説明

光学的情報記録再生装置

【課題】 球面収差学習の際の学習時間の無駄をなくし、球面収差補正動作を合理化することが可能な光学的情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】 光ディスク11(51)の種類(記録層が1層であるか2層であるか、或いは光ディスクが赤色レーザ対応ディスクであるか青色レーザ対応ディスクであるか)を判別する判別手段と、光ディスクの透明基板の厚みの変化に伴う収差を補正する補正手段と、補正手段による最適補正状態を探索するための学習を行う学習手段とを具備する。そして、判別手段の判別結果に応じて学習手段が学習を行う場合の、補正手段の学習開始の初期位置を切り替え、学習時間の無駄を無くすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に情報を記録し、或いは記録情報を再生する光学的情報記録再生装置に関し、特に、光記録媒体の球面収差を補正する場合の補正技術の合理化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク装置においては、高密度化を図るために、光源の短波長化、対物レンズの高NA化に対応する技術が盛んに研究されている。一部では、405nm帯半導体レーザとNA=0.85の対物レンズを用いた装置が製品化され初めている。
【0003】
また、高容量化を図るため、2層の記録層を持つディスクも採用されている。しかし、405nm帯半導体レーザを使用する場合には、その量子化ノイズ、所謂LDノイズが問題となり、NA=0.85の対物レンズを用いると、透明基板の厚み誤差や2層ディスクの層間移動に伴う球面収差が問題となっている。
【0004】
また、層間移動に伴う球面収差は、例えば、赤色系LDとNA(開口数)0.65程度のDVD系でも無視できない。
【0005】
そこで、半導体レーザ(以下、LDと略す)の特性上、出力パワーを高くするとLDノイズが低下するので、ディスクが単層の場合に光量減衰素子を挿入してLDノイズを抑える技術が、例えば、特開2003−257072号公報に開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、透明基板の厚みに誤差が生じた場合に発生する球面収差を、例えば、ビームエクスパンダーを追加採用して、そのレンズ間隔を変えることにより球面収差を発生させて、透明基板の厚み誤差による球面収差を相殺するという技術が、例えば、特開2002−236252号公報に開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−257072号公報
【特許文献2】特開2002−236252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来技術では、以下のような課題がある。
【0008】
即ち、LDとコリメータレンズの間に光学フィルタを挿入する場合、光学フィルタをLDとコリメータレンズの間に挿入することは、光学系のコンパクト化には有効であるが、光学フィルタの有無によりLDとコリメータレンズの間の光路長が変化する。その結果、光学フィルタがある場合をLDとコリメータレンズ間の光路長の基準状態とすると、光学フィルタが挿入されていない場合には、LDはコリメータレンズから見てデフォーカス位置にあることになる。そして、コリメータレンズ後の光束は収束光となり、対物レンズでディスクに集光すると大きな球面収差を発生することになる。
【0009】
他方、球面収差はディスクの透明基板の厚み誤差や層間の厚み差異によっても発生する。そこで、球面収差補正手段を設け、指針となる信号品位が良好となるように球面収差補正手段の最適状態を探すことにより結果として発生した球面収差を補正することが可能となる。
【0010】
従って、球面収差補正手段の最適状態を探す(以下、球面収差補正手段最適状態を探すことを球面収差学習と称する)場合には、基準となる初期状態を出発点として探すこととなるが、上述のように、特に、光学フィルタを用いる構成においては光学フィルタの有無により初期状態が変化してしまうので、球面収差学習の際に学習範囲が少なくとも初期状態の変化分拡大し、球面収差学習時間の無駄が生じる。
【0011】
また、LDとコリメータレンズ間の系が変わらない場合でも、互いに使用波長等が異なるような、異なるフォーマットで作成されているディスクの記録再生が可能な装置の場合でも、フォーマットが異なるため、補正すべき球面収差量も異なり、そのために球面収差学習の際の学習範囲を広く設定する必要が生じ、その設定範囲に応じて球面収差の学習を行うことにより、学習時間の無駄が生じてしまう。
【0012】
本発明の目的は、球面収差学習の学習時間の無駄をなくし、球面収差補正動作を合理化した光学的情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、光源からの光束を対物レンズに導き、前記対物レンズにより光記録媒体の記録面に透明基板を介して集光して情報を記録し、或いは前記光記録媒体からの戻り光に基づいて情報の再生を行う光学的情報記録再生装置において、前記光記録媒体の種類を判別する判別手段と、前記透明基板の厚みの変化に伴う収差を補正する補正手段と、前記補正手段による最適補正状態を探索するための学習を行う学習手段と、前記判別手段の判別結果に応じて前記学習手段が学習を行う場合の、前記補正手段の学習開始の初期位置を切り替える手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、光記録媒体の種類、例えば、記録層が1層の媒体であるか2層の媒体であるか、或いは光記録媒体が赤色光源対応の媒体であるか青色光源対応の媒体であるか等の媒体種別に応じて最適な球面収差補正量を探索する為の学習動作において球面収差補正手段の学習開始の初期位置を切り替えている。そのため、球面収差の学習の際に学習範囲が拡大することが避けられ、学習時間の無駄を省くことが可能となる。特に、本発明は光学フィルタをLDとコリメータレンズ間に挿入する構成に好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、球面収差学習動作に先立って光記録媒体の種類毎に学習の初期位置を切り替えることにより、球面収差学習の際の学習時間の無駄を無くすことができ、球面収差補正動作を合理化した光学的情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は本発明による光学的情報記録再生装置の第1の実施形態を示すブロック図である。先ず、光学系の概要について説明する。
【0018】
LD(半導体レーザ)1からの出射ビームは、一部がPBS(偏光ビームスプリッタ)3で反射され、集光レンズ4によりモニタ用PD(フォトダイオード)5に集光される。このモニタ用PD5からの出力は、LD1からの出射パワーのコントロールに使用される。25はモニタ用PD5の光電流を電圧信号に変換する信号検出部である。
【0019】
LD1とPBS3との間には、光学フィルタ2が配置されている。光学フィルタ2は透過率50%の光学薄膜を施した平行平板であり、光減衰素子駆動機構31の駆動により必要に応じてLD1とPBS3の間に進退可能に構成されており、初期設定では挿入された状態にある。
【0020】
PBS3を透過したビームは、λ/4板6を通ってコリメートレンズ9に入射し、略平行光束とされる。この平行光束は対物レンズ10により集光され、光ディスク11の透明基板を通して記録層に結像される。情報の記録時には、光ディスク11上に図示しない変調回路による光出力の変調により情報の記録を行う。また、再生時には、LD1の低出力により情報トラックを走査し、光ディスク11からの反射光をRFサーボPD13で受光し、その受光信号に基づいて情報の再生を行う。
【0021】
コリメートレンズ9はレンズ7と8の2群構成となっており、群間距離を変えることにより光ディスク11へ集光するビームに球面収差を与えることが可能な構成となっている。32はレンズ7とレンズ8の少なくとも一方を光軸方向に移動させてレンズ群間距離を可変するための球面収差補正素子駆動機構(例えば、ステッピングモータ等)である。24はその球面収差補正素子駆動機構32を駆動するための球面収差補正素子駆動部である。
【0022】
光ディスク11には記録層が1層の場合の1層ディスクと記録層が2層の場合の2層ディスクがあり、図2に示すように透明基板、記録層、中間層、基板から形成されている。図2(a)は1層ディスク、図2(b)は2層ディスクを示す。本実施形態では、光ディスク11が1層ディスクと2層ディスクの場合とで、最適な球面収差補正量を探索する為の学習動作において球面収差補正手段の学習開始の初期位置を切り替えるものである。
【0023】
1層ディスクの記録層をL0、2層ディスクの記録層を対物レンズ10から遠い記録層をL0’、近い側の記録層をL1’とすると、1層ディスクの記録層L0と2層ディスクの記録層L0’は、対物レンズ10から見て、透過率、反射率を除き、略同等となっている。また、2層ディスクの場合、L0’からL1’へと順番にアドレスが割り当てられている。
【0024】
本実施形態では、LD1の波長は405nm、コリメートレンズ9の焦点距離は13mm、コリメートレンズ群間距離は基準で0.8mm、対物レンズ10の開口数は0.85、焦点距離は1.176mmである。
【0025】
また、光ディスク11は、1層ディスクの場合には、透明基板は屈折率約1.6、厚み100μm、記録層は厚みが約0.1μmである。2層ディスクの場合には、透明基板は屈折率約1.6、厚み75μm、各記録層は厚みが約0.1μm、中間層は屈折率が約1.6、厚みが25μmである。
【0026】
光ディスク11から反射したビームは、対物レンズ10、コリメートレンズ9、λ/4板6を介してPBS3に入射する。この入射光束はPBS3で反射され、センサレンズ12によりRFサーボPD13上に集光される。このRFサーボPD13からの出力により情報信号、サーボ用信号が得られる。また、コントローラ22は装置内の各部を制御する制御回路であり、後述する球面収差の学習動作の制御等を行う。
【0027】
次に、本実施形態におけるディスク挿入から球面収差学習へ至るプロセスについて説明する。図3はその動作を示すフローチャートである。
【0028】
まず、光ディスク11が装置に挿入される(S301)。この段階では、1層ディスクか2層ディスクかは不明である。初期状態では上述のようにLD1とPBS3の間に光学フィルタ2が挿入されている。光ディスク11が挿入されたことが検知されると、コントローラ22は不図示のレーザ駆動回路を制御してLD1を点灯し(S302)、そのもとで、対物レンズ10の出射パワーを0.35mWに設定する。
【0029】
本実施形態においては、LDノイズの抑圧のための機構は1層ディスクの場合に備えている。LD1とPBS3との間に光学フィルタ2が無い場合には、対物レンズ10からの出力が0.35mWに相当するときのLD1の出力は2.4mW〜3.0mW程度であり、光学フィルタ2によりLD1の出力は4.8mW〜6.0mW程度となる。LD1の出力は4.8mW〜6.0mW程度とする。2層ディスクの場合にもほぼ同程度である。この時、LDノイズの低下は、−6〜−10(dB)程度となり、S/Nが大幅に改善される。
【0030】
次に、コントローラ22は挿入された光ディスク11が1層ディスクか2層ディスクかを判別する(S303)。具体的には、対物レンズ10を微小量上下させ、RFサーボPD13からの出力の総和のピーク値を信号検出部21で検出する。コントローラ22は信号検出部21の出力総和と予め設定された基準電圧との比較を行い、出力総和が基準電圧より高い場合には1層ディスク、低い場合には2層ディスクと判定する。
【0031】
コントローラ22は1層ディスクである場合には、球面収差補正素子駆動部24を制御し、球面収差駆動機構32の駆動によりコリメートレンズ9のレンズ7と8とのレンズ群間距離の初期位置を、L=αに設定する(S304)。
【0032】
図1に示すようにコリメートレンズ9はレンズ7と8の2群構成となっており、コリメートレンズ9と対物レンズ10の組み合わせた場合の群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係は図4のグラフのようになる。
【0033】
図4には、それぞれ、L0層、L0’層、L1’層を記録再生するときの、群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係がプロットされている。図4のグラフから分かるように、L0層のときは光学フィルタ2の挿入により発生した球面収差に相当する群間距離分だけずれていることが分かる。
【0034】
そのシフト量は、光学フィルタ2を構成する平行平板の厚みが1mmの時、約0.1mmであり、1.5mm厚の時、約0.15mmである。本実施形態においては、光学フィルタ2の平行平板の厚みを1mmとする。
【0035】
従って、本実施形態では、コリメートレンズ9の群間距離(L)の基準値は、1層ディスクではL≒0.68mmとなる。また、2層ディスクの時はL0’層ではL≒0.55mm、L1’層ではL≒1.65mmとなる。
【0036】
よって、本実施形態では、1層ディスクのときは、L≒0.68mmを初期設定値、2層ディスクのときは、アドレスの関係からL0’から使用されるのが普通なので、L≒0.55mmを初期設定値とする。S304ではα≒0.68mmとする。
【0037】
次に、コントローラ22は各部を制御して球面収差がなくなる最適群間距離を探索するための球面収差の学習を行う(S305)。この時、上述のようにコントローラ22の制御によりコリメートレンズ9の群間距離は初期位置に設定されている。
【0038】
その初期位置を中心に所定の幅(範囲)を、所定量の刻みでコリメートレンズ9の群間距離を変えながら群間距離に対応する再生信号振幅値を信号検出部21で検出する。コントローラ22は群間距離に対応する再生信号振幅を関係付けて処理し、再生信号振幅値が最大振幅となるコリメートレンズ9の群間距離を検出する。再生信号振幅が最大となる群間距離を検出すると、コントローラ22は球面収差補正素子駆動部24を制御し、その再生信号振幅値が最大振幅となる最適群間距離に設定する。
【0039】
この時、球面収差値はほぼゼロとなり、球面収差が補正されたこととなる。本実施形態では、透明基板厚誤差にして±10μm、刻みは1μmに相当する、±0.20mmの幅を、0.02mm刻みで上記学習動作を行った。
【0040】
次に、S303で2層ディスクと判別された場合の動作について説明する。2層ディスクの時は、記録層の反射率、吸収率が1層ディスクの場合の約半分程度でディスクへ照射する光量は2倍程度となるためLD出力パワーが高くなりLDノイズが抑えられので、コントローラ22は光減衰素子駆動部23を制御し、光減衰素子駆動機構31の駆動により光学フィルタ2をLD1とPBS3との間から退避させる(S306)。
【0041】
この際、LD1は一度消灯し、光学フィルタ2の退避終了後、再点灯する。光減衰素子駆動機構31は光学フィルタ2をLD1とPBS3の間に挿入または退避させるための機構であり、光減衰素子駆動部23はコントローラ22の制御により光減衰素子駆動機構31を駆動するための駆動部である。
【0042】
次に、コントローラ22は球面収差補正素子駆動部24を制御し、球面収差補正素子駆動機構32の駆動によりコリメートレンズ9の群間距離の初期位置を、L=βに設定する(S307)。本実施形態では、上述したようにβ≒0.55mmである。これは、L0’層に相当する。
【0043】
また、1層ディスクの場合と同様に球面収差の学習を行う(S308)。即ち、球面収差補正素子駆動部24を制御し、初期位置を中心として所定の幅を、所定の刻みで群間距離を変えながら信号検出部21で再生信号振幅値を検出する。そして、再生信号振幅が最大となる群間距離を検出し、コントローラ22内にメモリする。
【0044】
次に、L1’層の学習に移動する(S309)。この際、コントローラ22は球面収差補正素子駆動部24を制御し、コリメートレンズ9の群間距離の初期位置を、L=γに設定する。本実施形態では、上述したように、γ≒1.05mmである。
【0045】
次いで、同様にL=γの場合の球面収差の学習を行う(S310)。即ち、コントローラ22は球面収差補正素子駆動部24を制御し、初期位置を中心に所定の幅を、所定の刻みで群間距離を変えながら再生信号振幅を信号検出部31で検出する。そして、再生信号振幅が最大となるコリメートレンズ9の群間距離を検出し、コントローラ22内にメモリする。このようにして球面収差の学習を終了する。
【0046】
この後、2層ディスクに情報の記録或いは再生を行う場合には、コントローラ22はメモリされたそれぞれの層に対応する最適値に群間距離を設定し、L0’層、L1’層における記録或いは再生を行う。
【0047】
このように光ディスク11の種類(1層ディスクか、2層ディスクか)に応じてコリメートレンズ9の群間距離の初期位置を切り替えるようにしたので、無駄な学習を行うことがなくなり、LDノイズ対策が施された装置の球面収差学習の時間短縮が図ることが可能となる。
【0048】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。本実施形態では、使用する光ディスクが青色対応ディスクか、赤色対応ディスクかに応じて球面収差補正手段の球面収差学習の初期位置を切り替えるものである。まず、使用するディスクが青色対応ディスクである場合の光学系の概要について説明する。
【0049】
LD(半導体レーザ)41からの出射ビームは、一部が複合BS42で反射させられ、集光レンズ43によりPD(フォトダイオード)44のモニタ用受光領域に集光される。この出力はLD41の出射パワーのコントロールに使用される。PD44はモニタ用受光領域とRFサーボ領域とを有する。
【0050】
複合BS42を透過したビームは、λ/4板45を介してコリメートレンズ48で略平行光束とされ、更に、この平行光束は波長選択位相板49を透過し、対物レンズ50により光ディスク51の透明基板を通して記録層に結像される。光ディスク51に情報を記録する場合には、図示しない変調回路による情報光出力の変調により情報の記録を行う。また、情報を再生する場合には、LD41の低出力により情報トラックを走査し、その反射光を受光し、その受光信号に基づいて情報の再生を行う。
【0051】
なお、光ディスク51が青色対応ディスクの場合には、PD44のRFサーボ領域の受光信号に基づいて再生を行い、赤色対応ディスクの場合には、集積ユニット61内のフォトダイオード(図示せず)に集光した受光信号に基づいて再生する。サーボ信号を得る場合も同様である。更に、後述する学習動作を行う場合にも、同様に青色対応ディスクの時はPD44のRFサーボ領域の受光信号に基づいて学習を行い、赤色対応ディスクの時は集積ユニット61内のフォトダイオードの受光信号に基づいて学習を行う。
【0052】
ここで、複合BS42のLD41側の分離面にはPBS膜が施されていて、λ/4板45との組み合わせにより光アイソレータを構成している。また、コリメートレンズ48はレンズ46と47の2群構成となっており、群間距離を変えることにより光ディスク51へ集光するビームに球面収差を与えることが可能な構成となっている。更に、波長選択位相板49は対物レンズ50と一体に保持されている。
【0053】
光ディスク51で反射したビームは、対物レンズ50、コリメートレンズ48、λ/4板45を介して複合BS42に入射する。この入射光束は複合BS42で反射され、センサレンズ52によりPD44のRFサーボ領域上に集光される。このRFサーボ領域からの出力により情報信号、サーボ用信号が得られる。
【0054】
ここで、コリメートレンズ48は上述のようにレンズ46と47の2群構成となっており、群間距離を変えることにより光ディスク51へ集光するビームに球面収差を与えることが可能である。球面収差補正素子駆動機構71はレンズ46の47のうち少なくとも一方を光軸方向に移動させることで群間距離を可変する駆動機構、92はコントローラ81の制御により球面収差補正素子駆動機構71を駆動する駆動部である。球面収差補正素子駆動機構71としては、例えば、ステッピングモータが用いられる。
【0055】
本実施形態では、LD41の波長は405nm、コリメートレンズ48の焦点距離は13mm、コリメートレンズ48の群間距離は基準で0.8mm、対物レンズ50は開口数0.85、焦点距離1.176mmである。
【0056】
光ディスク51には、記録層が1層の場合の1層ディスクと、記録層が2層の場合の2層ディスクがあり、図2と同様に透明基板、記録層、中間層、基板から形成されている。そして、波長405nm、対物レンズ開口数0.85での記録再生を想定している。
【0057】
ここで、1層ディスクの記録層をL0、2層ディスクの対物レンズ50から遠い記録層をL0、近い側の記録層をL1とする。2層ディスクの場合には、L0からL1へと順番にアドレスを割り当てている。
【0058】
また、1層ディスクの場合には、透明基板は屈折率約1.6、厚み100μm、記録層は厚みが約0.1μmである。2層ディスクの場合には、透明基板は屈折率約1.6、厚み75μm、各記録層は厚みが約0.1μm、中間層は屈折率約1.6、厚み25μmであり、1層ディスクの場合と2層ディスクの場合の対物レンズから遠い側の記録層は、ほぼ同等とみなせるので総称としてL0とする。
【0059】
次に、使用するディスクが赤色対応ディスクである場合の光学系の概要について説明する。集積ユニット61は赤色(660nm帯)LDチップとフォトダイオード、プリアンプ回路が集積されている。また、ホログラム素子62は集積ユニット61側に回折格子、対面側に偏光ホログラム構造が設けられ、集積ユニット61とホログラム素子62は一体に保持されている。
【0060】
集積ユニット61内の赤色(660nm帯)LDチップからの出射ビームは、一部が複合BS42を透過し、集光レンズ43によりPD44のモニタ用受光領域に集光される。この出力は、LDチップからの出射パワーのコントロールに使用される。
【0061】
複合BS42を反射したビームは、λ/4板45を介してコリメートレンズ48で略平行光束とされる。この平行光束は波長選択位相板49を透過し、対物レンズ50により光ディスク51の透明基板を通して記録層に結像される。情報の記録時には、図示しない変調回路による光出力の変調により情報記録を行う。また、再生時には、低出力により情報トラックを走査し、上述のようにその反射光を集積ユニット61内のフォトダイオードに集光し、その受光信号に基づいて情報の再生を行う。
【0062】
ここで、波長選択位相板49は、周知のように対物レンズ50をNA=0.65として使用する為の波長選択フィルタによる開口制限機能と設計波長及び設計基板厚と異なる場合に発生する初期の球面収差を補正するような位相分布を有する。
【0063】
光ディスク51には、赤色LD、対物レンズ開口数(NA)が0.60〜0.65に対応した記録層が1層または記録層が2層のディスクがあり、第1の実施形態で説明したように透明基板、記録層、中間層、基板から形成されている。
【0064】
ここで、赤色LD対応ディスクの1層ディスクの記録層または2層ディスクの対物レンズ50から見て遠い側の記録層をL0’層、近い側の記録層をL1’層とする。これは、1層ディスクの記録層と2層ディスクの対物レンズ50から見て遠い側の記録層は、対物レンズ50から見て同等の透明基板厚を有することを意味している。また、2層ディスクの場合には、L0’からL1’へと順番にアドレスが割り当てられている。
【0065】
集積ユニット61からの光の波長は660nm、その波長でのコリメートレンズ48の焦点距離は、色消し構成のため約13mm、コリメートレンズ48の群間距離は基準で0.8mm、対物レンズ50の焦点距離は約1.18mmである。
【0066】
また、光ディスク51は、赤色LD対応ディスクの時のディスク表面からの基準距離は、L0’層は0.6mm、L1’層は0.54mmある。
【0067】
次に、本実施形態のディスク挿入から球面収差学習へ至るプロセスについて説明する。図6はその動作を示すフローチャートである。
【0068】
まず、光ディスク51が挿入される(S601)。この段階では、ディスクが赤色対応ディスクか青色対応ディスクかは不明である。光ディスク51が挿入されたことが検知されると、コントローラ81は図示しないレーザ駆動回路を制御し、集積ユニット61内の赤色LDを点灯する(S602)。
【0069】
また、コントローラ81は各部を制御して光ディスク51のディスク情報領域を再生し、信号検出部91からの信号によりディスク情報が得られる場合には赤色対応ディスク、ディスク情報が得られない場合には青色対応ディスクと判定する。
【0070】
このようにディスク情報の再生の可、不可によりディスク種類を判別する。この時、信号検出部91はPD44のRFサーボ領域の信号を電圧信号とし、コントローラ81はその信号からディスク情報を再生する。また、ディスク情報を再生できた場合には、そのディスク情報に光ディスク51の記録層が1層か2層かの情報が含まれており、それに基づいて挿入されたディスクが1層ディスクか2層ディスクかが分かる。
【0071】
赤色対応ディスクの場合には、コントローラ81は球面収差補正素子駆動部92を制御し、球面収差補正素子駆動機構71の駆動によりコリメートレンズ48の群間距離を初期位置、L=γに設定する(S604)。
【0072】
図5に示すようにコリメートレンズ48はレンズ46と47の2群構成となっており、コリメートレンズ48と波長選択位相板49を介した対物レンズ50の組み合わせによる群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係は図7のグラフのようになる。
【0073】
赤色対応ディスクの場合に関しての群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係は、グラフ中にそれぞれL0’層、L1’層としてプロットしているようになる。コリメートレンズ48の群間距離(L)の基準値は、L0’層ではL≒0.68mm、L1’層ではL≒0.92mmとなる。アドレスの関係からL0’から使用されるのが普通なので、L≒0.68mmを初期設定値とする。従って、このステップでは、γ≒0.68mmとする。
【0074】
次に、コントローラ81は各部を制御して最適群間距離を探索するための球面収差の学習を行う(S605)。即ち、第1の実施形態の場合と同様にコントローラ81は球面収差補正素子駆動部92を制御し、球面収差補正素子駆動機構71の駆動によりコリメートレンズ48の初期位置を中心に所定の幅(範囲)を、所定量の刻みでコリメートレンズ48の群間距離を変えながら対応する再生信号振幅を集積ユニット61のフォトダイオードの受光信号から検出する。
【0075】
コントローラ81はコリメートレンズ48の群間距離と再生信号振幅を関連付けて処理し、再生信号振幅が最大振幅となるコリメートレンズ48の群間距離を検出し、コントローラ81内にメモリする。
【0076】
この時、球面収差値はほぼゼロとなり、球面収差が補正されたこととなる。なお、この場合には、透明基板厚誤差にして±30μm、刻みは約5μmに相当する、±0.12mmの幅を、0.02mm刻みで上記学習動作を行った。
【0077】
次に、L1’層の学習に移動する(S606)。この際、コントローラ81は球面収差補正素子駆動部92を制御し、コリメートレンズ48の群間距離を初期位置、L=δに設定する。この場合は、上述のようにδ≒0.92mmである。
【0078】
なお、再生されたディスク情報により1層ディスクと判別された場合には、本ステップ(S606)と次ステップ(S607)は不要である。
【0079】
次に、コントローラ81は同様に球面収差の学習を行う(S607)。即ち、球面収差補正素子駆動部92を制御し、初期位置を中心に前述のような所定の幅を、所定の刻みで群間距離を変えながら再生信号振幅を検出する。そして、再生信号振幅が最大となるコリメートレンズ48の群間距離を検出し、コントローラ81内にメモリする。
【0080】
この後、2層ディスクに記録或いは再生を行う場合には、コントローラ81はメモリされたそれぞれの層に対応する最適値にコリメートレンズの群間距離を設定し、それぞれの層における記録或いは再生を行う。
【0081】
次に、S603において青色対応ディスクと判定された場合の動作について説明する。まず、コントローラ81は赤色LD消灯する(S608)。また、LD41(青色LD)を点灯し、更にディスク情報を再生する(S609)。ディスク情報には、光ディスク51が1層ディスクであるか2層ディスクであるかの情報が含まれている。
【0082】
次いで、球面収差補正素子駆動部92を制御し、コリメートレンズ48の群間距離を初期位置、L=αに設定する(S610)。
【0083】
コリメートレンズ48と波長選択位相板49を介した対物レンズ50の組み合わせによる群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係は図7のグラフのようになる。
【0084】
青色対応ディスクの場合には、群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係は、L0層、L1層としてプロットしているようになる。コリメートレンズ48の群間距離(L)の基準値は、L0層ではL≒0.55mm、L1層ではL≒1.05mmなる。従って、アドレスの関係からL0層から使用されるのが普通なので、L≒0.55mmを初期設定値とする。このステップでは、α≒0.55mmとする。
【0085】
次に、コントローラ81は各部を制御して同様に球面収差の学習を行う(S611)。即ち、コントローラ81は球面収差補正素子駆動部92を制御し、初期位置を中心に所定の幅を、所定の刻みで群間距離を変えながら信号検出部91で再生信号振幅を検出する。そして、再生信号振幅が最大となる群間距離を検出し、コントローラ81内にメモリする。この場合には、透明基板厚誤差にして±10μm、刻みは約1μmに相当する、±0.20mm、0.02mm刻みで上記学習動作を行った。
【0086】
次いで、L1層の学習に移動する(S612)。この際、球面収差補正素子駆動部92を制御し、コリメートレンズ48の群間距離を初期位置、L=βに設定する。この場合には、上述のようにβ≒1.05mmである。
【0087】
ここで、再生されたディスク情報により1層ディスクと判別された場合には、本ステップ(S612)と次ステップ(S613)は不要である。
【0088】
次に、コントローラ81は同様に球面収差の学習を行う(S613)。即ち、球面収差補正素子駆動部92を制御し、初期位置を中心に所定の幅を、所定の刻みで群間距離を変えながら、信号検出部91で再生信号振幅を検出する。そして、再生信号振幅が最大となる群間距離を検出し、コントローラ81内にメモリする。
【0089】
この後、2層ディスクに記録或いは再生を行う場合には、コントローラ81はメモリされたそれぞれの層に対応する最適値にコリメートレンズの群間距離を設定し、それぞれの層における記録或いは再生を行う。
【0090】
このように本実施形態では、ディスクの種類(赤色対応ディスクか、青色対応ディスクか)に応じてコリメートレンズ48の群間距離の初期位置を切り替えるようにしたので、異なる波長、開口数に対応する種類の異なるディスクの記録再生が可能な装置において球面収差学習の時間短縮を図ることが出来る。
【0091】
なお、上記実施形態では、2群のレンズからなるコリメートレンズを用いて球面収差補正を行っているが、コリメートレンズとは別に球面収差補正専用のエクスパンダレンズ(相対位置が可変な一対のレンズから構成)を光路中に設けて球面収差補正を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に用いる媒体の構造を示す図である。
【図3】第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態のコリメートレンズの群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態のコリメートレンズの群間距離(L)と発生球面収差(W40)の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0093】
1、41 LD(半導体レーザ)
2 光学フィルタ
3 PBS
4 集光レンズ
5 モニタ用PD
6 1/λ板
7、8、46、47 レンズ
9、48 コリメートレンズ
10、50 対物レンズ
11、51 光ディスク
12 センサレンズ
13 RFサーボPD
21 信号検出部
22、81 コントローラ
23 光減衰素子駆動部
24、92 球面収差補正駆動部
25、91 信号検出部
31 光減衰素子駆動機構
32、71 球面収差補正駆動機構
42 複合BS
43 集光レンズ
44 PD
45 λ/4板
49 波長選択位相板
61 集積ユニット
62 ホログラム素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光束を対物レンズに導き、前記対物レンズにより光記録媒体の記録面に透明基板を介して集光して情報を記録し、或いは前記光記録媒体からの戻り光に基づいて情報の再生を行う光学的情報記録再生装置において、前記光記録媒体の種類を判別する判別手段と、前記透明基板の厚みの変化に伴う収差を補正する補正手段と、前記補正手段による最適補正状態を探索するための学習を行う学習手段と、前記判別手段の判別結果に応じて前記学習手段が学習を行う場合の、前記補正手段の学習開始の初期位置を切り替える手段とを備えたことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記光記録媒体が1層の記録層を有する1層記録媒体であるか、2層の記録層を有する2層記録媒体であるかを判別することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項3】
前記光源から対物レンズまでの光路に設けられ、前記光源からの光出力を減衰させる光減衰素子と、前記光減衰素子を当該光路に対して進退させる駆動手段とを有し、前記判別手段により前記光記録媒体が1層記録媒体と判別された場合には、前記光減衰素子を前記光路に挿入し、2層記録媒体と判別された場合には、前記光減衰素子を前記光路から退避させることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項4】
前記判別手段により前記光記録媒体が2層記録媒体と判別された場合には、前記光記録媒体の2層の記録層においてそれぞれ前記学習手段により最適補正状態を探索するための学習を行い、学習結果を記憶手段に保持することを特徴とする請求項2〜3のいずれか1項に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項5】
前記判別手段は、前記光記録媒体が赤色光源に対応する赤色対応媒体であるか、青色光源に対応する青色対応媒体であるかを判別することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項6】
前記判別手段により赤色対応媒体又は青色対応媒体と判別されたそれぞれの場合において、前記光記録媒体の記録層が1層の記録媒体であるか2層の記録媒体であるかを判別し、前記光記録媒体が2層記録媒体である場合には、2層の記録層でそれぞれ前記学習手段により最適補正状態を探索するための学習を行い、学習結果を記憶手段に保持することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項7】
前記収差補正手段は、一対のレンズを含み、該レンズのレンズ間距離を変化させることにより前記収差を補正することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項8】
前記一対のレンズはコリメートレンズとしても機能することを特徴とする請求項7に記載の光学的情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−209881(P2006−209881A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21449(P2005−21449)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】