説明

光学用光拡散フィルム

【課題】表面光拡散層が、高光拡散性、高輝度性、帯電防止性、集光性(本来はプリズムシートの役目)、傷付き防止性および基材に対する密着性を有し、背面保護層が、スティッキング性、導光板の傷付き防止、基材に対する密着性などの要求性能を満たしている光学用光拡散フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた帯電防止性背面保護層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面光拡散層からなる光学用光拡散フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイに使用される光学用光拡散フィルムに関する。さらに詳しくは、高光拡散性、高輝度、帯電防止性、傷付き防止性および基材に対する密着性に優れた光拡散層を有する光学用光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
本格的なユビキタス時代を迎え、情報と人を結ぶインターフェースであるディスプレイデバイス分野は伸長分野である。ディスプレイの主な技術を分類すると、大きくCRTとフラットパネルディスプレイ(FPD)に分類される。FPDには受光型(非発光型)の液晶ディスプレイ(LCD)と、自発光型であるプラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンス(EL)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、蛍光表示管(VFD)、発光ダイオード(LED)などがある。中でも、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、液晶TV、液晶PC、ノートPC、携帯電話、デジカメ、カーナビ、通信機器などのIT関連機器のディスプレイとして急速に拡大している。特に、ノートPC、携帯電話、モバイル機器では操作性の関係でディスプレイに対して軽量および耐久性が強く求められている。
【0003】
それに伴い、これらの機器を構成する部材のひとつであるバックライト技術においても、小型化、軽量化、薄型化、耐衝撃性に優れた高表示容量、高機能化が要求されている。バックライト技術は、液晶自体は発光しないために外部光源が必要であり、液晶TVなどカラー表示には、図4に示す如くバックライト(4)を利用している。バックライトは、液晶パネルの背面に設置する光源で、バックライト(4)として蛍光ランプ(熱陰極管や冷陰極管)と導光板および光拡散フィルムなどで構成される。
【0004】
液晶TVや液晶PCなどのカラーディスプレイでは、直径数mm以下の冷陰極蛍光管を用いてインバータによる高電圧で点灯する。冷陰極管は、パソコンモニタの端部分に置くエッジライト方式が多い。反射板(3)は、液晶ディスプレイの薄型化に伴い、裏側のフレームを隠蔽したり、傷付きを防止する役目がある。導光板(2)は、ディスプレイパネルに光を均等に当てるための部材で、主にアクリル系やポリオレフィン系素材が使われている。導光板は、光源から入る光を拡散させるために板上にドットを形成させている。また、導光板の表面に配置される光拡散フィルム(1)は、光を散乱・拡散させる半透明なフィルムであり、主に、広い面全体を均一な明るさにするために使用する。
【0005】
一般的に、光拡散性を向上させて視野角を拡げることを目的に、光拡散フィルムの表面には光拡散層(フィルム表面層)を設けている。光拡散フィルムのフィルム基材は、主にポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂が多く使用されている。その基材表面に球状および/または真球状のアクリル粒子やスチレン粒子などの高分子微粒子を含有させた樹脂バインダー塗料を塗布して光拡散層を形成して光拡散フィルムを作成する。また、光拡散フィルムの背面にも、球状および/または真球状のアクリル粒子やスチレン粒子などの高分子微粒子を含有させた樹脂バインダー塗料を塗布して背面に保護層を形成して光拡散フィルムを作成する。背面保護層は、バックライトを構成する際に導光板と接触して傷付き易いという問題があり、傷付いた部分は輝点斑や暗点斑を生じ、表示装置の品位を損なうことがある。
【0006】
表面の微細な凹凸により光を乱反射させる方法として、ケイ素系マット剤を含むポリエステルフィルム(特許文献1参照)などが知られている。この方法は、低い平行光線透過率と高い全光線透過率を両立させることが困難であり、光学用光拡散フィルムとしての性能効果がないといった問題がある。
【0007】
また、光拡散フィルムにおける表面光拡散層に無機微粒子を樹脂バインダーに含有させた手法が開発された(特許文献2参照)。しかしながら、多量の無機微粒子は樹脂バインダー中への分散が難しく塗料安定性がなく無機微粒子の凝集物があり、塗布・乾燥の際に隙間が多く発生し光線の透過性が低下する。また、基材フィルムとの密着性が悪いため十分な光学用光拡散フィルムとしての機能を果たせない。
【0008】
カラー液晶ディスプレイの場合には、高輝度の光学用光拡散フィルムが開発され、アクリルビーズなどの透明微粒子を樹脂バインダー中に分散させ、基材の片面または両面に塗布・乾燥して光学用光拡散シートを作製する方法などが提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平2−7002号公報
【特許文献2】特開平7−5305号公報
【特許文献3】特開平6−67003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記の提案技術では、前記した全ての機能を満足しているわけではない。その上、従来よりもさらに高性能である光学光拡散フィルムとその表面光拡散層形成材料と背面保護層形成材料が要望されている。
【0011】
従って、本発明の目的は、表面光拡散層が、高光拡散性、高輝度性、帯電防止性、集光性(本来はプリズムシートの役目)、傷付き防止性および基材に対する密着性を有し、背面保護層が、スティッキング性、導光板の傷付き防止、基材に対する密着性などの要求性能を満たしている光学用光拡散フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の本発明によって上記目的を達成した。すなわち、本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた帯電防止性背面保護層(以下単に「背面保護層」という場合がある)と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面光拡散層(以下単に「光拡散層」という場合がある)とからなる光学用光拡散フィルムにおいて、上記背面保護層および光拡散層の少なくとも一方が、ポリウレアコロイド粒子(以下「微粒子A」という場合がある)によって被覆されているポリウレタンゲル微粒子(以下「微粒子B1」という場合がある)および/または微粒子Aによって被覆されている熱可塑性ポリウレタン微粒子(以下「微粒子B2」という場合がある。また、微粒子B1と微粒子B2とを合わせて「微粒子B」という場合がある)と、樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用光拡散フィルム(以下単に「光拡散フィルム」という場合がある)を提供する。
【0013】
上記本発明においては、微粒子B1が、少なくとも一方が3官能以上であるポリイソシアネートと分子内に活性水素基を有する化合物とから得られる三次元架橋した微粒子であり、微粒子B2がジイソシアネートと2官能の活性水素基を有する化合物とから得られる微粒子であって、該微粒子B1または微粒子B2の表面がポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aによって被覆されており、これらの微粒子(B1またはB2)の粒子径が0.5〜100μmの範囲であること;微粒子Aが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであること;微粒子Aが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる微粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていること;上記光拡散フィルムは、その表面抵抗値が1013Ω/cm2以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを有機溶剤または水性媒体中に溶解分散してなることを特徴とする背面保護層形成用塗料または光拡散層形成用塗料を提供する。
【0015】
上記本発明の背面保護層形成用塗料においては、微粒子Bと樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子Bが0.1〜50質量%であり、樹脂バインダーCが99.9〜50質量%であること;上記本発明の表面光拡散層形成用塗料においては、微粒子Bと樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子Bが80〜20質量%であり、樹脂バインダーCが20〜80質量%であること;上記本発明の塗料においては、帯電防止剤Dが、微粒子Bと樹脂バインダーCの合計量(100質量%)に対して25〜0.1質量%であること;およびさらに少なくとも1種の架橋剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光拡散層/基材フィルム/背面保護層からなり、光拡散層および背面保護層が基材フィルムに対する密着性が優れており、高光拡散性、高輝度性、帯電防止性および柔軟性などに優れた光拡散フィルムが提供される。
【0017】
本発明の光拡散フィルムは、光拡散層に微粒子Bを使用していることから、光学特性、耐ブロッキング性、加工適性、基材との密着性、傷付き防止および柔軟性などの優れた性能を発揮し、背面保護層においてもアクリル系導光板、ポリオレフィン系導光板を使用する際、光拡散フィルムの背面保護層の粒子によって生起する導光板の傷付き防止性を保持し、高品質である表示装置を構成するバックライト技術の光拡散フィルムに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に述べる。本発明の光拡散フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた背面保護層と、該基材フィルムの他の面に設けた光拡散層とからなっており、背面保護層と光拡散層との少なくとも一方が、ともに微粒子Aによって被覆されている微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを被膜形成成分として形成されていることを特徴としている。
【0019】
次に光拡散フィルムの背面保護層と光拡散層について詳しく説明する。背面保護層と光拡散層は微粒子Aによって被覆されている微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを被膜形成成分として形成されている。これらの各成分B〜Dを溶剤などに溶解分散させて、あるいは無溶剤で塗料とし、該塗料を背面保護層と光拡散層形成用塗料として基材フィルムの上に塗布および乾燥して背面保護層と光拡散層を形成するのが好ましい。この場合の塗料は、微粒子Aによって被覆されている微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとからなる組成物である。
【0020】
次に、本発明の光拡散フィルムに使用する微粒子Aによって被覆されている微粒子Bに関して以下に説明する。微粒子Aによって被覆されている微粒子B1は、少なくともいずれかの化合物が3官能以上であるポリイソシアネートと分子内に活性水素基を有する化合物(以下単に「ポリウレタン原料」という場合がある)とを、ポリウレアコロイド溶液(乳化剤)の存在下、不活性溶媒中で乳化重合させることによって得られる。このようにして得られる微粒子B1の表面が、ポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aによって被覆されている。
【0021】
一方、微粒子Aによって被覆されている微粒子B2は、ジイソシアネートと2官能の活性水素基を有する化合物(以下単に「ポリウレタン原料」という場合がある)とを、ポリウレアコロイド溶液(乳化剤)の存在下、不活性溶媒中で乳化重合させることによって得られる。このようにして得られる微粒子B2の表面は、ポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aによって被覆されている。
【0022】
微粒子B1と微粒子B2とはともに、該微粒子の表面がポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aによって被覆されているものであり、該微粒子Bの粒子径は0.5〜100μmの範囲である。また、ポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであり、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる微粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている。
【0023】
本発明の光拡散フィルムに使用する微粒子Bの使い分けは、主に有機溶剤系の樹脂バインダーの場合には溶剤による膨潤を防ぐために微粒子B1を使用し、また、水系樹脂バインダーの場合には微粒子B2を使用することが好ましい。
【0024】
以上の微粒子Bの好ましい製造方法は、ポリウレアコロイド溶液を不活性溶媒中で撹拌機や乳化機付きのジャケット式合成釜に仕込み、この中にポリウレタン原料を添加および乳化し、これらの原料を反応させて微粒子Bを合成する方法や、ポリウレタン原料を夫々別個に、ポリウレアコロイド溶液の存在下に不活性溶媒中に乳化させ、これらを反応させる方法などが挙げられる。
【0025】
合成温度は特に限定されないが、好ましい温度は40℃〜120℃である。また、合成時に使用するポリウレアコロイド溶液は、その固形分としての使用量は、ポリウレタン原料夫々100質量部当たり0.01質量部以上を使用することができ、好ましくは0.1〜20質量部である。使用量が0.01質量部未満ではポリウレタン原料の乳化性が不十分で、合成過程で微粒子Bの大きい凝集塊が発生し、目的とする微細な微粒子Bの分散体が得難い。一方、使用量が20質量部を超えるとポリウレタン原料の乳化性には問題はなく、微粒子Bの分散体は製造することができるが、乳化剤としての作用として過剰な量であり特に利点はない。ポリウレタン原料の不活性溶媒中における濃度は、低い程小さい粒径の微粒子が得られ易いが、生産性から好ましいポリウレタン原料の濃度は20〜70質量%である。
【0026】
すなわち、本発明の光拡散フィルムに使用する微粒子Bは下記の構成からなる。前記微粒子Bの合成に使用する活性水素基を有する化合物としては、短鎖ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどの化合物が挙げられる。
【0027】
また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
活性水素基を有する化合物としての高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または、複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基などを有する高分子ポリオールが挙げられる。
【0029】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基などを有するポリエステルポリオールが挙げられる。
【0030】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールおよび/またはポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基などを有するポリラクトンポリオールが挙げられる。
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基などを有するポリカーボネートジオールが挙げられる。
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物などのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基などを有するポリオレフィンポリオールが挙げられる。
【0031】
(6)水素添加ダイマーポリオール、ヒマシポリオールなどのジオールおよび/または2官能基以上の水酸基など、
(7)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどおよび2官能以上の水酸基を有するアクリル系ポリオールが挙げられる。
【0032】
これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、ポリイソシアネートと反応するものは全て使用可能であり通常数平均分子量は500〜2,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールとしては、微粒子B2においては、活性水素基が2個のポリオールが好ましく、一方、微粒子B1において、特に好ましいのは3個以上の活性水素基を有するポリオールである。
【0033】
前記微粒子Bの合成に使用するポリイソシアネートとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネートとして好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDIおよび水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、あるいはこれらのジイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0034】
また、これらの化合物をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもので従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0035】
これらのうち、芳香族系あるいは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、微粒子B1の製造においては、分子中にイソシアネート基を2個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。また、微粒子B2の製造においては、分子中にイソシアネート基を2個含むものが好ましい。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】
前記微粒子Bの合成において、ポリウレタン原料の種類、使用量および使用比率は、使用目的によって決定されるが、得られる微粒子B1の場合は、いずれかの成分が3官能以上であることが必要である。例えば、ポリイソシアネートが2官能である場合には、活性水素基を有する化合物が3官能以上であり、また、活性水素基を有する化合物が2官能である場合には、3官能以上のポリイソシアネートが必要であり、使用目的に応じて使用する官能基数を使い分ける。もちろん全ての成分が3官能以上であってもよい。また、NCO/OH比は、使用する化合物と生成物に要求される性能によって決定されるが、好ましくは0.5〜1.2の範囲である。一方、微粒子B2の場合には、ポリウレタン原料の種類、使用量および使用比率は、得られる微粒子B2の使用目的によって前記微粒子B1の場合と同様に決定される。
【0044】
上記全化合物の反応に使用し、生成する前記微粒子Bの分散体の連続相を形成する不活性溶媒は、生成する微粒子Bに対して実質的に非溶媒でありかつ活性水素を有しないものである。その例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられ、これらの不活性溶媒は、該不活性溶媒と合成された微粒子Bの分離工程の生産性の点からは150℃以下の沸点を有するものが好ましい。本発明の光拡散フィルムの前記微粒子Bの合成に際しての反応温度は公知の触媒を使用すれば低温でもよいが、作業面から40℃以上の反応温度が好ましい。
【0045】
前記微粒子Bの合成時に乳化剤として使用するポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aは、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が好ましくは0.01μm〜1.0μmの粒子であり、かかるポリウレアコロイド溶液は、例えば、非水溶媒中で、油脂変性ポリオールとポリイソシアネート(またはこれらの化合物からなる末端NCOプレポリマー)とポリアミンとの反応で得られる。
【0046】
この反応では、反応が進むにつれて、ウレア結合同士の水素結合により、溶媒中に非溶解性のウレアドメインが形成され、同時に油脂変性ポリオール鎖が溶媒中で溶媒和されることにより、非溶解性のウレアドメインの凝集などによる微粒子Aの巨大化が防止され、安定なポリウレアコロイド溶液が容易に得られる。
【0047】
さらに、使用する油脂変性ポリオールが、非水溶媒中での結晶性が少なく、反応が進むにつれて生じる高分子化の過程でも、溶媒中で油脂変性ポリオールを主体とするポリマー鎖がある程度自由に動き得るために、非溶解性結晶部分と溶解性非結晶部分の分離が容易に行われ、ウレア結合同士の水素結合による非溶解性結晶部分を粒子の中心とするウレアドメインを形成し、その周囲に溶媒和されたポリマー鎖が規則正しく外向きに配向される。これは従来のミセル下に重合することにより得られる公知のコロイド溶液の製造方法における界面活性剤とは根本的に異なる作用である。
【0048】
上記ポリウレアコロイド溶液の製造方法をさらに具体的に説明する。先ず、最初に油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとを非水溶媒中または無溶媒で反応させ、NCO基を有するプレポリマーを合成する。次にこのプレポリマーを撹拌機付きのジャケット式合成釜に仕込み、濃度が5〜70質量%になるように非水系溶媒を添加して濃度を調整する。この溶液を撹拌しながら、予め1〜20質量%の濃度に調整したポリアミンの溶液を徐々に添加し反応を行い、ポリウレア化反応によりポリウレアコロイド溶液を製造する。
【0049】
ポリアミンの添加方法は、上記の方法の他にポリアミン溶液に前記プレポリマーまたはその溶液を添加する方法でもよい。微粒子Aの合成のための温度は特に限定されないが、好ましい温度は20〜120℃である。微粒子Aの合成のための反応濃度、温度、撹拌機の形態、撹拌力、ポリアミン溶液およびプレポリマーまたはその溶液の添加速度などは特に限定されないが、ポリアミンとプレポリマーのイソシアネート基との反応は速いので、急激な反応が行われないように、反応を制御することが好ましい。
【0050】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオールは、官能基が2個以下のポリオールであって、好ましい分子量は700〜3,000であるが、これに限定されない。油脂変性ポリオールの具体例としては、例えば、各種の油脂を低級アルコールやグリコールを用いてアルコリシス化する方法、油脂を部分鹸化する方法、水酸基含有脂肪酸をグリコールによりエステル化する方法などによって、油脂に約2個以下の水酸基を含有させたものが好ましく、上記の水酸基含有脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。
【0051】
油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、1<NCO/OH≦2の条件で行い、溶媒和されるプレポリマー鎖の分子量をコントロールする。このように合成されるプレポリマーの分子量は、特に限定されないが、好ましい範囲は約500〜15,000である。本発明の光拡散フィルムに使用される前記微粒子Aにおいて、使用されるポリイソシアネートとしては、公知のポリイソシアネートの全てが挙げられる。特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート、水添加TDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、水添XDIなどの脂肪族または脂環族系ジイソシアネートである。
【0052】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する非水系溶媒としては、使用原料である油脂変性ポリオール、ジイソシアネートおよびポリアミンを溶解するもので、活性水素を有さない全ての非水系溶媒を使用することができる。特に好ましいものはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられる。なお、本発明の光拡散フィルムに使用される前記微粒子Bの合成において「溶解」とは常温および高温下での溶解の両方を包含する。
【0053】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用するポリアミンとして、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族系ポリアミンおよびヒドラジンなどが挙げられる。短鎖ジアミンおよび脂肪族系ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、トリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンおよびポリオキシプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス−アミノプロピルピペラジン、チオ尿素、メチルイミノビスプロピルアミン、ノルボルナンジアミンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジンが挙げられる。これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、得られるプレポリマーの種類、使用量および使用比率は、使用する溶媒中での微粒子Aの大きさおよびその安定性などを制御する目的で決定される。すなわち、本発明の光拡散フィルムに使用される前記微粒子Bを被覆するポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aは、溶媒中で溶媒和されない結晶部分のウレアドメインと、そのウレアドメインから伸びて溶媒中で溶媒和されたポリマー鎖により形成されている。
【0055】
ポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aのウレアドメインの大きさおよび溶媒和されたポリマー鎖の大きさと形態がポリウレアコロイド溶液の性質を左右する。このように、ウレアドメインと溶媒和されたポリマー鎖とで形成された微粒子Aは、溶媒中で安定なポリウレアコロイド溶液であり、その溶液中の微粒子Aのウレアドメインの粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、溶媒和されているポリマー鎖の1個の分子量は約500〜15,000であり、両者の質量比はウレアドメイン(ウレア結合またはポリアミン)/ポリマー鎖が0.5〜30の範囲が好ましい。
【0056】
ウレア結合の割合が上記範囲未満であると、得られる微粒子A中の非溶媒和性ウレアドメインが形成されにくく、微粒子Aが非水溶媒に溶解し易くなり、良好なポリウレアコロイド溶液が生成されない。一方、ウレア結合の割合が上記範囲を超えると、非溶媒和性ウレアドメインが大きくなり、得られるポリウレアコロイド溶液の安定性が低下し、微粒子Aの凝集が生じ易くなる。
【0057】
本発明で使用する微粒子Aの溶媒中における形態は、図1に示すようなものと想像される。この微粒子Aの粒径の制御については、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインを含んだ粒子全体の大きさと、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインのそれぞれの大きさについて、両者ともに制御が可能である。なお、先に記載の微粒子Aの粒径は、ウレアドメイン部分を表現している。
【0058】
安定に制御されたポリウレアコロイド溶液を製造するためには、図1のように、溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が明瞭に相分離しているのが望ましく、そのためには溶媒和されるポリマー鎖と結晶部分のウレアドメインとが混在しないように製造することが必要である。このためには、合成過程で溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が分離しやすい合成条件が要求される。
【0059】
ポリウレアコロイド溶液の合成は、NCO基を有するプレポリマーの溶液およびポリアミンの溶液の両方の濃度が低く、一方の溶液に他方の溶液を添加する添加速度が遅いほど良好な結果が得られ、撹拌はプロペラミキサー撹拌で充分である。また、原料溶液の濃度が高い場合や溶液の添加速度が速い場合には、ホモジナイザーなどの使用による高剪断力の混合を行いながら合成することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類と、その溶媒に対するウレアドメインの溶解度により決まるが、好ましい温度は合成を制御し易い20〜120℃であるが、この温度範囲に特に限定されない。ウレアドメインの形成は合成過程で形成する方法、あるいは高温で合成したものを冷却過程で形成する方法でもよい。
【0060】
ポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aの重要な因子は、その表面基の種類および濃度であり、さらには不活性溶媒中における分散性と分散粒径である。すなわち、ポリウレアコロイド溶液の乳化剤としての作用は、W/O、O/O型の乳化剤であり、ポリイソシアネートおよび活性水素基を有する化合物の親水性、疎水性の強さと不活性溶媒との相関性で作用する。これらの条件を加味して検討を加えた結果として、ポリイソシアネートおよび活性水素基を有する化合物に対するポリウレアコロイド溶液の添加量の調整で、本発明の光拡散フィルムに使用される前記微粒子Bの粒径をコントロールすることが可能であり、前記の範囲で添加量が多い程粒径は小さくなり、少ない程粒径が大きくなる。
【0061】
以上の如き原材料から得られた微粒子Bの分散溶液から、常圧または減圧下で不活性溶媒を分離することによって、微粒子Bが得られる。粒子化に用いる装置としてスプレイドライヤー、濾過装置付き真空乾燥機、撹拌装置付真空乾燥機、棚式乾燥機など公知のものがいずれも使用でき、好ましい乾燥温度は不活性溶媒の蒸気圧、微粒子Bの軟化温度、粒径などに影響されるが、好ましくは減圧下40〜80℃である。
【0062】
このようにして製造された微粒子Bの粒径は、0.5μm〜100μmで真球状である。粒径のコントロールは、微粒子Bの組成が同一の場合、合成釜の乳化型式(プロペラ式、錨型式、ホモジナイザー、螺旋帯式など)および撹拌力の大小に左右されるが、特に微粒子Bの不活性溶媒中のポリウレタン原料の濃度、ポリウレアコロイド溶液の種類および添加量に影響される。ポリウレタン原料を乳化するための機械的撹拌や剪断力は乳化の初期段階で決定され、これが強力な程微粒子Bの粒径が小さくなる。その後の撹拌および剪断力は大きくは影響しない。かえってその力が強すぎると微粒子B同士の凝集を促進することになり好ましくない。
【0063】
また、本発明の光拡散フィルムでは、上記の微粒子Bの製造に当たり、原料の少なくとも一部または全部に可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、研磨剤、体質顔料などの各種添加剤を混合して、微粒子Bの合成を行い種々の要望に適した微粒子Bを得ることも可能である。
【0064】
これらの微粒子Bは、図2の電子顕微鏡写真(倍率500倍)に示すように、ほぼ完全に真球状の微粒子であり、図3の想像図に示す如く個々の微粒子Bの表面にはポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aが付着あるいは被覆されておりかつ微粒子Aが非粘着性と耐熱性に優れているため、微粒子Bを分散溶媒から単に除去するのみで極めて流動性に富んだ微粒子となり、微粒子化に当たっては従来技術における如き煩雑かつコスト高な粉砕工程や分級操作を何ら要しないなどの種々の利点を有している。
【0065】
次に、本発明で用いる樹脂バインダーCとしては、例えば、アクリル系樹脂、シロキサン変性アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、シロキサン変性ポリウレタン樹脂、フッ素変性ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロースおよびキトサンなどが使用できる。
【0066】
本発明で用いる帯電防止剤Dとしては、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン、イオン伝導ポリマーと支持電解塩からなる化合物(支持電解塩が、一般式M+-で表され、M+はLi+、Na+、K+から選ばれる一つであって、X-はClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、CF3SO2-、(CF3SO22-、(C25SO22-、(CF3SO23-、(C25SO23-などの無機または有機化合物)、イオン導電剤(イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機カチオン成分と、NO3-、CH3CO2-、BF4-、PF6-、CF3CO2-、(CF3SO22-、CF3SO2-などのフッ素系イオン化合物やCH3CO2-、NO3-などの無機または有機アニオンからなる塩)、ポリアミン、4級カチオン塩含有アクリル系樹脂、特殊変性ポリエステル、特殊カチオン系樹脂、セルロース誘導体、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびスルホン化ポリアニリンなどの有機導電性材料、カーボンブラック、酸化スズ、酸化亜鉛および酸化チタンなどの金属酸化物および各種金属アルコキシドおよびITO粉末などの導電性フィラー含有高分子などが使用できる。
【0067】
本発明の背面保護層形成用塗料または表面光拡散層形成用塗料は、以上の微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを有機溶剤または水性媒体に溶解分散してなることを特徴としている。本発明の塗料が背面保護層形成用塗料である場合には、微粒子Bと樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子Bの使用割合が0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、一方、樹脂バインダーCの使用割合が99.9〜50質量%、好ましくは99.5〜90質量%である。微粒子Bの使用量が少なすぎると形成される背面保護層の柔軟性が不十分である。また、微粒子Bの使用量が多すぎると形成される背面保護層の塗膜強度およびコスト面で不十分である。また、樹脂バインダーCの使用量が少なすぎると形成される背面保護層の基材シートに対する密着性が不十分である。また、樹脂バインダーCの使用量が多すぎると形成される背面保護層の耐ブロッキング性および保護性能が不十分である。
【0068】
本発明の塗料が表面光拡散層形成用塗料である場合には、微粒子Bと樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子Bの使用割合が80〜20質量%、好ましくは60〜25質量%であり、樹脂バインダーCの使用割合が20〜80質量%、好ましくは40〜75質量%である。微粒子Bの使用量が少なすぎると形成される光拡散層の光拡散性などの光学特性が不十分である。また、微粒子Bの使用量が多すぎると形成される光拡散層のヘイズ低下や、得られる塗料の微粒子の分散不良および塗工性などで不十分である。一方、樹脂バインダーCの使用量が少なすぎると形成される光拡散層の塗膜強度および密着性などが不十分である。また、樹脂バインダーCの使用量が多すぎると形成される光拡散層の光拡散性などの光学特性が不十分である。
【0069】
また、本発明の上記各塗料は、前記帯電防止剤Dを含有する。帯電防止剤Dの使用量は、微粒子Bと樹脂バインダーCの合計量(100質量%)に対して25〜0.1質量%、好ましくは20〜1質量%である。帯電防止剤Dの使用量が少なすぎると形成される各層の帯電防止性が不十分であり、また、帯電防止剤Dの使用量が多すぎると不経済であり、また、帯電防止剤Dのブリードアウトが生じるなどの点で不十分である。好ましい帯電防止剤の使用量は、最終的に得られる光拡散フィルムの背面保護層および光拡散層の表面抵抗値が1013Ω/cm2以下になる量である。
【0070】
さらに本発明の上記各塗料は少なくとも1種の架橋剤を含有することが好ましい。これらの架橋剤としてはポリイソシアネート、安定化ポリイソシアネート、メラミン系架橋剤、アミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、有機金属化合物、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などが挙げられる。これらの架橋剤は、本発明の塗料に予め加えておいてもよいし、塗料の使用直前に加えてもよい。架橋剤の使用は必須ではないが、使用することが好ましい。架橋剤の使用量は前記樹脂バインダーC100質量部当たり2〜40質量部の範囲が好ましい。架橋剤の使用量が多すぎると形成される層の可撓性が低下するので好ましくない。
【0071】
本発明の上記各塗料は、上記各成分を有機溶剤または水性媒体中に溶解分散させることによって得られる。好ましい有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられ、水性媒体としては水、水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。塗料の媒体として水性媒体を使用する場合には、前記樹脂バインダーとしては水溶性樹脂、水分散性樹脂、エマルジョンなどを使用する。上記各塗料の全固形分濃度は特に限定されないが、通常20〜50質量%の範囲が好ましい。
【0072】
本発明の光拡散フィルムは、基材フィルムの一方の面に前記光拡散層形成用塗料から光拡散層を形成し、基材フィルムの他方の面に前記背面保護層用塗料を用いて背面保護層を形成することによって得られる。ここで使用する基材フィルムとしては、厚さが30〜300μmのポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどのフィルムが挙げられる。各層の形成方法は従来公知の各種塗布装置を用いて前記塗料を塗布し、乾燥し、必要に応じて熟成処理することで行われる。このようにして形成される背面保護層の厚みは2〜15μmであることが好ましく、また、光拡散層の厚みは15〜60μmであることが好ましい。このようにして得られる本発明の光拡散フィルムは光拡散層/基材フィルム/背面保護層からなり、光拡散層および背面保護層の基材フィルムに対する密着性が優れており、高光拡散性、高輝度性、帯電防止性および柔軟性などに優れている。
【実施例】
【0073】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0074】
(ポリウレアコロイド溶液の作成)
[合成例1]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製、商品名URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート47.3部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行いプレポリマー合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。このプレポリマーの分子量は1,383である。
【0075】
上記のPP−1の40部と、n−オクタン60部を撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%のポリウレアコロイド溶液(固形分18.0%)(C−1)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
【0076】
[合成例2]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製、商品名URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=1.1になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート26.0部を1時間掛けて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、4時間の反応を行いプレポリマーを合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を0.36%含有するプレポリマー溶液(PP−2)を得た。このプレポリマーの分子量は11,834である。
【0077】
上記のPP−2の20部とn−オクタン80部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記プレポリマーを溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの1%溶液14.4部を8時間掛けて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン/プレポリマー鎖)×100=1.44%のポリウレアコロイド溶液(固形分8.9%)(C−2)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
【0078】
(微粒子B1の製造)
[合成例3]
平均分子量1,000のポリブチレンアジペートジオール20部を60℃で溶解し、さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業(株)製、商品名デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)7.3部を添加し均一に混合した。この物を予め1リットルのステンレス容器に準備した合成例1のポリウレアコロイド溶液(C−1)5.0部とn−オクタン25部の混合液の中に徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで分離もなく安定な乳化液であった。
【0079】

【0080】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了し微粒子B1の分散液を得た。この溶液を100Toorで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離し微粒子B1(1)を得た。このものは平均粒子径が5μmの真球状の白色粉末状であった。
【0081】
[合成例4]
500ミリリットルのセパラブルフラスコに、ポリウレアコロイド溶液(C−2)4部とイソオクタン150部とを仕込み混合した。次にこの液をホモミキサーで混合しながら予め50℃に加温した平均分子量785の3官能のポリラクトンポリオール100部を徐々に添加して乳化させた。さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートアダクトポリイソシアネート(旭化成工業(株)製、商品名デュラネート24A−100、NC0%=23.5)68.3部を徐々に添加した。
【0082】

【0083】
次にホモミキサーを回転しながら、温度を80℃に上げ、3時間の反応後に反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.005部を加え、さらに4時間の反応を行い、微粒子B1の分散液を得た。この分散液から実施例1と同様にして微粒子B1(2)を得た。このものは平均粒子径が15μmの真球状の白色粉末状であった。
【0084】
(微粒子B2の製造)
[合成例5]
2リットルのステンレス容器に、ポリウレアコロイド溶液(C−1)44部とn−オクタン356部を仕込み混合し、40℃に保持した。これに平均分子量1,020のポリブチレンアジペート250部、1,4−ブタンジオール30部およびMDI 144.7部を40℃に加熱し均一に混合したものを徐々に加え、ホモジナイザーで30分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで粒子の分離もなく安定な乳化液であった。
【0085】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、3時間の反応を終了しポリウレタン分散液を得た。この分散液を真空乾燥機に移し、50mmHg以下の減圧下で不活性溶媒を分離し粉末状の微粒子B2(3)を得た。このものは平均粒子径が5μmの真球状の白色粉末状であった。
【0086】
[合成例6]
2リットルのステンレス容器に、ポリウレアコロイド溶液(C−2)184部とn−オクタン216部を仕込み混合し、40℃に保持した。これに平均分子量1,020のポリブチレンアジペート250部、1,4−ブタンジオール30部およびMDI 144.5部を40℃に加熱し均一に混合したものを徐々に加え、ホモジナイザーで30分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が16μmで粒子の分離もなく安定な乳化液であった。
【0087】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、3時間の反応を終了し微粒子B2の分散液を得た。この分散液を真空乾燥機に移し、50mmHg以下の減圧下で不活性溶媒を分離し粉末状の微粒子B2(4)を得た。このものは平均粒子径が16μmの真球状の白色粉末状であった。
【0088】
(溶液型ポリウレタンの製造)
[合成例7]
2リットルのステンレス容器に、不揮発分が30%となる所定量の溶剤(ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン=1/1)とジブチル錫ジラウレート0.005部を仕込み混合し、40℃に保持した。これに平均分子量1,020のポリブチレンアジペート250部、1,4−ブタンジオール30部およびMDI 144.5部を40℃に加熱し均一に混合したものを徐々に加え、攪拌した。反応熱がなくなったら、温度を80℃まで上げ、3時間の反応を終了し溶液型のポリウレタン樹脂(バインダー5)を得た。
【0089】
(水系型ポリウレタンの製造)
[合成例8]
2リットルのガラス容器に、親水基含有化合物成分(ジメチロールブタン酸)11.1部、分子量1,000のポリカーボネートジオール150部、およびテトラヒドロフラン30部加え、均一に溶解させ、溶液濃度を調節した。続いてIPDI 66.6部を加えて80℃で反応を行い、所定のNCO%になることを確認した後、50℃に冷却し、固形分に対し35%となるイオン交換水と、中和剤となるトリエチルアミン7.6部を加え、系内を均一に乳化させ、60℃を保持したまま8時間反応を続けた。最後に、系内のテトラヒドロフランを真空脱気して回収した。水系型のポリウレタン樹脂(バインダー6)を得た。
【0090】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
実施例1〜4と比較例1〜2の光拡散層用塗料(固形分濃度35%)および背面保護層用塗料(固形分濃度20%)を表1および表2の組成により作製した(なお、表中には溶媒は示していない)。
【0091】

【0092】
・バインダーC1;アクリルポリオール(商品名サーモラックEF−43、綜研化学(株)製、水酸基価=25、不揮発分=50%、酢酸エチル/IPA溶液)
・バインダーC2;熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂(商品名エリーテルUE3200、ユニチカ(株)製、不揮発分=30%の化合物(MEK/TOL=1/1溶解品、分子量=16,000、Tg=65)
・バインダーC3;ブチラール樹脂(商品名エスレックBL−S、積水化学工業(株)製、不揮発分=30%、分子量=23,000、Tg=61、MEK溶解品)
・バインダーC4;アクリル系樹脂(商品名アクアブリッドASi−91、ダイセル化学工業(株)製、不揮発分=30%、pH=7.7)
【0093】
・帯電防止剤D1;カチオン型(4級アンモニウム塩)ポリアクリル酸エステル(商品名ジュリマーSP−50TF、日本純薬(株)製)
・帯電防止剤D2;カチオン型(4級アンモニウム塩)ポリアクリル酸エステル(商品名エレコンドPQ−50B、綜研化学(株)製)をDMFに溶媒置換した溶液)
・帯電防止剤D3;カチオン型ポリマー(商品名テクスノールCP−81、日本乳化剤(株)製をNMPに溶媒置換した溶液)
・帯電防止剤D4;カチオン型アクリル系ポリマー(商品名TKカチオンB、高松油脂(株)製をNMPに溶媒置換した溶液)
【0094】
架橋剤
・PHDI;HDIのビウレット型(商品名デュラネート24A−100、旭化成ケミカルズ(株)製)
・PCD;カルボジライトV−02(日清紡績(株)製)
・熟成条件;40℃、2日
【0095】
・MEK;メチルエチルケトン
・DMF;ジメチルホルムアミド
・IPA;イソプロピルアルコール
・TOL;トルエン
・NMP;1−メチル−2−ピロリドン
【0096】

【0097】
・バインダーC1;アクリルポリオール(商品名サーモラックEF−43、綜研化学(株)製、水酸基価=25、不揮発分=50%(酢酸エチル/IPA溶液))
・バインダーC2;熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂(商品名エリーテルUE3200、ユニチカ(株)製、不揮発分=30%の化合物、分子量=16,000、Tg=65、MEK/TOL溶解品)
・バインダーC3;ブチラール樹脂(商品名エスレックBL−S、積水化学工業(株)製、不揮発分=30%、分子量=23,000、Tg=61、MEK溶解品)
【0098】
・帯電防止剤D5;カチオン型(4級アンモニウム塩)ポリアクリル酸エステル(商品名ジュリマーSP−50TF、日本純薬(株)製)をDMFに溶媒置換した溶液)
【0099】
架橋剤
・PHDI;HDIのビウレット型、デュラネート24A−100(旭化成ケミカルズ(株)製)
・熟成条件;40℃、2日
【0100】
・Si;商品名SIPERNAT310(平均粒子径5.5μm、デグサ製)
・MEK;メチルエチルケトン
・DMF;ジメチルホルムアミド
・IPA;イソプロピルアルコール
・TOL;トルエン
【0101】
本発明の光学光拡散フィルムに使用する前記塗料は、微粒子Bと樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを有機溶剤または水に溶解または分散して作成した光拡散層および背面保護層形成用塗料である。
【0102】
前記成分B〜Dの溶解または分散方法としては、公知のいずれの分散方法を使用してもよく、特に限定されない。例えば、ボールミル、バスケットミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、湿式ジェットミル、ディゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機などで分散して塗料を作成することができる。光拡散層および背面保護層形成用塗料を作製後、架橋剤を加えた光拡散層および背面保護層形成用塗料も使用した。前記フィルムに対する前記塗料の塗布方法としては、公知のいずれの塗布方法を使用してもよく、特に限定されない。例えば、グラビアコーター、スピンコート、リバースコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアーナイフコーターなどが挙げられる。
【0103】
各実施例および比較例で得られた各塗料を用い、リバースコーターにより、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製)の表面に、光拡散層は、乾燥後の厚みが20μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を乾燥させた。また、背面保護層は、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を乾燥させた。実施例1〜4および比較例1〜2の架橋剤を使用した塗料を用いた場合は、塗布および乾燥後40℃のオーブンにて48時間熟成させて光拡散層並びに背面保護層を形成させた。
【0104】
[試験例]
上記で得られた実施例および比較例における光拡散層並びに背面保護層の塗膜および光拡散フィルムの性能を以下の項目について試験し、表3の結果を得た。
【0105】
<表面抵抗値>
三菱化学(株)製のMCP−HT450を使用して光拡散フィルムの帯電防止性の測定を行う。測定条件は、温度23℃、湿度65%RH、印加電圧100V、30秒で行った。帯電防止効果を発揮するには、1×1013Ω/cm2以下が望ましい。
【0106】
<透明性>
スガ試験機(株)製直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを使用し、光拡散フィルムのヘイズ値と全光線透過率を測定した。
ヘイズ値=測定値−基材のヘイズ値
【0107】
<光沢度>
スガ試験機(株)製デジタル変角光沢計を使用し、光拡散フィルムの光沢度(60°入射光/60°反射光)を測定した。
【0108】
<耐傷付き性>
光拡散フィルムの光拡散層の塗膜を約10g/cm2の荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム(株)製)で擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○:確認できる傷が0本以上5本未満
△:確認できる傷が5本以上10本未満
×:確認できる傷が10本以上
【0109】
<密着性>
光拡散フィルムの光拡散層の塗膜と基材PETフィルムとの接着性を碁盤目試験(セロハンテープ剥離クロスカット法)にて行った。
◎:剥離していない升目が95%以上
○:剥離していない升目が95%未満70%以上
△:剥離していない升目が70%未満40%以上
×:剥離していない升目が40%未満
【0110】

【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、本発明によれば、光拡散層/基材フィルム/背面保護層からなり、光拡散層および背面保護層が基材フィルムに対する密着性が優れており、高光拡散性、高輝度性、帯電防止性および柔軟性などに優れた光拡散フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明で使用するポリウレアコロイド溶液中の微粒子Aの断面の想像図
【図2】本発明の光拡散フィルムに使用する微粒子Bの写真
【図3】本発明の光拡散フィルムに使用する微粒子Bの断面の想像図
【図4】本発明の光拡散フィルムのバックライト構成体を示す図
【符号の説明】
【0113】
1:溶媒和されているポリマー鎖
2:非溶媒和部分のウレアドメイン
3:微粒子B
4:微粒子A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた帯電防止性背面保護層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面光拡散層とからなる光学用光拡散フィルムにおいて、上記背面保護層および表面光拡散層の少なくとも一方が、ポリウレアコロイド粒子(微粒子A)によって被覆されているポリウレタンゲル微粒子(微粒子B1)および/またはポリウレアコロイド粒子(微粒子A)によって被覆されている熱可塑性ポリウレタン微粒子(B2)と、樹脂バインダー(C)と帯電防止剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用光拡散フィルム。
【請求項2】
微粒子B1が、少なくとも一方が3官能以上であるポリイソシアネートと分子内に活性水素基を有する化合物とから得られる三次元架橋した微粒子であり、微粒子B2が、ジイソシアネートと2官能の活性水素基を有する化合物とから得られる微粒子であって、該微粒子B1または微粒子B2の表面がポリウレアコロイド溶液から析出した微粒子Aによって被覆されており、これらの微粒子(B1またはB2)の粒子径が0.5〜100μmの範囲である請求項1に記載の光学用光拡散フィルム。
【請求項3】
微粒子Aが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmである請求項1に記載の光学用光拡散フィルム。
【請求項4】
微粒子Aが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる微粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている請求項1に記載の光学用光拡散フィルム。
【請求項5】
表面抵抗値が、1013Ω/cm2以下である請求項1に記載の光学用光拡散フィルム。
【請求項6】
微粒子B1および/または微粒子B2と樹脂バインダーCと帯電防止剤Dとを有機溶剤または水性媒体中に溶解分散してなることを特徴とする背面保護層形成用塗料または表面光拡散層形成用塗料。
【請求項7】
微粒子B1および/または微粒子B2と樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子B1および/または微粒子B2が0.1〜50質量%であり、樹脂バインダーCが99.9〜50質量%である請求項6に記載の背面保護層形成用塗料。
【請求項8】
微粒子B1および/または微粒子B2と樹脂バインダーCとの合計量(100質量%)のうち、微粒子B1および/または微粒子B2が80〜20質量%であり、樹脂バインダーCが20〜80質量%である請求項6に記載の表面光拡散層形成用塗料。
【請求項9】
帯電防止剤Dが、微粒子B1および/または微粒子B2と樹脂バインダーCの合計量(100質量%)に対して25〜0.1質量%である請求項6に記載の塗料。
【請求項10】
さらに少なくとも1種の架橋剤を含有する請求項6に記載の塗料。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−206375(P2007−206375A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25128(P2006−25128)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】