説明

光パワーモニターおよびその製造方法

【課題】 部品点数が少なく組立が容易で、良い光結合を得るための調整を容易にし、小
型化と低コスト化された光パワーモニターを提供する。
【解決手段】 キャピラリーの中心軸から光ファイバーの中心軸が0.020mm以上0
.150mm以下ずれたピッグテールファイバーを用いることで、ピッグテールファイバ
ーとフォトダイオードを保持するチューブは1種類とする事ができる。1種類のチューブ
でピッグテールファイバーとフォトダイオードの光軸調整もZ方向だけとすることができ
、従来のX方向とZ方向、Θ回転と調整するのに比べ非常に簡単になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー内の光の強度もしくは光量を測定する光パワーモニターに関す
る。
【背景技術】
【0002】
インターネットの急激な普及により、光ファイバー通信市場は技術的かつ量的に目覚し
い発展を遂げ、現在もなお光通信ネットワークは増大している。大容量通信手段の一つで
ある波長多重通信システムが増えるに従い、一つのシステム当たり、数10から数100
の波長を扱う必要が出てきた。波長多重通信システムの運用には多重される各波長の光量
を測定し監視する必要が有り、光パワーモニターが用いられている。波長多重通信システ
ムには多数の光パワーモニターが使われるため、小型化と低価格化が求められている。
【0003】
現在、最も多く用いられている光パワーモニターは、光ファイバーから出た光をフォト
ダイオードで受光し、電気信号として取り出すものである。
【0004】
図5に、従来の光パワーモニターの断面構造を示す。図5a)は、円筒状のキャピラリ
ー3の中心軸と光ファイバー2の中心軸が一致するように形成されたピッグテールファイ
バー4の光放出側と、レンズ付きフォトダイオード6が所定の間隔を持って対向配置され
る。ピッグテールファイバー4の中心軸とレンズ付きフォトダイオード6の中心軸が同一
になるように、略円筒形のチューブ9の内側に接着固定している。先の開いた矢印で光の
進路を示している。光ファイバー2から入った光は端面5側から空気中に出て、レンズ付
きフォトダイオード6のレンズ頂点7を通り、受光部8に入り電気信号に変換される。し
かし、光ファイバーの端面5側が光ファイバーの中心軸に対し垂直の面を持っているため
、光ファイバー2の端面で光の一部は反射して光ファイバー内を逆戻りして、後から進行
してくる光と干渉し合い反射損失を発生させる。
【0005】
反射損失を低減する方法として特許文献1,2で開示されている様に、ピッグテールフ
ァイバー4の端面5側に、角度Θの傾斜を設けることが行われている。角度Θは約4から
約10度である。角度Θの傾斜を設けた光パワーモニターを図5b)に示す。キャピラリ
ー3と光ファイバー2は接着固定されているので、角度Θはキャピラリーと光ファイバー
何れにも設けられるものである。角度Θの傾斜を設けることで、光の反射損失を小さくす
ることはできるが、角度Θにより空気中に放射される光が光ファイバーの中心軸よりΘ2
の角度曲がってしまう。放射された光はレンズ頂点7からずれて、受光部8に入ることに
なる。レンズ頂点7からずれて光が入ると、一部の光が受光部からはずれ電気出力値が低
下してしまうだけでなく、受光部8の中心点からずれた部位に光が当たると、感度のリニ
アリティーが悪化する。また、フォトダイオードの一般的な特性であるが、受光部の端の
部分に強い光が当たると逆電流が流れて感度が低下し、むしろ電気出力値が低下すると言
う現象が発生する。
【0006】
【特許文献1】特開2001−13362 図1
【特許文献2】特表平10−511476 図6
【0007】
放射された光がレンズ頂点7に入るように、ピッグテールファイバーの中心軸とフォト
ダイオードの中心軸をずらして配置することがなされている。図5c)に中心軸をずらし
た光パワーモニターを示す。中心軸をずらすためには、図5a)や図5b)より内径の大
きなチューブ9’を用いる必要がある。ピッグテールファイバーやフォトダイオードの外
径より十分大きな内径のチューブ9’に、ピッグテールファイバーとフォトダイオードを
接着固定する作業が非常に難しいことは、容易に理解できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ピッグテールファイバーとフォトダイオードの中心軸をずらして、容易に接着固定でき
る方法として、ピッグテールファイバーの中心軸と光素子の位置をずらした、ピッグテー
ル型光モジュールが特許文献3に開示されている。図6に、ピッグテール型光モジュール
の断面図を示す。ピッグテールファイバー57を略円筒状のスリーブ52の内部に中心軸
を合わせて接着固定する。球レンズ53を持つ光素子58は略円筒状のホルダ51の内部
に中心軸を合わせて接着固定する。その後に、スリーブ52とホルダ51の中心軸をずら
して接着固定することで、ピッグテールファイバー57の中心軸と光素子58の中心軸を
容易にずらして固定することができる。フェルール56(キャピラリーとも言う)の中心
軸と光ファイバー55の中心軸は同一である。
【0009】
図6の、ピッグテール型光モジュールの構造について簡単に述べる。図5の光パワーモ
ニターとは、光の進路が逆になっているが、構成的には同じである。発光素子54から出
た光は、球レンズ53を通り光ファイバー55に入るものである。発光素子54から出た
光を光素子58の中心軸上にある球レンズ53のレンズ頂点59に集めるため、発光素子
54は光素子58の中心軸からずれて配されている。レンズ頂点59から出た光を光ファ
イバーに導入するため、ピッグテールファイバーを保持するスリーブ52をX方向に動か
して、最適位置でスリーブ52とホルダ51を固定するものである。特許文献3では、よ
り光結合を良くするためピッグテールファイバー57をスリーブ52内でZ方向の移動や
Θ回転をするとの記載がある。
【0010】
【特許文献3】特開平5−343709 図4、図7
【0011】
図6の方法では、球レンズ52から出た光を確実に光ファイバー55に導くことができ
る。光パワーモニターに当てはめると、光ファイバーから出た光をレンズ頂点に確実に導
くことができると言うことである。図5c)に示した光パワーモニターに比べ、作業性が
格段に良くなっていることが判る。しかし、図6の方法では、スリーブ52とホルダ51
の2種類を準備する必要があり、小型化と低コスト化を図るのが難しい。また、ピッグテ
ールファイバーをスリーブ52内でX方向とZ方向、Θ回転と調整する必要があった。そ
のため、製造工数が掛かり低コスト化を図るのが難しかった。
【0012】
本発明の目的は、部品点数が少なく組立が容易で、良い光結合を得るための調整を容易
にし、小型化と低コスト化された光パワーモニターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光パワーモニターは、円筒状のキャピラリーに光ファイバーが挿入接着固定さ
れたピッグテールファイバーと、ピッグテールファイバーの光放出側と所定の間隔を持っ
て対向配置されたレンズ付きフォトダイオードとが、略円筒形チューブの内部に接着固定
された光パワーモニターであって、ピッグテールファイバーの光放出側端面は、キャピラ
リーの垂直断面に対し約8度の傾斜角を持ち、キャピラリーの中心軸とレンズ付きフォト
ダイオードのレンズ頂点は同一軸上に有り、キャピラリーの約8度の傾斜面上でキャピラ
リーとレンズ頂点の間隔が広がる方向に、光ファイバーの中心軸がキャピラリーの中心軸
から0.020mm以上0.150mm以下離れていることが好ましい。
【0014】
光ファイバーの端面から出る光が約8度の傾斜面でキャピラリーとレンズ頂点の間隔が
狭まる方向に屈折しても、約8度の傾斜面上でキャピラリーとレンズ頂点の間隔が広がる
方向に、キャピラリーの中心軸から光ファイバーの中心軸をずらす(ずれ量をhとする)
ことで、光をレンズ付きフォトダイオードのレンズ頂点に導くことができる。本明細書で
のレンズ頂点とは物理的な頂点ではなく、レンズを透過した光がフォトダイオードの受光
部の略中央に到達する点であり、レンズ頂点領域と同義語として使用している。
【0015】
キャピラリーの中心軸から光ファイバーの中心軸をずらすことで、略円筒形のチューブ
にピッグテールファイバーを挿入するだけで、チューブの中心軸とピッグテールファイバ
ーの中心軸を合わせ、光ファイバーの中心軸はh分ずらすことが容易にできる。チューブ
の中心軸とピッグテールファイバーの中心軸が合っているとは、チューブ内径とピッグテ
ールファイバーの外径の嵌め合い代程度のクリアランス量は含んでいるものである。チュ
ーブの中心軸とレンズ付きフォトッダイオードも同様である。チューブの内径部にピッグ
テールファイバーとレンズ付きフォトダイオードを挿入し接着固定するだけで、これら3
部品の中心軸を容易に合わすことができ、光ファイバーの中心軸は3部品の中心軸から容
易にずらすことができ、光パワーモニターの組立が容易になるものである。
【0016】
光ファイバーとキャピラリーの端面の傾斜角度Θは、4度から10度であれば端面での
光反射を防ぐことができる。端面から出た光は屈折率の関係により、Θ2の角度で屈折す
る。傾斜角度Θと屈折する角度Θ2の間には、Θ2≒Θ/1.45の関係が成り立つ。ず
れ量hが一定の場合、Θが小さいとΘ2も小さくなるので、ピッグテールファイバーの傾
斜面とレンズ頂点の間隔を大きくする必要があり、小型化が難しくなる。そのため、傾斜
角度は8度程度と大き目にすることが好ましい。逆に傾斜角度Θが一定の場合は、ずれ量
hが大きくなると、傾斜面とレンズ頂点の間隔を大きくする必要がある。数多くの光パワ
ーモニターの製造結果から導き出した、好ましいずれ量hは0.020mm以上0.15
0mm以下である。ずれ量hの下限0.020mmは、先に述べたチューブ内径とピッグ
テールファイバーの外径の嵌め合い分程度のクリアランス量との関係から得られたもので
ある。上限0.150mmは小型化を進めるに必要な値であるだけでなく、光パワーモニ
ターの外側を遮光性の熱収縮チューブで覆う作業時に、光ファイバー折れの発生がない値
である。ずれ量hを大きく取ると、熱収縮チューブを被せ熱収縮させたとき収縮がいびつ
となり、光ファイバーが折れることがあるためである。
【0017】
略円筒形のチューブやキャピラリー、樹脂は遮光性の材料であることが好ましい。チュ
ーブが透光性材質であると、チューブから外光が侵入してフォトダイオードに入り、ノイ
ズとなるためである。チューブはキャピラリーとの熱膨張係数の関係と加工のし易さから
、セラミックやガラスで形成することが好ましい。キャピラリーもセラミックやガラスで
形成することが好ましい。一般的にフォトダイオードの外装材は金属で構成されているの
で遮光性は問題ない。チューブやキャピラリーを遮光性材料で構成しても、これらを接着
する樹脂が透光性であると、外光が侵入する可能性もあるので、透光性の低い樹脂を使用
することが好ましい。透光性のチューブやキャピラリーを使用したときは、チューブとキ
ャピラリー、フォトダイオードを覆うように、遮光性の熱収縮チューブを被せて収縮させ
、外光を遮断することが有効である。熱収縮チューブの代わりに遮光効果を持つ塗料等を
塗布することもできる。
【0018】
光ファイバーとキャピラリーの傾斜面に光反射防止膜を付加することで、より反射損失
を小さくできる。光反射防止膜はシリコン酸化物(SiO)やタンタル酸化物(Ta
)などの低屈折率材料と、チタン酸化物(TiO)などの高屈折率材料を真空蒸着
等で交互に薄膜を積層させた誘電体多層膜を用いることができる。入射する光量P1、端
面で反射して戻る光量P2から反射損失が求められる。反射損失=−10log10P1
/P2(dB)で計算される。光ファイバーとキャピラリー端面の傾斜角度が8度の場合
、光反射防止膜のない時の反射損失は約−70(dB)、光反射防止膜がある時の反射損
失は約−80(dB)以下と、10(dB)以上反射損失を下げることができる。
【0019】
双方向性の光パワーモニターに使用される、2本の光ファイバーを持つピッグテールフ
ァイバーを用いることもできる。傾斜面に設けられた2本の光ファイバーの内、レンズ付
きフォトダイオードに近い側の光ファイバーを、傾斜面と反対側のキャピラリー端面で切
断して使用する。光ファイバーの切断面から外光が侵入しないように、遮光処理をするこ
とは必要であるが、双方向性の光モニターで使用しているピッグテールファイバーと共用
できることは、全体的な部品の種類を減らすことに繋がる。また、双方向性の光モニター
製造時に、切断する方の光ファイバーが折れたピッグテールファイバーを、本光パワーモ
ニターに用いることで製造コストの低減の一助とすることができる。
【0020】
本発明の光パワーモニターの製造方法は、略円筒形チューブの一端からレンズ付きフォ
トダイオードを挿入し、略円筒形チューブの中心軸とレンズ付きフォトダイオードの中心
軸を合わせて接着固定する工程、キャピラリーの中心軸と光ファイバー中心軸が20μm
以上150μm以下離れ、キャピラリーと光ファイバーの端面が約8度の傾斜面となって
いるピッグテールファイバーを、略円筒形チューブの他端から挿入する工程、光ファイバ
ーから光を入れながら、ピッグテールファイバーを略円筒形チューブ内でフォトダイオー
ドに近づけたり遠ざけたりして、フォトダイオードの電気出力が最大になる位置を検出す
る工程、フォトダイオードの電気出力が最大になる位置で、ピッグテールファイバーと略
円筒形チューブを接着固定する工程を有することが好ましい。
【0021】
チューブとフォトダイオードを接着固定した後、ピッグテールファイバーをチューブ内
に挿入し、フォトダイオードに近づけたり遠ざけたりして、光ファイバーから入った光が
レンズ頂点に入る位置を見つける。光ファイバーから1550nmの光を入れて、フォト
ダイオードの出力を測定器で測定し、測定値が最大になる点がレンズ頂点に光が入る位置
である。ピッグテールファイバーはずれ量hを有しているので、チューブの径方向(X方
向)に移動させる必要はない。また、ピッグテールファイバーとチューブ、フォトダイオ
ードの3部品の中心軸は既に合っているので、ピッグテールファイバーを回転させて測定
値が最大になる点を見つける必要もない。ピッグテールファイバーの最適位置が見つかっ
たら、チューブとピッグテールファイバーを瞬間接着剤で仮止めするか治具で固定したの
ち、入力光の停止と測定器を外す。その後、接着剤を塗布し加熱硬化させる。更に、遮光
性の熱収縮チューブを被せる等の遮光処理を行い、光パワーモニターを完成させる。
【発明の効果】
【0022】
キャピラリーの中心軸から光ファイバーの中心軸がずれたピッグテールファイバーを用
いることで、ピッグテールファイバーとフォトダイオードを保持するチューブは1種類と
する事ができた。1種類のチューブでピッグテールファイバーとフォトダイオードの光軸
調整もZ方向だけとすることができ、従来のX方向とZ方向、Θ回転と調整するのに比べ
非常に簡単になった。それにより、製造工数の低減が図れ低価格の光パワーモニターを提
供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明を図面を参照しながら実施例に基づいて詳細に説明する。説明を判り易くす
るため、同一の部品、部位には同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0024】
本願発明の光パワーモニターの構造と材質、寸法、組立方法等を詳細に説明する。図1
に本願発明の光パワーモニターの断面構造、図2にピッグテールファイバーの斜視図、図
3に光パワーモニターの組立工程を示す。図1を示し、構造と材質、主要寸法について述
べる。ピッグテールファイバー14は、キャピラリー13と光ファイバー2から成ってい
る。光ファイバーの中心軸とキャピラリーの中心軸のずれ量hは、0.0625mmとし
た。キャピラリー13と光ファイバーの傾斜角Θは9度とした。キャピラリー13は透光
性のガラスで、外径1.80mm、長さ5.3mmとした。光ファイバーから出た光は、
Θ2≒6.2度で放出されるので、端面5側の光ファイバーとレンズ頂点7間の距離は0
.58mmとした。レンズ頂点7とフォトダイオード6の受光部8の間隔は1.4mmで
、受光部の大きさはФ0.3mmである。チューブ9は、外径3.5mmで内径1.83
mm、長さ7.0mmの円筒形で、白色ジルコニアセラミックで製造した。フォトダイオ
ードの外径は1.78mmである。チューブとピッグテールファイバー、チューブとフォ
トダイオードの接着にはエポキシ系樹脂を用いた。
【0025】
ピッグテールファイバーの斜視図を図2に示す。ピッグテールファイバー14は、略円
筒状のキャピラリー13の中心軸から離れた位置に円筒の内孔が設けられ、内孔に光ファ
イバー2が固着されている。キャピラリー13の中心軸と光ファイバーの中心軸の間隔を
、ずれ量hとしている。キャピラリー13と光ファイバー2の端部が同一面に加工された
面を端面5とし、端面5はキャピラリーの垂直断面に対し傾斜角Θを有している。本実施
例1の傾斜角Θは9度である。端面5と対向するフォトダイオードとの距離が大きくなる
方向の傾斜面に光ファイバーの中心軸が位置する。
【0026】
図3に、組立工程を示す。チューブ9の内孔にレンズ付きフォトダイオード6を挿入し
、エポキシ系接着剤21で接着固定する[図3a]]。チューブの内径Ф1.83mmと
フォトダイオードの外径Ф1.78の間には0.05mmの差であり、チューブの中心軸
とフォトダイオードの中心軸のずれ量は最大0.025mmとなるが、受光部8の大きさ
Ф0.3mmに比べ十分小さいため、これらの寸法で十分である。フォトダイオード9か
らの電流出力を測定する測定器23をフォトダイオードの出力端子25に接続する。チュ
ーブ9の開放端からピッグテールファイバー14を挿入し、光ファイバー2に1550n
mの波長の入力光24を入れた。チューブ9の内径Ф1.83mmとピッグテールファイ
バー14の外径Ф1.80mmの差は0.03mmである。この0.03mmは嵌め合い
代で、ピッグテールファイバーはチューブ内をZ方向に自由に動かすことができ、径方向
(X方向)には全くと言って良いほど動かない。ピッグテールファイバー14をZ方向に
動かし、測定器23の値が最大になる位置で、瞬間接着剤を用いてピッグテールファイバ
ーとチューブを仮止めした[図3b]]。入力光24と測定器23を外し、エポキシ系接
着剤22でピッグテールファイバーとチューブを接着固定し、光パワーモニター1を得た
[図3c]]。接着剤21と接着剤22は別工程で塗布、硬化させたが、チューブ9とフ
ォトダイオード6も瞬間接着剤等で仮止めすることで、図3a)の接着剤の塗布、硬化の
工程は、図3c)の工程と同時に行うこともできる。図3では図示を省いたが、フォトダ
イオードとチューブ、ピッグテールファイバーを覆うように、遮光性の熱収縮チューブを
装着した。
【0027】
従来の図5c)で示した大口径のチューブを用いた構造の光パワーモニターと、本実施
例1の光パワーモニターの製造工数を比較した。特に、ピッグテールファイバーの最適位
置を求める工程について詳細に調べたところ、ピッグテールファイバーをチューブ内で、
従来品はX,Z方向の移動と回転を行い最適位置を求めるのに対し、本願発明ではZ方向
のみ動かせば最適位置が求められるので、最適位置を求める作業は従来の1/10程度に
低減することができた。
【実施例2】
【0028】
本願発明の第2の実施例を図4に示す。双方向性の光パワーモニターに使用される、2
本の光ファイバーを有するピッグテールファイバーを用いたものである。双方向性の光パ
ワーモニターは、簡単に言い表すと本願の光パワーモニターのピッグテールファイバーと
レンズ付きフォトダイオードの間に、タップ膜付きGRINレンズを設けた構造である。
光ファイバーAから入った光は、GRINレンズのタップ膜で反射光と透過光に別れ、透
過光はフォトダイオードに入り電気信号に、反射光はGRINレンズに戻り光ファイバー
Bに入り、光ファイバーBから出力光となる。逆に、光ファイバーBから入った光の反射
光は光ファイバーAから出力光となり、透過光はフォトダイオードに入り電気信号となる
。双方向性の光パワーモニターは光ファイバー内の光の一部を取り出して光量を測定、本
願発明の光パワーモニターは光ファイバー内の光の全てを取り出して光量を測定するもの
である。
【0029】
2本の光ファイバー2と2’の間隔h’は0.25mmである。キャピラリー13’の
中心軸と使用する光ファイバー2の中心軸との間隔であるずれ量hは、0.125mmと
実施例1の約2倍の値である。ピッグテールファイバーの端面5の傾斜角度Θは8度であ
る。光ファイバー2から光はΘ2≒5.5度の角度で出るので、ピッグテールファイバー
端面とレンズ頂点7の間隔は約1.3mmとなった。実施例1に比べ、ピッグテールファ
イバーは約0.7mm外側に位置することになるが、熱収縮チューブを被せた最終製品で
、この差約0.7mmは特に目立つものではなかった。
【0030】
使用しない光ファイバー2’の端末の遮光処理を行う工数は増えるが、双方向性の光パ
ワーモニターでは使用できなくなった2本の光ファイバーを有するピッグテールファイバ
ーを、使用できる利点は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の光パワーモニターの断面構造を示す図である。
【図2】本願発明のピッグテールファイバーの斜視図である。
【図3】本願発明の光パワーモニター組立工程を示す図である。
【図4】本願発明の他の光パワーモニターの断面構造を示す図である。
【図5】従来の光パワーモニターの断面構造を示す図である。
【図6】ピッグテール型光モジュールの断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 光パワーモニター、2 光ファイバー、
3 キャピラリー、4,14 ピッグテールファイバー、
5 端面、6 レンズ付きフォトダイオード、
7 レンズ頂点、8 受光部、
9 チューブ、13 キャピラリー、
14、ピッグテールファイバー、21,22 樹脂、
23 測定器、24 入力光、
25 出力端子、50 ピッグテール型光モジュール、
51 ホルダ、52 スリーブ、
53 球レンズ、54 発光素子、
55 光ファイバー、56 フェルール、
57 ピッグテールファイバー、58 光素子、
59 レンズ頂点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のキャピラリーに光ファイバーが挿入接着固定されたピッグテールファイバーと
、ピッグテールファイバーの光放出側と所定の間隔を持って対向配置されたレンズ付きフ
ォトダイオードとが、略円筒形チューブの内部に接着固定された光パワーモニターであっ
て、ピッグテールファイバーの光放出側端面は、キャピラリーの垂直断面に対し約8度の
傾斜角を持ち、キャピラリーの中心軸とレンズ付きフォトダイオードのレンズ頂点は同一
軸上に有り、キャピラリーの約8度の傾斜面上でキャピラリーとレンズ頂点の間隔が広が
る方向に、光ファイバーの中心軸がキャピラリーの中心軸から0.020mm以上0.1
50mm以下離れていることを特徴とする光パワーモニター。
【請求項2】
略円筒形チューブの一端からレンズ付きフォトダイオードを挿入し、略円筒形チューブ
の中心軸とレンズ付きフォトダイオードの中心軸を合わせて接着固定する工程、キャピラ
リーの中心軸と光ファイバー中心軸が0.020mm以上0.150mm以下離れ、キャ
ピラリーと光ファイバーの端面が約8度の傾斜面となっているピッグテールファイバーを
、略円筒形チューブの他端から挿入する工程、光ファイバーから光を入れながら、ピッグ
テールファイバーを略円筒形チューブ内でフォトダイオードに近づけたり遠ざけたりして
、フォトダイオードの電気出力が最大になる位置を検出する工程、フォトダイオードの電
気出力が最大になる位置で、ピッグテールファイバーと略円筒形チューブを接着固定する
工程を有することを特徴とする光パワーモニターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−225673(P2007−225673A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43666(P2006−43666)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】