説明

光モジュール

【課題】セラミックパッケージに金属製のリッドをシーム溶接で接合した際に、セラミックパッケージにクラックが生じる虞のない光モジュールを提供する。
【解決手段】光素子21,22が搭載されたセラミックパッケージ11、該セラミックパッケージの開口を覆う金属製のリッド12、該リッドにジョイントスリーブを介して連結された光ファイバ接続のためのスリーブを備えた光モジュールであって、リッド12は、セラミックパッケージに接合される平坦部17とジョイントスリーブが嵌合される円筒部18とからなり、平坦部17と円筒部18との間に応力緩和部19が形成されている。なお、応力緩和部18は、平坦部17の面方向の荷重に対して変形しやすい形状であり、例えば、断面形状がU字状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられるセラミックパッケージ型の光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光送信モジュールあるいは光受信モジュール、若しくは光送受信モジュール(以下、光モジュールという)は、発光素子(レーザダイオード:LD)や受光素子(フォトダイオード:PD)等の光素子が搭載されたパッケージに、光ファイバを光学的に結合するスリーブを連結して構成される。光通信のための信号光は、パッケージ内のレンズにより集光され、パッケージの光学窓を通して光ファイバに光結合される。
【0003】
上記のパッケージとして、例えば、特許文献1に開示されるように、より小さくて安価なセラミックパッケージが知られている。このセラミックパッケージは、例えば、矩形状の下部セラミック層の上に、矩形枠状の複数の中間セラミック層を順次積層し、最上端の上部セラミック層に金属製のシールリングを配した積層構造で形成されている。そして、レンズが取り付けられた金属製のリッドの平坦部を、上記のシールリングにシーム溶接で接合し、リッドの円筒部にジョイントスリーブを介して光ファイバ接続のためのスリーブを取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に開示のように、セラミックパッケージの金属製のシールリングに金属製のリッドの平坦部をシーム溶接することにより、セラミックパッケージ内を気密封止することができる。このシーム溶接では、ローラ電極を介してシールリングとリッドの平坦部間に電流を流し、これにより生じるジュール熱で、シールリングおよびリッドに施したメッキが溶解してロウ材が形成され、セラミックパッケージにリッドが接合される。
【0006】
メッキが、例えば、ニッケルおよび金であるような場合、その材料単体もしくはその合金の融点は1000℃と非常に高温であり、高温状態でセラミックパッケージにリッドが接合された後、常温環境まで冷却される。このため、セラミックパッケージと金属製のリッドによる線膨張係数の差による残留応力が生じる。また、ローラ電極とリッドとの接触状態によっては、より高いジュール熱が発生し、さらに大きい残留応力が生じる虞がある。この残留応力により、セラミックパッケージにクラックが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、セラミックパッケージに金属製のリッドをシーム溶接で接合した際に、セラミックパッケージにクラックが生じる虞のない光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光モジュールは、光素子が搭載されたセラミックパッケージ、該セラミックパッケージの開口を覆う金属製のリッド、該リッドにジョイントスリーブを介して連結された光ファイバ接続のためのスリーブを備えた光モジュールであって、リッドは、セラミックパッケージに接合される平坦部とジョイントスリーブが嵌合される円筒部とからなり、平坦部と円筒部との間に応力緩和部が形成されていることを特徴とする。
なお、応力緩和部は、平坦部の面方向の荷重に対して変形しやすい形状であり、例えば、断面形状がU字状に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、線膨張係数の差により金属製のリッドからの荷重が、靭性の小さいセラミックパッケージに及ぶのを緩和することができ、セラミックパッケージにクラックが生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光モジュールの一例を説明する図である。
【図2】本発明によるセラミックパッケージとリッドとの接合状態を示す図である。
【図3】本発明によるリッドの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図により本発明の実施の形態を説明する。図において、10は光モジュール、11はセラミックパッケージ、11aは下部セラミック層、11bは中間セラミック層、11cは上部セラミック層、12は金属製のリッド、13はジョイントスリーブ、14はスリーブ、14aは挿入部、14bは支持部、15は金属製のシールリング、16はフレキシブル基板、17は平坦部、18は円筒部、18aは光学窓、19は応力緩和部、20はレンズ、21は発光素子、22は受光素子、23はキャリア、24は光学部品、25は封止材、26はローラ電極を示す。
【0012】
本発明による光モジュール10は、図1に示すように、セラミックパッケージ11の上面にパッケージ内を封止する金属製のリッド12を接合し、該リッド12にジョイントスリーブ13を介して、光ファイバが挿入接続されるスリーブ14を連結して構成される。リッド12は、上記のセラミックパッケージ11との接合のための矩形状の平坦部17と、ジョイントスリーブ13と嵌合される円筒部18とを有している。
【0013】
ジョイントスリーブ13は、リッド12の円筒部18に嵌合されて軸方向の位置調整により、光ファイバ端との光路長の調心を行ない、スリーブ14との当接面で軸方向と直交する方向の位置調整により、光ファイバ端との位置ずれに対する調心が行なわれる。ジョイントスリーブ13を介して、セラミックパッケージ11とスリーブ14間の調心が行なわれた後、それぞれの調整部分は接着剤あるいは溶接により固定される。なお、スリーブ14には、光ファイバ端に取付けられた光コネクタが嵌合接続される挿入孔14a、光トランシーバ等の送受信機器に保持固定する支持部14bなどが設けられている。
【0014】
セラミックパッケージ11は、アルミナ等のセラミック材から形成された積層材を複数積層して矩形の有底容器形状に形成され、その開口側に金属製のシールリング15を接合して、金属製のリッド12の平坦部17とシーム溶接が可能なようにされている。また、セラミックパッケージ11の底壁側には外部回路と接続のための導電パッド(図示省略)が形成されていて、フレキシブル基板16の導電パッドに半田材等により電気接続するように構成されている。なお、フレキシブル基板16の他端は、光トランシーバ等の送受信機器内の回路基板に電気接続される。
【0015】
セラミックパケージ11は、図2に示すように、例えば、底壁を形成する矩形平板状の下部セラミック層11aと、矩形枠形状の中間セラミック層11bと上部セラミック層11cを順次積層し、最上端に金属製のシールリング15を配した積層構造のものを用いることができる。下部セラミック層11aには、光素子等の電子部品への給電や回路接続のための配線路、導電パッド、スルホール(ビア)等が形成される。また、この下部セラミック層11aの壁面から放熱を必要とする場合は、下部セラミック層11aの一部を金属製の放熱板で形成することもある。
【0016】
中間セラミック層11bは、図では1層で示してあるが、パッケージ内に実装する部品の大きさや数に応じて、その積層数を増やして収納容積(高さ)を大きくすることができる。そして、一番上の上部セラミック層11cには、例えば、低熱膨張率のコバール等の金属からなる矩形環状のシールリング15が設けられる。このシールリング15は、金属製のリッド12を接合するためのもので、その表面には、NiメッキもしくはNi/Auメッキが施され、上部セラミック層11cの上面にメタライズ等で形成された金属層に、ロウ材等でロウ付けされる。
【0017】
セラミックパケージ11内には、レーザダイオード等の発光素子21、フォトダイオード等の受光素子22、これらの光素子を所定位置に実装するためのキャリア23、信号光を光素子に結合するための反射ミラー等の光学部品24が搭載される。また、レーザダイオードのような発熱部品が実装され、冷却が必要な場合は、電子冷却装置を実装し、底壁側に放熱板を配置して温度制御が可能な構成とすることもできる。
【0018】
金属製のリッド12は、図2および図3に示すように、平坦部17の面に直交する円筒部18を一体に有する形状で、プレス成形等で形成することができる。また、その表面には、NiメッキもしくはNi/Auメッキが施される。平坦部17は、セラミックパケージ11のシールリング15とほぼ一致する矩形状の外周縁を有し、厚さが0.1mm〜0.2mm程度で形成される。円筒部18は、ジョイントスリーブが嵌合される外径を有し、内部にレンズ20を保持する円形の光学窓18aが設けられている。この光学窓18aには、レンズ20が封止材25により気密形状で固定される。
【0019】
平坦部17と円筒部18とは、応力緩和部19を介して一体化されている。応力緩和部19は、例えば、円筒部18と同心状で、平坦部17と円筒部18との連結部分に断面形状がU字状(またはクランク状)になるように撓ませて、変形しやすい形状とすることにより形成することができる。なお、応力緩和部19の厚さは、平坦部17の厚さとほぼ同じである。このような形状によれば、例えば、円筒部18の径方向の伸縮に対して、この伸縮による荷重は、U字状の撓み部分の変形により吸収されて、平坦部17の面方向への伝搬を緩和することができる。
【0020】
上記のリッド12は、例えば、窒素雰囲気においてセラミックパッケージ11に接合される。これにより、セラミックパッケージ内部は、窒素雰囲気となって気密封止され、内部に実装された光素子等の電子部品の劣化を防ぎ、長期信頼性を高めることができる。
【0021】
リッド12のセラミックパッケージ11への接合は、シーム溶接により行われる。このシーム溶接は、溶接用のローラ電極26を金属製のリッド12の平坦部17の周縁に押し当てて接触移動させて行われる。ローラ電極26の押し当てにより、平坦部17の周縁部分と金属製のシールリング15との間に電圧が印加されて電流が流れ、その接触界面の接触抵抗によりジュール熱が発生し加熱される。この加熱による熱は、リッド12およびシールリング15に施されたNiメッキもしくはNi/Auメッキを溶融させ、Auロウ材を形成して接合される。
【0022】
上記のシーム溶接で、リッド12の平坦部17とシールリング15との接合部分は、1000℃程度の高温となり、この後常温の25℃まで冷却される。ここで、例えば、セラミックパッケージ11がアルミナで形成されていると、その線膨張係数は、7.0×10−6/度程度あり、シールリング15にコバールを用いると、その線膨張係数は、5.0×10−6/度程度であり、リッド12に50アロイを用いると、その線膨張係数は、10.0×10−6/度程度となる。この場合、これらの線膨張係数差により、セラミックパッケージ11とリッド12との接合部分に、0.5%程度の歪が発生する。
【0023】
この場合、リッド12の平坦部17と円筒部18との間に応力緩和部19を有しない場合は、上記の歪によって生じる残留応力によって、靱性の低いセラミックパッケージ11の接合部分にクラックが発生する可能性がある。しかし、リッド12の平坦部17と円筒部18との間に応力緩和部19を設け、線膨張係数差によって生じる歪を構造変形で吸収させることにより、残留応力を低減させることができ、セラミックパッケージ11の接合部分にクラックが発生するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0024】
10…光モジュール、11…セラミックパッケージ、11a…下部セラミック層、11b…中間セラミック層、11c…上部セラミック層、12…金属製のリッド、13…ジョイントスリーブ、14…スリーブ、14a…挿入孔、14b…支持部、15…金属製のシールリング、16…フレキシブル基板、17…平坦部、18…円筒部、18a…光学窓、19…応力緩和部、20…レンズ、21…発光素子、22…受光素子、23…キャリア、24…光学部品、25…封止材、26…ローラ電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子が搭載されたセラミックパッケージ、該セラミックパッケージの開口を覆う金属製のリッド、該リッドにジョイントスリーブを介して連結された光ファイバ接続のためのスリーブを備えた光モジュールであって、
前記リッドは、前記セラミックパッケージに接合される平坦部と前記ジョイントスリーブが嵌合される円筒部とからなり、前記平坦部と前記円筒部との間に応力緩和部が形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記応力緩和部は、前記平坦部の面方向の荷重に対して変形しやすい形状であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記応力緩和部の断面形状がU字状に撓ませてあることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21220(P2013−21220A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154826(P2011−154826)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】