説明

光学素子の製造装置

【課題】光学素子を成形から成膜に至るまで時間ロスのない工程設定を行い生産のリードタイムの短縮化を図る。
【解決手段】成膜機50において成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数)、成形機10において成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、T1>T2のときはT1/T2≦N1,N2=1であり、T1<T2のときはT2/T1≦N2,N1=1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の成形からコーティング膜の成膜に至るまでの工程設定を有効に行って光学素子を製造する光学素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、光学素子の製造において、光学素子に反射防止膜等を形成するコーティング作業は、成形工程とは別工程で行われる。この場合、成形機にて成形された成形品を成膜機に搬送する途中で、成形品が塵埃により汚染されるおそれがある。これを解決するため、例えば特許文献1では、真空雰囲気中での基板の成形及び成形された基板への成膜を連続して行う技術が開示されている。
【0003】
この特許文献1によれば、大気圧雰囲気中での基板の搬送が不要となるため、搬送途中での成形品の汚染の防止が図られるとともに、成形品のクリーン環境での保管や成膜前の洗浄作業が必要なくなる。あるいは、成形品を成膜用ヤトイに詰め替える等の成膜の前工程を簡略化若しくは省略でき、リードタイム短縮の効果も見込まれるというものである。
【特許文献1】特開平5−44033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、基板の成形時間と基板への成膜時間を考慮した工程設定に関する考察は何らなされていない。すなわち、特許文献1では、成形工程に要する時間と成膜工程に要する時間が一致しておらず、時間差があるので問題となる。生産のリードタイムは、成形時間と成膜時間との長い方に左右されるためであり、この時間差を有効活用できれば、リードタイムの一層の短縮化が図られるものと予想される。
【0005】
従って、作業工程における時間的ロス(滞留)が発生せず、成形品を連続して製造するためには、例えば成形サイクルに合わせた成膜の装置構成、及び工程設定を行う等の工程の最適化を図ることが必要である。
【0006】
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、成形から成膜に至るまで時間的ロスのない工程設定を行い生産のリードタイムの短縮化を図り得る光学素子の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
処理室を有し成形素材を成形する成形機と、処理室を有し前記成形機にて成形された成形品に薄膜を形成する成膜機と、を備えた光学素子の製造装置において、
前記成膜機で成膜に要する時間をT1、該成膜機の処理室の数をN1(自然数)とし、
前記成形機で成形に要する時間をT2、該成形機の処理室の数をN2(自然数)とした場合に、
T1>T2のときは
T1/T2≦N1,N2=1
であり、
T1<T2のときは
T2/T1≦N2,N1=1
であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光学素子の製造装置において、
T1>T2のときは
前記成膜機の処理室は直列に配置され、
T1<T2のときは
前記成形機の処理室は直列に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の光学素子の製造装置において、
T1>T2のときは
前記成膜機の処理室は並列に配置され、
T1<T2のときは
前記成形機の処理室は並列に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子の製造装置において、
成形素材又は成形品を保持した状態で前記成形機から連結機を介して前記成膜機に搬送する搬送リングをさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成膜に要する時間をT1、成膜機の処理室の数をN1(自然数)とし、成形に要する時間をT2、成形機の処理室の数をN2(自然数)とした場合に、例えばT1>T2のときは、T1/T2≦N1,N2=1としたので、光学素子を成形から成膜に至るまで時間的ロスのない工程設定を行い、生産のリードタイムの短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
[光学素子の製造装置の基本構成]
図1は、本実施形態における光学素子の製造装置100の基本構成を示している。この製造装置100は、成形素材32を成形する成形機10、成形品42を搬送する連結機40、及び成形品42に薄膜を形成する成膜機50を有している。
【0013】
本実施形態では、この製造装置100を用いて、成形機10により成形素材32を所望の形状に成形して成形品42を得た後、次に、成膜機50により成形品42の光学機能面に反射防止膜等の薄膜をコーティングする場合を想定して説明する。
【0014】
成形機10は、上下に対向して配置された一対の上加熱板12及び下加熱板14と、これら上加熱板12及び下加熱板14を固定して支持する不図示の上プレート支持軸及び下プレート支持軸と、上加熱板12及び下加熱板14の夫々に内蔵されているカートリッジヒータ18,20と、上プレート支持軸(図示せず)及び上加熱板12を上下(対向)方向に駆動する不図示のエアシリンダと、装置全体を覆い真空又は不活性ガス雰囲気に置換可能な処理室22と、から構成されている。
【0015】
また、処理室22と不図示の上下プレート支持軸の嵌合部は、処理室22の内部気密を保持できるだけのシールが施されている。この処理室22には、雰囲気を低真空にしたり、又は雰囲気を不活性ガスに置換するための不図示の雰囲気吸排気孔が形成されている。
【0016】
この成形機10の下加熱板14上には、処理室22に搬入された型セット16が載置されるようになっている。
この型セット16は、上型26及び下型28を有しており、この上型26及び下型28は、夫々の成形面26a,28aが対向するように、かつ型の中心軸Oが一致するように配置されている。
【0017】
なお、上型26及び下型28を嵌挿する不図示のスリーブは、必要に応じて適宜使用することができる。上型26は、型の中心軸Oに沿って上下に摺動可能となっている。これら成形面26a,28a間には成形素材32が配置される。この成形素材32は、搬送が容易なように予め円筒状の搬送リング34に保持されている。
【0018】
成形素材32又は成形品42は、搬送時のみならず成形時及び成膜時においても、この搬送リング34に保持された状態で処理が行なわれる。このように、搬送リング34を用いることで、成形から成膜に至るまでのハンドリングの向上が図られている。
【0019】
上型26及び下型28の材料は、タングステンカーバイド(WC)等の超硬合金を研削、研磨して所望の形状に仕上げたものを用いている。成形素材32としては、例えば市販の光学ガラス材料を円柱状に加工したものが用いられる。
【0020】
成形機10の搬入口には、シャッタ38を介して搬入室36が隣接して設けられている。この搬入室36では、後述する搬送リング34に保持された成形素材32を複数収容でき、かつ成形素材32を予備加熱可能な構成を有している。また、この搬入室36は、室内を真空雰囲気にすることが可能であり、シャッタ38の作用で成形機10内の雰囲気を破壊せずに搬送リング34に保持された成形素材32を搬入することができる。
【0021】
なお、搬送リング34に保持された成形素材32を、処理室22又は処理室58等に搬入又は搬出等する作業は、オートハンド62によって行われる。
次に、連結機40について説明する。
【0022】
この連結機40は、成形品42の搬送方向の上流側にてシャッタ44を介して成形機10に連繋され、また、搬送方向の下流側にてシャッタ46を介して成膜機50に連繋されている。この連結機40は、成形品42を成形機10から成膜機50に搬送する役目を有している。
【0023】
また、連結機40は、相対的に低真空又は不活性ガス雰囲気の成形機10と、相対的に高真空の成膜機50との間で、雰囲気の調整を行うためのチャンバー機能を有している。この連結機40により、成形品42をオートハンド62により成形機10から搬出する際、又は成形品42を成膜機50に搬入する際、成形機10及び成膜機50を停止することなく連続して稼動することができる。このようにして、生産性の向上が図られている。
【0024】
なお、連結機40は、成形品42を洗浄する機能を備えることもできるし、成形品42の外観検査や形状検査を行う機能を備えることもできる。これにより、不良品が発生した場合に、これを工程の途中で排出して成膜機50に流さないようにすることができる。
【0025】
次に、成膜機50について説明する。
この成膜機50は処理室58を有していて、例えば搬入された成形品42の表面に蒸着によりコーティング膜を形成する役目をなす。処理室58は、相対的に高真空雰囲気にすることが可能な構成となっており、室内は常時高真空に保持されている。
【0026】
この成膜機50は、コーティング膜の原料(金属)51、この原料51を加熱する加熱部54、及び搬送リング34に保持された成形品42を保持し加熱する試料保持部材56を有している。
【0027】
成膜機50の搬出口には、シャッタ59を介して搬出室60が隣接して設けられている。この搬出室60では、搬送リング34に保持された最終成形品としての光学素子52を複数収容できるようになっている。また、この搬出室60は、成膜機50における処理室58内の雰囲気を破壊せずに搬送リング34に保持された光学素子52を搬出することが可能となっている。
【0028】
以上において、成形機10の処理室22内に搬入された成形素材32は、ここで所望の形状に成形される。
すなわち、成形機10では、雰囲気を不活性ガスに置換された処理室22で、上型26及び下型28が上加熱板12及び下加熱板14により所定温度に加熱され、搬送リング34に保持された成形素材32が所定の温度にまで加熱される。
【0029】
次いで、不図示のエアシリンダにより、上型26を下型28に接近移動(下降)させて搬送リング34に保持された成形素材32の押圧成形が行われる。この押圧成形により、成形素材32が所望の中心肉厚に変形したら、次に、型セット16の冷却が行われる。こうして、型セット16が所定の冷却温度に達したら、上型26を前記と反対方向に移動(上昇)させて、搬送リング34に保持された成形品42を取り出す。
【0030】
このときの成形品42の取り出しは、オートハンド62によって行われる。
次いで、成形機10から連結機40に成形品42を搬入するときは、成形機10と連結機40との間のシャッタ44を開け、取り出された成形品42(搬送リング34を含む)をオートハンド62により連結機40内に搬入する。次いで、シャッタ44を閉め、連結機40の雰囲気を真空状態にする。
【0031】
さらに、この連結機40から成形品42を成膜機50に搬送するときは、連結機40と成膜機50の間のシャッタ46を開け、オートハンド62により成膜機50内の試料保持部材56に成形品42を位置決め配置する。
【0032】
この成膜機50において、搬入された成形品42に蒸着によりコーティング膜を形成する際は、原料51をさらに加熱して蒸着を開始する。すなわち、真空中で金属または/および金属化合物(原料51)を加熱蒸発させ、その蒸気を成形品42の表面に薄膜として付着させる。こうして、所定時間経過後、成形品42への成膜が終了したら原料51の加熱を停止する。
【0033】
こうして、成膜された光学素子52は、オートハンド62により成膜機50の処理室58から搬出室60に搬送される。
この場合、成膜機50と搬出室60との間のシャッタ59を開け、オートハンド62により光学素子52を搬出室60に移送する。なお、搬出室60は真空雰囲気となっていて処理室58内の雰囲気を破壊しない。
【0034】
次に、成膜機50と搬出室60との間のシャッタ59を閉めた後、オートハンド62により搬出室60から光学素子52を搬出する。搬出した光学素子52はパレット上に載置され、冷却される。
【0035】
以上により、成形素材32(搬送リング34を含む)の成形機10への搬入から、光学素子52の成膜機50からの搬出までが、オートハンド62によって連続的に行われる。オートハンド62は、各処理室22、58の外部に駆動源を持ち、成形素材32、成形品42、及び光学素子52を搬送リング34と共に移送する。
【0036】
なお、成形機10において、多数個成形のように、一度に複数の成形品42が、成形機10から同時に搬出されてくる場合には、連結機40および成膜機50においても、1つの連結機40内、1つの処理室内で、複数同時に処理を行うようにしてもよい。また、成形機10は、上記構成に限らず、射出成形のような形態でもよい。
【0037】
連結機40内においては、レールやベルトコンベア等により、搬送リング34に保持された成形素材32を移送するようにしてもよい。
次に、光学素子の製造装置100の具体的な実施形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施形態の光学素子の製造装置100の構成を示している。なお、搬入室36と搬出室60の図示は省略している。
【0038】
本実施形態では、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数=正の整数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=15分、また、成形に要する時間T2が、T2=5分とする。
【0039】
この場合、T1>T2であり、T1/T2=3であるから、T1/T2≦N1を満足するように、N1=3とし、また、N2=1とする。すなわち、成膜機50の処理室58の数を3個とし、成形機10の処理室22の数を1個とする。
【0040】
図2では、成形機10、連結機40、及び成膜機50が、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って配置されている。成形機10は1個の処理室22を有しているが、成膜機50は3個の処理室58(第1の処理室58、第2の処理室58、第3の処理室58)を有している。
【0041】
成膜機50の処理室58、58、58は、処理の流れ方向(矢印方向)に対して並列に配置されている。この各処理室58、58、58において、移送されてきた成形品42に蒸着方式によりコーティング膜を形成する。
【0042】
本実施形態では、成形機10から連結機40には5分ごとに成形品42が搬送されてくるものとする。また、連結機40では、搬送されてきた成形品42を、成膜機50の各処理室58、58、58に、5分毎に分配する機能を有している。
【0043】
こうして、成膜機50の各処理室58、58、58には、5分ごとに成形品42が移送されてくることになる。
なお、本実施形態では、1個の連結機40を配置した場合について説明するが、これに限らない。例えば、成膜機50の処理室58の数(3個)に対応して連結機40を夫々配置してもよい。
【0044】
成膜機50の各処理室58、58、58では、成形品42にコーティング膜を形成するための膜の原料(金属、金属化合物)51を有している。そして、各処理室58、58、58において、順次移送されてきた成形品42に多層膜(又は単層膜)が形成される。
【0045】
従って、成膜機50の第1の処理室58からは、コーティング膜53が施された1個目の最終成形品としての光学素子52が、成形品42が搬入されてから15分後に搬出される。また、成膜機50の第2の処理室58からは、その5分後に2個目の光学素子52が搬出される。さらに、成膜機50の第3の処理室58からは、さらにその5分後に3個目の光学素子52が搬出される。
【0046】
こうして、コーティング膜53が施された光学素子52は、成膜機50の処理室58、58、58から順次5分ごとに連続的に搬出される。
なお、成膜機50における処理室58の数を、例えば4個にした場合でも、同様に、順次5分ごとに成膜機50の処理室58から光学素子52が搬出される。ただし、この場合は、第1の処理室58では、1個目の光学素子52を搬出した後に、連結機40から次の成形品42を受け取るまでに5分の待ち時間が生じることになる。
【0047】
同様に、成膜機50の処理室58の数を5個以上にした場合も、各処理室で待ち時間が生じてくる。よって、本実施形態の場合は、成膜機50の処理室58の数を3個とするのが最も効率的であるといえる。
【0048】
なお、連結機40として、例えば成形機10と成膜機50の間の雰囲気を調整して搬送する役目の他に、成形品42の成膜前洗浄(プラズマ洗浄、UV洗浄)や外観検査機能や形状検査機能を備えていてもよい。その場合は、連結機40は、搬送されてきた成形品42を複数収容することができ、洗浄工程や外観検査工程、形状検査工程を5分毎に搬送する機能を備えることもできる。さらに、不良の成形品の搬送を途中でカットして工程外に排出する不図示の排出口を設ける。
【0049】
また、成膜機50における成膜方式は蒸着に限らない。例えば、スパッタリング等による成膜方式であってもよい。
なお、本実施形態では、成膜に要する時間T1(15分)が成形に要する時間T2(5分)よりも長い場合(T1>T2)について説明したが、これに限らない。
【0050】
例えば、成膜に要する時間T1よりも成形に要する時間T2の方が長い場合(T1<T2)は、T2/T1≦N2とし,N1=1とすることで、前述した実施形態と同様の効果が得られる。なお、これについては、後述の図6及び図7において詳しく説明する。
【0051】
本実施形態によれば、成膜機50から5分に1個ずつ最終成形品としての光学素子52を連続的に搬出することができる。これに対し、従来装置では、例えば成膜機50の成膜処理に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。このように、本実施形態では、成形サイクルに合わせた成膜工程を設定することで、時間的ロスのない工程設定を実現することができる。
【0052】
また、本実施形態では、成膜機50の処理室58、58、58を、処理の流れ方向(矢印方向)に対し並列に配置したので、例えば成形品42に同一種類の膜を所定厚さで形成する場合等、工程を複数に細分化するメリットが少ない場合に特に適している。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、成形素材32の成形から光学素子52の成膜完了に至るまで、タイムロスがなくなるため、リードタイム短縮によるコストダウンを実現することができる。特に、成形素材32(又は成形品42)を保持した状態で、成形機10から連結機40を介して成膜機50に搬送する搬送リング34を備えているので、搬送性の向上を図ることができる。
【0054】
また、蒸着によりコーティング膜53を形成する場合は、膜の密着性を高めるために成形品42の予備加熱が必要となるが、この予備加熱の代わりに、成形機10での冷却、搬出温度を予備加熱温度以上とし、連結機40で保温を行って成膜機50に投入する、もしくは、予備加熱を連結機40で行ってから成膜機50に投入することで、加熱時間を短縮することができる。これにより、一層生産性の向上を図ることができる。
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施形態の製造装置100の構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
【0055】
本実施形態では、前述と同様に、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=15分、また、成形に要する時間T2が、T2=5分とする。
【0056】
この場合、T1>T2であり、T1/T2=3であるから、T1/T2≦N1を満足するように、N1=3とし、また、N2=1とする。すなわち、成膜機50の処理室58の数を3個とし、成形機10の処理室22の数を1個とする。成形に要する時間T2に合わせて成膜工程を細分化したものである。
【0057】
図3では、成形機10は1個の処理室22を有しているが、成膜機50は3個の処理室58(第1の処理室58、第2の処理室58、第3の処理室58)を有している。また、成膜機50での成膜工程において、成膜に要する時間(T1=15分)を3つの工程に分割し、夫々の工程で5分ずつ成膜作業を行うこととする。
【0058】
本実施形態では、この処理室58、58、58を、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置した点が第1の実施の形態と相違している。
また、成膜機50の各処理室58、58、58では、複数層のコーティング膜を形成するための膜の原料51を有しており、移送されてきた成形品42に多層膜を形成するものとする。そこで、成形品42に形成される多層膜として、例えば異なる膜種、膜厚の3層膜を形成する場合を考える。この場合、第1の処理室58で1層目を成膜し、第2の処理室58で2層目を成膜し、第3の処理室58で3層目を成膜することとする。
【0059】
本実施形態では、成形機10から5分ごとに連結機40に成形品42が搬送されてくる。連結機40では、この成形品42を、成膜機50の第1の処理室58に5分後に分配する機能を有している。こうして、第1の処理室58に搬入された成形品42は、該第1の処理室58で5分の成膜工程を終えて成形品42となる。この成形品42は、1層目が成膜されたものである。
【0060】
なお、ここでの成形品42に付した符号「42」、「42」、・・・等は、個々の処理室58に搬入された時点での成膜状態で区別している。例えば、成形品42は成膜されていない状態、成形品42は1層目が成膜された状態、成形品42は、2層目が成膜された状態、・・・を意味する。
【0061】
その後、この成形品42が第2の処理室58に搬送され、この第2の処理室58で5分の成膜工程を終え2層目が成膜されて成形品42となる。さらに、この成形品42は第3の処理室58に搬送され、この第3の処理室58で5分の成膜工程を終えて3層目が成膜され(成形品42に相当)、該第3の処理室58から最終成形品としての光学素子52が搬出される。
【0062】
これにより、順次5分ごとに成膜機50に搬送されてきた成形品42は、各処理室58、58、58で成膜されて5分ごとに成膜機50から光学素子52として連続的に外部に搬出される。
【0063】
なお、本実施形態では、成膜機50における処理室58の数を3個としたが、これに限らない。例えば、成膜工程を4個以上に細分化してもよい。
また、多層膜としての3層それぞれの膜種、膜厚が異なり、成膜に要する所要時間も異なる場合は、さらに成膜機50の処理室58を細分化することもできる。これについては後述の実施形態で説明する。
【0064】
このように、成形機10における成形に要する時間T2=5分に合わせて、成膜機50の処理室58の数を細分化(本実施形態では3工程に分割)したことで、成膜機50から連続的に光学素子52を搬出することができる。これに対し、従来装置では、例えば成膜機50の成膜処理に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。
【0065】
本実施形態によれば、成膜が完了した光学素子52を、成膜機50から5分ごとに連続して搬出することができる。こうして、時間的ロスのない工程設定を行うことにより、リードタイムの短縮を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、成膜機50の処理室58、58、58を、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置したので、異なる膜種の多層膜を形成する場合等、工程を複数に細分化しやすい場合に適している。
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施形態の製造装置100の構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
【0067】
本実施形態では、前述と同様に、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=15分、また、成形に要する時間T2が、T2=5分とする。
【0068】
この場合、T1>T2であり、T1/T2=3であるから、T1/T2≦N1を満足するように、N1=4とし、また、N2=1とする。すなわち、成膜機50の処理室58の数を4個とし、成形機10の処理室22の数を1個とする。成形に要する時間T2に合わせて成膜工程を細分化したものである。
【0069】
本実施形態では、成膜機50において、膜種、膜厚の異なる3層の多層膜を形成する場合を考える。そして、1層目を成膜するのに7分、2層目を成膜するのに4分、3層目を成膜するのに4分を要するものとする。
【0070】
図4では、成形機10は1個の処理室22を有しているが、成膜機50は4個の処理室58(第1の処理室58、第2の処理室58、第3の処理室58、第4の処理室58)を有している。この処理室58、58、58、58を、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置した。
【0071】
そして、成形機10から連結機40には5分ごとに成形品42が搬送されてくるものとする。すなわち、成形品42は、連結機40から成膜機50の第1の処理室58に5分ごとに順次移送されてくる。
【0072】
このため、成形機10で成形素材32を成形するに要する時間T2=5分に合わせて、成膜機50の処理室58の数を4つに細分化した。具体的には、成膜機50の4つの処理室58〜58では、1層目を第1と第2の処理室58、58で成膜処理し、2層目を第3の処理室58で成膜処理し、さらに、3層目を第4の処理室58で成膜処理する。
【0073】
具体的には、成膜機50の4つの処理室58〜58では、第1の処理室58で1層目の下層を3.5分で成膜処理し、1.5分待機して成形品42となる。この成形品42は第2の処理室58に搬送され、この第2の処理室58で1層目の上層を3.5分で成膜処理し、1.5分待機して成形品42となる。
【0074】
さらに、この成形品42は第3の処理室58に搬送され、この第3の処理室58で2層目を4分で成膜処理し、1分待機して成形品42となる。さらに、この成形品42は第4の処理室58に搬送され、この第4の処理室58で4分の成膜工程と1分の待機を終えて(成形品42に相当)、光学素子52として搬出される。
【0075】
なお、この第4の処理室58は最後の処理室なので、1分待機することなく光学素子52を搬出してもよい。また、待機時間を設けたのは、成形機10での成形に要する時間(T2=5分)に合わせたものである。
【0076】
これにより、順次5分ごとに成膜機50に搬送されてきた成形品42は、各処理室58、58、58、58で成膜されて5分ごとに成膜機50から連続して外部に搬出される。これに対し、従来装置では、例えば成膜機50の成膜処理に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。
【0077】
なお、本実施形態では、成膜機50における処理室58の数を4個としたが、これに限らない。例えば5個以上に細分化してもよい。また、本実施形態では、4つの処理室58〜58を処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置したが、並列に配置してもよい。ただし、並列配置の場合は各処理室において3層の膜を全て形成することになる。
【0078】
また、本実施形態では、第1と第2の処理室58、58で、1層目を2回に分けて7分(3.5分と3.5分)で成膜処理し、3分待機するようにしたが、これに限らない。例えば第1と第2の処理室58、58で、1層目を2回に分けて7分(例えば5分と2分)で成膜処理し、その後3分待機するようにしてもよい。
【0079】
本実施形態によれば、成膜が完了した光学素子52を、成膜機50から5分ごとに連続して搬出することができる。こうして、リードタイムの短縮を図ることができる。また、本実施形態では、成膜機50の4個の処理室58を直列に配置し、成形品42に1層目の膜を形成する場合に、第1と第2の処理室58、58にて2回に分けて1層目の膜を形成するようにしたので、その1層目の膜厚が特に大きい場合等に効果を有する。
[第4の実施の形態]
図5は、第4の実施形態の製造装置100の構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
【0080】
本実施形態では、前述と同様に、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=15分、また、成形に要する時間T2が、T2=5分とする。
【0081】
この場合、T1>T2であり、T1/T2=3であるから、T1/T2≦N1を満足するように、N1=4とし、また、N2=1とする。すなわち、成膜機50の処理室58の数を4個とし、成形機10の処理室22の数を1個とする。成形に要する時間T2に合わせて成膜工程を細分化したものである。
【0082】
本実施形態では、膜厚、膜種の異なる5層の多層膜を形成する場合を考える。そして、1層目を成膜するのに3分、2層目を成膜するのに2分、3層目を成膜するのに3分、4層目を成膜するのに3分、5層目を成膜するのに4分を要するものとする。
【0083】
図5では、成形機10は1個の処理室22を有しているが、成膜機50は4個の処理室58(第1の処理室58、第2の処理室58、第3の処理室58、第4の処理室58)を有している。
【0084】
これらの各処理室58、58、58、58を、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置した。
そして、連結機40から成形品42が成膜機50の第1の処理室58に5分ごとに順次移送されてくるものとする。
【0085】
また、本実施形態では、成形に要する時間T2=5分に合わせて成膜機50の処理室58の数を4個に細分化している。
例えば、成膜機50の4つの処理室58、58、58、58において、第1の処理室58で1層目及び2層目を5分で成膜処理して成形品42となる(待機なし)。
【0086】
このとき、例えば2種類の原料51,51の上方に夫々不図示のシャッタを配置し、一方の原料51を蒸着しているときは、他方の原料51の蒸着を禁止するようにする。例えば、一方の原料51を蒸着しているときは、その原料51に対応するシャッタを開放するとともに、他方の原料51に対応するシャッタを覆う。
【0087】
また、一方の原料51の蒸着を禁止しているときは、その原料51に対応するシャッタを覆い、他方の原料51に対応するシャッタを開放する。
次に、この成形品42は第2の処理室58に搬送され、この第2の処理室58で3層目を3分で成膜処理し、2分待機して成形品42となる。
【0088】
この成形品42は第3の処理室58に搬送され、この第3の処理室58で4層目を3分で成膜処理し、2分待機して成形品42となる。さらに、この成形品42は第4の処理室58に搬送され、この第4の処理室58で5層目を4分で成膜処理し(成形品42に相当)、1分待機して最終成形品としての光学素子52となる。
【0089】
なお、この第4の処理室58は最後の処理室なので、1分待機することなく光学素子52を搬出してもよい。
これにより、順次5分ごとに成膜機50に搬送されてきた成形品42は、各処理室58、58、58、58で成膜されて5分ごとに成膜機50から連続して外部に搬出される。これに対し、従来装置では、例えば成膜機50の成膜処理に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。
【0090】
なお、本実施形態では、成膜機50における処理室58の数を4個としたが、これに限らない。例えば5個以上に細分化してもよい。また、本実施形態では、4つの処理室58〜58を処理の流れ方向(矢印方向)に沿って直列に配置したが、並列に配置してもよい。ただし、並列配置の場合は各処理室において5層の膜を全て形成することになる。
【0091】
本実施形態によれば、成膜が完了した光学素子52を、成膜機50から5分ごとに連続して搬出することができる。こうして、時間的ロスのない工程設定を行い、リードタイムの短縮を図ることができる。
【0092】
また、本実施形態では、成膜機50の4個の処理室58を直列に配置し、特に第1の処理室58にて、成形品42に1層目及び2層目の膜を形成するようにしたので、1層目及び2層目の膜厚が特に小さい場合等に効果的である。
[第5の実施の形態]
図6は、第5の実施形態の光学素子の製造装置100の構成を示している。なお、搬入室36と搬出室60の図示は省略している。また、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
【0093】
本実施形態では、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=5分、また、成形に要する時間T2が、T2=15分とする。
【0094】
この場合、T1<T2であり、T2/T1=3であるから、T2/T1≦N2を満足するように、N2=3とし、また、N1=1とする。すなわち、成形機10の処理室22の数を3個とし、成膜機50の処理室58の数を1個とする。
【0095】
図6では、成形機10、連結機40、及び成膜機50が、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って配置されている。成形機10は、並列に配置された3個の処理室22(第1の処理室22、第2の処理室22、第3の処理室22)を有し、成膜機50は1個の処理室58を有している。
【0096】
ここで、成形機10の処理室22、22、22には、上流側の搬入室36(図1参照)から、搬送リング34に保持された成形素材32が1個ずつ、かつ5分ごとに搬入されるものとする。
【0097】
すなわち、第1の処理室22に1個目の成形素材32が搬入され、その5分後に第2の処理室22に2個目の成形素材32が搬入され、さらにその5分後に第3の処理室22に3個目の成形素材32が搬入される場合を考える。
【0098】
こうして、第1の処理室22において1個目の成形素材32が15分の成形工程を終えて所望の形状の成形品42に成形される。また、その5分後に、第2の処理室22において2個目の成形素材32が15分の成形工程を終えて所望の形状の成形品42に成形される。さらに、その5分後に、第3の処理室22において3個目の成形素材32が15分の成形工程を終えて所望の形状の成形品42に成形される。
【0099】
成形された成形品42は、各処理室22、22、22から5分ごとに連結機40に向けて搬送される。このため、連結機40には、第1の処理室22から1個目の成形品42が搬入され、その5分後に、第2の処理室22から2個目の成形品42が搬入され、さらにその5分後に、第3の処理室22から3個目の成形品42が搬入される。
【0100】
成膜機50の処理室58では、搬入された成形品42にコーティング膜を形成するための膜の原料(金属、金属化合物)51を有している。そして、処理室58において、移送されてきた成形品42に多層膜(又は単層膜)が形成される。このとき、成膜機50の処理室58にて成膜に要する時間は5分である。
【0101】
従って、成膜機50の処理室58からは、コーティング膜53が施された1個目の光学素子52(最終成形品)が、成形品42が搬入されてから5分後に搬出される。次いで、その5分後に2個目の光学素子52が搬出され、さらに、その5分後に3個目の光学素子52が搬出される。
【0102】
こうして、コーティング膜53が施された光学素子52は、成膜機50の処理室58から順次5分ごとに連続的に搬出される。
一方、成形機10の第1の処理室22には、1個目の成形品42を成形した後に、次の4個目の成形素材32(搬送リング34を含む)が搬入される。この4個目の成形素材32は、第1の処理室22に搬入されてから15分後に成形品42として成形され、連結機40に搬送される。連結機40では、4個目の成形品42が搬入されると、その5分後に、その成形品42を成膜機50の処理室58に搬送する。こうして、成膜機50の処理室58では、4個目の成形品42が搬入されると、5分の成膜処理を行ってコーティング膜を形成し、光学素子52として搬出する。
【0103】
以下、同様にして、順次5分毎に、成形機10の第2の処理室22には5個目の成形素材32(搬送リング34を含む)が搬入され、さらに、成形機10の第3の処理室22には6個目の成形素材32(搬送リング34を含む)が搬入される。こうして、成膜機50の処理室58にてコーティング膜53が形成される。
【0104】
本実施形態によれば、成膜に要する時間T1(5分)よりも成形に要する時間T2(15分)が長い場合に、成形機10の3個の処理室22、22、22を並列に配置することで、成膜機50から5分ごとに最終成形品としての光学素子52を連続的に搬出することができる。
【0105】
これに対し、従来装置では、例えば成形機10の成形処理に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。
本実施形態によれば、成形素材32の成形から光学素子52の成膜完了に至るまでタイムロスがなくなるため、リードタイムの短縮化を図ることができる。
[第6の実施の形態]
図7は、第6の実施形態の光学素子の製造装置100の構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
【0106】
本実施形態では、成膜機50で成膜に要する時間をT1、成膜機50の処理室58の数をN1(自然数=正の整数)とし、成形機10で成形に要する時間をT2、成形機10の処理室22の数をN2(自然数)とした場合に、
例えば成膜に要する時間T1が、T1=5分、また、成形に要する時間T2が、T2=15分とする。
【0107】
この場合、T1<T2であり、T2/T1=3であるから、T2/T1≦N2を満足するように、N2=3とし、また、N1=1とする。すなわち、成形工程を細分化して成形機10の処理室22の数を3個とし、成膜機50の処理室58の数を1個とする。成膜に要する時間T1に合わせて成形工程を細分化したものである。
【0108】
図7では、成形機10、連結機40、及び成膜機50が、処理の流れ方向(矢印方向)に沿って配置されている。成形機10は、直列に配置された3個の処理室22(第1の処理室22、第2の処理室22、第3の処理室22)を有し、成膜機50は1個の処理室58を有している。
【0109】
成形機10の処理室22、22、22には、上流側の搬入室36(図1参照)から搬送リング34に保持された成形素材32が1個ずつ搬入されてくるものとする。搬入された成形素材32(搬送リング34を含む)は、各処理室22、22、22において所望の形状に成形されて成形品42が得られる。
【0110】
本実施形態では、成形機10での成形工程において、成形に要する時間(T2=15分)を3つの工程(例えば、加熱・押圧工程、形状安定化工程、冷却工程)に分割し、夫々の工程で5分ずつの処理作業を行うこととする。そして、この3つの工程のうち、第1の処理室22で加熱・押圧工程を行い、第2の処理室22で形状安定化工程を行い、第3の処理室22で冷却工程を行うこととする。
【0111】
加熱・押圧工程では、第1の処理室22に成形素材32(搬送リング34を含む)が搬入されると、不図示のエアシリンダにより上型26が下型28に接近移動(下降)して、成形素材32が加熱および押圧成形される。ここで、上型26と下型28は、不図示の固定部材により上加熱板12と下加熱板14にそれぞれ固定されている。
【0112】
成形素材32が所望の中心肉厚に変形したら上型26の下降を停止する。この加熱・押圧工程では、5分で成形素材32が所望形状に成形されて中間成形素材32となる。
次いで、所望形状に成形された中間成形素材32は、第2の処理室22に搬入され、形状安定化工程が施される。この形状安定化工程では、上型26が中間成形素材32を押圧したままの状態で5分間徐冷され、最終成形素材32となる。この形状安定化工程により、最終成形素材32は内部歪等が取り除かれて安定した組織が形成される。
【0113】
続いて、この最終成形素材32は、第3の処理室22に搬入され、ここで冷却工程が行われる。この冷却工程では、例えば上型26が最終成形素材32を押圧したまま(又は上型26が上昇した状態のまま)、5分間冷却されて最終成形素材32が固化され、成形品42となる。
【0114】
次に、成形機10の第3の処理室22から、連結機40に向けて成形品42が搬送される。連結機40では、搬入された成形品42を、その5分後に成膜機50の処理室58に搬送する。こうして、成膜機50の処理室58に搬入された成形品42は、該処理室58で5分の成膜工程を終えてコーティング膜が形成され、最終成形品としての光学素子52として外部に搬出される。
【0115】
一方、第1の処理室22には、1個目の成形素材32(搬送リング34を含む)が搬入されてから、その5分後に2個目の成形素材32が搬入される。この2個目の成形素材32は、前記と同様の成形工程、成膜工程を経て光学素子52として外部に搬出される。こうして、成形機10において連続的な成形作業が繰り返される。
【0116】
以上により、成形機10の第1の処理室22に搬入された成形素材32は、3つの処理室22、22、22における押圧工程、形状安定化工程、冷却工程を経て成形品42が成形され、その成形品42は5分ごとに連結機40に搬送されて、成膜機50から5分ごとに光学素子52として連続的に外部に搬出される。
【0117】
なお、本実施形態では、上型26と下型28は、3つの処理室22、22、22の上加熱板12と下加熱板14にそれぞれ固定されており、成形素材32(搬送リング34を含む)のみを、3つの処理室22、22、22および連結機40へと搬送したが、型セットごと、移動するようにしても構わない。この場合、連結機40に、型セットから成形素材32(搬送リング34を含む)を取り出し、かつ、上型26、下型28を成形機10の処理室22へ戻す、不図示の型搬送機構を設ける。
【0118】
また、成形機10における処理室22の数を3個としたが、これに限らない。例えば、成形工程を4個以上に細分化してもよい。
本実施形態によれば、成膜に要する時間T1(5分)よりも成形に要する時間T2(15分)が長い場合に、成膜機50における成膜に要する時間T1(5分)に合わせて、成形機10の処理室22の数を細分化(3つに分割)したことで、成膜機50から時間T1(5分)ごとに連続的に光学素子52を搬出することができる。
【0119】
これに対し、従来装置では、例えば成形機10の成形工程に15分を要する場合は、15分に1個ずつしか光学素子52を搬出することができなかった。
本実施形態によれば、成形機10の処理室22を複数に細分化して直列に配置したので、例えば成形工程を複数工程に分割して作業することが可能な場合等に、時間的ロスのない工程設定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】光学素子の製造装置の基本構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【図3】第2の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【図4】第3の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【図5】第4の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【図6】第5の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【図7】第6の実施形態の製造装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
100 光学素子の製造装置
10 成形機
12 上加熱板
14 下加熱板
16 型セット
18 カートリッジヒータ
20 カートリッジヒータ
22 処理室
26 上型
26a 成形面
28 下型
28a 成形面
32 成形素材
34 搬送リング
36 搬入室
38 シャッタ
40 連結機
42 成形品
42 成形品
42 成形品
42 成形品
44 シャッタ
46 シャッタ
50 成膜機
51 原料
52 光学素子
53 コーティング膜
54 加熱部
56 試料保持部材
58 処理室
58 処理室
58 処理室
58 処理室
58 処理室
59 シャッタ
60 搬出室
62 オートハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を有し成形素材を成形する成形機と、処理室を有し前記成形機にて成形された成形品に薄膜を形成する成膜機と、を備えた光学素子の製造装置において、
前記成膜機で成膜に要する時間をT1、該成膜機の処理室の数をN1(自然数)とし、
前記成形機で成形に要する時間をT2、該成形機の処理室の数をN2(自然数)とした場合に、
T1>T2のときは
T1/T2≦N1,N2=1
であり、
T1<T2のときは
T2/T1≦N2,N1=1
である
ことを特徴とする光学素子の製造装置。
【請求項2】
T1>T2のときは
前記成膜機の処理室は直列に配置され、
T1<T2のときは
前記成形機の処理室は直列に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造装置。
【請求項3】
T1>T2のときは
前記成膜機の処理室は並列に配置され、
T1<T2のときは
前記成形機の処理室は並列に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造装置。
【請求項4】
成形素材又は成形品を保持した状態で前記成形機から連結機を介して前記成膜機に搬送する搬送リングをさらに具備する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120450(P2009−120450A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298095(P2007−298095)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】