光ファイバによる直接投影型巨大スクリーン用フラットパネルディスプレイの機構および方法
大型の画像、図、動画を表示する装置および方法。装置は光ファイバを素材とした縦列の層からなり、各ファイバは一方の端から少なくとも一つのレーザダイオードによる照明を受ける。そして、第二層は第一層の前に平行して配置され、その投影範囲は実質的に第一層と重なり合う。この第二層は横列に配置された多数の光ファイバからなる。第一層と第二層との間には、光スイッチ部の第三層が置かれる。あるいは、第二層は光拡散層としてもよい。レーザダイオードから放たれたレーザ光は、各個のカラムファイバに沿って平行的に進み、カラムファイバ内でレーザ光を結合させる光スイッチ部によって、ロウファイバもしくは直接、拡散層へ方向を向き換えられる。拡散層において拡散器によってレーザ光は散乱し視聴者に届くことになる。小サイズのファイバによって、曲線因子をとても小さくでき、光吸収マトリックスや背景層が周辺光を効果的に吸収することを可能とする。周辺光条件の下でのコントラスト比は、周辺光を選択的に吸収する多層誘電光学フィルタを使用することで更に向上する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ディスプレイは現代の情報技術システムにおいて極めて重要な構成要素である。その例は幅広く、壁掛け大型テレビやプロジェクションテレビシステム、デスクトップPCのフラットパネルモニター、ユビキタスノートブックないしラップトップPC、携帯電話やPDA、ウェアラブルコンピュータシステムまで及ぶ。
約10年前にはブラウン管(CRT)が一般的なディスプレイ技術であり、大小のスクリーンテレビ、プロジェクションテレビ、デスクトップPCのモニター等に使用されていた。今日のコンピュータ用モニター(デスクトップ型、ラップトップ型を問わない)、デジタルテレビ、携帯電話、PDAの大多数においては、CRT以外の技術が支配的である。ローエンドのアナログテレビや、プロスタジオ水準のテレビモニタのみにおいては、その低コスト性や画像表示における高画質能力のためCRT技術が未だに使用されている。
現在は、LCD(液晶ディスプレイ)がディスプレイ分野で支配的な技術となっている。広くコンピュータモニタやラップトップコンピュータ、プロジェクションテレビやED(エンハンスド・ディフィニション)、HD(ハイ・ディフィニション)デジタルテレビ、携帯電話やPDAにはLCDが採用されている。LCDディスプレイはスリムなデザインでフラットな表示面を有し、高い動的コントラスト比率、ちらつきのない画像、緻密なピクセル(画素)表示によってコンピュータにとって本質的に優れたディスプレイ装置となっている。しかし、LCDディスプレイは先行のCRT技術と比較したとき、ある分野においては劣る点がある。第一に、LCD技術はCRT技術に比べ、三原色を連結して形作られるトライアングル内部の範囲と定義される色域が狭くCRT技術と同等の正確な色再現ができない。第二に、LCDはより狭い視野角となる傾向がある。第三に、LCDのダイナミックレンジはCRT技術よりもかなり劣っている。しかしながら、LCD技術は未だに速いペースで進歩している。フラットパネルLCD技術の最近の発達によって、より大きな表示面積、より広い視野角、より高画質な動画が可能となっている。
【0002】
LCDディスプレイは以下の方法により機能する。内側が透明電極とポリマー配置フィルムに覆われた2枚のガラス基板を用いて、その内側に液晶組成物をサンドウィッチ状に挟む。液晶分子は配置レイヤ境界(配向膜)に沿って並ぶ。上部ガラスプレートと下部ガラスプレートの配列の方向は直交する。従って、液晶はねじれた構造の配列とならざるをえない。ねじれの角度は単に90度とするか270度となる(後者はスーパーツイスティッドと呼ばれる)。ねじれた配列の液晶を通過する光もまた、液晶分子のねじれに従って通過することでねじれていく。液晶サンドウィッチに電圧が印加されると、極性のある液晶分子は電界の向きに沿って再配列する。再配列した液晶サンドウィッチを通過する光はもはやねじれていない。従って、2枚の相互に直交する偏光フィルタが液晶サンドウィッチの両側に付加されると、第一偏光フィルタを通過する光は、外部電界がサンドウィッチに印加されていなければ、第二フィルタも通過する。しかし、充分に強い電界が印加されると、光は第二偏光フィルタを通過できなくなる。より弱い電界が印加された場合には、液晶分子は電界の向きに部分的にしか再配列しない。従って、液晶サンドウィッチを通過する光は電界の強さによってねじれの度合いを変化させる。そのため、電界の強さによってサンドウィッチを通過する光の濃度が決定され、グレースケールを形成する。フルカラーディスプレイが求められる際には、各々のピクセルないし画素についてカラーフィルタを付加することが必要となる。液晶そのものは光を発しないため、LCD技術には放射性のものがなく、従って、従来のテレビのような放射線は発生させない。蛍光灯を透明な材料の背後に設置して、画像を照射するために使用するので、作動に必要とされる電力はブラウン管テレビやプラズマディスプレイよりも少なくなる。
【0003】
大型ディスプレイにおいては、個別に各ピクセルに配線することは、そのピクセル数から、明らかに実用的でない。現在、X電極とY電極と呼ばれる2極1セットの電極によって電圧印加を行う。このX・Y電極は透明な導電材料、通常は酸化インジウム錫(ITO)から組成される。例えば、X電極は液晶サンドウィッチの下部ガラスに配置され、Y電極は上部ガラスに配置される。スイッチングトランジスタないしダイオードが、ピクセルの点灯の有無を切り替えるために、各ピクセルに取り付けられる。X-Yマトリックスと各ピクセルに付いた個々のスイッチングトランジスタを利用したピクセル制御はアクティブマトリックスアドレッシングと呼ばれる。X-Yマトリックスアドレッシングにおいて、Y電極は駆動させるピクセルの行(ロウ)を選択するために使用され、X電極には各ピクセルのグレースケール値に応じた電圧が印加される。スイッチングトランジスタは典型的な薄膜トランジスタであるため、このようなアドレッシング方式はTFTもしくは薄膜トランジスタアドレッシングと呼ばれることが多い。
【0004】
LCDディスプレイは画像の安定性と鮮明さにおいて非常に優れている。LCDに取って代わられたCRTスクリーンと比較して、LCDは相対的に軽量で薄く電力消費が小さい。またLCDスクリーンは明るく、輝度においてCRTより優れている。LCDディスプレイは静的コントラスト比についてCRTよりも劣る傾向にあるけれども、実は動的コントラスト比においてCRTより優れている。しかし、LCDディスプレイは色の表現幅および反応時間においてはCRTに及ばない。パッシブマトリックスアドレッシング技術からアクティブマトリックスアドレッシング技術への転換のような最近の技術発達によりLCDスクリーンは反応時間をより短縮し、動画再生やテレビ視聴を可能とするのに充分な速度を達成した。
【0005】
プラズマディスプレイ技術の仕組みは家庭用蛍光灯と同様である。プラズマディスプレイは約100ミクロンの真空の隙間で隔てられた2枚のガラスの間に塗られている赤、緑、青の蛍光体を網状に配置して使用する。各ピクセルに数百ボルトの微弱な交流電気パルスをかけて、アルゴンやネオン、キセノンといった希ガスをイオン化させプラズマを発生させる。このプラズマより紫外線が発生する。プラズマとは、自由電子と大部分を占める陽イオンと中性分子からなる気体である。プラズマは、イオンと電子が再結合して中性分子になろうとする性向があるため、本質的に不安定である。蛍光体の色はシンチレーション媒体として機能し、プラズマの放出する光を赤、緑、青の光へと変換する。プラズマスクリーンには優れたメモリ効果があり、一旦電気パルスによってプラズマが発生すると元の中性ガスに戻るには一定時間が必要となる。スクリーンを素早くリフレッシュさせるために、元に戻る時間は調整可能である。
【0006】
個別のピクセルに対する配電の方法はLCDスクリーンのものと全く同様である。しかし、プラズマスクリーンは特有のメモリ特性を有しているので、アクティブマトリックスアドレッシングや各ピクセルに取り付けるスイッチングトランジスタは必要としない。このことにより、各ピクセルにトランジスタを付加するコストが高価である限り、同じスクリーンサイズであればプラズマディスプレイはLCDディスプレイより安価に製造可能である。マイナス面として、各プラズマピクセルは点灯させるか消灯させるかしかできず、グレースケールを表示するためには、PCM(パルス符号変調)を利用して各ピクセルの輝度をコントロールする。しかし、プラズマディスプレイは気圧に耐えうる大型ガラスで覆われる必要があるので、相対的にかなり重く、製造コストが割高になる傾向がある。従って、チップ技術の進歩につれてドライブエレクトロニクスのコストがより低くなってしまうと、結果的にプラズマディスプレイの全体のコストはLCDディスプレイよりも高くなってしまう。
【0007】
カラーシンチレーション媒体もしくは蛍光体を適切に選択すれば、プラズマディスプレイは広い色範囲を表現することが可能となる。この点で、プラズマスクリーンはCRTやLCDよりも広い色空間を表現できる。プラズマスクリーンは、基本的にライトバルブの配列であるLCDとは異なり、プラズマディスプレイ自体が発光し、消灯するときは完全に光が消えるので、コントラスト比が非常に高い。また、プラズマディスプレイはかなり広い視野角(特にLCDディスプレイと比較した場合)を有している。その主たる理由は、プラズマスクリーンは発光し、光を遮る偏光板が必要ないからである。しかし、0.5mm未満の小さなプラズマピクセルを製造することは困難であるため、プラズマディスプレイ技術は大型スクリーン専用となる。また、パルス符号化変調を輝度コントロールに使用するため、画像のちらつきが不可避である。また、プラズマディスプレイではCRT技術と共通する現象である「焼き付き」が生じる。このことは、両技術とも発光に蛍光体を使用している以上驚くべきことではない。同様の理由で、プラズマスクリーンは相対的に寿命が短い傾向にある。結局、LCDスクリーンと比較して、プラズマディスプレイは同程度のサイズであれば約2倍の電力を消費する。これは、プラズマディスプレイが高い光学効率を有するにもかかわらず、発光効率が低いことに起因しているといえる。
【0008】
大画面用ディスプレイにおけるプラズマディスプレイの人気および画質の点における現在の優位性にもかかわらず、一般的に、LCDでの相当品が取って代わるであろうと考えられている。LCD技術は速いペースで進歩しており、LCDのパネルサイズは対角寸法84型までが既に試験生産されている。メーカーがLCDを好むのは半導体製造技術と類似するからである。一方、依然としてプラズマスクリーンは従来技術による製造を要し、ムーアの法則の恩恵を受けない大型の真空管を必要とする。
【0009】
ディスプレイの市場競争において最新の話題になっている新規参入者の一つとして、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)がある。OLEDディスプレイのピクセルは、2つの電極、金属製のカソードと透明なアノードの間に有機フィルムを挟みこんでいる。有機フィルムは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層から成る。2つの電極間に電位差が生じると、注入された正孔と電子が発光層で再結合し、電界発光が生じる。OLEDは自発光するので、LCDのような煩わしいバックライトは不要である。OLEDはフルカラーディスプレイとして垂直に立てかけることも可能である。OLEDは有機的気相堆積法技術(真空蒸着法)によって製造可能となる。また、インクジェット印刷法および冷間圧接を利用することで製造コストを大幅に下げた高解像度パターニングが可能となる。個別のOLEDピクセルのアドレッシング方式はアクティブマトリックスLCDと全く同様である。バックライト機器がないということはディスプレイを紙の薄さにして曲げることが可能となることを意味する。しかし、現在のOLED技術はまだ長期安定性および耐久性の問題点を抱えている。これはOLEDが極少量の水分・酸素でさえ許容できず、完全に密閉されている必要があるからである。またOLED化合物は経年劣化し、ディスプレイの最大寿命を制限している。またOLEDの発光効率は低い。しかし、青、赤、緑のOLEDが利用可能であるため、各ピクセルが青、赤、緑のOLEDとしたディスプレイが可能である。従って、電力を消費するカラーフィルタは必要としない。また、あるピクセルを暗くするときには常にOLEDを消灯できるので、必要とされる平均的電力は、スクリーン上の全OLEDダイオードを点灯させるのに必要とされる量よりもかなり少なくなる。従って、OLEDディスプレイの平均的電力消費は相当するLCDスクリーンの消費量より少なくなるのが通常である。
【0010】
OLEDディスプレイはそのフィルムに比較的単純な有機化合物を使用する。場合によってはより複雑な有機ポリマーをフィルムに使用することもある。ポリマーフィルムを使用する場合には、ディスプレイはPLEDと呼ばれる。OLEDはアクティブマトリックス、パッシブマトリックスのいずれの方式でもアドレッシングが可能である。アクティブマトリックスOLEDディスプレイでは高速切り替えが可能であり、フルモーションビデオに適している。パッシブマトリックスOLEDディスプレイは格子状の配線が必要となり、各個のピクセルが点灯か消灯のいずれかにしかならないので、低コスト生産が主要関心事となるオーディオやダッシュボード機器における文字やアイコンのディスプレイに適している。
【0011】
OLEDはLCD技術と比べて、より高い輝度、広い視野角、高いコントラストを可能とする。また、アクティブマトリックスディスプレイアドレッシング方式を採用すれば、LCDディスプレイよりもかなり速く切り替えを行う。このことと、ピクセルのグレーレベルの平均値に電力消費量が比例するという事実とを考え合わせると、OLEDはLCDよりも優れたディスプレイ技術となる。更にバックライトがないことで、アクティブマトリックスOLEDディスプレイはかなり薄く、厚さ2mm未満にすることが可能である。ゆえに、曲げることのできるOLEDディスプレイが可能となる。同じ様に重要な点として、OLEDはインクジェット印刷技術を利用して製造することが可能であり、LCDよりも簡易かつ安価に製造できるようになる可能性がある。唯一の重要な欠点は、ディスプレイ素材の寿命である。製造の困難性のため、現在OLEDディスプレイのほとんどが10インチ未満のスクリーンサイズ(より大型のディスプレイが実演展示されてはいるけれども)に依然として限定されている。
【0012】
その他のあまり知られていないディスプレイ技術はイリジウムディスプレイである。イリジウムディスプレイの各ピクセルには2つの伝導性プレートで構成されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)光スイッチが取り付けられる。プレートの一方はガラス基板上の薄い伝導性フィルムスタックであり、他方はその上に吊下げられた金属薄膜である。吊下げられたプレートには2つの安定状態があり、電圧が印加されていないときには、空隙によって2枚のプレートは隔てられており、周辺光は波長によって反射ないし吸収されて色を生じさせる。空隙を変化させることで、色は変化させることが可能である。微量の電圧が印加されると静電気力によって2枚のプレートは引き寄せられ、光が吸収されることでピクセルを暗くする。3色ある一つのピクセルは三原色(赤、緑、青)に対応した空隙のある3つの個別要素からなる。
【0013】
MEMS薄膜に内在するヒステリシス効果によってピクセルの記憶が可能となる。一旦金属薄膜が引き離されると、その状態を保持するために必要とされる電力は少なくなる。このことにより、イリジウムディスプレイは受動的にアドレッシングさせることが可能となる。それゆえに、アドレッシング用ハードウェアの複雑性およびコストをかなり削減できる。このことのマイナス面は、駆動プロセスにおけるオン・オフの性質上、各カラーピクセルが8階調しか表現できないことである。グレースケールを表現するために、サイズを変化させた複数のピクセルが必要となる。もう一つの方法は、パルス幅変調を利用して限定範囲のあるグレースケールを得ることである。どちらの方法であっても、駆動ハードウェアのコストは劇的に増加してしまう。
【0014】
イリジウムディスプレイは、照明にバックライトを必要とせず、それどころか光学効率が高いため、反射する周辺光を照明に利用できる。このため電力効率が非常によい。また、かなり薄く、全体の薄さではOLEDにさえ勝る。実際、必要とされる、光変調、駆動、色選択を含めた全ての機能が1ミクロンの薄さのフィルムに集約され、最も薄いディスプレイ技術を可能としている。
【0015】
イリジウムディスプレイは、軽量で電力消費が少なく鮮明である。その輝度は周辺光のレベルによる。色が妨害によって生じるので、認識される色が見る角度に依存する。しかしながら、視野角はLCD技術よりも広い。バックライトがないことと、耐久性(MEMS技術には一般的に吸着問題、MEMS部品同士がくっついたり、ずれたりする傾向があることに関連する問題があり、経年悪化する)の問題、および巨大ディスプレイへの拡張性の問題が、主な欠点として挙げられる。
【0016】
先述のディスプレイ技術は全て、初期設備コストと再生産コストが高額となる問題を抱えている。更に、これらの技術では巨大スクリーンサイズまで上手く拡大させることができない。LCDおよびプラズマディスプレイ技術で、巨大ディスプレイサイズに拡大させるためには、巨大なガラスパネルおよびパネル全体を均一の厚さに保持するための非常に多数のスペーサを必要とする。プラズマディスプレイの場合は、巨大ガラスパネルを莫大な大気圧に耐えられるようにしなくてもならず、そのようなパネルを製造するコストは急増加する。LCDディスプレイでは、アクティブマトリックスアドレッシング部のコストがスクリーンサイズに応じて劇的に増加する。PDP(プラズマディスプレイパネル)では102インチサイズ、LCDでは82インチサイズのスクリーンが実演展示されているが、その生産コストによって、ほとんどの人はおそらく購買をあきらめるだろう。
【0017】
OLEDおよびイリジウムの双方のディスプレイ技術は、その薄さや広視野角から前途有望である。しかし、両方ともまだ耐久性や大型化への拡張性の点で克服しなくてはならない短所がある。小分子のOLEDでは、各ダイオードが化学真空蒸着技術によって製造されるが、巨大スクリーンディスプレイを製造するためには巨大な真空チャンバが必要となる。ポリマーOLEDディスプレイでは、インクジェット印刷やスクリーン印刷といった一般的インクに使用される接触技術を利用することが可能である。将来的には、大型インクジェットプリンタが開発されれば、巨大なポリマーOLEDディスプレイを印刷することが可能となりうる。しかし、印刷は湿気と酸素のない状態で行われる必要がある。また、インクジェット印刷による回路基板は伝導性が低いため、ディスプレイを大型化する場合、伝導性を増強するために追加的な製造過程が必要となる。たとえこれら全てが克服されたとしても、アクティブマトリックス制御電子装置を大型化する必要性が、OLEDとアクティブマトリックスLCDディスプレイの共通する問題として依然残る。
【0018】
大型イリジウディスプレイの製造は、大型のMEMSを製造しなくてはならないことから、かなり困難である。現在のMEMS製造技術では小型のMEMS機器を製造することしかできない。たとえそのようなディスプレイスクリーンを製造できたとしても、パッシブマトリックスアドレッシングで使用されるパルス波変調が、依然として主要な問題となる。というのはスクリーンサイズが大きくなるにつれ、MEMS光スイッチもまた比例して大きくなるからである。MEMSスイッチの反応時間はMEMS部品のサイズと直接比例する関係にあるので、巨大スクリーンサイズでは、高画質表示に求められるグレースケールの解像度を提供するために必要とされるパルス波変調の速度にMEMSスイッチが対応できなくなる。
【0019】
前述のディスプレイ技術は全て、消費者の需要を満たす画質の静止画、動画を提供するためにはある種の高度な駆動方法の実装が必要とされる。このような駆動方法の実装は本質的に高価となり、大型ディスプレイにうまく対応して大型化しない。また、ほとんどのディスプレイ技術では、大型ガラスパネルを必要とするが、その隣接した2つのパネルの間隔は、効果的に配置されたスペーサを使用して、一定に保たれなくてはならず、極僅かな公差しか許されない。このような大型ディスプレイ用パネルの製造および組立のコストが非常に高価になることは周知である。上記のディスプレイ技術で、イリジウムディスプレイを除き、電力消費効率がよいものはない。そのイリジウムディスプレイでは今のところ大型スクリーンサイズまでサイズを拡大させることはできない。スクリーンサイズが大きくなればなるほど、排熱管理が大きな問題となり、ある段階から能動冷却装置を実装する必要がでてくる。
【0020】
従って、各個のピクセルを駆動させるために高価で複雑な仕組みを必要としない大型スクリーンの直視型ディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0021】
大型ガラス基板やバックライトを必要とせず、かつ薄く柔軟性のあるプラスチックの中に覆われるような大型スクリーンの直視型ディスプレイ装置の需要が存在する。
【0022】
容易に輸送したり荷積みできるよう曲げたり丸めたりできる柔軟性のある直視型巨大スクリーンディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0023】
製造が容易で低コストの直視型巨大スクリーンディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0024】
そして、電力消費が少なく、自然に熱を消散させることができ複雑な熱管理の仕組みを必要としない大型スクリーンディスプレイ装置の需要がある。
【0025】
課題を解決するための手段
【0026】
実施例として、大型フォーマットにおける画像および高速動画の表示用の装置および方法が提供される。この装置では、赤、緑、青(RGB)の順にパターンが繰り返されているカラーレーザダイオードがロウ(行)状に配列されている。レーザダイオードは赤、緑、青色の光を直接的に投射できる。あるいは、レーザダイオードはスペクトルにおける紫外線付近の青部分の光をも放つことができ、燐光に依存して光色が決められる。各レーザダイオードはカラムガラスファイバと光学的に連結している。できればカラムガラスファイバは単一モードに対応できるものがよい。しかし、最大輝度が求められるジャンブルディスプレイでは多モード光ファイバが使用されうる。
【0027】
実施例としてのディスプレイ装置にはX-Y駆動機構を実装され、全てのカラムファイバへのビデオ信号は同時に連続したロウ(行)状に並べられた各レーザダイオードに送られる。各ロウダイオードに信号を送り、全てのカラムファイバへのレーザ光の方向を光拡散器へ向き換えることのできる光スイッチ機器を用いて、レーザ光を散乱させ、視聴者の目へと届かせる。連続して各ロウダイオードに向けたレーザ光の方向を素早く切り替えることで、動画が形成される。拡散器を適切な燐光寿命をもつ燐光体で覆うことでちらつきは減少させうる。
【0028】
実施例として、周辺光の反射および周辺光条件によってはディスプレイのコントラスト比に悪影響を及ぼすピクセル間のクロストークを減少させる方法および機器が提供される。この目的のため、黒背景層および黒色マトリックスが使用され、周辺光を吸収し、クロストークを防ぐ。また、多層誘電狭帯域光学フィルタが使用され、別途に望ましくない迷光を吸収して、選択された光の通過を認める。このような方法による効果は、提案されている巨大スクリーンディスプレイにおけるディスプレイ部品のごく小さい曲線因子およびレーザダイオード光が性質上狭帯域であることから、大いに高められている。
【0029】
実施例において、ロウ(行)配列された光スイッチ器は水平に走る中空管からなり、この管には、垂直方向に多数の微小なコネクタが付いており、すぐ下に流体の満ちたチューブが取り付けられている。その貯水チューブは上部のチューブよりずっと大きな容量がある。空チューブは各交差点において全てのロウファイバに圧着している物質(一例としてガラス)からなる。各チューブは、チューブの全長にわたる電極があり、反対の極性をもつ。流体は透明で、有効な絶縁体であり、接続チューブと同様に両方のチューブの表面はできる限り流体と親和しないようになっている。すなわち、チューブ外壁は濡れていない。貯水チューブに装備された電極によって流体は荷電している。電極の上端は通常浮いており、流体は貯水チューブ中に留まっている。電極の上端に電圧が印加されると、流体が表面張力を超えるのに充分な力を受けて引き寄せられ、流体で上部チューブが満たされる。上部チューブが満たされるとき、レーザ光が流体に満ちたチューブにより共役(カップリング)となるように、流体の屈折率はカラム光ファイバの屈折率よりも若干小さくなるようにする。共役(カップリング)効率は適切な接触配置を採ることで100%に近づけることができる。単一モードカラムファイバでは、カラムファイバ方向での光結合長は極めて短くできる。多モードファイバでの光結合長は、特に長くなる。しかし、多モードファイバは、単一モードファイバよりずっと多くの光エネルギを輸送できるので、光結合長が大きな問題にならない巨大ディスプレイにはより適合している。
【0030】
実施例において絶縁流体を使用しているが、代替物も使用しうる。例えば、流体は電離流体でもよい。そのような流体を接触すると、チューブ壁の素材は陰性荷電する。数ナノメータの極薄となる流体と壁の境界層は陽イオンにより支配的に満たされる。あるロウファイバの電極の頂点が負極と接続されると、マイナス電極(カソード)は境界層にあるカチオン(陽イオン)を引き寄せ、一緒に一定量の流体をカソードに引き寄せる。この現象は電気浸透と呼ばれる。電極と流体の間の電気浸透力は実施例における静電気力に取って代わるものである。電気浸透力は他の実施例における静電気力より通常弱いけれども、流体が全体としては、荷電しているというより、中性であるということは、静電放電(ESD)が問題となる環境では有益となりうる。しかし、次のことに留意すべきである。すなわち、CRTが照明や駆動に電子ビームを使用されており、管内の陰性荷電がより深刻なESD問題となるが、巧みな技術により、CRTにとってESDが主要な問題とはならない点まで問題は最小化されている。
【0031】
別の実施例において、光結合チューブは垂直配置され、カラムファイバと光学的機械的に接触している。インクジェットヘッドに使用されているものに類似した圧電マイクロポンプが、透明な流体滴を接続チューブに注入するために、各ロウファイバに実装されている。液滴のスピードは、各液滴の前後間の圧力差を一定に保つエアポンプによって調整されている。液滴の瞬間的な位置により完全に近い光共役(カップリング)は起こり、拡散器のレーザ光の向きを変える。製造コストを削減するために、多数あるロウファイバのための圧電マイクロポンプは一つのユニットに集約することが可能である。接続チューブの透明壁は、主となるカラムファイバよりも屈折率を若干小さくするべきである。内壁の表面は流体用に乾燥させるべきであり、流体の表面張力は、一定速度で流体を推進させる圧力差にさらされても液滴がその形を確実に維持できるようにするため、充分に強くなくてはならない。
【0032】
別の代替的実施例においては、ロウ(行)状の回折格子を双安定位置へ動かすためにアクチュエータが使用される。一方の回折格子はカラムファイバから0.1ミクロン以内の位置にあり、他方の回折格子は0.1ミクロンの範囲から完全に離れている。レーザダイオードが発する光がある波長をもったとき、その光がファイバから0.1ミクロン以内の範囲に入ると回折されるように、回折格子は選択される。更にもう一つの実施例では、カラムファイバと屈折率が一致する透明素材の薄いプレートが回折格子に置き換わる。両方の実施例において、レーザ光の方向はロウファイバのアクチュエータの動作を通じて拡散スクリーンへと向き換えられる。アクチュエータとして用いるのは、1ミクロン単位の移動を可能とする圧電セラミックバイモルフが望ましい。あるいは、バイモルフベースのエレクトレットないし、バイモルフベースのPVCのような圧電共重合体でもよい。
【0033】
また別の代替的実施例では、屈折率がファイバとほぼ一致し、弾性係数の低い透明素材を伝播する遅速の表面弾性波(SAW)が、X-Y駆動に必要となる光スイッチとして使用される。カラムファイバ内で最大限にレーザ光を散乱させるように計算された波長でカラムファイバを伝播するSAWパルス列は、行方向走査のために使用される。SAW伝播層は各カラムファイバの表面において直接的に覆われて、カラムファイバの上端にある圧電変換器がSAW信号を発信する。SAW波列がカラムファイバを降下すると、各レーザダイオードから発せられた光は拡散スクリーンに向けて散乱する。SAWの代替としてはバルク弾性波(BAW)がある。BAWは伝播層をより深く貫通し、より薄い伝播層が利用可能となるので、光結合を向上させうる。更に別の代替としては、屈曲弾性波を利用することである。減衰・分散補償は、すだれ状電極センサおよびアクチュエータを利用した中継器/増幅器によってなされる。
【0034】
別の実施例では、動画表示における動的コントラスト比を向上させる方法を提供する。レーザダイオードは生来的に非常に高い静的コントラスト比を有し、ピクセル表示を可能とする最小限の積層に対して輝度比が最大となると考えられている。動的コントラスト比とは、様々なグレースケール値をとる周囲のピクセルの中における、あるピクセルのコントラスト比と定義される。動的コントラスト比は、付近/近接ピクセルのクロストークによって特に強い影響を受ける。本発明のディスプレイ技術ではフェイスプレートがないため、生来的にピクセル間のクロストークが最小化される。黒色マトリックス障壁を直立させることで、近接および遠隔のピクセルから発せられるレーザ光が、拡散スクリーンに届く前に、確実に遮られ、あるいは吸収されるため、クロストークは更に減少する。黒色マトリックス構造は周辺光を吸収するために、拡散スクリーン自体まで拡張される。レーザダイオードディスプレイにおける曲線因子がかなり小さいために、黒色マトリックス構造の有効性が高められる。
【0035】
別の実施例として、薄く曲げることのできる大型スクリーンディスプレイの構築方法が提供される。カラムファイバは中心が偏っており、表示側がむき出しになっており、被覆加工物、緩衝材、カバーで覆われていない。このことにより、背面を強度のある素材(ガラスファイバもしくはケブラーで強化されたプラスチックが望ましい)と結合させることができる。前面(表示面)のスイッチングファイバは同様にカラムファイバのカバーと結合している。拡散スクリーンは、多層薄膜巨大スクリーンディスプレイを形成するため、スイッチングファイバと直接的に結合させることも可能である。
【0036】
図面の簡単な説明
【0037】
複数の図面を通して、参照符号は、同じ又は類似の部分を示している添付の図面とともに考察されるとき、より理解され、本発明の多種の他の目的、特徴、および、付随する有利点は、十分に理解されるだろう。
【0038】
図1は、本発明に従って構成されたレーザダイオードファイバ光ディスプレイである。
【0039】
図2は、カラムファイバのすぐ外側のエバネセントレーザ波場の横断面図である。
【0040】
図3は、カラムファイバに沿って進行するコヒーレントレーザ光のエバネセント波場内に、同じ又は類似の屈折率のサブストレートが置かれたときの光強度を図示している。
【0041】
図4は、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上でサブストレートがカラムファイバから離されたときのレーザ光の強度分布を表している。
【0042】
図5は、視聴者へ向かうレーザ光を分散するためのロウファイバ上のランダム格子の使用を説明する図である。
【0043】
図6は、ロウ・アドレッシングによってロウを実行するロウファイバの使用を説明する概略図である。
【0044】
図7は、カラムファイバから正面にランダム格子が刻まれたロウファイバへのレーザ光の出力先変更を図示している。
【0045】
図8は、ロウファイバをカラムファイバに向かって又は離して移動させるために圧電変換器および弾性光カプラを用いた本発明の概念の可能な実施形態を表している。
【0046】
図9は、図8で表された実施形態の断面図である。
【0047】
図10は、光カプラとして透明液滴を備えたカラム方向の中空管を使用する本発明の他の実施形態を表している。
【0048】
図11は、結合液滴のポンプ機構と同時に他の実施形態の透明チューブの軸方向または長手方向の断面を図示している。
【0049】
図12は、ポンプ機構のインクジェット・ヘッドによる液滴の注入開始を表している。
【0050】
図13は、発明装置のディスプレイ画面の上方に入ろうとしている液滴の断面図である。
【0051】
図14は、本発明のさらに別の実施形態を図示している。この実施形態は電気流体力学の原理に基づいている。
【0052】
図15は、図14の代わりとなる実施形態の別の図である。
【0053】
図16は、カソードチップに加えられた電圧の影響下で、荷電流体が一形態から他形態へ切替わるプロセスを表している。
【0054】
図17は、図14の代わりとなる実施形態における光結合構造であるカラムファイバの軸方向の断面を図示している。
【0055】
図18は、図17で表された実施形態における特定のロウの切替え順序を図示している。
【0056】
図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表している。
【0057】
図20は、イオン化された導電性流体の動電力をレーザ光スイッチとして活用するもう一つの実施例を図示している。
【0058】
図21は、熱光学回折格子の実施例を図示している。
【0059】
図22は、エレクトレット駆動光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0060】
図23は、エレクトレット駆動光学回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0061】
図24は、形状記憶合金駆動の光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0062】
図25は、先行技術における圧電バイモルフの構造を図示している。
【0063】
図26は、圧電バイモルフ駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0064】
図27は、MEMSベースの光スイッチを図示したものである。
【0065】
図28は、MEMS駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0066】
図29は、ランダム拡散格子を用いた表面弾性波ベースのアドレッシングの一例を図示している。
【0067】
図30は、SAW中継器の概略図を例示している。
【0068】
図31は、図30で図示されたすだれ状電極群を図示している。
【0069】
図32は、三叉すだれ状アクチュエータを利用した別の実施例を図示している。
【0070】
図33は、屈曲波駆動用多層バイモルフの構造を図示している。
【0071】
図34は、シース付きカラムファイバの一例の断面を図示している。
【0072】
図35は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収用黒色後背材を付加していることを図示した断面図である。
【0073】
図36は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収素材の黒色マトリックスを更に付加していることを図示した断面図である。
【0074】
図37は、黒色マトリックスディスプレイ機器の中にある各カラーピクセルに別個の多層誘電光学フィルタを付加していることを図示した断面図である。
【0075】
詳細な説明
【0076】
以下の発明の詳細な説明において、本発明の完全な理解を助けるために、多数の具体的な事例が説明される。しかしながら、これらの具体的な詳細とは別に本発明が実施可能であることは当業者に明らかになるだろう。他の例では、周知の方法、手段、材料、要素、回路構成は、本発明が不必要に不明りょうな態様となる事を避ける為に詳細には記載していない。詳細な説明は、主として簡略化した平面図で示される。これらの記載および説明は、技術者および当業者が、簡単かつ最も効果的に研究の本質を他の当業者に伝達する手段として利用される。
【0077】
ここで、「一実施形態」または「実施形態」は、その実施形態に関連して記載された特定の技術、構造、または特徴が、少なくとも本発明の一実施形態に含まれることを意味する。明細書の各所における「一実施形態の中で」の語句は、全て同じ実施形態を参照するものではなく、他の実施形態でもなく、相互排他的な別のまたは代わりの実施形態でもない。さらに、本発明の一以上の実施形態を説明している工程の順序は、本質的に特定の順序を示唆するものではなく、発明の限定を意味するものでもない。
【0078】
本発明は光ファイバ物理学における一つの重要な事実を活用する、すなわち、類似の屈折率の他のサブストレートは、光学繊維導波管に沿って伝播するコヒーレント光波のエバネセント波場を遮るように、接触または十分に近接し、次に、光波を導くコヒーレント光学繊維のエネルギーは、光学導波管の方向に沿った接触長さにより、他のサブストレートと部分的にまたは完全に共役(カップル)している。もし、接触長さが十分に長く、サブストレートと共役(カップル)する光エネルギーがすぐに脱漏するならば、共役(カップリング)は100%に近付くだろう。
この場合のエバネセント波は、距離とともに指数関数的に減衰する光波のような電磁波を意味する。典型的には、全反射時に、エバネント波は境界で形成される。これはエバネセント波がガス検出に使用されている光ファイバに当てはまる。
【0079】
もう一つの方法として、光ファイバ誘導光のエバネセント波を直接阻止する光回折格子が導入可能である。光回折格子の存在はエバネセント波を分散させる。繰り返すと、光ファイバの長さに沿った十分な長さの光回折格子により、導光波の全共役(または分散)が可能である。
【0080】
光のエバネセント減衰長は、光ファイバの屈折率と同時に、光の波長の両方による。例えば、屈折率1.42のフッ化炭素プラスチック・ファイバが、赤色光エバネセント長が0.12ミクロン、緑色光0.10ミクロン、そして青色光0.085ミクロンのエバネセント長に用られる。これらは、非常に限られた進行(運動)をもつアクチュエータを使用する光結合の変調を可能にする、とても小さな進行(運動)距離である。
【0081】
従って、光ファイバ内を伝播する光は、類似屈折率のサブストレートを光ファイバのエバネント波場の内外に移動するだけで、ファイバに沿った任意の点で変換可能である。他に採り得るものとして、サブストレートは、適当な格子間隔の光回折格子、または、屈折率が変更可能な材料に置換可能である。
【0082】
次に図面を見てみると、図1には、レーザ光ファイバ・ディスプレイ・システムの実施形態が示されている。このディスプレイ画面は、画面のカラムを形成する多数の単一モード光ファイバ11と、ディスプレイのロウを形成する多数の光ファイバ12と、からなる。ロウファイバは、カラムドライバ15によって順に制御される個別のレーザダイオード14によって、一端から搬送される。カラムドライバ15は、ビデオソース16からの連続するビデオ入力を平行なロウ信号に変換し、ファンアウト17を通して1つのロウにレーザダイオードに同時に搬送する。カラムドライバは、また、レーザダイオード電流マッピングに必要なグレースケールが、レーザダイオード光出力がロウのグレースケール値に直線的に比例するように実行する。各カラムファイバに沿って進行するレーザ光は、ロウ選択手段18によって選択されたロウファイバに結合する。常に、一つのロウのみが選択され、そのロウは全カラムに対し同じである。ビデオ源の最も典型的な構成と一致させるために、ロウは、配列順に選択される。しかしながら、いくつかのコンピュータがビデオ源を生成するため、他のロウ選択順が好ましいだろう。そのような場合のカラムドライバのソフトウェア再編成は、カラムドライバ・ハードウェアがリアルタイム再構成であるならば、オンザフライでなされることが可能である。ロウ選択手段は、同期ユニット19を経たカラムドライバの直並列操作と同期化する。
【0083】
レーザ光のエバネセント波20は、図2で赤色レーザ光について示すように、カラムファイバのエアファイバ境界で限定される。また、レーザ光強度21が、カラムファイバ22の中心軸で頂点に達し、そこから離れて単調に減衰し、ちょうどファイバの外側で急速に減衰することを示している。この図は、単なる参考情報であり、中心からの距離の関数として光強度の変化量を正確に反映したものではない。
【0084】
図3は、同じまたは類似する屈折率のサブストレート30をカラムファイバに近づけたときの光強度を示す。第二サブストレートは、サブストレートがカラムファイバに十分に近いならば、カラムファイバのエバネセント場を妨害するので、コヒーレント光と強く結合(カップル)するだろう。サブストレートとカラムファイバの間の狭い空隙は、カラムファイバからの光がサブストレートに届くように通り抜けることを許容する。空隙が大きくなるほど、光が通り抜けることが困難になり、空隙での光強度の降下(くぼみ)が大きくなる。サブストレートがカラムファイバに直接接触するとき、降下(くぼみ)は完全に消滅する。
【0085】
図4は、サブストレートまたはロウファイバ31が、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上で、カラムファイバから離されたときの状態を表している。この場合のサブストレート・カラムファイバ共役は、指数関数的に小さくなり、カラムファイバからサブストレートまでのレーザ光32のトンネル現象はごく僅かになる。
【0086】
図5は、カラムファイバから見て外側を向くロウファイバ側面上のランダム格子33を示す。ランダム格子33の役割は、分散によってレーザ光32の脱漏(escape)を促進することである。分散は、ランダム格子33の変調波長が光波の波長と同位であるとき、最も効果的である。格子は、画面の視聴者に向かって、光をロウファイバ・サブストレート31の外に分散するために使用される。垂直方向および水平方向の両方における分散光35の広視野角を確保するために、格子溝は、描写されているように、ロウファイバに沿った方向のではなく、様々な方向としている。ランダム光波長は、光波の濃さ(深さ)と同時に、溝の配向に対して垂直方向における視野角を決定する。
【0087】
図6は、ロウ・アドレス指定によってロウを実行するロウファイバ31の使用を説明する概略図である。カラムファイバ22に沿って進行するレーザ光32は、「off」ロウファイバ41…、または、レーザ光のエバネセント場20を妨害しないそれらのロウファイバ31の存在による影響を受けない。エバネセント場20を妨害するロウに当ると、レーザエネルギは、レーザ光35を視聴者に向かって順次分散するロウファイバ42と共役する。もし、カラムファイバの方向に沿ったロウファイバの幅が十分に長いのならば、(空隙の寸法にもよるが、通常は光波の波長より長い)レーザ光の共役は100%に近付くだろう。
【0088】
図7は、カラムファイバ22から正面にランダム格子33をともなったロウファイバ42へのレーザ光32の方向の転換を示す。格子33は、レーザ光32の漏えい導波管を作り出し、レーザ光32の閉じ込めをなくす。ロウファイバ42がカラムファイバ22に接触しないとき、光閉じ込めの損失は、空隙を横切る光強度21の降下(くぼみ)に見られるように、光が空隙を通り抜けなければならないため、よりなだらかになる。空隙が小さくなればなるほど空隙を横切る光強度21の降下は小さくなり、降下(くぼみ)がほとんど消えて無視できるようになるまで小さくなる。視聴者側のランダム格子33は、視聴者に向かって通り抜けたレーザ光32を分散し、カラムファイバ22からロウファイバ42へのレーザエネルギの急速な共役を導きながら発光し、そこからレーザ光32の外向き波の境界条件が確立される。
【0089】
図8は、ロウファイバ31をカラムファイバ22に向かって、若しくは、離して設置する弾性光カプラ52と圧電変換器51とを用いた、本発明の考えられる実施形態を表わしている。カラムファイバ22の全長に沿って、透過的な弾性光結合サブストレート52が装備されている。弾性光カプラ52は、カラムファイバ22に比べて著しく低い屈折率を有しており、弾性カプラ52におよぶ緩やかな減衰するエバネセント波とともに、レーザ光32を主にカラムファイバ・コア22の内側に留めている。光結合サブストレート52の厚さは、弾性光結合サブストレート52の外向側に拡張したエバネセント場20が、指数関数的に小さくなるように選択される。それぞれのロウファイバ31は、オフ状態の一組の圧電変換器によって、穏やかに、弾性光カプラ52の外側面に対してわずかに押付けられる。一組の圧電変換器51がオンになると、圧電変圧器はロウファイバ31が弾性カプラ52に対して激しく押付けられる十分な圧力を出し、無加圧の厚さの半分またはそれ以下に押付ける(圧縮する)ようにさせ、それにより、弾性光カプラ52を横切るカラムファイバ22とロウファイバ31間のトンネル現象率は、飛躍的に増加する。増加共役は、カラムファイバ・ガイド22に沿ってロウファイバ31へ伝播するレーザ光32の切替えをもたらし、それにより、視聴者に向かって散乱する。
【0090】
図9は、図8で表した実施形態の断面図である。右側では、圧電アクチュエータ51には電圧が加えられないが、代わりに、圧縮前(pre-compression)の圧電アクチュエータ51が、弾性光カプラ52に対して、弾性光カプラを圧縮することなく、アクチュエータをロウファイバ31に緩く押しつける。ロウファイバ31は、光カプラ51の内側でエバネセント波場の力が及ばず、結果として、カラムファイバ22からロウファイバ31へは全くエネルギーが共役しない。左側では、電圧がそれぞれの圧電アクチュエータ51に加えられたとき、アクチュエータは厚さを拡張し、ロウファイバ31を弾性光カプラ52に強く圧迫させて、それを変形させる。変形によりロウファイバ31が弾性光カプラ52内側のエバネセント波場20内に移動し、メイン・カラムファイバ22の中を伝播するレーザ光32が、順に視聴者に共役レーザ光を分散するロウファイバ31へ脱漏するようにする。
【0091】
本発明の他の実施形態は図10に表される。ロウファイバ31とカラムファイバ22との間に位置する低屈折率の硬質透明フラット光チューブ60は、カラムファイバ22の全長に渡って双方に光接続される。チューブ内壁は、好ましくは、類似または高い屈折率および高い表面張力の透明液滴61に対して、湿潤でない素材で作られるか、コーティングされる。液滴は透明チューブの下へ一定の圧力差により維持された一定のスピードで推進する。液滴61がカラムファイバ22とロウファイバ31の交点のちょうど間に位置するチューブ領域を通過するとき、レーザ光32は、チューブの厚さが空隙のエバネセント減衰長より大きく液体領域のエバネセント減衰長より小さい厚さを提供するロウファイバ31と結合するだろう。最適な光結合とするために、液滴61の長さがカラムファイバの直径よりずっと大きくなくてはならない。
【0092】
図11は、還元エアチューブ63、二つの圧力チャンバ64、65と同時に、多数の流体ポンプ66、67およびエアポンプ68、インクジェット注入ヘッド69および付随する圧電ポンプ70とを備えた、供給チューブ62に沿った他の実施形態の透明チューブ60の軸上、または、長手方向の断面を図示している。図示されるように、透明液滴61はチューブ60の上端から約4分の1の行程であり、低圧チャンバ64から低圧空気を吸入するエアポンプ68と、それをP1へ加圧することで維持された圧力差P1−P0によって落下している。低圧チャンバ64は、また、透明チューブ60から落下した液滴を収集する。還元液滴は、第一流体ポンプ66によって第二の高圧チャンバ65に移送され、第二流体ポンプ67の吸い込みで最後に供給チューブ62内に移送される。第二流体ポンプ67は、液滴を加圧し、還元液滴をインクジェット注入ヘッド69に送る。インクジェットヘッド69の圧電ポンプ70は、先立つ液滴61と置換する一定サイズの液滴を定期的に注入するために、定量の液滴を、正確に測り、汲み上げる。
【0093】
図12は、インクジェットヘッド69による液滴71の注入の開始を表す。注入は、押し出された液滴71が、低圧液体還元チャンバ64の中に先行する液滴61の消滅と同時に、ディスプレイ画面のトップに現れるためにトップに出てくる時間がぎりぎりあるように、時間調整され作動する。後続液滴71の注入後も前の液滴が速度を保てるように、エアポンプ68は、先行液滴61付近で圧力差が約2倍であるように、エアを加圧する。それによって、両液滴61および71は、ほぼ同じ速度で進行するだろう。それから逸脱することは、ディスプレイ画面の下方近くの走査ロウの微小空間不正合表示をもたらすだろう。
【0094】
図13は、発明装置のディスプレイ画面の上部に入ろうとしている液滴71の横断面図である。同時に、それに先行する液滴61は、低圧液体還元チャンバ64の中に消失しようとしている。液滴61が低圧チャンバ62の中に回収された後で高圧チャンバ65に汲み上げられる。2倍の呼び圧力ヘッド(nominal pressure head)で汲み上げていたエアポンプ68は、注入液滴71がチューブの上部に入った後、呼び圧力ヘッドで直ちに汲み上げを再開する。注入された液滴71がディスプレイ画面の上部から入る前に進行する短い距離によって生ずる極わずかなタイミングのズレは、2つの液滴61および71が同時に推進させられるのと対応して、ディスプレイ画面の上方から下方部位までの極わずかなゆがみをもたらす微小空間ピクセル表示エラーを生じるだけである。
【0095】
図14は、本発明のさらに別の代替となる実施形態を図示する。これは、電気流体力学の原理に基づいている。電気流体力学的(EHD)現象は、誘電性流体と供給電場との間の相互作用をもたらす。これらの相互作用は、流体上に次に述べる体積力を引き起こす。
【0096】
クーロン力は、流体の自由電化に作用する電場に起因する力である。
【0097】
誘電泳動力は、電場の大きさの2乗に比例し、流体の誘電率の勾配に比例する(例えば、流体の液相と気相との間の境界での急な勾配)。
【0098】
電歪力は、電場の大きさの2乗勾配に比例する。
【0099】
クーロン力は、電荷または自由電荷の導入を必要とする。誘電泳動力および電歪力は、それらは流体の分子における電場と分極電荷の間の相互作用に起因するため、どちらも分極力を示す。
【0100】
ディスプレイのそれぞれのロウに付随して、ロウの方向に配置する流体光結合チューブ84が装備される。透明な光結合チューブ84は、本件の光結合チューブ84のためだけに設けられた不透明な流体貯水層85に結合され、流体的に連通する。透明絶縁誘電性流体82は、そこを貫通する電気導電ロッド83とともに貯水層85に蓄えられる。正電圧が正電荷を誘電性流体に移送する導電ロッド83に加えられる。電気結合チューブ84の内壁は、湿潤でない材料であるか、または、誘電性流体に関して湿潤でないコーティングを有している。貯水層チューブ85の内壁は、反対に、湿潤である。光結合チューブ84は、また、その内部にある、一つ以上の電極81からなる。“OFF”状態の間、電極81は負電圧源に対して切断される。貯水層85内の荷電流体のクーロン反発は、貯水層85の湿潤内壁の表面親和性に打ち勝つのに十分でない。光結合チューブ84内で、負電圧が結合電荷81に加えられるとき、クーロン引力は正電荷流体82を光カプラー84の管腔の中に移動するようにし、空間を占める空気を表示する。気泡は消耗流体量を戻すために貯水層85に移動する。カラムファイバ22の屈折率と近似の屈折率を備えた透明誘電性流体82の存在により、レーザ光32がカラムファイバ22から光結合チューブ84へ切換えられ、その後、正面の光カプラ84の外表面の波状格子によって分散される。
【0101】
図15は、図14の代替となる実施形態のもう一つの図である。“OFF”状態の荷電流体が、貯水層壁の湿潤表面力と湿潤でない光結合チューブ84の斥力によって貯水層85内で保たれる。“ON”状態では、荷電誘電性流体82はカソード81によって光結合チューブ84の管腔の中に移動するように引き付けられ、貯水層チャンバ85の中に空気と交換する。
【0102】
図16は、荷電流体82が、カソードチップ81に供給された電圧の影響の下に、1つの形態から他の形態へ切替えられるプロセスを表す。カソード81が負電荷供給から切断されたとき、電圧が、電流がカソード81の内外に全く流れない状態と認められる“フローティング”状態になる。この状態では、カソード81は絶縁体のように機能し、カソード81と荷電流体82との間のクーロン引力はなく、そのため、荷電流体82は貯水層キャビティ85内に残る。流体‐空気境界での流体82の微小膨張は、流体境界上の同電荷のクーロン斥力による。カソード81が負電圧供給に接続されるとき、その先端に蓄積する負電荷は正荷電流体82が流体結合チューブ84のキャビティを満たすようにクーロン引力を働かせる。
【0103】
図17は、カラムファイバ22の軸に関する断面における、図14の代わりとなる実施形態の光カプラの構造を図示する。貯水層85の遠隔端に置かれるアノード83、および、光結合チューブ84の近接端に置かれるカソード81に加えて、光結合チューブ84の首部の近くに一対の切替電極108が装備される。図に示すように、光結合チューブ84は貯水層85より容積がずっと小さく、視聴者に面する外表面103は、結合チューブ84の誘電性流体82によって結合されたレーザ光を分散するように波状である。貯水層85の中の正荷電誘電性流体82は湿潤貯水層壁100に対して鋭い接触角をもつ。“OFF”状態では、切替電極108およびカソード81は両方とも(電気的に)フローティングであり、貯水層85の入り口から光結合チューブ84の管腔全体に伸びる気泡104により、荷電流体82は完全に貯水層85の内部にある。空気流体接合部分107に近い切替電極108は、それらに対し負電圧装置を作動させたとき、大きなクーロン力を及ぼすことができる。切替電極108のクーロン引力の下で、荷電流体82の微小部分が他から分離され、光結合キャビティ84の中に移動する。カソード81は、その後、分離荷電気泡105をそれに向けて引き付けるように作動し、最初にその部位を占めていた空気107を貯水層部位85に移動させる。そのプロセスは、光結合チューブ部位84が透明荷電流体82に満たされるまで継続する。ロウが“OFF”になると、カソード81には結合チューブ84から荷電流体82を押し出すために正電圧が加えられ、その後、切替電極108は、放出流体105が貯水層85の中の荷電流体82に加わるように、最初に正に、その後、オフに変化する。
【0104】
切替電極108は不透明で狭く図示されているが、それらは結合チューブの全面をカバーする透明電極によって適当に置き換えることができる。この代替的手段の利点は、特に誘電性流体が強い極性流体の場合の、より低い電圧要求である。
【0105】
さらにもう一つの種類の実施形態では、貯水層壁を貯水層キャビティの内側が正拘束電荷のエレクトレット材料に置き換え、アノードを省く。エレクトレットは一種の絶縁材であり、典型的には、高温状態の下で高強度電場の適用によって分極され、永久電気双極子を保有できるポリマーである。それは永久磁石に対し電気的等価である。エレクトレットの正表面電荷は、負分極電荷が流体とエレクトレット壁との間の接触面上に集められた誘電性流体に分極場を誘導でき、正分極電荷は自由表面(流体と空気の間の境界)に現れる。自由表面上の正分極電荷は、切替電極およびカソードにより前と同じ方法で操作できる。
【0106】
4つ目の可能性は、貯水層キャビティ壁を誘電性液体よりも摩擦電気スケールが高い材料で置き換えることである。摩擦電気に関与する量子力学のトンネル現象のため、省く事が可能なアノードなしで、流体は負に電荷される。
【0107】
図18は、特定のロウの切替え順序を示す。誘電性流体82が、貯水層チューブ85の全長にわたるアノード83によって荷電される。最初に、無電圧がカソード81および切替電極108に加えられ、結合チューブ壁100の湿潤でない表面から離れて、荷電流体82が貯水層85の中全体にある。これは、毛管効果および表面張力によって支配されるマイクロ流体システムの最低エネルギー状態である。その後、切替電極108およびカソード81は、荷電流体82の一部を結合チューブ84の管腔の中に引き込む負電圧が加えられる。切替えをオフにすると、切替電極108およびカソード81の両方が、一時的に荷電流体82を結合チューブ部位84から貯水層85に押し出すように正電圧が加えられる。一度、分離された荷電流体82が貯水層85内部の残りの流体と再結合すると、カソード81と切替電極108の両方が荷電流体82を貯水層85の中に維持するように切断される。一対の切替電極108とカソード81の両方は絶縁体電極であるため、DC電流フローはない。一時の、AC電流のみ、個々の電極が多様な電圧に切替えられたときに流れる。一時的な電流フローによる電力供給は、主に、過渡期の間の流体移動の摩擦効果および粘性効果を相殺するのに利用される。それぞれのロウカプラは1フレームごとに1回だけONとOFFに切替えられるため、また、流体移動の範囲は10ミクロンのオーダーであるため、ロウ切替えに要求される平均出力は、切替時間要求を乱すことなく、それぞれの電極に加えられた電圧を最低値に適応することにより、最小限にできる。高い加電圧は流体をより速く移動させるため、より熱散逸損失が起こる。また、流体気泡の沈殿物振動を避けるように流体レイノルズ数を100より下に制限することが必要である。
【0108】
図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表す。図で示されるように、単一光カプラ(結合キャビティ84および貯水層85)は、カラムファイバ22を伝播するレーザ光を同時に特定のロウに切替えるのに使用できる。動的コントラスト比を減少する交差ピクセル結合を防ぐため、バリア111が光結合キャビティ内側の全ての近接する2つのカラムファイバ22の間に挿入される。バリア111は、1つのカラムファイバ22から隣のカラムファイバへの光漏えいを防ぐために、2つの近接するカラムファイバ22の間にある結合キャビティ84への誘電性流体の侵入を遮る。
【0109】
光学的補償板110は、また、全ての単一モード波形の著しい不連続に起因する、長手方向のレーザ分散損失を最小化するための、単一モード波形の連続性を維持するのに使用される。単一モードカラムファイバの横断波形は、屈折率の変化と同様に、カラムファイバ交差部分の配置形状によって決定される。光カプラ84のカラムファイバ22への連結具は、レーザ光の横断波形を結合具の前の波形とわずかに変えるだろう。補償板110は、2つの光カプラ84間の波形を維持するのに使用される。補償板110は、結合キャビティ84の壁とほぼ一致する厚さであるのと同時に、結合キャビティ84と同一の屈折率を有する基材の薄スラブからなる。カラムファイバ22と面する補償板スラブの側面は、カラムファイバ表面の湾曲に適合するように曲げられ、他側面は平面である。補償板110は、また、カプラ84の背面とカラムファイバ22との間の隙間にシムを入れるように、光結合キャビティ84の後方に広がる。
【0110】
図20は、レーザ光切替えを行なう絶縁誘電性流体の代わりに、水のような電気的にイオン化した導電性流体125の動電学的な力を利用する、さらに他の実施形態を図示している。ガラスのようなサブストレートは、イオン化流体に接触するとき、負の表面電荷を得る。サブストレートの負の表面電荷124は、およそデバイ長厚;通常は数十ナノメータから数百ナノメータの範囲;の正の境界電荷123による薄い境界層を形成するように、順に陽イオンを引き付け、陰イオンまたは流体の中の電子を排除する。例えばカソード122およびアノード121によって、外部電場が構築されるとき、陽境界イオン123は、中性のバルク流体を運びながら、カソード122に向かって移動することによって、電場に反応する。この現象は電気浸透として知られており、医療や科学的な用途のためのマイクロ流体ポンプを構成するのに利用されている。
【0111】
電気浸透は、流体を光結合キャビティに出入させるのに十分以上にある、大気圧の数倍の圧力ヘッドを生むことができる。マイナス面は2要素あり、第一は、カソードおよびアノードの両方が導電性流体の中に浸す必要があるため、流体の移動がないときでさえDC電流があることである。そのため、誘電性流体による手段より大幅に高い割合で電力を消費する。第二に、イオンが電極で中性であるとき、移動または再結合させる電気分解により気体になるので、より複雑で手間の掛かる電気浸透手段を構成する余分なプロセスを伴うことである。しかしながら、非常に大きなサイズのディスプレイでは、大きな圧力ヘッドを生じさせる電気浸透力の能力は、付随する複雑化の要因にかかわらず、魅力的である。
【0112】
カラムファイバに平行に並べられ、レーザ光のエバネセント減衰場の中に置かれた光格子の場合、レーザ光のブラッグ散乱は、いくつかの制限内に格子間隔を置くことで起こる。格子間隔が2つの制限内の1つに及ばないと、ブラッグ散乱は全くできない。この事実は、また、レーザ光切替装置を構成するのに利用できる。
【0113】
図21は、熱光格子の概念の一実施形態を表す。図示されていない小型の抵抗加熱要素がそれぞれの格子130に埋め込まれており、格子130が加熱されていないとき、格子間隔はブラッグ境界に及ばない。加熱要素を電流131が通過することにより、一度加熱されると、格子130はブラッグ境界の真上の隙間を増加するように拡大し、熱格子は、順に視聴者に向けてレーザ光を散乱するロウファイバ31内にレーザ光32をブラッグ散乱する。ロウファイバ32の役割は、最初のブラッグ散乱は単一狭ビームを提供するのみであるので、ディスプレイに広視野角を作り出すために、ブラッグ散乱されたレーザ光132を均一に分散することである。
【0114】
数パーセントの熱膨張は、50度(セルシウス)程度の温度変化で容易に達成可能である。しかしながら、室温の変動は切替域値を変更する。より優れた方法は、不要な切替えを避ける為に、十分に高い温度域値の形状記憶合金を使用することである。他の問題点は冷却速度である。形状記憶合金は迅速な反応のために早い冷却時間を必要とする。1000のロウを1/60毎秒で切替えるため、切替速度は60KHzを越えなければならない。その速さゆえ、高解像度ディスプレイには、形状記憶合金は適切な選択ではない。
【0115】
他の作動方法は、エレクトレット膜の使用である。エレクトレットは、厚さ方向に永久的に分極された電荷を備えたポリマー薄膜である。図22はそのような一実施形態を図示している。図に示されるように、エレクトレット膜141は、透明エラストマースラブ144に付着され、順に整合した屈折率の光サブストレート・ブロック143に接着される。エラストマースラブ144の弾性力は、エレクトレット膜アセンブリ141が双安定、1つの安定状態は、レーザ光結合を防ぐのに十分な大きさであるカラムファイバ22と光整合ブロック143間の空隙を備え、他の安定状態はカラムファイバ22に近接する整合ブロック143を備える、となるものがより好ましい。エレクトレットは、カラムファイバ22に付着した透明電極140と図示されていないエレクトレット膜141の正面に付着した他の透明電極との間の加電圧142の存在または欠如によって、状態を可変できる。エレクトレットは、1000のロウを60フレーム毎秒で切替えるのに必要な60KHzを超過する優秀な周波数特性を持つ。この方法の欠点は、エレクトレット材料の耐用年限(通常、数年)、そして、エレクトレットスイッチ動作が発生する高周波雑音である。
【0116】
エレクトレットの高周波反応を、スイッチ消費電力の削減と同時に、さらに改良するために、ブロック結合と整合するエラストマー/屈折率指数は、図23に表すように薄膜光格子に置換えることができる。一対の透明電極150がエレクトレット格子151と同様にカラムファイバの正面に付着される。エレクトレットは、電場153の適用の下で、カラムファイバ22に接触するように格子152を引き入れるように、または、レーザ光22のエバネセント減衰長より大きな距離で格子152をカラムファイバから遠ざけるように移動するように作動する。格子間隔は最大ブラッグ散乱を生成するように選択され、拡散器はディスプレイの視野角を広げるために散乱方向をランダム化するのに使用される。
【0117】
図24に示されるように、作動は形状記憶合金によって行なわれる。ここで、透明ブロック162で整合される屈折率は、形状記憶合金がそれをカラムファイバ22に接触させることによって作動する。形状記憶合金は、温度が限界温度を超えるとき(ただしアニーリング温度以下で)、“クローズ”位置でアニールされる。形状記憶合金の温度は電流161がそこを通過することによって上昇する。形状記憶アクチュエータ160は、また、電流が形状記憶合金を流れないときにアクチュエータを“オープン”位置に保つ薄膜スプリングを含む。消費電力を最低にするために、“クローズ”位置は、ブロック162と整合する屈折率がカラムファイバ22と接触する位置と一致している。
【0118】
PbZrO3とPbTiO3の二成分溶液であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミック、または、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)のような圧電共重合体は、光結合要素の作動に使用できる。PZTに加えて、他に知られている圧電セラミック材料は、LiNbO3、BaTiO3、マグネシウムニオブ酸鉛、チタン酸鉛、等がある。しかしながら、PZTは、優れた物理特性のため、最もよく使用される圧電セラミックである。PZTは、通常、膨張状態(d33ひずみ)で、約0.15%の最大ひずみをもつ。それは、0.2mmのPZT堆積が光カプラの切替えに十分な約0.3ミクロンの最大距離に置換えられることを意味する。そのような堆積は固定ディスプレイ画面に役立つが、0.2mm厚のPZT堆積は、柔軟性のある大画面の構築には難しい。さらに、最大移動量となるためには、電圧要求を減少するための多層構造を利用する“低電圧”セラミックアクチュエータでも、かなり大きな加電圧を必要とする。セラミック圧電変圧器は、また、壊れ易く、通常、広帯域信号を誘導するための複合減衰技術とインピーダンス整合技術を必要とする音響インピーダンスを有する。
【0119】
ポリマー圧電性材料は柔らかく、本質的に低ノイズ、低インピーダンス、そしてより高い周波数と複雑なドライバを要せず広帯域課題に適合する固有減衰特性を持つ。圧電ポリマーは、さまざまな技術によって作られた強誘電性ポリマーであり、PVDFの場合、機械的にポリマーを引き出し、強制交差分極電場の影響下での分極を含む。引出し技術は、押出しおよび引伸ばし、また、引き出しせずに、PVDFが単に弱い圧電性質を示すことを含む。強い圧電場は、分極方向に沿ったPVDF分子の高い整合性を導く。分極後、PVDFは強い圧電応答を示す。他に知られている圧電ポリマーは、ポリパラキシレン、ポリ−ビスクロロメチルオキセタン、フッ化ビニル樹脂、合成ポリペプチド、ポリサルフォン、芳香族ポリアミド、シアノエチル化セルロース等がある。広帯域変換器に使用されるPVDF膜は、通常、厚さが9から20ミクロンの範囲であり、医療用の超音波画像診断にとって魅力的な非常に低いインピーダンスを持つ。ポリマー圧電材料の柔軟性は、多くの特定応用に使われる多種多様な形態の広帯域変換器の製作を可能にする。
【0120】
圧電堆積アクチュエータの代替品は、多層薄膜構造を形成するように機械的に互いに結合された一対の圧電薄膜を利用する圧電バイモルフ・アクチュエータである。圧電膜の一つが膨張状態になり、他が収縮状態になるとき、横運動の差異はバイモルフの屈曲を引き起こす。バイモルフ・アクチュエータは、2つの圧電膜の中心からの距離に対するバイモルフ長さの約半分の比率の要素によって、変位を増幅する。例えば、2つの圧電膜の間の中心からの距離が10ミクロンで、長さが0.06mmであるならば、バイモルフは同じ変位を実現するために1/3の加電圧を必要とし、適切に構成される場合、ごく僅かなディスプレイ厚を加えるだろう。
【0121】
図25に示されるように、加電圧要求と同時に、アクチュエータの厚さは圧電バイモルフ構造により大幅に減少できる。圧電バイモルフ・アクチュエータは、PZT、または、PVDFのような圧電ポリマー材料などの圧電セラミック材料170の層の間に挟まれた受動的弾性ビーム174からなる。2つの圧電膜の分極173は、どちらも膜の表面に垂直であり、互いに平行である。対立する電圧が、両表面が伝導するように、好ましくは金属膜171で覆われた2つのセラミック層170に加えられるとき、曲げモーメントがビームに生じる。一対の片持圧電バイモルフ・アクチュエータ180は、図26に示されるように、軽量ランダムブラッグ格子181と置換して使用できる。ブラッグ格子181の間隔は一様でないが、ブラッグ散乱ウインドウがランダムブラッグ散乱を、個々の拡散スクリーンを必要とせず、視野角に広げられる範囲内にある。圧電バイモルフ・アクチュエータ・ペア180の弾力性支持膜ビームは、双安定構造の形状をとる。圧電膜に多様な電圧182を加えることによって、圧電バイモルフ・アクチュエータ180は“オープン”位置または“クローズ”位置の状態になる。アクチュエータに基づく形状記憶合金と異なるが、それに基づくエレクトレットに似て、圧電バイモルフ・アクチュエータはどちらの双安定位置でも電力を必要としない。スイッチングの間のみ電力を消費する。
【0122】
さらに、他の代わりとなるマイクロアクチュエータ機構は、静電アクチュエーションに基づくMEMS(マイクロ電気機械システム)である。マイクロ静電スイッチは2つの電導膜からなる。図27に示されるように、一方は、カラムファイバ22の正面に堆積された透明な電導薄膜電極192であり、他方は、真下にある透明電極192と同じサイズのブラッグ格子ウインドウ191を備えた金属膜190からなる。2つの膜の間に電圧が加えられないとき、ブラッグ格子191とともに浮遊した膜は、カラムファイバ22内のレーザ光32のエバネセント減衰長より大きな空隙によって、透明電極192から分離される。これは浮遊膜190の双安定状態の一つである。この状態では、カラムファイバ22内側のレーザ光32は共役しない。電圧が加えられると、膜190は静電気引力によって引き寄せられ、レーザ光32は膜190上のランダムブラッグ格子191によって散乱される。透明電極192の存在によるカラムファイバ境界条件の不連続性をなくすため、透明電極192の間の空隙は、同時に同一の幅と深度を持つ、屈折率が同一の非導電膜で満たされる必要がある。そのような屈折率補償がなければ、透明電極の境界での急激な不連続性はレーザ光32を散乱させるだろう。
【0123】
図28は、MEMSアクチュエータベース・アドレス指定を図示する。最もよく似ているエレクトレット・ベース・アクチュエーションと比較すると、MEMSベース・アクチュエーションは、エレクトレット・ベース・アクチュエーションと同じ出力を出すために高い加電圧を必要とする。MEMSベース手段による大きな利点は、MEMS手段は、大きな設備変更なく、成熟した半導体製作技術を活用でき、最短時間で市場に出すことができることである。不利点は、MEMS技術がコンパクトシステム製作に最適なことであり、そのため、大型TVディスプレイのものとしては推定し難い。しかしながら、コンパクトディスプレイ用として、MEMSアクチュエーションは、画素作動に関する他の実施の他の形態になら利用可能である。
【0124】
音波装置は、通常、圧電サブストレートを通した、または圧電サブストレート上の波動伝播モードによって記載される。音波は、主として速度および変位方向によって区別され、材料および境界条件により、多くの組合せが可能である。圧電材料はすだれ状電極、またはIDTによって駆動される。音響装置のIDTは、サブストレートを置換し、音波を形成するのに必要な電場を提供する。波はサブストレートを通して伝播し、他方のIDTで元の電場へ変換される。横波、若しくは、せん断波は、波伝播方向に垂直で、粒子変位がセンサ表面に平行または垂直であるように偏向可能な粒子変位をもつ。せん断水平波動は、センサ表面に平行に偏向された横変位を示す。せん断垂直波動は表面に垂直な横変位を示す。サブストレート通して伝播する波は、バルク波と呼ばれる。最も一般的に使用されるバルク音波装置は、厚みすべり振動子および水平せん断音響板モードである。波がサブストレートの表面上を伝播する場合、それは表面波として知られている。最も広く使用されている表面波装置は弾性表面波デバイスである。
【0125】
弾性表面波、または、SAWは、携帯電話のGHz範囲で作動するバンドパスフィルタや、自動車および医療用途のセンサと同様の他の高パフォーマンスフィルタ・ソリューションとして広く使用されている。弾性表面波は、その名前が暗示するように、異なる音速の2つのメディア間を主にインターフェースに沿って進行する音波である。それはインターフェースの平面上を伝播し、その振幅はインターフェースから離れて急激に減衰する。SAWは、また、層状媒体の中を伝播可能である。弾性表面波では、波エネルギは変換器表面からの一波長の範囲内に限定される。SAWは、デバイス表面と接触して媒体を結合できる縦せん断成分および垂直せん断成分を持つ。そのような結合は、波の振幅、速度、および減衰特性に強く作用する。通常、SAWデバイスは、音波を発生する圧電材料を使用する。圧電材料は、2組の織り合わされたすだれ状電極200、または、指状伸展の電極からなるIDTによって駆動される。90°の位相差である2つのRF信号がこれらの2つの電極に適用され、弾性表面波は、すだれ状の間隙および適用周波数が弾性表面波の特性と一致する条件で、磁場を発生する。弾性表面波の伝播速度は、双方の媒体の弾力性と密度による。通常、SAW速度は、最も遅いSAWを固体中で伝播させて約2000m/sである。波の振幅は、弾性表面波がカラムファイバを調節するのに使用できるようにする約0.1ミクロンに一致する。
【0126】
他のタイプの音波はバルク超音波である。バルク超音波は幾つかの明確なモードが出現する。最もよく知られているバルク超音波モードは、水晶振動子微量天秤に使用されている厚みすべりモードである。音波は薄物サブストレート厚に渡るRF電圧の印加によって励起できる。励起した波は、厚さにわたって電気機械的定常波の形状になる。定常波は定常波共振条件が満たされたときのみ現われるため、厚みすべりモードを使用するこれらのデバイスは、また、共振装置と呼ばれる。高周波厚みすべりモード共振装置は、圧電膜およびバルクシリコン・マイクロマシニング技術を使用して形成できる。バルク超音波モードの他のタイプは、水平せん断モードである。そのようなモードを使用するデバイスは、通常、プレートの上表面から下表面の間のエネルギーを制限する音響導波管として機能する薄物圧電サブストレートまたはプレートを用いる。結果として、プレートの上面と下面の双方は、変位を受ける。両バルク超音波モードは、波変位の表面法線成分の相対的な欠如によって区別される。これは圧電サブストレートが、多大な圧縮荷重なしに、他の表面に接触状態になるのを許容するだろう。
【0127】
弾性表面波およびバルク超音波は、どちらもカラムファイバからのレーザ光出力を変調するのに用いることができる。約0.1ミクロンの最大変位は、圧電サブストレートがカラムファイバに沿った誘導レーザ光のエバネセント波の範囲を出入りさせるのに十分である。カラムファイバは相対的に弾力性がなく、常にファイバのエバネセント範囲のすぐ外側に圧電サブストレートを位置することが非常に困難であるため、透明薄膜の低弾性係数サブストレートは、従順なスペーサとして作動するように、圧電薄膜層とカラムファイバの間に挿入される。透明エラストマーのような材料は、圧電材料が作動したとき、その圧電材料により簡単に変形する典型的な圧電材料より1から2桁低い弾性係数を持つ。実際に、いくつかのエラストマーは、容易にそれ自身の厚さの半分以下に圧縮できる。高柔軟サブストレートの導入と、それによる圧電SAW層と直接接触する大きく減速した音速は、柔軟サブストレートの中で弾性表面波をバルク波として伝播させる。サブストレート内の音波の波長よりも薄い柔軟サブストレートにし、柔軟媒体中の音波の4分の1波長に近づけることにより、弾性表面波は伝搬特性を含むほぼ同じ物理特性を残す。空隙の代えて光学的に密な物質を挿入することは、エバネセント場の光学特性を必然的に変化させるので、このスキームを正しく機能させるために注意を払わなければならない。エバネセント場を保存するために、柔軟媒体の屈折率はカラムファイバの屈折率より十分に低くなければならない。エラストマーの基礎となるフッ化炭素は、1.40という低い光屈折率を持ち、リード長71%の重フリントガラスは、1.805という高い屈折率を持つ。そのような組み合わせで、エバネセント減衰長は約1.6ミクロンであり、まだ表面波変位の範囲内である。柔軟透明エラストマーは、理想的には、レーザ光がトンネルアウトできないように、エバネセント場の減衰長の何倍もの厚さを持たなければならない。
【0128】
図29は、上記の配列を図示する。画素は、ロウ番号が増加または減少する方向に、パルスまたは弾性表面波の波列203を送信することによって、ロウずつ扱われる。ロウ位置での弾性表面波の到達は、エラストマー204を圧縮して、圧電材料201と柔軟エラストマー204内部との間の境界を移動させる。圧縮は、後者の光屈折率を増加するエラストマー204の光学密度を増加する。エラストマー圧電サブストレート境界の内部移動は、屈折率の増加と同時に、レーザ光が通り抜けるようにエバネセント間隙を狭くする。
【0129】
弾性表面波はロウ走査に要求されるより十分速い速度で進行するため、SAWパルスを高い繰り返し率で送信して弾性表面波のパルス周波数より僅かに大きいストロボ周波数でレーザダイオードを変調する、ストロボ技術が使われる。例えば、もしディスプレイ画面の高さが50インチであるならば、線状ロウの走査速度は50インチ×60Hz=76.2m/sである。これは弾性表面波の伝播速度より約20倍遅い。これは1200Hzの繰り返し率で弾性表面波を送信することによって補償でき、60Hzの見掛けの走査周波数を与えるために、丁度60Hz速い1260Hzでレーザダイオードのストロボ周波数を設定する。画素の汚れを回避するために、レーザダイオードのデューティサイクルは、1/20、または5%でなければならない。低いデューティサイクルは、非常に高い最大光出力を持つレーザダイオードに対して問題ないため、平均光出力は低いデューティサイクルに悩まされることはないだろう。高い光出力が望まれるならば、全フレームを保存するフレーム取込器の補助でフレームを20回繰り返すことにより、100%の最大デューティサイクルに対してフレーム率を1200Hzに増加することによって簡単に成し遂げられる。他のデューティサイクルは、1画素周期内でデューティサイクルを適合させること、または、フレーム取込器に呼応して動作する走査変換器の補助でフレームスイープの間、ロウを飛ばすことによって、可能である。
【0130】
SAWアドレス方式の他の問題は、進行中の弾性表面波の減衰とパルスひずみである。圧電媒体は、通常、SAWパルスが微小距離を比較的減衰せずに進行するのを許容する高いQ値を持つ。しかしながら、弾性表面波が共役する柔軟エラストマー層は、著しく大きな損失を伴い、著しい減衰が起こる前にSAWパルスを増幅/再生するSAWリピータの使用を特定の間隔で必要とする。
【0131】
図30は、SAWリピータ213の実施形態の回路図の例である。すだれ状電極200が圧電薄膜201を駆動するために周期的な間隔で使用されている。任意の2つのすだれ状クラスタ220間の間隔は、2つの間の弾性表面波振幅の減衰をほとんどなくするために十分に小さい必要がある。すだれ状電極200は、また、SAWが圧電媒体201内を伝播するので、電圧センサとしても機能する;それは圧電媒体201を圧縮および膨張するので機械的な押圧に応答して電圧を生成する。すだれ状クラスタ220内で、2組のすだれ状電極200は2つの密集した配置間の圧力差を感知する。圧力差は、一組の単一利得差動増幅器212を通して、利得制御信号増幅器211に供給される。固定利得前置増幅器214も、また、信号対雑音比を改良するために導入することができる。利得制御増幅器211の増幅利得は、その位置での弾性表面波の振幅二乗(または累乗)によって決定される。増幅差動信号216は、その後、SAWパルス増幅が感知される場所からわずかに下流距離で、圧電サブストレート201を駆動または作動するのに使用される。SAW媒体の作動は、自由伝播SAWパルスと最高効率のために同調する。作動は、伝播減衰によるエネルギー損失の補充をちょうど満足する量とするべきである。作動は、インバータ214の使用を通して波長の狭い範囲内でSAW信号を優先的に作動する他の一組のすだれ状電極217を通る。そのような波長選択増幅および作動は、信号増幅を促進する。パワーメータ215によって測定された出力が電圧基準210によって提供される域値より小さいとき、表面波は増幅して、増幅器211の利得は1より大きい。一度、弾性表面波の出力が閾値を超えると、増幅利得は1(unity)より少なくなる。これにより、SAWパルスが一定ピーク値を維持するようにする。さらに、小さなランダムノイズが増幅しないことを保証するために、小さな振幅利得を1(unity)未満に減少するための別の低域値基準を導入できる。低域値基準電圧は、RMS(二乗平均平方根)ノイズレベルより高いが、あまり高くない1つの標準偏差となるように選択される。これにより、望まれたSAWパルスが適した高さに増幅される間のノイズを抑えるだろう。
【0132】
図31は、差動ペアと駆動するすだれ状電極217を形成する2つのすだれ状感知電極200を備えた相互にすだれ状に嵌入した電極クラスタ220の図である。隣接した2本の異なるすだれ状電極200、217の指素子間の間隔は、表面の音波の波長と等しい。
【0133】
すだれ状電極217を駆動として使用するには1つの欠点がある。それは、両方向に伝播するSAW(表面弾性波)信号を刺激する傾向があることである。これはすだれ状電極217が180°離れた2つの相をだけを持っているからである。このため、前方へ伝播して行くSAWパルスと後方へ伝播して行くものを識別することができない。感知または増幅段階の特性の選別により、後方へ伝播して行くSAWパルスの生成は抑えることができる。後方へのSAWパルスの振幅が低増幅限界値より小さい場合は、アンプによって減衰できるであろう。1つのアプローチとして、前方に伝播するSAWパルスだけを駆動させるための3相嵌入駆動技術の採用がある。 その技術はテレコミュニケーションの中で広く使用されている位相アンテナ・アプローチの部分集合である。このケースでは、三相アンテナ配ロウ230は前方から後方への非常に大きなアンテナゲイン率(前方伝播と後方伝播との比率)を持っているので、後方SAWパルスへの刺激はほとんど無視できる。実際の前方から後方への比率は、すだれ状電極の位相雑音および機械的交差によって限定されている。3相アクチュエータ241の参考となる実施例は図 32に示される。 隣接した指素子232、233は3分の1の波長の間隔に開けられる。3つのすだれ状電極230は、それぞれ3相RFジェネレーター231の3つの位相の1つに接続される。3相のすだれ状アクチュエータ241は、前方へ伝播する表面波への建設的影響と後方へ伝播する表面波に対する非建設的(破滅的)影響を与える。
【0134】
SAW(表面弾性波)をベースとするアドレシングスキーム(方式・計画)では、音の波長より厚い圧電サブストレートが必要となる。 超音波の波長は約100‐200ミクロン(10MHz波で)程度であるので、圧電サブストレートに必要とされる厚さは、約1ミリメートルに対して1ミリメートルの数分の1の単位となる。大きなディスプレイ・スクリーンにあっては、材料費と同様に製造コストも要因となる。他の実施例では光学のスイッチとしてSAWに代えてバルク弾性波(BAW)を使用することがある。バルク弾性波は本質的に圧電サブストレートの上部でより低い表面間に前後に弾む、傾斜して伝播する音の波である。バルク弾性波は本質的に圧電サブストレートの上下表面間を往復して弾む傾斜して伝播する音波である。バルク弾性波に関し、サブストレートの厚さは典型的に相当に波長より小さくなる。 バルク波の傾斜した伝播特性のために、サブストレートの表面に沿った伝播速度は、インフィニト・ミディア(無限弾性体)の中の音波の速度より小さくなる。従順に弾性層を追加することは、バルク波伝播の速度を変化させ、バルク波をさらに遅くする結果を生じる。理論上は、バルク波は任意に小さな伝播速度を持つことができるが、実際上は、伝播の速度が小さくなりすぎると、サブストレートの厚さの微細な変化にさえ非常に敏感となる。より遅い伝播速度は、使用されるエレクトロニクスのより遅い駆動を招来し、それにより製造コストは削減される。
【0135】
図30に示されたと同じ回路で、バルク弾性波パルスを発生させ増幅することができる。ここで再び、駆動の1つの形式として図32の中で示されるような3相のすだれ状電極駆動装置231が使用される。
【0136】
前述の音波駆動方法の他の実施例としては、圧電気の厚膜としてバイモルフ両積層型か多重積層型を使用することである。図33は、屈曲波の駆動のためのバイモルフ多重積層の構造を示す。示されているように金属層250は、極性の異なる2つの圧電層252の間に挟まれている。金属層250には不撓性(耐屈性)と圧電層252への電気的接続性がある。エラストマー層253の弾力性および容易な圧縮性はさらに全面的な強靭性に寄与している。伝播の方向が251で示される。屈曲波は単にバルク弾性波の非対称バージョンであるが、伝播速度がバルク波より低いと、やや異なって作用する。屈曲波の主要な利点は、バルク波より大きな最大置換(maximum displacement)にある; よって、カラムファイバへの共役(カップリング)はより強くなり、より実効性のある光学スイッチャーとなる。屈曲波アクチュエータは図30で示すようにすだれ状電極により再度駆動され、増幅される。バイモルフ形の嵌入指が両方の圧電層に伸びることは例外である。後方への伝播を減少するために、図32で示される3相のすだれ状電極が優先的に使用されるべきである。
【0137】
バルク弾性波と屈曲波の両方はSAWより分散的である。これは、増幅に加えて、周波数による位相シフトによる分散補償(補正)が提供されるようにリピータ出力を調節することにより処理することができる。
【0138】
カラムファイバ22の構築は、ファイバオプティクス・ネットワーク中で使用された従来のファイバの構築とは必然的に相違するものである。光学スイッチングを促進するために、カラムファイバ22の軸260は、ロウファイバ31がカラムファイバ22中を移動するレーザ光32のエバネセント波の場を遮ることを可能にするために前面が露出していなければならない。カラムファイバ22とロウファイバ31の間で切り替え可能な光学結合(カップリング)を提供する光学スイッチは、図の中で262として表示される。しかしながら、結合(カップリング)の予定されたロウファイバ31に達する前にレーザ光が漏れる可能性があるので、外部コンポーネントとの光学結合(カップリング)を高度に回避したい場所にはどこでも、まだシース261が必要である。シース261は、レーザ光がシース域内でエバネセント減衰したり急速にかつ空間的な減衰を起こす低い光の屈折率のために必要とされる光の絶縁状態を実現する。シースの直径が十分大きければ、レーザ光がシース261の端縁に到達しないので、指数関数的に減衰することはない。このように、シース261は、レーザ漏出の懸念のないディスプレイ装置のその他の構成部品に装備または固着される。図34はシース261のあるカラムファイバ22の1つの実施例の横断面図である。
【0139】
図35はブラックライトを吸収する背後素材263を追加した光ファイバディスプレイ装置の横断面図である。背後の吸収素材263は、周辺光(アンビアント・ライト)が背後に反射しないように吸収する。周辺光(アンビアント・ライト)は最大のコントラスト率を減少させる、それにより、ディスプレイの画像の質の等級を下げる。背後の吸収装置はまた、カラムファイバ22を装備するまたは貼着するための構成要素としても使用される。
【0140】
図36は光ファイバディスプレイ装置へさらに付加する光吸収素材の黒色マトリックス270を示す横断面図である。 黒色マトリックス部材270は、ロウファイバ31あるいは他の手段を介して1つのピクセルから出て隣接したピクセルに達する光を防ぐ光障壁の役割を果たす。ロウファイバ31に沿って移動する光は、自然界において任意(拘束がなく)で、要素270を吸収黒色マトリックスに容易に吸収される。これは、隣接のピクセルとのクロストーク(混信)を減らし、動的コントラスト比率を改善する。
【0141】
大画面のディスプレイ装置については、光ファイバ直径の最も小さなものが非常に小さなフィル(充足)要因を含んでいる。このことは黒色マトリックスによる方法を多いに効果的にする。周辺光がディスプレイのコントラスト比率に影響することができるただ一つの方法は、ロウファイバの前面から後ろに反射することであり、それによって周辺光(アンビアント・ライト)の影響はロウファイバの前面の反射係数と同様に小さなフィル(充足)要因によって倍加される。周辺光の反射のさらに一層の減少は、レーザダイオードから放射されるレーザ光が本質的に単一の波長の波であるという利点を利用してロウファイバの前面の上の誘電性の多層光フィルタによって達成される。誘電性の多層のフィルタは、2つ以上の層からなる薄膜で、階段的な屈折率で波長フィルタリングを実行するように構成されている。図37は、追加された別の多層の黒色マトリックス装置の中の各色ピクセル(赤: 281、緑: 282、青: 283)を示す横断面図である。典型的な周辺光は、広いスペクトルの波長を持つので、波長を選択する多層光フィルタはスペクトルの狭いバンド以外を全て吸収するように、全方向(無指向性)の吸収器または狭いバンドパスフィルタに形成されて、選択されたレーザ光だけを通す。そのような手段は反射した周辺光を殆ど0にするであろう。対照的に、ほとんどの従来の放射型または否放射型のディスプレイ技術では、周辺光のある状況下でディスプレイ装置のコントラスト比率の改善に効果のない狭い帯域の光フィルタリングとなり、広い波長スペクトルの光を放射する。
【0142】
カラムファイバと黒色マトリックスのブロックを黒の背後素材に直接装着(添付)し、カラムファイバと黒色マトリックスへロウファイバと光学スイッチ素子を添装することにより非常に薄いディスプレイを形成することができる。背後素材がケブラー(商標)のような薄いガラス繊維からなり、または十分な剛性をもつ炭素繊維強化フィルムからなる場合は、柔軟性のある軽量なディスプレイ装置を作ることができる。
【0143】
レーザダイオードは非常に高い光放射効率を持っている。赤色および緑色のレーザダイオードは両方とも50%の範囲の照明効率を持っており、また、最良の青いレーザダイオードなら30%より良い効率を持っている。これらの効率数値は、蛍光灯と白熱光のそれよりも高く、また、光度(量)の桁もCRT、OLED、LED等より高い。提案されたレーザ・ディスプレイ装置の総合的な光学の効率は、一義的には、レーザダイオードの効率、光スイッチの光共役(カップリング)特性、カラムファイバおよびロウファイバの損失、背後素材および背後層から外れたレーザ光の吸収、選択されたレーザ波長に関する多層の誘電性光フィルタの送信係数、等によって決定される。カラムファイバとロウファイバの光の送信損失は、光の漏洩を最小に維持できる適切な設計を確保するか、同様に低損失ファイバを使用によっても最小限にすることができる。レーザダイオードからカラムファイバへの光共役(カップリング)効率を含むレーザダイオードの効率は、高い光開口数(high numerical aperture optics)を使用することにより改善できる。アドレシングの間のカラムとロウ・ファイバ間の光共役(カップリング)効率は、共役(カップリング)長さの機能である、と同様に、カプラは、いかに深くカラムファイバのレーザ波のエバネセント場を遮ることができるかである。提案されたシステムの全体の光送信効率は、直接の送信アーキテクチャを持っているOLEDディスプレイの効率より低くなるであろう。しかしながら、これはレーザダイオードのより高い光生成効率の光量の桁によってより以上に埋め合わされる。色イメージを生成するために光を奪う偏光子(polarizers)およびカラーフィルタを使用するLCDディスプレイと比較すると、光の生成も光送信効率も両方ともはるかに高い。偏光子(polarizers)を使用すると、光のエネルギーの半分が除外され、各カラーフィルタではおよそ2/3またはそれ以上の光スペクトルが除外され、LCDディスプレイの全体の光送信効率を16%未満にまで減少させる。
【0144】
本発明は大きなディスプレイ装置に対応する技術を対象としているが、この技術は多くの場合、小さな修正により同様に小規模なディスプレイ装置の構築のために利用することができる点で評価される。本発明はレーザダイオード以外の光源を使用したディスプレイ装置について明確には対象としていないが、そのような装置の構築にも低効率ではあるが本発明の技術を応用することも可能である。また、同様に上記に開示した光スイッチング技術の発明は多重ノードの高速光ファイバネットワークの時間分割による多重通信にも応用することもまた可能である。
【0145】
以上詳述した本発明の方法と装置の詳細な説明は特定の典型的な実施例についてなされたものである。本発明のより広い精神および範囲から外れることなく様々な変更および拡張ができることは自明である。現在の明細書および図は発明の原理を解明するものであり、基本的にこれを限定するものではない。さらに、如何なる方法でも上記の記載によって限定されるものではなく、それに代えて、以下のクレームを参照することにより全体が確定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明に従って構成されたレーザダイオードファイバ光ディスプレイである。
【図2】図2は、カラムファイバのすぐ外側のエバネセントレーザ波場の横断面図である。
【図3】図3は、カラムファイバに沿って進行するコヒーレントレーザ光のエバネセント波場内に、同じ又は類似の屈折率のサブストレートが置かれたときの光強度を図示している。
【図4】図4は、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上でサブストレートがカラムファイバから離されたときのレーザ光の強度分布を表している。
【図5】図5は、視聴者へ向かうレーザ光を分散するためのロウファイバ上のランダム格子の使用を説明する図である。
【図6】図6は、ロウ・アドレッシングによってロウを実行するロウファイバの使用を説明する概略図である。
【図7】図7は、カラムファイバから正面にランダム格子が刻まれたロウファイバへのレーザ光の出力先変更を図示している。
【図8】図8は、ロウファイバをカラムファイバに向かって又は離して移動させるために圧電変換器および弾性光カプラを用いた本発明の概念の可能な実施形態を表している。
【図9】図9は、図8で表された実施形態の断面図である。
【図10】図10は、光カプラとして透明液滴を備えたカラム方向の中空管を使用する本発明の他の実施形態を表している。
【図11】図11は、結合液滴のポンプ機構と同時に他の実施形態の透明チューブの軸方向または長手方向の断面を図示している。
【図12】図12は、ポンプ機構のインクジェット・ヘッドによる液滴の注入開始を表している。
【図13】図13は、発明装置のディスプレイ画面の上方に入ろうとしている液滴の断面図である。
【図14】図14は、本発明のさらに別の実施形態を図示している。この実施形態は電気流体力学の原理に基づいている。
【図15】図15は、図14の代わりとなる実施形態の別の図である。
【図16】図16は、カソードチップに加えられた電圧の影響下で、荷電流体が一形態から他形態へ切替わるプロセスを表している。
【図17】図17は、図14の代わりとなる実施形態における光結合構造であるカラムファイバの軸方向の断面を図示している。
【図18】図18は、図17で表された実施形態における特定のロウの切替え順序を図示している。
【図19】図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表している。
【図20】図20は、イオン化された導電性流体の動電力をレーザ光スイッチとして活用するもう一つの実施例を図示している。
【図21】図21は、熱光学回折格子の実施例を図示している。
【図22】図22は、エレクトレット駆動光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図23】図23は、エレクトレット駆動光学回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図24】図24は、形状記憶合金駆動の光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図25】図25は、先行技術における圧電バイモルフの構造を図示している。
【図26】図26は、圧電バイモルフ駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図27】図27は、MEMSベースの光スイッチを図示したものである。
【図28】図28は、MEMS駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図29】図29は、ランダム拡散格子を用いた表面弾性波ベースのアドレッシングの一例を図示している。
【図30】図30は、SAW中継器の概略図を例示している。
【図31】図31は、図30で図示されたすだれ状電極群を図示している。
【図32】図32は、三叉すだれ状アクチュエータを利用した別の実施例を図示している。
【図33】図33は、屈曲波駆動用多層バイモルフの構造を図示している。
【図34】図34は、シース付きカラムファイバの一例の断面を図示している。
【図35】図35は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収用黒色後背材を付加していることを図示した断面図である。
【図36】図36は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収素材の黒色マトリックスを更に付加していることを図示した断面図である。
【図37】図37は、黒色マトリックスディスプレイ機器の中にある各カラーピクセルに別個の多層誘電光学フィルタを付加していることを図示した断面図である。
【背景技術】
【0001】
ディスプレイは現代の情報技術システムにおいて極めて重要な構成要素である。その例は幅広く、壁掛け大型テレビやプロジェクションテレビシステム、デスクトップPCのフラットパネルモニター、ユビキタスノートブックないしラップトップPC、携帯電話やPDA、ウェアラブルコンピュータシステムまで及ぶ。
約10年前にはブラウン管(CRT)が一般的なディスプレイ技術であり、大小のスクリーンテレビ、プロジェクションテレビ、デスクトップPCのモニター等に使用されていた。今日のコンピュータ用モニター(デスクトップ型、ラップトップ型を問わない)、デジタルテレビ、携帯電話、PDAの大多数においては、CRT以外の技術が支配的である。ローエンドのアナログテレビや、プロスタジオ水準のテレビモニタのみにおいては、その低コスト性や画像表示における高画質能力のためCRT技術が未だに使用されている。
現在は、LCD(液晶ディスプレイ)がディスプレイ分野で支配的な技術となっている。広くコンピュータモニタやラップトップコンピュータ、プロジェクションテレビやED(エンハンスド・ディフィニション)、HD(ハイ・ディフィニション)デジタルテレビ、携帯電話やPDAにはLCDが採用されている。LCDディスプレイはスリムなデザインでフラットな表示面を有し、高い動的コントラスト比率、ちらつきのない画像、緻密なピクセル(画素)表示によってコンピュータにとって本質的に優れたディスプレイ装置となっている。しかし、LCDディスプレイは先行のCRT技術と比較したとき、ある分野においては劣る点がある。第一に、LCD技術はCRT技術に比べ、三原色を連結して形作られるトライアングル内部の範囲と定義される色域が狭くCRT技術と同等の正確な色再現ができない。第二に、LCDはより狭い視野角となる傾向がある。第三に、LCDのダイナミックレンジはCRT技術よりもかなり劣っている。しかしながら、LCD技術は未だに速いペースで進歩している。フラットパネルLCD技術の最近の発達によって、より大きな表示面積、より広い視野角、より高画質な動画が可能となっている。
【0002】
LCDディスプレイは以下の方法により機能する。内側が透明電極とポリマー配置フィルムに覆われた2枚のガラス基板を用いて、その内側に液晶組成物をサンドウィッチ状に挟む。液晶分子は配置レイヤ境界(配向膜)に沿って並ぶ。上部ガラスプレートと下部ガラスプレートの配列の方向は直交する。従って、液晶はねじれた構造の配列とならざるをえない。ねじれの角度は単に90度とするか270度となる(後者はスーパーツイスティッドと呼ばれる)。ねじれた配列の液晶を通過する光もまた、液晶分子のねじれに従って通過することでねじれていく。液晶サンドウィッチに電圧が印加されると、極性のある液晶分子は電界の向きに沿って再配列する。再配列した液晶サンドウィッチを通過する光はもはやねじれていない。従って、2枚の相互に直交する偏光フィルタが液晶サンドウィッチの両側に付加されると、第一偏光フィルタを通過する光は、外部電界がサンドウィッチに印加されていなければ、第二フィルタも通過する。しかし、充分に強い電界が印加されると、光は第二偏光フィルタを通過できなくなる。より弱い電界が印加された場合には、液晶分子は電界の向きに部分的にしか再配列しない。従って、液晶サンドウィッチを通過する光は電界の強さによってねじれの度合いを変化させる。そのため、電界の強さによってサンドウィッチを通過する光の濃度が決定され、グレースケールを形成する。フルカラーディスプレイが求められる際には、各々のピクセルないし画素についてカラーフィルタを付加することが必要となる。液晶そのものは光を発しないため、LCD技術には放射性のものがなく、従って、従来のテレビのような放射線は発生させない。蛍光灯を透明な材料の背後に設置して、画像を照射するために使用するので、作動に必要とされる電力はブラウン管テレビやプラズマディスプレイよりも少なくなる。
【0003】
大型ディスプレイにおいては、個別に各ピクセルに配線することは、そのピクセル数から、明らかに実用的でない。現在、X電極とY電極と呼ばれる2極1セットの電極によって電圧印加を行う。このX・Y電極は透明な導電材料、通常は酸化インジウム錫(ITO)から組成される。例えば、X電極は液晶サンドウィッチの下部ガラスに配置され、Y電極は上部ガラスに配置される。スイッチングトランジスタないしダイオードが、ピクセルの点灯の有無を切り替えるために、各ピクセルに取り付けられる。X-Yマトリックスと各ピクセルに付いた個々のスイッチングトランジスタを利用したピクセル制御はアクティブマトリックスアドレッシングと呼ばれる。X-Yマトリックスアドレッシングにおいて、Y電極は駆動させるピクセルの行(ロウ)を選択するために使用され、X電極には各ピクセルのグレースケール値に応じた電圧が印加される。スイッチングトランジスタは典型的な薄膜トランジスタであるため、このようなアドレッシング方式はTFTもしくは薄膜トランジスタアドレッシングと呼ばれることが多い。
【0004】
LCDディスプレイは画像の安定性と鮮明さにおいて非常に優れている。LCDに取って代わられたCRTスクリーンと比較して、LCDは相対的に軽量で薄く電力消費が小さい。またLCDスクリーンは明るく、輝度においてCRTより優れている。LCDディスプレイは静的コントラスト比についてCRTよりも劣る傾向にあるけれども、実は動的コントラスト比においてCRTより優れている。しかし、LCDディスプレイは色の表現幅および反応時間においてはCRTに及ばない。パッシブマトリックスアドレッシング技術からアクティブマトリックスアドレッシング技術への転換のような最近の技術発達によりLCDスクリーンは反応時間をより短縮し、動画再生やテレビ視聴を可能とするのに充分な速度を達成した。
【0005】
プラズマディスプレイ技術の仕組みは家庭用蛍光灯と同様である。プラズマディスプレイは約100ミクロンの真空の隙間で隔てられた2枚のガラスの間に塗られている赤、緑、青の蛍光体を網状に配置して使用する。各ピクセルに数百ボルトの微弱な交流電気パルスをかけて、アルゴンやネオン、キセノンといった希ガスをイオン化させプラズマを発生させる。このプラズマより紫外線が発生する。プラズマとは、自由電子と大部分を占める陽イオンと中性分子からなる気体である。プラズマは、イオンと電子が再結合して中性分子になろうとする性向があるため、本質的に不安定である。蛍光体の色はシンチレーション媒体として機能し、プラズマの放出する光を赤、緑、青の光へと変換する。プラズマスクリーンには優れたメモリ効果があり、一旦電気パルスによってプラズマが発生すると元の中性ガスに戻るには一定時間が必要となる。スクリーンを素早くリフレッシュさせるために、元に戻る時間は調整可能である。
【0006】
個別のピクセルに対する配電の方法はLCDスクリーンのものと全く同様である。しかし、プラズマスクリーンは特有のメモリ特性を有しているので、アクティブマトリックスアドレッシングや各ピクセルに取り付けるスイッチングトランジスタは必要としない。このことにより、各ピクセルにトランジスタを付加するコストが高価である限り、同じスクリーンサイズであればプラズマディスプレイはLCDディスプレイより安価に製造可能である。マイナス面として、各プラズマピクセルは点灯させるか消灯させるかしかできず、グレースケールを表示するためには、PCM(パルス符号変調)を利用して各ピクセルの輝度をコントロールする。しかし、プラズマディスプレイは気圧に耐えうる大型ガラスで覆われる必要があるので、相対的にかなり重く、製造コストが割高になる傾向がある。従って、チップ技術の進歩につれてドライブエレクトロニクスのコストがより低くなってしまうと、結果的にプラズマディスプレイの全体のコストはLCDディスプレイよりも高くなってしまう。
【0007】
カラーシンチレーション媒体もしくは蛍光体を適切に選択すれば、プラズマディスプレイは広い色範囲を表現することが可能となる。この点で、プラズマスクリーンはCRTやLCDよりも広い色空間を表現できる。プラズマスクリーンは、基本的にライトバルブの配列であるLCDとは異なり、プラズマディスプレイ自体が発光し、消灯するときは完全に光が消えるので、コントラスト比が非常に高い。また、プラズマディスプレイはかなり広い視野角(特にLCDディスプレイと比較した場合)を有している。その主たる理由は、プラズマスクリーンは発光し、光を遮る偏光板が必要ないからである。しかし、0.5mm未満の小さなプラズマピクセルを製造することは困難であるため、プラズマディスプレイ技術は大型スクリーン専用となる。また、パルス符号化変調を輝度コントロールに使用するため、画像のちらつきが不可避である。また、プラズマディスプレイではCRT技術と共通する現象である「焼き付き」が生じる。このことは、両技術とも発光に蛍光体を使用している以上驚くべきことではない。同様の理由で、プラズマスクリーンは相対的に寿命が短い傾向にある。結局、LCDスクリーンと比較して、プラズマディスプレイは同程度のサイズであれば約2倍の電力を消費する。これは、プラズマディスプレイが高い光学効率を有するにもかかわらず、発光効率が低いことに起因しているといえる。
【0008】
大画面用ディスプレイにおけるプラズマディスプレイの人気および画質の点における現在の優位性にもかかわらず、一般的に、LCDでの相当品が取って代わるであろうと考えられている。LCD技術は速いペースで進歩しており、LCDのパネルサイズは対角寸法84型までが既に試験生産されている。メーカーがLCDを好むのは半導体製造技術と類似するからである。一方、依然としてプラズマスクリーンは従来技術による製造を要し、ムーアの法則の恩恵を受けない大型の真空管を必要とする。
【0009】
ディスプレイの市場競争において最新の話題になっている新規参入者の一つとして、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)がある。OLEDディスプレイのピクセルは、2つの電極、金属製のカソードと透明なアノードの間に有機フィルムを挟みこんでいる。有機フィルムは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層から成る。2つの電極間に電位差が生じると、注入された正孔と電子が発光層で再結合し、電界発光が生じる。OLEDは自発光するので、LCDのような煩わしいバックライトは不要である。OLEDはフルカラーディスプレイとして垂直に立てかけることも可能である。OLEDは有機的気相堆積法技術(真空蒸着法)によって製造可能となる。また、インクジェット印刷法および冷間圧接を利用することで製造コストを大幅に下げた高解像度パターニングが可能となる。個別のOLEDピクセルのアドレッシング方式はアクティブマトリックスLCDと全く同様である。バックライト機器がないということはディスプレイを紙の薄さにして曲げることが可能となることを意味する。しかし、現在のOLED技術はまだ長期安定性および耐久性の問題点を抱えている。これはOLEDが極少量の水分・酸素でさえ許容できず、完全に密閉されている必要があるからである。またOLED化合物は経年劣化し、ディスプレイの最大寿命を制限している。またOLEDの発光効率は低い。しかし、青、赤、緑のOLEDが利用可能であるため、各ピクセルが青、赤、緑のOLEDとしたディスプレイが可能である。従って、電力を消費するカラーフィルタは必要としない。また、あるピクセルを暗くするときには常にOLEDを消灯できるので、必要とされる平均的電力は、スクリーン上の全OLEDダイオードを点灯させるのに必要とされる量よりもかなり少なくなる。従って、OLEDディスプレイの平均的電力消費は相当するLCDスクリーンの消費量より少なくなるのが通常である。
【0010】
OLEDディスプレイはそのフィルムに比較的単純な有機化合物を使用する。場合によってはより複雑な有機ポリマーをフィルムに使用することもある。ポリマーフィルムを使用する場合には、ディスプレイはPLEDと呼ばれる。OLEDはアクティブマトリックス、パッシブマトリックスのいずれの方式でもアドレッシングが可能である。アクティブマトリックスOLEDディスプレイでは高速切り替えが可能であり、フルモーションビデオに適している。パッシブマトリックスOLEDディスプレイは格子状の配線が必要となり、各個のピクセルが点灯か消灯のいずれかにしかならないので、低コスト生産が主要関心事となるオーディオやダッシュボード機器における文字やアイコンのディスプレイに適している。
【0011】
OLEDはLCD技術と比べて、より高い輝度、広い視野角、高いコントラストを可能とする。また、アクティブマトリックスディスプレイアドレッシング方式を採用すれば、LCDディスプレイよりもかなり速く切り替えを行う。このことと、ピクセルのグレーレベルの平均値に電力消費量が比例するという事実とを考え合わせると、OLEDはLCDよりも優れたディスプレイ技術となる。更にバックライトがないことで、アクティブマトリックスOLEDディスプレイはかなり薄く、厚さ2mm未満にすることが可能である。ゆえに、曲げることのできるOLEDディスプレイが可能となる。同じ様に重要な点として、OLEDはインクジェット印刷技術を利用して製造することが可能であり、LCDよりも簡易かつ安価に製造できるようになる可能性がある。唯一の重要な欠点は、ディスプレイ素材の寿命である。製造の困難性のため、現在OLEDディスプレイのほとんどが10インチ未満のスクリーンサイズ(より大型のディスプレイが実演展示されてはいるけれども)に依然として限定されている。
【0012】
その他のあまり知られていないディスプレイ技術はイリジウムディスプレイである。イリジウムディスプレイの各ピクセルには2つの伝導性プレートで構成されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)光スイッチが取り付けられる。プレートの一方はガラス基板上の薄い伝導性フィルムスタックであり、他方はその上に吊下げられた金属薄膜である。吊下げられたプレートには2つの安定状態があり、電圧が印加されていないときには、空隙によって2枚のプレートは隔てられており、周辺光は波長によって反射ないし吸収されて色を生じさせる。空隙を変化させることで、色は変化させることが可能である。微量の電圧が印加されると静電気力によって2枚のプレートは引き寄せられ、光が吸収されることでピクセルを暗くする。3色ある一つのピクセルは三原色(赤、緑、青)に対応した空隙のある3つの個別要素からなる。
【0013】
MEMS薄膜に内在するヒステリシス効果によってピクセルの記憶が可能となる。一旦金属薄膜が引き離されると、その状態を保持するために必要とされる電力は少なくなる。このことにより、イリジウムディスプレイは受動的にアドレッシングさせることが可能となる。それゆえに、アドレッシング用ハードウェアの複雑性およびコストをかなり削減できる。このことのマイナス面は、駆動プロセスにおけるオン・オフの性質上、各カラーピクセルが8階調しか表現できないことである。グレースケールを表現するために、サイズを変化させた複数のピクセルが必要となる。もう一つの方法は、パルス幅変調を利用して限定範囲のあるグレースケールを得ることである。どちらの方法であっても、駆動ハードウェアのコストは劇的に増加してしまう。
【0014】
イリジウムディスプレイは、照明にバックライトを必要とせず、それどころか光学効率が高いため、反射する周辺光を照明に利用できる。このため電力効率が非常によい。また、かなり薄く、全体の薄さではOLEDにさえ勝る。実際、必要とされる、光変調、駆動、色選択を含めた全ての機能が1ミクロンの薄さのフィルムに集約され、最も薄いディスプレイ技術を可能としている。
【0015】
イリジウムディスプレイは、軽量で電力消費が少なく鮮明である。その輝度は周辺光のレベルによる。色が妨害によって生じるので、認識される色が見る角度に依存する。しかしながら、視野角はLCD技術よりも広い。バックライトがないことと、耐久性(MEMS技術には一般的に吸着問題、MEMS部品同士がくっついたり、ずれたりする傾向があることに関連する問題があり、経年悪化する)の問題、および巨大ディスプレイへの拡張性の問題が、主な欠点として挙げられる。
【0016】
先述のディスプレイ技術は全て、初期設備コストと再生産コストが高額となる問題を抱えている。更に、これらの技術では巨大スクリーンサイズまで上手く拡大させることができない。LCDおよびプラズマディスプレイ技術で、巨大ディスプレイサイズに拡大させるためには、巨大なガラスパネルおよびパネル全体を均一の厚さに保持するための非常に多数のスペーサを必要とする。プラズマディスプレイの場合は、巨大ガラスパネルを莫大な大気圧に耐えられるようにしなくてもならず、そのようなパネルを製造するコストは急増加する。LCDディスプレイでは、アクティブマトリックスアドレッシング部のコストがスクリーンサイズに応じて劇的に増加する。PDP(プラズマディスプレイパネル)では102インチサイズ、LCDでは82インチサイズのスクリーンが実演展示されているが、その生産コストによって、ほとんどの人はおそらく購買をあきらめるだろう。
【0017】
OLEDおよびイリジウムの双方のディスプレイ技術は、その薄さや広視野角から前途有望である。しかし、両方ともまだ耐久性や大型化への拡張性の点で克服しなくてはならない短所がある。小分子のOLEDでは、各ダイオードが化学真空蒸着技術によって製造されるが、巨大スクリーンディスプレイを製造するためには巨大な真空チャンバが必要となる。ポリマーOLEDディスプレイでは、インクジェット印刷やスクリーン印刷といった一般的インクに使用される接触技術を利用することが可能である。将来的には、大型インクジェットプリンタが開発されれば、巨大なポリマーOLEDディスプレイを印刷することが可能となりうる。しかし、印刷は湿気と酸素のない状態で行われる必要がある。また、インクジェット印刷による回路基板は伝導性が低いため、ディスプレイを大型化する場合、伝導性を増強するために追加的な製造過程が必要となる。たとえこれら全てが克服されたとしても、アクティブマトリックス制御電子装置を大型化する必要性が、OLEDとアクティブマトリックスLCDディスプレイの共通する問題として依然残る。
【0018】
大型イリジウディスプレイの製造は、大型のMEMSを製造しなくてはならないことから、かなり困難である。現在のMEMS製造技術では小型のMEMS機器を製造することしかできない。たとえそのようなディスプレイスクリーンを製造できたとしても、パッシブマトリックスアドレッシングで使用されるパルス波変調が、依然として主要な問題となる。というのはスクリーンサイズが大きくなるにつれ、MEMS光スイッチもまた比例して大きくなるからである。MEMSスイッチの反応時間はMEMS部品のサイズと直接比例する関係にあるので、巨大スクリーンサイズでは、高画質表示に求められるグレースケールの解像度を提供するために必要とされるパルス波変調の速度にMEMSスイッチが対応できなくなる。
【0019】
前述のディスプレイ技術は全て、消費者の需要を満たす画質の静止画、動画を提供するためにはある種の高度な駆動方法の実装が必要とされる。このような駆動方法の実装は本質的に高価となり、大型ディスプレイにうまく対応して大型化しない。また、ほとんどのディスプレイ技術では、大型ガラスパネルを必要とするが、その隣接した2つのパネルの間隔は、効果的に配置されたスペーサを使用して、一定に保たれなくてはならず、極僅かな公差しか許されない。このような大型ディスプレイ用パネルの製造および組立のコストが非常に高価になることは周知である。上記のディスプレイ技術で、イリジウムディスプレイを除き、電力消費効率がよいものはない。そのイリジウムディスプレイでは今のところ大型スクリーンサイズまでサイズを拡大させることはできない。スクリーンサイズが大きくなればなるほど、排熱管理が大きな問題となり、ある段階から能動冷却装置を実装する必要がでてくる。
【0020】
従って、各個のピクセルを駆動させるために高価で複雑な仕組みを必要としない大型スクリーンの直視型ディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0021】
大型ガラス基板やバックライトを必要とせず、かつ薄く柔軟性のあるプラスチックの中に覆われるような大型スクリーンの直視型ディスプレイ装置の需要が存在する。
【0022】
容易に輸送したり荷積みできるよう曲げたり丸めたりできる柔軟性のある直視型巨大スクリーンディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0023】
製造が容易で低コストの直視型巨大スクリーンディスプレイ装置を提供することが求められている。
【0024】
そして、電力消費が少なく、自然に熱を消散させることができ複雑な熱管理の仕組みを必要としない大型スクリーンディスプレイ装置の需要がある。
【0025】
課題を解決するための手段
【0026】
実施例として、大型フォーマットにおける画像および高速動画の表示用の装置および方法が提供される。この装置では、赤、緑、青(RGB)の順にパターンが繰り返されているカラーレーザダイオードがロウ(行)状に配列されている。レーザダイオードは赤、緑、青色の光を直接的に投射できる。あるいは、レーザダイオードはスペクトルにおける紫外線付近の青部分の光をも放つことができ、燐光に依存して光色が決められる。各レーザダイオードはカラムガラスファイバと光学的に連結している。できればカラムガラスファイバは単一モードに対応できるものがよい。しかし、最大輝度が求められるジャンブルディスプレイでは多モード光ファイバが使用されうる。
【0027】
実施例としてのディスプレイ装置にはX-Y駆動機構を実装され、全てのカラムファイバへのビデオ信号は同時に連続したロウ(行)状に並べられた各レーザダイオードに送られる。各ロウダイオードに信号を送り、全てのカラムファイバへのレーザ光の方向を光拡散器へ向き換えることのできる光スイッチ機器を用いて、レーザ光を散乱させ、視聴者の目へと届かせる。連続して各ロウダイオードに向けたレーザ光の方向を素早く切り替えることで、動画が形成される。拡散器を適切な燐光寿命をもつ燐光体で覆うことでちらつきは減少させうる。
【0028】
実施例として、周辺光の反射および周辺光条件によってはディスプレイのコントラスト比に悪影響を及ぼすピクセル間のクロストークを減少させる方法および機器が提供される。この目的のため、黒背景層および黒色マトリックスが使用され、周辺光を吸収し、クロストークを防ぐ。また、多層誘電狭帯域光学フィルタが使用され、別途に望ましくない迷光を吸収して、選択された光の通過を認める。このような方法による効果は、提案されている巨大スクリーンディスプレイにおけるディスプレイ部品のごく小さい曲線因子およびレーザダイオード光が性質上狭帯域であることから、大いに高められている。
【0029】
実施例において、ロウ(行)配列された光スイッチ器は水平に走る中空管からなり、この管には、垂直方向に多数の微小なコネクタが付いており、すぐ下に流体の満ちたチューブが取り付けられている。その貯水チューブは上部のチューブよりずっと大きな容量がある。空チューブは各交差点において全てのロウファイバに圧着している物質(一例としてガラス)からなる。各チューブは、チューブの全長にわたる電極があり、反対の極性をもつ。流体は透明で、有効な絶縁体であり、接続チューブと同様に両方のチューブの表面はできる限り流体と親和しないようになっている。すなわち、チューブ外壁は濡れていない。貯水チューブに装備された電極によって流体は荷電している。電極の上端は通常浮いており、流体は貯水チューブ中に留まっている。電極の上端に電圧が印加されると、流体が表面張力を超えるのに充分な力を受けて引き寄せられ、流体で上部チューブが満たされる。上部チューブが満たされるとき、レーザ光が流体に満ちたチューブにより共役(カップリング)となるように、流体の屈折率はカラム光ファイバの屈折率よりも若干小さくなるようにする。共役(カップリング)効率は適切な接触配置を採ることで100%に近づけることができる。単一モードカラムファイバでは、カラムファイバ方向での光結合長は極めて短くできる。多モードファイバでの光結合長は、特に長くなる。しかし、多モードファイバは、単一モードファイバよりずっと多くの光エネルギを輸送できるので、光結合長が大きな問題にならない巨大ディスプレイにはより適合している。
【0030】
実施例において絶縁流体を使用しているが、代替物も使用しうる。例えば、流体は電離流体でもよい。そのような流体を接触すると、チューブ壁の素材は陰性荷電する。数ナノメータの極薄となる流体と壁の境界層は陽イオンにより支配的に満たされる。あるロウファイバの電極の頂点が負極と接続されると、マイナス電極(カソード)は境界層にあるカチオン(陽イオン)を引き寄せ、一緒に一定量の流体をカソードに引き寄せる。この現象は電気浸透と呼ばれる。電極と流体の間の電気浸透力は実施例における静電気力に取って代わるものである。電気浸透力は他の実施例における静電気力より通常弱いけれども、流体が全体としては、荷電しているというより、中性であるということは、静電放電(ESD)が問題となる環境では有益となりうる。しかし、次のことに留意すべきである。すなわち、CRTが照明や駆動に電子ビームを使用されており、管内の陰性荷電がより深刻なESD問題となるが、巧みな技術により、CRTにとってESDが主要な問題とはならない点まで問題は最小化されている。
【0031】
別の実施例において、光結合チューブは垂直配置され、カラムファイバと光学的機械的に接触している。インクジェットヘッドに使用されているものに類似した圧電マイクロポンプが、透明な流体滴を接続チューブに注入するために、各ロウファイバに実装されている。液滴のスピードは、各液滴の前後間の圧力差を一定に保つエアポンプによって調整されている。液滴の瞬間的な位置により完全に近い光共役(カップリング)は起こり、拡散器のレーザ光の向きを変える。製造コストを削減するために、多数あるロウファイバのための圧電マイクロポンプは一つのユニットに集約することが可能である。接続チューブの透明壁は、主となるカラムファイバよりも屈折率を若干小さくするべきである。内壁の表面は流体用に乾燥させるべきであり、流体の表面張力は、一定速度で流体を推進させる圧力差にさらされても液滴がその形を確実に維持できるようにするため、充分に強くなくてはならない。
【0032】
別の代替的実施例においては、ロウ(行)状の回折格子を双安定位置へ動かすためにアクチュエータが使用される。一方の回折格子はカラムファイバから0.1ミクロン以内の位置にあり、他方の回折格子は0.1ミクロンの範囲から完全に離れている。レーザダイオードが発する光がある波長をもったとき、その光がファイバから0.1ミクロン以内の範囲に入ると回折されるように、回折格子は選択される。更にもう一つの実施例では、カラムファイバと屈折率が一致する透明素材の薄いプレートが回折格子に置き換わる。両方の実施例において、レーザ光の方向はロウファイバのアクチュエータの動作を通じて拡散スクリーンへと向き換えられる。アクチュエータとして用いるのは、1ミクロン単位の移動を可能とする圧電セラミックバイモルフが望ましい。あるいは、バイモルフベースのエレクトレットないし、バイモルフベースのPVCのような圧電共重合体でもよい。
【0033】
また別の代替的実施例では、屈折率がファイバとほぼ一致し、弾性係数の低い透明素材を伝播する遅速の表面弾性波(SAW)が、X-Y駆動に必要となる光スイッチとして使用される。カラムファイバ内で最大限にレーザ光を散乱させるように計算された波長でカラムファイバを伝播するSAWパルス列は、行方向走査のために使用される。SAW伝播層は各カラムファイバの表面において直接的に覆われて、カラムファイバの上端にある圧電変換器がSAW信号を発信する。SAW波列がカラムファイバを降下すると、各レーザダイオードから発せられた光は拡散スクリーンに向けて散乱する。SAWの代替としてはバルク弾性波(BAW)がある。BAWは伝播層をより深く貫通し、より薄い伝播層が利用可能となるので、光結合を向上させうる。更に別の代替としては、屈曲弾性波を利用することである。減衰・分散補償は、すだれ状電極センサおよびアクチュエータを利用した中継器/増幅器によってなされる。
【0034】
別の実施例では、動画表示における動的コントラスト比を向上させる方法を提供する。レーザダイオードは生来的に非常に高い静的コントラスト比を有し、ピクセル表示を可能とする最小限の積層に対して輝度比が最大となると考えられている。動的コントラスト比とは、様々なグレースケール値をとる周囲のピクセルの中における、あるピクセルのコントラスト比と定義される。動的コントラスト比は、付近/近接ピクセルのクロストークによって特に強い影響を受ける。本発明のディスプレイ技術ではフェイスプレートがないため、生来的にピクセル間のクロストークが最小化される。黒色マトリックス障壁を直立させることで、近接および遠隔のピクセルから発せられるレーザ光が、拡散スクリーンに届く前に、確実に遮られ、あるいは吸収されるため、クロストークは更に減少する。黒色マトリックス構造は周辺光を吸収するために、拡散スクリーン自体まで拡張される。レーザダイオードディスプレイにおける曲線因子がかなり小さいために、黒色マトリックス構造の有効性が高められる。
【0035】
別の実施例として、薄く曲げることのできる大型スクリーンディスプレイの構築方法が提供される。カラムファイバは中心が偏っており、表示側がむき出しになっており、被覆加工物、緩衝材、カバーで覆われていない。このことにより、背面を強度のある素材(ガラスファイバもしくはケブラーで強化されたプラスチックが望ましい)と結合させることができる。前面(表示面)のスイッチングファイバは同様にカラムファイバのカバーと結合している。拡散スクリーンは、多層薄膜巨大スクリーンディスプレイを形成するため、スイッチングファイバと直接的に結合させることも可能である。
【0036】
図面の簡単な説明
【0037】
複数の図面を通して、参照符号は、同じ又は類似の部分を示している添付の図面とともに考察されるとき、より理解され、本発明の多種の他の目的、特徴、および、付随する有利点は、十分に理解されるだろう。
【0038】
図1は、本発明に従って構成されたレーザダイオードファイバ光ディスプレイである。
【0039】
図2は、カラムファイバのすぐ外側のエバネセントレーザ波場の横断面図である。
【0040】
図3は、カラムファイバに沿って進行するコヒーレントレーザ光のエバネセント波場内に、同じ又は類似の屈折率のサブストレートが置かれたときの光強度を図示している。
【0041】
図4は、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上でサブストレートがカラムファイバから離されたときのレーザ光の強度分布を表している。
【0042】
図5は、視聴者へ向かうレーザ光を分散するためのロウファイバ上のランダム格子の使用を説明する図である。
【0043】
図6は、ロウ・アドレッシングによってロウを実行するロウファイバの使用を説明する概略図である。
【0044】
図7は、カラムファイバから正面にランダム格子が刻まれたロウファイバへのレーザ光の出力先変更を図示している。
【0045】
図8は、ロウファイバをカラムファイバに向かって又は離して移動させるために圧電変換器および弾性光カプラを用いた本発明の概念の可能な実施形態を表している。
【0046】
図9は、図8で表された実施形態の断面図である。
【0047】
図10は、光カプラとして透明液滴を備えたカラム方向の中空管を使用する本発明の他の実施形態を表している。
【0048】
図11は、結合液滴のポンプ機構と同時に他の実施形態の透明チューブの軸方向または長手方向の断面を図示している。
【0049】
図12は、ポンプ機構のインクジェット・ヘッドによる液滴の注入開始を表している。
【0050】
図13は、発明装置のディスプレイ画面の上方に入ろうとしている液滴の断面図である。
【0051】
図14は、本発明のさらに別の実施形態を図示している。この実施形態は電気流体力学の原理に基づいている。
【0052】
図15は、図14の代わりとなる実施形態の別の図である。
【0053】
図16は、カソードチップに加えられた電圧の影響下で、荷電流体が一形態から他形態へ切替わるプロセスを表している。
【0054】
図17は、図14の代わりとなる実施形態における光結合構造であるカラムファイバの軸方向の断面を図示している。
【0055】
図18は、図17で表された実施形態における特定のロウの切替え順序を図示している。
【0056】
図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表している。
【0057】
図20は、イオン化された導電性流体の動電力をレーザ光スイッチとして活用するもう一つの実施例を図示している。
【0058】
図21は、熱光学回折格子の実施例を図示している。
【0059】
図22は、エレクトレット駆動光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0060】
図23は、エレクトレット駆動光学回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0061】
図24は、形状記憶合金駆動の光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0062】
図25は、先行技術における圧電バイモルフの構造を図示している。
【0063】
図26は、圧電バイモルフ駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0064】
図27は、MEMSベースの光スイッチを図示したものである。
【0065】
図28は、MEMS駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【0066】
図29は、ランダム拡散格子を用いた表面弾性波ベースのアドレッシングの一例を図示している。
【0067】
図30は、SAW中継器の概略図を例示している。
【0068】
図31は、図30で図示されたすだれ状電極群を図示している。
【0069】
図32は、三叉すだれ状アクチュエータを利用した別の実施例を図示している。
【0070】
図33は、屈曲波駆動用多層バイモルフの構造を図示している。
【0071】
図34は、シース付きカラムファイバの一例の断面を図示している。
【0072】
図35は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収用黒色後背材を付加していることを図示した断面図である。
【0073】
図36は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収素材の黒色マトリックスを更に付加していることを図示した断面図である。
【0074】
図37は、黒色マトリックスディスプレイ機器の中にある各カラーピクセルに別個の多層誘電光学フィルタを付加していることを図示した断面図である。
【0075】
詳細な説明
【0076】
以下の発明の詳細な説明において、本発明の完全な理解を助けるために、多数の具体的な事例が説明される。しかしながら、これらの具体的な詳細とは別に本発明が実施可能であることは当業者に明らかになるだろう。他の例では、周知の方法、手段、材料、要素、回路構成は、本発明が不必要に不明りょうな態様となる事を避ける為に詳細には記載していない。詳細な説明は、主として簡略化した平面図で示される。これらの記載および説明は、技術者および当業者が、簡単かつ最も効果的に研究の本質を他の当業者に伝達する手段として利用される。
【0077】
ここで、「一実施形態」または「実施形態」は、その実施形態に関連して記載された特定の技術、構造、または特徴が、少なくとも本発明の一実施形態に含まれることを意味する。明細書の各所における「一実施形態の中で」の語句は、全て同じ実施形態を参照するものではなく、他の実施形態でもなく、相互排他的な別のまたは代わりの実施形態でもない。さらに、本発明の一以上の実施形態を説明している工程の順序は、本質的に特定の順序を示唆するものではなく、発明の限定を意味するものでもない。
【0078】
本発明は光ファイバ物理学における一つの重要な事実を活用する、すなわち、類似の屈折率の他のサブストレートは、光学繊維導波管に沿って伝播するコヒーレント光波のエバネセント波場を遮るように、接触または十分に近接し、次に、光波を導くコヒーレント光学繊維のエネルギーは、光学導波管の方向に沿った接触長さにより、他のサブストレートと部分的にまたは完全に共役(カップル)している。もし、接触長さが十分に長く、サブストレートと共役(カップル)する光エネルギーがすぐに脱漏するならば、共役(カップリング)は100%に近付くだろう。
この場合のエバネセント波は、距離とともに指数関数的に減衰する光波のような電磁波を意味する。典型的には、全反射時に、エバネント波は境界で形成される。これはエバネセント波がガス検出に使用されている光ファイバに当てはまる。
【0079】
もう一つの方法として、光ファイバ誘導光のエバネセント波を直接阻止する光回折格子が導入可能である。光回折格子の存在はエバネセント波を分散させる。繰り返すと、光ファイバの長さに沿った十分な長さの光回折格子により、導光波の全共役(または分散)が可能である。
【0080】
光のエバネセント減衰長は、光ファイバの屈折率と同時に、光の波長の両方による。例えば、屈折率1.42のフッ化炭素プラスチック・ファイバが、赤色光エバネセント長が0.12ミクロン、緑色光0.10ミクロン、そして青色光0.085ミクロンのエバネセント長に用られる。これらは、非常に限られた進行(運動)をもつアクチュエータを使用する光結合の変調を可能にする、とても小さな進行(運動)距離である。
【0081】
従って、光ファイバ内を伝播する光は、類似屈折率のサブストレートを光ファイバのエバネント波場の内外に移動するだけで、ファイバに沿った任意の点で変換可能である。他に採り得るものとして、サブストレートは、適当な格子間隔の光回折格子、または、屈折率が変更可能な材料に置換可能である。
【0082】
次に図面を見てみると、図1には、レーザ光ファイバ・ディスプレイ・システムの実施形態が示されている。このディスプレイ画面は、画面のカラムを形成する多数の単一モード光ファイバ11と、ディスプレイのロウを形成する多数の光ファイバ12と、からなる。ロウファイバは、カラムドライバ15によって順に制御される個別のレーザダイオード14によって、一端から搬送される。カラムドライバ15は、ビデオソース16からの連続するビデオ入力を平行なロウ信号に変換し、ファンアウト17を通して1つのロウにレーザダイオードに同時に搬送する。カラムドライバは、また、レーザダイオード電流マッピングに必要なグレースケールが、レーザダイオード光出力がロウのグレースケール値に直線的に比例するように実行する。各カラムファイバに沿って進行するレーザ光は、ロウ選択手段18によって選択されたロウファイバに結合する。常に、一つのロウのみが選択され、そのロウは全カラムに対し同じである。ビデオ源の最も典型的な構成と一致させるために、ロウは、配列順に選択される。しかしながら、いくつかのコンピュータがビデオ源を生成するため、他のロウ選択順が好ましいだろう。そのような場合のカラムドライバのソフトウェア再編成は、カラムドライバ・ハードウェアがリアルタイム再構成であるならば、オンザフライでなされることが可能である。ロウ選択手段は、同期ユニット19を経たカラムドライバの直並列操作と同期化する。
【0083】
レーザ光のエバネセント波20は、図2で赤色レーザ光について示すように、カラムファイバのエアファイバ境界で限定される。また、レーザ光強度21が、カラムファイバ22の中心軸で頂点に達し、そこから離れて単調に減衰し、ちょうどファイバの外側で急速に減衰することを示している。この図は、単なる参考情報であり、中心からの距離の関数として光強度の変化量を正確に反映したものではない。
【0084】
図3は、同じまたは類似する屈折率のサブストレート30をカラムファイバに近づけたときの光強度を示す。第二サブストレートは、サブストレートがカラムファイバに十分に近いならば、カラムファイバのエバネセント場を妨害するので、コヒーレント光と強く結合(カップル)するだろう。サブストレートとカラムファイバの間の狭い空隙は、カラムファイバからの光がサブストレートに届くように通り抜けることを許容する。空隙が大きくなるほど、光が通り抜けることが困難になり、空隙での光強度の降下(くぼみ)が大きくなる。サブストレートがカラムファイバに直接接触するとき、降下(くぼみ)は完全に消滅する。
【0085】
図4は、サブストレートまたはロウファイバ31が、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上で、カラムファイバから離されたときの状態を表している。この場合のサブストレート・カラムファイバ共役は、指数関数的に小さくなり、カラムファイバからサブストレートまでのレーザ光32のトンネル現象はごく僅かになる。
【0086】
図5は、カラムファイバから見て外側を向くロウファイバ側面上のランダム格子33を示す。ランダム格子33の役割は、分散によってレーザ光32の脱漏(escape)を促進することである。分散は、ランダム格子33の変調波長が光波の波長と同位であるとき、最も効果的である。格子は、画面の視聴者に向かって、光をロウファイバ・サブストレート31の外に分散するために使用される。垂直方向および水平方向の両方における分散光35の広視野角を確保するために、格子溝は、描写されているように、ロウファイバに沿った方向のではなく、様々な方向としている。ランダム光波長は、光波の濃さ(深さ)と同時に、溝の配向に対して垂直方向における視野角を決定する。
【0087】
図6は、ロウ・アドレス指定によってロウを実行するロウファイバ31の使用を説明する概略図である。カラムファイバ22に沿って進行するレーザ光32は、「off」ロウファイバ41…、または、レーザ光のエバネセント場20を妨害しないそれらのロウファイバ31の存在による影響を受けない。エバネセント場20を妨害するロウに当ると、レーザエネルギは、レーザ光35を視聴者に向かって順次分散するロウファイバ42と共役する。もし、カラムファイバの方向に沿ったロウファイバの幅が十分に長いのならば、(空隙の寸法にもよるが、通常は光波の波長より長い)レーザ光の共役は100%に近付くだろう。
【0088】
図7は、カラムファイバ22から正面にランダム格子33をともなったロウファイバ42へのレーザ光32の方向の転換を示す。格子33は、レーザ光32の漏えい導波管を作り出し、レーザ光32の閉じ込めをなくす。ロウファイバ42がカラムファイバ22に接触しないとき、光閉じ込めの損失は、空隙を横切る光強度21の降下(くぼみ)に見られるように、光が空隙を通り抜けなければならないため、よりなだらかになる。空隙が小さくなればなるほど空隙を横切る光強度21の降下は小さくなり、降下(くぼみ)がほとんど消えて無視できるようになるまで小さくなる。視聴者側のランダム格子33は、視聴者に向かって通り抜けたレーザ光32を分散し、カラムファイバ22からロウファイバ42へのレーザエネルギの急速な共役を導きながら発光し、そこからレーザ光32の外向き波の境界条件が確立される。
【0089】
図8は、ロウファイバ31をカラムファイバ22に向かって、若しくは、離して設置する弾性光カプラ52と圧電変換器51とを用いた、本発明の考えられる実施形態を表わしている。カラムファイバ22の全長に沿って、透過的な弾性光結合サブストレート52が装備されている。弾性光カプラ52は、カラムファイバ22に比べて著しく低い屈折率を有しており、弾性カプラ52におよぶ緩やかな減衰するエバネセント波とともに、レーザ光32を主にカラムファイバ・コア22の内側に留めている。光結合サブストレート52の厚さは、弾性光結合サブストレート52の外向側に拡張したエバネセント場20が、指数関数的に小さくなるように選択される。それぞれのロウファイバ31は、オフ状態の一組の圧電変換器によって、穏やかに、弾性光カプラ52の外側面に対してわずかに押付けられる。一組の圧電変換器51がオンになると、圧電変圧器はロウファイバ31が弾性カプラ52に対して激しく押付けられる十分な圧力を出し、無加圧の厚さの半分またはそれ以下に押付ける(圧縮する)ようにさせ、それにより、弾性光カプラ52を横切るカラムファイバ22とロウファイバ31間のトンネル現象率は、飛躍的に増加する。増加共役は、カラムファイバ・ガイド22に沿ってロウファイバ31へ伝播するレーザ光32の切替えをもたらし、それにより、視聴者に向かって散乱する。
【0090】
図9は、図8で表した実施形態の断面図である。右側では、圧電アクチュエータ51には電圧が加えられないが、代わりに、圧縮前(pre-compression)の圧電アクチュエータ51が、弾性光カプラ52に対して、弾性光カプラを圧縮することなく、アクチュエータをロウファイバ31に緩く押しつける。ロウファイバ31は、光カプラ51の内側でエバネセント波場の力が及ばず、結果として、カラムファイバ22からロウファイバ31へは全くエネルギーが共役しない。左側では、電圧がそれぞれの圧電アクチュエータ51に加えられたとき、アクチュエータは厚さを拡張し、ロウファイバ31を弾性光カプラ52に強く圧迫させて、それを変形させる。変形によりロウファイバ31が弾性光カプラ52内側のエバネセント波場20内に移動し、メイン・カラムファイバ22の中を伝播するレーザ光32が、順に視聴者に共役レーザ光を分散するロウファイバ31へ脱漏するようにする。
【0091】
本発明の他の実施形態は図10に表される。ロウファイバ31とカラムファイバ22との間に位置する低屈折率の硬質透明フラット光チューブ60は、カラムファイバ22の全長に渡って双方に光接続される。チューブ内壁は、好ましくは、類似または高い屈折率および高い表面張力の透明液滴61に対して、湿潤でない素材で作られるか、コーティングされる。液滴は透明チューブの下へ一定の圧力差により維持された一定のスピードで推進する。液滴61がカラムファイバ22とロウファイバ31の交点のちょうど間に位置するチューブ領域を通過するとき、レーザ光32は、チューブの厚さが空隙のエバネセント減衰長より大きく液体領域のエバネセント減衰長より小さい厚さを提供するロウファイバ31と結合するだろう。最適な光結合とするために、液滴61の長さがカラムファイバの直径よりずっと大きくなくてはならない。
【0092】
図11は、還元エアチューブ63、二つの圧力チャンバ64、65と同時に、多数の流体ポンプ66、67およびエアポンプ68、インクジェット注入ヘッド69および付随する圧電ポンプ70とを備えた、供給チューブ62に沿った他の実施形態の透明チューブ60の軸上、または、長手方向の断面を図示している。図示されるように、透明液滴61はチューブ60の上端から約4分の1の行程であり、低圧チャンバ64から低圧空気を吸入するエアポンプ68と、それをP1へ加圧することで維持された圧力差P1−P0によって落下している。低圧チャンバ64は、また、透明チューブ60から落下した液滴を収集する。還元液滴は、第一流体ポンプ66によって第二の高圧チャンバ65に移送され、第二流体ポンプ67の吸い込みで最後に供給チューブ62内に移送される。第二流体ポンプ67は、液滴を加圧し、還元液滴をインクジェット注入ヘッド69に送る。インクジェットヘッド69の圧電ポンプ70は、先立つ液滴61と置換する一定サイズの液滴を定期的に注入するために、定量の液滴を、正確に測り、汲み上げる。
【0093】
図12は、インクジェットヘッド69による液滴71の注入の開始を表す。注入は、押し出された液滴71が、低圧液体還元チャンバ64の中に先行する液滴61の消滅と同時に、ディスプレイ画面のトップに現れるためにトップに出てくる時間がぎりぎりあるように、時間調整され作動する。後続液滴71の注入後も前の液滴が速度を保てるように、エアポンプ68は、先行液滴61付近で圧力差が約2倍であるように、エアを加圧する。それによって、両液滴61および71は、ほぼ同じ速度で進行するだろう。それから逸脱することは、ディスプレイ画面の下方近くの走査ロウの微小空間不正合表示をもたらすだろう。
【0094】
図13は、発明装置のディスプレイ画面の上部に入ろうとしている液滴71の横断面図である。同時に、それに先行する液滴61は、低圧液体還元チャンバ64の中に消失しようとしている。液滴61が低圧チャンバ62の中に回収された後で高圧チャンバ65に汲み上げられる。2倍の呼び圧力ヘッド(nominal pressure head)で汲み上げていたエアポンプ68は、注入液滴71がチューブの上部に入った後、呼び圧力ヘッドで直ちに汲み上げを再開する。注入された液滴71がディスプレイ画面の上部から入る前に進行する短い距離によって生ずる極わずかなタイミングのズレは、2つの液滴61および71が同時に推進させられるのと対応して、ディスプレイ画面の上方から下方部位までの極わずかなゆがみをもたらす微小空間ピクセル表示エラーを生じるだけである。
【0095】
図14は、本発明のさらに別の代替となる実施形態を図示する。これは、電気流体力学の原理に基づいている。電気流体力学的(EHD)現象は、誘電性流体と供給電場との間の相互作用をもたらす。これらの相互作用は、流体上に次に述べる体積力を引き起こす。
【0096】
クーロン力は、流体の自由電化に作用する電場に起因する力である。
【0097】
誘電泳動力は、電場の大きさの2乗に比例し、流体の誘電率の勾配に比例する(例えば、流体の液相と気相との間の境界での急な勾配)。
【0098】
電歪力は、電場の大きさの2乗勾配に比例する。
【0099】
クーロン力は、電荷または自由電荷の導入を必要とする。誘電泳動力および電歪力は、それらは流体の分子における電場と分極電荷の間の相互作用に起因するため、どちらも分極力を示す。
【0100】
ディスプレイのそれぞれのロウに付随して、ロウの方向に配置する流体光結合チューブ84が装備される。透明な光結合チューブ84は、本件の光結合チューブ84のためだけに設けられた不透明な流体貯水層85に結合され、流体的に連通する。透明絶縁誘電性流体82は、そこを貫通する電気導電ロッド83とともに貯水層85に蓄えられる。正電圧が正電荷を誘電性流体に移送する導電ロッド83に加えられる。電気結合チューブ84の内壁は、湿潤でない材料であるか、または、誘電性流体に関して湿潤でないコーティングを有している。貯水層チューブ85の内壁は、反対に、湿潤である。光結合チューブ84は、また、その内部にある、一つ以上の電極81からなる。“OFF”状態の間、電極81は負電圧源に対して切断される。貯水層85内の荷電流体のクーロン反発は、貯水層85の湿潤内壁の表面親和性に打ち勝つのに十分でない。光結合チューブ84内で、負電圧が結合電荷81に加えられるとき、クーロン引力は正電荷流体82を光カプラー84の管腔の中に移動するようにし、空間を占める空気を表示する。気泡は消耗流体量を戻すために貯水層85に移動する。カラムファイバ22の屈折率と近似の屈折率を備えた透明誘電性流体82の存在により、レーザ光32がカラムファイバ22から光結合チューブ84へ切換えられ、その後、正面の光カプラ84の外表面の波状格子によって分散される。
【0101】
図15は、図14の代替となる実施形態のもう一つの図である。“OFF”状態の荷電流体が、貯水層壁の湿潤表面力と湿潤でない光結合チューブ84の斥力によって貯水層85内で保たれる。“ON”状態では、荷電誘電性流体82はカソード81によって光結合チューブ84の管腔の中に移動するように引き付けられ、貯水層チャンバ85の中に空気と交換する。
【0102】
図16は、荷電流体82が、カソードチップ81に供給された電圧の影響の下に、1つの形態から他の形態へ切替えられるプロセスを表す。カソード81が負電荷供給から切断されたとき、電圧が、電流がカソード81の内外に全く流れない状態と認められる“フローティング”状態になる。この状態では、カソード81は絶縁体のように機能し、カソード81と荷電流体82との間のクーロン引力はなく、そのため、荷電流体82は貯水層キャビティ85内に残る。流体‐空気境界での流体82の微小膨張は、流体境界上の同電荷のクーロン斥力による。カソード81が負電圧供給に接続されるとき、その先端に蓄積する負電荷は正荷電流体82が流体結合チューブ84のキャビティを満たすようにクーロン引力を働かせる。
【0103】
図17は、カラムファイバ22の軸に関する断面における、図14の代わりとなる実施形態の光カプラの構造を図示する。貯水層85の遠隔端に置かれるアノード83、および、光結合チューブ84の近接端に置かれるカソード81に加えて、光結合チューブ84の首部の近くに一対の切替電極108が装備される。図に示すように、光結合チューブ84は貯水層85より容積がずっと小さく、視聴者に面する外表面103は、結合チューブ84の誘電性流体82によって結合されたレーザ光を分散するように波状である。貯水層85の中の正荷電誘電性流体82は湿潤貯水層壁100に対して鋭い接触角をもつ。“OFF”状態では、切替電極108およびカソード81は両方とも(電気的に)フローティングであり、貯水層85の入り口から光結合チューブ84の管腔全体に伸びる気泡104により、荷電流体82は完全に貯水層85の内部にある。空気流体接合部分107に近い切替電極108は、それらに対し負電圧装置を作動させたとき、大きなクーロン力を及ぼすことができる。切替電極108のクーロン引力の下で、荷電流体82の微小部分が他から分離され、光結合キャビティ84の中に移動する。カソード81は、その後、分離荷電気泡105をそれに向けて引き付けるように作動し、最初にその部位を占めていた空気107を貯水層部位85に移動させる。そのプロセスは、光結合チューブ部位84が透明荷電流体82に満たされるまで継続する。ロウが“OFF”になると、カソード81には結合チューブ84から荷電流体82を押し出すために正電圧が加えられ、その後、切替電極108は、放出流体105が貯水層85の中の荷電流体82に加わるように、最初に正に、その後、オフに変化する。
【0104】
切替電極108は不透明で狭く図示されているが、それらは結合チューブの全面をカバーする透明電極によって適当に置き換えることができる。この代替的手段の利点は、特に誘電性流体が強い極性流体の場合の、より低い電圧要求である。
【0105】
さらにもう一つの種類の実施形態では、貯水層壁を貯水層キャビティの内側が正拘束電荷のエレクトレット材料に置き換え、アノードを省く。エレクトレットは一種の絶縁材であり、典型的には、高温状態の下で高強度電場の適用によって分極され、永久電気双極子を保有できるポリマーである。それは永久磁石に対し電気的等価である。エレクトレットの正表面電荷は、負分極電荷が流体とエレクトレット壁との間の接触面上に集められた誘電性流体に分極場を誘導でき、正分極電荷は自由表面(流体と空気の間の境界)に現れる。自由表面上の正分極電荷は、切替電極およびカソードにより前と同じ方法で操作できる。
【0106】
4つ目の可能性は、貯水層キャビティ壁を誘電性液体よりも摩擦電気スケールが高い材料で置き換えることである。摩擦電気に関与する量子力学のトンネル現象のため、省く事が可能なアノードなしで、流体は負に電荷される。
【0107】
図18は、特定のロウの切替え順序を示す。誘電性流体82が、貯水層チューブ85の全長にわたるアノード83によって荷電される。最初に、無電圧がカソード81および切替電極108に加えられ、結合チューブ壁100の湿潤でない表面から離れて、荷電流体82が貯水層85の中全体にある。これは、毛管効果および表面張力によって支配されるマイクロ流体システムの最低エネルギー状態である。その後、切替電極108およびカソード81は、荷電流体82の一部を結合チューブ84の管腔の中に引き込む負電圧が加えられる。切替えをオフにすると、切替電極108およびカソード81の両方が、一時的に荷電流体82を結合チューブ部位84から貯水層85に押し出すように正電圧が加えられる。一度、分離された荷電流体82が貯水層85内部の残りの流体と再結合すると、カソード81と切替電極108の両方が荷電流体82を貯水層85の中に維持するように切断される。一対の切替電極108とカソード81の両方は絶縁体電極であるため、DC電流フローはない。一時の、AC電流のみ、個々の電極が多様な電圧に切替えられたときに流れる。一時的な電流フローによる電力供給は、主に、過渡期の間の流体移動の摩擦効果および粘性効果を相殺するのに利用される。それぞれのロウカプラは1フレームごとに1回だけONとOFFに切替えられるため、また、流体移動の範囲は10ミクロンのオーダーであるため、ロウ切替えに要求される平均出力は、切替時間要求を乱すことなく、それぞれの電極に加えられた電圧を最低値に適応することにより、最小限にできる。高い加電圧は流体をより速く移動させるため、より熱散逸損失が起こる。また、流体気泡の沈殿物振動を避けるように流体レイノルズ数を100より下に制限することが必要である。
【0108】
図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表す。図で示されるように、単一光カプラ(結合キャビティ84および貯水層85)は、カラムファイバ22を伝播するレーザ光を同時に特定のロウに切替えるのに使用できる。動的コントラスト比を減少する交差ピクセル結合を防ぐため、バリア111が光結合キャビティ内側の全ての近接する2つのカラムファイバ22の間に挿入される。バリア111は、1つのカラムファイバ22から隣のカラムファイバへの光漏えいを防ぐために、2つの近接するカラムファイバ22の間にある結合キャビティ84への誘電性流体の侵入を遮る。
【0109】
光学的補償板110は、また、全ての単一モード波形の著しい不連続に起因する、長手方向のレーザ分散損失を最小化するための、単一モード波形の連続性を維持するのに使用される。単一モードカラムファイバの横断波形は、屈折率の変化と同様に、カラムファイバ交差部分の配置形状によって決定される。光カプラ84のカラムファイバ22への連結具は、レーザ光の横断波形を結合具の前の波形とわずかに変えるだろう。補償板110は、2つの光カプラ84間の波形を維持するのに使用される。補償板110は、結合キャビティ84の壁とほぼ一致する厚さであるのと同時に、結合キャビティ84と同一の屈折率を有する基材の薄スラブからなる。カラムファイバ22と面する補償板スラブの側面は、カラムファイバ表面の湾曲に適合するように曲げられ、他側面は平面である。補償板110は、また、カプラ84の背面とカラムファイバ22との間の隙間にシムを入れるように、光結合キャビティ84の後方に広がる。
【0110】
図20は、レーザ光切替えを行なう絶縁誘電性流体の代わりに、水のような電気的にイオン化した導電性流体125の動電学的な力を利用する、さらに他の実施形態を図示している。ガラスのようなサブストレートは、イオン化流体に接触するとき、負の表面電荷を得る。サブストレートの負の表面電荷124は、およそデバイ長厚;通常は数十ナノメータから数百ナノメータの範囲;の正の境界電荷123による薄い境界層を形成するように、順に陽イオンを引き付け、陰イオンまたは流体の中の電子を排除する。例えばカソード122およびアノード121によって、外部電場が構築されるとき、陽境界イオン123は、中性のバルク流体を運びながら、カソード122に向かって移動することによって、電場に反応する。この現象は電気浸透として知られており、医療や科学的な用途のためのマイクロ流体ポンプを構成するのに利用されている。
【0111】
電気浸透は、流体を光結合キャビティに出入させるのに十分以上にある、大気圧の数倍の圧力ヘッドを生むことができる。マイナス面は2要素あり、第一は、カソードおよびアノードの両方が導電性流体の中に浸す必要があるため、流体の移動がないときでさえDC電流があることである。そのため、誘電性流体による手段より大幅に高い割合で電力を消費する。第二に、イオンが電極で中性であるとき、移動または再結合させる電気分解により気体になるので、より複雑で手間の掛かる電気浸透手段を構成する余分なプロセスを伴うことである。しかしながら、非常に大きなサイズのディスプレイでは、大きな圧力ヘッドを生じさせる電気浸透力の能力は、付随する複雑化の要因にかかわらず、魅力的である。
【0112】
カラムファイバに平行に並べられ、レーザ光のエバネセント減衰場の中に置かれた光格子の場合、レーザ光のブラッグ散乱は、いくつかの制限内に格子間隔を置くことで起こる。格子間隔が2つの制限内の1つに及ばないと、ブラッグ散乱は全くできない。この事実は、また、レーザ光切替装置を構成するのに利用できる。
【0113】
図21は、熱光格子の概念の一実施形態を表す。図示されていない小型の抵抗加熱要素がそれぞれの格子130に埋め込まれており、格子130が加熱されていないとき、格子間隔はブラッグ境界に及ばない。加熱要素を電流131が通過することにより、一度加熱されると、格子130はブラッグ境界の真上の隙間を増加するように拡大し、熱格子は、順に視聴者に向けてレーザ光を散乱するロウファイバ31内にレーザ光32をブラッグ散乱する。ロウファイバ32の役割は、最初のブラッグ散乱は単一狭ビームを提供するのみであるので、ディスプレイに広視野角を作り出すために、ブラッグ散乱されたレーザ光132を均一に分散することである。
【0114】
数パーセントの熱膨張は、50度(セルシウス)程度の温度変化で容易に達成可能である。しかしながら、室温の変動は切替域値を変更する。より優れた方法は、不要な切替えを避ける為に、十分に高い温度域値の形状記憶合金を使用することである。他の問題点は冷却速度である。形状記憶合金は迅速な反応のために早い冷却時間を必要とする。1000のロウを1/60毎秒で切替えるため、切替速度は60KHzを越えなければならない。その速さゆえ、高解像度ディスプレイには、形状記憶合金は適切な選択ではない。
【0115】
他の作動方法は、エレクトレット膜の使用である。エレクトレットは、厚さ方向に永久的に分極された電荷を備えたポリマー薄膜である。図22はそのような一実施形態を図示している。図に示されるように、エレクトレット膜141は、透明エラストマースラブ144に付着され、順に整合した屈折率の光サブストレート・ブロック143に接着される。エラストマースラブ144の弾性力は、エレクトレット膜アセンブリ141が双安定、1つの安定状態は、レーザ光結合を防ぐのに十分な大きさであるカラムファイバ22と光整合ブロック143間の空隙を備え、他の安定状態はカラムファイバ22に近接する整合ブロック143を備える、となるものがより好ましい。エレクトレットは、カラムファイバ22に付着した透明電極140と図示されていないエレクトレット膜141の正面に付着した他の透明電極との間の加電圧142の存在または欠如によって、状態を可変できる。エレクトレットは、1000のロウを60フレーム毎秒で切替えるのに必要な60KHzを超過する優秀な周波数特性を持つ。この方法の欠点は、エレクトレット材料の耐用年限(通常、数年)、そして、エレクトレットスイッチ動作が発生する高周波雑音である。
【0116】
エレクトレットの高周波反応を、スイッチ消費電力の削減と同時に、さらに改良するために、ブロック結合と整合するエラストマー/屈折率指数は、図23に表すように薄膜光格子に置換えることができる。一対の透明電極150がエレクトレット格子151と同様にカラムファイバの正面に付着される。エレクトレットは、電場153の適用の下で、カラムファイバ22に接触するように格子152を引き入れるように、または、レーザ光22のエバネセント減衰長より大きな距離で格子152をカラムファイバから遠ざけるように移動するように作動する。格子間隔は最大ブラッグ散乱を生成するように選択され、拡散器はディスプレイの視野角を広げるために散乱方向をランダム化するのに使用される。
【0117】
図24に示されるように、作動は形状記憶合金によって行なわれる。ここで、透明ブロック162で整合される屈折率は、形状記憶合金がそれをカラムファイバ22に接触させることによって作動する。形状記憶合金は、温度が限界温度を超えるとき(ただしアニーリング温度以下で)、“クローズ”位置でアニールされる。形状記憶合金の温度は電流161がそこを通過することによって上昇する。形状記憶アクチュエータ160は、また、電流が形状記憶合金を流れないときにアクチュエータを“オープン”位置に保つ薄膜スプリングを含む。消費電力を最低にするために、“クローズ”位置は、ブロック162と整合する屈折率がカラムファイバ22と接触する位置と一致している。
【0118】
PbZrO3とPbTiO3の二成分溶液であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミック、または、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)のような圧電共重合体は、光結合要素の作動に使用できる。PZTに加えて、他に知られている圧電セラミック材料は、LiNbO3、BaTiO3、マグネシウムニオブ酸鉛、チタン酸鉛、等がある。しかしながら、PZTは、優れた物理特性のため、最もよく使用される圧電セラミックである。PZTは、通常、膨張状態(d33ひずみ)で、約0.15%の最大ひずみをもつ。それは、0.2mmのPZT堆積が光カプラの切替えに十分な約0.3ミクロンの最大距離に置換えられることを意味する。そのような堆積は固定ディスプレイ画面に役立つが、0.2mm厚のPZT堆積は、柔軟性のある大画面の構築には難しい。さらに、最大移動量となるためには、電圧要求を減少するための多層構造を利用する“低電圧”セラミックアクチュエータでも、かなり大きな加電圧を必要とする。セラミック圧電変圧器は、また、壊れ易く、通常、広帯域信号を誘導するための複合減衰技術とインピーダンス整合技術を必要とする音響インピーダンスを有する。
【0119】
ポリマー圧電性材料は柔らかく、本質的に低ノイズ、低インピーダンス、そしてより高い周波数と複雑なドライバを要せず広帯域課題に適合する固有減衰特性を持つ。圧電ポリマーは、さまざまな技術によって作られた強誘電性ポリマーであり、PVDFの場合、機械的にポリマーを引き出し、強制交差分極電場の影響下での分極を含む。引出し技術は、押出しおよび引伸ばし、また、引き出しせずに、PVDFが単に弱い圧電性質を示すことを含む。強い圧電場は、分極方向に沿ったPVDF分子の高い整合性を導く。分極後、PVDFは強い圧電応答を示す。他に知られている圧電ポリマーは、ポリパラキシレン、ポリ−ビスクロロメチルオキセタン、フッ化ビニル樹脂、合成ポリペプチド、ポリサルフォン、芳香族ポリアミド、シアノエチル化セルロース等がある。広帯域変換器に使用されるPVDF膜は、通常、厚さが9から20ミクロンの範囲であり、医療用の超音波画像診断にとって魅力的な非常に低いインピーダンスを持つ。ポリマー圧電材料の柔軟性は、多くの特定応用に使われる多種多様な形態の広帯域変換器の製作を可能にする。
【0120】
圧電堆積アクチュエータの代替品は、多層薄膜構造を形成するように機械的に互いに結合された一対の圧電薄膜を利用する圧電バイモルフ・アクチュエータである。圧電膜の一つが膨張状態になり、他が収縮状態になるとき、横運動の差異はバイモルフの屈曲を引き起こす。バイモルフ・アクチュエータは、2つの圧電膜の中心からの距離に対するバイモルフ長さの約半分の比率の要素によって、変位を増幅する。例えば、2つの圧電膜の間の中心からの距離が10ミクロンで、長さが0.06mmであるならば、バイモルフは同じ変位を実現するために1/3の加電圧を必要とし、適切に構成される場合、ごく僅かなディスプレイ厚を加えるだろう。
【0121】
図25に示されるように、加電圧要求と同時に、アクチュエータの厚さは圧電バイモルフ構造により大幅に減少できる。圧電バイモルフ・アクチュエータは、PZT、または、PVDFのような圧電ポリマー材料などの圧電セラミック材料170の層の間に挟まれた受動的弾性ビーム174からなる。2つの圧電膜の分極173は、どちらも膜の表面に垂直であり、互いに平行である。対立する電圧が、両表面が伝導するように、好ましくは金属膜171で覆われた2つのセラミック層170に加えられるとき、曲げモーメントがビームに生じる。一対の片持圧電バイモルフ・アクチュエータ180は、図26に示されるように、軽量ランダムブラッグ格子181と置換して使用できる。ブラッグ格子181の間隔は一様でないが、ブラッグ散乱ウインドウがランダムブラッグ散乱を、個々の拡散スクリーンを必要とせず、視野角に広げられる範囲内にある。圧電バイモルフ・アクチュエータ・ペア180の弾力性支持膜ビームは、双安定構造の形状をとる。圧電膜に多様な電圧182を加えることによって、圧電バイモルフ・アクチュエータ180は“オープン”位置または“クローズ”位置の状態になる。アクチュエータに基づく形状記憶合金と異なるが、それに基づくエレクトレットに似て、圧電バイモルフ・アクチュエータはどちらの双安定位置でも電力を必要としない。スイッチングの間のみ電力を消費する。
【0122】
さらに、他の代わりとなるマイクロアクチュエータ機構は、静電アクチュエーションに基づくMEMS(マイクロ電気機械システム)である。マイクロ静電スイッチは2つの電導膜からなる。図27に示されるように、一方は、カラムファイバ22の正面に堆積された透明な電導薄膜電極192であり、他方は、真下にある透明電極192と同じサイズのブラッグ格子ウインドウ191を備えた金属膜190からなる。2つの膜の間に電圧が加えられないとき、ブラッグ格子191とともに浮遊した膜は、カラムファイバ22内のレーザ光32のエバネセント減衰長より大きな空隙によって、透明電極192から分離される。これは浮遊膜190の双安定状態の一つである。この状態では、カラムファイバ22内側のレーザ光32は共役しない。電圧が加えられると、膜190は静電気引力によって引き寄せられ、レーザ光32は膜190上のランダムブラッグ格子191によって散乱される。透明電極192の存在によるカラムファイバ境界条件の不連続性をなくすため、透明電極192の間の空隙は、同時に同一の幅と深度を持つ、屈折率が同一の非導電膜で満たされる必要がある。そのような屈折率補償がなければ、透明電極の境界での急激な不連続性はレーザ光32を散乱させるだろう。
【0123】
図28は、MEMSアクチュエータベース・アドレス指定を図示する。最もよく似ているエレクトレット・ベース・アクチュエーションと比較すると、MEMSベース・アクチュエーションは、エレクトレット・ベース・アクチュエーションと同じ出力を出すために高い加電圧を必要とする。MEMSベース手段による大きな利点は、MEMS手段は、大きな設備変更なく、成熟した半導体製作技術を活用でき、最短時間で市場に出すことができることである。不利点は、MEMS技術がコンパクトシステム製作に最適なことであり、そのため、大型TVディスプレイのものとしては推定し難い。しかしながら、コンパクトディスプレイ用として、MEMSアクチュエーションは、画素作動に関する他の実施の他の形態になら利用可能である。
【0124】
音波装置は、通常、圧電サブストレートを通した、または圧電サブストレート上の波動伝播モードによって記載される。音波は、主として速度および変位方向によって区別され、材料および境界条件により、多くの組合せが可能である。圧電材料はすだれ状電極、またはIDTによって駆動される。音響装置のIDTは、サブストレートを置換し、音波を形成するのに必要な電場を提供する。波はサブストレートを通して伝播し、他方のIDTで元の電場へ変換される。横波、若しくは、せん断波は、波伝播方向に垂直で、粒子変位がセンサ表面に平行または垂直であるように偏向可能な粒子変位をもつ。せん断水平波動は、センサ表面に平行に偏向された横変位を示す。せん断垂直波動は表面に垂直な横変位を示す。サブストレート通して伝播する波は、バルク波と呼ばれる。最も一般的に使用されるバルク音波装置は、厚みすべり振動子および水平せん断音響板モードである。波がサブストレートの表面上を伝播する場合、それは表面波として知られている。最も広く使用されている表面波装置は弾性表面波デバイスである。
【0125】
弾性表面波、または、SAWは、携帯電話のGHz範囲で作動するバンドパスフィルタや、自動車および医療用途のセンサと同様の他の高パフォーマンスフィルタ・ソリューションとして広く使用されている。弾性表面波は、その名前が暗示するように、異なる音速の2つのメディア間を主にインターフェースに沿って進行する音波である。それはインターフェースの平面上を伝播し、その振幅はインターフェースから離れて急激に減衰する。SAWは、また、層状媒体の中を伝播可能である。弾性表面波では、波エネルギは変換器表面からの一波長の範囲内に限定される。SAWは、デバイス表面と接触して媒体を結合できる縦せん断成分および垂直せん断成分を持つ。そのような結合は、波の振幅、速度、および減衰特性に強く作用する。通常、SAWデバイスは、音波を発生する圧電材料を使用する。圧電材料は、2組の織り合わされたすだれ状電極200、または、指状伸展の電極からなるIDTによって駆動される。90°の位相差である2つのRF信号がこれらの2つの電極に適用され、弾性表面波は、すだれ状の間隙および適用周波数が弾性表面波の特性と一致する条件で、磁場を発生する。弾性表面波の伝播速度は、双方の媒体の弾力性と密度による。通常、SAW速度は、最も遅いSAWを固体中で伝播させて約2000m/sである。波の振幅は、弾性表面波がカラムファイバを調節するのに使用できるようにする約0.1ミクロンに一致する。
【0126】
他のタイプの音波はバルク超音波である。バルク超音波は幾つかの明確なモードが出現する。最もよく知られているバルク超音波モードは、水晶振動子微量天秤に使用されている厚みすべりモードである。音波は薄物サブストレート厚に渡るRF電圧の印加によって励起できる。励起した波は、厚さにわたって電気機械的定常波の形状になる。定常波は定常波共振条件が満たされたときのみ現われるため、厚みすべりモードを使用するこれらのデバイスは、また、共振装置と呼ばれる。高周波厚みすべりモード共振装置は、圧電膜およびバルクシリコン・マイクロマシニング技術を使用して形成できる。バルク超音波モードの他のタイプは、水平せん断モードである。そのようなモードを使用するデバイスは、通常、プレートの上表面から下表面の間のエネルギーを制限する音響導波管として機能する薄物圧電サブストレートまたはプレートを用いる。結果として、プレートの上面と下面の双方は、変位を受ける。両バルク超音波モードは、波変位の表面法線成分の相対的な欠如によって区別される。これは圧電サブストレートが、多大な圧縮荷重なしに、他の表面に接触状態になるのを許容するだろう。
【0127】
弾性表面波およびバルク超音波は、どちらもカラムファイバからのレーザ光出力を変調するのに用いることができる。約0.1ミクロンの最大変位は、圧電サブストレートがカラムファイバに沿った誘導レーザ光のエバネセント波の範囲を出入りさせるのに十分である。カラムファイバは相対的に弾力性がなく、常にファイバのエバネセント範囲のすぐ外側に圧電サブストレートを位置することが非常に困難であるため、透明薄膜の低弾性係数サブストレートは、従順なスペーサとして作動するように、圧電薄膜層とカラムファイバの間に挿入される。透明エラストマーのような材料は、圧電材料が作動したとき、その圧電材料により簡単に変形する典型的な圧電材料より1から2桁低い弾性係数を持つ。実際に、いくつかのエラストマーは、容易にそれ自身の厚さの半分以下に圧縮できる。高柔軟サブストレートの導入と、それによる圧電SAW層と直接接触する大きく減速した音速は、柔軟サブストレートの中で弾性表面波をバルク波として伝播させる。サブストレート内の音波の波長よりも薄い柔軟サブストレートにし、柔軟媒体中の音波の4分の1波長に近づけることにより、弾性表面波は伝搬特性を含むほぼ同じ物理特性を残す。空隙の代えて光学的に密な物質を挿入することは、エバネセント場の光学特性を必然的に変化させるので、このスキームを正しく機能させるために注意を払わなければならない。エバネセント場を保存するために、柔軟媒体の屈折率はカラムファイバの屈折率より十分に低くなければならない。エラストマーの基礎となるフッ化炭素は、1.40という低い光屈折率を持ち、リード長71%の重フリントガラスは、1.805という高い屈折率を持つ。そのような組み合わせで、エバネセント減衰長は約1.6ミクロンであり、まだ表面波変位の範囲内である。柔軟透明エラストマーは、理想的には、レーザ光がトンネルアウトできないように、エバネセント場の減衰長の何倍もの厚さを持たなければならない。
【0128】
図29は、上記の配列を図示する。画素は、ロウ番号が増加または減少する方向に、パルスまたは弾性表面波の波列203を送信することによって、ロウずつ扱われる。ロウ位置での弾性表面波の到達は、エラストマー204を圧縮して、圧電材料201と柔軟エラストマー204内部との間の境界を移動させる。圧縮は、後者の光屈折率を増加するエラストマー204の光学密度を増加する。エラストマー圧電サブストレート境界の内部移動は、屈折率の増加と同時に、レーザ光が通り抜けるようにエバネセント間隙を狭くする。
【0129】
弾性表面波はロウ走査に要求されるより十分速い速度で進行するため、SAWパルスを高い繰り返し率で送信して弾性表面波のパルス周波数より僅かに大きいストロボ周波数でレーザダイオードを変調する、ストロボ技術が使われる。例えば、もしディスプレイ画面の高さが50インチであるならば、線状ロウの走査速度は50インチ×60Hz=76.2m/sである。これは弾性表面波の伝播速度より約20倍遅い。これは1200Hzの繰り返し率で弾性表面波を送信することによって補償でき、60Hzの見掛けの走査周波数を与えるために、丁度60Hz速い1260Hzでレーザダイオードのストロボ周波数を設定する。画素の汚れを回避するために、レーザダイオードのデューティサイクルは、1/20、または5%でなければならない。低いデューティサイクルは、非常に高い最大光出力を持つレーザダイオードに対して問題ないため、平均光出力は低いデューティサイクルに悩まされることはないだろう。高い光出力が望まれるならば、全フレームを保存するフレーム取込器の補助でフレームを20回繰り返すことにより、100%の最大デューティサイクルに対してフレーム率を1200Hzに増加することによって簡単に成し遂げられる。他のデューティサイクルは、1画素周期内でデューティサイクルを適合させること、または、フレーム取込器に呼応して動作する走査変換器の補助でフレームスイープの間、ロウを飛ばすことによって、可能である。
【0130】
SAWアドレス方式の他の問題は、進行中の弾性表面波の減衰とパルスひずみである。圧電媒体は、通常、SAWパルスが微小距離を比較的減衰せずに進行するのを許容する高いQ値を持つ。しかしながら、弾性表面波が共役する柔軟エラストマー層は、著しく大きな損失を伴い、著しい減衰が起こる前にSAWパルスを増幅/再生するSAWリピータの使用を特定の間隔で必要とする。
【0131】
図30は、SAWリピータ213の実施形態の回路図の例である。すだれ状電極200が圧電薄膜201を駆動するために周期的な間隔で使用されている。任意の2つのすだれ状クラスタ220間の間隔は、2つの間の弾性表面波振幅の減衰をほとんどなくするために十分に小さい必要がある。すだれ状電極200は、また、SAWが圧電媒体201内を伝播するので、電圧センサとしても機能する;それは圧電媒体201を圧縮および膨張するので機械的な押圧に応答して電圧を生成する。すだれ状クラスタ220内で、2組のすだれ状電極200は2つの密集した配置間の圧力差を感知する。圧力差は、一組の単一利得差動増幅器212を通して、利得制御信号増幅器211に供給される。固定利得前置増幅器214も、また、信号対雑音比を改良するために導入することができる。利得制御増幅器211の増幅利得は、その位置での弾性表面波の振幅二乗(または累乗)によって決定される。増幅差動信号216は、その後、SAWパルス増幅が感知される場所からわずかに下流距離で、圧電サブストレート201を駆動または作動するのに使用される。SAW媒体の作動は、自由伝播SAWパルスと最高効率のために同調する。作動は、伝播減衰によるエネルギー損失の補充をちょうど満足する量とするべきである。作動は、インバータ214の使用を通して波長の狭い範囲内でSAW信号を優先的に作動する他の一組のすだれ状電極217を通る。そのような波長選択増幅および作動は、信号増幅を促進する。パワーメータ215によって測定された出力が電圧基準210によって提供される域値より小さいとき、表面波は増幅して、増幅器211の利得は1より大きい。一度、弾性表面波の出力が閾値を超えると、増幅利得は1(unity)より少なくなる。これにより、SAWパルスが一定ピーク値を維持するようにする。さらに、小さなランダムノイズが増幅しないことを保証するために、小さな振幅利得を1(unity)未満に減少するための別の低域値基準を導入できる。低域値基準電圧は、RMS(二乗平均平方根)ノイズレベルより高いが、あまり高くない1つの標準偏差となるように選択される。これにより、望まれたSAWパルスが適した高さに増幅される間のノイズを抑えるだろう。
【0132】
図31は、差動ペアと駆動するすだれ状電極217を形成する2つのすだれ状感知電極200を備えた相互にすだれ状に嵌入した電極クラスタ220の図である。隣接した2本の異なるすだれ状電極200、217の指素子間の間隔は、表面の音波の波長と等しい。
【0133】
すだれ状電極217を駆動として使用するには1つの欠点がある。それは、両方向に伝播するSAW(表面弾性波)信号を刺激する傾向があることである。これはすだれ状電極217が180°離れた2つの相をだけを持っているからである。このため、前方へ伝播して行くSAWパルスと後方へ伝播して行くものを識別することができない。感知または増幅段階の特性の選別により、後方へ伝播して行くSAWパルスの生成は抑えることができる。後方へのSAWパルスの振幅が低増幅限界値より小さい場合は、アンプによって減衰できるであろう。1つのアプローチとして、前方に伝播するSAWパルスだけを駆動させるための3相嵌入駆動技術の採用がある。 その技術はテレコミュニケーションの中で広く使用されている位相アンテナ・アプローチの部分集合である。このケースでは、三相アンテナ配ロウ230は前方から後方への非常に大きなアンテナゲイン率(前方伝播と後方伝播との比率)を持っているので、後方SAWパルスへの刺激はほとんど無視できる。実際の前方から後方への比率は、すだれ状電極の位相雑音および機械的交差によって限定されている。3相アクチュエータ241の参考となる実施例は図 32に示される。 隣接した指素子232、233は3分の1の波長の間隔に開けられる。3つのすだれ状電極230は、それぞれ3相RFジェネレーター231の3つの位相の1つに接続される。3相のすだれ状アクチュエータ241は、前方へ伝播する表面波への建設的影響と後方へ伝播する表面波に対する非建設的(破滅的)影響を与える。
【0134】
SAW(表面弾性波)をベースとするアドレシングスキーム(方式・計画)では、音の波長より厚い圧電サブストレートが必要となる。 超音波の波長は約100‐200ミクロン(10MHz波で)程度であるので、圧電サブストレートに必要とされる厚さは、約1ミリメートルに対して1ミリメートルの数分の1の単位となる。大きなディスプレイ・スクリーンにあっては、材料費と同様に製造コストも要因となる。他の実施例では光学のスイッチとしてSAWに代えてバルク弾性波(BAW)を使用することがある。バルク弾性波は本質的に圧電サブストレートの上部でより低い表面間に前後に弾む、傾斜して伝播する音の波である。バルク弾性波は本質的に圧電サブストレートの上下表面間を往復して弾む傾斜して伝播する音波である。バルク弾性波に関し、サブストレートの厚さは典型的に相当に波長より小さくなる。 バルク波の傾斜した伝播特性のために、サブストレートの表面に沿った伝播速度は、インフィニト・ミディア(無限弾性体)の中の音波の速度より小さくなる。従順に弾性層を追加することは、バルク波伝播の速度を変化させ、バルク波をさらに遅くする結果を生じる。理論上は、バルク波は任意に小さな伝播速度を持つことができるが、実際上は、伝播の速度が小さくなりすぎると、サブストレートの厚さの微細な変化にさえ非常に敏感となる。より遅い伝播速度は、使用されるエレクトロニクスのより遅い駆動を招来し、それにより製造コストは削減される。
【0135】
図30に示されたと同じ回路で、バルク弾性波パルスを発生させ増幅することができる。ここで再び、駆動の1つの形式として図32の中で示されるような3相のすだれ状電極駆動装置231が使用される。
【0136】
前述の音波駆動方法の他の実施例としては、圧電気の厚膜としてバイモルフ両積層型か多重積層型を使用することである。図33は、屈曲波の駆動のためのバイモルフ多重積層の構造を示す。示されているように金属層250は、極性の異なる2つの圧電層252の間に挟まれている。金属層250には不撓性(耐屈性)と圧電層252への電気的接続性がある。エラストマー層253の弾力性および容易な圧縮性はさらに全面的な強靭性に寄与している。伝播の方向が251で示される。屈曲波は単にバルク弾性波の非対称バージョンであるが、伝播速度がバルク波より低いと、やや異なって作用する。屈曲波の主要な利点は、バルク波より大きな最大置換(maximum displacement)にある; よって、カラムファイバへの共役(カップリング)はより強くなり、より実効性のある光学スイッチャーとなる。屈曲波アクチュエータは図30で示すようにすだれ状電極により再度駆動され、増幅される。バイモルフ形の嵌入指が両方の圧電層に伸びることは例外である。後方への伝播を減少するために、図32で示される3相のすだれ状電極が優先的に使用されるべきである。
【0137】
バルク弾性波と屈曲波の両方はSAWより分散的である。これは、増幅に加えて、周波数による位相シフトによる分散補償(補正)が提供されるようにリピータ出力を調節することにより処理することができる。
【0138】
カラムファイバ22の構築は、ファイバオプティクス・ネットワーク中で使用された従来のファイバの構築とは必然的に相違するものである。光学スイッチングを促進するために、カラムファイバ22の軸260は、ロウファイバ31がカラムファイバ22中を移動するレーザ光32のエバネセント波の場を遮ることを可能にするために前面が露出していなければならない。カラムファイバ22とロウファイバ31の間で切り替え可能な光学結合(カップリング)を提供する光学スイッチは、図の中で262として表示される。しかしながら、結合(カップリング)の予定されたロウファイバ31に達する前にレーザ光が漏れる可能性があるので、外部コンポーネントとの光学結合(カップリング)を高度に回避したい場所にはどこでも、まだシース261が必要である。シース261は、レーザ光がシース域内でエバネセント減衰したり急速にかつ空間的な減衰を起こす低い光の屈折率のために必要とされる光の絶縁状態を実現する。シースの直径が十分大きければ、レーザ光がシース261の端縁に到達しないので、指数関数的に減衰することはない。このように、シース261は、レーザ漏出の懸念のないディスプレイ装置のその他の構成部品に装備または固着される。図34はシース261のあるカラムファイバ22の1つの実施例の横断面図である。
【0139】
図35はブラックライトを吸収する背後素材263を追加した光ファイバディスプレイ装置の横断面図である。背後の吸収素材263は、周辺光(アンビアント・ライト)が背後に反射しないように吸収する。周辺光(アンビアント・ライト)は最大のコントラスト率を減少させる、それにより、ディスプレイの画像の質の等級を下げる。背後の吸収装置はまた、カラムファイバ22を装備するまたは貼着するための構成要素としても使用される。
【0140】
図36は光ファイバディスプレイ装置へさらに付加する光吸収素材の黒色マトリックス270を示す横断面図である。 黒色マトリックス部材270は、ロウファイバ31あるいは他の手段を介して1つのピクセルから出て隣接したピクセルに達する光を防ぐ光障壁の役割を果たす。ロウファイバ31に沿って移動する光は、自然界において任意(拘束がなく)で、要素270を吸収黒色マトリックスに容易に吸収される。これは、隣接のピクセルとのクロストーク(混信)を減らし、動的コントラスト比率を改善する。
【0141】
大画面のディスプレイ装置については、光ファイバ直径の最も小さなものが非常に小さなフィル(充足)要因を含んでいる。このことは黒色マトリックスによる方法を多いに効果的にする。周辺光がディスプレイのコントラスト比率に影響することができるただ一つの方法は、ロウファイバの前面から後ろに反射することであり、それによって周辺光(アンビアント・ライト)の影響はロウファイバの前面の反射係数と同様に小さなフィル(充足)要因によって倍加される。周辺光の反射のさらに一層の減少は、レーザダイオードから放射されるレーザ光が本質的に単一の波長の波であるという利点を利用してロウファイバの前面の上の誘電性の多層光フィルタによって達成される。誘電性の多層のフィルタは、2つ以上の層からなる薄膜で、階段的な屈折率で波長フィルタリングを実行するように構成されている。図37は、追加された別の多層の黒色マトリックス装置の中の各色ピクセル(赤: 281、緑: 282、青: 283)を示す横断面図である。典型的な周辺光は、広いスペクトルの波長を持つので、波長を選択する多層光フィルタはスペクトルの狭いバンド以外を全て吸収するように、全方向(無指向性)の吸収器または狭いバンドパスフィルタに形成されて、選択されたレーザ光だけを通す。そのような手段は反射した周辺光を殆ど0にするであろう。対照的に、ほとんどの従来の放射型または否放射型のディスプレイ技術では、周辺光のある状況下でディスプレイ装置のコントラスト比率の改善に効果のない狭い帯域の光フィルタリングとなり、広い波長スペクトルの光を放射する。
【0142】
カラムファイバと黒色マトリックスのブロックを黒の背後素材に直接装着(添付)し、カラムファイバと黒色マトリックスへロウファイバと光学スイッチ素子を添装することにより非常に薄いディスプレイを形成することができる。背後素材がケブラー(商標)のような薄いガラス繊維からなり、または十分な剛性をもつ炭素繊維強化フィルムからなる場合は、柔軟性のある軽量なディスプレイ装置を作ることができる。
【0143】
レーザダイオードは非常に高い光放射効率を持っている。赤色および緑色のレーザダイオードは両方とも50%の範囲の照明効率を持っており、また、最良の青いレーザダイオードなら30%より良い効率を持っている。これらの効率数値は、蛍光灯と白熱光のそれよりも高く、また、光度(量)の桁もCRT、OLED、LED等より高い。提案されたレーザ・ディスプレイ装置の総合的な光学の効率は、一義的には、レーザダイオードの効率、光スイッチの光共役(カップリング)特性、カラムファイバおよびロウファイバの損失、背後素材および背後層から外れたレーザ光の吸収、選択されたレーザ波長に関する多層の誘電性光フィルタの送信係数、等によって決定される。カラムファイバとロウファイバの光の送信損失は、光の漏洩を最小に維持できる適切な設計を確保するか、同様に低損失ファイバを使用によっても最小限にすることができる。レーザダイオードからカラムファイバへの光共役(カップリング)効率を含むレーザダイオードの効率は、高い光開口数(high numerical aperture optics)を使用することにより改善できる。アドレシングの間のカラムとロウ・ファイバ間の光共役(カップリング)効率は、共役(カップリング)長さの機能である、と同様に、カプラは、いかに深くカラムファイバのレーザ波のエバネセント場を遮ることができるかである。提案されたシステムの全体の光送信効率は、直接の送信アーキテクチャを持っているOLEDディスプレイの効率より低くなるであろう。しかしながら、これはレーザダイオードのより高い光生成効率の光量の桁によってより以上に埋め合わされる。色イメージを生成するために光を奪う偏光子(polarizers)およびカラーフィルタを使用するLCDディスプレイと比較すると、光の生成も光送信効率も両方ともはるかに高い。偏光子(polarizers)を使用すると、光のエネルギーの半分が除外され、各カラーフィルタではおよそ2/3またはそれ以上の光スペクトルが除外され、LCDディスプレイの全体の光送信効率を16%未満にまで減少させる。
【0144】
本発明は大きなディスプレイ装置に対応する技術を対象としているが、この技術は多くの場合、小さな修正により同様に小規模なディスプレイ装置の構築のために利用することができる点で評価される。本発明はレーザダイオード以外の光源を使用したディスプレイ装置について明確には対象としていないが、そのような装置の構築にも低効率ではあるが本発明の技術を応用することも可能である。また、同様に上記に開示した光スイッチング技術の発明は多重ノードの高速光ファイバネットワークの時間分割による多重通信にも応用することもまた可能である。
【0145】
以上詳述した本発明の方法と装置の詳細な説明は特定の典型的な実施例についてなされたものである。本発明のより広い精神および範囲から外れることなく様々な変更および拡張ができることは自明である。現在の明細書および図は発明の原理を解明するものであり、基本的にこれを限定するものではない。さらに、如何なる方法でも上記の記載によって限定されるものではなく、それに代えて、以下のクレームを参照することにより全体が確定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明に従って構成されたレーザダイオードファイバ光ディスプレイである。
【図2】図2は、カラムファイバのすぐ外側のエバネセントレーザ波場の横断面図である。
【図3】図3は、カラムファイバに沿って進行するコヒーレントレーザ光のエバネセント波場内に、同じ又は類似の屈折率のサブストレートが置かれたときの光強度を図示している。
【図4】図4は、光ファイバのエバネセント減衰長の数倍以上でサブストレートがカラムファイバから離されたときのレーザ光の強度分布を表している。
【図5】図5は、視聴者へ向かうレーザ光を分散するためのロウファイバ上のランダム格子の使用を説明する図である。
【図6】図6は、ロウ・アドレッシングによってロウを実行するロウファイバの使用を説明する概略図である。
【図7】図7は、カラムファイバから正面にランダム格子が刻まれたロウファイバへのレーザ光の出力先変更を図示している。
【図8】図8は、ロウファイバをカラムファイバに向かって又は離して移動させるために圧電変換器および弾性光カプラを用いた本発明の概念の可能な実施形態を表している。
【図9】図9は、図8で表された実施形態の断面図である。
【図10】図10は、光カプラとして透明液滴を備えたカラム方向の中空管を使用する本発明の他の実施形態を表している。
【図11】図11は、結合液滴のポンプ機構と同時に他の実施形態の透明チューブの軸方向または長手方向の断面を図示している。
【図12】図12は、ポンプ機構のインクジェット・ヘッドによる液滴の注入開始を表している。
【図13】図13は、発明装置のディスプレイ画面の上方に入ろうとしている液滴の断面図である。
【図14】図14は、本発明のさらに別の実施形態を図示している。この実施形態は電気流体力学の原理に基づいている。
【図15】図15は、図14の代わりとなる実施形態の別の図である。
【図16】図16は、カソードチップに加えられた電圧の影響下で、荷電流体が一形態から他形態へ切替わるプロセスを表している。
【図17】図17は、図14の代わりとなる実施形態における光結合構造であるカラムファイバの軸方向の断面を図示している。
【図18】図18は、図17で表された実施形態における特定のロウの切替え順序を図示している。
【図19】図19は、図17で描写された実施形態の他の図を表している。
【図20】図20は、イオン化された導電性流体の動電力をレーザ光スイッチとして活用するもう一つの実施例を図示している。
【図21】図21は、熱光学回折格子の実施例を図示している。
【図22】図22は、エレクトレット駆動光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図23】図23は、エレクトレット駆動光学回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図24】図24は、形状記憶合金駆動の光カプラを利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図25】図25は、先行技術における圧電バイモルフの構造を図示している。
【図26】図26は、圧電バイモルフ駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図27】図27は、MEMSベースの光スイッチを図示したものである。
【図28】図28は、MEMS駆動のブラッグ回折格子を利用した光スイッチアクティブアドレッシングの一例を図示している。
【図29】図29は、ランダム拡散格子を用いた表面弾性波ベースのアドレッシングの一例を図示している。
【図30】図30は、SAW中継器の概略図を例示している。
【図31】図31は、図30で図示されたすだれ状電極群を図示している。
【図32】図32は、三叉すだれ状アクチュエータを利用した別の実施例を図示している。
【図33】図33は、屈曲波駆動用多層バイモルフの構造を図示している。
【図34】図34は、シース付きカラムファイバの一例の断面を図示している。
【図35】図35は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収用黒色後背材を付加していることを図示した断面図である。
【図36】図36は、光ファイバディスプレイ機器に光吸収素材の黒色マトリックスを更に付加していることを図示した断面図である。
【図37】図37は、黒色マトリックスディスプレイ機器の中にある各カラーピクセルに別個の多層誘電光学フィルタを付加していることを図示した断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明のディスプレイ装置は、カラム(列)に配置された遠隔端のある非接触光ファイバのカラムファイバであって、それぞれの光ファイバの一端が少なくとも1つのレーザダイオードによって発光する第一層と、ロウ(行)に配置されロウファイバとなる光ファイバで実質的に前記第一層と並行に設置される第二層と、第一層と第二層の間に入る光スイッチ素子となる第三層とからなる。
【請求項2】
前記装置のそれぞれの該スイッチング素子が、該第一層の光ファイバと該第二層の光ファイバと同時に光学的に共役(カップリング)する前記請求項1の装置。
【請求項3】
前記装置のそれぞれのレーザダイオードが、少なくとも1つの単一波長で2以上の単一波長色の狭帯域光波を発生することができる請求項1の装置。
【請求項4】
前記装置の第二層のそれぞれの該ファイバの近接面が、特定の狭パス帯域光フィルタの複数の波長に結合する請求項3の装置。
【請求項5】
前記装置のそれぞれの該狭パス帯域光フィルタが、レーザ光の送信をする少なくとも一つで、前述の光フィルタのパス・バンドではない波長で吸収するもので、誘電性の多層光フィルタである請求項4の装置。
【請求項6】
前記装置の該ファイバのそれぞれのファイバが、光ファイバシースと同軸でない光ファイバ軸からなる請求項1の装置
【請求項7】
前記装置のそれぞれの該光ファイバの軸が、軸の境界部分が実質的に光ファイバや近接するシースによって被覆されていない請求項6の装置。
【請求項8】
前記光学スイッチング素子は、スイッチ素子が駆動されると第一層のカラムファイバのレーザ波場を遮ることができる請求項2の装置。
【請求項9】
前記装置は、さらに周辺光(アンビアント・ライト)を吸収する第四の層とからなる請求項1の装置。
【請求項10】
前記装置は、ディスプレイとなる請求項1の装置。
【請求項11】
前記装置は、さらにピクセル間のクロストークを締め出す光吸収素材としての周辺光吸収マトリックスとからなる請求項1の装置。
【請求項12】
前記装置は、第二層のそれぞれのファイバの近接面に、ロウファイバからレーザ光が拡散するように拡散器が装備されている請求項1の装置。
【請求項13】
前記装置は、拡散器のそれぞれ少なくとも一つにランダムの二次元のブラッグ回折格子が該ロウファイバの近接面に削設されており、またランダムに該ロウファイバのそれぞれのファイバの近接面に二次元の波形の面がエッチングされた請求項12の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記第三層が前記第二層に光学上にまた機械的に連結(カップル)される請求項1の装置。
【請求項15】
前記装置は、該光スイッチング素子が透明な流体と一致した屈折率からなる請求項2の装置。
【請求項16】
前記装置は、透明な流体と一致した該屈折率が、静電気の力、エアー・コンプレッサーおよび電動機械アクチュエータ、圧電気のバルク弾性波アクチュエータ、の少なくとも一つにより駆動される請求項15の装置。
【請求項17】
前記装置は、該電動機械アクチュエータが、圧電気のバイモルフ・アクチュエータ、エレクトレット・アクチュエータ、MEMSアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、熱機械駆動アクチュエータ、圧電気のSAWアクチュエータ、圧電気のバルク弾性波アクチュエータ、圧電気のバイモルフの屈曲の音波アクチュエータのうちの一つからなる請求項16の装置。
【請求項18】
前記装置は、該圧電SAWアクチュエータが、すだれ状電極駆動、SAWリピーター、複数のすだれ状変電極換器のうちの一つからなる請求項17の装置。
【請求項19】
前記装置は、該圧電バルク弾性波アクチュエータが、すだれ状電極駆動、バルク弾性波リピーター、複数のすだれ状電極変換器のうちの一つからなる請求項17の装置。
【請求項20】
前記装置は、該圧電屈曲音波アクチュエータが、すだれ状電極駆動、バルク弾性波リピーター、複数のすだれ状電極変換器のうちの一つである請求項17の装置。
【請求項1】
本発明のディスプレイ装置は、カラム(列)に配置された遠隔端のある非接触光ファイバのカラムファイバであって、それぞれの光ファイバの一端が少なくとも1つのレーザダイオードによって発光する第一層と、ロウ(行)に配置されロウファイバとなる光ファイバで実質的に前記第一層と並行に設置される第二層と、第一層と第二層の間に入る光スイッチ素子となる第三層とからなる。
【請求項2】
前記装置のそれぞれの該スイッチング素子が、該第一層の光ファイバと該第二層の光ファイバと同時に光学的に共役(カップリング)する前記請求項1の装置。
【請求項3】
前記装置のそれぞれのレーザダイオードが、少なくとも1つの単一波長で2以上の単一波長色の狭帯域光波を発生することができる請求項1の装置。
【請求項4】
前記装置の第二層のそれぞれの該ファイバの近接面が、特定の狭パス帯域光フィルタの複数の波長に結合する請求項3の装置。
【請求項5】
前記装置のそれぞれの該狭パス帯域光フィルタが、レーザ光の送信をする少なくとも一つで、前述の光フィルタのパス・バンドではない波長で吸収するもので、誘電性の多層光フィルタである請求項4の装置。
【請求項6】
前記装置の該ファイバのそれぞれのファイバが、光ファイバシースと同軸でない光ファイバ軸からなる請求項1の装置
【請求項7】
前記装置のそれぞれの該光ファイバの軸が、軸の境界部分が実質的に光ファイバや近接するシースによって被覆されていない請求項6の装置。
【請求項8】
前記光学スイッチング素子は、スイッチ素子が駆動されると第一層のカラムファイバのレーザ波場を遮ることができる請求項2の装置。
【請求項9】
前記装置は、さらに周辺光(アンビアント・ライト)を吸収する第四の層とからなる請求項1の装置。
【請求項10】
前記装置は、ディスプレイとなる請求項1の装置。
【請求項11】
前記装置は、さらにピクセル間のクロストークを締め出す光吸収素材としての周辺光吸収マトリックスとからなる請求項1の装置。
【請求項12】
前記装置は、第二層のそれぞれのファイバの近接面に、ロウファイバからレーザ光が拡散するように拡散器が装備されている請求項1の装置。
【請求項13】
前記装置は、拡散器のそれぞれ少なくとも一つにランダムの二次元のブラッグ回折格子が該ロウファイバの近接面に削設されており、またランダムに該ロウファイバのそれぞれのファイバの近接面に二次元の波形の面がエッチングされた請求項12の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記第三層が前記第二層に光学上にまた機械的に連結(カップル)される請求項1の装置。
【請求項15】
前記装置は、該光スイッチング素子が透明な流体と一致した屈折率からなる請求項2の装置。
【請求項16】
前記装置は、透明な流体と一致した該屈折率が、静電気の力、エアー・コンプレッサーおよび電動機械アクチュエータ、圧電気のバルク弾性波アクチュエータ、の少なくとも一つにより駆動される請求項15の装置。
【請求項17】
前記装置は、該電動機械アクチュエータが、圧電気のバイモルフ・アクチュエータ、エレクトレット・アクチュエータ、MEMSアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、熱機械駆動アクチュエータ、圧電気のSAWアクチュエータ、圧電気のバルク弾性波アクチュエータ、圧電気のバイモルフの屈曲の音波アクチュエータのうちの一つからなる請求項16の装置。
【請求項18】
前記装置は、該圧電SAWアクチュエータが、すだれ状電極駆動、SAWリピーター、複数のすだれ状変電極換器のうちの一つからなる請求項17の装置。
【請求項19】
前記装置は、該圧電バルク弾性波アクチュエータが、すだれ状電極駆動、バルク弾性波リピーター、複数のすだれ状電極変換器のうちの一つからなる請求項17の装置。
【請求項20】
前記装置は、該圧電屈曲音波アクチュエータが、すだれ状電極駆動、バルク弾性波リピーター、複数のすだれ状電極変換器のうちの一つである請求項17の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2009−505158(P2009−505158A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527043(P2008−527043)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/031738
【国際公開番号】WO2007/022132
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508045158)ジェネラル ディスプレイ,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/031738
【国際公開番号】WO2007/022132
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508045158)ジェネラル ディスプレイ,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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