説明

光ピックアップ装置及び光ディスク装置

【課題】迷光に起因する干渉縞が受光面に形成される場合でも、安定したトラッキング誤差信号を得ることができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、レーザ光を主光束と少なくとも1つの副光束とに分割する光分割素子と、集光光学系と、光検出素子とを備える。光検出素子22は、主光束の戻り光束の受光スポットを検出する主受光部23Mと、副光束の戻り光束の受光スポットを検出する副受光部23R,23Lとを有する。副受光部23R,23Lは、主光束の迷光と副光束の迷光との位相差により受光部上に形成される干渉縞の明線と斜めに交差する分割線25R,25Lを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクなどの光学的情報記録媒体に光を照射して情報の記録または再生を行う光ピックアップ装置及びこれを搭載した光ディスク装置に関し、特に、複数の信号記録層を有する光学的情報記録媒体に光を照射して情報の記録または再生を行う光ピックアップ装置及びこれを搭載した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu−ray Disc;登録商標)といった高密度で大容量の光ディスクが実用化されており、動画像のような大量の情報を記録することができる光学的情報記録媒体として広く普及している。光ピックアップは、このような光ディスクに対物レンズを介してレーザ光を照射して情報信号の記録または再生を行うものである。情報信号の記録または再生のためには、光ピックアップ内のレンズアクチュエータを駆動して対物レンズを位置決めすることにより、レーザ光の集光スポットを光ディスクのトラックに対して正確に追従させる技術すなわちトラッキング位置制御が必要である。トラッキング位置制御に用いられる信号をトラッキング誤差信号という。光ピックアップは、光ディスクで反射した戻り光束を受光する光検出素子を有しており、この光検出素子は、トラッキング誤差信号を検出するための受光面を有している。
【0003】
トラッキング誤差信号の検出法としては、従来から、様々な方法が提案されているが、一般的な方法として、差動プッシュプル法(DPP法:Differential Push―Pull Method)が知られている。DPP法に関する先行技術文献としては、たとえば、特公平04−034212号公報(特許文献1)や特開2007−287232号公報(特許文献2)が挙げられる。
【0004】
DPP法では、光源から出射されたレーザ光を0次回折光ビーム、+1次回折光ビーム及び−1次回折光ビームの3本の回折光ビームに分割する回折格子が使用される。各次数の回折光ビームは、対物レンズによって光ディスク上に集光照射される。このとき、光ディスク上では、±1次回折光ビームの照射位置は、0次回折光ビームの照射位置を中心とした対称な位置にあり、また、±1次回折光ビームの照射位置は、光ディスクの接線方向(タンジェンシャル方向)に互いに離間し、且つ、光ディスクの半径方向(ラジアル方向)に略1/2トラックピッチだけ互いに離れている。そして、光ディスクで反射した3本の戻り光ビームは、それぞれ対応する3個の受光素子で検出される。これら3個の受光素子のうち0次回折光ビーム用の受光素子の出力を用いて主プッシュプル信号(MPP信号:Main Push−Pull signal)が生成され、±1次回折光ビーム用の受光素子の出力を用いて副プッシュプル信号(SPP信号:Sub Push−Pull signal)が生成される。トラッキング誤差信号は、SPP信号を適当なゲインで増幅して得た増幅信号をMPP信号から減算することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平04−034212号公報
【特許文献2】特開2007−287232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の記録層を有する多層光ディスクに対して情報の記録または再生を行う場合、これら複数の記録層のうち集光スポットが形成される目標層で反射した戻り光(以下「信号光」と呼ぶ。)のほかに、目標層に隣接する記録層で反射した戻り光(以下「迷光」と呼ぶ。)も受光素子に入射する。この迷光に起因する干渉縞が発生してトラッキング誤差信号の品質を劣化させるという問題がある。
【0007】
上記に鑑みて本発明の目的は、迷光に起因する干渉縞が光検出素子の受光面に形成される場合でも、安定したトラッキング誤差信号を得ることができる光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ピックアップ装置は、積層された複数の記録層を有するディスク状の光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、前記光学的情報記録媒体からの反射光を検出する光ピックアップ装置であって、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を主光束と少なくとも1つの副光束とに分割する光分割素子と、前記主光束及び前記副光束を、前記複数の記録層のうちの1つである目標層に集光させる集光光学系と、前記複数の記録層のうち前記目標層以外の記録層で反射した迷光と前記目標層で反射した戻り光束とを受光する光検出素子とを備え、前記光検出素子は、前記主光束の当該戻り光束の受光スポットを検出する主受光部と、前記副光束の当該戻り光束の受光スポットを検出する副受光部とを有し、前記主受光部及び前記副受光部のうちの少なくとも一方の受光部は、前記主光束の当該戻り光束の受光スポットと前記副光束の当該戻り光束の受光スポットとが配列する方向に直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線と、前記分割線の両側に配置されて個別に受光信号を生成する第1及び第2の受光面とを有し、前記分割線は、前記主光束の当該迷光と前記副光束の当該迷光との位相差により前記受光部上に形成される干渉縞の明線と斜めに交差することを特徴とする。
【0009】
本発明による光ディスク装置は、前記光ピックアップ装置と、前記光ピックアップ装置の前記主受光部と前記副受光部とで生成された受光信号に基づいてトラッキング誤差信号を生成する演算回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多層光ディスクに対する情報の記録または再生を行う場合でも、トラッキング誤差信号の品質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態1の光ピックアップ装置の主な構成を概略的に示す図である。
【図2】目標層で反射した光束の光路と、目標層に隣接する他の記録層で反射する迷光の光路とを概略的に示す図である。
【図3】実施の形態1の光検出素子に入射する戻り光束と迷光との光路を概略的に示す図である。
【図4】実施の形態1の光検出素子の構成を上面視方向から概略的に示す図である。
【図5】実施の形態1の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の受光状態を概略的に示す図である。
【図6】実施の形態1の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の他の受光状態を概略的に示す図である。
【図7】実施の形態1の副受光部と干渉縞との関係を概略的に示す図である。
【図8】実施の形態1の副受光部に代えて従来の副受光部を使用した場合の副受光部と干渉縞との関係を示す図である。
【図9】実施の形態1の副受光部における戻り光束(図4)と迷光とが互いに干渉して形成された受光スポットを概略的に示す図である。
【図10】実施の形態1の副受光部に代えて従来の副受光部を使用した場合に副受光部上に形成される受光スポットを概略的に示す図である。
【図11】実施の形態1の副受光部上に形成された受光スポットの光強度分布を概略的に示す図である。
【図12】実施の形態1の副受光部上に形成された受光スポットの中心部と分割線との間の位置関係を概略的に示す図である。
【図13】副光束の戻り光束の受光スポットと分割線との間の位置関係を概略的に示す図である。
【図14】本発明に係る実施の形態2の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。
【図15】実施の形態2の光検出素子の構成を上面視方向から概略的に示す図である。
【図16】実施の形態2の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の受光状態を概略的に示す図である。
【図17】実施の形態2の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の受光状態を概略的に示す図である。
【図18】迷光に起因する干渉縞と副受光部との関係を概略的に示す図である。
【図19】迷光に起因する干渉縞と副受光部との他の関係を概略的に示す図である。
【図20】3層の記録層を有する光ディスクに対して記録または再生を行う場合に、副受光部上に形成され得る干渉縞の方向を例示する図である。
【図21】本発明に係る実施の形態3の光検出素子の構成を上面視方向から概略的に示す図である。
【図22】実施の形態3の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の受光状態を概略的に示す図である。
【図23】実施の形態3の光検出素子における主光束の迷光及び副光束の迷光の他の受光状態を概略的に示す図である。
【図24】迷光に起因する干渉縞と副受光部との関係を概略的に示す図である。
【図25】迷光に起因する干渉縞と副受光部との他の関係を概略的に示す図である。
【図26】3層の記録層を有する光ディスクに対して記録または再生を行う場合に、副受光部上に形成され得る干渉縞の明線(または暗線)の方向を例示する図である。
【図27】本発明に係る実施の形態4の副受光部の受光面を概略的に示す図である。
【図28】実施の形態4の副受光部の分割線上に形成された干渉縞と戻り光束の受光スポットとを概略的に示す図である。
【図29】本発明に係る実施の形態5の副受光部の受光面を概略的に示す図である。
【図30】実施の形態5の副受光部の分割線上に形成された干渉縞と戻り光束の受光スポットとを概略的に示す図である。
【図31】本発明に係る実施の形態6の光ディスク装置(媒体駆動装置)の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、すべての図面において、同一形態あるいは同一機能を有する要素には同一符号が付されている。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の光ピックアップ装置1Aの主な構成を概略的に示す図である。この光ピックアップ装置1Aは、ディスク状の光学的情報記録媒体2(以下、単に「光ディスク2」と呼ぶ。)に情報の再生用または記録用のレーザ光束を照射し、光ディスク2の記録層(L0層)2b、記録層(L1層)2c及び記録層(L2層)2aのいずれかで反射した戻り光ビームを検出して受光信号群OSを生成し出力する機能を有する。
【0014】
図1に示されるように、光ピックアップ装置1Aは、発光素子11、回折格子12、偏光プリズム13、コリメータレンズ14、立上げミラー16、1/4波長板17、対物レンズ(集光光学系)18、センサーレンズ20及び光検出素子22を備えている。これら構成要素11〜14,16〜18,20,22は、光ピックアップ装置1Aの筐体内のベース部材(図示せず)に取り付けられている。また、光ピックアップ装置1Aの筐体は、光ディスク2のラジアル方向(光ディスク2の半径方向)に移動自在の移動ベース(図示せず)に固定されている。この移動ベースを光ディスク2のラジアル方向に移動させることで、光ピックアップ装置1Aは、光ディスク2の所望のトラックに再生用または記録用のレーザ光束を照射することができる。
【0015】
発光素子11は、駆動信号DS1に応じて再生用または記録用のパワーと固有の発振波長とを有するレーザ光束を出力するレーザ素子であり、発光素子11としては、たとえば、発振波長405nmのレーザ光を出力する半導体レーザダイオードを使用することができる。なお、発振波長405nmのレーザ光に限定されるものではなく、光ディスク2の構成に合わせた発振波長のレーザ光を出力し得る発光素子11を採用すればよい。発光素子11の光軸は、対物レンズ18やコリメータレンズ14の中心を通るシステム光軸OAと一致するように調整されている。
【0016】
発光素子11から出射されたレーザ光束Leは、システム光軸OAに沿って伝搬し、回折格子12に入射する。回折格子12は、入射光を回折させて、この入射光を、0次の透過回折光である主光束と、0次以外の透過回折光である副光束とに分割する光分割素子である。本実施の形態では、回折格子12は、入射光から±1次の透過回折光を2本の副光束として発生させる。回折格子12は、凹凸の周期構造を持つ回折格子面を有している。副光束は、その周期構造のピッチに応じた回折角度で回折格子12から出射されるが、その回折角度は小さいので、図1では、主に主光束の光路が示されている。副光束は、トラッキング誤差信号を生成するために使用されるものである。
【0017】
回折格子12を透過したレーザ光束のうち主光束は、システム光軸OAに沿って伝搬して偏光プリズム13に入射する。この際、副光束は、システム光軸OAから微小な角度傾いた方向に伝搬し、主光束とほぼ同じ光路を進行している。偏光プリズム13は、入射光の偏光成分をその偏光方向に応じて反射または透過させる光学機能を有し、偏光ビームスプリッタと同じ機能を有している。回折格子12からの入射光はほぼ直線偏光である。偏光プリズム13は、回折格子12からの入射光を透過させてコリメータレンズ14に向けて出射する。
【0018】
コリメータレンズ14は、図1に示されるように、偏光プリズム13から入射した発散光を、システム光軸OAにほぼ平行な方向に伝搬する平行光に変換する。ここで、レンズ駆動部15は、外部から供給された駆動信号DS2に応じてコリメータレンズ14をシステム光軸OAに沿ってシフトさせて光学収差を適正に補正することができる。具体的には、たとえば、光ディスク2の記録層を被覆するカバー層の厚みやそのカバー層の製造誤差に起因して光ディスク2の記録層で球面収差が発生する。コリメータレンズ14を光軸OAに沿ってシフトさせると、コリメータレンズ14から出射される平行光がそのシフト量に応じて収束光または発散光に変化するので、コリメータレンズ14のシフト量を制御することで球面収差を補正することができる。なお、光ディスク2の記録層で発生する球面収差が小さく、情報の記録または再生に支障がないと想定される場合には、レンズ駆動部15を設ける必要はない。
【0019】
コリメータレンズ14を透過した光束は、立上げミラー16で反射した後に、1/4波長板17に入射する。1/4波長板17は、立上げミラー16からの入射光を直線偏光から円偏光に変換する。1/4波長板17から出射された円偏光状態のレーザ光束は、対物レンズ18に入射する。
【0020】
対物レンズ18は、入射光を集光させて光ディスク2の記録層2a〜2cのいずれかに集光スポットを形成する。レンズアクチュエータ19は、サーボ制御系(図示せず)から供給された駆動信号DS3に応じて、フォーカス方向、光ディスク2のラジアル方向、光ディスク2のタンジェンシャル方向に傾く方向(タンジェンシャルチルト方向)、及び、ラジアル方向に傾く方向(ラジアルチルト方向)に個別に対物レンズ18を駆動する機能を有する。
【0021】
図1に示されるように、光ディスク2は、その厚み方向に積層された複数の記録層2a〜2cを有している。レンズアクチュエータ19に対物レンズ18をフォーカス方向にシフトさせることで、対物レンズ18から出射された光束の集光スポットを、記録層2a〜2cのいずれか1つ(以下「目標層」と呼ぶ。)に形成することができる。目標層は、情報の再生または記録の対象となる記録層である。
【0022】
図2(A),(B)は、記録層2cを目標層としたとき、この目標層2cで反射した光束(以下「戻り光束」と呼ぶ。)30の光路と、目標層2cに隣接する他の記録層2a,2bで反射する迷光31a,31bの光路とを概略的に示す図である。図2(A)に示されるように、記録層2cに向けて入射する光束30の一部が、目標層2cよりも対物レンズ18に近い側に配置された記録層2aで反射して迷光31aとなる。また、図2(B)に示されるように、記録層2cを透過した光束30の一部が、目標層2cよりも対物レンズ18から離れる側に配置された記録層2bで反射して迷光31bとなる。このように、光ディスク2で反射する光束は、目標層2cで反射した戻り光束30だけでなく、情報の記録または再生に不要な迷光31a,31bをも含む。
【0023】
図1に示されるように、光ディスク2で反射した戻り光束30と迷光31a,31bとは、1/4波長板17で円偏光から直線偏光に変換され、立上げミラー16で反射してコリメータレンズ14に入射する。ここで、1/4波長板17から立上げミラー16に向けて出射された光束(復路の光束)の偏光方向と、立上げミラー16から1/4波長板17に入射する光束(往路の光束)の偏光方向とは、互いに約90°ずれている。
【0024】
偏光プリズム13は、コリメータレンズ14を透過した戻り光束30と迷光31a,31bとをその直線偏光状態に応じてセンサーレンズ20の方向に反射させる。センサーレンズ20は、偏光プリズム13から入射した戻り光束30と迷光31a,31bとに非点収差を付与する収差発生素子である。センサーレンズ20は、たとえばシリンドリカルレンズによって構成することができる。戻り光束30に付与された非点収差は、フォーカシング誤差信号を生成するために使用される。
【0025】
図3(A),(B)は、光検出素子22に入射する戻り光束30と迷光31a,31bとの光路を概略的に示す図である。説明の便宜上、図3(A)に一方の迷光31aの光路を示し、図3(B)に他方の迷光31bの光路を示したが、実際は、迷光31a,31bは同時に光検出素子22に入射する。目標層2cで反射した戻り光束30は、集光した状態で光検出素子22に入射する。しかしながら、目標層2cよりも対物レンズ18に近い側の記録層2aで反射した迷光31aは、図3(A)に示されるように集光しない状態で光検出素子22に入射する。目標層2cよりも対物レンズ18から遠い側の記録層2bで反射した迷光31bは、図3(B)に示されるように、光検出素子22に到達する前に集光するので、光検出素子22には集光しない状態で入射することとなる。
【0026】
図4は、光検出素子22の受光部23の構成を上面視方向から概略的に示す図である。図4に示されるように、光検出素子22は、目標層2cで反射した戻り光束30のうち主光束の戻り光束30Mの受光スポットを検出する主受光部23Mと、戻り光束30のうち副光束(+1次透過回折光)の戻り光束30Rの受光スポットを検出する副受光部23Rと、戻り光束30のうち副光束(−1次透過回折光)の戻り光束30Lの受光スポットを検出する副受光部23Lとを有する。副光束の戻り光束30R,30Lは、主光束の戻り光束30Mの受光スポットから離れた位置に受光スポットを形成しており、これら戻り光束30M,30R,30Lの受光スポットは、一直線上に配列されている。
【0027】
主受光部23Mの受光面は、互いに直交する分割線(光不感帯)25Mr,25Mtにより4分割されており、4つの受光面24A,24B,24C,24Dからなる。分割線25Mr,25Mtは、互いに直交する方向にそれぞれ延在している。これら受光面24A,24B,24C,24Dは、それぞれ、受光信号S,S,S,Sを出力する。
【0028】
また、−1次透過回折光の戻り光束30Lを受光する副受光部23Lは、一対の受光面24E,24Fを有している。これら受光面24E,24Fは、戻り光束30M,30R,30Lの受光スポットの配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)25Lの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線25Lの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面24E,24Fは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。一方、+1次透過回折光の戻り光束30Rを受光する副受光部23Rも、一対の受光面24G,24Hを有しており、これら受光面24G,24Hは、配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)25Rの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線25Rの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面24G,24Hは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。
【0029】
受光信号S〜Sは、受光信号群OSとして外部の演算回路(図示せず)に出力される。演算回路は、次の演算式(1)に従ってトラッキング誤差信号TEを生成する。
TE=MPP−k×SPP …(1)
【0030】
ここで、kは、ゲイン係数であり、MPPは、主プッシュプル信号であり、SPPは、副プッシュプル信号である。主プッシュプル信号MPPと副プッシュプル信号SPPは、それぞれ、次の演算式(1M),(1S)で与えられる。
MPP=(S+S)−(S+S) …(1M)
SPP=(S−S)+(S−S) …(1S)
【0031】
このように、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sは、一方の副受光部23Lの受光面24E,24Fからそれぞれ出力された受光信号S,Sの差分で与えられる。副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sは、他方の副受光部23Rの受光面24G,24Hからそれぞれ出力された受光信号S,Sの差分で与えられる。
【0032】
対物レンズ18がレンズアクチュエータ19によって駆動されて光ディスク2のラジアル方向にシフトすると、対物レンズ18の位置と光検出素子22の位置とが相対的にずれること(対物レンズシフト)が生じることがある。このとき、光検出素子22に照射される受光スポットの中心が、それぞれ対応する分割線25Mr,25Mt,25R,25Lの中心からずれて、主プッシュプル信号MPPと副プッシュプル信号SPPとにそれぞれ直流オフセット成分が重畳される。主プッシュプル信号MPPと副プッシュプル信号SPPとは、光ディスク2のトラックを横断する方向に関して互いに逆位相を有するが、対物レンズシフトに関しては同じ位相を有する(たとえば、MPPの信号レベルが直流オフセット成分によりプラス方向に増大すると、SPPの信号レベルもプラス方向に増大する)。このため、副プッシュプル信号SPPを適当なゲイン係数kで増幅して得た信号k×SPPを主プッシュプル信号MPPから減算することで、直流オフセット成分がキャンセルされたトラッキング誤差信号TEを得ることができる。
【0033】
また、演算回路は、次の演算式(2)に従って再生信号RFを生成することができる。
RF=S+S+S+S …(2)
【0034】
フォーカシング誤差信号は、受光信号S,S,S,Sを用いて生成することができる。次式(3)は、非点収差法に従ってフォーカシング誤差信号FEを生成するために使用される演算式である。
FE=(S+S)−(S+S) …(3)
【0035】
しかしながら、光検出素子22の受光面には、目標層で反射した戻り光束30M,30R,30Lだけでなく、集光しない状態の迷光31a,31bも入射する。図5は、光検出素子22における迷光31aの受光状態の一例、すなわち、主光束の迷光31Ma及び副光束の迷光31Ra,31Laの受光状態を概略的に示す図である。図6は、光検出素子22における迷光31bの受光状態の一例、すなわち、主光束の迷光31Mb及び副光束の迷光31Rb,31Lbの受光状態を概略的に示す図である。本実施の形態では、センサーレンズ20にて付与される非点収差量が小さい、あるいは、記録層2a,2cの間隔と記録層2c,2bの間隔とが比較的大きい。このため、図5及び図6に示されるように、光検出素子22における迷光31Ra,31La,31Rb,31Lbの形状は、ほぼ円形となる。
【0036】
図5に概略的に示されるように、副光束の迷光31Ra,31Laと主光束の迷光31Maとが重なる領域に干渉縞が形成される。図5の干渉縞は、副光束の迷光31Ra,31Laと主光束の迷光31Maとの位相差に起因して生じたものである。本実施の形態では、主光束の迷光31Maと副光束の迷光31Ra,31Laとにコマ収差が生じていないので、迷光31Ma,31Ra,31Laは、光検出素子22上ではほぼ同じ大きさで円形の光スポットを形成する。また、これら迷光31Ma,31Ra,31Laは、光スポットの配列方向ADに沿ってほぼ一直線上に並んでいる。よって、この干渉縞の明線(光強度が強い線状の明部)と暗線(光強度が弱い線状の暗部)との方向は、配列方向ADに対して垂直な方向とほぼ一致する。また、干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光31Maの外輪部分と副光束の迷光31Ra,31Laの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致している。
【0037】
一方、図6に概略的に示されるように、副光束の迷光31Rb,31Lbと主光束の迷光31Mbとが重なる領域に干渉縞が形成される。図6の干渉縞は、副光束の迷光31Rb,31Lbと主光束の迷光31Mbとの位相差に起因して生じたものである。図5の干渉縞の場合と同様に、図6の干渉縞の明線と暗線の方向は、受光スポットの配列方向ADに対して垂直な方向とほぼ一致する。また、干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光31Mbの外輪部分と副光束の迷光31Rb,31Lbの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致している。
【0038】
本実施の形態の光ピックアップ装置1Aの特徴の1つは、副受光部23R,23Lが、図5及び図6の干渉縞の明線と斜めに交差する分割線25R,25Lをそれぞれ有していることである。分割線25R,25Lは、受光スポットの配列方向ADとも斜めに交差する。副受光部23R,23Lの外形はそれぞれ、図4に示されるように受光スポットの配列方向ADに平行な2辺と配列方向ADに垂直な2辺とを持つ矩形状であるので、分割線25R,25Lは、これら辺に対して傾斜するように形成されることとなる。
【0039】
図7は、副受光部23Rと干渉縞40との関係を概略的に示す図である。この干渉縞40は、副光束の迷光31Ra,31Rbと主光束の迷光31Ma,31Mbとの位相差に起因して形成されるものであり、配列方向ADに垂直な方向の明線40Bと暗線40Dとの繰り返しパターンを有する。副受光部23Rの分割線25Rの方向Lcは、明線40Bの方向から傾斜している。なお、図7には、目標層2cで反射した主光束と副光束との戻り光束30Rの受光スポットは示されていない。副受光部23Lにおいても、同様に、副光束の迷光31La,31Lbと主光束の迷光31Ma,31Mbとの位相差に起因する干渉縞が形成される。
【0040】
これに対し、図8は、副受光部23Rに代えて従来の副受光部230を使用した場合の副受光部230と干渉縞40との関係を示す図である。この副受光部230は、受光面240H,240Gを互いに隔てる分割線250を有するが、この分割線250の方向Lcは、干渉縞40の明線40Bの方向と平行である。
【0041】
図7及び図8の干渉縞40の明暗のパターンは固定されているものではない。たとえば、情報の記録または再生時における光ディスク2にチルトが発生しあるいは製造誤差が存在すると、光ディスク2の回転とともに、レーザ光束の照射位置における記録層2a,2b,2cの厚み方向の位置も変動するので、目標層2c以外の記録層2a,2bで反射する主光束と副光束との迷光の光路長も変動する。このような場合、光ディスク2の回転とともに、干渉縞40の明線40Bと暗線40Dの位置が変動して、あたかも、干渉縞40が配列方向ADに沿って移動するようにみえる。
【0042】
このような干渉縞40の変動は、副プッシュプル信号SPPの信号レベルに影響を与えることとなる。以下、この点について詳細に説明する。
【0043】
図9は、副受光部23Rにおける戻り光束30R(図4)と迷光とが互いに干渉して形成された受光スポット30Raを概略的に示す図である。図10は、副受光部23Rに代えて従来の副受光部230を使用した場合に副受光部230上に形成される受光スポット30Raを概略的に示す図である。受光スポット30Raの内部の光強度分布は、中心部30pで最も高いピーク強度を有し、非点収差の影響を受けた明暗の干渉縞パターンを有する。発光素子11から出射されるレーザ光束では、一般に、その中心部の強度が一番高いので、受光スポット30Raの内部に現れる干渉縞の光強度分布は、その中心部30pが一番高いピーク強度を有する。このため、受光スポット30Raの中心部30pでは、その周囲よりも強い干渉縞が発生している。図11は、このような受光スポットRaの光強度分布を概略的に示す図である。一方、他方の副受光部23Lにおいても、図9の受光スポット30Raと同様の受光スポットが形成される。
【0044】
上述したように光ディスク2の回転とともに、干渉縞40の明線40Bの位置があたかも配列方向ADに沿って移動するように変動した場合、その位置変動に応じて、受光スポット30Raの中心部30pの位置も配列方向ADに沿って変動する。これにより、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sの信号レベルもその影響を受ける。他方の副受光部23Lにおいても、同様に干渉縞の明線の位置が変動すると、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sの信号レベルもその影響を受ける。
【0045】
図10に示した従来の副受光部230の場合、受光スポット30Raの中心部30pは、分割線250の中心に位置するように事前に調整されている。このため、干渉縞40の明線40Bの位置変動に応じて、受光スポット30Raのピーク強度の位置が分割線250を跨いで変動することにより、副プッシュプル信号の差動信号成分の信号レベルが変動してトラッキング誤差信号の挙動が安定しないという問題がある。
【0046】
一方、本実施の形態の図9の副受光部23Rの場合も、受光スポット30Raの中心部30pは、分割線25Rの中心に位置するように事前に調整されているが、干渉縞40の明線40Bの位置変動があったとしても、分割線25Rは、干渉縞40の変動方向に対して斜め方向に延在しているので、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sは、干渉縞40の明線40Bの位置変動の影響を受けにくい。図12(A)は、受光スポット30Raの中心部30pと本実施の形態の分割線25Rとの間の位置関係を概略的に示す図であり、図12(B)は、受光スポット30Raの中心部30pと従来の分割線250との間の位置関係を概略的に示す図である。図12(A),(B)に示されるように、干渉縞40の明線40Bの位置変動により、受光スポット30Raの中心部30pが配列方向ADに沿ってΔだけ移動した場合を考える。かかる場合、本実施の形態の副受光部23Rでは、図12(A)に示されるように、当該中心部30pは分割線25Rからδaだけ離れるが、従来の副受光部230では、図12(B)に示されるように、当該中心部30pは分割線250からδbだけ離れる。このとき、δaは、δbよりも小さい。それ故、本実施の形態の副受光部23Rを使用すれば、干渉縞40の明線40Bの位置変動があったとしても、副プッシュプル信号SPPの信号レベルの変動を抑制することができる。したがって、挙動が安定したトラッキング誤差信号TEを得ることができる。
【0047】
ところで、副受光部23Rの分割線25Rの傾斜角度は、戻り光束30Rの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として、30°以内に調整されることが望ましい。図13(A)は、副光束の戻り光束30Rの受光スポットと分割線25Rとの間の位置関係を概略的に示す図である。戻り光束30Rの受光スポットは、光ディスク2のトラック構造に起因する0次反射回折光30R0と±1次反射回折光30R1a,30R1bの一部とを含む。戻り光束30Rのうち0次反射回折光30R0と±1次反射回折光30R1a,30R1bとが重なる部分が、プッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbである。これらプッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbの範囲は、光ディスク2のトラックピッチと対物レンズ18の開口数(NA:Numerical Aperture)とで決まる。分割線25Rの傾斜角度が30°以内であれば、受光面24G,24Hはそれぞれプッシュプル変調成分30Rpb,30Rpaのほぼ全てを受光することができるので、受光信号S,Sの信号レベルの低下を起こさないようにすることができる。一方、当該傾斜角度が30°を超えると、分割線25R上にプッシュプル変調成分30Rpb,30Rpaが形成されるおそれがある。この場合、受光信号S,Sの各信号レベルが低下するおそれがある。なお、分割線25Rの傾斜角度が90°の場合は、プッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbは相殺されて無くなる。
【0048】
同様に、副受光部23Lの分割線25Lの傾斜角度も、戻り光束30Lの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として、30°以内に調整されることが望ましい。図13(B)は、副光束の戻り光束30Lの受光スポットと分割線25Lとの間の位置関係を概略的に示す図である。戻り光束30Lの受光スポットは、光ディスク2のトラック構造に起因する0次反射回折光30L0と±1次反射回折光30L1a,30L1bの一部とを含む。戻り光束30Lのうち0次反射回折光30L0と±1次反射回折光30L1a,30L1bとが重なる部分が、プッシュプル変調成分30Lpa,30Lpbである。分割線25Lの傾斜角度が30°以内であれば、受光面24E,24Fはそれぞれプッシュプル変調成分30Lpb,30Lpaのほぼ全てを受光することができるので、受光信号S,Sの信号レベルの低下を起こさないようにすることができる。
【0049】
以上に説明したように実施の形態1の光ピックアップ装置1Aは、複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生を行う場合でも、トラッキング誤差信号TEの波形の乱れを抑制し、その挙動を安定化させることができる。したがって、光ピックアップ装置1Aを使用すれば、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0050】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図14は、実施の形態2の光ピックアップ装置1Bの構成を概略的に示す図である。この光ピックアップ装置1Bは、多層の光ディスク2に情報の再生用または記録用のレーザ光束を照射し、光ディスク2の記録層2a〜2cのいずれかで反射した戻り光ビームを検出して受光信号群OSを生成し出力する機能を有する。図14に示されるように、光ピックアップ装置1Bの構成は、センサーレンズと光検出素子とを除いて、上記実施の形態1の光ピックアップ装置1Aの構成と同じである。
【0051】
実施の形態1の場合と同様に、目標層2cで反射した戻り光束60と、目標層2c以外の記録層2a,2bで反射した迷光61a,61bとは、対物レンズ18、1/4波長板17、立上げミラー16及びコリメータレンズ14を順次透過して偏光プリズム13に入射し、偏光プリズム13でセンサーレンズ21の方向に反射させられる。
【0052】
センサーレンズ21は、偏光プリズム13から入射した戻り光束60と迷光61a,61bとに非点収差を付与する収差発生素子である。センサーレンズ21は、実施の形態1のセンサーレンズ20と同様に、たとえばシリンドリカルレンズによって構成することができる。戻り光束60に付与された非点収差は、フォーカシング誤差信号を生成するために使用される。本実施の形態では、センサーレンズ21によって付与される非点収差量は、実施の形態1のセンサーレンズ20によって付与される非点収差量と異なるので、後述するように、光検出素子52における迷光の形状は、楕円形となる。
【0053】
図15は、光検出素子52の受光部53の構成を上面視方向から概略的に示す図である。図15に示されるように、光検出素子52は、目標層2cで反射した戻り光束60のうち主光束の戻り光束60Mの受光スポットを検出する主受光部53Mと、戻り光束60のうち副光束(+1次透過回折光)の戻り光束60Rの受光スポットを検出する副受光部53Rと、戻り光束60のうち副光束(−1次透過回折光)の戻り光束60Lの受光スポットを検出する副受光部53Lとを有する。副光束の戻り光束60R,60Lは、主光束の戻り光束60Mの受光スポットから離れた位置に受光スポットを形成しており、これら戻り光束60M,60R,60Lの受光スポットは、一直線上に配列されている。
【0054】
主受光部53Mの受光面は、互いに直交する分割線(光不感帯)55Mr,55Mtにより4分割されており、4つの受光面54A,54B,54C,54Dからなる。分割線55Mr,55Mtは、互いに直交する方向にそれぞれ延在している。これら受光面54A,54B,54C,54Dは、それぞれ、受光信号S,S,S,Sを出力する。
【0055】
また、−1次透過回折光の戻り光束60Lを受光する副受光部53Lは、一対の受光面54E,54Fを有している。これら受光面54E,54Fは、戻り光束60M,60R,60Lの受光スポットの配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)55Lの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線55Lの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面54E,54Fは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。一方、+1次透過回折光の戻り光束60Rを受光する副受光部53Rも、一対の受光面54G,54Hを有しており、これら受光面54G,54Hは、配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)55Rの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線55Rの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面24G,24Hは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。
【0056】
上記受光信号S〜Sは、受光信号群OSとして外部の演算回路(図示せず)に出力される。演算回路は、上記の演算式(1),(1M),(1S),(2),(3)に従って、トラッキング誤差信号TE、主プッシュプル信号MPP、副プッシュプル信号SPP、再生信号RF及びフォーカシング誤差信号FEを生成することができる。
【0057】
光検出素子52の受光面は、目標層で反射した戻り光束60M,60R,60Lと、集光しない状態の迷光61a,61bとを同時に受光する。図16は、光検出素子52における迷光61aの受光状態の一例、すなわち、主光束の迷光61Ma及び副光束の迷光61Ra,61Laの受光状態を概略的に示す図であり、図17は、光検出素子52における迷光61bの受光状態の一例、すなわち、主光束の迷光61Mb及び副光束の迷光61Rb,61Lbの受光状態を概略的に示す図である。本実施の形態では、センサーレンズ21にて付与される非点収差量が大きい、あるいは、記録層2a,2cの間隔と記録層2c,2bの間隔とが比較的小さい。このため、図16及び図17に示されるように、光検出素子52における迷光61Ra,61La,61Rb,61Lbの形状は、非点収差の影響を強く受けて、ほぼ楕円形となる。
【0058】
図16に概略的に示されるように、副光束の迷光61Ra,61Laと主光束の迷光61Maとが重なる領域に干渉縞が形成される。図16の干渉縞は、副光束の迷光61Ra,61Laと主光束の迷光61Maとの位相差に起因して生じたものである。迷光61Ma,61Ra,61Laは、光検出素子52上で、円形から歪んだほぼ楕円形の光スポットを形成する。また、これら迷光61Ma,61Ra,61Laは、配列方向ADに沿ってほぼ一直線上に並んでいる。実施の形態1の場合とは異なり、本実施の形態の場合は、図16の干渉縞の明線(光強度が強い線状の明部)と暗線(光強度が弱い線状の暗部)との方向は、配列方向ADに対して垂直な方向と一致せず、傾斜している。また、干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光61Maの外輪部分と副光束の迷光61Ra,61Laの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致する。
【0059】
一方、図17に概略的に示されるように、副光束の迷光61Rb,61Lbと主光束の迷光61Mbとが重なる領域に干渉縞が形成される。図17の干渉縞は、副光束の迷光61Rb,61Lbと主光束の迷光61Mbとの位相差に起因して生じたものである。図16の干渉縞の場合と同様に、迷光61Mb,61Rb,61Lbは、光検出素子52上で、円形から歪んだほぼ楕円形の光スポットを形成する。また、図17の干渉縞の明線と暗線の方向は、受光スポットの配列方向ADに対して傾斜している。この干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光61Mbの外輪部分と副光束の迷光61Rb,61Lbの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致する。
【0060】
本実施の形態の光ピックアップ装置1Bの特徴の1つは、副受光部53R,53Lが、非点収差の影響を受けた図16及び図17の干渉縞の明線と斜めに交差する分割線55R,55Lをそれぞれ有していることである。主光束の迷光61Ma,61Mbと副光束の迷光61Ra,61La,61Rb,61Lbとの受光スポットの形状がどの程度円形から歪み、回転しているかは、光ピックアップ装置1Bに採用されるレンズ光学系の倍率や、センサーレンズ21で付与される非点収差の量で決まる。
【0061】
図18は、記録層2aで反射した迷光61Ma,61Raに起因する干渉縞42と副受光部53Rとの関係を概略的に示す図であり、図19は、記録層2bで反射した迷光61Mb,61Rbに起因する干渉縞43と副受光部53Rとの関係を概略的に示す図である。
【0062】
図18の干渉縞(第1の干渉縞成分)42は、図16に示した副光束の迷光61Raと主光束の迷光61Maとの位相差に起因して形成されるものであり、配列方向ADから傾斜した方向Laに延在する明線42Bと暗線42Dとの繰り返しパターンを有する。また、副受光部53R上には、戻り光束60R(図15)と迷光とが互いに干渉することで受光スポット60Raが形成される。この受光スポット60Raの内部の光強度分布は、その中心部60paで最も高いピーク強度を有し、非点収差の影響を受けた干渉縞パターンを有する。このため、受光スポット60Raの中心部60paでは、その周囲よりも強い干渉縞が発生している。なお、図18に示した受光スポット60Raの内部の干渉縞パターンは、簡略化されており、実際にはもっと複雑である。
【0063】
このような干渉縞42の明線42B(または暗線42D)の方向Laが分割線55Rの方向Lcに対して傾斜する角度(反時計周りの角度)は、0°よりも大きく且つ90°未満である。副受光部53Lにおいても、同様の干渉縞が形成される。この干渉縞の明線(または暗線)の方向が分割線55Lの方向Lcに対して傾斜する角度は、0°よりも大きく且つ90°未満である。
【0064】
一方、図19の干渉縞(第2の干渉縞成分)43は、図17に示した副光束の迷光61Rbと主光束の迷光61Mbとの位相差に起因して形成されるものであり、配列方向ADから傾斜した方向Lbに延在する明線43Bと暗線43Dとの繰り返しパターンを有する。また、副受光部53R上には、戻り光束60R(図15)と迷光とが互いに干渉することで受光スポット60Rbが形成される。この受光スポット60Rbの内部の光強度分布は、その中心部60pbで最も高いピーク強度を有し、非点収差の影響を受けた干渉縞パターンを有する。このため、受光スポット60Rbの中心部60pbでは、その周囲よりも強い干渉縞が発生している。なお、図19に示した受光スポット60Rbの内部の干渉縞パターンは、簡略化されており、実際にはもっと複雑である。
【0065】
このような干渉縞43の明線43B(または暗線43D)の方向Lbが分割線55Rの方向Lcに対して傾斜する角度(反時計周りの角度)は、−90°よりも大きく且つ0°未満である。副受光部53Lにおいても、同様の干渉縞が形成される。この干渉縞の明線(または暗線)の方向が分割線55Lの方向に対して傾斜する角度は、−90°よりも大きく且つ0°未満である。
【0066】
なお、説明の便宜上、図18と図19とにそれぞれ干渉縞42,43を図示したが、実際には、これら干渉縞42,43は、副受光部53R上に同時に形成される。
【0067】
実施の形態1の場合と同様に、図18及び図19の干渉縞42,43の明暗のパターンは、光ディスク2の回転とともに変動し得る。図18の干渉縞42の場合、光ディスク2の回転とともに、干渉縞42の明線42Bと暗線42Dの位置が、当該明線42B及び暗線42Dの配列方向MDa(明線42B及び暗線42Dの延在方向Laとは垂直な方向)に変動して、あたかも、干渉縞42が配列方向MDaに移動するようにみえる。図19の干渉縞43の場合は、光ディスク2の回転とともに、干渉縞43の明線43Bと暗線43Dの位置が、当該明線43B及び暗線43Dの配列方向MDb(明線43B及び暗線43Dの延在方向Lbとは垂直な方向)に変動して、あたかも、干渉縞43が配列方向MDbに移動するようにみえる。
【0068】
このような干渉縞42,43の位置変動があったとしても、副受光部53Rの分割線55Rの方向は、干渉縞42,43の変動方向MDa,MDbに対して傾斜しているので、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sが干渉縞42,43の変動の影響を受けることを抑制することができる。他方の副受光部53Lでも、同様であり、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sが副受光部53L上の干渉縞の変動の影響を受けることが抑制される。したがって、挙動が安定したトラッキング誤差信号TEを得ることができる。
【0069】
また、実施の形態1の副受光部23R,23L(図13(A)及び(B))の場合と同様に、副受光部53Rの分割線55Rの傾斜角度は、戻り光束60Rの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として30°以内に調整されることが望ましい。同様に、副受光部53Lの分割線55Lの傾斜角度も、戻り光束30Lの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として、30°以内に調整されることが望ましい。このように分割線55R,55Lの傾斜角度を30°以内にすることで、受光信号S,S,S,Sの信号レベルの低下を起こさないようにし、差動信号成分S−S,S−Sの信号レベルの低下を防止することができる。
【0070】
以上の説明では、光ディスク2の記録層2a〜2cのうちの記録層(L1層)2cが目標層に設定されていたが、これに限定されるものではない。対物レンズ18から最も離れた記録層(L0層)2bを目標層としたときは、この記録層2bに隣接する記録層2cで反射した主光束と副光束との迷光に起因する干渉縞が副受光部53R,53Lに形成される。また、対物レンズ18に最も近い記録層(L2層)2aを目標層としたときは、この記録層2aに隣接する記録層2cで反射した主光束と副光束との迷光に起因する干渉縞が副受光部53R,53Lに形成される。副受光部53R,53Lの分割線55R,55Lは、光ディスク2の記録層のうちどの記録層が目標層に設定された場合でも、この目標層に隣接する記録層で反射する主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線または暗線の方向と斜めに交差するように設計されている。
【0071】
図20は、3層の記録層2a〜2cを有する光ディスク2に対して記録または再生を行う場合に、副受光部53R上に形成され得る干渉縞の明線(または暗線)の方向L0a,L1a,L1b,L2bを例示する図である。方向L0aは、記録層(L0層)2bを目標層としたときに、この記録層2bよりも対物レンズ18に近い側の記録層(L1層)2cで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向を表している。方向L1aは、記録層(L1層)2cを目標層としたときに、この記録層2cよりも対物レンズ18に近い側の記録層(L2層)2aで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞42(図18)の方向Laを表し、方向L1bは、記録層(L1層)2cを目標層としたときに、この記録層2cよりも対物レンズ18から離れた側の記録層(L0層)2bで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞43(図19)の方向を表している。そして、方向L2bは、記録層(L2層)2aを目標層としたときに、この記録層2aよりも対物レンズ18から離れた側の記録層(L1層)2cで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向を表している。
【0072】
分割線55Rの方向Lcを基準としたとき、この方向Lcに対して干渉縞の方向L0a,L1aがなす反時計周りの角度θ(0a),θ(1a)は、いずれも、0°よりも大きく且つ90°未満である。一方、分割線55Rの方向Lcに対して干渉縞の方向L1b,L2bがなす反時計周りの角度θ(1b),θ(2b)は、いずれも、−90°よりも大きく且つ0°未満である。
【0073】
このようにいずれの記録層を目標層として記録または再生を行う場合にも、同一記録層で反射した迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向から分割線55R,55Lの方向を十分に傾けることが可能である。よって、いずれの記録層に対して記録または再生を行う場合でも、差動信号成分S−S,S−Sの信号レベルの変動を抑制することができる。したがって、トラッキング誤差信号TEの挙動を安定化させることができる。
【0074】
以上に説明したように実施の形態2の光ピックアップ装置1Bは、光検出素子52における迷光61Ra,61La,61Rb,61Lbの形状が非点収差の影響を受けて楕円形に歪む場合でも、複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生を行う際のトラッキング誤差信号TEの波形の乱れを抑制することができ、その挙動を安定化させることができる。したがって、光ピックアップ装置1Bを使用すれば、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0075】
実施の形態3.
次に、上記実施の形態2の変形例である実施の形態3について説明する。この実施の形態3の光ピックアップ装置は、センサーレンズ21で付与される非点収差量とレンズ系の倍率と光検出素子の構成とを除いて、上記実施の形態2の光ピックアップ装置1Bの構成と同じである。
【0076】
図21は、本実施の形態の光検出素子52Kの構成を上面視方向から概略的に示す図である。図21に示されるように、光検出素子52Kは、目標層2cで反射した戻り光束のうち主光束の戻り光束60MKの受光スポットを検出する主受光部53MKと、副光束(+1次透過回折光)の戻り光束60RKの受光スポットを検出する副受光部53RKと、副光束(−1次透過回折光)の戻り光束60LKの受光スポットを検出する副受光部53LKとを有する。副光束の戻り光束60RK,60LKは、主光束の戻り光束60MKの受光スポットから離れた位置に受光スポットを形成しており、これら戻り光束60MK,60RK,60LKの受光スポットは、一直線上に配列されている。
【0077】
主受光部53MKの受光面は、互いに直交する分割線(光不感帯)57Mr,57Mtにより4分割されており、4つの受光面56A,56B,56C,56Dからなる。分割線57Mr,57Mtは、互いに直交する方向にそれぞれ延在している。これら受光面56A,56B,56C,56Dは、それぞれ、受光信号S,S,S,Sを出力する。
【0078】
また、−1次透過回折光の戻り光束60LKを受光する副受光部53LKは、一対の受光面56E,56Fを有している。これら受光面56E,56Fは、戻り光束60MK,60RK,60LKの受光スポットの配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)57Lの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線57Lの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面56E,56Fは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。一方、+1次透過回折光の戻り光束60RKを受光する副受光部53RKも、一対の受光面56G,56Hを有しており、これら受光面56G,56Hは、配列方向ADに直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線(光不感帯)57Rの両側にそれぞれ配置されている。その直交する方向に対して分割線57Rの延在方向がなす角度は、90°未満である。受光面56G,56Hは、それぞれ、受光信号S,Sを出力する。
【0079】
上記受光信号S〜Sは、受光信号群OSとして外部の演算回路(図示せず)に出力される。演算回路は、上記の演算式(1),(1M),(1S),(2),(3)に従って、トラッキング誤差信号TE、主プッシュプル信号MPP、副プッシュプル信号SPP、再生信号RF及びフォーカシング誤差信号FEを生成することができる。
【0080】
図22は、光検出素子52Kにおける主光束の迷光61MKa及び副光束の迷光61RKa,61LKaの受光状態を概略的に示す図であり、図23は、光検出素子52Kにおける主光束の迷光61MKb及び副光束の迷光61RKb,61LKbの受光状態を概略的に示す図である。
【0081】
図22に概略的に示されるように、副光束の迷光61RKa,61LKaと主光束の迷光61MKaとが重なる領域に干渉縞が形成される。図22の干渉縞は、副光束の迷光61RKa,61LKaと主光束の迷光61MKaとの位相差に起因して生じたものである。本実施の形態では、主光束の迷光61MKaと副光束の迷光61RKa,61LKaとに非点収差が付与されているので、迷光61MKa,61RKa,61LKaは、光検出素子52K上で、円形から歪んだほぼ楕円形の光スポットを形成する。また、これら迷光61MKa,61RKa,61LKaは、配列方向ADに沿ってほぼ一直線上に並んでいる。図22の干渉縞の明線(光強度が強い線状の明部)と暗線(光強度が弱い線状の暗部)との方向は、配列方向ADに対して垂直な方向と一致せず、傾斜している。また、この干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光61MKaの外輪部分と副光束の迷光61RKa,61LKaの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致する。
【0082】
一方、図23に概略的に示されるように、副光束の迷光61RKb,61LKbと主光束の迷光61MKbとが重なる領域に干渉縞が形成される。図23の干渉縞は、副光束の迷光61RKb,61LKbと主光束の迷光61MKbとの位相差に起因して生じたものである。図22の干渉縞の場合と同様に、主光束の迷光61MKbと副光束の迷光61RKb,61LKbとに非点収差が付与されているので、迷光61MKb,61RKb,61LKbは、光検出素子52K上で、円形から歪んだほぼ楕円形の光スポットを形成する。また、図23の干渉縞の明線と暗線の方向は、配列方向ADに対して傾斜している。また、この干渉縞の明線と暗線の方向は、主光束の迷光61MKbの外輪部分と副光束の迷光61RKb,61LKbの外輪部分との交点を結んだ線に平行な方向とほぼ一致する。
【0083】
図24は、記録層2aで反射した迷光61MKa,61RKaに起因する干渉縞44と副受光部53RKとの関係を概略的に示す図であり、図25は、記録層2bで反射した迷光61MKb,61RKbに起因する干渉縞45と副受光部53RKとの関係を概略的に示す図である。
【0084】
図24の干渉縞(第1の干渉縞成分)44は、図22に示した副光束の迷光61RKaと主光束の迷光61MKaとの位相差に起因して形成されるものであり、配列方向ADから傾斜した方向Laに延在する明線44Bと暗線44Dとの繰り返しパターンを有する。また、副受光部53RK上には、戻り光束60RK(図21)と迷光とが互いに干渉することで受光スポット60RKaが形成される。この受光スポット60RKaの内部の光強度分布は、その中心部60Kpaで最も高いピーク強度を有し、非点収差の影響を受けた干渉縞パターンを有する。このため、受光スポット60RKaの中心部60Kpaでは、その周囲よりも強い干渉縞が発生している。なお、図24に示した受光スポット60RKaの内部の干渉縞パターンは、簡略化されており、実際にはもっと複雑である。
【0085】
このような干渉縞44の明線44B(または暗線44D)の方向Laと分割線57Rの方向Lcとがなす角度は、0°よりも大きく且つ90°未満である。副受光部53Lにおいても、同様の干渉縞が形成される。
【0086】
一方、図25の干渉縞(第2の干渉縞成分)45は、図23に示した副光束の迷光61RKbと主光束の迷光61MKbとの位相差に起因して形成されるものであり、配列方向ADから傾斜した方向Lbに延在する明線45Bと暗線45Dとの繰り返しパターンを有する。また、副受光部53RK上には、戻り光束60RK(図21)と迷光とが互いに干渉することで受光スポット60RKbが形成される。この受光スポット60RKbの内部の光強度分布は、その中心部60Kpbで最も高いピーク強度を有し、非点収差の影響を受けた干渉縞パターンを有する。このため、受光スポット60RKbの中心部60Kpbでは、その周囲よりも強い干渉縞が発生している。なお、図25に示した受光スポット60Rbの内部の干渉縞パターンは、簡略化されており、実際にはもっと複雑である。
【0087】
このような干渉縞45の明線45B(または暗線45D)の方向Lbと分割線57Rの方向Lcとがなす角度は、0°よりも大きく且つ90°未満である。副受光部53Lにおいても、同様の干渉縞が形成される。
【0088】
実施の形態1の場合と同様に、図24及び図25の干渉縞44,45の明暗のパターンは、光ディスク2の回転とともに変動し得る。図24の干渉縞44の場合、光ディスク2の回転とともに、干渉縞44の明線44Bと暗線44Dの位置が、当該明線44B及び暗線44Dの配列方向MDc(明線44B及び暗線44Dの延在方向Laとは垂直な方向)に変動して、あたかも、干渉縞44が配列方向MDcに沿って移動するようにみえる。図25の干渉縞45の場合は、光ディスク2の回転とともに、干渉縞45の明線45Bと暗線45Dの位置が、当該明線45B及び暗線45Dの配列方向MDd(明線45B及び暗線45Dの延在方向Lbとは垂直な方向)に変動して、あたかも、干渉縞45が配列方向MDdに沿って移動するようにみえる。
【0089】
このような干渉縞44,45の位置変動が生じたとしても、副受光部53RKの分割線57Rの方向は、干渉縞44,45の変動方向MDc,MDdに対して傾斜しているので、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sが干渉縞44,45の変動の影響を受けることを抑制することができる。他方の副受光部53LKでも、同様であり、副プッシュプル信号SPPの差動信号成分S−Sが副受光部53LK上の干渉縞の変動の影響を受けることが抑制される。したがって、挙動が安定したトラッキング誤差信号TEを得ることができる。
【0090】
また、実施の形態1の副受光部23R,23L(図13(A)及び(B))の場合と同様に、副受光部53RKの分割線57Rの傾斜角度は、戻り光束60RKの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として30°以内に調整されることが望ましい。同様に、副受光部53LKの分割線57Lの傾斜角度も、戻り光束30LKの受光スポット内の一対のプッシュプル変調成分の配列方向(光ディスク2のラジアル方向に対応する方向)に垂直な方向を基準として、30°以内に調整されることが望ましい。このように分割線57R,57Lの傾斜角度を30°以内にすることで、受光信号S,S,S,Sの信号レベルの低下を起こさないようにし、差動信号成分S−S,S−Sの信号レベルの低下を防止することができる。
【0091】
以上の説明では、光ディスク2の記録層2a〜2cのうちの記録層(L1層)2cが目標層に設定されていたが、これに限定されるものではない。副受光部53RK,53LKの分割線57R,57Lは、光ディスク2の記録層のうちどの記録層が目標層に設定された場合でも、この目標層に隣接する記録層で反射する主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線または暗線の方向と斜めに交差するように設計されている。
【0092】
図26は、3層の記録層2a〜2cを有する光ディスク2に対して記録または再生を行う場合に、副受光部53RK上に形成され得る干渉縞の明線(または暗線)の方向L0a,L1a,L1b,L2bを例示する図である。方向L0aは、記録層(L0層)2bを目標層としたときに、この記録層2bよりも対物レンズ18に近い側の記録層(L1層)2cで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向を表している。方向L1aは、記録層(L1層)2cを目標層としたときに、この記録層2cよりも対物レンズ18に近い側の記録層(L2層)2aで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞42(図18)の方向Laを表し、方向L1bは、記録層(L1層)2cを目標層としたときに、この記録層2cよりも対物レンズ18から離れた側の記録層(L0層)2bで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞43(図19)の方向を表している。そして、方向L2bは、記録層(L2層)2aを目標層としたときに、この記録層2aよりも対物レンズ18から離れた側の記録層(L1層)2cで反射した主光束と副光束との迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向を表している。
【0093】
分割線57Rの方向Lcと干渉縞の方向L0a,L1a,L1b,L2bとがなす角度θ(0a),θ(1a),θ(L1b),θ(L2b)は、いずれも、0°よりも大きく且つ90°未満である。なお、光ピックアップ装置で採用されるレンズ系の倍率と、センサーレンズ20で付与される非点収差量によっては、必ずしも、角度θ(0a),θ(1a),θ(L1b),θ(L2b)の大小関係が本実施の形態と同じようにならない場合があることはいうまでもない。
【0094】
このようにいずれの記録層に対して記録または再生を行う場合にも、同一記録層で反射した迷光同士の干渉縞の明線(または暗線)の方向から分割線57R,57Lの方向を十分に傾けることが可能である。よって、いずれの記録層に対して記録または再生を行う場合に、光ディスク2の回転とともに干渉縞の位置変動が生じても、差動信号成分S−S,S−Sの信号レベルの変動を抑制することができる。したがって、トラッキング誤差信号TEの挙動を安定化させることができる。
【0095】
以上に説明したように実施の形態3の光ピックアップ装置は、光検出素子52Kにおける迷光61RKa,61LKa,61RKb,61LKbの形状が非点収差の影響を受けて楕円形に歪む場合でも、複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生を行う際のトラッキング誤差信号TEの波形の乱れを抑制することができ、その挙動を安定化させることができる。したがって、実施の形態3の光ピックアップ装置を使用すれば、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0096】
実施の形態4.
次に、本発明に係る実施の形態4について説明する。実施の形態4の光ピックアップ装置の構成は、副光束の戻り光束を受光する副受光部の受光面の形状以外は、上記実施の形態2の光ピックアップ装置1Bの構成と同じである。
【0097】
図27(A)は、本実施の形態の一対の副受光部のうち一方の副受光部23RKの受光面を概略的に示す図であり、図27(B)は、他方の副受光部23LKの受光面を概略的に示す図である。図27(A)に示されるように、副受光部23RK上には戻り光束30Rの受光スポットが形成されている。この受光スポットは、一対のプッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbを含む。また、図27(B)に示されるように、副受光部23LK上には戻り光束30Lの受光スポットが形成されている。この受光スポットも、一対のプッシュプル変調成分30Lpa,30Lpbを含む。
【0098】
図27(A)の副受光部23RKの受光面の全体形状は、プッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbが配列する方向に沿った長さHaの2辺を有する矩形状である。副受光部23RKの分割線25RKの幅Ga1は、辺の長さHaの10%〜30%の範囲内に設定される。図27(B)の副受光部23LKの受光面の全体形状も、プッシュプル変調成分30Lpa,30Lpbが配列する方向に沿った長さHbの2辺を有する矩形状である。副受光部23LKの分割線25LKの幅Gb1も、辺の長さHbの10%〜30%の範囲内に設定される。
【0099】
一般的な受光面の全体形状は、一対のプッシュプル変調成分が配列する方向に100μm程度の2辺を持つ矩形状であり、このような受光面の分割線の幅は4μm程度である。この場合、当該辺の長さに対する分割線の幅の割合は、4%程度となる。これに対し、本実施の形態の分割線25RK,25LKは、一般的な分割線の幅よりも2倍以上大きな幅を有する。
【0100】
上述したように、発光素子11から出射されるレーザ光束では、一般に、その中心部の強度が一番高いので、戻り光束30R,30Lの受光スポット内部の光強度分布は、中心部で最も高いピーク強度を有する。このため、戻り光束30R,30Lの受光スポットの中心部では、その周囲よりも強い干渉縞(図示せず)が発生している。図28は、分割線25RK上に形成された干渉縞40と戻り光束30Rの受光スポット30Raとを概略的に示す図である。なお、受光スポット30Raの内部には、干渉縞が形成されているが、図28には図示されていない。
【0101】
上述したように、副受光部23RK,23LK上に形成される干渉縞の明暗のパターンは固定されているものではない。たとえば、情報の記録または再生時における光ディスク2にチルトが発生しあるいは製造誤差が存在すると、光ディスク2の回転とともに、レーザ光束の照射位置における記録層の厚み方向の位置も変動するので、目標層以外の記録層で反射する主光束と副光束との迷光の光路長も変動する。このような場合、光ディスク2の回転とともに、副受光部23RK,23LKにおける干渉縞の明線と暗線の位置が配列方向ADに変動して、あたかも干渉縞が移動するようにみえる。
【0102】
本実施の形態では、副受光部23RK,23LKの分割線25RK,25LKの幅Ga1,Gb1は、一般的な4%程度の幅よりも大きい10%以上の幅を有するので、干渉縞の変動が生じたとしても、戻り光束30R,30Lの受光スポットの強度の高い中心部が分割線25RK,25LKを跨いで変動することが確実に防止される。よって、受光面24HK,24GKで生成された受光信号の差分である差動信号成分の変動を抑制することができ、受光面24EK,24FKで生成された受光信号の差分である差動信号成分の変動を抑制することができる。
【0103】
なお、分割線25RK,25LKの幅Ga1,Gb1が大きすぎると、プッシュプル変調成分30Lpa,30Lpbの受光量が減る可能性が高くなるので、分割線25RK,25LKの幅Ga1,Gb1がそれぞれ辺の長さHa,Hbの30%以下であることが好ましい。
【0104】
以上に説明したように本実施の形態によれば、上記実施の形態2と比べると、トラッキング誤差信号の波形の乱れをより確実に抑制することができ、その挙動を安定化させることができる。したがって、本実施の形態の光ピックアップ装置を使用すれば、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0105】
なお、本実施の形態の副受光部23RK,23LKの構成を上記実施の形態1,3に適用して、実施の形態1,3の副受光部23R,23L,53RK,53LKの構成を変更することもできる。
【0106】
実施の形態5.
次に、本発明に係る実施の形態5について説明する。実施の形態5の光ピックアップ装置の構成は、副光束の戻り光束を受光する副受光部の受光面の形状以外は、上記実施の形態2の光ピックアップ装置1Bの構成と同じである。
【0107】
図29(A)は、本実施の形態の一対の副受光部のうち一方の副受光部23RNの受光面を概略的に示す図であり、図29(B)は、他方の副受光部23LNの受光面を概略的に示す図である。図29(A)に示されるように、副受光部23RN上には戻り光束30Rの受光スポットが形成されている。この受光スポットは、一対のプッシュプル変調成分30Rpa,30Rpbを含む。また、図29(B)に示されるように、副受光部23LN上には戻り光束30Lの受光スポットが形成されている。この受光スポットも、一対のプッシュプル変調成分30Lpa,30Lpbを含む。なお、戻り光束30R,30Lの受光スポットの内部には干渉縞が形成されているが、図29(A),(B)には図示されていない。
【0108】
図29(A)の副受光部23RNの分割線25RNは、戻り光束30Rの受光スポット30の中心部(最大ピーク強度を示す部分)の位置では幅Gcaを有し、周辺側の位置で幅Ga2を有する。幅Gcaは、幅Ga2よりも大きい。受光面24HNの端部は、円弧状の凹みHcを有し、受光面24GNの端部も、円弧状の凹みGcを有している。一方、図29(B)の副受光部23LNの分割線25LNも、戻り光束30Lの受光スポット30の中心部(最大ピーク強度を示す部分)の位置では幅Gcbを有し、周辺側の位置で幅Gb2を有する。幅Gcbは、幅Gb2よりも大きい。受光面24ENの端部は、円弧状の凹みEcを有し、受光面24FNの端部も、円弧状の凹みFcを有している。
【0109】
上述したように、発光素子11から出射されるレーザ光束では、一般に、その中心部の強度が一番高いので、戻り光束30R,30Lの受光スポット内部の光強度分布は、中心部で最も高いピーク強度を有する。このため、戻り光束30R,30Lの受光スポットの中心部では、その周囲よりも強い干渉縞(図示せず)が発生している。図30は、分割線25RN上に形成された干渉縞40と戻り光束30Rの受光スポット30Raとを概略的に示す図である。なお、受光スポット30Raの内部には、干渉縞が形成されているが、図30には図示されていない。
【0110】
上述したように、副受光部23RN,23LN上に形成される干渉縞の明暗のパターンは固定されているものではない。たとえば、情報の記録または再生時における光ディスク2にチルトが発生しあるいは製造誤差が存在すると、光ディスク2の回転とともに、レーザ光束の照射位置における記録層の厚み方向の位置も変動するので、目標層以外の記録層で反射する主光束と副光束との迷光の光路長も変動する。このような場合、光ディスク2の回転とともに、副受光部23RN,23LNにおける干渉縞の明線と暗線の位置が配列方向ADに変動して、あたかも干渉縞が移動するようにみえる。
【0111】
本実施の形態では、副受光部23RN,23LNの分割線25RN,25LNの中心部における幅Gca,Gcbが大きいので、干渉縞の変動が生じたとしても、戻り光束30R,30Lの受光スポットの強度の高い中心部が分割線25RN,25LNを跨いで変動することが確実に防止される。よって、受光面24HN,24GNで生成された受光信号の差分である差動信号成分の変動を抑制することができ、受光面24EN,24FNで生成された受光信号の差分である差動信号成分の変動を抑制することができる。
【0112】
以上に説明したように本実施の形態によれば、上記実施の形態2と比べると、トラッキング誤差信号の波形の乱れをより確実に抑制することができ、その挙動を安定化させることができる。したがって、本実施の形態の光ピックアップ装置を使用すれば、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0113】
なお、本実施の形態では、受光面24EN,24FN,24GN,24HNの端部は、円弧状の凹みEc,Fc,Gc,Hcを有しているが、これら凹みEc,Fc,Gc,Hcの形状は円弧状に限定されず、たとえば、多角形状であってもよい。
【0114】
また、本実施の形態の副受光部23RN,23LNの構成を上記実施の形態1,3に適用して、実施の形態1,3の副受光部23R,23L,53RK,53LKの構成を変更することもできる。
【0115】
実施の形態6.
次に、本発明に係る実施の形態6について説明する。図31は、実施の形態6の光ディスク装置(媒体駆動装置)100の構成を概略的に示す機能ブロック図である。図31に示されるように、この光ディスク装置100は、制御回路101、回転駆動機構102、送り機構103、移動ベース105、復調回路104及び光ピックアップ装置1を備える。光ピックアップ装置1は、上記実施の形態1〜5のうちのいずれかの光ピックアップ装置である。
【0116】
回転駆動機構102は、光ディスク2を保持して回転駆動する機能を有する。この回転駆動機構102は、光ディスク2の中心部に設けられたチャッキング孔2hを基準として光ディスク2を位置決めし、回転駆動するものである。また、対物レンズ18を光ディスク2に対向させた状態で光ピックアップ装置1をラジアル方向に移動させて位置決めするための送り機構103と移動ベース105とを有する。復調回路104は、光ピックアップ装置1から出力された受光信号群OSに基づいて、トラッキング誤差信号TE、フォーカシング誤差信号FE及び情報信号RFなどの信号を生成する演算機能を有する。制御回路101は、ホスト機器からの指令に応じて動作し、回転駆動機構102、送り機構103、光ピックアップ装置1及び復調回路104の動作を制御するものである。
【0117】
本実施の形態の光ディスク装置100は、実施の形態1〜5の光ピックアップ装置を備えているので、複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生を行う際のトラッキング誤差信号の波形の乱れを抑制し、その挙動を安定化させることができる。したがって、トラッキングサーボを高精度に行うことができる。
【0118】
実施の形態1〜6の変形例.
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、干渉縞の明線と斜めに交差する分割線は、副受光部に形成されることが好適ではあるが、これに限定されるものではない。干渉縞と斜めに交差する分割線が主受光部に形成されていてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、副受光部の受光面は分割線により2分割されているが、プッシュプル変調成分を受光するための分割形態を有していればよく、2分割に限定されるものではない。
【0120】
さらに、上記実施の形態では、光ディスク2は3層の記録層2a〜2cを有していたが、記録層の数は3層に限定されない。上記実施の形態1〜5の光ピックアップ装置は、2層または4層以上の記録層を有する光ディスクに対しても、良好なトラッキング誤差信号を生成することができる。
【符号の説明】
【0121】
1,1A,1B 光ピックアップ装置、 2 光学的情報記録媒体(光ディスク)、 11 発光素子、 12 回折格子、 13 偏光プリズム、 14 コリメータレンズ、 15 レンズ駆動部、 16 立上げミラー、 17 1/4波長板、 18 対物レンズ、 19 レンズアクチュエータ、 20,21 センサーレンズ(非点収差発生素子)、 22,52 光検出素子、 23,25 受光部、 23R,23L,53R,53L 副受光部、 23M,53M 主受光部、 25R,25L,25Mr,25Mt 分割線、 40 干渉縞、 100 光ディスク装置(媒体駆動装置)、 101 制御回路、 102 回転駆動機構、 103 送り機構、 104 復調回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の記録層を有するディスク状の光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、前記光学的情報記録媒体からの反射光を検出する光ピックアップ装置であって、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を主光束と少なくとも1つの副光束とに分割する光分割素子と、
前記主光束及び前記副光束を、前記複数の記録層のうちの1つである目標層に集光させる集光光学系と、
前記複数の記録層のうち前記目標層以外の記録層で反射した迷光と前記目標層で反射した戻り光束とを受光する光検出素子と
を備え、
前記光検出素子は、
前記主光束の当該戻り光束の受光スポットを検出する主受光部と、
前記副光束の当該戻り光束の受光スポットを検出する副受光部と
を有し、
前記主受光部及び前記副受光部のうちの少なくとも一方の受光部は、
前記主光束の当該戻り光束の受光スポットと前記副光束の当該戻り光束の受光スポットとが配列する方向に直交する方向に対して斜め方向に延在する分割線と、
前記分割線の両側に配置されて個別に受光信号を生成する第1及び第2の受光面と
を有し、
前記分割線は、前記主光束の当該迷光と前記副光束の当該迷光との位相差により前記受光部上に形成される干渉縞の明線と斜めに交差することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記一方の受光部上に形成される当該受光スポットは、前記光学的情報記録媒体のトラック構造に起因する0次回折光と±1次回折光とを含み、
前記分割線の方向は、前記0次回折光と前記±1次回折光とで形成される一対のプッシュプル変調成分が配列する方向に対して垂直な方向と30°以内の角度をなす
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置であって、前記干渉縞は、前記複数の記録層のうち同一記録層で反射した前記主光束の当該迷光と前記副光束の当該迷光との位相差により形成されるものであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の光ピックアップ装置であって、前記戻り光束と前記迷光とに非点収差を付与する収差発生素子をさらに備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ピックアップ装置であって、
前記複数の記録層は、
第1の記録層と、
前記第1の記録層と隣接し且つ前記第1の記録層よりも前記集光光学系に近い側に配置される第2の記録層と
を含み、
前記第1の記録層を前記目標層としたとき、前記第2の記録層で反射した当該迷光に起因する第1の干渉縞成分が前記干渉縞として前記受光部上に形成され、
前記第2の記録層を前記目標層としたとき、前記第1の記録層で反射した当該迷光に起因する第2の干渉縞成分が前記干渉縞として前記受光部上に形成され、
前記分割線は、前記第1の干渉縞成分の明線と前記第2の干渉縞成分の明線との双方と斜めに交差し、
前記第1の干渉縞成分の明線が前記分割線に対して傾斜する角度は、0°よりも大きく且つ90°未満であり、
前記第2の干渉縞成分の明線が前記分割線に対して傾斜する角度は、−90°よりも大きく且つ0°未満である、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光ピックアップ装置であって、
前記複数の記録層は、
第1の記録層と、
前記第1の記録層と隣接し且つ前記第1の記録層よりも前記集光光学系に近い側に配置される第2の記録層と
を含み、
前記第1の記録層を前記目標層としたとき、前記第2の記録層で反射した当該迷光に起因する第1の干渉縞成分が前記干渉縞として前記受光部上に形成され、
前記第2の記録層を前記目標層としたとき、前記第1の記録層で反射した当該迷光に起因する第2の干渉縞成分が前記干渉縞として前記受光部上に形成され、
前記分割線は、前記第1の干渉縞成分の明線と前記第2の干渉縞成分の明線との双方と斜めに交差し、
前記第1及び第2の干渉縞成分の明線と前記分割線とがなす角度は、0°よりも大きく且つ90°未満である、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の光ピックアップ装置であって、
前記一方の受光部上に形成される当該受光スポットは、前記光学的情報記録媒体のトラック構造に起因する0次回折光と±1次回折光とを含み、
前記第1及び第2の受光面の全体の上面視形状は、前記0次回折光と前記±1次回折光とで形成される一対のプッシュプル変調成分が配列する方向に沿った辺を有する矩形状であり、
前記分割線の幅は、前記辺の長さの10%乃至30%の範囲内である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光ピックアップ装置であって、前記辺の長さは100μmであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の光ピックアップ装置であって、前記分割線は、前記主光束または前記副光束の当該戻り光束の受光スポットの光強度が最大ピークを示す位置に形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光ピックアップ装置であって、前記最大ピークを示す当該位置における前記分割線の幅は、前記一方の受光部の周辺側における前記分割線の幅よりも大きいことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか1項に記載の光ピックアップ装置であって、前記一方の受光部は、前記副受光部であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置の前記主受光部と前記副受光部とで生成された受光信号に基づいてトラッキング誤差信号を生成する演算回路と
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキング誤差信号に基づいて、前記主光束及び前記副光束の集光スポットを前記光学的情報記録媒体のトラックに追従させる制御回路をさらに備え、
前記光ピックアップ装置は、前記集光光学系を少なくとも前記光学的情報記録媒体のラジアル方向にシフトさせるアクチュエータを含み、
前記制御回路は、前記トラッキング誤差信号の信号レベルに応じた駆動信号を前記アクチュエータに与えて前記集光光学系を前記ラジアル方向にシフトさせることにより、前記集光スポットを前記トラックに追従させる
ことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2012−138133(P2012−138133A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287719(P2010−287719)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】