説明

光偏向器

【課題】 シリコン貫通電極などの複雑な構造をとることなく、MEMSデバイスの光スキャナをワイヤーレスで実装することができる小型・薄型にパッケージ化した光偏向器を提供する。
【解決手段】 光偏向器は、光スキャナチップ21のミラー部21aの光反射面側に開口部16を有し、両面に互いに電気的接続された複数の電極12,13を有する第1の基板11と、その開口部16に光反射面が向くように第1の基板11上に実装された光スキャナチップ21と、光スキャナチップ21の光反射面と反対側の面に装着された第2の基板31とでパッケージ化される。光スキャナチップ21の電極22は、第1の基板11の一方の面の電極12と金属の溶融又は圧接によって接続され、第1の基板11の他方の面の電極13,14を介して給電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(micro electro mechanical systems)デバイスを用いてパッケージ化された光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の一形態として、光偏向器を用いて光源からの光を偏向してスクリーンに投影し、スクリーン上に画像を映し出すようにしたプロジェクションディスプレイが提案されている。光偏向器は、例えば、半導体プロセスやマイクロマシン技術で製造されるMEMSデバイスを用いて構成される。光偏向器に用いられるMEMSデバイスとしては、半導体基板上にミラーや圧電アクチュエータ等の機構部品を一体的に形成したMEMS光スキャナが挙げられる。
【0003】
このMEMS光スキャナでは、圧電アクチュエータの一端が枠部(支持部)に連結されて支持され、圧電アクチュエータが発生したトルクを他端に連結されたトーションバー(弾性梁)に伝え、トーションバーの先に備え付けられたミラーを揺動駆動する。このような光スキャナは、小型で簡単な構造で大きな駆動力が得られるという利点がある。その利点を最大限に生かすために、MEMS光スキャナのパッケージも小型・薄型化が求められている。
【0004】
上記のようなMEMSデバイスをパッケージ化する最も一般的な方法は、セラミックパッケージに樹脂等を用いてMEMSデバイスチップをダイボンドした後、該チップの電極パッドと該セラミックパッケージの電極パッドとをワイヤーボンディングによって接続するものである。この方法では、ワイヤーのループを確保するスペースが必要になるので、パッケージの大きさはMEMSデバイスチップよりも大きくなる。また、セラミックパッケージは焼結で形成されるので、段差の幅や周縁部の幅を狭くできず、結果として全体のサイズが大きくなってしまう。
【0005】
一方、ワイヤーレスでパッケージ化する方法として、例えば特許文献1に示すようなウエハレベルパッケージ技術が開発されている。この技術では、MEMSデバイスを形成するウエハを、2つのガラスウエハ又は1つのガラスウエハと1つのシリコンウエハで挟み込むようにしており、ウエハ状態でパッケージまで形成することができる。
【0006】
このウエハレベルパッケージ技術によれば、MEMSデバイスチップとほぼ同じ大きさのパッケージサイズが得られ、ワイヤーも不要であるが、MEMSデバイスチップとパッケージの電極との電気的接続のために、デバイスチップにシリコン貫通電極(TSV)を形成する必要がある。これは、歩留りに難があって製造コストも大きい。
【0007】
また、上記ウエハレベルパッケージの手法では、不良のMEMSデバイスチップまでも一括でパッケージにしてしまうので、通常のMEMSデバイスの歩留りを考慮すると、パッケージの不良率が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−19966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように小型・薄型化が求められているMEMSデバイスのパッケージにおいては、サイズの縮小が重要な課題であるが、セラミックパッケージでは、MEMSデバイスチップの大きさを縮小しない限り、大幅なパッケージサイズの縮小は難しい。チップを小さくするには、半導体素子の設計をやり直さなければならず、開発期間と工数が必要になる。
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑み、MEMSデバイスの光スキャナをワイヤーレスで実装可能で、従来のシリコン貫通電極(TSV)を形成するような複雑な構造とすることなく、小型・薄型のパッケージ化が可能な光偏向器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、反射面を有するミラー部と、給電により該ミラー部を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータに給電するための複数の電極とを備えた光スキャナをパッケージ化した光偏向器であって、前記光スキャナのミラー部の反射面側に開口部を有し、両面に互いに電気的接続された複数の電極を有する第1の基板と、該第1の基板の開口部に前記ミラー部の反射面が向くように該第1の基板上に実装された前記光スキャナと、該光スキャナの前記反射面と反対側の面に装着された第2の基板とで構成され、前記光スキャナの電極は、前記第1の基板の一方の面の電極と金属の溶融又は圧接によって接続され、前記第1の基板の他方の面の電極を介して給電されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、光スキャナを2つの基板で挟み込むことによってパッケージ化した光偏向器が形成される。このパッケージでは、光スキャナの電極と第1の基板の一方の面の電極とを金属の溶融又は圧接によって接続し、第1の基板の他方の面の電極を介して光スキャナの電極に給電するように構成したので、前述したTSVのような高コストで複雑な工法を用いることなく、非常に安価な部材の組合せで、MEMS光スキャナチップのサイズに近い小型パッケージを形成することができる。
【0013】
本発明において、第1の基板の光スキャナとの接合面と反対側の面に透明な基板を接合して光スキャナをガス封止又は減圧封止することが好ましい。
【0014】
また、光スキャナと第1及び第2の基板とはAuSn共晶ハンダを用いて接合され、第1の基板と透明な基板とはPbフリーハンダを用いて接合されることが好ましい。
【0015】
前記透明な基板としては、両面に赤、緑、青の3つの波長の光に対する反射防止膜が形成されたホウ珪酸ガラス板を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の光偏向器の構成を示す断面図。
【図2】図1の光偏向器を構成するMEMS光スキャナとこれを挟む2つの基板とを表面側からみた図。
【図3】実施例1の構成を示す断面図。
【図4】実施例2の構成を示す図。
【図5】実施例3の構成を示す断面図。
【図6】実施例4の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の光偏向器は、図1に示すように下側を表面側として、その表面側から、第1の基板11と、その裏面(図において上面)側に実装されたMEMS光スキャナチップ21と、この光スキャナチップ21の裏面(図において上面)側に装着された第2の基板31とで構成される。
【0019】
光スキャナチップ21は、図2に示すように、反射面を有するミラー部21aと、他の回路からの給電によりミラー部21aを、図において縦横2方向の軸周りに回転するように駆動する上下及び左右の各圧電アクチュエータ21b,21cと、各圧電アクチュエータに接続した複数の表面電極22とを備えて構成されており、その構成は、従来のMEMS光スキャナと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0020】
第1の基板11の裏面には、MEMS光スキャナチップ21の電極22と電気的に接続する裏面電極パッド12が形成されている。また、基板11の表面には、該基板11に設けたスルーホールを通る配線15を介して裏面電極パッド12と電気的に接続される表面電極パッド13と、この光偏向器と電気的に接続するFPC基板又はケーブル10を熱圧着するための端子電極パッド14とが形成されている。この第1の基板11の表面電極パッド13と14は、図2に示すように、配線により1対1で接続されている。
【0021】
第1の基板11の中央には、MEMS光スキャナチップ21のミラー部21aに入射される光(例えば、レーザ光線)を遮らないために開口部16が設けられている。MEMS光スキャナチップ21のミラー部21aの反射面(以下、「ミラー面」という)側の表面には、基板11の電極パッド12と1対1に対応する電極パッド22が形成され、光スキャナチップ21のミラー面側を基板11に向けて該基板11上にフリップチップ接合される。
【0022】
その接合方法の1つは、基板11の電極パッド12上にPbフリーハンダペースト又はAuSn共晶ハンダペーストを、ステンシルマスクを介してスクリーン印刷し、その後、MEMS光スキャナチップ21の電極パッド22を基板11の電極パッド12に位置合わせした状態でマウントし、リフロー炉等の加熱装置において260°C又は310°Cに加熱処理することである。
【0023】
もう一つの接合方法として、Auバンプも利用できる。すなわち、予め基板11の電極パッド12上にAuバンプを形成しておき、その上にMEMS光スキャナチップ21を位置合わせしながらマウントし、超音波と熱を同時に加えることによってAuバンプを局所的に溶融させて電極パッド12と22の間を接合する。
【0024】
最後に、第2の基板31をMEMS光スキャナチップ21のミラー面と反対側の面(裏面)に装着することで、パッケージが完成する。装着の方法としては、接着剤、ハンダ接合、Auバンプ接合のどれを用いてもよい。ハンダ接合を用いる場合において熱履歴を避けたいときには、第1の基板11とMEMS光スキャナチップ21と第2の基板31とを全てマウントしてから、リフロー炉等で加熱してMEMS光スキャナチップ21の両面を同時に接合する。
【0025】
以上の構成により、MEMS光スキャナチップ21のミラー面が第1の基板11の開口部16を介して大気開放されている光スキャナパッケージが作られる。このパッケージにおいて、開放されているMEMS光スキャナチップ21のミラー面に埃が付着するのを防止するためには、後述する実施例2,4のように、第1の基板11のFPCケーブル10との接合面側に両面反射防止膜付きのガラス板を接着すればよい。
【0026】
また、上記のような光スキャナチップのミラー部が揺動する際のジッター防止やミラー面の偏向角を増大させるために、パッケージ内を0.1〜0.8気圧程度の減圧雰囲気に保持したい場合には、気密封止用のパターンを追加した上で、2つの基板とMEMS光スキャナチップとの接合をハンダ接合で行い、基板と前記ガラス板との接合も、ハンダ接合を選択することで実施可能である。
【0027】
上記のように、第1の基板11は、MEMS光スキャナのミラー部21aの反射面側に開口部16を有し、光スキャナチップ21を接合する裏面上には、光スキャナチップ21の電極22との接合用電極12を有し、その反対側の表面には、同表面上の電極13と接続し、FPC基板又はFPCケーブルを熱圧着するための電極14を有する。これら両面の電極12、13及び14は、スルーホールを通る配線15により電気的に接続される。
【0028】
このような第1の基板11に対して、ミラー面を下にしたMEMS光スキャナチップ21を、鉛(Pb)フリーハンダ、AuSn共晶ハンダ、又はAuバンプ等によって接合する。そして、第1の基板11と第2の基板31で光スキャナチップ21を挟み込むように装着して、光スキャナパッケージを形成する。
【0029】
光スキャナパッケージの表側及び裏側の基板としては、それぞれ2枚の基板を重ねたものを使用してもよい。更に、埃防止や減圧封止のために、各基板に対して反射防止膜付きの透明ガラスカバーを接合することも可能である。
【0030】
また、光スキャナチップの裏面側に延びるミラー部を収納する場合等の必要に応じて、後述する実施例3,4のように、第2の基板31の中央部にパッケージの内部に開口した凹部を形成する。この場合、第1の基板11の開口部と、第2の基板31の凹部とは、大きさが異なる。
【0031】
基板の材質としては、FR4と呼ばれるガラスエポキシ樹脂、LTCCと呼ばれるアルミナ基板、アルミニウム又は銅の金属製基板を利用することができる。用途に応じて、コスト、加工性、機械強度、熱膨張係数等を考慮して、材質を選定することができる。また、基板上の電極の表面はAu又はCuメッキが望ましい。
【0032】
全てのパッケージ形態において、パッケージの縦寸法はMEMS光スキャナチップの縦寸法と同一であるから、例えば、携帯機器に組み込まれる超小型プロジェクタに、光偏向器を用いる場合に要求されるパッケージ寸法、特に縦寸法の縮小化に対応することが可能である。
【0033】
前述のように、従来のセラミックパッケージでは、一体焼結のためMEMSデバイスを取り囲む必要があり、縦寸法をMEMSデバイスチップと同一にすることはできなかったのに対し、本実施形態によれば、MEMS光スキャナパッケージが、安価な部材と簡単な方法で構成され、ワイヤーレスで大気封止及び減圧封止にも対応可能であり、しかも、MEMSデバイスチップと縦寸法が同一で小型・薄型化とコスト面で非常に優れたパッケージとして製造される。
【0034】
また、上記のようなMEMS光スキャナの駆動方式が、PZT等の薄膜圧電体をアクチュエータとする圧電方式に限らず、静電引力を用いた櫛歯状の構造をアクチュエータとする静電方式であっても、本実施形態の光スキャナパッケージを適用できる。
【0035】
[実施例1]
図3に示す光スキャナパッケージは、上記実施形態において、MEMS光スキャナチップ21と電気的に接続する第1の基板11が、ガラスエポキシ樹脂製の両面プリント基板で構成され、FPCケーブル10を介して給電及び制御用の外部回路に接続される。また、第1の基板11の中央には開口部16が設けられているので、光スキャナチップ21のミラー面へのレーザ光の入射及び反射を妨げない。
【0036】
上記光スキャナチップ21と第1の基板11は、クリームハンダをマスク印刷した後、リフロー加熱処理をすることで接合される。また、これらの電極パッドは、チップと基板の各部材に応じてメッキ、スパッタ、真空蒸着等の方法で成膜される。基本的に、表面はハンダに対応したAu又はCuとし、バリアメタルとしてその下地にNiやPtを形成する。基板やシリコンウエハとの密着を確保するために、更にその下にTiやCrなどの金属を成膜する。本実施例では、基板側からTi/Ni/Auの3層構造で電極パターンを形成した。
【0037】
その後、第2の基板31を光スキャナチップ21の裏面側に熱硬化性接着剤にて接合して、パッケージとした。第2の基板31はアルミ製で、回路パターンがなく、その2つの隅には切欠き32を設けている。これは、この光スキャナパッケージを超小型プロジェクタの光学系に組込むときの位置合わせを容易にするためである。
【0038】
このパッケージは、MEMS光スキャナチップ21を封止しない大気開放型のパッケージである。
【0039】
本実施例では、ガラスエポキシ樹脂製の両面プリント基板と、回路パターン無しのアルミ基板という、非常に安価で簡便な部材を用いながら、ワイヤーレスでMEMS光スキャナチップと高さ方向の寸法が同一の小型かつ薄型のパッケージを製造することができる。
【0040】
[実施例2]
図4に示す光スキャナパッケージは、窒素封入又は減圧封止が可能な構成である。前記実施形態において、第1の基板11は低温同時焼成セラミックス(LTCC)で形成され、MEMS光スキャナチップ21の電極パッド22と接合するための裏面電極パッド12は、実施例1のようにスルーホールの配線を介して表面電極パッド13と接続するものではなく、LTCCの内部配線17によって反対側表面のFPC接合用電極パッド14と接続されている。そして、第1の基板11の裏面には、電極パッド12を取り囲むように封止用電極パターン18が形成される一方、反対側の表面には封止用電極パターン19が形成されている。
【0041】
また、MEMS光スキャナチップ21の両面にも、封止用電極パターン23、24がそれぞれ形成されている。第2の基板31は、実施例1と同様にアルミ製の基板であるが、第1の基板11及び光スキャナチップ21と同様に、封止用の電極パターン33が形成されている。
【0042】
更に、本実施例では、パッケージ内部の光スキャナチップ21をガス封止又は減圧封止するために、第1の基板11の表面に、透明な基板として封止ガラス41を接合することによってパッケージ内部を封止している。
【0043】
この封止ガラス41にも、第1の基板11の表面の封止用電極パターン19に対応して、これと接合される口状の封止用電極パターン42が形成されている。また、封止ガラス41の両面に反射防止膜をコーティングすることで、MEMS光スキャナチップ21のミラー部21aによるレーザ光線の走査のパワー損及び反射迷光の発生を防止している。
【0044】
このような透明な基板としては、両面に赤、緑、青の3つの波長の光に対する反射防止膜が形成されたホウ珪酸ガラス板を用いることができる。
【0045】
給電用の電極パッドおよび封止用の電極パターンは,部材に応じてメッキ、スパッタ、真空蒸着等の手法で成膜される。基本的に,表面はハンダに対応したAu又はCuとし、バリアメタルとしてその下地にNiやPtを形成する。基板やシリコンウエハとの密着を確保するために、更にその下にTiやCrなどの金属を成膜する。本実施例では,基板側からTi/Ni/Auの3層構造で電極パターンを形成した。
【0046】
封止の工程は、第1の基板11、MEMS光スキャナチップ21及び第2の基板31の封止用電極パターン上にAuSn共晶ハンダペーストを塗布又は印刷し、マウンタによって位置合わせしながら仮接合した後、リフロー炉で最高温度310°C、30秒のリフロープロセスによって本接合する。その後、減圧(0.1〜0.8気圧)又は窒素を充満させたチャンバー容器内で、上記接合済みのパッケージと封止ガラス41とをPbフリーハンダ接合することにより、封止を完了する。
【0047】
Pbフリーハンダのリフロー温度は、最高温度260°Cであり、先にAuSn共晶ハンダで接合した接合面が再溶融することはない。減圧封止の場合も、一旦チャンバー内を窒素で数回サイクルパージした後に所定圧力に調整して封止するので、空気中に含まれている酸素、水蒸気、炭酸ガス等の影響を排除することができ、非常に信頼性の高いパッケージを供給することができる。
【0048】
本実施例においても、実施例1と同様に、アルミ製の第2の基板31の2つの隅に切欠きを設けて、光学系への位置合わせを容易にすることができる。このように、TSVやAuバンプ等の複雑で高価な工法を用いることなく、非常に小型で減圧封止可能なパッケージを形成することができる。
【0049】
[実施例3]
図5に示す光スキャナパッケージは、MEMS光スキャナチップ21のミラー部21aの裏面にリブ構造を形成したものに対応している。
【0050】
すなわち、基本構造は図3に示した実施例1と同様であるが、これとの相違は、アルミ製の第2の基板31が平板ではなく、中央部の光スキャナチップ21側に凹部34を形成することで、光スキャナチップ21のミラー部21a裏面のリブ構造がミラー走査の際に衝突しないように空間を設けた点である。なお、第2の基板31に設けられる凹部34の開口面の大きさは、第1の基板11の開口部16よりも小さくなっている。
【0051】
上記のような光スキャナチップのミラー部裏面のリブ構造は、ミラー面の変形、特に動的な面変形を抑制するために効果的であるが、従来のセラミックパッケージでは、このようなリブ構造が衝突しない空間を設けるためにパッケージ全体の寸法が大きくなり、コストが増大するという問題があった。これに対し、本実施例によれば、単純な構造の2枚の基板を組合せてパッケージを構成するので、サイズやコストの増大も殆どなく、単にアルミ板のザグリ加工で凹部が付加されるだけである。
【0052】
このように、本実施例では、非常に簡便な構成で、ミラー部裏面のリブ構造付きの光スキャナに対応したパッケージを提供することができる。
【0053】
[実施例4]
図6に示す光スキャナパッケージは、上記のようなリブ構造付きのMEMS光スキャナを減圧又は窒素封止できるものである。その基本構造は、実施例2と実施例3の組合せとなる。本実施例によれば、非常に簡便な構成で、ミラー部裏面のリブ構造付きの光スキャナを減圧封止又は窒素封したパッケージを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の光偏向器は、以下の機器に好適に用いられる。
【0055】
・ モバイル機器搭載の超小型レーザプロジェクタ
・ ゲーム等の映像娯楽システム用レーザプロジェクタ
・ 車載用ヘッドアップディスプレイ
・ 車載インパネ用リアプロジェクションディスプレイ
・ 車載Aピラー用プロジェクションディスプレイ
【符号の説明】
【0056】
11・・・第1の基板、12,13,14・・・電極、15・・・配線、16・・・開口部、17・・・内部配線、18,19・・・封止用電極パターン、21・・・光スキャナチップ、22・・・電極、23,24・・・封止用電極パターン、31・・・第2の基板、32・・・切欠き、33・・・封止用電極パターン、34・・・凹部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有するミラー部と、給電により該ミラー部を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータに給電するための複数の電極とを備えた光スキャナをパッケージ化した光偏向器であって、
前記光スキャナのミラー部の反射面側に開口部を有し、両面に互いに電気的接続された複数の電極を有する第1の基板と、該第1の基板の開口部に前記ミラー部の反射面が向くように該第1の基板上に実装された前記光スキャナと、該光スキャナの前記反射面と反対側の面に装着された第2の基板とで構成され、
前記光スキャナの電極は、前記第1の基板の一方の面の電極と金属の溶融又は圧接によって接続され、前記第1の基板の他方の面の電極を介して給電されることを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
前記第1の基板の前記光スキャナとの接合面と反対側の面に透明な基板を接合して前記光スキャナをガス封止又は減圧封止する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記光スキャナと前記第1及び第2の基板とはAuSn共晶ハンダを用いて接合され、前記第1の基板と前記透明な基板とはPbフリーハンダを用いて接合されることを特徴とする請求項2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記透明な基板は、両面に赤、緑、青の3つの波長の光に対する反射防止膜が形成されたホウ珪酸ガラス板からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の光偏向器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76780(P2013−76780A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215621(P2011−215621)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】