接続することにより、出力チャンネルを構成する2つの出力導波路19,20が隣接した構造を有する光90°ハイブリッド回路を実現できる。平行四辺形の傾斜角度に応じて2つの出力光の間の相対的位相差を変更できる。したがって複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに用いられる光ハイブリッド回路および光受信器、ならびに光ハイブリッド回路に用いられる光カプラに関する。
【背景技術】
【0002】
位相変調光通信は、伝送距離の長距離化および伝送容量の増大に適している。このため、たとえば10G−DPSK(Differential Phase shift Keying)方式、40G−DQPSK(Differential Quadrature Phase shift Keying)方式などといった、各種の通信方式の普及が進められている。10G−DPSK方式あるいは40G−DQPSK方式では、光受信器は、変調された光信号を受信するとともに、当該光信号を復調する。復調のために信号ビット間の位相差が検出される。位相差の検出のために、1ビット遅延器と呼ばれる光干渉計が用いられる。
【0003】
近年では、長距離伝送および大容量伝送にさらに適した、DP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)方式などのデジタルコヒーレント方式が開発されている。デジタルコヒーレント方式では、変調された光信号を復調するために、上記の1ビット遅延器に代わり、光90°ハイブリッドが用いられる。これまでに、光90°ハイブリッドに関して、いくつかの提案がなされている(たとえば特許文献1および非特許文献1を参照)。
【0004】
図13は、光90°ハイブリッドの一例を説明するための図である。図13を参照して、デジタルコヒーレント方式では、QPSK信号光と局発光(局部発振光)とが光90°ハイブリッド回路に入力される。光90°ハイブリッド回路は、QPSK信号光および局発光の各々を4つの出力ポートch1〜ch4に分配する。
【0005】
図13に示されたS−L,S+L,S−jLおよびS+jLは、出力ポートch1〜ch4にそれぞれ出力された光信号を表わす。Sは、QPSK信号光の電界振幅、Lは局発光の電界振幅を表わす。なお、この説明では、QPSK信号光の偏光方向と局発光の偏光方向とは同じとしている。
【0006】
ch1(S−L)とch2(S+L)との間の位相差は180°である。同様に、ch3(S−jL)とch4(S+jL)との間の位相差も180°である。一方、ch3(S−jL),ch4(S+jL)の対と、ch1(S−L),ch2(S+L)の対との間の位相差は90°である。
【0007】
QPSK信号光と局発光との間の周波数の差によって、各出力ポートから出力された光信号の強度にビートが生じるため、出力光の強度が振動する。出力ポートch1,ch2の間では、互いに逆相の関係で2つの出力光信号の強度が振動する。同じく、出力ポートch3,ch4の間でも、互いに逆相の関係で2つの光信号の強度が振動する。
【0008】
出力ポートch1,ch2の各々から出力された光信号は1対の光検出器によって検出される。出力ポートch3,ch4の各々から出力された光信号は、もう1対の光検出器で検出される。これら2対の光検出器からの信号を差動検出することによって、QPSK信号光と局発光との電界振幅の積に比例した強度を有する信号がヘテロダイン検出される。なおヘテロダイン検出は、公知の手段によって実現される。デジタルコヒーレント方式では、信号光位相が検出信号から実時間でデジタル的に検出される。このように、光90°ハイブリッドはデジタルコヒーレント方式にとって不可欠であるとともに重要な受信用光回路である。
【0009】
光90°ハイブリッドは、たとえば石英ガラスを用いた平面型光回路として作製される。これにより光90°ハイブリッドと光検出器とが組み合わされた小型の受信モジュールを実現できる。また、半導体光導波路によって光90°ハイブリッドを作製することも試みられている。この場合には、光検出器と光90°ハイブリッドとがモノリシックに集積された、さらに小型の受信モジュールが実現できると考えられる。このため、半導体光導波路による光90°ハイブリッドの開発が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−171922号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lucas B. Soldano and Erik C. M. Pennings, “Optical Multi-Mode Interference Devices Based on Self-Imaging”, Journal of Lightwave Technology, Vol. 13, No. 4, pp. 615-627, April 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の非特許文献1では、長方形形状の多モード干渉計(MMI)光導波路を用いた光90°ハイブリッドが記載されている。具体的には、非特許文献1には、4つの入力ポートと4つの出力ポートとを有する4:4MMIカプラが示されている。
【0013】
図14は、非特許文献1に示された4:4MMIカプラを説明するための図である。図14を参照して、4:4MMIカプラの4つの入力ポートのうち、MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な位置にある2つのポートに信号光および局発光がそれぞれ入力される。これによって、4:4MMIカプラが90°ハイブリッドとして機能する。非特許文献1によれば、図14に示された構成において、2つの出力光の間の位相差が180°となるポート対は、外側に位置するポート1およびポート4からなる対、および内側に位置するポート2およびポート3からなる対である。図14ではポート1,4に「Q」の符号が付され、ポート2,3に「I」の符号が付される。
【0014】
1対の光検出器から2つの光電流が出力される。それら2つの光電流を検出するために、一般に、TIA(Transimpedance Amplifier)が用いられる。通常の場合、TIAの2つの差動信号入力端子は相互に隣接している。1対の光検出器の2つの出力端子と、TIAの2つの入力端子とを接続する電気配線はできるだけ短いことが望ましい。したがって光検出器とTIAとをできるだけ近接して配置することが求められる。このためには、光90°ハイブリッドにおいて、位相が互いに180°異なる2つの光信号をそれぞれ出力する2つのポートを隣接させることが必要になる。
【0015】
しかしながら、非特許文献1に記載された4:4MMIカプラの構成によれば、2つの光導波路が交差した交差部が生じる。具体的には、図14に示されるように、たとえば出力ポート1に接続された光導波路が出力ポート2,3にそれぞれ接続された2つの光導波路と交差する。2つの光導波路が交差することにより、光導波路の伝搬損失あるいは信号光の混合によるクロストークが発生する。このため光90°ハイブリッドの光学特性が劣化してしまうという課題が発生する。
【0016】
特許文献1でも、2:4MMI光導波路(2入力4出力)を用いた光90°ハイブリッドが記載されている。上述のように、非特許文献1に示された4:4MMIでは、2つの入力ポートがMMIの幅方向中心位置に対して非対称な位置に設けられている。これに対して、特許文献1で開示された光90°ハイブリッドでは、2つの入力ポートがMMIの幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられている。
【0017】
4つの出力ポートによって、各々が2つの出力ポートを有する2つの出力チャネルが構成され、各チャネルでは2つの出力ポートが隣接している。入力ポートおよび出力ポートの各々は光導波路に接続されている。以下では、このような構造を備えたMMIカプラを「2:4MMIカプラ」と表記する。
【0018】
特許文献1では、光90°ハイブリッドの2種類の構成が記載されている。図15は、特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの1つの構成を示した図である。図15を参照して、1つの出力チャネルに対応して2:2MMIカプラが設けられる。その出力チャネルの2つのポートのうちの一方のポートに位相シフタ導波路60が接続される。なお、「2:2MMIカプラ」は、2入力2出力型のMMIカプラを表わしている。位相シフタ導波路60は、当該ポートから出力された光の位相を所定量シフトさせる。
【0019】
位相シフタ導波路60は、2:2MMIカプラに入力する2つの信号成分間の位相差を整合するためのものである。位相整合された2つの光信号が2:2MMIカプラに入力されることにより、強度が等しく配分され、かつ、180°の位相差をもつ2つの出力光が2:2MMIカプラから出力される。
【0020】
図16は、特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの別の構成を示した図である。図16を参照して、2:4MMIは、出力端の幅W2が入力端側の幅W1の約2倍となるテーパ構造を有する。2つの出力ポートの一方に2:2MMIカプラが設けられる。図15に示された構成と同じく、2:2MMIカプラは、2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の強度が等しく、かつ、それら2つの出力光の間の位相差が180°となるように、2つの出力光を生成する。
【0021】
図15、図16に示した構成の場合、2つの出力光の位相差が180°となるポート対は、隣接するポート1,2からなる対、および隣接するポート3,4からなる対である。2つの出力光の位相差が180°となる2つのポートが隣接している。このため各出力ポートに接続された光導波路が他の光導波路と交差することなく光信号を検出することができる。
【0022】
しかしながら、図15に記載の構成によれば、位相シフト量が位相シフタ導波路60の製造の精度に依存する。位相シフタを構成する導波路の幅を精密に調整することで位相シフト量を制御することができる。しかし導波路幅は、製造条件(たとえばエッチング条件)のばらつきにより変動しやすい。このため位相シフト量を精密に調整するには高度なプロセス技術が必要となる。
【0023】
一方、図16に示した構成では、2:4MMIカプラはテーパ状構造を有するため、入力側におけるビーム幅よりも出力側におけるビーム幅が大きくなる。このため、入力側と出力側との両方で同じ最適な導波路幅を得ることが難しくなる。このことは信号品質の劣化をもたらす。カプラの出力側でビーム幅が増大した状態で、入力側の導波路の幅と出力側の導波路の幅とを同じに形成することも考えられる。しかしながら、伝搬光の一部しか出力導波路に入らないため伝搬損失が生じる。したがって光90°ハイブリッドの特性が劣化する。光損失が生じないようにするためには、出力側の導波路の幅をビーム幅と合致させなければならない。
【0024】
さらに、図16に示した構成では、テーパ構造のために、2:4MMIカプラのサイズが大きくなるという課題も生じ得る。
【0025】
このように、従来の技術によれば、MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な2つの位置に光を入れる場合には、出力側の光導波路を交差させる必要がある。一方、MMIカプラの幅方向中心位置に対して対称な2つの位置に光を入れる場合には、位相シフタが必要である、あるいはMMIカプラが大きくなるという課題がある。
【0026】
本発明の目的は、安定した特性を得ることが可能であるとともに設計の自由度を高めることが可能な光ハイブリッド回路および光受信器ならびに、その光ハイブリッド回路に好適に用いられうる光カプラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のある局面に係る光ハイブリッド回路は、2つの入力ポートが設けられた入力端と、2つの出力ポートが設けられた出力端とを有する第1の2:2光カプラと、第1の2:2光カプラの2つの入力ポートのいずれか一方に接続された第1の入力光導波路と、第2の入力光導波路と、4:4多モード干渉カプラとを備える。4:4多モード干渉カプラは、4つの入力ポートが設けられた入力端と、互いに隣接する2つのポートを有する第1の出力チャネルおよび互いに隣接する2つのポートを有する第2の出力チャネルが設けられた出力端とを含む。4:4多モード干渉カプラの入力端の幅と4:4多モード干渉カプラの出力端の幅とは等しい。4つの入力ポートのうち、4:4多モード干渉カプラの入力端の中央に配置された2つの入力ポートは、第1の2:2光カプラの2つの出力ポートにそれぞれ接続される。4つの入力ポートのうちの残りの2つの入力ポートのいずれか一方は、第2の入力光導波路に接続される。光ハイブリッド回路は、4:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された1つの入力チャネルと、1対の光信号を出力するための第3の出力チャネルとを有する第2の2:2光カプラをさらに備える。第1および第2の入力光導波路に第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、第1および第2の2:2光カプラならびに4:4多モード干渉カプラの形状が選ばれる。
【0028】
本発明の他の局面に係る光ハイブリッド回路は、2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、平行四辺形に形成された2:4多モード干渉カプラと、2:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、長方形に形成された2:2光カプラとを備える。2つの入力ポートは、2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に2:4多モード干渉カプラの入力端に配置される。第1の出力チャネルおよび第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含む。2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるように、2:4多モード干渉カプラおよび2:2光カプラの形状が選ばれる。
【0029】
本発明のさらに他の局面に係る光受信器は、上記のいずれかの光ハイブリッド回路と、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光対と第2の出力光対とをアナログ電気信号に各々変換する光電変換回路と、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、デジタル電気信号を用いて所定の演算を実行する演算回路とを備える。
【0030】
本発明のさらに他の局面に係る光カプラは、平行四辺形の形状を有する光導波路と、光導波路に設けられる少なくとも1つの入力チャネルと、光導波路に設けられる少なくとも1つの出力チャネルとを備える。少なくとも1つの入力チャネルおよび少なくとも1つの出力チャネルの各々は、2つのポートを含む。少なくとも1つの出力チャネルから出力される出力光対の相対的な位相差が所望の値となるように平行四辺形の頂角が調整される。
【0031】
本発明のさらに他の局面に係る光ハイブリッド回路は、2:4多モード干渉カプラと、2:2光カプラとを備える。2:4多モード干渉カプラは、2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、長方形に形成される。2:2光カプラは、2:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、平行四辺形に形成される。2つの入力ポートは、2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に2:4多モード干渉カプラの入力端に配置される。第1および第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含む。2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、2:4多モード干渉カプラおよび2:2光カプラの形状が選ばれる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、安定した特性を得ることが可能であるとともに設計の自由度を高めることが可能な光ハイブリッド回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図2】平行四辺形形状の2:2光カプラと長方形形状の2:2光カプラとを対比した図である。
【図3】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路を構成する半導体光導波路の一例を示す断面模式図である。
【図4】平行四辺形形状の4:4MMIカプラと長方形形状の4:4MMIカプラとを対比して説明した図である。
【図5】図1に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の他の構成例を示す図である。
【図7】実施の形態2に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図8】平行四辺形形状の2:4光カプラと長方形形状の2:4光カプラとを対比した図である。
【図9】図7に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。
【図10】実施の形態3に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【図11】実施の形態3に係る光受信器の他の具体例を示した図である。
【図12】実施の形態3に係る光受信器のさらに他の具体例を示した図である。
【図13】光90°ハイブリッドの一例を説明するための図である。
【図14】非特許文献1に示された4:4MMIカプラを説明するための図である。
【図15】特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの1つの構成を示した図である。
【図16】特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの別の構成を示した図である。
【図17】実施の形態4に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図18】実施の形態4に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【図19】実施の形態5に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図20】実施の形態5に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0035】
本発明の実施形態に係る光ハイブリッド回路は、たとえば4値位相変調(QPSK)方式、差動4値位相変調(DQPSK)方式等によって変調された光信号を復調する際に用いられる光受信回路に含まれる光90°ハイブリッドである。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図1を参照して、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路100は、平行四辺形形状の2:2光カプラ1と、平行四辺形形状の4:4MMI(多モード干渉計)カプラ2と、長方形形状の2:2光カプラ3と、光導波路5,10,17,18,19,20とを備える。なお2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2、2:2光カプラ3も、光導波路である。2:2光カプラ1と、4:4多モード干渉カプラ2と、2:2光カプラ3とは縦続接続される。
【0037】
この明細書では、「平行四辺形」とは、平行な2つの辺により各々構成された2組の対辺を有し、2組の対辺のうち一方が他方に対して90°とは異なる角度で交わる図形を意味する。また、「チャネル」は2つのポートによって構成されるものとする。
【0038】
2:2光カプラ1は、2つの入力ポートおよび2つの出力ポートを有する。すなわち2:2光カプラ1は、1つの入力チャネルおよび1つの出力チャネルを有する。2つの入力ポートの一方(第2のポート)に、光導波路5が接続されている。
【0039】
4:4MMIカプラ2は、4つの入力ポート6〜9および4つの出力ポート11〜14を備える。すなわち4:4MMIカプラ2は、2つの入力チャネルおよび2つの出力チャネルを有する。入力ポート7,8には、2:2光カプラ1の2つの出力ポートがそれぞれ接続される。入力ポート9には、光導波路10が接続される。以下、入力ポート6〜9を4:4MMIカプラ2の第1〜第4の入力ポートとそれぞれ呼ぶ場合がある。同じく出力ポート11〜14を4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートとそれぞれ呼ぶ場合がある。
【0040】
4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)には光導波路17,18がそれぞれ接続される。4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)には、2:2光カプラ3の入力チャネル、すなわち第1および第2の入力ポートが接続される。2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポート(出力ポート15,16)には、光導波路20,19がそれぞれ接続される。
【0041】
図1に示された構成によれば、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートが第1の出力チャネルを構成し、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポートが第2の出力チャネルを構成する。さらに、2:2光カプラ3の2つの出力ポートが第3の出力チャネルを構成する。
【0042】
光導波路5に入力された光は、2:2光カプラ1の第2の入力ポートに入力される。これにより2:2光カプラ1の2つの出力ポートから2つの光がそれぞれ出力される。これらの2つの出力光は4:4MMIカプラ2の第2および第3の入力ポート(入力ポート7,8)にそれぞれ入力される。一方、光導波路10に入力された光は、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポート(入力ポート9)に入力される。
【0043】
4:4MMIカプラ2の第2〜第4の入力ポートに光が入力されることにより4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートの各々から光が出力される。4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートから光導波路17,18を経由して光が出力される。一方、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポートから出力された光は、2:2光カプラ3の第1および第2の入力ポートにそれぞれ入力される。これにより、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートから光導波路19,20を介して光が出力される。すなわち、上記した第1および第3の出力チャネルから、第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とがそれぞれ出力される。
【0044】
次に、図1に示した光ハイブリッド回路を構成する要素について詳細に説明する。
(2:2MMIカプラ)
図2は、平行四辺形形状の2:2光カプラと長方形形状の2:2光カプラとを対比した図である。図2(a)は、長方形形状の2:2光カプラを示す。図2(b)は、平行四辺形形状の2:2光カプラを示す。
【0045】
図2を参照して、長方形形状の2:2光カプラの場合には、当該カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、出力端の幅方向中心位置C2に関して入力端の入力光位置(入力ポート1)と同じ位置(出力ポート1)および対称な位置(出力ポート2)の2ヶ所に、入力ビーム径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を得ることができる。
【0046】
入力ポート1の入力光の位相を0とすると、出力ポート1および出力ポート2における光の位相はそれぞれφ、φ−π/2となる。すなわち、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の間の位相が互いにπ/2(90°)異なる。出力端の幅方向中心位置C2に関し入力ポート1と対称な位置にある入力ポート2から2:2光カプラに光を入射する場合についても、上記の場合と同様である。すなわち、入力ポート2の入力光の位相を0とすると、出力ポート1における光の位相および出力ポート2における光の位相はそれぞれ、φ−π/2、φとなる。したがって、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の位相がπ/2異なる。φは、共通する位相であり、以下の説明では一般性を失わないのでφ=0とする。
【0047】
入力ポート1,2の信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2の信号光の電界振幅をO1,O2とする。上記の関係は、行列を用いて
【0048】
【数1】
【0049】
と表わされる。
同様に平行四辺形形状の2:2光カプラの場合も、カプラの幅Wと長さLを選択することで、出力端の幅方向中心位置C2に関し、入力端の入力光位置(入力ポート1)と同じ位置(出力ポート1)および対称な位置(出力ポート2)の2ヶ所に、入力ビーム径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を得ることができる。
【0050】
平行四辺形形状の2:2光カプラの場合には、入力ポート1の入力光の位相を0とすると、出力ポート1における光の位相および出力ポート2における光の位相はそれぞれφ’、φ’−π/2+αとなる。すなわち、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の位相が(+π/2−α)異なる。
【0051】
一方、出力端の幅方向中心位置C2に関し入力ポート1と対称な位置にある入力ポート2から平行四辺形形状の2:2光カプラに光を入れる場合には、入力ポート2の入力光の位相を0とすると、出力ポート1と出力ポート2の光の位相が、良好な近似でそれぞれ、φ’−π/2−α、φ’となる。すなわち2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つ
の出力光の位相が(π/2+α)だけ異なる。αは、平行四辺形の頂角と90°との差(
図2(b)に示した傾斜角度θ)にほぼ比例した光位相の変化量であり、φ’は、共通する位相である。
【0052】
上記の場合と同様に同様にφ’を省略すると、入力ポート1,2の信号光の電界振幅I1,I2と、出力ポート1,2の信号光の電界振幅O1,O2との関係は、
【0053】
【数2】
【0054】
と表わされる。
図1に示した光ハイブリッド回路は、たとえば半導体光導波路によって実現される。図3は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路を構成する半導体光導波路の一例を示す断面模式図である。図3を参照して、光ハイブリッド回路は、InP基板50と、InGaAsP層51と、InP層52とを有する。図3に示した構造体は、たとえば以下の方法により作成される。まずInP基板50上にInGaAsP層51とInP層52とをこの順にエピタキシャル成長によって成長させたウエハを準備する。次にウエハの所定の部分がドライエッチングによって除去される。これにより、InGaAsP層51をコア層として備えるハイメサ半導体導波路を作製できる。
【0055】
C帯(4〜8GHz)あるいはL帯(0.5〜1.5GHz)で使用される半導体導波路はたとえば以下のように作製される。たとえばPL(Photoluminescence)波長が1320nmとなる組成を有するInGaAsP層51と、InP層52とをInP基板50上に成長させる。InGaAsP層51の厚みはたとえば0.3μmであり、InP層52の厚みは、たとえば3μmである。このようにして準備されたウエハの所定の部分を深さAだけドライエッチングして、当該部分を除去する。深さAは、たとえば6.3μmである。
【0056】
なお、半導体基板の材質、エピタキシャル構造、エッチング深さ、導波路幅は上記のように限定されるものではなく、適切な導波モードが存在する光導波路をこの実施の形態に適用できる。たとえば半導体基板の材質を変更した光導波路として、Si導波路、SOI(Silicon On Insulator)導波路、石英ガラス導波路などがある。本実施の形態は、これらの導波路の使用を排除するものではない。
【0057】
図2(a)に示された長方形形状の2:2光カプラでは、たとえば光カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。同じく、2つの出力ポートの中心位置は、光カプラの出力端の中心位置から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。これにより、光カプラは、1つの入力ポートに入力されたビームの径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を、2つの出力ポートからそれぞれ出力することができる。
【0058】
図2(b)に示された平行四辺形形状の2:2光カプラも、上記の長方形形状の2:2光カプラと同様に設計される。すなわち、光カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。2つの出力ポートの中心位置は、光カプラの出力端の幅方向中心位置C2から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。
【0059】
平行四辺形の頂角と90°との差(=傾斜角度θ)を1.1°とすることにより、α=π/4相当の位相が得られる。入力ポート1から入力光を光カプラに入れた場合には出力ポート1と出力ポート2との間での位相差がπ/4となり、入力ポート2から入力光を光カプラに入れた場合には、出力ポート1と出力ポート2との間での位相差が3π/4となる。いずれの場合にも2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つのビームの径は互いに同じであり、それら2つの出力光ビームの強度は、入力光ビームの強度を等分したものとなる。このように、実施の形態1によれば、強度が等分され、かつ所定の位相差を有する2つの出力光を生じさせる2:2光カプラが得られる。
【0060】
なお、傾斜角度1.1°は典型値であり、実際には、屈折率や厚さなど素子構造のばらつきに応じて、素子ごとに、最適なθが1.1°近傍で小さい角度範囲でばらつくと考えられる。
【0061】
次に、平行四辺形の頂角の90°からの傾斜角度θの決定方法について説明する。上述した光導波路における導波モードの有効屈折率は、およそn=3.21程度である。さらに、光カプラの2つの出力ポートの間隔d=3μmである。光波長をたとえばλ=1.55μmとする。傾斜角度θは、位相差αに対して
【0062】
【数3】
【0063】
の関係から求められる。図2(b)に示した光カプラの場合、出力端近傍で2つの出力ポートの各々の信号光がよく集束する。このため、出力ポート1,2の光路長差が良好な近似でnd×Sinθとなる。つまり、位相差αは(3)式を波長で規格化して得られる値であることがわかる。このように、所望の位相差を与えるためには、傾斜角度θを、導波モードの有効屈折率と出力端の幅方向中心位置C2に対する出力ポート1,2の各々の間隔に応じて調節すればよい。α=π/4とした場合には、(2)式は
【0064】
【数4】
【0065】
と表わされる。
(4:4MMIカプラ)
図1に示した4:4MMIカプラ2について詳細に説明する。図4は、平行四辺形形状の4:4MMIカプラと長方形形状の4:4MMIカプラとを対比して説明した図である。図4(a)は、長方形形状の4:4MMIカプラを示し、図4(b)は、平行四辺形形状の4:4MMIカプラを示している。
【0066】
図4を参照して、カプラの幅をWとすると、長方形形状の4:4MMIカプラ(図4(a))では、入力端の幅方向中心位置C1に対して−3W/8、−W/8、+W/8、+3W/8の位置にそれぞれポート1〜4の4つの入力ポートが配置される。同様に、長方形形状の4:4MMIカプラでは、出力端の幅方向中心位置C2に対して−3W/8、−W/8、+W/8、+3W/8の位置にそれぞれポート1〜4の4つの出力ポートが配置される。なお、使用しないポートが入力側にある場合は、当該ポートに入力用光導波路を接続しなくてもよい。
【0067】
図4(a)に示される長方形形状の4:4MMIカプラでは、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0068】
入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。なお、以下では入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。
【0069】
入力ポート1に入射された入力光の位相に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、0、−3π/4、π/4、0となる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ、−3π/4、0、0、π/4となる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ、π/4、0、0、−3π/4となる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ0、π/4、−3π/4、0となる。
【0070】
入力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をそれぞれI1,I2,I3,I4とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をそれぞれO1,O2,O3,O4とする。上記の関係は、行列を用いて
【0071】
【数5】
【0072】
と表わされる。
ここで入力端の幅方向中心位置C1に対して非対称に位置する2つの入力ポート(たとえば入力ポート1と3)に光が入力される場合、出力ポート1〜4での位相差は、それぞれπ/4、−3π/4、π/4、−3π/4、となる。出力ポート1,4が対となった出力チャネルでは、位相差がπとなり、入射光が逆相で干渉する。出力ポート2,3が対となった出力チャネルでも、位相差がπとなり、入射光が逆相で干渉する。ただし、後者のチャネルでは、前者の出力チャネルと位相がπ/2異なる。したがって光90°ハイブリッドの特性が得られる。
【0073】
同様に、図4(b)に示した平行四辺形形状の4:4MMIカプラにおいても、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択する。これによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0074】
なお、入力ポートおよび出力ポートの位置を、−3W/8+Δ、−W/8−Δ、+W/8+Δ、+3W/8−Δ(Δは微小な距離であり、W/8>Δ)とする場合も同様の効果を有する。
【0075】
たとえば、カプラ幅および入力ポート1〜4の位置および出力ポート1〜4の位置を図4(a)に示した長方形形状の4:4MMIカプラと同様に設定する。ただし、平行四辺形の形状は、長方形の2つの長辺を角度θだけ傾斜させた形状に等しい。なお0°<θ<90°である。
【0076】
長方形形状の4:4MMIカプラの場合と同様に、入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。以下においても、入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。
【0077】
入力ポート1に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、0、−3π/4−β、π/4−2β、−3βとなる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、−3π/4+β、0、0−β、π/4+2βとなる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、π/4+2β、0+β、0、−3π/4+βとなる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、0+3β、π/4+2β、−3π/4+β、0となる。βは、平行四辺形の頂角と90°の差(傾斜角度θに等しい)にほぼ比例した光位相の変化量である。
【0078】
(5)式の場合と同様に、平行四辺形形状の4:4MMIカプラにおいて、入力ポート1〜4における信号光の電界振幅をI1,I2,I3,I4とし、出力ポート1〜4における信号光の電界振幅をそれぞれO1,O2,O3,O4とする。両者の関係は、
【0079】
【数6】
【0080】
と表される。
たとえば、C帯あるいはL帯の波長域で光90°ハイブリッドを使用する場合には、図4(a)に示す長方形形状の4:4MMIカプラは、たとえば、前述の入力側2:2光カプラの場合と同様の構造を有する半導体ウエハによって実現される。具体的な一例を示すと、カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ12.0μm、313μmに設計される。入力用導波路および出力用導波路の幅はたとえば2.0μmと設計される。4つの入力ポートの中心位置は、カプラの入力端の幅方向中心位置C1から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。同じく4つの出力ポートの中心位置がカプラの出力端の幅方向中心位置C2の中心位置から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。これにより上述の特性を有する4:4MMIカプラが得られる。
【0081】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0082】
次に、平行四辺形形状の4:4MMIカプラについて説明する。まず、平行四辺形の傾斜角度θは、前述の平行四辺形形状の2:2MMIカプラと同じように、次の式に従って定めることができる。
【0083】
【数7】
【0084】
互いに隣接する2つの出力ポート(出力ポート1,2または出力ポート3,4)の中心位置の間隔は前述の2:2光カプラの場合と等しく、導波モードの有効屈折率も、上記の有効屈折率にほぼ等しい。したがってβ=π/4を満たす傾斜角度θは、2:2光カプラの場合と同様に1.1°となる。
【0085】
β=π/4の場合には、前述の(6)式は、
【0086】
【数8】
【0087】
と表される。
平行四辺形形状の4:4MMIカプラの入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。式(8)から、入力ポート1に入射された入力光の位相に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、0、π、−π/4、−3π/4となる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、−π/2、0、−π/4、−π/4となる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、+3π/4、+π/4、0、πとなる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、3π/4、3π/4、−π/2、0となる。
【0088】
(2:2MMIカプラと4:4MMIカプラとの組み合わせ)
図1を再び参照して、平行四辺形形状の2:2MMIカプラ1と、平行四辺形形状の4:4MMIカプラ2とを組み合わせた構成について説明する。
【0089】
2:2MMIカプラ1の入力ポート2に電界振幅がI、位相が0の入射光を入れたとする。この場合の各出力ポートの電界振幅は、式(4)および式(8)から、以下のように表わされる。なお式(9)では共通の位相は省略して表記されている。
【0090】
【数9】
【0091】
式(9)から、等しい光強度を有し、位相が互いに異なる光が4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートから出力されることが分かる。第1〜第4の出力ポートから出力された出力光の位相は、それぞれ、π/4、−π/4、0、0である。
【0092】
一方、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れたとする。この場合の各出力ポートの電界振幅は、式(4)および式(8)から、以下のように表わされる。なお式(10)では共通の位相は省略して表記されている。
【0093】
【数10】
【0094】
式(10)から、等しい光強度を有し、位相が互いに異なる光が4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートから出力されることが分かる。第1〜第4の出力ポートから出力された出力光の位相は、それぞれ、−3π/4、−π/4、π、0である。
【0095】
4:4MMIカプラ2の第3、第4の出力ポートには、長方形形状の2:2光カプラ3が接続される。2:2光カプラ1の第2の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる。この場合の2:2光カプラ3の2つの出力ポートの電界振幅は、式(9)の関係から、次のように表わされる。なお式(11)では共通の位相は省略して表記されている。
【0096】
【数11】
【0097】
一方、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の光が入射した際に、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとから出射される光の電界振幅は、式(10)の関係から、次のように表わされる。なお式(12)では、共通の位相を省略して表記されている。
【0098】
【数12】
【0099】
ここで式(11)の右辺の各要素と式(12)の右辺の各要素との間で位相を比較する。これにより、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、π、0、+π/2、−π/2になることがわかる。
【0100】
すなわち、入力用の光導波路5,10に、電界振幅がI、位相が0の入射光を入れると、第1の出力チャネル(4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポート)と第2の出力チャネル(2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポート)とから出射光が出射される。2:2MMIカプラ1の傾斜角度および4:4MMIカプラ2の傾斜角度を適切に設定することにより、4つの出射光の入射光に対する位相差を、それぞれπ、0、−π/2、+π/2にすることができる。
【0101】
このように、図1に示した構成によれば、第1の出力チャネルから出力される出力信号光対と、第3の出力チャネルから出力される出力信号光対との間に直交位相関係が成立する。さらに、各チャネルでは、2つの信号光の位相が互いに180°異なる。実施の形態1によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを備えるとともに、2つの出力チャネルの各々において、位相が互いに180°異なる2つの出力光をそれぞれ伝達する2つの導波路が隣接するように構成された光90°ハイブリッドを実現できる。
【0102】
図1に示した構成では、光導波路は、MMIカプラの入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直に構成される。ただし、光導波路とMMIカプラとの接続による接続損失が小さくなるように、MMIカプラの傾斜角度に応じて、光導波路を入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直方向から傾かせてもよい。
【0103】
図5は、図1に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。なお計算にはBPM法(ビーム伝搬法)を用いた。
【0104】
図5(a)〜図5(d)は、図1に示した光ハイブリッド回路において、強度が互いに等しく、かつ位相差を有する2つの信号光を2ヶ所から光ハイブリッド回路に入射した場合の伝搬光の光強度分布を示している。2つの信号光の波長はともに1550nmであり、2つの信号光の偏波モード(偏光方向)はともにTEモードである。
【0105】
図5(a)の場合における位相差を基準とした、2つの入射光の相対位相差は、0°(図5(a))、90°(図5(b))、180°(図5(c))および270°(図5(d))である。出力ポート1〜4の光強度の比は、0:1:0.5:0.5(図5(a))、0.5:0.5:1:0(図5(b))、1:0:0.5:0.5(図5(c))、0.5:0.5:0:1(図5(d))となっている。
【0106】
出力ポート1〜4における位相差を、2つの入射光の伝搬成分が有する位相差で表現すると、0、π、−π/2、+π/2(図5(a))、+π/2、−π/2、0、π(図5(b))、π、0、+π/2、−π/2(図5(c))、および−π/2、+π/2、π、0(図5(d))となる。すなわち、第1および第2の出力ポートにより構成されたチャネルと、第3および第4の出力ポートから構成されたチャネルとは直交位相関係にある。このことから、図1に示した光ハイブリッド回路が90°ハイブリッドとして動作することが確認できる。
【0107】
さらに、図5から、出力ビーム径が入力ビーム径と等しいことが分かる。このことから入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できることがわかる。
【0108】
図14に示された構成によれば、4:4MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な関係にある2つの位置から4:4MMIカプラに光を入力した場合には、出力光導波路の交差部が発生する。しかしながら、図1に示された構成では、入力用の2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2および出力用の2:2光カプラ3の形状を適切に定めることによって、4:4MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な関係にある2つの位置に光を入力しても、出力光導波路の交差部を発生させなくすることができる。
【0109】
具体的には、2:2光カプラ1および4:4MMIカプラ2の形状が平行四辺形とされ、2:2光カプラ3の形状が長方形とされる。さらに、2:2光カプラ1および4:4MMIカプラ2の各々について、平行四辺形の傾斜角度(図1ではθと表わす)が適切に調整される。
【0110】
実施の形態1によれば、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。複数のカプラを接続する際、後段のカプラでは、複数の入力ポートの位相差に応じて出力特性が変化する。前段のカプラの出力位相差を平行四辺形の傾斜角度によって調整できるので、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0111】
したがって図1に示すように、位相シフタが省略された光90°ハイブリッドが実現できる。図1の構成によれば、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなる。
【0112】
なお、製造条件の変動により、平行四辺形の大きさが多少変動することが考えられる。しかしながら平行四辺形の傾斜角度は、露光パターンで決定される角度からずれることは起こりにくい。位相シフト量は傾斜角度に依存するので、位相シフト量を安定させることができる。このため、導波路型の位相シフタを用いる場合よりも、位相シフト量を安定させることができる。
【0113】
図1の構成によれば、位相シフタを省略しても、出力ビーム径が増大することを抑制できる。これにより安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。さらに位相シフタ導波路を省略することができるので、光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0114】
ただし、実施の形態1は位相シフタの使用を排除するものではない。図6は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の他の構成例を示す図である。図6を参照して、光ハイブリッド回路100Aは、2:2MMIカプラ1Aと、4:4MMIカプラ2Aと、2:2MMIカプラ3とを備える。光ハイブリッド回路100Aは、さらに、光導波路5,10,19,20,21,21Aを備える。
【0115】
図1に示した光ハイブリッド回路100と図6に示した光ハイブリッド回路100Aとの相違点は次の通りである。まず、4:4MMIカプラ2Aおよび、その前段の2:2MMIカプラ1Aの形状がともに長方形である。さらに、4:4MMIカプラの第3および第4の出力ポート3,4と2:2光カプラ3の第1および第2の入力ポートとが光導波路21,21Aで結合される。光導波路21,21Aのうちのいずれか一方(図6に示した構成では、光導波路21A)に、位相をπ/4シフトさせる位相シフタが設けられる。
【0116】
なお、図6に示した光ハイブリッド回路100Aの構造に関する他の点については、基本的には、図1に示した光ハイブリッド回路100の構造と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0117】
図6に示した構成においても、4:4MMIカプラ2Aの入力端の中心に対して非対称となる2ヶ所に信号光(QPSK信号光)および局発光が入力される。この構成によっても出力光導波路の交差部を発生させなくすることができる。
【0118】
このように、実施の形態1によれば、光ハイブリッド回路は、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。2つの出力チャネルの各々は、隣接した2つの光導波路を有する。2つの光導波路を伝播する出力光の位相が180°異なる。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部を必要としなくなる。したがって小型であるとともに、光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適である光受信回路を実現できる。
【0119】
さらに、実施の形態1によれば、4:4MMIカプラの入力端の幅と出力端との幅が同じである。したがってMMIカプラの小型化を実現できる。幅が広がらない形状であるため、入力ビームの径と同じ径のビームが出力側に結像する。これにより、出力ビーム径が増大することを防ぐことができるので、信号品質の劣化を防止できる。
【0120】
なお、上記の説明ではα=π/4としたが、α=π/4+2p×π(pは整数)となるように2:2光カプラ1の傾斜角度が調整されてもよい。同じく、β=π/4+2q×π(qは整数)となるように4:4MMIカプラ2の傾斜角度が調整されてもよい。つまり、平行四辺形形状のカプラから出力される出力光対の相対的位相差(2つの信号間の位相差)が、その平行四辺形の幅および長さとそれぞれ同じ幅および長さを有する長方形状のカプラの出力光対の相対位相差に対してπ/4+(整数)×2πとなればよい。
【0121】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0122】
図7は、実施の形態2に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図7を参照して、光ハイブリッド回路101は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22と長方形形状の2:2光カプラ3とを備える。平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22と長方形形状の2:2光カプラ3とは縦続接続される。
【0123】
光ハイブリッド回路101は、さらに、入力用の光導波路10,27と、出力用の光導波路17〜20とを備える。入力用の光導波路27は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1の入力ポート(入力ポート6)に接続される。入力用の光導波路10は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第2の入力ポート2(入力ポート7)に接続される。出力用の光導波路17〜20は平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポート(出力ポート28,29)、および長方形形状の2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートに接続される。
【0124】
なお光ハイブリッド回路101を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態2では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0125】
後で詳細に説明するように、実施の形態2では、入力用の光導波路27,10は、2:4MMIカプラ22の入射端を幅方向に3等分する2ヶ所に接続されている。これら2つの位置は、入射端の中心に対して対称である。
【0126】
図8は、平行四辺形形状の2:4光カプラと長方形形状の2:4光カプラとを対比した図である。図8(a)は、長方形形状の2:4光カプラを示す。図8(b)は、平行四辺形形状の2:4光カプラを示す。
【0127】
まず、図8(a)に示す長方形形状の場合の2:4光カプラの作用について説明する。入力ポート1,2に入射させる信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をO1,O2,O3,O4とする。実施の形態1の場合と同様に考えると、長方形形状の2:4MMIカプラの特性は、以下の式に従って説明できる。
【0128】
【数13】
【0129】
図8(a)に示す長方形形状の2:4光MMIカプラの幅および長さを、それぞれ18.0μmおよび233μmとし、入力用導波路および出力用導波路の幅を2.0μmとし、入力ポートの中心位置を、2:4光MMIカプラの入力端の中心位置から3.0μmとする。これにより、上述の特性を有する2:4光MMIカプラが得られる。4つの出力ポートの位置は、2:4光MMIカプラの出力端の幅方向中心位置から±3.0μmおよび±6.0μmの位置とする。これにより、出力ポート1,2間の間隔および出力ポート3,4間の間隔が、実施の形態1と同じく3μmとなる。ただし、実施の形態2では、出力ポート2,3間の間隔が6μmであり、実施の形態1での4:4光MMIカプラでの間隔(3μm)の2倍となる。
【0130】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0131】
次に、図8(b)に示した平行四辺形形状の2:4MMIカプラと図8(a)に示した長方形形状の2:4MMIカプラとの違いについて説明する。
【0132】
まず平行四辺形形状の2:4光MMIカプラの幅、長さ、入力用導波路および出力用導波路の幅、入力ポートの中心位置(入力端の幅方向中心位置からの距離)、出力ポートの中心位置(出力端の幅方向中心位置から距離)を、上述した長方形形状の2:4MMIカプラの対応する値と同じにする。図6(a)に示した長方形形状の2:4MMIカプラでは、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0133】
入力ポート1,2に入力光を入れる場合、入力光の位相を0とすると、出力ポート1〜4における光の位相は、入力ポート1に対してそれぞれ、−π/4、0、0、3π/4となり、入力ポート2に対してそれぞれ3π/4、0、0、−π/4となる。なお、共通の位相は省略して表示されている。
【0134】
入力ポート1,2の信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をO1,O2,O3,O4とする。上記の関係は、行列を用いて以下のように表わすことができる。
【0135】
【数14】
【0136】
長方形形状の2:4MMIカプラと同様に、平行四辺形形状の2:4MMIカプラも、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択する。これにより、入力ポート1、2のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0137】
入力ポート1、2に入力光を入れる場合、入力光の位相を0とすると、出力ポート1〜4における光の位相は、入力ポート1に対してそれぞれ、−π/4−γ、0、+2γ、3π/4+3γとなり、入力ポート2に対してそれぞれ、3π/4−3γ、−2γ、0、−π/4+γとなる。ここでγは、平行四辺形の頂角と90°の差(図8では角度θで示す)にほぼ比例した光位相の変化量であり、出力ポート間隔に応じた変化を出力ポートの光位相に対して与える。
【0138】
平行四辺形形状の2:4MMIカプラにおける、入力信号光の電界振幅をI1,I2と、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅O1,O2,O3,O4との関係は、行列を用いて次のように表わされる。
【0139】
【数15】
【0140】
出力ポート3,4間の間隔(および出力ポート1,2間の間隔)をdとすると、平行四辺形の傾斜角度θは、前述の2:2光カプラの場合と同様に、式(7)を用いて決めることができる。上記の式(7)においてβをγに置き換えればよい。
【0141】
隣接する出力ポートの中心位置の間隔dが前述の2:2光カプラの場合と等しく、導波モードの有効屈折率もほぼ等しい。これによりγ=π/4を与える傾斜角度θは、2:2光カプラの場合と同様の1.1°となる。
【0142】
この場合、前述の(15)式は
【0143】
【数16】
【0144】
と表わされる。
式(16)から、入力ポート1に光が入力された場合、出力ポート1〜4には等しい光強度で位相が異なる光が出力され、出力ポート1〜4における出力光の位相が、それぞれ、−π/2、0、π/2、−π/2となることが分かる。同じく式(16)から、入力ポート2に光が入力された場合にも、出力ポート1〜4には等しい光強度で位相が異なる光が出力され、各出力ポート1〜4における出力光の位相が、それぞれ、0、−π/2、0、0となることが分かる。
【0145】
図7に戻り、実施の形態2では、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第3、第4の出力ポートに長方形形状の2:2光カプラ3が接続される。2:4MMIカプラ22の第1の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる場合、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポートおよび2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートの電界振幅は、式(16)の関係から、
【0146】
【数17】
【0147】
と表わされる。なお、式(17)は、共通の位相は省略して表記されている。
同様に、2:4MMIカプラ22の第2の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる場合、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポートおよび2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートの電界振幅は、式(16)の関係から、
【0148】
【数18】
【0149】
と表わされる。なお、式(18)は、共通の位相を省略して表記されている。
式(17)の右辺の各要素と式(18)の右辺の各要素との間で位相を比較する。これにより、2:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、−π/2、π/2、π、0になることがわかる。
【0150】
このように、実施の形態2では、2つの入射光が、平行四辺形形状の2:4MMIカプラの第1および第2の出力ポートと長方形形状の2:2光カプラの第1および第2の出力ポートにおいて4つの出射光に変換される。平行四辺形の傾斜角度θを適切に設定することによって、4つの出ポートにおける光の位相差が、それぞれ、−π/2、π/2、π、0となる。したがって、実施の形態2によれば、直交位相関係をもつ2つの出力チャネルを有し、かつ、各チャネルでは、位相が互いに180°異なる2つの導波路が隣接した光90°ハイブリッドを実現できる。
【0151】
図9は、図7に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。なお実施の形態1と同様に、計算にはBPM法を用いた。
【0152】
図9(a)〜図9(d)は、図7に示した光ハイブリッド回路において、強度が互いに等しく、かつ位相差を有する2つの信号光を2ヶ所から光ハイブリッド回路に入射した場合の伝搬光の光強度分布を示している。2つの信号光の波長はともに1550nmであり、2つの信号光の偏波モード(偏光方向)はともにTEモードである。
【0153】
図9(a)の場合における位相差を基準とした、2つの入射光の相対位相差は、0°(図9(a))、90°(図9(b))、180°(図9(c))および270°(図9(d))である。出力ポート1〜4の光強度の比は、0.5:0.5:0:1(図9(a))、0:1:0.5:0.5(図9(b))、0.5:0.5:1:0(図9(c))、1:0:0.5:0.5(図9(d))となっている。
【0154】
出力ポート1〜4における位相差を、2つの入射光の伝搬成分が有する位相差で表現すると、−π/2、π/2、π、0(図9(a))、π、0、+π/2、−π/2(図9(b))、+π/2、−π/2、0、π(図9(c))、0、π、−π/2、+π/2(図9(d))となる。すなわち、出力ポート1,2と出力ポート3,4とは直交位相関係となっている。このことから、図7に示した光ハイブリッド回路が90°ハイブリッド動作することが確認できる。
【0155】
さらに、図9から、出力ビーム径が入力ビーム径と等しいことが分かる。このことから実施の形態1と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できることがわかる。
【0156】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0157】
さらに、実施の形態2に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0158】
さらに、実施の形態2によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0159】
以上のように実施の形態2によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0160】
なお、実施の形態1と同じく、γはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0161】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る光受信器は、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられるデジタルコヒーレント光受信器である。
【0162】
図10は、実施の形態3に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10を参照して、光受信器200は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路100と、光検出器としてのフォトダイオード31a〜31dと、TIA33a,33bと、AD(Analog-Digital)変換回路34a,34bと、デジタル演算回路35とを備える。
【0163】
フォトダイオード31a〜31dは、出力用の光導波路17,18,19,20からそれぞれ出力された光をアナログ電気信号に変換する。TIA33aは、フォトダイオード31a,31bから出力されたアナログ電気信号を差動増幅する。同じくTIA33bは、フォトダイオード31c,31dから出力されたアナログ電気信号を差動増幅する。
【0164】
AD変換回路34aはTIA33aによって増幅されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。同じくAD変換回路34bはTIA33bによって増幅されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。デジタル演算回路35は、AD変換回路34a,34bから出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行する。具体的には、デジタル演算回路35は、局発光の位相を基準としたQPSK信号光の位相差をリアルタイムで算出する。
【0165】
フォトダイオード31a〜31dには、たとえば導波路型構造の検出器が使用される。具体例を示すと、フォトダイオード31a〜31dは、InP基板上に光ハイブリッドとモノリシックに集積して作製される。フォトダイオードと光ハイブリッドとがモノリシックに集積されているので、出力光をフォトダイオードに入射させる際に光学系のアライメントが不要になる。したがって光受信器の組立てを簡易にできる。
【0166】
入力ポート1にはTE偏波のQPSK信号が入力され、入力ポート2にはTE偏波の局発光が入力される。各入射光は、たとえばOIF(The Optical Internetworking Forum
)で策定された100G−DP−QPSK方式の規格に準拠した仕様のものである。
【0167】
100G−DP−QPSK方式の光信号の受信のため、入力導波路の幅と出力導波路の幅は、ともに2.0μmにすればよい。発明者等の検証では、素子長を100μmとし、3dB帯域として32GHz以上の応答特性が得られた。
【0168】
上記構成によって、局発光の位相を基準としたQPSK信号光の位相差をリアルタイムに算出できるので、DP−QPSK信号の光受信器を構成できる。
【0169】
なお、実施の形態3に係る光受信器の構成は上記の構成に限定されるものではない。図11は、実施の形態3に係る光受信器の他の具体例を示した図である。図11を参照して、光受信器200Aは、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路100Aを備える。図12は、実施の形態3に係る光受信器のさらに他の具体例を示した図である。図12を参照して、光受信器201は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路101を備える。光受信器200A,201の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。
【0170】
TIA33a,33bの各々が有する2つの差動信号入力端子は相互に隣接している。図10〜図12のいずれの構成によっても、位相が互いに180°異なる2つの光信号をそれぞれ出力する2つのポートを隣接させることができる。したがって2つの出力用導波路の交差する部分が発生しないので、光ハイブリッドの特定の劣化を防ぐことができる。以上の理由により、実施の形態3によれば、デジタルコヒーレント方式に好適な光受信器を提供することができる。
【0171】
[実施の形態4]
実施の形態4に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1,2と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0172】
図17は、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図17(a),(b)を参照して、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路102は、長方形形状の2:4MMIカプラ42と、平行四辺形形状の2:2光カプラ1とを備える。2:4MMIカプラ42と、2:2光カプラ1とは縦続接続される。
【0173】
光ハイブリッド回路101は、さらに、入力用の光導波路10,27と、出力用の光導波路17〜20とを備える。入力用の光導波路27は、2:4MMIカプラ42の第1の入力ポート(入力ポート43)に接続される。入力用の光導波路10は、2:4MMIカプラ42の第2の入力ポート2(入力ポート44)に接続される。出力用の光導波路17,18は、2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポート(出力ポート45,46)にそれぞれ接続される。2:4MMIカプラ42の第3および第4の出力ポート(出力ポート47,48)は、2:2光カプラ1の第1および第2の入力ポートにそれぞれ接続される。出力用の光導波路19,20は、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートにそれぞれ接続される。
【0174】
なお光ハイブリッド回路102を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態4では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0175】
実施の形態2と同様に、実施の形態4では、入力用の光導波路27,10は、2:4MMIカプラ42の入射端を幅方向に3等分する2ヶ所に接続されている。これら2つの位置は、入射端の中心に対して対称である。
【0176】
一例では、長方形形状2:4光カプラ42の幅Wおよび長さLを、それぞれ18.0μmおよび233μmとし、入力用導波路および出力用導波路の幅を2.0μmとし、長方形形状2:4光カプラ42の入力ポートの中心位置を、2:4光MMIカプラ42の入力端の中心位置から3.0μmとする。これにより、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光が得られるという特性を有する2:4光MMIカプラが得られる(図8(a))を参照)。2:4MMIカプラ42の4つの出力ポートの位置は、2:4光MMIカプラの出力端の幅方向中心位置から±3.0μmおよび±6.0μmの位置とする。これにより、出力ポート1,2間の間隔および出力ポート3,4間の間隔が、実施の形態1と同じく3μmとなる。
【0177】
上記の光ハイブリッド回路の構造を図17(a),(b)を用いて説明する。図17(a)に長方形形状2:4光カプラ42の出力ポート位置を示した。出力ポート位置は、出力ポート45,46、長方形形状カプラ42の出力端の中心位置、出力ポート47,48が順に、等間隔aになるように配置される。
【0178】
また、図17(b)に示すように、出力導波路17,18をポート45,46の位置からカプラ1と同様の角度で傾斜させることもできる。平行四辺形形状の2:2カプラ1の傾斜角度が大きい場合、図17(a)に示された構造では、出力導波路18と出力導波路19とが接触してしまうことがありえる。その場合は、出力導波路18,19を図17(b)に示すような、2:4光カプラ42の出射端面に対して垂直方向から傾かせた構造とすればよい。
【0179】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0180】
実施の形態1と同様に、α=π/4(αは光位相の変化量)となるように、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の傾斜角度θが定められる。これにより、実施の形態2と同様に、2つの入力光による出力信号光の間の相対位相差は、2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおいてそれぞれ−π/2,π/2,π,0になる。
【0181】
実施の形態4では、2つの入射光が、長方形形状の2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポートと、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおいて4つの出射光に変換される平行四辺形の傾斜角度θを適切に設定することによって、4つの出力ポートにおける光の位相差が、それぞれ−π/2,π/2,π,0になる。したがって、実施の形態4によれば、直交位相関係を持つ2つの出力チャネルを有し、かつ、各チャネルでは、位相が互いに180°異なる2つの導波路が隣接した光90°ハイブリッドを実現できる。図17に示すように、たとえば光導波路27にはQPSK信号光が入力され、光導波路10には局発光が入力される。光導波路17,18からの出射光はIチャネルの光信号として用いられ、光導波路19,20からの出射光はQチャネルの光信号として用いられる。
【0182】
さらに、実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同様に、光ハイブリッド回路からの出力ビームの径を光ハイブリッド回路に入力されるビーム径と等しくすることができる。これにより実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できる。
【0183】
さらに、実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合に、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、実施の形態4によれば、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0184】
さらに、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0185】
さらに、実施の形態4によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0186】
以上のように実施の形態4によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0187】
図18は、実施の形態4に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10および図18を参照して、光受信器202は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路102を備える。光受信器202の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。図18に示された光ハイブリッド回路102の構造は、図17(a)に示された構造に対応するが、図17(b)に示された構造へと置き換えられることもできる。
【0188】
なお、実施の形態1と同じく、αはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0189】
[実施の形態5]
実施の形態5に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1,2,4と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0190】
図19は、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図19を参照して、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路103は、長方形形状の2:2MMIカプラ1Aと、長方形形状の4:4MMIカプラ2Aと、平行四辺形形状の2:2光カプラ1とを備える。光ハイブリッド回路103は、さらに、光導波路5,10,17A,18A,19,20を備える。2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2A、2:2光カプラ3も、光導波路である。2:2光カプラ1Aと、4:4MMIカプラ2Aと、2:2光カプラ1とは縦続接続される。
【0191】
4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)には光導波路17A,18Aがそれぞれ接続される。光導波路17A,18Aは平行四辺形の形状を有する。4:4MMIカプラ2Aの第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)には、2:2光カプラ1の入力チャネル、すなわち第1および第2の入力ポートが接続される。2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポート(出力ポート15,16)には、光導波路20,19がそれぞれ接続される。
【0192】
図19に示された構成によれば、4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)が第1の出力チャネルを構成し、4:4MMIカプラ2Aの第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)が第2の出力チャネルを構成する。さらに、2:2光カプラ1の2つの出力ポートが第3の出力チャネルを構成する。
【0193】
なお光ハイブリッド回路103を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態5では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0194】
光導波路5に入力された光は、2:2光カプラ1Aの第2の入力ポートに入力される。これにより2:2光カプラ1の2つの出力ポートから2つの光がそれぞれ出力される。これらの2つの出力光は4:4MMIカプラ2Aの第2および第3の入力ポート(入力ポート7,8)にそれぞれ入力される。一方、光導波路10に入力された光は、4:4MMIカプラ2Aの第4の入力ポート(入力ポート9)に入力される。
【0195】
4:4MMIカプラ2Aの第2〜第4の入力ポートに光が入力されることにより4:4MMIカプラ2Aの第1〜第4の出力ポートの各々から光が出力される。4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)から光導波路17A,18Aを経由して光が出力される。一方、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)から出力された光は、2:2光カプラ1の第1および第2の入力ポートにそれぞれ入力される。これにより、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートから光導波路19,20を介して光が出力される。すなわち、上記した第1および第3の出力チャネルから、第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とがそれぞれ出力される。
【0196】
たとえば、C帯あるいはL帯の波長域で光90°ハイブリッドを使用する場合には、図2(a)に示された長方形形状の2:2光カプラと同じく、長方形形状の光カプラ1Aの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。図2(b)に示された平行四辺形形状の2:2光カプラと同じく、平行四辺形形状の光カプラ1の幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。
【0197】
光カプラ1,1Aでは、2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。同じく、光カプラ1,1Aでは、2つの出力ポートの中心位置C2は、光カプラの出力端の中心位置から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。なお、光カプラ1,1Aの各々の幅方向中心位置C1,C2は、図2を参照することにより理解可能である。
【0198】
長方形形状の4:4MMIカプラ2Aは、図4(a)に示す長方形形状の4:4MMIカプラと同じく、前述の入力側2:2光カプラ1Aの場合と同様の構造を有する半導体ウエハによって実現される。具体的な一例を示すと、カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ12.0μm、313μmに設計される。入力用導波路および出力用導波路の幅はたとえば2.0μmと設計される。4つの入力ポートの中心位置は、カプラの入力端の幅方向中心位置C1から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。同じく4つの出力ポートの中心位置がカプラの出力端の幅方向中心位置C2から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。これにより、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光が得られるという特性を有する4:4MMIカプラが得られる。
【0199】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0200】
実施の形態1と同様に、α=π/4(αは光位相の変化量)となるように、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の傾斜角度θが定められる。これにより、図19に示す光ハイブリッド回路103では、入力端の幅方向中心位置C1に対して非対称に位置する2つの入力ポート(たとえば入力ポート8,9)に光が入力される場合、4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、π、0、+π/2、−π/2になる。すなわち、2:2MMIカプラ1の傾斜角度を適切に設定することにより、4つの出射光の入射光に対する位相差を、それぞれπ、0、−π/2、+π/2にすることができる。
【0201】
このように、図19に示した構成によれば、第1の出力チャネルから出力される出力信号光対と、第3の出力チャネルから出力される出力信号光対との間に直交位相関係が成立する。さらに、各チャネルでは、2つの信号光の位相が互いに180°異なる。実施の形態5によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを備えるとともに、2つの出力チャネルの各々において、位相が互いに180°異なる2つの出力光をそれぞれ伝達する2つの導波路が隣接するように構成された光90°ハイブリッドを実現できる。
【0202】
たとえば光導波路5にはQPSK信号光が入力され、光導波路10には局発光が入力される。光導波路17A,18Aからの出射光はIチャネルの光信号として用いられ、光導波路19,20からの出射光はQチャネルの光信号として用いられる。
【0203】
図19に示した構成では、光導波路は、MMIカプラ2Aの入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直に構成される。たとえばただし、光導波路とMMIカプラとの接続による接続損失が小さくなるように、MMIカプラの傾斜角度に応じて、光導波路を入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直方向から傾かせてもよい。
【0204】
さらに、実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同様に、光ハイブリッド回路からの出力ビームの径を光ハイブリッド回路に入力されるビーム径と等しくすることができる。これにより実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できる。
【0205】
さらに、実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合に、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、実施の形態5によれば、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0206】
さらに、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0207】
さらに、実施の形態5によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0208】
以上のように実施の形態5によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0209】
図20は、実施の形態5に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10および図20を参照して、光受信器203は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路103を備える。光受信器203の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。
【0210】
なお、実施の形態1と同じく、αはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0211】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0212】
1,1A,3 2:2光カプラ、2,2A 4:4MMIカプラ、5,10,17〜21,17A,18A,21A,27 光導波路、6〜9,43,44 入力ポート、11〜16,45〜48 出力ポート、22,42 2:4MMIカプラ、31a〜31d フォトダイオード、34a,34b AD変換回路、35 デジタル演算回路、50 InP基板、51 InGaAsP層、52 InP層、60 位相シフタ導波路、100,100A,101,102,103 光ハイブリッド回路、200,200A,201,202,203 光受信器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに用いられる光ハイブリッド回路および光受信器、ならびに光ハイブリッド回路に用いられる光カプラに関する。
【背景技術】
【0002】
位相変調光通信は、伝送距離の長距離化および伝送容量の増大に適している。このため、たとえば10G−DPSK(Differential Phase shift Keying)方式、40G−DQPSK(Differential Quadrature Phase shift Keying)方式などといった、各種の通信方式の普及が進められている。10G−DPSK方式あるいは40G−DQPSK方式では、光受信器は、変調された光信号を受信するとともに、当該光信号を復調する。復調のために信号ビット間の位相差が検出される。位相差の検出のために、1ビット遅延器と呼ばれる光干渉計が用いられる。
【0003】
近年では、長距離伝送および大容量伝送にさらに適した、DP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)方式などのデジタルコヒーレント方式が開発されている。デジタルコヒーレント方式では、変調された光信号を復調するために、上記の1ビット遅延器に代わり、光90°ハイブリッドが用いられる。これまでに、光90°ハイブリッドに関して、いくつかの提案がなされている(たとえば特許文献1および非特許文献1を参照)。
【0004】
図13は、光90°ハイブリッドの一例を説明するための図である。図13を参照して、デジタルコヒーレント方式では、QPSK信号光と局発光(局部発振光)とが光90°ハイブリッド回路に入力される。光90°ハイブリッド回路は、QPSK信号光および局発光の各々を4つの出力ポートch1〜ch4に分配する。
【0005】
図13に示されたS−L,S+L,S−jLおよびS+jLは、出力ポートch1〜ch4にそれぞれ出力された光信号を表わす。Sは、QPSK信号光の電界振幅、Lは局発光の電界振幅を表わす。なお、この説明では、QPSK信号光の偏光方向と局発光の偏光方向とは同じとしている。
【0006】
ch1(S−L)とch2(S+L)との間の位相差は180°である。同様に、ch3(S−jL)とch4(S+jL)との間の位相差も180°である。一方、ch3(S−jL),ch4(S+jL)の対と、ch1(S−L),ch2(S+L)の対との間の位相差は90°である。
【0007】
QPSK信号光と局発光との間の周波数の差によって、各出力ポートから出力された光信号の強度にビートが生じるため、出力光の強度が振動する。出力ポートch1,ch2の間では、互いに逆相の関係で2つの出力光信号の強度が振動する。同じく、出力ポートch3,ch4の間でも、互いに逆相の関係で2つの光信号の強度が振動する。
【0008】
出力ポートch1,ch2の各々から出力された光信号は1対の光検出器によって検出される。出力ポートch3,ch4の各々から出力された光信号は、もう1対の光検出器で検出される。これら2対の光検出器からの信号を差動検出することによって、QPSK信号光と局発光との電界振幅の積に比例した強度を有する信号がヘテロダイン検出される。なおヘテロダイン検出は、公知の手段によって実現される。デジタルコヒーレント方式では、信号光位相が検出信号から実時間でデジタル的に検出される。このように、光90°ハイブリッドはデジタルコヒーレント方式にとって不可欠であるとともに重要な受信用光回路である。
【0009】
光90°ハイブリッドは、たとえば石英ガラスを用いた平面型光回路として作製される。これにより光90°ハイブリッドと光検出器とが組み合わされた小型の受信モジュールを実現できる。また、半導体光導波路によって光90°ハイブリッドを作製することも試みられている。この場合には、光検出器と光90°ハイブリッドとがモノリシックに集積された、さらに小型の受信モジュールが実現できると考えられる。このため、半導体光導波路による光90°ハイブリッドの開発が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−171922号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lucas B. Soldano and Erik C. M. Pennings, “Optical Multi-Mode Interference Devices Based on Self-Imaging”, Journal of Lightwave Technology, Vol. 13, No. 4, pp. 615-627, April 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の非特許文献1では、長方形形状の多モード干渉計(MMI)光導波路を用いた光90°ハイブリッドが記載されている。具体的には、非特許文献1には、4つの入力ポートと4つの出力ポートとを有する4:4MMIカプラが示されている。
【0013】
図14は、非特許文献1に示された4:4MMIカプラを説明するための図である。図14を参照して、4:4MMIカプラの4つの入力ポートのうち、MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な位置にある2つのポートに信号光および局発光がそれぞれ入力される。これによって、4:4MMIカプラが90°ハイブリッドとして機能する。非特許文献1によれば、図14に示された構成において、2つの出力光の間の位相差が180°となるポート対は、外側に位置するポート1およびポート4からなる対、および内側に位置するポート2およびポート3からなる対である。図14ではポート1,4に「Q」の符号が付され、ポート2,3に「I」の符号が付される。
【0014】
1対の光検出器から2つの光電流が出力される。それら2つの光電流を検出するために、一般に、TIA(Transimpedance Amplifier)が用いられる。通常の場合、TIAの2つの差動信号入力端子は相互に隣接している。1対の光検出器の2つの出力端子と、TIAの2つの入力端子とを接続する電気配線はできるだけ短いことが望ましい。したがって光検出器とTIAとをできるだけ近接して配置することが求められる。このためには、光90°ハイブリッドにおいて、位相が互いに180°異なる2つの光信号をそれぞれ出力する2つのポートを隣接させることが必要になる。
【0015】
しかしながら、非特許文献1に記載された4:4MMIカプラの構成によれば、2つの光導波路が交差した交差部が生じる。具体的には、図14に示されるように、たとえば出力ポート1に接続された光導波路が出力ポート2,3にそれぞれ接続された2つの光導波路と交差する。2つの光導波路が交差することにより、光導波路の伝搬損失あるいは信号光の混合によるクロストークが発生する。このため光90°ハイブリッドの光学特性が劣化してしまうという課題が発生する。
【0016】
特許文献1でも、2:4MMI光導波路(2入力4出力)を用いた光90°ハイブリッドが記載されている。上述のように、非特許文献1に示された4:4MMIでは、2つの入力ポートがMMIの幅方向中心位置に対して非対称な位置に設けられている。これに対して、特許文献1で開示された光90°ハイブリッドでは、2つの入力ポートがMMIの幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられている。
【0017】
4つの出力ポートによって、各々が2つの出力ポートを有する2つの出力チャネルが構成され、各チャネルでは2つの出力ポートが隣接している。入力ポートおよび出力ポートの各々は光導波路に接続されている。以下では、このような構造を備えたMMIカプラを「2:4MMIカプラ」と表記する。
【0018】
特許文献1では、光90°ハイブリッドの2種類の構成が記載されている。図15は、特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの1つの構成を示した図である。図15を参照して、1つの出力チャネルに対応して2:2MMIカプラが設けられる。その出力チャネルの2つのポートのうちの一方のポートに位相シフタ導波路60が接続される。なお、「2:2MMIカプラ」は、2入力2出力型のMMIカプラを表わしている。位相シフタ導波路60は、当該ポートから出力された光の位相を所定量シフトさせる。
【0019】
位相シフタ導波路60は、2:2MMIカプラに入力する2つの信号成分間の位相差を整合するためのものである。位相整合された2つの光信号が2:2MMIカプラに入力されることにより、強度が等しく配分され、かつ、180°の位相差をもつ2つの出力光が2:2MMIカプラから出力される。
【0020】
図16は、特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの別の構成を示した図である。図16を参照して、2:4MMIは、出力端の幅W2が入力端側の幅W1の約2倍となるテーパ構造を有する。2つの出力ポートの一方に2:2MMIカプラが設けられる。図15に示された構成と同じく、2:2MMIカプラは、2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の強度が等しく、かつ、それら2つの出力光の間の位相差が180°となるように、2つの出力光を生成する。
【0021】
図15、図16に示した構成の場合、2つの出力光の位相差が180°となるポート対は、隣接するポート1,2からなる対、および隣接するポート3,4からなる対である。2つの出力光の位相差が180°となる2つのポートが隣接している。このため各出力ポートに接続された光導波路が他の光導波路と交差することなく光信号を検出することができる。
【0022】
しかしながら、図15に記載の構成によれば、位相シフト量が位相シフタ導波路60の製造の精度に依存する。位相シフタを構成する導波路の幅を精密に調整することで位相シフト量を制御することができる。しかし導波路幅は、製造条件(たとえばエッチング条件)のばらつきにより変動しやすい。このため位相シフト量を精密に調整するには高度なプロセス技術が必要となる。
【0023】
一方、図16に示した構成では、2:4MMIカプラはテーパ状構造を有するため、入力側におけるビーム幅よりも出力側におけるビーム幅が大きくなる。このため、入力側と出力側との両方で同じ最適な導波路幅を得ることが難しくなる。このことは信号品質の劣化をもたらす。カプラの出力側でビーム幅が増大した状態で、入力側の導波路の幅と出力側の導波路の幅とを同じに形成することも考えられる。しかしながら、伝搬光の一部しか出力導波路に入らないため伝搬損失が生じる。したがって光90°ハイブリッドの特性が劣化する。光損失が生じないようにするためには、出力側の導波路の幅をビーム幅と合致させなければならない。
【0024】
さらに、図16に示した構成では、テーパ構造のために、2:4MMIカプラのサイズが大きくなるという課題も生じ得る。
【0025】
このように、従来の技術によれば、MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な2つの位置に光を入れる場合には、出力側の光導波路を交差させる必要がある。一方、MMIカプラの幅方向中心位置に対して対称な2つの位置に光を入れる場合には、位相シフタが必要である、あるいはMMIカプラが大きくなるという課題がある。
【0026】
本発明の目的は、安定した特性を得ることが可能であるとともに設計の自由度を高めることが可能な光ハイブリッド回路および光受信器ならびに、その光ハイブリッド回路に好適に用いられうる光カプラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のある局面に係る光ハイブリッド回路は、2つの入力ポートが設けられた入力端と、2つの出力ポートが設けられた出力端とを有する第1の2:2光カプラと、第1の2:2光カプラの2つの入力ポートのいずれか一方に接続された第1の入力光導波路と、第2の入力光導波路と、4:4多モード干渉カプラとを備える。4:4多モード干渉カプラは、4つの入力ポートが設けられた入力端と、互いに隣接する2つのポートを有する第1の出力チャネルおよび互いに隣接する2つのポートを有する第2の出力チャネルが設けられた出力端とを含む。4:4多モード干渉カプラの入力端の幅と4:4多モード干渉カプラの出力端の幅とは等しい。4つの入力ポートのうち、4:4多モード干渉カプラの入力端の中央に配置された2つの入力ポートは、第1の2:2光カプラの2つの出力ポートにそれぞれ接続される。4つの入力ポートのうちの残りの2つの入力ポートのいずれか一方は、第2の入力光導波路に接続される。光ハイブリッド回路は、4:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された1つの入力チャネルと、1対の光信号を出力するための第3の出力チャネルとを有する第2の2:2光カプラをさらに備える。第1および第2の入力光導波路に第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、第1および第2の2:2光カプラならびに4:4多モード干渉カプラの形状が選ばれる。
【0028】
本発明の他の局面に係る光ハイブリッド回路は、2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、平行四辺形に形成された2:4多モード干渉カプラと、2:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、長方形に形成された2:2光カプラとを備える。2つの入力ポートは、2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に2:4多モード干渉カプラの入力端に配置される。第1の出力チャネルおよび第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含む。2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるように、2:4多モード干渉カプラおよび2:2光カプラの形状が選ばれる。
【0029】
本発明のさらに他の局面に係る光受信器は、上記のいずれかの光ハイブリッド回路と、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光対と第2の出力光対とをアナログ電気信号に各々変換する光電変換回路と、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、デジタル電気信号を用いて所定の演算を実行する演算回路とを備える。
【0030】
本発明のさらに他の局面に係る光カプラは、平行四辺形の形状を有する光導波路と、光導波路に設けられる少なくとも1つの入力チャネルと、光導波路に設けられる少なくとも1つの出力チャネルとを備える。少なくとも1つの入力チャネルおよび少なくとも1つの出力チャネルの各々は、2つのポートを含む。少なくとも1つの出力チャネルから出力される出力光対の相対的な位相差が所望の値となるように平行四辺形の頂角が調整される。
【0031】
本発明のさらに他の局面に係る光ハイブリッド回路は、2:4多モード干渉カプラと、2:2光カプラとを備える。2:4多モード干渉カプラは、2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、長方形に形成される。2:2光カプラは、2:4多モード干渉カプラの第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、平行四辺形に形成される。2つの入力ポートは、2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に2:4多モード干渉カプラの入力端に配置される。第1および第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含む。2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、2:4多モード干渉カプラおよび2:2光カプラの形状が選ばれる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、安定した特性を得ることが可能であるとともに設計の自由度を高めることが可能な光ハイブリッド回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図2】平行四辺形形状の2:2光カプラと長方形形状の2:2光カプラとを対比した図である。
【図3】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路を構成する半導体光導波路の一例を示す断面模式図である。
【図4】平行四辺形形状の4:4MMIカプラと長方形形状の4:4MMIカプラとを対比して説明した図である。
【図5】図1に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の他の構成例を示す図である。
【図7】実施の形態2に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図8】平行四辺形形状の2:4光カプラと長方形形状の2:4光カプラとを対比した図である。
【図9】図7に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。
【図10】実施の形態3に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【図11】実施の形態3に係る光受信器の他の具体例を示した図である。
【図12】実施の形態3に係る光受信器のさらに他の具体例を示した図である。
【図13】光90°ハイブリッドの一例を説明するための図である。
【図14】非特許文献1に示された4:4MMIカプラを説明するための図である。
【図15】特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの1つの構成を示した図である。
【図16】特許文献1に記載された光90°ハイブリッドの別の構成を示した図である。
【図17】実施の形態4に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図18】実施の形態4に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【図19】実施の形態5に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。
【図20】実施の形態5に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0035】
本発明の実施形態に係る光ハイブリッド回路は、たとえば4値位相変調(QPSK)方式、差動4値位相変調(DQPSK)方式等によって変調された光信号を復調する際に用いられる光受信回路に含まれる光90°ハイブリッドである。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図1を参照して、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路100は、平行四辺形形状の2:2光カプラ1と、平行四辺形形状の4:4MMI(多モード干渉計)カプラ2と、長方形形状の2:2光カプラ3と、光導波路5,10,17,18,19,20とを備える。なお2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2、2:2光カプラ3も、光導波路である。2:2光カプラ1と、4:4多モード干渉カプラ2と、2:2光カプラ3とは縦続接続される。
【0037】
この明細書では、「平行四辺形」とは、平行な2つの辺により各々構成された2組の対辺を有し、2組の対辺のうち一方が他方に対して90°とは異なる角度で交わる図形を意味する。また、「チャネル」は2つのポートによって構成されるものとする。
【0038】
2:2光カプラ1は、2つの入力ポートおよび2つの出力ポートを有する。すなわち2:2光カプラ1は、1つの入力チャネルおよび1つの出力チャネルを有する。2つの入力ポートの一方(第2のポート)に、光導波路5が接続されている。
【0039】
4:4MMIカプラ2は、4つの入力ポート6〜9および4つの出力ポート11〜14を備える。すなわち4:4MMIカプラ2は、2つの入力チャネルおよび2つの出力チャネルを有する。入力ポート7,8には、2:2光カプラ1の2つの出力ポートがそれぞれ接続される。入力ポート9には、光導波路10が接続される。以下、入力ポート6〜9を4:4MMIカプラ2の第1〜第4の入力ポートとそれぞれ呼ぶ場合がある。同じく出力ポート11〜14を4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートとそれぞれ呼ぶ場合がある。
【0040】
4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)には光導波路17,18がそれぞれ接続される。4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)には、2:2光カプラ3の入力チャネル、すなわち第1および第2の入力ポートが接続される。2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポート(出力ポート15,16)には、光導波路20,19がそれぞれ接続される。
【0041】
図1に示された構成によれば、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートが第1の出力チャネルを構成し、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポートが第2の出力チャネルを構成する。さらに、2:2光カプラ3の2つの出力ポートが第3の出力チャネルを構成する。
【0042】
光導波路5に入力された光は、2:2光カプラ1の第2の入力ポートに入力される。これにより2:2光カプラ1の2つの出力ポートから2つの光がそれぞれ出力される。これらの2つの出力光は4:4MMIカプラ2の第2および第3の入力ポート(入力ポート7,8)にそれぞれ入力される。一方、光導波路10に入力された光は、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポート(入力ポート9)に入力される。
【0043】
4:4MMIカプラ2の第2〜第4の入力ポートに光が入力されることにより4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートの各々から光が出力される。4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートから光導波路17,18を経由して光が出力される。一方、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポートから出力された光は、2:2光カプラ3の第1および第2の入力ポートにそれぞれ入力される。これにより、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートから光導波路19,20を介して光が出力される。すなわち、上記した第1および第3の出力チャネルから、第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とがそれぞれ出力される。
【0044】
次に、図1に示した光ハイブリッド回路を構成する要素について詳細に説明する。
(2:2MMIカプラ)
図2は、平行四辺形形状の2:2光カプラと長方形形状の2:2光カプラとを対比した図である。図2(a)は、長方形形状の2:2光カプラを示す。図2(b)は、平行四辺形形状の2:2光カプラを示す。
【0045】
図2を参照して、長方形形状の2:2光カプラの場合には、当該カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、出力端の幅方向中心位置C2に関して入力端の入力光位置(入力ポート1)と同じ位置(出力ポート1)および対称な位置(出力ポート2)の2ヶ所に、入力ビーム径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を得ることができる。
【0046】
入力ポート1の入力光の位相を0とすると、出力ポート1および出力ポート2における光の位相はそれぞれφ、φ−π/2となる。すなわち、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の間の位相が互いにπ/2(90°)異なる。出力端の幅方向中心位置C2に関し入力ポート1と対称な位置にある入力ポート2から2:2光カプラに光を入射する場合についても、上記の場合と同様である。すなわち、入力ポート2の入力光の位相を0とすると、出力ポート1における光の位相および出力ポート2における光の位相はそれぞれ、φ−π/2、φとなる。したがって、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の位相がπ/2異なる。φは、共通する位相であり、以下の説明では一般性を失わないのでφ=0とする。
【0047】
入力ポート1,2の信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2の信号光の電界振幅をO1,O2とする。上記の関係は、行列を用いて
【0048】
【数1】
【0049】
と表わされる。
同様に平行四辺形形状の2:2光カプラの場合も、カプラの幅Wと長さLを選択することで、出力端の幅方向中心位置C2に関し、入力端の入力光位置(入力ポート1)と同じ位置(出力ポート1)および対称な位置(出力ポート2)の2ヶ所に、入力ビーム径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を得ることができる。
【0050】
平行四辺形形状の2:2光カプラの場合には、入力ポート1の入力光の位相を0とすると、出力ポート1における光の位相および出力ポート2における光の位相はそれぞれφ’、φ’−π/2+αとなる。すなわち、2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の位相が(+π/2−α)異なる。
【0051】
一方、出力端の幅方向中心位置C2に関し入力ポート1と対称な位置にある入力ポート2から平行四辺形形状の2:2光カプラに光を入れる場合には、入力ポート2の入力光の位相を0とすると、出力ポート1と出力ポート2の光の位相が、良好な近似でそれぞれ、φ’−π/2−α、φ’となる。すなわち2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つ
の出力光の位相が(π/2+α)だけ異なる。αは、平行四辺形の頂角と90°との差(
図2(b)に示した傾斜角度θ)にほぼ比例した光位相の変化量であり、φ’は、共通する位相である。
【0052】
上記の場合と同様に同様にφ’を省略すると、入力ポート1,2の信号光の電界振幅I1,I2と、出力ポート1,2の信号光の電界振幅O1,O2との関係は、
【0053】
【数2】
【0054】
と表わされる。
図1に示した光ハイブリッド回路は、たとえば半導体光導波路によって実現される。図3は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路を構成する半導体光導波路の一例を示す断面模式図である。図3を参照して、光ハイブリッド回路は、InP基板50と、InGaAsP層51と、InP層52とを有する。図3に示した構造体は、たとえば以下の方法により作成される。まずInP基板50上にInGaAsP層51とInP層52とをこの順にエピタキシャル成長によって成長させたウエハを準備する。次にウエハの所定の部分がドライエッチングによって除去される。これにより、InGaAsP層51をコア層として備えるハイメサ半導体導波路を作製できる。
【0055】
C帯(4〜8GHz)あるいはL帯(0.5〜1.5GHz)で使用される半導体導波路はたとえば以下のように作製される。たとえばPL(Photoluminescence)波長が1320nmとなる組成を有するInGaAsP層51と、InP層52とをInP基板50上に成長させる。InGaAsP層51の厚みはたとえば0.3μmであり、InP層52の厚みは、たとえば3μmである。このようにして準備されたウエハの所定の部分を深さAだけドライエッチングして、当該部分を除去する。深さAは、たとえば6.3μmである。
【0056】
なお、半導体基板の材質、エピタキシャル構造、エッチング深さ、導波路幅は上記のように限定されるものではなく、適切な導波モードが存在する光導波路をこの実施の形態に適用できる。たとえば半導体基板の材質を変更した光導波路として、Si導波路、SOI(Silicon On Insulator)導波路、石英ガラス導波路などがある。本実施の形態は、これらの導波路の使用を排除するものではない。
【0057】
図2(a)に示された長方形形状の2:2光カプラでは、たとえば光カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。同じく、2つの出力ポートの中心位置は、光カプラの出力端の中心位置から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。これにより、光カプラは、1つの入力ポートに入力されたビームの径と同じビーム径を有し、かつ強度が等分された2つの出力光を、2つの出力ポートからそれぞれ出力することができる。
【0058】
図2(b)に示された平行四辺形形状の2:2光カプラも、上記の長方形形状の2:2光カプラと同様に設計される。すなわち、光カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。2つの出力ポートの中心位置は、光カプラの出力端の幅方向中心位置C2から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。
【0059】
平行四辺形の頂角と90°との差(=傾斜角度θ)を1.1°とすることにより、α=π/4相当の位相が得られる。入力ポート1から入力光を光カプラに入れた場合には出力ポート1と出力ポート2との間での位相差がπ/4となり、入力ポート2から入力光を光カプラに入れた場合には、出力ポート1と出力ポート2との間での位相差が3π/4となる。いずれの場合にも2つの出力ポートからそれぞれ出力される2つのビームの径は互いに同じであり、それら2つの出力光ビームの強度は、入力光ビームの強度を等分したものとなる。このように、実施の形態1によれば、強度が等分され、かつ所定の位相差を有する2つの出力光を生じさせる2:2光カプラが得られる。
【0060】
なお、傾斜角度1.1°は典型値であり、実際には、屈折率や厚さなど素子構造のばらつきに応じて、素子ごとに、最適なθが1.1°近傍で小さい角度範囲でばらつくと考えられる。
【0061】
次に、平行四辺形の頂角の90°からの傾斜角度θの決定方法について説明する。上述した光導波路における導波モードの有効屈折率は、およそn=3.21程度である。さらに、光カプラの2つの出力ポートの間隔d=3μmである。光波長をたとえばλ=1.55μmとする。傾斜角度θは、位相差αに対して
【0062】
【数3】
【0063】
の関係から求められる。図2(b)に示した光カプラの場合、出力端近傍で2つの出力ポートの各々の信号光がよく集束する。このため、出力ポート1,2の光路長差が良好な近似でnd×Sinθとなる。つまり、位相差αは(3)式を波長で規格化して得られる値であることがわかる。このように、所望の位相差を与えるためには、傾斜角度θを、導波モードの有効屈折率と出力端の幅方向中心位置C2に対する出力ポート1,2の各々の間隔に応じて調節すればよい。α=π/4とした場合には、(2)式は
【0064】
【数4】
【0065】
と表わされる。
(4:4MMIカプラ)
図1に示した4:4MMIカプラ2について詳細に説明する。図4は、平行四辺形形状の4:4MMIカプラと長方形形状の4:4MMIカプラとを対比して説明した図である。図4(a)は、長方形形状の4:4MMIカプラを示し、図4(b)は、平行四辺形形状の4:4MMIカプラを示している。
【0066】
図4を参照して、カプラの幅をWとすると、長方形形状の4:4MMIカプラ(図4(a))では、入力端の幅方向中心位置C1に対して−3W/8、−W/8、+W/8、+3W/8の位置にそれぞれポート1〜4の4つの入力ポートが配置される。同様に、長方形形状の4:4MMIカプラでは、出力端の幅方向中心位置C2に対して−3W/8、−W/8、+W/8、+3W/8の位置にそれぞれポート1〜4の4つの出力ポートが配置される。なお、使用しないポートが入力側にある場合は、当該ポートに入力用光導波路を接続しなくてもよい。
【0067】
図4(a)に示される長方形形状の4:4MMIカプラでは、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0068】
入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。なお、以下では入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。
【0069】
入力ポート1に入射された入力光の位相に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、0、−3π/4、π/4、0となる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ、−3π/4、0、0、π/4となる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ、π/4、0、0、−3π/4となる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4の位相は、それぞれ0、π/4、−3π/4、0となる。
【0070】
入力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をそれぞれI1,I2,I3,I4とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をそれぞれO1,O2,O3,O4とする。上記の関係は、行列を用いて
【0071】
【数5】
【0072】
と表わされる。
ここで入力端の幅方向中心位置C1に対して非対称に位置する2つの入力ポート(たとえば入力ポート1と3)に光が入力される場合、出力ポート1〜4での位相差は、それぞれπ/4、−3π/4、π/4、−3π/4、となる。出力ポート1,4が対となった出力チャネルでは、位相差がπとなり、入射光が逆相で干渉する。出力ポート2,3が対となった出力チャネルでも、位相差がπとなり、入射光が逆相で干渉する。ただし、後者のチャネルでは、前者の出力チャネルと位相がπ/2異なる。したがって光90°ハイブリッドの特性が得られる。
【0073】
同様に、図4(b)に示した平行四辺形形状の4:4MMIカプラにおいても、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択する。これによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0074】
なお、入力ポートおよび出力ポートの位置を、−3W/8+Δ、−W/8−Δ、+W/8+Δ、+3W/8−Δ(Δは微小な距離であり、W/8>Δ)とする場合も同様の効果を有する。
【0075】
たとえば、カプラ幅および入力ポート1〜4の位置および出力ポート1〜4の位置を図4(a)に示した長方形形状の4:4MMIカプラと同様に設定する。ただし、平行四辺形の形状は、長方形の2つの長辺を角度θだけ傾斜させた形状に等しい。なお0°<θ<90°である。
【0076】
長方形形状の4:4MMIカプラの場合と同様に、入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。以下においても、入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。
【0077】
入力ポート1に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、0、−3π/4−β、π/4−2β、−3βとなる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、−3π/4+β、0、0−β、π/4+2βとなる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、π/4+2β、0+β、0、−3π/4+βとなる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4における光の位相は、それぞれ、0+3β、π/4+2β、−3π/4+β、0となる。βは、平行四辺形の頂角と90°の差(傾斜角度θに等しい)にほぼ比例した光位相の変化量である。
【0078】
(5)式の場合と同様に、平行四辺形形状の4:4MMIカプラにおいて、入力ポート1〜4における信号光の電界振幅をI1,I2,I3,I4とし、出力ポート1〜4における信号光の電界振幅をそれぞれO1,O2,O3,O4とする。両者の関係は、
【0079】
【数6】
【0080】
と表される。
たとえば、C帯あるいはL帯の波長域で光90°ハイブリッドを使用する場合には、図4(a)に示す長方形形状の4:4MMIカプラは、たとえば、前述の入力側2:2光カプラの場合と同様の構造を有する半導体ウエハによって実現される。具体的な一例を示すと、カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ12.0μm、313μmに設計される。入力用導波路および出力用導波路の幅はたとえば2.0μmと設計される。4つの入力ポートの中心位置は、カプラの入力端の幅方向中心位置C1から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。同じく4つの出力ポートの中心位置がカプラの出力端の幅方向中心位置C2の中心位置から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。これにより上述の特性を有する4:4MMIカプラが得られる。
【0081】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0082】
次に、平行四辺形形状の4:4MMIカプラについて説明する。まず、平行四辺形の傾斜角度θは、前述の平行四辺形形状の2:2MMIカプラと同じように、次の式に従って定めることができる。
【0083】
【数7】
【0084】
互いに隣接する2つの出力ポート(出力ポート1,2または出力ポート3,4)の中心位置の間隔は前述の2:2光カプラの場合と等しく、導波モードの有効屈折率も、上記の有効屈折率にほぼ等しい。したがってβ=π/4を満たす傾斜角度θは、2:2光カプラの場合と同様に1.1°となる。
【0085】
β=π/4の場合には、前述の(6)式は、
【0086】
【数8】
【0087】
と表される。
平行四辺形形状の4:4MMIカプラの入力ポート1〜4の各々に入力光を入れる場合の出力ポート1〜4における光の位相について説明する。入力光の位相を0とし、入力ポート1〜4に対して共通の位相を省略して表示する。式(8)から、入力ポート1に入射された入力光の位相に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、0、π、−π/4、−3π/4となる。入力ポート2に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、−π/2、0、−π/4、−π/4となる。入力ポート3に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、+3π/4、+π/4、0、πとなる。入力ポート4に対する出力ポート1〜4での出力光の位相は、それぞれ、3π/4、3π/4、−π/2、0となる。
【0088】
(2:2MMIカプラと4:4MMIカプラとの組み合わせ)
図1を再び参照して、平行四辺形形状の2:2MMIカプラ1と、平行四辺形形状の4:4MMIカプラ2とを組み合わせた構成について説明する。
【0089】
2:2MMIカプラ1の入力ポート2に電界振幅がI、位相が0の入射光を入れたとする。この場合の各出力ポートの電界振幅は、式(4)および式(8)から、以下のように表わされる。なお式(9)では共通の位相は省略して表記されている。
【0090】
【数9】
【0091】
式(9)から、等しい光強度を有し、位相が互いに異なる光が4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートから出力されることが分かる。第1〜第4の出力ポートから出力された出力光の位相は、それぞれ、π/4、−π/4、0、0である。
【0092】
一方、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れたとする。この場合の各出力ポートの電界振幅は、式(4)および式(8)から、以下のように表わされる。なお式(10)では共通の位相は省略して表記されている。
【0093】
【数10】
【0094】
式(10)から、等しい光強度を有し、位相が互いに異なる光が4:4MMIカプラ2の第1〜第4の出力ポートから出力されることが分かる。第1〜第4の出力ポートから出力された出力光の位相は、それぞれ、−3π/4、−π/4、π、0である。
【0095】
4:4MMIカプラ2の第3、第4の出力ポートには、長方形形状の2:2光カプラ3が接続される。2:2光カプラ1の第2の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる。この場合の2:2光カプラ3の2つの出力ポートの電界振幅は、式(9)の関係から、次のように表わされる。なお式(11)では共通の位相は省略して表記されている。
【0096】
【数11】
【0097】
一方、4:4MMIカプラ2の第4の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の光が入射した際に、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとから出射される光の電界振幅は、式(10)の関係から、次のように表わされる。なお式(12)では、共通の位相を省略して表記されている。
【0098】
【数12】
【0099】
ここで式(11)の右辺の各要素と式(12)の右辺の各要素との間で位相を比較する。これにより、4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、π、0、+π/2、−π/2になることがわかる。
【0100】
すなわち、入力用の光導波路5,10に、電界振幅がI、位相が0の入射光を入れると、第1の出力チャネル(4:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポート)と第2の出力チャネル(2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポート)とから出射光が出射される。2:2MMIカプラ1の傾斜角度および4:4MMIカプラ2の傾斜角度を適切に設定することにより、4つの出射光の入射光に対する位相差を、それぞれπ、0、−π/2、+π/2にすることができる。
【0101】
このように、図1に示した構成によれば、第1の出力チャネルから出力される出力信号光対と、第3の出力チャネルから出力される出力信号光対との間に直交位相関係が成立する。さらに、各チャネルでは、2つの信号光の位相が互いに180°異なる。実施の形態1によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを備えるとともに、2つの出力チャネルの各々において、位相が互いに180°異なる2つの出力光をそれぞれ伝達する2つの導波路が隣接するように構成された光90°ハイブリッドを実現できる。
【0102】
図1に示した構成では、光導波路は、MMIカプラの入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直に構成される。ただし、光導波路とMMIカプラとの接続による接続損失が小さくなるように、MMIカプラの傾斜角度に応じて、光導波路を入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直方向から傾かせてもよい。
【0103】
図5は、図1に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。なお計算にはBPM法(ビーム伝搬法)を用いた。
【0104】
図5(a)〜図5(d)は、図1に示した光ハイブリッド回路において、強度が互いに等しく、かつ位相差を有する2つの信号光を2ヶ所から光ハイブリッド回路に入射した場合の伝搬光の光強度分布を示している。2つの信号光の波長はともに1550nmであり、2つの信号光の偏波モード(偏光方向)はともにTEモードである。
【0105】
図5(a)の場合における位相差を基準とした、2つの入射光の相対位相差は、0°(図5(a))、90°(図5(b))、180°(図5(c))および270°(図5(d))である。出力ポート1〜4の光強度の比は、0:1:0.5:0.5(図5(a))、0.5:0.5:1:0(図5(b))、1:0:0.5:0.5(図5(c))、0.5:0.5:0:1(図5(d))となっている。
【0106】
出力ポート1〜4における位相差を、2つの入射光の伝搬成分が有する位相差で表現すると、0、π、−π/2、+π/2(図5(a))、+π/2、−π/2、0、π(図5(b))、π、0、+π/2、−π/2(図5(c))、および−π/2、+π/2、π、0(図5(d))となる。すなわち、第1および第2の出力ポートにより構成されたチャネルと、第3および第4の出力ポートから構成されたチャネルとは直交位相関係にある。このことから、図1に示した光ハイブリッド回路が90°ハイブリッドとして動作することが確認できる。
【0107】
さらに、図5から、出力ビーム径が入力ビーム径と等しいことが分かる。このことから入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できることがわかる。
【0108】
図14に示された構成によれば、4:4MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な関係にある2つの位置から4:4MMIカプラに光を入力した場合には、出力光導波路の交差部が発生する。しかしながら、図1に示された構成では、入力用の2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2および出力用の2:2光カプラ3の形状を適切に定めることによって、4:4MMIカプラの幅方向中心位置に対して非対称な関係にある2つの位置に光を入力しても、出力光導波路の交差部を発生させなくすることができる。
【0109】
具体的には、2:2光カプラ1および4:4MMIカプラ2の形状が平行四辺形とされ、2:2光カプラ3の形状が長方形とされる。さらに、2:2光カプラ1および4:4MMIカプラ2の各々について、平行四辺形の傾斜角度(図1ではθと表わす)が適切に調整される。
【0110】
実施の形態1によれば、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。複数のカプラを接続する際、後段のカプラでは、複数の入力ポートの位相差に応じて出力特性が変化する。前段のカプラの出力位相差を平行四辺形の傾斜角度によって調整できるので、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0111】
したがって図1に示すように、位相シフタが省略された光90°ハイブリッドが実現できる。図1の構成によれば、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなる。
【0112】
なお、製造条件の変動により、平行四辺形の大きさが多少変動することが考えられる。しかしながら平行四辺形の傾斜角度は、露光パターンで決定される角度からずれることは起こりにくい。位相シフト量は傾斜角度に依存するので、位相シフト量を安定させることができる。このため、導波路型の位相シフタを用いる場合よりも、位相シフト量を安定させることができる。
【0113】
図1の構成によれば、位相シフタを省略しても、出力ビーム径が増大することを抑制できる。これにより安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。さらに位相シフタ導波路を省略することができるので、光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0114】
ただし、実施の形態1は位相シフタの使用を排除するものではない。図6は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路の他の構成例を示す図である。図6を参照して、光ハイブリッド回路100Aは、2:2MMIカプラ1Aと、4:4MMIカプラ2Aと、2:2MMIカプラ3とを備える。光ハイブリッド回路100Aは、さらに、光導波路5,10,19,20,21,21Aを備える。
【0115】
図1に示した光ハイブリッド回路100と図6に示した光ハイブリッド回路100Aとの相違点は次の通りである。まず、4:4MMIカプラ2Aおよび、その前段の2:2MMIカプラ1Aの形状がともに長方形である。さらに、4:4MMIカプラの第3および第4の出力ポート3,4と2:2光カプラ3の第1および第2の入力ポートとが光導波路21,21Aで結合される。光導波路21,21Aのうちのいずれか一方(図6に示した構成では、光導波路21A)に、位相をπ/4シフトさせる位相シフタが設けられる。
【0116】
なお、図6に示した光ハイブリッド回路100Aの構造に関する他の点については、基本的には、図1に示した光ハイブリッド回路100の構造と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0117】
図6に示した構成においても、4:4MMIカプラ2Aの入力端の中心に対して非対称となる2ヶ所に信号光(QPSK信号光)および局発光が入力される。この構成によっても出力光導波路の交差部を発生させなくすることができる。
【0118】
このように、実施の形態1によれば、光ハイブリッド回路は、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。2つの出力チャネルの各々は、隣接した2つの光導波路を有する。2つの光導波路を伝播する出力光の位相が180°異なる。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部を必要としなくなる。したがって小型であるとともに、光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適である光受信回路を実現できる。
【0119】
さらに、実施の形態1によれば、4:4MMIカプラの入力端の幅と出力端との幅が同じである。したがってMMIカプラの小型化を実現できる。幅が広がらない形状であるため、入力ビームの径と同じ径のビームが出力側に結像する。これにより、出力ビーム径が増大することを防ぐことができるので、信号品質の劣化を防止できる。
【0120】
なお、上記の説明ではα=π/4としたが、α=π/4+2p×π(pは整数)となるように2:2光カプラ1の傾斜角度が調整されてもよい。同じく、β=π/4+2q×π(qは整数)となるように4:4MMIカプラ2の傾斜角度が調整されてもよい。つまり、平行四辺形形状のカプラから出力される出力光対の相対的位相差(2つの信号間の位相差)が、その平行四辺形の幅および長さとそれぞれ同じ幅および長さを有する長方形状のカプラの出力光対の相対位相差に対してπ/4+(整数)×2πとなればよい。
【0121】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0122】
図7は、実施の形態2に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図7を参照して、光ハイブリッド回路101は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22と長方形形状の2:2光カプラ3とを備える。平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22と長方形形状の2:2光カプラ3とは縦続接続される。
【0123】
光ハイブリッド回路101は、さらに、入力用の光導波路10,27と、出力用の光導波路17〜20とを備える。入力用の光導波路27は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1の入力ポート(入力ポート6)に接続される。入力用の光導波路10は、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第2の入力ポート2(入力ポート7)に接続される。出力用の光導波路17〜20は平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポート(出力ポート28,29)、および長方形形状の2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートに接続される。
【0124】
なお光ハイブリッド回路101を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態2では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0125】
後で詳細に説明するように、実施の形態2では、入力用の光導波路27,10は、2:4MMIカプラ22の入射端を幅方向に3等分する2ヶ所に接続されている。これら2つの位置は、入射端の中心に対して対称である。
【0126】
図8は、平行四辺形形状の2:4光カプラと長方形形状の2:4光カプラとを対比した図である。図8(a)は、長方形形状の2:4光カプラを示す。図8(b)は、平行四辺形形状の2:4光カプラを示す。
【0127】
まず、図8(a)に示す長方形形状の場合の2:4光カプラの作用について説明する。入力ポート1,2に入射させる信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をO1,O2,O3,O4とする。実施の形態1の場合と同様に考えると、長方形形状の2:4MMIカプラの特性は、以下の式に従って説明できる。
【0128】
【数13】
【0129】
図8(a)に示す長方形形状の2:4光MMIカプラの幅および長さを、それぞれ18.0μmおよび233μmとし、入力用導波路および出力用導波路の幅を2.0μmとし、入力ポートの中心位置を、2:4光MMIカプラの入力端の中心位置から3.0μmとする。これにより、上述の特性を有する2:4光MMIカプラが得られる。4つの出力ポートの位置は、2:4光MMIカプラの出力端の幅方向中心位置から±3.0μmおよび±6.0μmの位置とする。これにより、出力ポート1,2間の間隔および出力ポート3,4間の間隔が、実施の形態1と同じく3μmとなる。ただし、実施の形態2では、出力ポート2,3間の間隔が6μmであり、実施の形態1での4:4光MMIカプラでの間隔(3μm)の2倍となる。
【0130】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0131】
次に、図8(b)に示した平行四辺形形状の2:4MMIカプラと図8(a)に示した長方形形状の2:4MMIカプラとの違いについて説明する。
【0132】
まず平行四辺形形状の2:4光MMIカプラの幅、長さ、入力用導波路および出力用導波路の幅、入力ポートの中心位置(入力端の幅方向中心位置からの距離)、出力ポートの中心位置(出力端の幅方向中心位置から距離)を、上述した長方形形状の2:4MMIカプラの対応する値と同じにする。図6(a)に示した長方形形状の2:4MMIカプラでは、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択することによって、入力ポート1〜4のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0133】
入力ポート1,2に入力光を入れる場合、入力光の位相を0とすると、出力ポート1〜4における光の位相は、入力ポート1に対してそれぞれ、−π/4、0、0、3π/4となり、入力ポート2に対してそれぞれ3π/4、0、0、−π/4となる。なお、共通の位相は省略して表示されている。
【0134】
入力ポート1,2の信号光の電界振幅をI1,I2とし、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅をO1,O2,O3,O4とする。上記の関係は、行列を用いて以下のように表わすことができる。
【0135】
【数14】
【0136】
長方形形状の2:4MMIカプラと同様に、平行四辺形形状の2:4MMIカプラも、カプラの幅Wと長さLとを適切に選択する。これにより、入力ポート1、2のいずれに光を入射させた場合でも、上述の出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光を得ることができる。
【0137】
入力ポート1、2に入力光を入れる場合、入力光の位相を0とすると、出力ポート1〜4における光の位相は、入力ポート1に対してそれぞれ、−π/4−γ、0、+2γ、3π/4+3γとなり、入力ポート2に対してそれぞれ、3π/4−3γ、−2γ、0、−π/4+γとなる。ここでγは、平行四辺形の頂角と90°の差(図8では角度θで示す)にほぼ比例した光位相の変化量であり、出力ポート間隔に応じた変化を出力ポートの光位相に対して与える。
【0138】
平行四辺形形状の2:4MMIカプラにおける、入力信号光の電界振幅をI1,I2と、出力ポート1,2,3,4の信号光の電界振幅O1,O2,O3,O4との関係は、行列を用いて次のように表わされる。
【0139】
【数15】
【0140】
出力ポート3,4間の間隔(および出力ポート1,2間の間隔)をdとすると、平行四辺形の傾斜角度θは、前述の2:2光カプラの場合と同様に、式(7)を用いて決めることができる。上記の式(7)においてβをγに置き換えればよい。
【0141】
隣接する出力ポートの中心位置の間隔dが前述の2:2光カプラの場合と等しく、導波モードの有効屈折率もほぼ等しい。これによりγ=π/4を与える傾斜角度θは、2:2光カプラの場合と同様の1.1°となる。
【0142】
この場合、前述の(15)式は
【0143】
【数16】
【0144】
と表わされる。
式(16)から、入力ポート1に光が入力された場合、出力ポート1〜4には等しい光強度で位相が異なる光が出力され、出力ポート1〜4における出力光の位相が、それぞれ、−π/2、0、π/2、−π/2となることが分かる。同じく式(16)から、入力ポート2に光が入力された場合にも、出力ポート1〜4には等しい光強度で位相が異なる光が出力され、各出力ポート1〜4における出力光の位相が、それぞれ、0、−π/2、0、0となることが分かる。
【0145】
図7に戻り、実施の形態2では、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第3、第4の出力ポートに長方形形状の2:2光カプラ3が接続される。2:4MMIカプラ22の第1の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる場合、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポートおよび2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートの電界振幅は、式(16)の関係から、
【0146】
【数17】
【0147】
と表わされる。なお、式(17)は、共通の位相は省略して表記されている。
同様に、2:4MMIカプラ22の第2の入力ポートに電界振幅がI、位相が0の入射光を入れる場合、平行四辺形形状の2:4MMIカプラ22の第1および第2の出力ポートおよび2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートの電界振幅は、式(16)の関係から、
【0148】
【数18】
【0149】
と表わされる。なお、式(18)は、共通の位相を省略して表記されている。
式(17)の右辺の各要素と式(18)の右辺の各要素との間で位相を比較する。これにより、2:4MMIカプラ2の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ3の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、−π/2、π/2、π、0になることがわかる。
【0150】
このように、実施の形態2では、2つの入射光が、平行四辺形形状の2:4MMIカプラの第1および第2の出力ポートと長方形形状の2:2光カプラの第1および第2の出力ポートにおいて4つの出射光に変換される。平行四辺形の傾斜角度θを適切に設定することによって、4つの出ポートにおける光の位相差が、それぞれ、−π/2、π/2、π、0となる。したがって、実施の形態2によれば、直交位相関係をもつ2つの出力チャネルを有し、かつ、各チャネルでは、位相が互いに180°異なる2つの導波路が隣接した光90°ハイブリッドを実現できる。
【0151】
図9は、図7に示された構成を有する光ハイブリッド回路の特性を導波路シミュレーションで確認した結果を示した図である。なお実施の形態1と同様に、計算にはBPM法を用いた。
【0152】
図9(a)〜図9(d)は、図7に示した光ハイブリッド回路において、強度が互いに等しく、かつ位相差を有する2つの信号光を2ヶ所から光ハイブリッド回路に入射した場合の伝搬光の光強度分布を示している。2つの信号光の波長はともに1550nmであり、2つの信号光の偏波モード(偏光方向)はともにTEモードである。
【0153】
図9(a)の場合における位相差を基準とした、2つの入射光の相対位相差は、0°(図9(a))、90°(図9(b))、180°(図9(c))および270°(図9(d))である。出力ポート1〜4の光強度の比は、0.5:0.5:0:1(図9(a))、0:1:0.5:0.5(図9(b))、0.5:0.5:1:0(図9(c))、1:0:0.5:0.5(図9(d))となっている。
【0154】
出力ポート1〜4における位相差を、2つの入射光の伝搬成分が有する位相差で表現すると、−π/2、π/2、π、0(図9(a))、π、0、+π/2、−π/2(図9(b))、+π/2、−π/2、0、π(図9(c))、0、π、−π/2、+π/2(図9(d))となる。すなわち、出力ポート1,2と出力ポート3,4とは直交位相関係となっている。このことから、図7に示した光ハイブリッド回路が90°ハイブリッド動作することが確認できる。
【0155】
さらに、図9から、出力ビーム径が入力ビーム径と等しいことが分かる。このことから実施の形態1と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できることがわかる。
【0156】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0157】
さらに、実施の形態2に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0158】
さらに、実施の形態2によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0159】
以上のように実施の形態2によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0160】
なお、実施の形態1と同じく、γはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0161】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る光受信器は、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられるデジタルコヒーレント光受信器である。
【0162】
図10は、実施の形態3に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10を参照して、光受信器200は、実施の形態1に係る光ハイブリッド回路100と、光検出器としてのフォトダイオード31a〜31dと、TIA33a,33bと、AD(Analog-Digital)変換回路34a,34bと、デジタル演算回路35とを備える。
【0163】
フォトダイオード31a〜31dは、出力用の光導波路17,18,19,20からそれぞれ出力された光をアナログ電気信号に変換する。TIA33aは、フォトダイオード31a,31bから出力されたアナログ電気信号を差動増幅する。同じくTIA33bは、フォトダイオード31c,31dから出力されたアナログ電気信号を差動増幅する。
【0164】
AD変換回路34aはTIA33aによって増幅されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。同じくAD変換回路34bはTIA33bによって増幅されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。デジタル演算回路35は、AD変換回路34a,34bから出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行する。具体的には、デジタル演算回路35は、局発光の位相を基準としたQPSK信号光の位相差をリアルタイムで算出する。
【0165】
フォトダイオード31a〜31dには、たとえば導波路型構造の検出器が使用される。具体例を示すと、フォトダイオード31a〜31dは、InP基板上に光ハイブリッドとモノリシックに集積して作製される。フォトダイオードと光ハイブリッドとがモノリシックに集積されているので、出力光をフォトダイオードに入射させる際に光学系のアライメントが不要になる。したがって光受信器の組立てを簡易にできる。
【0166】
入力ポート1にはTE偏波のQPSK信号が入力され、入力ポート2にはTE偏波の局発光が入力される。各入射光は、たとえばOIF(The Optical Internetworking Forum
)で策定された100G−DP−QPSK方式の規格に準拠した仕様のものである。
【0167】
100G−DP−QPSK方式の光信号の受信のため、入力導波路の幅と出力導波路の幅は、ともに2.0μmにすればよい。発明者等の検証では、素子長を100μmとし、3dB帯域として32GHz以上の応答特性が得られた。
【0168】
上記構成によって、局発光の位相を基準としたQPSK信号光の位相差をリアルタイムに算出できるので、DP−QPSK信号の光受信器を構成できる。
【0169】
なお、実施の形態3に係る光受信器の構成は上記の構成に限定されるものではない。図11は、実施の形態3に係る光受信器の他の具体例を示した図である。図11を参照して、光受信器200Aは、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路100Aを備える。図12は、実施の形態3に係る光受信器のさらに他の具体例を示した図である。図12を参照して、光受信器201は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路101を備える。光受信器200A,201の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。
【0170】
TIA33a,33bの各々が有する2つの差動信号入力端子は相互に隣接している。図10〜図12のいずれの構成によっても、位相が互いに180°異なる2つの光信号をそれぞれ出力する2つのポートを隣接させることができる。したがって2つの出力用導波路の交差する部分が発生しないので、光ハイブリッドの特定の劣化を防ぐことができる。以上の理由により、実施の形態3によれば、デジタルコヒーレント方式に好適な光受信器を提供することができる。
【0171】
[実施の形態4]
実施の形態4に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1,2と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0172】
図17は、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図17(a),(b)を参照して、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路102は、長方形形状の2:4MMIカプラ42と、平行四辺形形状の2:2光カプラ1とを備える。2:4MMIカプラ42と、2:2光カプラ1とは縦続接続される。
【0173】
光ハイブリッド回路101は、さらに、入力用の光導波路10,27と、出力用の光導波路17〜20とを備える。入力用の光導波路27は、2:4MMIカプラ42の第1の入力ポート(入力ポート43)に接続される。入力用の光導波路10は、2:4MMIカプラ42の第2の入力ポート2(入力ポート44)に接続される。出力用の光導波路17,18は、2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポート(出力ポート45,46)にそれぞれ接続される。2:4MMIカプラ42の第3および第4の出力ポート(出力ポート47,48)は、2:2光カプラ1の第1および第2の入力ポートにそれぞれ接続される。出力用の光導波路19,20は、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートにそれぞれ接続される。
【0174】
なお光ハイブリッド回路102を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態4では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0175】
実施の形態2と同様に、実施の形態4では、入力用の光導波路27,10は、2:4MMIカプラ42の入射端を幅方向に3等分する2ヶ所に接続されている。これら2つの位置は、入射端の中心に対して対称である。
【0176】
一例では、長方形形状2:4光カプラ42の幅Wおよび長さLを、それぞれ18.0μmおよび233μmとし、入力用導波路および出力用導波路の幅を2.0μmとし、長方形形状2:4光カプラ42の入力ポートの中心位置を、2:4光MMIカプラ42の入力端の中心位置から3.0μmとする。これにより、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光が得られるという特性を有する2:4光MMIカプラが得られる(図8(a))を参照)。2:4MMIカプラ42の4つの出力ポートの位置は、2:4光MMIカプラの出力端の幅方向中心位置から±3.0μmおよび±6.0μmの位置とする。これにより、出力ポート1,2間の間隔および出力ポート3,4間の間隔が、実施の形態1と同じく3μmとなる。
【0177】
上記の光ハイブリッド回路の構造を図17(a),(b)を用いて説明する。図17(a)に長方形形状2:4光カプラ42の出力ポート位置を示した。出力ポート位置は、出力ポート45,46、長方形形状カプラ42の出力端の中心位置、出力ポート47,48が順に、等間隔aになるように配置される。
【0178】
また、図17(b)に示すように、出力導波路17,18をポート45,46の位置からカプラ1と同様の角度で傾斜させることもできる。平行四辺形形状の2:2カプラ1の傾斜角度が大きい場合、図17(a)に示された構造では、出力導波路18と出力導波路19とが接触してしまうことがありえる。その場合は、出力導波路18,19を図17(b)に示すような、2:4光カプラ42の出射端面に対して垂直方向から傾かせた構造とすればよい。
【0179】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0180】
実施の形態1と同様に、α=π/4(αは光位相の変化量)となるように、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の傾斜角度θが定められる。これにより、実施の形態2と同様に、2つの入力光による出力信号光の間の相対位相差は、2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおいてそれぞれ−π/2,π/2,π,0になる。
【0181】
実施の形態4では、2つの入射光が、長方形形状の2:4MMIカプラ42の第1および第2の出力ポートと、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおいて4つの出射光に変換される平行四辺形の傾斜角度θを適切に設定することによって、4つの出力ポートにおける光の位相差が、それぞれ−π/2,π/2,π,0になる。したがって、実施の形態4によれば、直交位相関係を持つ2つの出力チャネルを有し、かつ、各チャネルでは、位相が互いに180°異なる2つの導波路が隣接した光90°ハイブリッドを実現できる。図17に示すように、たとえば光導波路27にはQPSK信号光が入力され、光導波路10には局発光が入力される。光導波路17,18からの出射光はIチャネルの光信号として用いられ、光導波路19,20からの出射光はQチャネルの光信号として用いられる。
【0182】
さらに、実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同様に、光ハイブリッド回路からの出力ビームの径を光ハイブリッド回路に入力されるビーム径と等しくすることができる。これにより実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できる。
【0183】
さらに、実施の形態4によれば、実施の形態1,2と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合に、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、実施の形態4によれば、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0184】
さらに、実施の形態4に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0185】
さらに、実施の形態4によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0186】
以上のように実施の形態4によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0187】
図18は、実施の形態4に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10および図18を参照して、光受信器202は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路102を備える。光受信器202の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。図18に示された光ハイブリッド回路102の構造は、図17(a)に示された構造に対応するが、図17(b)に示された構造へと置き換えられることもできる。
【0188】
なお、実施の形態1と同じく、αはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0189】
[実施の形態5]
実施の形態5に係る光ハイブリッド回路も、実施の形態1,2,4と同じく、4値位相変調(QPSK)または差動4値位相変調(DQPSK)方式の光伝送信号の復調に用いられる。
【0190】
図19は、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路の概略的な構成を示した図である。図19を参照して、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路103は、長方形形状の2:2MMIカプラ1Aと、長方形形状の4:4MMIカプラ2Aと、平行四辺形形状の2:2光カプラ1とを備える。光ハイブリッド回路103は、さらに、光導波路5,10,17A,18A,19,20を備える。2:2光カプラ1、4:4MMIカプラ2A、2:2光カプラ3も、光導波路である。2:2光カプラ1Aと、4:4MMIカプラ2Aと、2:2光カプラ1とは縦続接続される。
【0191】
4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)には光導波路17A,18Aがそれぞれ接続される。光導波路17A,18Aは平行四辺形の形状を有する。4:4MMIカプラ2Aの第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)には、2:2光カプラ1の入力チャネル、すなわち第1および第2の入力ポートが接続される。2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポート(出力ポート15,16)には、光導波路20,19がそれぞれ接続される。
【0192】
図19に示された構成によれば、4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)が第1の出力チャネルを構成し、4:4MMIカプラ2Aの第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)が第2の出力チャネルを構成する。さらに、2:2光カプラ1の2つの出力ポートが第3の出力チャネルを構成する。
【0193】
なお光ハイブリッド回路103を実現する光導波路の構成は、たとえば図3に示した構成と同じ構成を適用できる。したがって実施の形態5では光導波路の構成に関する説明を繰り返さない。
【0194】
光導波路5に入力された光は、2:2光カプラ1Aの第2の入力ポートに入力される。これにより2:2光カプラ1の2つの出力ポートから2つの光がそれぞれ出力される。これらの2つの出力光は4:4MMIカプラ2Aの第2および第3の入力ポート(入力ポート7,8)にそれぞれ入力される。一方、光導波路10に入力された光は、4:4MMIカプラ2Aの第4の入力ポート(入力ポート9)に入力される。
【0195】
4:4MMIカプラ2Aの第2〜第4の入力ポートに光が入力されることにより4:4MMIカプラ2Aの第1〜第4の出力ポートの各々から光が出力される。4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポート(出力ポート11,12)から光導波路17A,18Aを経由して光が出力される。一方、4:4MMIカプラ2の第3および第4の出力ポート(出力ポート13,14)から出力された光は、2:2光カプラ1の第1および第2の入力ポートにそれぞれ入力される。これにより、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートから光導波路19,20を介して光が出力される。すなわち、上記した第1および第3の出力チャネルから、第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とがそれぞれ出力される。
【0196】
たとえば、C帯あるいはL帯の波長域で光90°ハイブリッドを使用する場合には、図2(a)に示された長方形形状の2:2光カプラと同じく、長方形形状の光カプラ1Aの幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。図2(b)に示された平行四辺形形状の2:2光カプラと同じく、平行四辺形形状の光カプラ1の幅Wおよび長さLがそれぞれ5.0μmおよび112μmとされる。入力用導波路および出力用導波路の幅が2.0μmとされる。
【0197】
光カプラ1,1Aでは、2つの入力ポートの中心位置は、光カプラの入力端の幅方向中心位置C1から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。同じく、光カプラ1,1Aでは、2つの出力ポートの中心位置C2は、光カプラの出力端の中心位置から一方の側および反対の側に1.5μm離れた位置とされる。なお、光カプラ1,1Aの各々の幅方向中心位置C1,C2は、図2を参照することにより理解可能である。
【0198】
長方形形状の4:4MMIカプラ2Aは、図4(a)に示す長方形形状の4:4MMIカプラと同じく、前述の入力側2:2光カプラ1Aの場合と同様の構造を有する半導体ウエハによって実現される。具体的な一例を示すと、カプラの幅Wおよび長さLがそれぞれ12.0μm、313μmに設計される。入力用導波路および出力用導波路の幅はたとえば2.0μmと設計される。4つの入力ポートの中心位置は、カプラの入力端の幅方向中心位置C1から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。同じく4つの出力ポートの中心位置がカプラの出力端の幅方向中心位置C2から±4.5μm(=±3W/8)および±1.5μm(=±W/8)離れた位置に定められる。これにより、出力ポート1〜4において、入力ビーム径と同じビーム径で強度が等分された4つの出力光が得られるという特性を有する4:4MMIカプラが得られる。
【0199】
なお、素子構造を示した上記の値は典型値であり、実際には、屈折率あるいは厚みといった素子構造のばらつきに応じて素子ごとに、最適な素子構造が分布を持つと考えられる。
【0200】
実施の形態1と同様に、α=π/4(αは光位相の変化量)となるように、平行四辺形形状の2:2光カプラ1の傾斜角度θが定められる。これにより、図19に示す光ハイブリッド回路103では、入力端の幅方向中心位置C1に対して非対称に位置する2つの入力ポート(たとえば入力ポート8,9)に光が入力される場合、4:4MMIカプラ2Aの第1および第2の出力ポートと、2:2光カプラ1の第1および第2の出力ポートとにおける、2つの入力光による出力信号光の相対位相差が、それぞれ、π、0、+π/2、−π/2になる。すなわち、2:2MMIカプラ1の傾斜角度を適切に設定することにより、4つの出射光の入射光に対する位相差を、それぞれπ、0、−π/2、+π/2にすることができる。
【0201】
このように、図19に示した構成によれば、第1の出力チャネルから出力される出力信号光対と、第3の出力チャネルから出力される出力信号光対との間に直交位相関係が成立する。さらに、各チャネルでは、2つの信号光の位相が互いに180°異なる。実施の形態5によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを備えるとともに、2つの出力チャネルの各々において、位相が互いに180°異なる2つの出力光をそれぞれ伝達する2つの導波路が隣接するように構成された光90°ハイブリッドを実現できる。
【0202】
たとえば光導波路5にはQPSK信号光が入力され、光導波路10には局発光が入力される。光導波路17A,18Aからの出射光はIチャネルの光信号として用いられ、光導波路19,20からの出射光はQチャネルの光信号として用いられる。
【0203】
図19に示した構成では、光導波路は、MMIカプラ2Aの入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直に構成される。たとえばただし、光導波路とMMIカプラとの接続による接続損失が小さくなるように、MMIカプラの傾斜角度に応じて、光導波路を入射端面(あるいは出射端面)に対して垂直方向から傾かせてもよい。
【0204】
さらに、実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同様に、光ハイブリッド回路からの出力ビームの径を光ハイブリッド回路に入力されるビーム径と等しくすることができる。これにより実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同じく、入力用光導波路および出力用光導波路に同じ幅の導波路を適用できる。
【0205】
さらに、実施の形態5によれば、実施の形態1,2,4と同様に、1つの入力ポートへの入力光が複数の出力ポートに出力される場合に、強度は等しいまま、平行四辺形の傾斜角度に応じて位相差を変更できる。したがって、実施の形態5によれば、複数段の光カプラからなる複合カプラの特性を所望の特性に容易に設計できる。
【0206】
さらに、実施の形態5に係る光ハイブリッド回路では、位相シフタ導波路を省略することができる。これにより、位相シフタの製造ばらつきに起因する位相シフト量のばらつきを考慮する必要がなくなるとともに、安定した特性を有する光90°ハイブリッドを実現できる。
【0207】
さらに、実施の形態5によれば、位相シフタを省略することができる。したがって光90°ハイブリッドの素子長さを小さくできる。
【0208】
以上のように実施の形態5によれば、直交位相関係にある2つの出力チャネルを有する。各チャネルでは、2つの出力光の位相が互いに180°異なっている。これにより光ハイブリッド回路からの出力光を光検出器に入射させる際に出力導波路の交差部が生じなくなる。したがって小型であり、かつ光学特性の劣化なしにQPSK光信号の受信に好適な光受信回路を実現できる。
【0209】
図20は、実施の形態5に係る光受信器の1つの具体例を示した図である。図10および図20を参照して、光受信器203は、光ハイブリッド回路100に代えて光ハイブリッド回路103を備える。光受信器203の他の部分の構成は、光受信器200の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明を繰り返さない。
【0210】
なお、実施の形態1と同じく、αはπ/4+2q×π(qは整数)であってもよく、π/4のみに限定されるものではない。
【0211】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0212】
1,1A,3 2:2光カプラ、2,2A 4:4MMIカプラ、5,10,17〜21,17A,18A,21A,27 光導波路、6〜9,43,44 入力ポート、11〜16,45〜48 出力ポート、22,42 2:4MMIカプラ、31a〜31d フォトダイオード、34a,34b AD変換回路、35 デジタル演算回路、50 InP基板、51 InGaAsP層、52 InP層、60 位相シフタ導波路、100,100A,101,102,103 光ハイブリッド回路、200,200A,201,202,203 光受信器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、2つの出力ポートが設けられた出力端とを有する第1の2:2光カプラと、
前記第1の2:2光カプラの前記2つの入力ポートのいずれか一方に接続された第1の入力光導波路と、
第2の入力光導波路と、
4:4多モード干渉カプラとを備え、前記4:4多モード干渉カプラは、
4つの入力ポートが設けられた入力端と、
互いに隣接する2つのポートを有する第1の出力チャネルおよび互いに隣接する2つのポートを有する第2の出力チャネルが設けられた出力端とを含み、
前記4:4多モード干渉カプラの入力端の幅と前記4:4多モード干渉カプラの出力端の幅とは等しく、
前記4つの入力ポートのうち、前記4:4多モード干渉カプラの入力端の中央に配置された2つの入力ポートは、前記第1の2:2光カプラの前記2つの出力ポートにそれぞれ接続され、
前記4つの入力ポートのうちの残りの2つの入力ポートのいずれか一方は、前記第2の入力光導波路に接続され、
前記4:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された1つの入力チャネルと、1対の光信号を出力するための第3の出力チャネルとを有する第2の2:2光カプラをさらに備え、
前記第1および第2の入力光導波路に第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、前記第1および第2の2:2光カプラならびに前記4:4多モード干渉カプラの形状が選ばれた、光ハイブリッド回路。
【請求項2】
前記第1の2:2光カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第1の2:2光カプラの前記2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が前記平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項3】
前記第1の2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差に比較して、π/4+2p×π(pは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の前記頂角が定められる、請求項2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項4】
前記4:4多モード干渉カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項5】
前記4:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された4:4多モード干渉カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項4に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項6】
前記第2の2:2光カプラの形状は、長方形であり、
前記1つの入力チャネルに含まれる2つの入力ポートは、前記第2の2:2光カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記第2の2:2光カプラの入力端に配置され、
前記第3の出力チャネルに含まれる2つの出力ポートは、前記第2の2:2光カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記第2の2:2光カプラの出力端に配置される、請求項4に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記第1および第2の2:2光カプラならびに前記4:4多モード干渉カプラの形状は長方形であり、前記第2の2:2光カプラおよび前記4:4多モード干渉カプラの間に位相シフタを有する、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、平行四辺形に形成された2:4多モード干渉カプラと、
前記2:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、長方形に形成された2:2光カプラとを備え、
前記2つの入力ポートは、前記2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記2:4多モード干渉カプラの入力端に配置され、
前記第1の出力チャネルおよび前記第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含み、
前記2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるように、前記2:4多モード干渉カプラおよび前記2:2光カプラの形状が選ばれる、光ハイブリッド回路。
【請求項9】
前記2:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記2:4多モード干渉カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:4多モード干渉カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記2:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項8に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
請求項1または8に記載の光ハイブリッド回路と、
前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される前記第1の出力光対と前記第2の出力光対とをアナログ電気信号に各々変換する光電変換回路と、
前記アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記デジタル電気信号を用いて所定の演算を実行する演算回路とを備える、光受信器。
【請求項11】
平行四辺形の形状を有する光導波路と、
前記光導波路に設けられる少なくとも1つの入力チャネルと、
前記光導波路に設けられる少なくとも1つの出力チャネルとを備え、
前記少なくとも1つの入力チャネルおよび前記少なくとも1つの出力チャネルの各々は、2つのポートを含み、
前記少なくとも1つの出力チャネルから出力される出力光対の相対的な位相差が所望の値となるように前記平行四辺形の頂角が調整された、光カプラ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する1つの入力チャネルであり、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する1つの出力チャネルであり、
前記第1および第2の出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の間の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差と比較して、π/4+2p×π(pは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する1つの入力チャネルであり、
前記第1および第2の入力ポートが、前記光導波路の入力端において、幅方向中心位置に対して互いに対称となる2つの位置にそれぞれ設けられており、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する第1の出力チャネルと、第3および第4の出力ポートを有する第2の出力チャネルとであり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する第1の入力チャネルと、第3および第4の入力ポートを有する第2の入力チャネルとであり、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する第1の出力チャネルと、第3および第4の出力ポートを有する第2の出力チャネルとであり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められており、
4つの入力ポートのうちの幅方向中心位置に対して互いに非対称となる少なくとも2つの位置の入力ポートに光を入射させて、出力ポートから光を出射させる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項15】
前記第1の2:2光カプラの形状は、長方形であり、
前記第2の2:2光カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第2の2:2光カプラの2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が、前記平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項16】
前記第2の2:2光カプラの2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差に比較してπ/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の前記頂角が定められる、請求項15に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項17】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、長方形に形成された2:4多モード干渉カプラと、
前記2:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、平行四辺形に形成された2:2光カプラとを備え、
前記2つの入力ポートは、前記2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記2:4多モード干渉カプラの入力端に配置され、
前記第1および第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含み、
前記2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、前記2:4多モード干渉カプラおよび前記2:2光カプラの形状が選ばれた、光ハイブリッド回路。
【請求項18】
前記2:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光の間の相対的位相差が、前記2:2光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差に比較してπ/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記2:2光カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項17に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項1】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、2つの出力ポートが設けられた出力端とを有する第1の2:2光カプラと、
前記第1の2:2光カプラの前記2つの入力ポートのいずれか一方に接続された第1の入力光導波路と、
第2の入力光導波路と、
4:4多モード干渉カプラとを備え、前記4:4多モード干渉カプラは、
4つの入力ポートが設けられた入力端と、
互いに隣接する2つのポートを有する第1の出力チャネルおよび互いに隣接する2つのポートを有する第2の出力チャネルが設けられた出力端とを含み、
前記4:4多モード干渉カプラの入力端の幅と前記4:4多モード干渉カプラの出力端の幅とは等しく、
前記4つの入力ポートのうち、前記4:4多モード干渉カプラの入力端の中央に配置された2つの入力ポートは、前記第1の2:2光カプラの前記2つの出力ポートにそれぞれ接続され、
前記4つの入力ポートのうちの残りの2つの入力ポートのいずれか一方は、前記第2の入力光導波路に接続され、
前記4:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された1つの入力チャネルと、1対の光信号を出力するための第3の出力チャネルとを有する第2の2:2光カプラをさらに備え、
前記第1および第2の入力光導波路に第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、前記第1および第2の2:2光カプラならびに前記4:4多モード干渉カプラの形状が選ばれた、光ハイブリッド回路。
【請求項2】
前記第1の2:2光カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第1の2:2光カプラの前記2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が前記平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項3】
前記第1の2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差に比較して、π/4+2p×π(pは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の前記頂角が定められる、請求項2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項4】
前記4:4多モード干渉カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項5】
前記4:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された4:4多モード干渉カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記4:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項4に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項6】
前記第2の2:2光カプラの形状は、長方形であり、
前記1つの入力チャネルに含まれる2つの入力ポートは、前記第2の2:2光カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記第2の2:2光カプラの入力端に配置され、
前記第3の出力チャネルに含まれる2つの出力ポートは、前記第2の2:2光カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記第2の2:2光カプラの出力端に配置される、請求項4に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記第1および第2の2:2光カプラならびに前記4:4多モード干渉カプラの形状は長方形であり、前記第2の2:2光カプラおよび前記4:4多モード干渉カプラの間に位相シフタを有する、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、平行四辺形に形成された2:4多モード干渉カプラと、
前記2:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、長方形に形成された2:2光カプラとを備え、
前記2つの入力ポートは、前記2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記2:4多モード干渉カプラの入力端に配置され、
前記第1の出力チャネルおよび前記第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含み、
前記2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるように、前記2:4多モード干渉カプラおよび前記2:2光カプラの形状が選ばれる、光ハイブリッド回路。
【請求項9】
前記2:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記2:4多モード干渉カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:4多モード干渉カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記2:4多モード干渉カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項8に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
請求項1または8に記載の光ハイブリッド回路と、
前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される前記第1の出力光対と前記第2の出力光対とをアナログ電気信号に各々変換する光電変換回路と、
前記アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記デジタル電気信号を用いて所定の演算を実行する演算回路とを備える、光受信器。
【請求項11】
平行四辺形の形状を有する光導波路と、
前記光導波路に設けられる少なくとも1つの入力チャネルと、
前記光導波路に設けられる少なくとも1つの出力チャネルとを備え、
前記少なくとも1つの入力チャネルおよび前記少なくとも1つの出力チャネルの各々は、2つのポートを含み、
前記少なくとも1つの出力チャネルから出力される出力光対の相対的な位相差が所望の値となるように前記平行四辺形の頂角が調整された、光カプラ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する1つの入力チャネルであり、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する1つの出力チャネルであり、
前記第1および第2の出力ポートからそれぞれ出力される2つの出力光の間の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差と比較して、π/4+2p×π(pは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する1つの入力チャネルであり、
前記第1および第2の入力ポートが、前記光導波路の入力端において、幅方向中心位置に対して互いに対称となる2つの位置にそれぞれ設けられており、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する第1の出力チャネルと、第3および第4の出力ポートを有する第2の出力チャネルとであり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの入力チャネルは、第1および第2の入力ポートを有する第1の入力チャネルと、第3および第4の入力ポートを有する第2の入力チャネルとであり、
前記少なくとも1つの出力チャネルは、第1および第2の出力ポートを有する第1の出力チャネルと、第3および第4の出力ポートを有する第2の出力チャネルとであり、
前記第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光対の間の相対的位相差が、前記光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差と比較して、π/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の頂角が定められており、
4つの入力ポートのうちの幅方向中心位置に対して互いに非対称となる少なくとも2つの位置の入力ポートに光を入射させて、出力ポートから光を出射させる、請求項11に記載の光カプラ。
【請求項15】
前記第1の2:2光カプラの形状は、長方形であり、
前記第2の2:2光カプラの形状は、平行四辺形であり、
前記第2の2:2光カプラの2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が、前記平行四辺形の頂角に応じて定められる、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項16】
前記第2の2:2光カプラの2つの出力ポートからそれぞれ出力された2つの出力光の相対的位相差が、前記平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された2つの出力光の間の相対的位相差に比較してπ/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記平行四辺形の前記頂角が定められる、請求項15に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項17】
2つの入力ポートが設けられた入力端と、各々が2つの出力ポートを有する第1および第2の出力チャネルが設けられた出力端とを有し、長方形に形成された2:4多モード干渉カプラと、
前記2:4多モード干渉カプラの前記第2の出力チャネルに接続された第1の入力チャネルと、第3の出力チャネルとを有し、平行四辺形に形成された2:2光カプラとを備え、
前記2つの入力ポートは、前記2:4多モード干渉カプラの幅方向中心位置に対して互いに対称に前記2:4多モード干渉カプラの入力端に配置され、
前記第1および第2の出力チャネルの各々は、隣接して配置された2つの出力ポートを含み、
前記2つの入力ポートに第1および第2の入力信号光がそれぞれ入力された際に、前記第1および第3の出力チャネルからそれぞれ出力される第1の出力光信号対と第2の出力光信号対とが直交位相関係にあり、前記第1の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであり、前記第2の出力光信号対に含まれる2つの信号光の間の位相差がπであるという条件を満たすように、前記2:4多モード干渉カプラおよび前記2:2光カプラの形状が選ばれた、光ハイブリッド回路。
【請求項18】
前記2:4多モード干渉カプラの第1および第2の出力チャネルの各々から出力された出力光の間の相対的位相差が、前記2:2光カプラの平行四辺形の幅および長さとそれぞれ等しい幅および長さを有する長方形に形成された2:2光カプラから出力された、対応する出力光対の間の相対的位相差に比較してπ/4+2q×π(qは整数)だけ異なるように、前記2:2光カプラの平行四辺形の頂角が定められる、請求項17に記載の光ハイブリッド回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図5】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図5】
【図9】
【公開番号】特開2012−212098(P2012−212098A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247157(P2011−247157)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]