説明

光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた光半導体装置

【課題】優れた耐半田性を有しながらも、良好な離型性をも兼ね備えた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)成分とともに、下記の(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)硬化促進剤。
(D)下記の一般式(1)で表される化合物からなる離型剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光半導体素子の封止に用いられる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」ともいう)およびそれを用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、受光センサーや発光ダイオード(LED)、電荷結合素子(CCD)等の各種光半導体素子を封止するために用いられる封止材料としては、その硬化物が透明性,耐湿性および耐熱性に優れていなければならないという観点から、一般に、エポキシ樹脂とともに、酸無水物系の硬化剤とを用いて得られるエポキシ樹脂組成物が汎用されている。
【0003】
しかし、近年、光半導体素子のパッケージの小型化が進むと同時に、基板への表面実装形態が主流となっているため、赤外線(IR)リフローでの実装が広く採用されるようになっている。したがって、光半導体装置が暴露される実装時の温度が従来と比べて上昇し高くなることから、高い耐熱性等を有する透明封止材料が求められている。また、半田材として鉛フリーの半田材が用いられる場合もあり、この場合半田材の融点がさらに上昇するため、リフロー温度がより高くなることになる。
【0004】
このようなことから、これまでに加熱時に発生する封止樹脂に起因した応力の低減化を図る目的で、ビフェニル型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル樹脂とを溶融混合した予備混合物と、硬化促進剤を必須とするエポキシ樹脂組成物を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−281868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなエポキシ樹脂組成物をはじめ、耐半田性の向上を図るために、硬化剤としてフェノール樹脂類を配合した光半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いると、得られる樹脂組成物の硬化物が成形金型に強固に付着するという問題が発生する。すなわち、このような光半導体封止用エポキシ樹脂組成物を成形金型を用いた成形において、得られた樹脂組成物の硬化物が成形金型に強固に密着するため、成形したパッケージを成形金型から取り外すことが著しく困難となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた耐半田性を有しながらも、良好な離型性をも兼ね備えた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた、高い信頼性を備えた光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(C)成分とともに、下記の(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)硬化促進剤。
(D)下記の一般式(1)で表される化合物からなる離型剤。
【化1】

【0008】
また、本発明は、上記光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
なお、上記式(1)において、各構造単位x,y,zの結合態様は、その分子内において、ブロック的に存在してもよいし、連続的に存在してもよいし、またランダムに存在してもよいという趣旨である。さらに、上記繰り返し単位x,y,zの各構造単位の結合順序は、いかなる結合順序であってもよく、x,y,zの順、x,z,yの順、y,z,xの順、y,x,zの順、z,x,yの順、z,y,xの順のいずれであってもよい。
【0010】
すなわち、本発明者らは、良好な透明性はもちろん、優れた耐半田性に加えて、良好な離型性が付与された光半導体素子用封止材料を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、離型剤成分として、上記一般式(1)で表される化合物からなる離型剤〔(D)成分〕を用いると、上記特定の離型剤〔(D)成分〕の有する作用により、優れた耐半田性とともに良好な離型性が付与されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明は、エポキシ樹脂〔(A)成分〕およびフェノール樹脂〔(B)成分〕とともに、前記一般式(1)で表される化合物からなる離型剤〔(D)成分〕を含有するエポキシ樹脂組成物である。このため、優れた耐半田性とともに成形時における良好な離型性をも有するものである。したがって、上記エポキシ樹脂組成物によって光半導体素子を封止することにより、信頼性の高い光半導体装置が得られることとなる。
【0012】
そして、上記フェノール樹脂〔(B)成分〕として、前記一般式(2)で表されるフェノール樹脂および一般式(3)で表されるフェノール樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物として必須な硬化性が得られるとともに、耐半田性が一層向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、特定の離型剤(D成分)とを用いて得られるものであり、通常、液状、あるいは粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にして封止材料に供される。
【0014】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、4,4′−ビフェニルフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジメチルビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート類、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記各種エポキシ樹脂の中でも、光半導体素子封止後、エポキシ樹脂組成物の硬化体が変色しにくいという点から、好適には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート類が用いられる。
【0015】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、物性の妨げにならない範囲内にて、他のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることができる。他のエポキシ樹脂としては、具体的には、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0016】
上記ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、例えば、他のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4′−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、また、テトラメチル−4,4′−ビフェノール、ジメチル−4,4′−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−〔1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル]プロパン、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0017】
上記各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0018】
上記脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−シクロヘキシルカルボキシレート等のシクロヘキサン等の脂肪族骨格を有する脂環式エポキシ樹脂があげられる。また、上記脂肪族系エポキシ樹脂としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の多価アルコールのグリシジルエーテル類等があげられる。そして、上記複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等があげられる。上記グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等があげられる。上記グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等があげられる。上記ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0019】
上記のようなエポキシ樹脂としては、一般に、エポキシ当量50〜5000、軟化点120℃以下の固形または粘稠性を示すものが用いられる。
【0020】
上記A成分とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)としては、耐半田性の向上という点から、下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂および下記の一般式(3)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましい。これら特定のフェノール樹脂は単独で使用してもよいし、併せて用いてもよい。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
上記式(2)において、繰り返し数nは、好ましくは0〜1である。また、上記式(3)において、繰り返し数mは、好ましくは0〜3である。そして、これらフェノール樹脂においては、水酸基当量145〜567の範囲のものを用いることが好ましい。
【0024】
そして、本発明では、フェノール樹脂成分として、上記特定のフェノール樹脂とともに他のフェノール樹脂を併用することも可能である。
【0025】
上記他のフェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4′−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、また、テトラメチル−4,4′−ビフェノール、ジメチル−4,4′−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−〔1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル]プロパン、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、テルペン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類、テルペンジフェノール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0026】
そして、本発明において、(B)成分であるフェノール樹脂とともに、酸無水物類を硬化剤成分として併用してもよい。上記酸無水物類としては、例えば、分子量140〜200程度のものが好ましく用いられ、具体的には、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコール無水トリメリット酸、無水ビフェニルテトラカルボン酸等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の無色ないし淡黄色の酸無水物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記酸無水物のなかでも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。
【0027】
さらに、上記酸無水物やフェノール樹脂以外に、従来公知のアミン系硬化剤や、上記酸無水物をグリコール類でエステル化したもの、またはヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類等の硬化剤等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0028】
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、上記フェノール樹脂中の水酸基当量が、さらに他の硬化剤成分として酸無水物類等を用いる場合はこれに酸無水物当量を加え、0.5〜1.5当量となるように設定することが好ましい。特に好ましくは0.8〜1.2当量である。すなわち、上記配合割合において、水酸基当量が小さいと、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化後の色相が悪くなり、逆に水酸基当量が大きいと、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0029】
上記A成分およびB成分とともに用いられる硬化促進剤(C成分)としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら硬化促進剤のなかでも、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0030】
そして、上記硬化促進剤(C成分)の含有量は、上記エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して0.05〜7.0重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0重量部である。すなわち、硬化促進剤(C成分)の含有量が少な過ぎると、充分な硬化促進効果が得られ難く、また多過ぎると、得られる硬化体に変色がみられる場合があるからである。
【0031】
上記A〜C成分とともに用いられる特定の離型剤(D成分)としては、下記の一般式(1)で表される化合物が用いられる。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(1)において、繰り返し数xは0.1〜200の正数であって、かつ繰り返し数yは0または0.1〜200の正数である。また、繰り返し数zは、0.1〜200の正数である。さらに、A1 は水素原子、またはR1 COOH、COR2 、R3 (R1 :2価の有機基、R2 :炭素数30以下の1価の脂肪族基,R3 :炭素数30以下の1価の脂肪族基)である。また、先に述べたように、式(1)中の、繰り返し単位である、x,y,zの各構造単位は、その分子内において、ブロック的に存在してもよいし、連続的に存在してもよいし、またランダムに存在してもよい。さらに、上記繰り返し単位x,y,zの各構造単位の結合順序は、いかなる結合順序であってもよく、x,y,zの順、x,z,yの順、y,z,xの順、y,x,zの順、z,x,yの順、z,y,xの順のいずれであってもよい。なお、上記繰り返し数x,y,zはそれぞれ平均値を示すものである。
【0034】
上記式(1)において、好ましくは、A1 は水素原子であり、繰り返し数xは13〜28の正数、式(1)中のyユニットとzユニットでの下記の数式で表される重量割合(%)が、35〜85重量%である。
【0035】
【数1】

【0036】
本発明においては、上記特定の離型剤(D成分)の他に、例えば、モンタン酸、ステアリン酸およびその金属塩、ポリエチレン系カルナバワックス等の通常の離型剤を併用してもよい。この場合の使用量は、硬化樹脂の光透過性を損なわない範囲に設定することが好ましい。
【0037】
上記特定の離型剤(D成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.01〜15重量%に設定することが好ましく、特に好ましくは0.1〜5重量%である。すなわち、D成分の含有量が少な過ぎると、充分な離型性が得られ難くなる傾向がみられ、逆に多過ぎると、相溶性が低下して白濁する傾向がみられるからである。
【0038】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記A〜D成分以外に、エポキシ樹脂組成物硬化体の光透過性等、諸物性を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、例えば、色素、可撓性付与剤、変性剤、変色防止剤、酸化防止剤、光安定剤、接着付与剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0039】
上記色素としては、特に限定するものではなく従来公知のものがあげられる。
【0040】
上記可撓性付与剤としては、例えば、シリコーン系可撓性付与剤等があげられる。
【0041】
上記変性剤としては、例えば、シリコーン系変性剤やグリコール類およびその他の多価アルコール類等があげられる。
【0042】
上記変色防止剤としては、リン系有機化合物等があげられる。
【0043】
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系有機化合物、有機硫黄系化合物等があげられる。
【0044】
上記光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤や、HALS等の光安定化剤等があげられる。
【0045】
上記接着付与剤としては、アルコキシシランカップリング剤等があげられる。
【0046】
なお、光分散性が必要な場合には、上記成分以外にさらに充填剤を配合してもよい。上記充填剤としては、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末、アルミナ粉末、炭酸カルシウム等の無機質充填剤等があげられる。
【0047】
そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することによって、液状、粉末状、もしくは、その粉末を打錠したタブレット状として得ることができる。すなわち、液状のエポキシ樹脂組成物を得るには、例えば、上記A〜D成分および必要に応じて、劣化防止剤、変性剤、離型剤、染料、顔料、充填剤等の公知の各種添加剤を所定の割合で適宜配合すればよい。また、粉末状、もしくは、その粉末を打錠したタブレット状として得るには、例えば、上記した各成分を適宜配合し、予備混合した後、これを常法に準じてドライブレンド法または溶融ブレンド法を適宜採用して混合混練し、ついで、これを室温まで冷却した後、熟成工程を経て公知の手段によって、粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。ついで、冷却・粉砕し、さらに必要に応じてその粉末を打錠することによりエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0048】
このようにして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物は、受光センサーや発光ダイオード(LED)、電荷結合素子(CCD)等の光半導体素子の封止用材料として用いられる。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、光半導体素子を封止するには、特に制限されることはなく、通常のトランスファー成形や注型等の公知のモールド方法により行なうことができる。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物が液状である場合には、少なくともエポキシ樹脂成分と硬化剤成分とをそれぞれ別々に保管しておき、使用する直前に混合する、いわゆる2液タイプとして用いればよい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物が所定の熟成工程を経て、粉末状もしくはタブレット状である場合には、上記した各成分を溶融混合する時に、Bステージ(半硬化状態)としておき、これを使用時に加熱溶融すればよい。
【0049】
そして、本発明のエポキシ樹脂組成物では、その硬化体は、分光光度計の測定により、室温下、厚み1mmにおいて、波長650nmでの光透過率が70%以上となるものが好適に用いられ、特に好ましくは80%以上である。ただし、上記充填剤、色素を用いた場合の光透過率に関してはこの限りではない。なお、本発明において、上記室温とは、25℃±5℃をいう。
【実施例】
【0050】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0051】
まず、エポキシ樹脂組成物の作製に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0052】
〔エポキシ樹脂〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量186)
【0053】
〔フェノール樹脂a〕
前記一般式(2)で表されるフェノール樹脂〔式(2)中のm=0.6、フェノールビフェニレン樹脂、水酸基当量203〕
【0054】
〔フェノール樹脂b〕
前記一般式(3)で表されるフェノール樹脂〔式(3)中のn=0、フェノール−p−キシリレングリコールジメチルエーテル重縮合物、水酸基当量172〕
【0055】
〔硬化促進剤〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール
【0056】
〔離型剤〕
前記一般式(1)で表される化合物〔式(1)中、x=24.0(平均値)、y=0.0(平均値)、z=6.4(平均値)、A1 =水素原子:式(1)における各構造単位x,y,zはブロック重合である。〕
【0057】
〔実施例1〜9、比較例1〜3〕
後記の表1〜表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機で溶融混練(50〜150℃)を行ない、熟成した後、室温(25℃)にて放冷した後に粉砕することにより目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0058】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用いて、下記の方法に従って各種特性評価を行なった。その結果を後記の表1〜表2に併せて示す。
【0059】
〔耐半田性〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、専用金型によりトランスファー成形(150℃×4分間成形、150℃×3時間後硬化)で光半導体素子(SiNフォトダイオード:1.8mm×2.3mm×厚み0.25mm)をモールドすることにより表面実装型光半導体装置を作製した。この表面実装型光半導体装置は、8ピンのスモールアウトラインパッケージ〔SOP−8:4.9mm×3.9mm×厚み1.5mm、リードフレーム:42アロイ合金素体の表面全面に銀メッキ層(厚み0.5μm)〕である。
【0060】
つぎに、上記SOP−8のパッケージを用い、30℃/60RH%×192時間の吸湿条件にて吸湿処理を施した後、上記パッケージを赤外線(IR)リフローに供し、パッケージ自身に剥離やクラックが発生した割合を個別に測定し評価した。そして、パッケージ剥離・クラックの発生確率が0〜34%未満の場合を○、パッケージ剥離・クラックの発生確率が34〜67%未満の場合を△、パッケージ剥離・クラックの発生確率が67〜100%の場合を×として表示した。
【0061】
〔離型性〕
上記専用金型を用いて、トランスファー成形(150℃×4分間成形)にてSOP−8のパッケージをモールドすることにより評価した。すなわち、ノニオン系強アルカリ溶液にて金型表面を洗浄した後、型慣れ材によるダミーショットを2ショット実施した後、上記各エポキシ樹脂組成物を用いて、上記専用金型にてSOP−8のパッケージをトランスファー成形した(150℃×4分間成形)。そして、成形物(SOP−8パッケージ)を金型から取り出す際に要した操作により離型性を評価した。評価は、エアーブロー(エアースプレー)のみで離型するという離型性が良好な場合を○、エアースプレーのみでは完全に離型しないが手作業により容易に離型する場合を△、離型が著しく困難であった場合を×として表示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
上記結果から、特定の離型剤を配合した各実施例品は、比較例品に比べて良好な耐半田性が得られるとともに離型性に優れた結果が得られた。
【0065】
これに対して、特定の離型剤を配合せずに作製してなる比較例品は、良好な耐半田性を示すものの離型性に著しく劣る結果となった。
【0066】
さらに、上記実施例の各エポキシ樹脂組成物を用い、上記と同様の成形条件にてトランスファー成形を行なうことにより、光透過率測定用の試料(厚み1mmの硬化物)を作製した。この試料を、石英セル中の流動パラフィンに浸漬し、試料表面の光散乱を抑制した状態で、室温(25℃)にて波長650nmにおける光透過率を分光光度計(島津製作所社製、UV3101)を用いて測定した。その結果、すべての試料に関して光透過率が85%以上であって、高い光透過率を満足するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)成分とともに、下記の(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)硬化促進剤。
(D)下記の一般式(1)で表される化合物からなる離型剤。
【化1】

【請求項2】
上記(B)成分であるフェノール樹脂が、下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂および下記の一般式(3)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方である請求項1記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】

【化3】

【請求項3】
請求項1または2記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置。

【公開番号】特開2010−144016(P2010−144016A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321492(P2008−321492)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】