説明

光モジュール

【課題】簡便な構造かつ低コストで面受発光素子と光伝送路間の光結合効率の向上を実現する手段を提供することにある。
【解決手段】光導波路層3及び電気配線11を有する基板1と、光素子2を、フレネルレンズ形状を有するレンズ4を介して接続する。レンズ4には貫通ビア41が施され、この貫通ビア41を介して基板1の電気配線11と光素子2を電気的に接続する。レンズ4に代えて、光素子搭載基板内にレンズを積載したものであっても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送路を用いて基板内、基板間、装置間等の信号伝送を行う光配線装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高速伝送線路は、1)広帯域である、2)電磁波ノイズ耐性に優れる、3)配線の容積が小さくかつ軽量になる、などの理由から、電気配線に代わり光配線装置を適用する動きが広まりつつある。光配線装置において、最も重要な因子の一つとして、半導体レーザやフォトダイオードなどの光素子と、光ファイバや光導波路などの光伝送路との光結合構造が挙げられる。
【0003】
高い光結合効率を得るために、光素子と光伝送路の位置合わせには、マルチモード伝送の場合でも数十μm、シングルモード伝送の場合には数μmの搭載精度が要求される。また、温度サイクルや高温高湿などの信頼性試験を施した後も、位置ずれや剥離を起こしてはならない。一方で、光配線は電気配線代替という観点から低価格で行えることが大前提で、そのためには材料原価や組み立て工数をできる限り低く抑えなければならない。
【0004】
このような高い光結合効率を実現する光結合構造として、レンズの集光効率を利用して光結合効率を高める光素子接合構造が挙げられる。
【0005】
この光素子接合構造の例として、特開2008−41770号公報(特許文献1)記載の技術が挙げられる。この技術では、面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)や面入射型フォトダイオードなどの面発光素子を透明基板にフリップボンディングにより実装し、透明基板下部にレンズを配置することで、面受発光素子と基板の下方にある光伝送路間を、レンズを介して光結合する構造が記載されている。
【0006】
特開2001−166167号公報(特許文献2)には、コア層とクラッド層からなるレンズを形成しておき、このレンズを介して光伝送を担うコア層とを光結合できる位置に面受発光素子を搭載した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−41770号公報
【特許文献2】特開2001−166167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の技術では、集光効果の高効率化、またはコストの点で問題が生じていた。例えば、特許文献1の構造では、面受発光素子として面発光レーザを考えた場合、面発光レーザから出射した光は広がりを持って伝播していく。この広がった光をレンズで集光して光伝送路に入射させることにより結合効率の向上を図っているため、面発光レーザとレンズ間の距離は近いことが望ましい。なぜならば、面発光レーザとレンズの距離は近いほど面発光レーザから出射した光の広がりは小さいため、レンズに要求される集光効果は小さくて済むためである。
【0009】
しかしながら、特許文献1の構造は透明基板の表面に面受発光素子を搭載し、裏面にレンズを搭載した構造となっている。このため、面受発光素子とレンズ間の距離は透明基板の厚さ分だけ長くなることになる。これにより、特許文献1の構造では高い集光効果を持つレンズが必要となる。
【0010】
一般に、高い集光効果を持つレンズはその厚さが大きくなる。一方で、光配線装置には小型かつ可撓性が求められているため、レンズの厚さの増加は望ましくなく、実用上の上限が存在する。そのため、集光効果にも上限が存在することとなり結果として光結合効率の低下を招く虞がある。
【0011】
また、特許文献2の構造では、光伝送基板を作製するフォト工程においてレンズを同時に作製する。このため、光配線の低コストが困難である虞がある。また、このレンズを介して光伝送を担うコア層とを光結合できる位置に面受発光素子が搭載される構造のため、レンズ厚さは面受発光素子のバンプ高さ以上にすることが不可能である。そのため、レンズ集光効果を向上させることが困難な構造である。
【0012】
本発明は、上記欠点を鑑みてなされたものであり、簡便な構造かつ低コストで面受発光素子と光伝送路間の光結合効率の向上を実現する手段を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0015】
本発明の代表的な実施の形態に関わる光モジュールは、光を発光または受光する光素子と、光伝送路を備えた基板と、を含む光モジュールであって、光素子は、レンズを介して基板に接合され、光素子からの出射光または光素子への入射光がレンズを介して光伝送路と光学的に結合され、光素子は、レンズ表面に形成された電気配線を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に関わる別の光モジュールは、光を発光または受光する光素子と、光伝送路を備えた基板と、を含み、光素子はレンズを介して基板に接合され、この光素子からの出射光または光素子への入射光がレンズを介して光伝送路と光学的に結合され、光素子と基板は、レンズに形成された貫通ビアを通して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
これらの光モジュールにおいて、レンズがフレネルレンズであることを特徴としても良い。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態に関わる別の光モジュールは、光を発光または受光する光素子と、光素子を搭載する光素子搭載基板と、光伝送路を備えた基板と、を含む光モジュールであって、光素子は光素子搭載基板を介して基板に接合され、光素子搭載基板には、光素子からの出射光または光素子への入射光の光路に該当する箇所に空孔を有し、空孔には通信波長において透明な樹脂からなる樹脂レンズが形成され、光素子からの出射光または光素子への入射光は、樹脂レンズを介して、光伝送路と光学的に結合され、光素子は、光素子搭載基板表面に形成された電気配線を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この光モジュールにおいて、樹脂レンズが、フレネルレンズ形状をしていることを特徴とする。
【0020】
本発明の代表的な実施の形態に関わる別の光モジュールは、光を発光または受光する光素子と、光素子と光学的に結合される光伝送路を備えた基板とを含み、基板上の光素子からの出射光または光素子への入射光の光路に該当する箇所に通信波長において透明な樹脂からなる樹脂レンズが形成され、光素子からの出射光または光素子への入射光は、樹脂レンズを介して光伝送路と光学的に結合されていることを特徴とする。
【0021】
この光モジュールにおいて、樹脂レンズが、フレネルレンズ形状をしていることを特徴としても良い。
【0022】
本発明の代表的な実施の形態に関わる別の光モジュールは、光を発光または受光する光素子と、光伝送路を備えた基板と、を含み、光素子からの出射光または光素子への入射光の光路に該当する基板上の箇所が、フレネルレンズ形状を有し、光素子からの出射光または光素子への入射光は、樹脂レンズを介して、光伝送路と光学的に結合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0024】
本発明の代表的な実施の形態に関わる光モジュールによって、低コストかつ簡便なプロセスによって、高い光結合効率を実現する光配線装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に関する光素子と基板の接合構造の図面である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に関する接合プロセスを説明する図面である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に関する別の光素子と基板の接合構造の図面である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の別の実施態様に関わる光素子と基板の接合構造を表す断面図である。
【図5】図4の実施態様に関わる光素子と基板の接合プロセスを説明する図面である。
【図6】図4の実施態様に関わる光素子と基板の接合構造の構成例を説明する図面である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における光素子と基板の接合構造を表す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に関わる光素子と基板の接合プロセスを説明する図面である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に関わる光素子と基板の接合構造の構成例を説明する図面である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に関する光素子接合構造を用いた光配線装置を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に関する光素子と基板の接合構造の図面である。図2は本発明の第1の実施の形態に関する接合プロセスを説明する図面である。図3は本発明の第1の実施の形態に関する別の光素子と基板の接合構造の図面である。
【0028】
なお、図1から図3において、基板の上面と下面は同一断面でなく展開段面図であることは、いうまでもない。これは以下の実施の形態でも同様である。
【0029】
まず、図1を用いて第1の実施の形態における光素子の接合構造の説明を行う。
図1において、基板1の表面には電気配線11が形成されている。本実施の形態では、基板1はポリイミド膜からなるフレキシブル基板を用いている。電気配線11の部材は、ここでは圧延Cu12μmを主体とし、その表面にNi2〜5μmとAu0.05μmをめっきした構造となっている。
【0030】
電気配線材料に関しては、他の材料でもかまわないが、条件として求められるものは、電気抵抗が小さいこと、安価であること、加工し易いこと、などの電気配線として一般的に要求される事項を満たしていることが望ましい。
【0031】
なお、電気配線11の表面Auめっき厚は接合方法に依存する。本実施の形態では、レンズ4を介して、光素子2と基板1を接合した構造としている。このとき、光素子2とレンズ4、及び基板1とレンズ4は、レンズ4上に形成された接合材5により接合している。
【0032】
本実施の形態では、接合材5としてレンズ4上にあらかじめ形成された蒸着はんだを用いている。はんだにより接合を行った場合、接合後にはんだ材とAuの界面に金属間化合物が形成される。この金属間化合物は硬く、応力緩衝効果が弱いため、衝撃等に対する接合の信頼性を低下させる。また、Auが残存するとその後の高温放置により金属間化合物がさらに成長し、レンズ4の位置ずれが発生することが懸念される。そのため、Auめっき厚は0.05μmと薄くなっている。
【0033】
さらに、接合材5は蒸着はんだに限らず、導電性接着剤やはんだペーストなどの導電性を有する接合材であれば構わないことは言うまでも無い。
【0034】
レンズ4は蒸着はんだ36(接合材5とは別のもの。素材を変えるかは設計事項)で基板1の電気配線11に物理的及び電気的に接合されている。なお、本実施の形態では、レンズ4に予め蒸着はんだ36を形成することを想定しているが、これに拘らず、電気配線11上に蒸着はんだ36を形成していてもかまわない。このレンズ4と基板1との接合方法も蒸着はんだ接合に限らず、また接合方法に応じて電気配線11の厚さなどを変えてもよい。例えば超音波接合を用いる場合には、表面Auめっき厚を0.3μmとすることが望ましい。
【0035】
本実施の形態では、レンズ4としてフレネルレンズを用いている。フレネルレンズを用いることで、同じ集光効果であれば通常の凸レンズに比べ、レンズ厚さを薄くすることができるためである。従って、レンズ厚の薄型化に伴い、光素子2と光導波路コア31の距離を短くすることが可能となる。これにより、光結合効率の向上につながる。
【0036】
図1におけるレンズ4は樹脂などで形成された一体のレンズモジュールを想定する。このレンズ4には光学的に屈折させる屈折部とそれ以外の物理接続部を有する。
【0037】
レンズ4には基板1と光素子2を電気的に接続するために、Cuからなる貫通ビア41が設けられている。この貫通ビア41はレンズ4の物理接続部に設けられ、レンズ4の光素子2と対向する面及び基板と対応する面に設けられた電極パッド(図示せず)を電気配線により電気的に接続しており、光学的に影響を与えないように設けられている。基板1上の電気配線11からの電気信号は、この貫通ビア41を介して光素子2に伝えられる。光素子2が発光素子の場合、光素子2は、光素子2に伝えられた電気信号に対応した光を出射することにより、電気振動を光信号に変換することになる。
【0038】
光素子2が受光素子の場合を考える。光素子2で受光された光信号は、光素子2により、その光信号に対応した電気信号に変換される。変換された電気信号は、貫通ビア41を介して、基板1上の電気配線11に伝えられることとなる。
【0039】
なお、貫通ビア41の材質は、Cuに拘らない。導電性を有していれば、貫通ビア41の材質は不問であることはいうまでも無い。
【0040】
基板1の裏面には、樹脂を用いた光導波路コア31及び光導波路クラッド32からなる光導波路層3が形成されている。光導波路層3の光路部分(光素子2の発光点または受光点直下部分)には、光導波路層3をハーフダイシングすることにより形成された45°ミラー33が形成されている。
【0041】
光素子2が発光素子の場合を考える。光導波路コア31内を図の右から左に伝播してきた光は、45°ミラー33により図面上方向に反射される。この反射された光がレンズ4により光素子2に集光されることとなる。
【0042】
以下、本実施の形態では、光素子2として面発光レーザ(VCSEL)を例にとり、本接合構造の接合プロセスについて、図2を用いて説明する。
【0043】
まず、図2(a)で光素子2とレンズ4の位置を、光素子2の発光点とレンズ4の中心の水平方向位置が一致するように合わせる。光素子2をレンズ4上へフリップチップボンディングにより接合する。なお、本実施の形態では、個片化されたレンズ4上に光素子2を接合している。しかし、アレイ化したレンズ4上に、同様に光素子2を複数個接合させた後にアレイ化したレンズ4をダイシングにより個片化するという手順でもかまわない。
【0044】
次に、図2(b)で、レンズ4と基板1の位置を、レンズ4の中心と光導波路コア31端部の水平位置が一致するように合わせる。位置合わせ後、フリップチップボンディングにより、レンズ4と基板1を接合する。このような光素子2、レンズ4、光導波路コア31の位置関係により、光素子2から出射した光は、レンズ4により集光され光導波路コア31に入射されることとなる。本実施の形態では、光素子2としてInP系のVCSEL(熱膨張係数4.5ppm/K)を用いている。また基板1のポリイミド膜としてカプトン(熱膨張係数:20ppm/K)を用いている。両者の熱膨張差による応力を緩和するために、レンズ4は熱膨張係数4.5〜20ppm/Kの範囲の材質から形成されていることが望ましい。この際に、蒸着はんだ36を形成しても良い。
【0045】
次に、図2(c)で、アンダーフィル樹脂7を光素子2とレンズ4及びレンズ4と基板1の間隙に充填した後、アンダーフィル樹脂を熱硬化させる。アンダーフィル樹脂7を充填することにより、光素子2とレンズ4、及びレンズ4と基板1の接合強度の増加、並びに外部からの衝撃による応力を緩和することができる。アンダーフィル樹脂7の熱膨張係数は、レンズ4と同様に光素子2と基板1との熱膨張差による応力緩和のために基板1と光素子2の熱膨張係数の間であることが望ましい。また、アンダーフィル樹脂7の屈折率をn、レンズ4の屈折率をnとしたとき、n<nと成るようなアンダーフィル樹脂を用いることが望ましい。
【0046】
なお、基板1の材質は通信波長で透明なものであれば、ポリイミドに限らない。リジッドな基板であっても問題は無い。
【0047】
また、本実施の形態では、光素子2の接合方法としてはんだ接合を用いた。この場合、接合材5としてSn−1Ag−57Bi、In−3.5Agなどの光導波路層3を形成する材料の耐熱温度よりも低い融点のはんだをもちいることが望ましい。また、接合材導電性接着剤を接合材5として利用することも可能である。この場合も同様に、その熱硬化温度は光導波路層3を構成する材料の耐熱温度よりも低いことが望ましい。
【0048】
さらには、本実施の形態におけるレンズ4の構成はフレネルレンズに限定するものではない。図3のように各種の方法が存在する。図3(a)は、レンズ4としてGRIN(Graded Index)レンズを用いた例である。また、図3(b)は、レンズ4として凸レンズを用いた例である。図3(c)は、レンズ4として凹レンズを用いた例である。図3(d)はレンズ4として回折レンズを用いた例である。
【0049】
このように、レンズ4の構成については各種の実現手段がある。本発明の効果を奏することができれば本発明の射程に含まれる。
【0050】
つぎに、この実施の形態の別の実施態様について説明する。
【0051】
図4は、本発明の第1の実施の形態の別の実施態様に関わる光素子と基板の接合構造を表す断面図である。図5は、この実施態様に関わる光素子と基板の接合プロセスを説明する図面である。図6は、この実施態様に関わる光素子と基板の接合構造の構成例を説明する図面である。
【0052】
まず、図4を用いてこの実施態様に関わる光素子の接合構造について説明する。
【0053】
本実施態様では、光素子2が光素子搭載基板6を介して基板1に搭載されている点が図1と大きく異なる。
【0054】
光素子搭載基板6の表裏面には、光素子搭載基板6と光素子2、及び光素子搭載基板6と基板1が接合される箇所に予め蒸着はんだ36が形成されている。この蒸着はんだ36により光素子搭載基板6と基板1が物理的に接合される形になっている。
【0055】
光素子搭載基板6には光素子2からの出射光の光路に対応する位置に開口部が設けられている。この開口部には、樹脂レンズ45としてフレネルレンズ形状をした樹脂が形成されている。フレネルレンズ形状をした樹脂を用いることで、樹脂レンズ45の厚さを光素子搭載基板6とほぼ同じ厚さとすることができる。これにより、光素子2と光導波路コア31の距離を短くすることができる。結果として、光結合効率の向上が望める。
【0056】
また、光素子搭載基板6には、基板1と光素子2を電気的に接続するために、Cuからなる貫通ビア61が設けられている。基板1上の電気配線11上からの電気信号は、この貫通ビア61を介して、光素子2に伝えられる。光素子2は、光素子2に伝えられた電気信号に対応した光を出射することで、電気信号を光信号に変換する。
【0057】
図4における基板1もポリイミド膜を用いたカプトンである。また、光素子2も図1同様VCSELを用いる。
【0058】
基板1の裏面には、樹脂を用いた光導波路コア31及び光導波路クラッド32からなる光導波路層3が形成されている。光導波路層3の光路部分には45°ミラー33が形成されている。光素子2から出射した光ビームは樹脂レンズ45により集光されて45°ミラー33に入射する。45°ミラー33に入射された光ビームは45°ミラー33によって反射され光導波路コア31を伝播する。
【0059】
次に本接合構造の接合プロセスについて、図5を用いて説明する。
【0060】
まず、光素子搭載基板6の開口部に樹脂を充填させた後、該樹脂を熱硬化させる(図5(a))。この樹脂は、通信波長において透明な樹脂であることを要する。また、この樹脂は、通信波長の光の透過率が高い樹脂であることが望ましい。樹脂を熱硬化後、先端がフレネルレンズ形状となっているスタンピングツール8で樹脂を押し付ける。このようにしてフレネルレンズ形状の樹脂レンズ45が形成される。
【0061】
この樹脂レンズ45の形成工程の後、光素子2と樹脂レンズ45の位置関係を、光素子2の発光点と樹脂レンズ45の中心の水平方向位置とを一致させる(図5(b))。その後、光素子2と光素子搭載基板6とをフリップチップボンディングにより接合させる。なお、図2同様に個片化された光素子搭載基板6に光素子2を接合しているが、アレイ化した光素子搭載基板6上に同様に光素子2を複数個接合させ、その後アレイ化した光素子搭載基板6をダイシングにより個片化する手順でもかまわない。また、この際に、蒸着はんだ36を形成しても良い。
【0062】
その後、光素子搭載基板6と基板1の位置関係を、樹脂レンズ45の中心と光導波路コア31端部の水平位置が一致するように位置合わせを行う(図5(c))。この位置合わせ後、フリップチップボンディングによって光素子搭載基板6と基板1を接合する。このような光素子2、樹脂レンズ45、光導波路コア31の位置関係により、光素子2から出射した光は、樹脂レンズ45により集光され光導波路コア31に入射されることとなる。本実施態様では、光素子2としてInP系のVCSEL(熱膨張係数:4.5ppm/K)、基板1のポリイミド膜としてカプトン(熱膨張係数:20ppm/K)を用いている。両者の熱膨張差による応力を緩和するために、光素子搭載基板6は、熱膨張係数4.5〜20[ppm/K]の範囲の材質から形成されていることが望ましい。
【0063】
光素子搭載基板6と基板1との接合後、アンダーフィル樹脂7−2を光素子2、光素子搭載基板6及び基板1の間に充填する。また、光素子2周辺にアンダーフィル樹脂7を盛る(図5(d))。
【0064】
充填後、アンダーフィル樹脂7を熱硬化させる。アンダーフィル樹脂7を充填することにより、光素子2と光素子搭載基板6との間、及び基板1と光素子搭載基板6との間の接合強度の増加、並びに外部からの衝撃による応力を緩和することが可能となるのは先に挙げた図1等の実施態様と同じである。このとき、光素子搭載基板6同様に、光素子2と基板1の熱膨張差による応力を緩和するために、アンダーフィル樹脂7の熱膨張係数は基板1と光素子2の熱膨張係数の間であることが望ましい。また、アンダーフィル樹脂7−2の屈折率n、樹脂レンズ45の屈折率nとしたとき、n<nとなるようなアンダーフィル樹脂を用いることが望ましい。
【0065】
この際、アンダーフィル樹脂7、7−2の素材を違うものにすることも可能である。この際、7−2は光学特性を、7は物理特性を重視したものにすればよい。
【0066】
この実施態様でも図3同様、樹脂レンズ45の形態として各種レンズを採用することが考えられる。図6(a)は、樹脂レンズ45として凸レンズを用いたものであり、図6(b)は、樹脂レンズ45として回折レンズを用いたものである。
【0067】
このように光素子搭載基板6上にレンズ機能を有することでも、高い光結合効率を実現することが可能となる。
【0068】
また、図5(c)でも分かるとおり、光素子搭載基板6中に貫通ビアを通して、基板1上に設けられた電気配線11の設けられた面より上方に、樹脂レンズ45を設けることができる。これにより、配置の自由度が増すという効果も奏する。さらに加えて光素子搭載基板6をモジュール化することで、量産性・レンズの変更による改善の自由度を向上させることが可能となる。
【0069】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について、図7ないし図9を用いて説明する。
【0070】
図7は本発明の第2の実施の形態における光素子と基板の接合構造を表す断面図である。図8は、本発明の第2の実施の形態に関わる光素子と基板の接合プロセスを説明する図面である。図9は、本発明の第2の実施の形態に関わる光素子と基板の接合構造の構成例を説明する図面である。
【0071】
なお、本実施の形態でも、基板1はポリイミド膜を用いたカプトン、光素子2はVCSELを用いて説明を行うこととする。
【0072】
本実施の形態では、光素子2が直接基板1に接合されている。そして基板1と光素子2との間にフレネルレンズ形状の樹脂レンズ45が配置されている。
【0073】
基板1上には、光素子2からの出射光の光路に対応する位置に、樹脂レンズ45としてフレネルレンズ形状をした樹脂が形成されている。一般に、光素子2と基板1の間隙の距離は数十μmと非常に短い。そのため、通常の凸レンズ形状をしたレンズではこの隙間内に納めることが困難である。また、仮に収めることができたとしても、そのレンズは十分な集光効果を有さない。
【0074】
しかしながらフレネルレンズ形状の樹脂レンズ45であれば、光素子2と基板1との間に収納できる。また、フレネルレンズ形状とすることで、樹脂レンズ45は数十μmの厚さでも十分な集光効果が得られる。結果、光結合効率の向上を図ることが可能となる。
【0075】
このように、本実施の形態では、基板1上の電気配線11からの電気信号は、光素子2に直接伝えられる。伝えられた電気信号に対応した光を出射することで、光素子2は電気信号を光信号に変換する。
【0076】
基板1の裏面には光導波路層3が形成されている。この光導波路層3は、樹脂を用いた光導波路コア31及び光導波路クラッド32から構成される。
【0077】
この光導波路層3の光路部分には、45°ミラー33が形成されている。光素子2から出射した光ビームは樹脂レンズ45により集光され45°ミラー33に入射する。45°ミラー33に入射した光ビームは45°ミラー33によって反射され光導波路コア31に導かれる。
【0078】
次に本実施の形態の接合構造の接合プロセスについて、図8を用いて説明する。
【0079】
まず、図8(a)及び(b)で、光素子2から出射する光の光路に該当する基板1上に樹脂をポッティングした後、熱硬化させる。この樹脂は、通信波長において透明な樹脂であることが必須である。また、この樹脂は通信波長の光の透過率が高い樹脂であることが望ましい。
【0080】
樹脂を熱硬化後、先端がフレネルレンズ形状となっているスタンピングツール8で樹脂を押し付ける。これにより、樹脂をフレネルレンズ形状とし、樹脂レンズ45を形成する。
【0081】
次に、図8(c)で、光素子2と基板1の位置関係を、光素子2の発光点と光導波路コア31端部の水平位置が一致するように位置を合わせる。位置合わせ後、フリップチップボンディングにより光素子2と基板1を接合する。
【0082】
このような光素子2、樹脂レンズ45、光導波路コア31の位置関係により、光素子2から出射した光は、樹脂レンズ45により集光され光導波路コア31に入射されることとなる。
【0083】
次に、図8(d)で、アンダーフィル樹脂7−2を光素子2と基板1との間隙に充填し(図8(d))、また、光素子2周辺にアンダーフィル樹脂7を盛る(図8(d))。その後アンダーフィル樹脂7、7−2を熱硬化させる。アンダーフィル樹脂7、7−2を充填することにより、光素子2と基板1の接合強度の増加、並びに、外部からの衝撃による応力を緩和することができる。
【0084】
アンダーフィル樹脂7の熱膨張係数は光素子搭載基板6と同様に光素子2と基板1の熱膨張係数の差による応力を緩和するために、基板1と光素子2の熱膨張係数の間であることが望ましい。
【0085】
また、アンダーフィル樹脂7−2の屈折率をn、樹脂レンズ45 の屈折率をnとしたとき、n<nと成るようなアンダーフィル樹脂を用いることが望ましい。
【0086】
この際、アンダーフィル樹脂7、7−2の素材を違うものにすることも可能である。この際、7−2は光学特性を、7は物理特性を重視したものにすればよい。
【0087】
なお、本実施の形態における樹脂レンズ45の構成は、図7のフレネルレンズには限らない。図9に示すように、光素子2からの出射光の光路に対応する位置に当たる基板1を削る(変形する)ようにして、フレネルレンズ状にして設けてもかまわない。
【0088】
(第3の実施の形態)
次に、本実施の形態に関わる光素子の接合構造を用いた光配線装置の例について図10を用いて説明する。図10は本発明の第3の実施の形態に関する光素子接合構造を用いた光配線装置を説明するための概念図である。
【0089】
この図では、基板1の上面の電気配線11にVCSEL(面発光レーザ)80とVCSEL(面発光レーザ)80を駆動するドライバIC90、フォトダイオード(PD)85とPD85からの微少信号を低ノイズで増幅するプリアンプIC95がフリップチップ搭載されている。
【0090】
VCSEL80、PD85と基板1との間隙の光路に当たる部分には、フィラー非含有アンダーフィル樹脂71が充填されている。ドライバIC90及びプリアンプIC95も同様にアンダーフィル樹脂72が充填されている。
【0091】
基板1の下面には、光導波路層3を設けている。VCSEL80の発光点直下及びPD85の受光面直下には光導波路層3をダイシングにより45度にカットした45°ミラー33が形成されている。これにより、電気信号が入力されたドライバIC90はVCSEL80のレーザ光を変調し光信号を発生する。VCSEL80からの光信号は、VCSEL80下部の45°ミラー33により光導波路コア31に結合され、光導波路コア31中を伝播する。さらに、伝播した光信号はPD85に対応した45°ミラー33で反射され、PD85で受光される。PD85は受光した光信号を電気信号に変換し、プリアンプIC95で増幅される。
【0092】
このように各部品を配置すること、および、基板1と光導波路層3が可撓性を有することで、二つ折型の携帯電話などの屈曲性を要求される箇所の信号配線として利用することが可能となる。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、例えば、可動部を通して光通信を行う折りたたみ型携帯電話機のように、機器内の近接通信でマルチモード伝送によって通信を行う携帯情報端末を想定する。しかしこれには限定されず、可動部分を持たない携帯情報端末、携帯性の無い機器などに適用することも本発明の射程に含まれる。
【0095】
具体的には、光通信モジュール、光記録モジュール、高速スイッチング装置(ルータ、サーバなど)、ストレージ装置、自動車等が考えられる。
【符号の説明】
【0096】
1…基板、11…電気配線、
2…光素子、21…光素子電極、22…導体バンプ、3…光導波路層、
31…光導波路コア、32…光導波路クラッド、
33…45°ミラー、36…蒸着はんだ、4…レンズ、45…樹脂レンズ、
41、61…貫通ビア、
5…接合材、6…光素子搭載基板、7、71、72…アンダーフィル樹脂、
8…スタンピングツール、80…面発光レーザ(VCSEL)、
85…フォトダイオード(PD)、90…ドライバIC、95…プリアンプIC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光または受光する光素子と、
光伝送路と電気配線を備えた基板と、
を含む光モジュールであって、
前記光素子は、レンズを介して前記基板に接合され、
前記光素子は前記レンズを介して前記光伝送路と光学的に結合され、
前記光素子と前記基板の電気配線とは、前記レンズを介して電気的に接続されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記光素子と前記基板は、前記レンズに形成された貫通ビアを通して電気的に接続されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光モジュールにおいて、
前記レンズは、前記光素子と対向する面と、前記基板と対応する面とに、それぞれ電極パッドを備えており、
前記光素子側の面の電極パッドは前記光素子に接続され、前記基板側の面の電極パッドは前記基板の電気配線に接続されることを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光モジュールにおいて、前記レンズがフレネルレンズであることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
光を発光または受光する光素子と、
前記光素子を搭載する第1の基板と、
光伝送路を備えた第2の基板と、
を含む光モジュールであって、
前記光素子は前記第1の基板を介して前記第2の基板に接合され、
前記第1の基板には、前記光素子からの出射光または前記光素子への入射光の光路に該当する箇所に空孔を有し、
前記空孔には通信波長において透明な樹脂からなる樹脂レンズが形成され、
前記光素子は、前記樹脂レンズを介して、前記光伝送路と光学的に結合され、
前記光素子と前記第2の基板の電気配線とは、前記第1の基板表面を介して電気的に接続されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光モジュールにおいて、
前記樹脂レンズが、フレネルレンズ形状をしていることを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
光を発光または受光する光素子と、
前記光素子を搭載し、前記光素子と光学的に結合される光伝送路を備えた基板とを含む光モジュールであって、
前記基板上の前記光素子からの出射光または前記光素子への入射光の光路に該当する箇所に通信波長において透明な樹脂からなる樹脂レンズが形成され、
前記光素子は、前記樹脂レンズを介して光伝送路と光学的に結合されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の光モジュールにおいて、
前記樹脂レンズが、フレネルレンズ形状をしていることを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
光を発光または受光する光素子と、光伝送路を備えた基板と、を含む光モジュールであって、
前記光素子からの出射光または前記光素子への入射光の光路に該当する前記基板上の箇所が、フレネルレンズ形状を有し、
前記光素子からの出射光または前記光素子への入射光は、前記フレネルレンズ形状の箇所を介して、光伝送路へ入射または出射することを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−81071(P2011−81071A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231385(P2009−231385)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】