説明

光子感知エレメント及びこれを用いたデバイス

【課題】長又は短波長光子に対し透過性であり、シリコンウェハ(6)又はチップのようなシリコンの光子感知層の裏側に取り付けられた、低抵抗率即ち電気伝導性のシリコン層の組み合わせを提供する。
【解決手段】ウィンドウがフォトダイオード、電荷結合素子、活性ピクセルセンサー、低エネルギーX線センサー、及び他の放射検出器のような光子感知シリコンデバイスに設けられる。シリコンウィンドウは、光子が、前側にプリントされた回路から妨害されることなく、裏側からデバイスを照射できるように、感光シリコンウェハ又はチップの裏側(10)に設けられる。電荷キャリアの高抵抗率感光シリコン容積を完全に空乏化するに十分な電圧が、低抵抗率裏側ウィンドウと、デバイスのパターン付けされた前側との間に掛けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には電磁気放射検出器、特に感光シリコンデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、米国エネルギー省とカリフォルニア大学との間でのローレンスバークレイ研究所の活動に関する契約第DE−AC03−76SF00098号による米国政府支援の下に行われたものである。米国政府は本発明に対し一定の権利を有する。
本発明は仮出願番号第60/030,415で開示されたものであり、ここに参考資料として挙げるが、本出願は、1996年11月1日出願のこの仮出願の恩典を請求するものである。
【0003】
荷電結合素子(CCDs)は最初コンピューターのメモリデバイスとして使用された。その画像検出器としての有用性は70年代に開発された。ジェームズジャネシックは画像デバイスとしてのCCDsの一般的作動原理を、彼の論文「CCDs:その内輪話」(CCD天文学1997年冬)で説明している。その論文の中で、彼はCCD性能についての主要な現下の問題についても述べている。その問題の中には紫外部領域における吸収と量子効率(QE)がある。
【0004】
青及び紫外部の感度を上げるため、数多くの技法が用いられている。CCDの「表面」はシリコンウェハの、電気回路とゲートがその上に組み立てられている側で、「裏面」はその反対側である。光子がシリコンウェハ(基板とも称する)に入ると、光子は吸収され電荷を生成する(光電効果)。通常、表面の電子回路は金属の代わりに多結晶シリコン(ポリシリコン)で作られるが、これはポリシリコンが金属回路よりも反射が少なく、その結果、表面入射が用いられる場合に光子ロスが低いからである。裏面入射の場合、画像は裏面に焦点が合わされ、光電作用によって生成された光子はシリコン基板の内部厚みを、表面の電子回路の直ぐ下のシリコン領域まで横断しなければならない。表面回路は裏面入射の場合バイパスされるので、結果としてQEが高くなる。しかし不都合なことに、極端に薄く(約厚さ10ミクロン)ない限り、電子はシリコン基板の厚みを効率的には横断しない。基板をこの程度まで薄くするのは難しく、コストがかかり、生産性も低い。薄くする処理はバーク他が「AXAFのための軟X線CCDイメジャ」(電子装置についてのIEEE会報、44(10):1633−42、1997年)に述べている。
【0005】
感光容積(即ち、光子が吸収され電荷キャリヤを生成する容積)を形成するシリコン基板を薄くすると、同時に長い波長の光子を検知するのが難しくなるが、これは薄いウェハは赤ないし赤外部内の光子に対して透過性があるからである。長波長の光子は、薄い光子感知シリコン基板には吸収されず、検出されない。即ち、単一の従来型裏面入射装置では、短波長光子と長波長光子の両方を検出するのには使えないということである。
【0006】
CCDsの感度は、各ピクセル中の電荷を電流漏洩無く或いはピクセルウェルに外部からの電流が流れ込むことなく貯えることのできる範囲の機能の一部である。ピニングと呼ばれる技法が、暗電流を制限し、残像、ピクセルの非均一性、ウェルの容量に影響を与えるために使用される(ジェームズ・ジェネシック、トム・エリオットの、天文学的CCD観察及び縮写の中の「大面積アレイ科学CCDイメージャの歴史と進化」天文学会太平洋会議、第23巻、アリゾナ州タクソン、ブッククラフターズ社、1992年)。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、長波長光子又は短波長光子に透過性があり、シリコンウェハ又はチップのような光子感知シリコン層の裏面に取り付けられている、低抵抗率、即ち電気伝導性のシリコンウィンドウの組み合わせから成っている。このウィンドウは、フォトダイオード、荷電結合素子、活性ピクセルセンサー、低エネルギーX線センサー、その他の放射検出器のような光子感知シリコンデバイスに用いられる。シリコンウィンドウは、光子が、表面にプリントされている回路からの妨害を受けることなく裏面からデバイスに照射できるように、感光シリコンウェハの裏面に設けられる。このため裏面層と呼ばれる。本発明による組み合わせで作られた装置を作動させる場合、電荷キャリアの高抵抗率感光シリコン容積を完全に空乏化するに十分な電圧が、低抵抗率裏面ウィンドウとデバイスのパターン付きの表面との間に掛けられる。このような光子感知デバイスを作動させる際のこの今までにないステップは、電気伝導性裏面層の存在によって可能となった。裏面層に電圧を掛けると、裏面で作られた光子により生成された電荷がデバイスの表面まで到達できるようになり、表面に取り付けられたどのような回路ででも処理できるようになる。
【0008】
本発明による組み合わせを用いれば、光子感知シリコン層を、シリコン容積内の完全な電荷空乏化を実現するために、標準的製造法以上に薄くする必要はない。ある実施例では、本発明による裏面ウィンドウは、CCDピクセルにおいて電荷絶縁を維持しながら裏面入射ができるようにするため、高抵抗率シリコンに適用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで「高抵抗率」とは抵抗率ρが、nドープシリコンに対しては100Ω−cmから20KΩ−cmの間にあり、pドープシリコンに対しては100Ω−cmから20KΩ−cmの間にあることを意味する。
ここで「基板」とは光子感知シリコンを意味し、回路層を含まない。
ここで「基板厚さ」とは、回路がその表面に蒸着してある平面に対し垂直な方向の基板の厚さを意味する。
【0010】
本発明は、電気伝導性の、光子透過性の、シリコン基板の裏面に取り付けてある層を含む。この層は裏面ウィンドウとも称する。電気伝導性の裏面層即ちウィンドウは、その特定のアプリケーションの必要性に応じて(赤及び赤外部のような)長波長光子及び(青及び紫外部のような)強く吸収される短波長光子の双方に対し透過性であるように十分薄くすることができる。普通に生産されているシリコンウェハと同じ(即ち250μmと550μmとの間の)通常の厚さの高抵抗率基板に取り付けられた薄い透過性の伝導性層のこの今までにない組み合わせは、新しいクラスの放射検出器にとって非常に重要な構成要素である。ウェハの裏面と表面との間にバイアス電圧が掛けられると、中間にあるシリコンは完全に電荷空乏化状態になる。表面の回路は、裏面に入り電荷を生成する光子を検出することができる。この透過性の伝導層は、介在するシリコン基板を物理的に薄くする必要無く、新しいクラスの放射検出器の裏面入射にウィンドウを提供する。CCDs又は活性ピクセルセンサー(増幅回路を各ピクセル上に持つ進化したCCD)に用いられる場合、約50μmないし550μmの厚さを持った、完全に空乏化された高抵抗率のシリコンは、IR領域付近(波長約1μまで)及び低エネルギーX線領域(約10ないし15keVの間のエネルギー)において、光電検出器の波長応答性を高めるのに使うことができる。フォトダイオードは、本発明による組み合わせの使用が役立つ、もう一つのタイプの放射検出器である。
【0011】
電気伝導性の、透過性の裏面層は、他のアプリケーションに対して、低抵抗率シリコンと組み合わせることができる。例えば、伝導性裏面層を、従来型の薄い低抵抗率基板を持つCCDに適用すれば、裏面電圧をデバイスに掛けることができる。掛けられた電圧は、デバイスの裏面で零電界領域を除去する。更に、内部電界を正確に分極された状態に保つためのUV充電(後に更に詳しく論議する)を避けることができる。掛けられた裏面電圧はこれを実に簡単に行う。
【0012】
図1は、裏面入射のp−i−nフォトダイオード構造で用いられる本発明による組み合わせを概略的に図示する。光子は、光子透過性の電気伝導性裏面層2からデバイスに入る。この層は、バイアス電圧がこの層と、表面のp+インプラント領域4との間に掛けることができるように、電気接点としても働く。n――型シリコン基板6は通常、約250ないし1000μm(即ち1mm)の間の厚さ8を有する、ウェハ製造業者の供給するウェハである。基板厚さは4又は5mmまで厚くてもよい。基板厚さは電荷キャリアを空乏化させるのに必要な裏面電圧によって制限される。空乏化電圧は基板の厚さの二乗で増加する。このように、300μmの厚さに対して空乏化電圧が約30Vである場合、1mm厚さの基板に対して空乏化電圧は270Vとなり、2mm厚さの基板に対して空乏化電圧は1KVとなり、4mm厚さの基板に対して空乏化電圧は4KVとなる。アプリケーション及び検出装置の特性にもよるが、本発明による組み合わせは、基板厚さが使用できる範囲において使用される。普通、6インチのウェハは厚さ625μmで使用される。小径のウェハは普通、厚さも薄くなり、例えば550μm又は300μmである。大径のウェハの厚さは例えば750μmとなる。対照的に、フォトダイオード内のp+インプラント領域の厚さは、大抵の場合ただの約1μm(図1は縮尺通りには書いていない)である。随意的に、反射防止層10を裏面ウィンドウの上に蒸着してもよい。その厚さと構成は反射防止コーティングに関する周知の法則により求められる。本発明によるデバイスで良好に作動する材料の一つはインジウム錫酸化物(ITO)である。
【0013】
裏面層は電気伝導性があるので、これに対し、表面回路に関して正電圧を掛けると、中間にある電荷キャリアの基板を完全に空乏化することができる。こうすると暗電流を現実的レベルに制限でき、入射する光子によって作り出される電荷を暗電流越しに検出することができる。更に、電圧が掛けられることにより、光子の吸収によって作り出される電荷が基板の厚みを横切る際の広がりが制限される。そのため、電圧を掛けると、光子の吸収により作り出される以外の電荷キャリヤの基板を空乏化できるだけでなく、解像能を改善することもできる。
【0014】
図2Aは、裏面入射の電荷結合素子(CCD)に用いられる本発明による組み合わせを概略的に示す。光子は、光子透過性の電気伝導裏面層12からデバイスの中に入る。この層は、バイアス電圧がこの層と、表面のゲート回路14との間に掛けることができるように、電気接点としても働く。n――型シリコン基板16は通常、約250ないし1000μm(即ち1mm)の間の厚さ18を有する、ウェハ製造業者の供給するウェハである。基板厚さは4又は5mmまで厚くてもよい。随意的に、反射防止層20を裏面ウィンドウの上に蒸着してもよい(縮尺通りに表示していない)。その厚さ及び構成はは反射防止コーティングに関する周知の法則により求められる。本発明によるデバイスで良好に作動する材料の一つはインジウム錫酸化物(ITO)である。
図2Bは、図2Aに示すような、高抵抗率シリコン基板上の一つのCCDのピクセルの2次元シミュレーションを示す。等電位線を0.5ボルト間隔で示している。集電ゲートには−5Vのバイアスが掛けられており、バリアフェーズは5Vにある。
図2Cは、3層15μmピクセルに関する2次元電位分布のシミュレーションを示す。この図は、2次元ではなく3次元である点を除き、基本的には図2に示すのと同じデータを示す。1.5×1012cm-2のチャネルインプラントが使われている。基板のドーピングは(約7000Ω−cmの抵抗率に対応し)6×1011cm-3と想定されている。5μm幅の集電電極は−5Vに保持され、バリアフェーズは5Vであった。裏面バイアス電圧は、裏面電気接点まで伸びるドリフトフィールドを生成している(図2Cのy寸法)。
【0015】
裏面層にバイアス電圧を掛けることは本発明による光子検出エレメントの作動のキーである。裏面電圧は感光容積を完全に電荷空乏化し、電荷の拡がりを制限し、オンチップトランジスタ特性を改善する。(後に引用するIEDMペーパーの図2を参照)。しかしながら、この電圧は電界に対応する降伏電圧よりかなり低くなければならず、シリコンの場合室温で約2×105V/cmである(S.M.Sze、半導体デバイスの物理学、第2版、ジョンウイリィ・アンド・サン、103頁、1981年)。極端に少数の電荷キャリヤ(N)を有する高抵抗率基板は、低い裏面電圧で完全な電荷空乏化が達成できるように、特別に製作される。
十分な電圧を掛ければ基板は完全に電荷キャリヤの空乏化ができるので、基板の厚さは、従来の裏面入射CCDsの場合よりもかなり厚くできる。厚い基板には、機械的強度、長波長光子の吸収、製作経済性をはじめ幾つもの利点がある。
【0016】
本発明による組み合わせの基板の厚さ(図1の8,図2Aの18)は約100μmと約5mmの間にある。経済的製作経済性、機械的強度、電化空乏化の容易性、の3つの理由から、基板厚さの下限は約200μであるのが望ましい。経済的製作性のため、機械的強度のため、そして長波長光子及び短波長光子を検出するためには、更に、基板厚さの下限を約250μとするのが望ましい。厚さ10mmの基板が、その長い吸収長の故に、高エネルギーX線光子の検出に使用される。現実的範囲としては、基板の厚さは、対象の光子の吸収長の約2ないし3倍の間の厚さが用いられる。それ故、例えば、赤外部(IR)近くの光子を検出するには、基板厚さは約300μmのものが良好に機能する。
本発明による電気伝導性光子透過性裏面層の厚さは、部分的には、検出器で感知される放射の形式の関数である。短波長光子に対しては、裏面層は非常に薄くなければならない。長波長光子に対しては、裏面層は厚くてもよい。裏面層の厚さに関する機能的な制限は、検出の対象である入射光子に対して透過性でなければならないということである。裏面層が漸進的に厚くされるにつれ、短波長光子に対しては不透過性となる。
【0017】
伝導性裏面層は、検出器の用途により、約10ないし100μmの間の厚さとなるように作ることができる。100μmの裏面層の厚さは丁度シリコンバンドギャップの下にあり、約1000ないし1100nmの間の波長を有する光子に対してだけ透過性となる。厚さ10μmの裏面層は、約800ないし1100nmの間の波長を有する光子に対して透過性となる。現在の蒸着技術を用いれば、10μmのポリシリコン層は、蒸着に60時間を要する。さらに一般的には、本発明による光子検出器は、約10nmないし1μmの間の厚さを持った裏面層で作られる。厚さ1μmの裏面層は、約550ないし1100nmの間の波長を有する光子に対して透過性となり、この中には赤及び赤外部が含まれる。10ないし100nmの裏面層は、長波長光子のみならず青の光子にも透過性となり、この厚さ領域の裏面層を有する幾つかのデバイスが作られている。裏面層厚さの最も有用な範囲は約10ないし50nmの間にあり、それはこの範囲が短波長光子と長波長光子両方に透過性となり、且つ蒸着段階に必要とされる時間が、もっと厚い裏面層より短いからである。
【0018】
シリコン内の光子吸収長は温度に依存し、温度が下がるほど吸収長が増える。基板厚さが、検出される光子の吸収長の2又は3倍以上であれば、電荷空乏化に過剰な裏面電圧が必要となる。完全な電荷空乏化に必要な裏面電圧は基板厚さの二乗で増加する。更に、基板厚さが光子吸収に必要な以上に厚ければ、解像に幾らかロスが生じる。
光電検出器では、暗電流を低く維持するのが重要である。暗電流を低く保つ一つの方法は、暗電流を増加させない原位置ドープCVD裏面層を使用することである。
【0019】
ポリシリコン層は原位置ドープされ電気伝導性となる。ドーピングは、電気伝導性を増す、ポリシリコンにとっての追加の要素である。ウィンドウ層は、シリコン内に小さな吸収深さを有する短波長光に対して透過性とするため、光学的に薄い。
ポリシリコンをドープするにはいろいろな方法がある。CVDを用いれば、裏薄上にn+層を確保でき、これは良好な短波長光吸収に必要である。ドーピングのもう一つの方法はドーパントのイオン注入であるが、現存の注入器では、このように薄い(100A)層に容易に注入することはできない。更に、イオン注入は暗電流を増加させることになりかねない熱サイクルを必要とする。更に又他のドーピング技法は熱拡散法を用いたドーピングであるが、今述べたのと同じ問題を有する。
薄い裏面層をドーピングするのに使えるもう一つの方法は、分子線エキタピシ法であるが、非常に費用がかかる。費用が問題でない場合、この方法で行うのは幾らか利点がある。
【0020】
本発明による組み合わせは、シリコンウェハを薄くする必要がないので、特別に良好な長波長応答性を有している。活性容積(シリコンウェハの厚さ)は通常のCCDs又は他のセンサーよりも遙かに厚いので、赤外部領域にあるような長波長光子はシリコンの活性容量内で吸収されそれを通過させる代わりに電荷キャリアを生成する。
薄い裏面ポリシリコン層は、基板を空乏化するためにバイアス電圧を掛けることを考慮した透過性電気接点としても働く。シリコンは屈折率(3.7)が高いので、層の反射率はかなり高い。例えば、反射率は長波長では33%であり、短波長ではもっと大きい。裏面ウィンドウ層の反射率を下げる伝導コーティングを施せば、本発明による組み合わせの量子効率が上がる。
【0021】
透過性低抵抗率裏面層とシリコンウェハの本発明による組み合わせは、更に反射防止層(図1の10、図2の20)と組み合わされる。反射防止層は、電気伝導性で透過性の、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)であるのが望ましい。原位置ドープされたポリシリコンをITOでコーティングすれば、反射ロスは低くなり、その結果量子効率はよくなる。伝導性外層を使えば、更に直列抵抗が減り、低ノイズデバイスが作れる。裏面層とシリコンウェハの組み合わせにITOコーティングを施せば、ほぼ2の因数の暗電流の低減が観察された。
ITO層は反応スパッタリングによって蒸着された。イオン化したアルゴン原子がバイアスを掛けられたITOターゲットに引きつけられて、ITO分子を昇華させた。分子は基板の裏面層上に、それを直接ITOターゲットから直接対抗する側に配置することにより蒸着される。
【0022】
本発明による組み合わせの主要な利点は、裏面ウィンドウ層が、紫外部から赤外部までX線を含め、光子の全スペクトルに対し透過性であり、光子が活性シリコン容積6に入って電荷キャリアを生成できることである。比較的厚いシリコンウェハに裏面ウィンドウを施すのには、幾つかの利点がある。
・厚いデバイスは薄いデバイスほどにはひずみの影響を受けにくい。
・裏面層に電圧を掛け、裏面接点付近に実質的に零電界領域のない、完全に荷電空乏化されたデバイスを作り出すことができる(このような零電界領域は望ましくない重大な電荷拡散を起こす)。
・薄いデバイスで問題となる、赤の縞が取り除かれる。
・本発明による組み合わせを使う検出デバイスは、薄くする必要無しに対応する良好な青の応答を備えて裏面入射することができる。
・活性容積は長波長光子に対し透過性ではない。
【0023】
活性シリコン容積の厚さは、長波長光子を吸収しそれにより検出するように選定することができる一方、その同じ厚さは、例えば青及び紫外部領域にある短波長光子により作り出される荷電キャリアのロスに結びつきかねない。短波長光子の検出を助けるために、導電性裏面ウィンドウ層(又は随意的ITOコーティング)とフォトダイオードのp+領域との間に電圧が掛けられる。CCD又は活性ピクセルセンサーの場合、(随意的にITO及び/又は他の反射防止コーティングを有する)導電性裏面ウィンドウ層とポリシリコンゲートとの間に電圧が掛けられる。ゲート電極は埋設チャネル間を横切る電圧低下を引き起こし、埋設チャネル接合部の電圧と裏面電圧との間の差がキャリアがドリフトする電界を決める(S.ホランド他「天文学及び天体物理学で使用するための裏面入射の完全空乏化CCD画像センサーの開発」電荷結合素子及び進化した画像センサーに関するIEEE研究会、ベルギー、ブルージェ、1997年6月5−7日)。
【0024】
ポリシリコン層は、暗電流を著しく増加させることなく高抵抗率基板を完全に空乏化するに必要なバイアス電圧に耐えうる。バイアス電圧は高抵抗率n型基板内の少数の可動電子を取り除いて、光子によって生成された電荷が、空間解像のロスを引き起こすことになる、再結合又は拡散をする前にこれを集めるのに必要な電界となる、イオン化されたドナー原子を後に残す。
【0025】
電圧バイアスをシリコンフォトデバイスの裏面と表面との間に掛ける際に生じうる問題の一つは、ピクセルとCCDsのためのチャネルストップインプラントのような絶縁構造との間の電圧降伏が起こりうることである。CCDコラムは他からチャネルストップインプラントにより絶縁されているが、このインプラントはイオンインプラントであり、容積の中よりもCCDの表面により大きなドーパント不純物の集中を引き起こす。その効果は隣接するコラム間に電位バリアを作ることである。
もしこれらの領域がCCD内で電気的に浮動していれば、高い電界がCCDチャネルとチャネルストップインプラントとの間に形成され、降伏につながりかねない。CCDチャネルは空乏化されているので、チャネル内の電位は通常、掛けられたゲート電圧より5−10V以上低い。チャネルストップインプラントは、n型基板に対しては正である、掛けられた基板バイアスの幾らか分浮上する傾向にある。
【0026】
裏面ウィンドウと光子検出デバイスの表面との間に電圧を掛けると、完全に電荷空乏化された光子感知容積が作り出せる。これは又、光子により生成された電荷キャリアが検出器の表面に向けて動くので、電荷の拡がり、即ちブルームを制限することにより空間解像度を改善する。
降伏を避けるために、インプラントされていないシリコンのわずかなギャップがチャネルとチャネルストップインプラントとの間に残される。この領域は軽くドープされるので、電界は低くなっており降伏が避けられる。
【0027】
現在の実施例の多く(例えば、CCDs、フォトダイオード、活性ピクセルセンサー)はn型基板を使用しているが、この技法は又、p型シリコン上に組み立てられる放射検出器にも適用されてきた。その場合、絶縁インプラントはシリコン上の2酸化シリコン層内の固定電荷を補償する必要がある。常に正に充電されている固定電荷が存在しない場合、隣接するエレメントを短絡することのできる電子の逆転層を生じることになる。
バイアス電圧VBは、光子感知シリコン容量の抵抗を始めとする幾つかの因子に基づいて選定される。
【0028】
利用できる最小バイアス電圧VB-MINは、空乏化電圧に等しい。しかし実用的見地から、普通は空乏化電圧よりも幾らか高い電圧VBを用いる。我々は経験から、VB=VB-MIN+X%(VB-MIN)を用いたが、ここにX=N(空乏化領域内のcm3当たりのドーパント原子の数)の変数である。シリコン基板中の抵抗が約10−12kΩ−cmである場合、通常VB=35Vが使用される。最大VBは、1次電荷キャリアの衝突イオン化による2次キャリアの存在により制限されるが、この現象はノイズの増加と電圧降伏により観察される。
空乏化電圧VDは、
D=(0.5qN(xD2)/εS
で与えられ、ここに、Nは空乏化領域内のcm3当たりのドーパント原子の数、xDは空乏化領域の長さ、qは電子の電荷(1.602 10-19C)、εSはシリコンの誘電率(1.0 10-12F/cm)である。Nは抵抗率と、
ρ=(qμN)-1
の関係にあり、ここに、ρは抵抗率、μはキャリア移動度である(軽くドープされた材料に関しては、電子移動度は正孔移動度の3倍であることに留意のこと。このため、同一抵抗率に対して、n型シリコンの場合のNは、p型シリコンと比較して3倍少ない)。
【0029】
空乏化電圧はxDの二乗に比例するので、空乏化電圧を妥当な値に保つためにはNが小さくなければならない。xDが大きければ良好なIR近傍応答が期待でき、更にNが小さければ、良好なIR近傍応答及び妥当な基板電圧下での裏面入射の可能性という、両方の世界でベストの結果が得られる。
表Iは種々の高抵抗率CCDsについて、ρ及びNを比較したものである(正孔移動度を約500cm2/V−sec、電子移動度を1500cm2/V−secと仮定している)。
【0030】
表I

【0031】
100μmと1000μmの間の基板を妥当な電圧で空乏化するには極端に低いNが必要となる。上の表が示すように、本発明は十分に低いNを持って組み立てられている。他の基板、例えば、ウェスチングハウスの研究者により開発された、低いNを持つ基板は、通常のデバイスに使用できるよりも遙かに高い、極端に高い暗電流を呈している。一般的には、他が同じであれば、Nが低いほど、本発明によるデバイスの性能は良い(D.M.マッカム他「エリアアレイX線センサー」焦点面技術における進化、SPIE会報、118−128,198頁)。
低いNを使う利点は基板が比較的低い電圧(約20−25V)で空乏化できることにある。これによって降伏の問題は起こりにくくなり、CCDピクセルと出力増幅器の一方若しくは両方についての問題に関わる懸念が少なくなる。両方の懸念共に、極端に低いNに対する強固に2次元的な特性によるものである。トランジスタ及びCCDの特性は、電圧が降伏電圧以下にとどまる限り、裏面電圧の増加と共に改善される。電界及び裏面電圧の強い2次元特性は2次元電界を幾らか平坦にする。裏面電圧のCCD出力トランジスタ特性に与える影響は、S.ホランド他の「高抵抗率シリコン上に作られた、200×200CCD画像センサー」(国際電子デバイス会議(IEDM)技術ダイジェスト、911−14頁、1996年、カリフォルニア州サンフランシスコ)で議論されている。
十分に低いNの高抵抗率シリコンを得るために、ドイツのバッカーケムトロニック社が注文仕様を準備している。このドイツの会社に渡す仕様を以下の例に示す。WフォンアモンとHヘルツァは、低N高抵抗率基板の製作について、彼らの論文「検出器に使うための高抵抗率シリコンの製造と入手性」(物理研究における核計測及び方法、A226、94−102頁、1984年)で論議している。
【0032】
出力トランジスタにとって、パンチスルーが懸念事項であり、CCDピクセルにとっては、ポテンシャルウェルを形成し電荷を蓄える能力が関心事である。1つのピクセルから他のピクセルへとスピルオーバーする電荷を持ったチャネルに沿うピクセルの間の絶縁は劣っていても良い(チャネルストップインプラントの影響を受けず、これがチャネルを互いに絶縁する)。
反射防止コーティングを用いれば反射ロスは低減できる。2酸化シリコン(屈折率1.45の絶縁材)及びインジウム錫酸化物(透過性で屈折率1.8−2.2の導体)は共に成功裏に使用されてきた。使用できるものは他にもたくさんある。
陽電子放射断層撮影法(PET)で用いられるフォトダイオードに関しては、ITO厚さは、シンチレーションしている水晶が特定の波長の光子を放射する所望の波長に調整された(S.ホランド他「低ノイズ、裏面入射シリコンフォトダイオードアレイの開発」核科学に関するIEEE会報、44(3)、443−7,1997年6月)。約4分の1波長厚のITOが蒸着された。もう一つのアプローチは反射防止特性のための2つのコーティング、即ち、ITOの下層及び2酸化シリコンの上層、を用いることである。反射防止コーティングの技術は良く開発されており、本発明による組み合わせの裏面ウィンドウに適用できる。そのような材料と議論の2つのソースはブルックとM.D.ネルソンの論文「電荷結合素子のための安定した紫外部反射防止コーティング」(SPIE1900、228−240、1993年)及びM.レッサーの論文「シリコン電荷結合素子のための反射防止コーティング」(光学技術、26(9)、911−915、1987年)である。
【0033】
透過性の伝導性酸化物(TCOs)と称されるクラスの材料で作られたフィルムはITOの代替材を提供し、同様な特性を有している。一般的に、低い屈折率を有するフィルムは何れも反射防止コーティングとして使用できるが、高抵抗率の層は、ある環境下、例えば非常に鮮やかな画像に対しては、望ましくない程に不均一な裏面電圧を生ずる結果となる。反射防止コーティングとしてのこの他の候補材には、酸化ハフニウム、酸化鉛、酸化アルミニウム、窒化シリコン、フッ化マグネシウムが挙げられる。
インジウム錫酸化物は以下の多くの利点を有している。
1)導電性であり、薄い裏面層の抵抗を低減する(フォトダイオードの場合ノイズを配慮すると、そしてCCD用に裏面上に等電位を作り出すためには重要である)。
2)屈折率は空気/ITO/シリコンのインタフェースに適している(中間フィルムが空気とシリコンの幾何学的中間である屈折率を有する場合、4分の1波長板に対応する波長で理論的にはゼロの屈折率となる)。これは先に引用したIEEE核科学論文に詳しく議論されている。
3)室温で蒸着され、漏洩電流を低下させない。
4)導電性なので、物理的裏面接点が容易に作れる。
【0034】
MgFのような絶縁層は薄いポリシリコン裏面層と互換性がある。しかし、絶縁材を反射防止層として使う場合、裏面接点を作るために絶縁材の一部を取り除くか、或いは電圧を表面に掛けて裏面はフロートさせておくかしなければならない。
高抵抗率シリコン基板を光子感知容積として使って作られたCCDは本発明の一つの態様である。このような高抵抗率シリコンで作られたCCDが、裏面に電気伝導性の層をつけて、或いはそれ無しで、有効に作動するのは驚くべきことである。高抵抗率容量は電位を強く2次元化し、多くの人は、そのような高抵抗率材中にはポテンシャルウェルは機能的に形成されないであろうと思っている。
ピクセルは本発明によるデバイスでは15×15μm2と小さく作られている。高抵抗率材上にそのように小さなピクセルを作ることができるとは思われていなかった。低抵抗率シリコン上の商業ベースのデバイスのピクセルのサイズは27×27μm2か18×24μm2かの何れかである。
【0035】
裏面層はリンで、約0.0001ないし10原子パーセントドーピングの間にドーピングされる。リンで、約0.001ないし3原子パーセントの間にドーピングされるのがより好ましい。リンで、約0.1ないし3原子パーセントの間にドーピングされるのが最も好ましい。作動モデルは約1ないし1.5原子パーセントのリンのドーピングを使い、アニーリングなしで作られた。詳細は先に引用した核科学に関するIEEE会報に述べられている。
表面ピニング。CCDの暗電流はバルク成分と表面成分の両方を持っている。リンでドーピングされたポリシリコン層から効果的にゲッタリングすれば、表面成分を暗電流の主要ソースとして残しながら、バルク成分を大きく低減することができる。
【0036】
表面電流を低減する技術には、表面のインタフェース状態をチャネルストップインプラントから供給されるキャリアで満たすことが含まれる。デバイスの前にあるポリシリコンゲート電極には、キャリアの逆転層が作り出されて表面状態を満たすように、バイアスが掛けられている。一旦満たされると、この状態はもはや暗電流には寄与しない。表面に可動キャリアが集中し電位を釘付けにするが、これを表面ピニングと呼ぶ。この技法はチャネルストップインプラントにバイアスが掛けられていることを必要とする(通常は接地電位で)。
完全に空乏化されたCCDに対しては、裏面ウィンドウに掛けられたバイアスとCCDそれ自身の外のチャネルストップ接点との間にオーミックパスがあってもよく、その結果は裏面とチャネルストップの間に大電流が流れることになる。適切なジオメトリ(即ち、前面上のn+接点がp+で取り巻かれていなければならないか、又はCCDピクセルが両側になければならない)を有する単純なダイオード構造を使えばチャネルストップ電流は低減される。このジオメトリ設計は近くのp−n接合部を経由してチャネルストップに逆バイアスを掛ける。
【0037】
上記のCCDジオメトリと組み合わせて使用した場合、表面電流を著しく低減できる技術が他にもある。低温での長い放射時間は、表面状態でキャリアをトラップする。先ずキャリアに、チャネルストップが接続され、全てのCCDゲートが表面キャリアタイプを逆転するに十分な電位に保持されている状態下で、表面状態を満たさせる。次に、チャネルストップ接点は浮動化され、長放射時間定数がCCDの作動の間、表面電流を低く維持する。
裏面上の正しい方向を指すように電界を保つためのUV充電のような信頼性のない技法は、本発明の裏面層に掛けられる電圧がこの問題を取り除くので、本発明を用いれば回避できる(「高抵抗率シリコン上に作られた、200×200CCD画像センサー」国際電子デバイス会議(IEDM)技術ダイジェスト、911−14頁、1996年、カリフォルニア州サンフランシスコ)。
【0038】
問題は自然の酸化物が自然にシリコン上に形成されることである。シリコン上の酸化物は常に、インタフェースに一定の正の電荷を持っている。通常使用されているp型シリコンでは、この正の電荷が裏面に小さな空乏層を形成する。短波長光子に対しては、生成された電子にこの一定電荷が裏面に向けて付加される。解決策は、この一定の正電荷にうち勝つために電子の表面層を作り出す裏面のUV充電である。もう一つのの技法は、薄い透過性ゲートの仕事関数が正電荷にうち勝つフラッシュゲートである。
この問題を解決するためのもう一つの試みでは、RCAの研究者が、正電荷が働くn型シリコン上の従来型低抵抗率CCDで、ホールをポテンシャルウェルに向けて反射させている。本発明を使用すれば、裏面電圧を掛けるとこの問題は解消する。CCDがp型基板で作られている場合でも、本発明を使用すれば、電荷の基板を空乏化するだけの十分大きな裏面電圧は、正電荷を償う以上となる。
【0039】
本発明による放射感知デバイスに関しては幾つかの重要なパラメータがある。
・裏面層は約0.0001ないし10原子パーセントドーピングの間に、リンでドーピングされる。約0.001ないし3原子パーセントの間に、リンでドーピングされるのがより望ましい。約0.1ないし3原子パーセントの間に、リンでドーピングされるのが最も望ましい。作動モデルは、約1原子パーセントのリンのドーピングを使い、アニーリングなしで作り上げられた。
・n型基板に関しては、光子感知容積に対して用いられる基板の抵抗率は、約100Ω−cmと約20KΩ−cmの間にあってもよい。約6KΩ−cmと約12KΩ−cmの間にあるのがより望ましい。
・p型基板に関しては、光子感知容積に対して用いられるシリコン基板の抵抗率は、約100KΩ−cmと約20KΩ−cmの間にあってもよい。約6KΩ−cmと15KΩ−cmの間にあるのがより望ましい。
【0040】
・本発明による電気伝導性裏面層と光子感知シリコン容積の表面上の導電領域との間に掛けられるバイアス電圧は、上端がシリコン容積を横切る電圧降伏により、下端がバイアスにより生成されるキャリア速度により制限される。シリコン容積を横切るキャリア速度は、熱拡散による半径方向のキャリアの動きにうち勝つだけ十分に大きくなければならない。
・(光子感知容積に用いられるシリコン基板の)抵抗率が低くなるにつれ、完全空乏化に必要な電圧は減少する。感光容積シリコンの抵抗が低くなりすぎると、バイアス電圧が降伏を引き起こすか、或いは状態が空乏化する前に過度のノイズを生じる。
【0041】
・(光子感知容積に用いられるシリコン基板の)抵抗率が高くなるにつれ、CCDゲート下のポテンシャルウェルのジオメトリはより2次元的となり、トランジスタ特性は劣化する。この現象は、シリコン基板で使用できる最高抵抗率を制限する。2次元効果は部分的には、裏面電圧を上げることにより補償できる。裏面電圧が空乏化電圧を超えると2つの項が電界を記述する(先に言及した、1997年IEEEベルギー研究会報告書の式2を参照)。Nが非常に小さい場合には、Vappl/Ydが支配的で、Nの値は重要ではない。数多くの2次元シミュレーションが、高抵抗率CCDの全ウェル容量を低抵抗率CCD(約20Ωcm)と比較するために行われた。驚くべきことに、先のレポートとは対照的に、2つの抵抗率状態の間で、全ウェル容量には差が見られなかった。ウェルの平坦化がおそらく裏面電圧によって補償されたのであろう。
・本発明による電気伝導性裏面層の厚さは部分的には、検出器によって感知される放射の形式の関数である。短波長光子に対しては、裏面層は非常に薄くなければならない。長波長光子に対しては裏面層は厚くてもよい。裏面層の厚さに関する機能的制限は、それが検出対象の入射光子に対して透過性でなければならないということである。裏面層が漸進的に厚くされるにつれ、短波長光子に対しては不透過性となる。裏面層は、検出器の用途により、約10nmと約1000μmとの間の厚さを有するように成功裏に作られてきた。より好ましくは、漏洩電流を最小化するために裏面層を約10nmと約100μmの間にするのがよい。
【実施例】
【0042】
実施例1:裏面ウィンドウの製作
本発明による裏面ウィンドウは、ホスフィン(PH3)が存在する中で、高抵抗率シリコン基板上に、シラン(SiH4)の低圧化学蒸着(CVD)により蒸着される。この処理は低温、即ち約650℃で、極度にクリーンな環境下で行われ、不純物は10億分の1以下に保たれる。これは低温の工程なので、多結晶シリコン(ポリシリコン)層の蒸着は、高温の処理が全て完了した後、プロセスの終わり近くで行われる。以下のプロセスプロトコルはウィンドウを適用するための一つの順序を示す。バキュームチャンバーの側壁はチャンバー壁上に蒸着したポリシリコンで覆われている。使用されるガスの純度は99.999%である。シリコンウェハは、もし一般的に受け入れられているとすれば、必要なプロトコルによって予洗浄される。基板は、裏面ウィンドウが蒸着される前に、ゲッタリング処理に掛けられる。厚い、リンでドーピングされたポリシリコンがゲッタリングに用いられ、次に、裏面ウィンドウが蒸着される前にエッチングされる。ゲッタリングの工程は、S.ホランドが「高抵抗率シリコン上への検出器とトランジスタの製作」と題する1989年の物理研究における核計測及び方法、A275、537−541頁、で公にしている方法に従って行われる。このプロセスは実質的に金属汚染物を含まない基板を提供する。
【0043】
裏面層は約0.0001ないし約10原子パーセントドーピングの間にリンでドーピングされる。約0.001ないし約3原子パーセントの間にリンでドーピングされるのがより望ましい。約0.1ないし約3原子パーセントの間にリンでドーピングされるのが最も望ましい。作動モデルは約1原子パーセントのリンのドーピングを使って作られた。
基本的に、薄い裏面ポリシリコンウィンドウの蒸着は以下の工程で行われる。
a.最終希釈HFエッチングとそれに続くDIリンスの追加による標準予拡散洗浄
b.サームコレシピDPOLYを用いたウェハ裏面上のドーピングされたポリシリコンのLPCVD
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さの計測
処理は温度約650℃、圧力400ミリトールで、SiH4中1%PH3のガスフローを使って行う。
【0044】
実施例2:低N基板の入手
所望の高抵抗率、低Nシリコンウェハを入手するため、幾つかの候補ウェハメーカーから入札が得られた。ここに記載する実験の大部分に使われたウェハは、ワッカーシルトロニック社、地区販売室(カリフォルニア州95117、サンジョゼ、#114、モールパーク通り4010、408/554−9728)からの注文生産品である。ウェハは以下の仕様に従って製作された。
【0045】
1.型式:n型、リンドーピング、フロートゾーン不純物除去、無転移
2.結晶体方位:<100>
3.抵抗率:6000Ω−cm以上、好ましくは10,000Ω−cm近く
4.小数キャリア寿命:1ミリ秒以上
5.直径:100mm
6.呼び厚:300μm
7.平坦度:SEMI標準による
8.エッジ:エッジには、取り扱いの間にウェハの破壊につながる恐れのあるエッジ亀裂が生じるのを最小化するために、丸みを付けること。
9.ウェハ仕上げ:片側研磨、反対側は損傷無きこと、即ち、裏面には故意の損傷又はゲッタリングなし。
10.厚み許容差:+/−15μm max.
11.テーパ:<5μm max.
12.曲がり:<30μm max.
13.数量:500ウェハ
【0046】
実施例3:電気伝導性、光子透過性の裏面層を有するフォトダイオードの製作
以下のプロセスフローは、裏面に電気伝導性、光子透過性ポリシリコン層を有する裏面入射フォトダイオードをn型基板上に製作するために使われた。更新されたプロトコルが、カリフォルニア州バークレイのローレンスバークレイ国立研究所、電話510/486−4000の発明者より入手可能である。
開始材料:抵抗率4kΩ−cm以上、厚さ300μm、<100>n型シリコン(ワッカーからの注文仕様品)の基板用シリコンウェハ。
【0047】
(1)低温酸化物蒸着
a.標準予拡散洗浄
110℃で5分間ピラーニャ(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
希釈HFエッチング(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
40℃で5分間メガソニックRCA I洗浄(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
希釈HFエッチング(WPS2)
DI水リンス(WPS1)
40℃で5分間メガソニックRCA II洗浄(WPS1)
DI水リンス(WPS1)
b.5000AのSiO2のLPCVD、サームコレシピUDLTOを使用し、425℃で、30分間の蒸着
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0048】
(2)裏面酸化物除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.ウェハを、裏面酸化物が完全に除去されるまで、6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)でエッチング
e.ピラーニャでレジスト剥ぎ取り(WSP5)
(3)1μm原位置ドープポリシリコン蒸着
a.最終希釈HFエッチングとそれに続くDIリンスの追加による標準予拡散洗浄
b.ウェハ裏面上のドーピングされたポリシリコンのLPCVD、サームコレシピDPOLYを用いた約6時間の蒸着
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
【0049】
(4)1000A窒化物蒸着
a.予拡散洗浄、但し、ウェハがドーピングされたポリシリコンの蒸着に続いて直ぐに窒化物のチューブにローディングされた場合は不要
b.ウェハ裏面に1000Aの窒化シリコンのLPCVD、サームコレシピNITRIDEを使用し、47分間の蒸着
(5)表面窒化物/ポリ除去
a.技法cエッチャーオンキャンパスを用いて表面窒化物/ポリをプラズマエッチング。100W、280ミリトール、13sccmSF6、21sccmHe
(6)表面LTO除去
a.BOEで表面LTOをエッチング
(7)4000Aフィールド酸化
a.標準予拡散洗浄
b.4000Aのフィールド酸化物を成長させるための蒸気酸化、サームコレシピWET4000A、チューブ2−1を使用し、900℃で4時間45分、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さを計測
【0050】
(8)マスク1(p+インプラント)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク1を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(9)酸化物エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.1000A熱酸化物テストウェハを用いて6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)速度のエッチング速度を決定
c.BOEエッチング速度と計測厚さに基づき、必要なエッチング時間を算出。湿潤化に必要な全ての時間に加えて、この時間に20%を加え、ウェハをエッチング
d.DI水リンスの後、大きなエッチング面上で疎水性表面挙動を検査。完全な酸化物除去を確認するため、残留酸化物厚さをナノ仕様で計測
e.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
【0051】
(10)ボロンのインプラント
a.B+、2 1015cm-2のドーズ、30keVのエネルギー、7度のチルト角
(11)1000A熱酸化/インプラントアニール
a.標準予拡散洗浄:
b.1000Aのフィールド酸化物を成長させるための蒸気酸化(900℃で37分)し、続いて2時間の窒化物アニール、サームコレシピW1000DET、チューブ2−1、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さを計測
(12)裏面の酸窒化物/窒化物の除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.ウェハを、裏面酸化物を除去するため、6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)で3分間エッチング
e.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
f.裏面窒化物をリン酸中にて190℃で除去
【0052】
(13)裏面ポリシリコンの除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.ウェハを、裏面ポリシリコン及び拡散n+層が除去されるまで、シリコンエッチングでエッチング。裏面ポリ蒸着からのモニターウェハを使用して適切なエッチング時間を定め、裏面ウェハ上で4点探針計測により除去を確認
(14)薄い裏面ポリシリコン蒸着
a.最終希釈HFエッチングとそれに続くDIリンスの追加による標準予拡散洗浄
b.サームコレシピDPOLYを用い、ウェハ裏面上のドーピングされたポリシリコンのLPCVD、
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
(15)表面ポリシリコン除去
a.技法cエッチャーオンキャンパスを用いて表面ポリシリコンをプラズマエッチング。100W、280ミリトール、13sccmSF6、21sccmHe。酸化物に対するこのエッチングの比較的劣った感度によるオーバーエッチングの最小化
b.ピラーニャでウェハを洗浄(WPS5)
【0053】
(16)マスク2(接点マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク4を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(17)接点エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.低温酸化物モニターウェハを用いて6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)速度のエッチング速度を決定
c.BOEエッチング速度と計測厚さに基づき、必要なエッチング時間を算出。湿潤化に必要な全ての時間に加えて、この時間に20%を加え、ウェハをエッチング
d.DI水リンスの後、大きなエッチング面上で疎水性表面挙動を検査。完全な酸化物除去を確認するため、残留酸化物厚さをナノ仕様で計測
e.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
(18)0.5μmアルミニウム蒸着
a.希釈HFバスのエッチング速度を決定
b.エッチング速度計測に基づき、60Aの酸化物を除去するためにエッチング
c.ウェハをMRC603にロード
d.6kW、15cm/秒、10ミリトールでアルミニウムをスパッタリング
【0054】
(19)マスク5(融解マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク5を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(20)メタルエッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.ウェハをアルミニウムエッチング液中にて30℃でエッチング
c.キャンパス技法cプラズマエッチャーでシリコン残留物を除去
d.PRS−2000でレジストを剥ぎ取り(WPS5)
(21)焼結
a.サームコレシピSINT400,チューブ1−2を使い、成形ガス中にて400℃で焼結
(22)裏面ITO蒸着/アニール
実施例5参照
【0055】
実施例4 CCD
以下のプロセスフローは、裏面に電気伝導性、光子透過性ポリシリコン層を有する裏面入射電荷結合素子をn型基板上に製作するために使われた。
開始材料:抵抗率4kΩ−cm以上、厚さ300μm、<100>n型シリコン(ワッカーからの注文仕様品)の基板用シリコンウェハ。
【0056】
(1)低温酸化物蒸着
a.標準予拡散洗浄
100℃で5分間ピラーニャ(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
希釈HFエッチング(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
40℃で5分間メガソニックRCA I洗浄(WPS2)
DI水リンス(WPS2)
希釈HFエッチング(WPS2)
DI水リンス(WPS1)
45℃で5分間メガソニックRCA II洗浄(WPS1)
DI水リンス(WPS1)
b.5000AのSiO2のLPCVD、サームコレシピUDLTOを使用し、425℃で、30分間の蒸着
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0057】
(2)裏面酸化物除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.ウェハを、裏面酸化物が完全に除去されるまで、6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)でエッチング
g.ピラーニャでレジスト剥ぎ取り(WSP5)
(3)1μm原位置ドープポリシリコン蒸着
a.最終希釈HFエッチングとそれに続くDIリンスの追加による標準予拡散洗浄
b.ウェハ裏面上のドーピングされたポリシリコンのLPCVD、サームコレシピDPOLYを用いた約6時間の蒸着
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
【0058】
(4)1000A窒化物蒸着
a.予拡散洗浄、但し、ウェハがドーピングされたポリシリコンの蒸着に続いて直ぐに窒化物のチューブにローディングされた場合は不要
b.ウェハ裏面に1000Aの窒化シリコンのLPCVD、サームコレシピNITRIDEを使用し、47分間の蒸着
(5)表面窒化物/ポリ除去
a.技法cエッチャーオンキャンパスを用いて表面窒化物/ポリをプラズマエッチング。100W、280ミリトール、13sccmSF6、21sccmHe
(6)表面LTO除去
a.BOEで表面LTOをエッチング
(7)500Aゲート酸化
a.標準予拡散洗浄
b.500Aのゲート酸化物を成長させるためTCAで酸化物を乾燥、サームコレシピD200GATW、チューブ2−2を使用し、900℃で3時間45分間、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
d.ウェハを速やかに窒化炉にロード
(8)500A窒化物蒸着
a.ウェハはゲート酸化炉から直接ロードされているので洗浄不要
b.500Aの窒化物蒸着、サームコレシピNITCCD、チューブ2−4を使って20.5分の蒸着
c.モニターウェハ上の窒化物厚さ計測
【0059】
(9)マスク1(活性領域マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク4を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(10)窒化物エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.技法cプラズマエッチャーオンキャンパスを用いて窒化物エッチング。適切なエッチング時間を定め、その半分の時間エッチングし、ウェハを180度回転し、残り半分をエッチング(エッチングの均一性改善)
c.レジストを除去しないこと
【0060】
(11)フィールドインプラント(リン)
a.1・1012cm-2のドーズ、30keVのエネルギー(照射範囲約0.15μm)、7度のチルト角(目標:酸化物厚さ0.5μmで250Vのフィールドスレッショルド電圧)
(12)レジスト/酸化物除去
a.ピラーニャでレジストの剥ぎ取り
b.プラズマエッチングの後6:1BHFで残余酸化物をエッチング
(13)4500Aフィールド酸化
a.標準予拡散洗浄:
b.4500Aのフィールド酸化物を成長させるための蒸気酸化、サームコレシピWET4500A、チューブ2−1を使用して450℃で5時間、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さを計測
【0061】
(14)マスク2(チャネルマスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク2を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(15)チャネルインプラント(ボロン)
a.1.0、1.5、及び2.0・1012cm-2のドーズ、150keVのエネルギー(照射範囲約0.4μm)、7度のチルト角
(16)レジスト除去
a.ピラーニャでレジストを除去
(17)ポリシリコン−1蒸着
a.標準予拡散洗浄
b.ドーピングされていないポリシリコンのLPCVD、4500A。レシピPOLY4500、615/620/630℃で53.5分の蒸着、40sccmシラン前/後フロー、200ミリトール圧
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
(18)ポリシリコン−1インプラント(ボロン)
a.2.0・1015cm-2のドーズ、150keVのエネルギー(照射範囲約0.2μm)、7度のチルト角
【0062】
(19)マスク3(ポリシリコン−1マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク3を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(20)ポリシリコン−1エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.ラム4プラズマエッチャーオンキャンパスを用いてポリをエッチング
c.酸素プラズマでレジストを剥ぎ取り、その後ピラーニャ洗浄
(21)裏面ポリシリコン−1の除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.ポリをシリコンエッチング液中でエッチング
g.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り
(22)ポリシリコン−1酸化
a.最終HFエッチングにより標準予拡散洗浄
b.1700Aのポリ間酸化物を成長させるためTCAで湿潤酸化、サームコレシピPOLY2K、チューブ2−1を使用し、950℃で30分、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.キャンパスnanoduvを使い、モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0063】
(23)ポリシリコン−2蒸着
a.ウェハが酸化チュ−ブより直接ロードされている場合は洗浄不要
b.ドーピングされていないポリシリコンのLPCVD、4500A。レシピPOLY4500、615/620/630℃で53.5分の蒸着、40sccmシラン前/後フロー、200ミリトール圧
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
(24)ポリシリコン−2インプラント(ボロン)
a.2.0・1015cm-2のドーズ、80keVのエネルギー(照射範囲約0.2μm)、7度のチルト角
【0064】
(25)マスク4(ポリシリコン−2マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク4を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
【0065】
(26)ポリシリコン−2エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.ラム4プラズマエッチャーオンキャンパスを用いてポリをエッチング
c.酸素プラズマでレジストを剥ぎ取り、その後ピラーニャ洗浄
(27)裏面ポリシリコン−2の除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.ポリをシリコンエッチング液中でエッチング
g.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り
(28)ポリシリコン−2酸化
a.最終HFエッチングにより標準予拡散洗浄
b.1700Aのポリ間酸化物を成長させるためTCAで湿潤酸化、サームコレシピPOLY2K、チューブ2−1を使用し、950℃で30分、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.キャンパスnanoduvを使い、モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0066】
(29)ポリシリコン−3蒸着
a.ウェハが酸化チュ−ブより直接ロードされている場合は洗浄不要
b.ドーピングされていないポリシリコンのLPCVD、4500A。レシピPOLY4500、615/620/630℃で53.5分の蒸着、40sccmシラン前/後フロー、200ミリトール圧
c.モニターウェハ上のポリシリコン厚さ計測
(30)ポリシリコン−3インプラント(ボロン)
a.2.0・1015cm-2のドーズ、80keVのエネルギー(照射範囲約0.2μm)、7度のチルト角
【0067】
(31)マスク5(ポリシリコン−3マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク5を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(32)ポリシリコン−3エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.ラム4プラズマエッチャーオンキャンパスを用いてポリをエッチング
c.酸素プラズマでレジストを剥ぎ取り、その後ピラーニャ洗浄
(33)裏面ポリシリコン−3の除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.ポリをシリコンエッチング液中でエッチング
g.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り
(34)ポリシリコン−3酸化
a.最終HFエッチングにより標準予拡散洗浄
b.1700Aのポリ間酸化物を成長させるためTCAで湿潤酸化、サームコレシピPOLY1K、チューブ2−1を使用し、900℃で30分、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0068】
(35)マスク6(基板接点マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク6を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(36)酸化物エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.1000A熱酸化テストウェハを用いて6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)速度のエッチング速度を決定
c.BOEエッチング速度と計測厚さに基づき、必要なエッチング時間を算出。湿潤化に必要な全ての時間に加えて、この時間に20%を加え、ウェハをエッチング
d.DI水リンスの後、大きなエッチング面上で疎水性表面挙動を検査。完全な酸化物除去を確認するため、残留酸化物厚さをナノ仕様で計測
e.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
【0069】
(37)マスク7(基板接点インプラント)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク7を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(38)基板接点インプラント
a.リン、P+、2.0・1015cm-2のドーズ、100keVのエネルギー、7度のチルト角、基板加熱を制限するためハイブリッドモードに植え込み
b.酸素プラズマでレジストを剥ぎ取り、続いてピラーニャ洗浄
【0070】
(39)マスク8(浮動電極、ソース/ドレーンインプラント)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク8を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(40)窒化物エッチング
a.技法cエッチャーオンキャンパスを使用して窒化物をプラズマエッチング
b.レジストを剥がさないこと
(41)浮動電極、ソース/ドレーンインプラント
a.B+、2・1015cm-2のドーズ、50keVのエネルギー、7度のチルト角、基板加熱を制限するためハイブリッドモードに植え込み
b.酸素プラズマでレジストを剥ぎ取り、続いてピラーニャ洗浄
(42)5000A酸化物蒸着(LTO/BPSG)
a.標準予拡散洗浄
b.SiO2の500AのLPCVD、サームコレシピUDLTOを使用して425℃で30分の蒸着
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
【0071】
(43)高温形成ガスアニール
a.標準予拡散洗浄
b.1時間、サームコレシピFGANNEAL、チューブ1−1を使用し、形成ガス中で950℃アニール、酸化前にサームコレシピ1TCACLNを使用し炉チューブのTCA洗浄
c.モニターウェハ上の酸化物厚さ計測
(44)裏面酸窒化物/窒化物の除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.裏面LTO/酸窒化物を除去するために、ウェハを、6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)中で5分間エッチング
g.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
f.リン酸中にて190℃で裏面窒化物を除去。キャップ及びゲート窒化物間の酸窒化物を除去するためには中間希釈HFエッチングを行う必要があるかもしれないことに注意
【0072】
(45)裏面ポリシリコン除去
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.ウェハを30分間120℃でハードベーク
d.OCG825フォトレジストで再コート(MTIレシピ#1)
e.ウェハを30分間120℃でハードベーク
f.ウェハを、シリコンエッチング中で、裏面ポリシリコンと拡散されたn+層が除去されるまでエッチング。適切なエッチング時間を決めるため裏面ポリ蒸着からのモニターウェハを使用し、ウェハ裏面上の4点探針計測により除去を確認
(46)薄い裏面ポリシリコン蒸着
a.標準予拡散洗浄に最終希釈HFエッチングとその後のDIリンスを追加
b.サームコレシピDPOLYを使用して、ウェハ裏面上のドーピングされたポリシリコンのLPCVD
c.モニターウェハ上のポリシリコンの厚さ計測
(47)表面ポリシリコン除去
a.技法cエッチャーオンキャンパスを使用して表面ポリをプラズマエッチング。100W、280ミリトール、13sccmSF6、21sccmHe。酸化物に対するこのエッチングの比較的劣った感度によるオーバーエッチングの最小化
b.ピラーニャでウェハを洗浄(WPS5)
【0073】
(48)マスク9(接点マスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク9を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(49)接点エッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.低温酸化物モニターウェハを用いて6:1緩衝酸化物エッチング(BOE)速度のエッチング速度を決定
c.BOEエッチング速度と計測厚さに基づき、必要なエッチング時間を算出。湿潤化に必要な全ての時間に加えて、この時間に20%を加え、ウェハをエッチング
d.DI水リンスの後、大きなエッチング面上で疎水性表面挙動を検査。完全な酸化物除去を確認するため、残留酸化物厚さをナノ仕様で計測
e.ピラーニャでレジストを剥ぎ取り(WPS5)
(50)0.5μmアルミニウム蒸着
a.希釈HFバスのエッチング速度を決定
b.エッチング速度計測に基づき、60Aの酸化物を除去するためにエッチング
c.ウェハをMRC603にロード
d.6kW、15cm/秒、10ミリトールでアルミニウムをスパッタリング
【0074】
(51)マスク10(メタルマスク)
a.LP3にウェハを準備(HMDSアプリケーション)
b.OCG825フォトレジストをスピン(MTIレシピ#1)
c.マスク10を使用して露出(0.6秒露出)
d.3:1DI水:OCG809で現像(WPS3)
e.検査
(52)メタルエッチング
a.ウェハを30分間120℃でハードベーク
b.ウェハをアルミニウムエッチング液中にて30℃でエッチング
c.キャンパス技法cプラズマエッチャーでシリコン残留物を除去
d.PRS−2000でレジストを剥ぎ取り
(53)焼結
a.サームコレシピSINT400,チューブ1−2を使い、成形ガス中にて400℃で焼結
(54)裏面ITO蒸着/アニール
次の実施例5を参照
【0075】
実施例5:ITO層の蒸着
ITO層は、室温で、90重量%のIn23と1重量%のSnO2で構成されるターゲット(ターゲット面は12cm×38cm)からのマグネトロンスパッタリングによって蒸着された。全蒸着に使用された電力は500Wであった。ITO内の伝導は酸素空位によるものであり、それ故、フィルムにおける酸素濃度は上手に制御されねばならない。リー他の論文「室温スパッタリング蒸着されたインジウム錫酸化物の電子的光学的特性」(J.Vac.化学と技術、A−11、5、2742−6、1993年9/10月)に報告されている蒸着パラメータを用いて、フィルムはO2とArの混合気内で反応的にスパッタリングされた。フィルムに低抵抗率と高光学透過率とをもたらす蒸着条件を求めるために、合計スパッタ圧は2−8ミリトールに変えられ、O2濃度は0−5%に変えられた。
フィルムの品質を評価する際に抵抗率と透過率を共に考慮するため、厚さに依存しない量RIn(1/t)が性能係数として使われているが、ここにRはシート抵抗、tは所与の波長における光学透過率である。フィルムのシート抵抗は4点探針を使って計測され、光学透過率はタングステンハロゲンランプ付きのデュアルビーム分光光度計を使って計測された。フィルム蒸着の間、O2の分圧の関数としてプロットしたところ、RIn(1/t)は顕著な最小値を示し、最良のフィルムは、O2の分圧0.04−0.08ミリトールで得られた。
【0076】
フォトダイオードアレイへの裏面接点として、ITOが全圧2ミリトール、O2分圧0.06ミリトールで蒸着された。この蒸着状態で、フィルムの抵抗率は約4.8×10-4Ω−cmであった。低温の、蒸着後アニールによりフィルム品質は更に改善され、N2内にて200℃で1時間アニールした結果、抵抗率は約3.4×10-4Ω−cmまで下がった。アニーリング前後でITO上のホール効果を計測したところ、キャリア密度は6.7×1020cm-3から8.7×1020cm-3に増加し、キャリア移動度は19cm2/V−secから21cm2/V−secへと僅かに変化していた。アニールにより更に、厚さ54.5nmのフィルムの透過率が、S.ホランド他の論文「低ノイズ、裏面入射シリコンフォトダイオードアレイ」(核科学に関するIEEE会報、44(3)、443−7,1997年6月)の図3に示すように、上がった。透過率は特に、波長が400nmの直ぐ下で上がっており、これはおそらく材料のエネルギーギャップの増加を示すものと思われる。ルテチウム・オルトシリケートに対するピーク放射における波長であるλ=415nmでの透過率は、73%から83%に上がった。
【0077】
実施例6:400nm光を用いたテストパターンの画像
CCDsは20nmの裏面ポリシリコン層付きで製作された。更に、ポリシリコン上に、ITOの約50nmの反射防止コーティングがスパッター蒸着された(S.ホランド他「低ノイズ、裏面入射シリコンフォトダイオードアレイ」(核科学に関するIEEE会報、44(3)、443−7,1997年6月))。この層は電気伝導性があり、反射防止コーティングとして働くことに加えて、裏面接点の抵抗を低減した。
【0078】
CCDsは特別に設計された、裏面入射用の開口部を有するアルミニウム窒化物回路板上に搭載された。アルミニウム窒化物が選ばれたのは、その高い熱伝導率に加え、熱膨張係数がシリコンとよく一致しているためである。リック天文台で用いられた標準パックはアルミニウム窒化物に合うように修正された。図3は−120℃で裏面入射CCDによりとられたテストパターン画像を示す。裏面電圧は25Vで、その結果基板の過空乏化が起きた。入射光の波長は400nmであった。この波長におけるシリコン内吸収深さは約0.2μmである。光子により作り出された電荷キャリアは、それ故、300μm離れたCCDポテンシャルウェルへドリフトすることになる。図3は、厚さ300μmのシリコン基板の裏面からの短波長光子を結像するために本発明によるCCDを使用した結果を示すものである。簡単に計測したところ、400nm光子に対する量子効率は約67%であった。更に、最初の計測は、25V裏面電圧における側方電荷拡散がピクセル幅であることを示している。
【0079】
実施例7:種々の厚さの裏面層を有し、反射防止コーティングのないp−i−nフォトダイオードに関する、波長の関数としての量子効率
図4は、種々の厚さの裏面ポリシリコン層を有する裏面入射フォトダイオードについての、波長に対する量子効率の計測結果を示す。予想通り、短波長の応答はポリシリコンの厚さが薄くなるほど良くなる。更に、空乏化領域が比較的厚い(300μm)ために、赤外部付近の応答が波長約1μmまで伸びている。
【0080】
量子効率は、既知のスペクトル応答を持ったフォトダイオードと比較して計測した。λ=400−1100nmに対してはタングステンランプを、λ=300−450nmに対しては水銀蒸気ランプをそれぞれ使用した。光はモノクロメータを通過し、光ファイバーを通して、テストするフォトダイオード及びキャリブレーションされたフォトダイオード上に焦点を合わされた。図4は、計測した量子効率が、シリコンと空気の屈折率の不一致(シリコンの屈折率は約3.7)による反射ロスだけを想定して算出した量子効率と基本的に一致していることを示している。短い波長では、ポリシリコン接点における吸収に起因する集められた電荷のロスが、量子効率を反射限界から逸らせている。最も薄い(10nm)フィルムに関しては、量子効率の計測値が反射限界に非常に近く、λ=415nmでは、ポリシリコン層内のロスの原因となる量子効率の低下は約6%であることに留意されたい。
【0081】
実施例8:種々の厚さの裏面層を有し、反射防止コーティングのあるp−i−nフォトダイオードに関する、波長の関数としての量子効率
ITO反射防止コーティングの厚さは、それが対象となる波長の4分の1波長板として働くことにより反射を最小化するように選定された。即ち、
ITO=λ/4n
但し、XITOは波長λにおいて反射を最小にするフィルム厚さであり、nはITOの屈折率である。図5は、57nmのITOがコートされた10nmの裏面層を有する、裏面入射で厚さ300μmのp−i−nフォトダイオードについて、量子効率を波長の関数として示したものである(実線)。本発明によるフォトダイオードは室温で作動させた(同じくIEEE核科学)。厚さは、ルテチウム・オルトシリケート(LSO)から放射された光子の415nm波長で量子効率が最大となるように選定された。反射防止コーティングによる量子効率の改善は、100nm波長域に亘って60%を越え、λ〜450nmでピークとなり、目標値近くである。図5に示すように、薄いポリシリコン接点と4分の1波ITO層を組み合わせれば、LSO波長で約75%のQEが得られる。ビスマスゲルマニウム酸塩(BGO)に関しては、量子効率は一層高く、480nmで約90%であった。ITO厚さをBGO波長に対して最適化すれば、更に改善できるであろう。
【0082】
円形のデータ点は、約57nmのITOでコートされた、ポリシリコンの10nmの伝導裏面層を有する300μmのシリコン基板の本発明による組み合わせにより作られたCCDから採ったものである。このCCDは−120℃で作動する天体カメラに使用された。
比較のため、薄い、低抵抗率シリコン基板上に作られた、標準的反射防止コーティングを有する従来型裏面入射CCDで採ったデータを破線で示す(M.ブルック、M.D.ネルソン「電荷結合素子のための安定した紫外線反射防止コーティング」SPIE1900、228−240、1993年)。
【0083】
実施例9:裏面電圧の関数としての電荷拡散
300μmの基板上に組み立てられ、厚さ50nmのITOでコートされた20nmのポリシリコンの裏面層を有するCCDを使って、幾つかの特性を計測した。その結果を下の表IIに整理して示すが、全体的には1997年2月の国際光学エンジニアリング協会会合の会報にR.J.ストーバー他の「高抵抗率シリコン上の完全空乏化CCDの特性」と題する論文(SPIEv3019、183−8頁)中で論議されており、ここに参考資料として挙げる。
【0084】
表II

【0085】
先のパラグラフで述べた本発明によるCCDの裏面近くで作られた、光子に生成されたキャリアは、表面まで300μmドリフトしなければならないので、電荷の拡散と拡がりは重要な因子である。側方拡散を最小化するために、基板は、ゼロ電界領域を排除するため裏面電圧を用いて、完全に電荷空乏化される。又、裏面電圧を用いることによりドリフト電界をできるだけ高く維持することによって、300μmを横切る電子走行時間は短く保たれ、拡散を最小化する。図6は電荷の拡がり(シグマ)を裏面電圧の関数として示したものである。これは、基板が一旦完全に電荷キャリア空乏化されるとかなり弱い。電荷拡散の裏面電圧に対する依存性を調べるために、一連の小さなピンホールを有するマスクが作られた。2、4及び8μmのピンホールが使われたが、ピンホールのサイズは計測されたスポットサイズには殆ど影響を与えなかった。マスクはCCDの裏面上に直接置かれ、小さな光源から400nmの光を使って照明された。次に、裏面電圧が変えられ、画像が取られた。各スポットに対するx及びy方向の根二乗平均(RMS)の拡がりが計算され、平均が電圧の関数として図6に表示してある。一般的に、厚さ300μmのCCDの裏面電圧は25Vである(詳細はS.ホランド他「天文学及び天体物理学で使用するための裏面入射の完全空乏化CCD画像センサーの開発」電荷結合素子及び進化した画像センサーに関するIEEE研究会、ベルギー、ブルージェ、1997年6月5−7日、に述べてある)。
【0086】
このように、本発明は、高抵抗率シリコン検出器の裏面に取り付けられた電気的伝導層と、検出器の裏面と表面のパターンサイドとの間に掛けられたバイアス電圧とを提供する。電気的伝導層は、その特定の用途に応じて、(青のような)短波長光子、又は長波長光子、或いは両方に対して透過性となるように十分薄くすることができる。本発明が有用であることが分かっているデバイスには、フォトダイオード、CCDs(特に光の少ない状況に対し)、X線検出器、X線の直接検出(300μmの活性容積厚さを用いて、約5.9keVのX線までの感度が達成された)がある。原理的には、基板が厚くなるほど高エネルギーX線を検出できる。
【0087】
本発明を用いれば、デバイスに幾つかの利点が得られる。本発明による組み合わせを用いるデバイス上の光子感知容積にバイアス電圧を掛けると、出力トランジスタ特性とCCDs上のポテンシャルウェルジオメトリが改善される。更に、
・本発明によるCCD基板は表Iに示すように、Nが極端に低くなるように注文生産されており、
・基板を空乏化するために用いられる基板バイアスは、出力増幅特性と、恐らくはCCDウェルをも改善し、
・裏面ウィンドウは透過性で、電気伝導性で、要求される基板バイアスに適合でき、
・厚い光子感知容積の故にIR近傍の検出に優れ、
・現在の技術が青領域の感度を達成する場合に必要とするように薄くする必要なしに良好な青への応答性を有し、
・薄くされたCCDsと比べ曲がりが少なく、
・裏面ウィンドウを通して良好な短波長、長波長伝達を行い、
・薄くされたCCDsでは問題となる赤の縞が排除できる。
【0088】
裏面ウィンドウ層は、暗電流の顕著な増加を引き起こすことなく、高抵抗基板を完全に空乏化するに必要なバイアス電圧に耐えることができる(バイアス電圧は、高抵抗率n型基板内の少数の可動電子を取り除いて、光子によって生成された電荷が、空間解像のロスを引き起こすことになる、再結合又は拡散をする前にこれを集めるのに必要な電界となる、イオン化されたドナー原子を後に残す)。
本発明に関わる上記説明の実施例及び最適の形態の記述は、本発明の範囲を限定する意図で行ったものではない。様々な修正、変更及びそれと同等なことが、添付する請求の範囲の精神と範囲から逸脱することなく行えるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】裏面入射p−i−nフォトダイオード構造で用いられる本発明による組み合わせを概略表示したものである。
【図2A】裏面入射CCD構造で用いられる本発明による組み合わせを概略表示したものである。
【図2B】図2Aで示されているような、高抵抗率シリコン基板上の一つのCCDのピクセルの2次元シミュレーションを示す。等電位線を0.5ボルト間隔で示している。集電ゲートには−5Vのバイアスが掛けられており、バリアフェーズは5Vにある。
【図2C】図2Aで示されているような、高抵抗率シリコン基板上の一つのCCDの15μmのピクセルについての2次元電位分布のシミュレーションを示す。基板のドーピングは6×1011cm-3、埋め込みチャネルインプラントドーズは1.5×1012cm-2であった。
【図3】厚さ約300μmの基板を有する裏面照明CCDを使って、400nmのπ光子から作ったテストパターンの画像を示す。
【図4】厚さ300μmのp−i−nフォトダイオード上でポリシリコン裏面層の厚さを変化させた場合のQEを、波長の関数として示したものである。
【図5】厚さ300μmの基板上のポリシリコン裏面層上に57nmの反射防止コーティングを有するp−i−nフォトダイオードに関し、QEを波長の関数として示したものである(実線)。更に、厚さ300μmの基板上の本発明による裏面入射CCDに関し、QEを波長の関数として示している(円形のデータ点)。比較のため、薄い基板を有する従来型の商業ベースCCDsに関するデータも示す(破線)。
【図6】電荷拡散を、厚さ300μmの基板を有するCCDにおいて、掛けられた裏面電圧の関数として示したものである。
【符号の説明】
【0090】
2 電気伝導性裏面層
4 p+インプラント領域
6 n――型シリコン基板
10 反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面と裏面とを有する光子感知シリコン基板と、b)光子感知基板の裏面に取り付けられた電気伝導性で、光子透過性のシリコン層とを含むことを特徴とする、裏面入射の光子感知エレメント。
【請求項2】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約20μmと約5000μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項3】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約40μmと約4000μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項4】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約50μmと約2000μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項5】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約75μmと約1000μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項6】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約100μmと約750μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項7】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約100μmと約625μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項8】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約200μmと約625μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項9】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約250μmと約625μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項10】
前記光子感知シリコン基板の厚さが、約300μmと約550μmの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項11】
前記光子感知シリコン基板の抵抗率ρが、約3KΩ−cmと約20KΩ−cmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項12】
前記光子感知シリコン基板の抵抗率ρが、約100Ω−cmと約20KΩ−cmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項13】
前記光子感知シリコン基板の抵抗率ρが、約3KΩ−cmと約20KΩ−cmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項14】
前記光子感知シリコン基板の抵抗率ρが、約10.5KΩ−cmと約20KΩ−cmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項15】
前記光子感知基板がn型シリコンを含むことを特徴とする、上記請求項12に記載の光子感知エレメント。
【請求項16】
前記光子感知基板がp型シリコンを含むことを特徴とする、上記請求項12に記載の光子感知エレメント。
【請求項17】
前記裏面層の厚さが、約10nmと約100μmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項18】
前記裏面層の厚さが、約10nmと約10μmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項19】
前記裏面層の厚さが、約10nmと約1μmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項20】
前記裏面層の厚さが、約10nmと約100nmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項21】
前記裏面層の厚さが、約10nmと約50nmとの間にあることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項22】
前記裏面層が約0.0001から約10原子パーセントの間にリンでドーピングされていることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項23】
前記裏面層が約0.001から約3原子パーセントの間にリンでドーピングされていることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項24】
前記裏面層が約0.1から約3原子パーセントの間にリンでドーピングされていることを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項25】
透過性の導電性酸化物、インジウム錫酸化物、2酸化シリコン、窒化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化鉛、酸化アルミニウムから成る群から選ばれる、裏面層の裏面上の反射防止コーティングを更に含むことを特徴とする、上記請求項1に記載の光子感知エレメント。
【請求項26】
前記反射防止層が、透過性の導電性酸化物として知られている物質の群から選ばれることを特徴とする、上記請求項25に記載の光子感知エレメント。
【請求項27】
前記反射防止層が、インジウム錫酸化物であることを特徴とする、上記請求項26に記載の光子感知エレメント。
【請求項28】
a)表面と裏面とを有する、光子感知性で、高抵抗率のシリコン基板と、b)光子感知性の基板の裏面に取り付けられた電気伝導性のシリコンの層と、c)光子感知性の基板の表面上の電荷集電領域とを含むことを特徴とする電磁放射検出器。
【請求項29】
前記光子感知基板の厚さが、約200μmと約750μmの間にあることを特徴とする、上記請求項28に記載の検出器。
【請求項30】
前記裏面の層が、約400nmと約1100nmの間の波長を有する光子に対し透過性である厚さを持っていることを特徴とする、上記請求項29に記載の検出器。
【請求項31】
裏面層に適用された反射防止コーティングを更に含むことを特徴とする、上記請求項30に記載の検出器。
【請求項32】
上記反射防止コーティングが電気伝導性であることを特徴とする、上記請求項31に記載の検出器。
【請求項33】
前記裏面層に接続された電圧源を更に含むことを特徴とする、上記請求項28に記載の検出器。
【請求項34】
a)ドーピングされた電荷集電領域と、b)逆にドーピングされたストップ領域と、c)電荷集電領域とストップ領域との間の、そしてそれらに隣接する高抵抗率シリコンの領域とを含むピクセルのアレイを有する、上記請求項28に記載の電磁放射検出器。
【請求項35】
a)表面と裏面とを有する光子感知シリコン基板と、b)前記光子感知基板の裏面に取り付けられ、検出される光子に対し透過性である厚さを有する、電気伝導性の多結晶シリコンの層と、c)前記光子感知基板の表面上の電荷集電領域と、d)裏面層上の電圧源のための電気接点とを含むことを特徴とする裏面入射フォトダイオード。
【請求項36】
a)約200μmと約1mmの間の厚さを有し、表面と裏面とを有する、高抵抗率の光子感知性シリコン基板と、b)前記表面上にパターン付けされた電荷結合回路と、c)約10nmと約1μmの間の厚さを有し、前記光子感知基板の裏面に取り付けられた、電気伝導性の多結晶シリコンの層と、d)前記裏面層上の電圧源のための電気接点とを含むことを特徴とする裏面入射電荷結合素子。
【請求項37】
前記光子感知シリコン基板が、約1KΩ−cmと約20KΩ−cmの間の抵抗率を有することを特徴とする、上記請求項36に記載の電荷結合素子。
【請求項38】
前記裏面層に適用された反射防止コーティングを更に含むことを特徴とする、上記請求項36に記載の電荷結合素子。
【請求項39】
前記電気接点に接続された電圧源を更に含むことを特徴とする、上記請求項36に記載の電荷結合素子。
【請求項40】
a)約20μmと約50μmの間の厚さを有し、表面と裏面とを有する、低抵抗率の光子感知性シリコン基板と、b)前記表面上にパターン付けされた電荷結合回路と、c)約10nmと約1μmの間の厚さを有し、前記光子感知基板の裏面に取り付けられた、電気伝導性の多結晶シリコンの層と、d)前記裏面層上の電圧源のための電気接点とを含むことを特徴とする裏面入射電荷結合素子。
【請求項41】
前記光子感知シリコン基板が約1Ω−cmと約100Ω−cmの間の抵抗率を有することを特徴とする、上記請求項40に記載の電荷結合素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面と裏面とを有する光子感知シリコン基板と、b)光子感知基板の裏面に取り付けられた電気伝導性で、光子透過性のシリコン層とを含むことを特徴とする、裏面入射の光子感知エレメント。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−324686(P2006−324686A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208626(P2006−208626)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【分割の表示】特願平10−521753の分割
【原出願日】平成9年10月31日(1997.10.31)
【出願人】(506260777)ローレンス バークレイ ラボラトリー (1)
【Fターム(参考)】