説明

光学素子及び露光装置

露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置に使用される光学素子において、 前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の表面に第1の溶解防止部材を備えている光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体素子、撮像素子(CCD等)、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等のデバイスを製造するためのリソグラフィ工程でマスクパターンを感光性の基板上に転写するために用いられる液浸法を用いた投影露光装置に使用される光学素子、及び該光学素子を用いた露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等を製造する際に、マスクとしてのレチクルのパターンの像を投影光学系を介して、感光性の基板としてのレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上の各ショット領域に転写する投影露光装置が使用されている。従来は投影露光装置として、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型の露光装置(ステッパ)が多用されていたが、最近ではレチクルとウエハとを同期走査して露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置も注目されている。
【0003】
投影露光装置に備えられている投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短くなるほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、集積回路の微細化に伴い投影露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大してきている。そして、現在主流の露光波長は、KrFエキシマレーザの248nmであるが、更に短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化されている。
【0004】
ところで露光光の短波長化に伴い所望の結像性能を確保しつつ露光に十分な光量を確保できる透過率を有する硝材は限定されていることから、投影光学系の下面とウエハ表面との間を水、又は有機溶媒等の液体で満たし、液体中での露光光の波長が、空気中の1/n倍(nは液体の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上する液浸型の投影露光装置が提案されている(特開平10−303114号公報)。
【発明の開示】
【0005】
この液浸型の投影露光装置を、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置として構成する場合には、投影光学系と液体とが接するために、液体と接した投影光学系の先端部が液体によって浸食される可能性があり、所望の光学性能が得られないという問題があった。
【0006】
また、液浸型の投影露光装置を、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置として構成する場合には、ウエハを移動させながら露光を行うため、ウエハを移動させている間も投影光学系とウエハとの間には液体が満たされている必要があり、投影光学系と液体とが接するために、液体と接した投影光学系の先端部が液体によって浸食され、所望の光学性能が得られないという問題があった。
【0007】
この発明の課題は、液浸法を適用した場合に、投影光学系の先端部が液体によって浸食されない光学素子及び該光学素子を備えた露光装置を提供することである。
【0008】
本発明は、前記課題を解決する以下の光学素子、並びにそれを用いた露光装置を提供する。
【0009】
<1> 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置に使用される光学素子において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の表面に第1の溶解防止部材を備えている光学素子。
【0010】
前記<1>に記載の光学素子によれば、光学素子の表面(先端面)に第1の溶解防止部材が形成されているため、光学素子の溶解を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。
【0011】
<2> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する単層膜により構成されている、<1>に記載の光学素子。
【0012】
<3> 前記単層膜は、純水に対する溶解度が1.0×10−7g/水100g以下である、<2>に記載の光学素子。
【0013】
前記<2>又は<3>に記載の光学素子によれば、多層膜と比較した場合において界面を少なくすることができることから、溶解防止膜としての保護層の界面から液体が侵入した場合に起こり得る化学反応による悪影響を極力抑えることができる。また、多層膜により構成される溶解防止膜を成膜する場合と比較して、簡易に成膜することができる。
【0014】
<4> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する多層膜により構成されている、<1>に記載の光学素子。
【0015】
<5> 前記多層膜は、少なくとも最表層として純水に対する溶解度が1.0×10−7g/水100g以下である層を有しており、かつ、前記露光ビームの出射角度が50度の時に平均反射率が2%以下である、<4>に記載の光学素子。
【0016】
<6> 前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、
前記光学素子側から順次1層目、2層目、・・・、最表層をn層目として、奇数番目の層は、隣接する前記光学素子又は隣接する偶数番目の層の屈折率に比して高屈折率を有する膜であり、前記1層目乃至前記n層目は、全体として前記反射防止機能を備えている、<4>に記載の光学素子。
【0017】
<7> 前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、
前記光学素子側から順次1層目、2層目、・・・、最表層をn層目として、奇数番目の層は、隣接する前記光学素子又は隣接する偶数番目の層の屈折率に比して低屈折率を有する膜であり、前記1層目乃至前記n層目は、全体として前記反射防止機能を備えている、<4>に記載の光学素子。
【0018】
前記<4>〜<7>のうちの何れか一項に記載の光学素子によれば、前記光学素子の表面に多層膜が成膜され、該多層膜は前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビーム(露光光源からの入射光)が反射されるのを防止する反射防止機能とを備えているので、液体による浸食のない安定した光学素子を提供できる。従って、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学素子を提供できる。
【0019】
<8> 前記第1の溶解防止部材は、MgF、LaF、SrF、YF、LuF、HfF、NdF、GdF、YbF、DyF、AlF、NaAlF、5NaF・3AlF、Al、SiO、TiO、MgO、HfO、Cr、ZrO、Ta及びNbからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<1>に記載の光学素子。
【0020】
前記<8>に記載の光学素子によれば、光学素子に形成される溶解防止部材を選択することができるため、光学素子の基材、光学素子が設置される環境、光学素子を液体に浸す場合における液体の種類等に基づいて、最適な溶解防止部材を選択することができる。
【0021】
<9> 前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、下記層構成(1層目/2層目/・・・/n層目):
(i)LaF/MgF
(ii)MgF/SiO
(iii)MgF/SiO/SiO
(iv)LaF/MgF/SiO
(v)LaF/MgF/Al
(vi)LaF/MgF/Al/SiO
(vii)LaF/MgF/LaF/MgF
(viii)LaF/MgF/LaF/SiO
(ix)LaF/MgF/LaF/MgF/SiO、及び
(x)LaF/MgF/LaF/Al/SiO
からなる群から選択される層構成を有している、<4>に記載の光学素子。
【0022】
前記<9>に記載の光学素子によれば、前記多層膜は所定の期間前記保護機能を備えているので、例えば10年間液浸である水から保護することができる。したがって、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学素子を提供すると共に、所定の期間、液体による浸食のない安定した光学素子を提供できる。
【0023】
<10> 前記第1の溶解防止部材は、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、RFスパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法及び光CVD法からなる群から選択される少なくとも一つの成膜方法によって成膜されたものである、<1>に記載の光学素子。
【0024】
前記<10>に記載の光学素子によれば、光学素子に溶解防止部材を成膜する場合において成膜方法を選択することができるため、溶解防止部材の材料に最適な成膜方法を選択することより光学素子に溶解防止部材を最適な状態に成膜により形成することができる。
【0025】
<11> 前記第1の溶解防止部材は、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる膜を備えている、<1>に記載の光学素子。
【0026】
前記<11>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の表面に液体への溶解を防止するための酸化物溶解防止膜が高い均質性と空孔に対する高い埋め込み性を特徴とする湿式成膜方法により成膜されているため、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0027】
なお、透過光学素子が滑らかに研磨された表面を有する蛍石により形成されている場合には、透過光学素子と酸化物溶解防止膜との密着力を向上させるために、投影光学系の光学性能を劣化させない程度に透過光学素子の表面を粗くして透過光学素子の表面積を増大させる表面処理を透過光学素子に施すことが望ましい。
【0028】
<12> 前記多層膜は、乾式成膜方法によって成膜された第1の膜と、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる第2の膜とを備えている、<4>に記載の光学素子。
【0029】
前記<12>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の表面に乾式成膜方法によって第1の膜が成膜され、成膜された第1の膜の表面に湿式成膜方法によって第2の膜である酸化物膜が成膜されている。従って、透過光学素子が滑らかに研磨された表面を有する蛍石により形成されている場合においても、第1の膜が乾式成膜方法によって成膜されるため、第1の膜を透過光学素子に密着させることができる。また、第1の膜を透過光学素子と第2の膜とを密着させる密着力強化層として機能させることができる。
【0030】
また、第2の膜が高い均質性と空孔に対する高い埋め込み性を特徴とする湿式成膜方法により成膜されているため、第1の膜の空孔へ第2の膜が入り込んで空孔が無くなるので、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、第1の膜及び第2の膜が透過光学素子から剥離することがなく、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0031】
<13> 前記多層膜は、少なくとも最表層として湿式成膜方法によって成膜されたSiO膜を備えている、<4>に記載の光学素子。
【0032】
前記<13>に記載の光学素子によれば、前記最表層の膜は所定の期間前記保護機能を備えているので、例えば10年間液浸である水から保護することができる。したがって、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学素子を提供すると共に、所定の期間、液体による浸食のない安定した光学素子を提供できる。
【0033】
<14> 前記湿式成膜方法によって成膜されたSiO膜の前記光学素子側に、乾式成膜方法によって成膜されたSiO膜を更に備えている、<13>に記載の光学素子。
【0034】
前記<14>に記載の光学素子によれば、乾式成膜方法により成膜された二酸化珪素膜と湿式成膜により成膜された二酸化珪素膜との結合力が強化され、双方の膜をより強固に密着させることができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、双方の膜が剥離することがなく、液体が透過光学素子を溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0035】
<15> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する薄板により構成されており、前記薄板が前記光学素子の表面に取り外し可能に接合されている、<1>に記載の光学素子。
【0036】
<16> 前記薄板は、前記光学素子の表面にオプティカルコンタクトで接合されており、前記露光ビームの出射角度が50度の時に平均反射率が2%以下である、<15>に記載の光学素子。
【0037】
<17> 前記薄板は、フッ化物、酸化物及び樹脂からなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<15>に記載の光学素子。
【0038】
<18> 前記薄板は、石英ガラス薄板、フッ化マグネシウム薄板、螢石薄板及びポリテトラフルオロエチレン薄板からなる群から選択される少なくとも一つである、<15>に記載の光学素子。
【0039】
前記<15>〜<18>のうちの何れか一項に記載の光学素子によれば、前記光学素子の表面を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する機能とを有する薄板が前記光学素子の表面に接合されており、前記光学素子の表面状態を損ねることなく取り外しが可能である光学部材を用いるので、液体による浸食のない安定した光学部材を提供できる。したがって、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学部材を提供できる。また、前記薄板と前記光学素子がオプティカルコンタクトで接合されていれば、前記液体からの保護機能を更に高めることができる。
【0040】
<19> 前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に第2の溶解防止部材を更に備えている、<1>に記載の光学素子。
【0041】
前記<19>に記載の光学素子によれば、光学素子の基板側の表面(先端面)及び光学素子の側面(テーパー面)、即ち露光ビームが通過しない部分に第2の溶解防止部材が形成されているため、光学素子の基板側の表面からの溶解を防止することができると共に、光学素子の側面からの溶解を防止することができるため、投影光学系の光学性能を維持することができる。
【0042】
<20> 前記第1の溶解防止部材と前記第2の溶解防止部材とが、同一の材料を用いて成膜された膜を備えている、<19>に記載の光学素子。
【0043】
前記<20>に記載の光学素子によれば、光学素子の基板側の表面及び光学素子の側面への溶解防止膜の成膜を一度に行うことができるため、簡易な工程により溶解防止膜の成膜を行うことができる。
【0044】
<21> 前記同一の材料を用いて成膜された膜は、湿式成膜方法によって成膜されたものである、<20>に記載の光学素子。
【0045】
前記<21>に記載の光学素子によれば、光学素子の基板側の表面及び光学素子の側面への溶解防止膜の成膜を一度に行うことができるため、隙間なく基板を保護できる。
【0046】
<22> 前記同一の材料は、MgF又はSiOである、<20>に記載の光学素子。
【0047】
前記<22>に記載の光学素子によれば、前記同一の材料は、MgF又はSiOであるため、基板を保護することができる。
【0048】
<23> 前記第1の溶解防止部材は親水性の溶解防止膜を備えており、前記第2の溶解防止部材は撥水性の溶解防止膜を備えている、<19>に記載の光学素子。
【0049】
ここで光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜は、光学素子の基板側の表面に成膜されている溶解防止膜に比較して、撥水性能に優れた溶解防止膜であり、基板側の表面に成膜されている溶解防止膜は、光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜に比較して、親水性能に優れた溶解防止膜である。
【0050】
前記<23>に記載の光学素子によれば、光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜が撥水性の溶解防止膜であることから、光学素子の側面に付着した液体を基板側に容易に回り込ませることができ、光学素子の基板側の表面に成膜されている溶解防止膜が親水性の溶解防止膜であることから、光学素子の基板側表面と基板との間を常に液体で満たすことができる。
【0051】
<24> 前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する金属製溶解防止膜を備えている、<19>に記載の光学素子。
【0052】
前記<24>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)に基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体に不溶な金属製溶解防止膜が成膜されているため、液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0053】
<25> 前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子の側面と前記金属製溶解防止膜との間に成膜された密着力強化膜を更に備えている、<24>に記載の光学素子。
【0054】
前記<25>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に成膜されている密着力強化膜の表面に金属製溶解防止膜が成膜されているため、金属製溶解防止膜を透過光学素子に密着させることができる。従って、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、金属製溶解防止膜が透過光学素子から剥離することなく、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0055】
<26> 前記第2の溶解防止部材は、前記金属製溶解防止膜の表面に成膜された金属製溶解防止膜保護膜を更に備えている、<24>に記載の光学素子。
【0056】
前記<26>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に成膜されている金属製溶解防止膜の表面に金属製溶解防止膜保護膜が成膜されているため、柔らく耐擦傷性が低い金属製溶解防止膜の損傷を防止することができ、金属製溶解防止膜を保護することができる。従って、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、この透過光学素子を露光装置に用いた場合、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0057】
<27> 前記金属製溶解防止膜は、純水に対する溶解度が2ppt以下であり、充填密度が95%以上のものである、<24>に記載の光学素子。
【0058】
前記<27>に記載の光学素子によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に水への溶解度が2ppt以下である溶解防止膜が成膜されているため、透過光学素子が基板の表面と投影光学系との間に介在させる所定の液体に溶解することなく、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に充填密度が95%以上である溶解防止膜が成膜されているため、前記液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、透過光学素子が液体に溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0059】
<28> 前記金属製溶解防止膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<24>に記載の光学素子。
【0060】
前記<28>に記載の光学素子によれば、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrの中の少なくとも1つにより形成される膜により構成される金属製溶解防止膜が投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)、即ち露光ビームが通過しない部分に成膜される。従って、この透光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合においても、金属製溶解防止膜が露光ビームを遮光することなく、最適な状態で露光を続けることができる。
【0061】
<29> 前記密着力強化膜は、Ta及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<25>に記載の光学素子。
【0062】
前記<29>に記載の光学素子によれば、透過光学素子と溶解防止膜との間にTa及びCrの少なくとも1つにより形成される膜により構成される密着力強化膜が成膜されているため、透過光学素子の側面と溶解防止膜との密着力を向上させることができる。従って、この透過光学素子を液浸型の露光装置に用いた場合、透過光学素子から溶解防止膜が剥離することなく、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0063】
<30> 前記金属製溶解防止膜保護膜は、SiO、Y、Nd、Cr、Ta、Nb、TiO、ZrO、HfO及びLaからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<26>に記載の光学素子。
【0064】
前記<30>に記載の光学素子によれば、透過光学素子に成膜された金属製溶解防止膜の表面に成膜する金属製溶解防止膜保護膜を選択することができるため、透過光学素子の基材、透過光学素子が設置される環境、基板の表面と投影光学系との間に介在させる所定の液体の種類等に基づいて、最適な金属製溶解防止膜保護膜を選択することができる。
【0065】
<31> 前記第2の溶解防止部材は、遮光膜を備えている、<19>に記載の光学素子。
【0066】
<32> 前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、<31>に記載の光学素子。
【0067】
<33> 前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<32>に記載の光学素子。
【0068】
前記<31>〜<33>のうちの何れか一項に記載の光学素子によれば、遮光膜により投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)の周辺部に設けられたシール部材に、露光ビーム及びウエハからの露光ビーム反射光が照射されるのを防止することができ、シール部材の劣化を防止することができる。
【0069】
<34> 前記光学素子の表面に前記第1の溶解防止部材を介してオプティカルコンタクトで接合されている光学部材を更に備える、<1>に記載の光学素子。
【0070】
前記<34>に記載の光学素子によれば、前記光学部材が前記第1の溶解防止部材を介して前記光学素子にオプティカルコンタクトされるので、適当な溶解防止部材の存在によって、フッ化物材料を基材とする光学素子に対しても前記光学部材を強固に接合することができる。この結果、前記光学素子を前記光学部材によって保護することができ、かかる光学素子を組み込んだ光学系の性能を長期に亘って維持することができる。
【0071】
<35> 前記第1の溶解防止部材はSiOにより形成されている膜であり、前記光学部材は石英により形成されている部材である、<34>に記載の光学素子。
【0072】
前記<35>に記載の光学素子によれば、前記第1の溶解防止部材のオプティカルコンタクトに供する面が二酸化珪素で形成されるので、二酸化珪素表面の水酸基を利用して前記光学部材に対する接合強度を高めることができる。また、二酸化珪素は、高い制御性で成膜することができ、膜質を高品位とすることができる。また、石英により形成されている前記光学部材の耐水性や接合強度が特に優れたものになり、紫外光等の透過性も良好である。
【0073】
<36> 前記露光ビームはArFレーザ光であり、前記光学素子は螢石により形成されている素子であり、前記光学素子の前記表面の結晶方位が(111)面である、<1>に記載の光学素子。
【0074】
前記<36>に記載の光学素子によれば、前記露光ビームとしてArFレーザ光を出射する露光装置に使用されるので性能の高い解像度を得ることができる。また、前記光学素子は蛍石であるので、ArFレーザのように短波長のレーザでもかかる光学素子の使用が可能となる。また、前記光学素子が蛍石で形成されている場合、紫外光等の透過性が良好で、紫外光等に対する耐久性も良好である。さらに、成膜される溶解防止膜、特にフッ化ランタンは、結晶方位が(111)面である蛍石の成膜面に成膜されることによりヘテロエピタキシャル成長する。従って、成膜された溶解防止膜は、非常に緻密となり、かつ非常に欠陥の少ない結晶構造となる。
【0075】
<37> 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置に使用される光学素子において、前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に遮光膜を備えている光学素子。
【0076】
<38> 前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、<37>に記載の光学素子。
【0077】
<39> 前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<38>に記載の光学素子。
【0078】
前記<37>〜<39>のうちの何れか一項に記載の光学素子によれば、遮光膜により投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)の周辺部に設けられたシール部材に、露光ビーム及びウエハからの露光ビーム反射光が照射されるのを防止することができ、シール部材の劣化を防止することができる。
【0079】
<40> 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の表面に形成されている第1の溶解防止部材を備えている露光装置。
【0080】
前記<40>に記載の露光装置によれば、光学素子の表面(先端面)に第1の溶解防止部材が形成されているため、投影光学系の先端部と基板との間に満たされた液体により光学素子が溶解することがないため、光学素子を頻繁に交換する必要がなく、露光装置の高スループットを維持することができる。更に、前記液体により光学素子が溶解することがないため、投影光学系の光学性能を維持することができ、最適な状態で露光を続けることができる。
【0081】
<41> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する単層膜により構成されている、<40>に記載の露光装置。
【0082】
前記<41>に記載の露光装置によれば、多層膜とした場合と比較して界面を少なくすることができる。従って、溶解防止膜としての保護層の界面から液体が侵入した場合に起こり得る化学反応による悪影響を極力抑えることができる。また、多層膜により構成される溶解防止膜を成膜する場合と比較して、簡易に成膜することができる。
【0083】
<42> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する多層膜により構成されている、<40>に記載の露光装置。
【0084】
前記<42>に記載の露光装置によれば、光学素子の先端が液体によって浸食されないので、浸食された光学素子を交換するために装置の稼動を停止させる必要がなくなり、最終製品を効率よく生産することができる。また、本発明の光学素子は、浸食されず、光学特性が安定しているので、本発明の光学素子を搭載した露光装置によって生産される最終製品の品質が安定する。
【0085】
<43> 前記第1の溶解防止部材は、MgF、LaF、SrF、YF、LuF、HfF、NdF、GdF、YbF、DyF、AlF、NaAlF、5NaF・3AlF、Al、SiO、TiO、MgO、HfO、Cr、ZrO、Ta及びNbからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<40>に記載の露光装置。
【0086】
前記<43>に記載の露光装置によれば、光学素子に形成される溶解防止部材を選択することができるため、光学素子の基材、光学素子が設置される環境、投影光学系と基板との間に満たされる液体の種類等に基づいて、最適な溶解防止部材を選択することができる。
【0087】
<44> 前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、下記層構成(1層目/2層目/・・・/n層目):
(i)LaF/MgF
(ii)MgF/SiO
(iii)MgF/SiO/SiO
(iv)LaF/MgF/SiO
(v)LaF/MgF/Al
(vi)LaF/MgF/Al/SiO
(vii)LaF/MgF/LaF/MgF
(viii)LaF/MgF/LaF/SiO
(ix)LaF/MgF/LaF/MgF/SiO、及び
(x)LaF/MgF/LaF/Al/SiO
からなる群から選択される層構成を有している、<42>に記載の露光装置。
【0088】
前記<44>に記載の露光装置によれば、前記多層膜は所定の期間前記保護機能を備えているので、例えば10年間液浸である水から保護することができる。したがって、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な露光装置を提供すると共に、所定の期間、液体による浸食のない安定した光学特性を有する露光装置を提供できる。
【0089】
<45> 前記第1の溶解防止部材は、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる膜を備えている、<40>に記載の露光装置。
【0090】
前記<45>に記載の露光装置によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の表面に液体への溶解を防止するための酸化物溶解防止膜が高い均質性と空孔に対する高い埋め込み性を特徴とする湿式成膜方法により成膜されているため、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0091】
なお、透過光学素子が滑らかに研磨された表面を有する蛍石により形成されている場合には、透過光学素子と酸化物溶解防止膜との密着力を向上させるために、投影光学系の光学性能を劣化させない程度に透過光学素子の表面を粗くして透過光学素子の表面積を増大させる表面処理を透過光学素子に施すことが望ましい。
【0092】
<46> 前記多層膜は、乾式成膜方法によって成膜された第1の膜と、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる第2の膜とを備えている、<42>に記載の露光装置。
【0093】
前記<46>に記載の露光装置によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子に成膜されている第1の膜及び第2の膜が透過光学素子から剥離することがなく、投影光学系の先端部と基板との間に満たされた液体により透過光学素子が溶解することがないため、投影光学系の光学性能を維持することができ、最適な状態で露光を続けることができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0094】
<47> 前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する薄板により構成されており、前記薄板が前記光学素子の表面に取り外し可能に接合されている、<40>に記載の露光装置。
【0095】
前記<47>に記載の露光装置によれば、光学素子の先端が液体によって浸食されないので、浸食された光学素子を交換するために、露光装置の稼動をとめる必要がなくなるので、最終製品を効率よく生産することができる。また、本発明の光学素子は、浸食されず、光学特性が安定しているので、本発明の光学素子を搭載した露光装置によって生産される最終製品の品質が安定する。
【0096】
<48> 前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に形成された第2の溶解防止部材を更に備えている、<40>に記載の露光装置。
【0097】
前記<48>に記載の露光装置によれば、光学素子の基板側の表面(先端面)及び光学素子の側面(テーパー面)、即ち露光ビームが通過しない部分に第2の溶解防止部材が形成されているため、投影光学系の先端部と基板との間に満たされた液体により光学素子が溶解することない。従って、光学素子を頻繁に交換する必要がなく、露光装置の高スループットを維持することができる。更に、液体により光学素子が溶解することがないため、投影光学系の光学性能を維持することができ、最適な状態で露光を続けることができる。
<49> 前記第1の溶解防止部材と前記第2の溶解防止部材とが、同一の材料を用いて成膜された膜を備えている、<48>に記載の露光装置。
【0098】
前記<49>に記載の露光装置によれば、光学素子の基板側の表面及び光学素子の側面への溶解防止膜の成膜を一度に行うことができるため、簡易な工程により溶解防止膜の成膜を行うことができる。
【0099】
<50> 前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する金属製溶解防止膜を備えている、<48>に記載の露光装置。
【0100】
前記<50>に記載の露光装置によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体に不溶な金属製溶解防止膜が成膜されているため、液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0101】
<51> 前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子の側面と前記金属製溶解防止膜との間に成膜された密着力強化膜を更に備えている、<50>に記載の露光装置。
【0102】
前記<51>に記載の露光装置によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に成膜されている密着力強化膜の表面に金属製溶解防止膜が成膜されているため、金属製溶解防止膜を透過光学素子に密着させることができる。従って、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、金属製溶解防止膜が透過光学素子から剥離することなく、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0103】
<52> 前記第2の溶解防止部材は、前記金属製溶解防止膜の表面に成膜された金属製溶解防止膜保護膜を更に備えている、<50>に記載の露光装置。
【0104】
前記<52>に記載の露光装置によれば、投影光学系の基板側の透過光学素子の側面に成膜されている金属製溶解防止膜の表面に金属製溶解防止膜保護膜が成膜されているため、柔らく耐擦傷性が低い金属製溶解防止膜の損傷を防止することができ、金属製溶解防止膜を保護することができる。従って、基板の表面と投影光学系との間に介在させた所定の液体の透過光学素子への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0105】
<53> 前記金属製溶解防止膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<50>に記載の露光装置。
【0106】
前記<53>に記載の露光装置によれば、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrの中の少なくとも1つにより形成される膜により構成される金属製溶解防止膜が投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)、即ち露光ビームが通過しない部分に成膜される。従って、金属製溶解防止膜が露光ビームを遮光することなく、最適な状態で露光を続けることができる。
【0107】
<54> 前記金属製溶解防止膜保護膜は、SiO、Y、Nd、Cr、Ta、Nb、TiO、ZrO、HfO及びLaからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<52>に記載の露光装置。
【0108】
前記<54>に記載の露光装置によれば、透過光学素子に成膜された金属製溶解防止膜の表面に成膜する金属製溶解防止膜保護膜を選択することができるため、透過光学素子の基材、透過光学素子が設置される環境、基板の表面と投影光学系との間に介在させる所定の液体の種類等に基づいて、最適な金属製溶解防止膜保護膜を選択することができる。
【0109】
<55> 前記第2の溶解防止部材は、遮光膜を備えている、<48>に記載の露光装置。
【0110】
<56> 前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、<55>に記載の露光装置。
【0111】
<57> 前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<56>に記載の露光装置。
【0112】
前記<55>〜<57>のうちの何れか一項に記載の露光装置によれば、遮光膜により投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)の周辺部に設けられたシール部材に露光ビーム及びウエハからの露光ビーム反射光が照射されるのを防止することができ、シール部材の劣化を防止することができる。
【0113】
<58> 前記光学素子の表面に前記第1の溶解防止部材を介してオプティカルコンタクトで接合されている光学部材を更に備える、<40>に記載の露光装置。
【0114】
前記<58>に記載の露光装置によれば、優れたオプティカルコンタクトを達成した光学部材を組み込んだ投影光学系を利用するので、高い性能を長期に亘って維持できる液浸型の露光処理が可能になる。
【0115】
<59> 前記露光ビームはArFレーザ光であり、前記光学素子は螢石により形成されている素子であり、前記光学素子の前記表面の結晶方位が(111)面である、<40>に記載の露光装置。
【0116】
前記<59>に記載の露光装置によれば、前記露光ビームとしてArFレーザ光を出射する露光装置であるので性能の高い解像度を得ることができる。また、前記光学素子は蛍石であるので、ArFレーザのように短波長のレーザでもかかる光学素子の使用が可能となる。また、前記光学素子が蛍石で形成されている場合、紫外光等の透過性が良好で、紫外光等に対する耐久性も良好である。さらに、成膜される溶解防止膜、特にフッ化ランタンは、結晶方位が(111)面である蛍石の成膜面に成膜されることによりヘテロエピタキシャル成長する。従って、成膜された溶解防止膜は、非常に緻密となり、かつ非常に欠陥の少ない結晶構造となる。
【0117】
<60> 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に形成されている遮光膜を備えている露光装置。
【0118】
<61> 前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、<60>に記載の露光装置。
【0119】
<62> 前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、<61>に記載の露光装置。
【0120】
前記<60>〜<62>のうちの何れか一項に記載の露光装置によれば、遮光膜により投影光学系の基板側の透過光学素子の側面(テーパー面)の周辺部に設けられたシール部材に露光ビーム及びウエハからの露光ビーム反射光が照射されるのを防止することができ、シール部材の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、実施形態1において使用される投影露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1の光学素子の構成を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す投影光学系における光学素子の先端部とX方向用の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す投影光学系における光学素子の先端部とY方向用の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。
【図5】図5は、図1に示す投影光学系における光学素子とウエハWとの間への液体の供給及び回収の様子を示す要部の拡大図である。
【図6】図6は、実施形態3の光学素子の構成を示す図である。
【図7】図7は、実施形態6の光学素子の構成を示す図である。
【図8】図8は、実施形態6の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図9】図9は、実施形態7の光学素子の構成を示す図である。
【図10】図10は、実施形態7の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図11】図11は、実施形態8の光学素子の構成を示す図である。
【図12】図12は、実施形態8の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図13】図13は、実施形態8の光学素子において、2層目の膜厚が半減したときの光学素子のArFエキシマレーザにおける、反射率と出射角θとの関係を示す図である。。
【図14】図14は、実施形態9の光学素子の構成を示す図である。
【図15】図15は、実施形態9の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図16】図16は、実施形態10の光学素子の構成を示す図である。
【図17】図17は、実施形態10の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図18】図18は、実施形態11の光学素子の構成を示す図である。
【図19】図19は、実施形態11の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図20】図20は、実施形態12の光学素子の構成を示す図である。
【図21】図21は、実施形態12の光学素子のArFエキシマレーザにおける反射率と出射角との関係を示す図である。
【図22】図22は、実施形態14において使用される光学部材の構成を示す図である。
【図23】図23は、図22のオプティカルコンタクト界面の角度反射特性を示す図である。
【図24】図24は、実施形態15において使用される光学部材の構成を示す図である。
【図25】図25は、実施形態16で用いた光学素子の構成を示す図である。
【図26】図26は、図25に示す光学素子4の製造工程の第1工程を概念的に示す図である。
【図27】図26は、図25に示す光学素子4の製造工程の第2工程を概念的に示す図である。
【図28】図26は、図25に示す光学素子4の製造工程の第3工程を概念的に示す図である。
【図29】図26は、図25に示す光学素子4の製造工程の第4工程を概念的に示す図である。
【図30】図30は、実施形態17において使用される投影露光装置の概略構成を示す図である。
【図31】図31は、図30に示す投影光学系における光学素子の先端部とX方向用の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。
【図32】図32は、図30に示す投影光学系における光学素子の先端部とY方向用の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。
【図33】図33は、実施形態33にかかる露光装置の概略構成を示す図である。
【図34】図34は、実施例1にかかる光学素子の構成を示す図である。
【図35】図35は、蛍石に光が入射した際の反射される様子を示す図36である。
【図36】図36は、蛍石基板に光が入射したときの蛍石の残存反射率を示す図である。
【図37】図37は、実施例1にかかる実験装置の構成を示す図である。
【図38】図38は、実施例2にかかる光学素子の構成を示す図である。
【図39】図39は、比較例1にかかる実験装置の構成を示す図である。
【図40】図40は、比較例1、実施例1及び実施例2における光学素子の実験後に測定された段差の測定結果を示す図である。
【図41】図41は、実施例3にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図42】図42は、実施例3にかかる試験器の構成を示す図である。
【図43】図43は、実施例4にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図44】図44は、実施例5にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図45】図45は、実施例6にかかる光学素子の構成を示す図である。
【図46】図46は、実施例7にかかる光学素子の構成を示す図である。
【図47】図47は、実施例6にかかる試料1の構成を示す図である。
【図48】図48は、実施例7にかかる試料2の構成を示す図である。
【図49】図49は、参考例1にかかる試料3の構成を示す図である。
【図50】図50は、実施例6〜7及び参考例1にかかる実験装置の構成を示す図である。
【図51】図51は、実施例6〜7及び参考例1における実験結果を示す図である。
【図52】図52は、実験後における試料3の状態を示す図である。
【図53】図53は、実施例8にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図54】図54は、実施例10にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図55】図55は、実施例11にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図56】図56は、参考例2にかかる透過光学素子の構成を示す図である。
【図57】図57は、媒質から実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子に光が入射した場合における角度反射特性を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0122】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0123】
[実施形態1]
以下、図面を参照して、この発明の第1の実施の形態にかかる投影露光装置の説明を行う。図1は、第1の実施の形態にかかるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置の概略構成を示す図である。また、以下の説明においては、図1中に示すXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がウエハWに対して平行となるよう設定され、Z軸がウエハWに対して直交する方向に設定されている。図中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0124】
この実施の形態にかかる投影露光装置は、図1に示すように、露光光源であるArFエキシマレーザ光源を含み、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザー)、視野絞り、コンデンサレンズ等から構成される照明光学系1を備えている。光源から射出された波長193nmの紫外パルス光よりなる露光光(露光ビーム)ILは、照明光学系1を通過し、レチクル(マスク)Rに設けられたパターンを照明する。レチクルRを通過した光は、両側(又はウエハW側に片側)テレセントリックな投影光学系PLを介して、フォトレジストが塗布されたウエハ(基板)W上の露光領域に所定の投影倍率β(例えば、βは1/4,1/5等)で縮小投影露光する。
【0125】
なお、露光光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、Fレーザ光(波長157nm)や水銀ランプのi線(波長365nm)等を使用してもよい。
【0126】
また、レチクルRはレチクルステージRST上に保持され、レチクルステージRSTにはX方向、Y方向及び回転方向にレチクルRを微動させる機構が組み込まれている。レチクルステージRSTのX方向、Y方向及び回転方向の位置は、レチクルレーザ干渉計(図示せず)によってリアルタイムに計測、且つ制御されている。
【0127】
また、ウエハWはウエハホルダ(図示せず)を介してZステージ9上に固定されている。Zステージ9は、投影光学系PLの像面と実質的に平行なXY平面に沿って移動するXYステージ10上に固定されており、ウエハWのフォーカス位置(Z方向の位置)及び傾斜角を制御する。Zステージ9のX方向、Y方向及び回転方向の位置は、Zステージ9上に位置する移動鏡12を用いたウエハレーザ干渉計13によってリアルタイムに計測、且つ制御されている。また、XYステージ10は、ベース11上に載置されており、ウエハWのX方向、Y方向及び回転方向を制御する。
【0128】
この投影露光装置に備えられている主制御系14は、レチクルレーザ干渉計により計測された計測値に基づいてレチクルRのX方向、Y方向及び回転方向の位置の調整を行なう。即ち、主制御系14は、レチクルステージRSTに組み込まれている機構に制御信号を送信し、レチクルステージRSTを微動させることによりレチクルRの位置調整を行なう。
【0129】
また、主制御系14は、オートフォーカス方式及びオートレベリング方式によりウエハW上の表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むため、ウエハWのフォーカス位置(Z方向の位置)及び傾斜角の調整を行なう。即ち、主制御系14は、ウエハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウエハステージ駆動系15によりZステージ9を駆動させることによりウエハWのフォーカス位置及び傾斜角の調整を行なう。更に、主制御系14は、ウエハレーザ干渉計13により計測された計測値に基づいてウエハWのX方向、Y方向及び回転方向の位置の調整を行なう。即ち、主制御系14は、ウエハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウエハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウエハWのX方向、Y方向及び回転方向の位置調整を行なう。
【0130】
露光時には、主制御系14は、ウエハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウエハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウエハW上の各ショット領域を順次露光位置にステップ移動させる。即ち、ステップ・アンド・リピート方式によりレチクルRのパターン像をウエハW上に露光する動作を繰り返す。
【0131】
この投影露光装置においては、露光波長を実質的に短くし、且つ解像度を向上させるために液浸法が適用されている。ここで、液侵法を適用した液浸型の投影露光装置においては、少なくともレチクルRのパターン像をウエハW上に転写している間は、ウエハWの表面と投影光学系PLのウエハW側の透過光学素子4との間に所定の液体7が満たされている。投影光学系PLは、投影光学系PLを構成する石英または蛍石により形成された複数の光学素子を収納する鏡筒3を備えている。この投影光学系PLにおいては、最もウエハW側の透過光学素子4が蛍石により形成されており、透過光学素子4の表面(ウエハW側の先端部4A及びテーパー面4B(図2参照))のみが液体7と接触するように構成されている。これによって、金属からなる鏡筒3の腐食等が防止されている。
【0132】
ここで、図2に示す透過光学素子4の基材は蛍石であり、その蛍石の成膜面の結晶方位は(111)面である。また、透過光学素子4のウエハW側の先端部4A、即ち露光光が透過する部分には、溶解防止膜として、フッ化マグネシウム(MgF)膜F1及び二酸化珪素(SiO)膜F2が真空蒸着法により成膜され、更に二酸化珪素(SiO)膜F3が湿式製膜法により成膜されている。
【0133】
また、透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光が透過しない部分は、金属製溶解防止膜(密着力強化膜を兼ねる)としてタンタル(Ta)膜F5(F4)がスパッタリング法により成膜されている。また、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の表面には、金属製溶解防止膜を保護するための金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)として二酸化珪素(SiO)膜F6が、二酸化珪素(SiO)膜F3と同時に湿式製膜法により成膜されている。ここで、透過光学素子4のテーパー面4Bに成膜される金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の純水への溶解度は2ppt以下であり、充填密度は95%以上である。また、透過光学素子4の先端部4Aに成膜された溶解防止膜F1〜F3による、露光ビームの出射角度が50度の時における平均反射率は2%以下である。
【0134】
なお、図2に示す透過光学素子4は、例えば以下のようにして製造される。
(i)透過光学素子4のウエハW側の先端部4A、即ち露光光が透過する部分に、透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光が透過しない部分に成膜する金属製溶解防止膜F5が付かないようにマスクシールを貼り付ける。
(ii)透過光学素子4のテーパー面4Bにスパッタリング法を用いてタンタル(Ta)膜を200nm成膜し、金属製溶解防止膜(密着力強化膜を兼ねる)F5を形成する。
(iii)透過光学素子4のウエハW側の先端部4Aに貼り付けたマスクシールを剥す。
(iv)透過光学素子4のウエハW側の先端部4Aに真空蒸着法を用いてフッ化マグネシウム(MgF)膜F1を15nm、二酸化珪素(SiO)膜F2を300nm成膜する。
(v)透過光学素子4のテーパー面4Bに成膜した金属製溶解防止膜であるタンタル(Ta)膜F5と、透過光学素子4のウエハW側の先端部4Aに成膜した二酸化珪素(SiO)膜F2の上に、湿式成膜法を用いて二酸化珪素(SiO)膜F3,F6を同時に130nm成膜し、160℃で加熱焼結させる。
(vi)金属製溶解防止膜であるタンタル(Ta)膜F5の上に湿式成膜法により成膜された二酸化珪素(SiO)膜F6は金属製溶解防止膜を保護するための金属製溶解防止膜保護膜として機能する。
【0135】
また、液体7としては、半導体製造工場等で容易に大量に入手できる純水が使用されている。なお、純水は不純物の含有量が極めて低いため、ウエハWの表面を洗浄する作用が期待できる。
【0136】
図3は、投影光学系PLの透過光学素子4のウエハW側の先端部4A及びテーパー面4B並びにウエハWと、そのウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BをX方向に挟む2対の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。また、図4は、投影光学系PLの透過光学素子4のウエハW側の先端部4A及びテーパー面4Bと、そのウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BをY方向に挟む2対の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。この実施の形態にかかる投影露光装置は、液体7の供給を制御する液体供給装置5及び液体7の排出を制御する液体回収装置6を備えている。
【0137】
液体供給装置5は、液体7のタンク(図示せず)、加圧ポンプ(図示せず)、温度制御装置(図示せず)等により構成されている。また、液体供給装置5には、図3に示すように、供給管21を介してウエハW側の先端部4A及びテーパー面4Bの+X方向側に細い先端部を有する排出ノズル21aが、供給管22を介してウエハW側の先端部4A及びテーパー面4Bの−X方向側に細い先端部を有する排出ノズル22aが接続されている。また、液体供給装置5には、図4に示すように、供給管27を介してウエハW側の先端部4A及びテーパー面4Bの+Y方向側に細い先端部を有する排出ノズル27aが、供給管28を介してウエハW側の先端部4A及びテーパー面4Bの−Y方向側に細い先端部を有する排出ノズル28aが接続されている。液体供給装置5は、温度制御装置により液体7の温度を調整し、排出ノズル21a、22a、27a、28aの中の少なくとも1つの排出ノズルより、供給管21、22、27、28の中の少なくとも1つの供給管を介して温度調整された液体7をウエハW上に供給する。なお、液体7の温度は、温度制御装置により、例えばこの実施の形態にかかる投影露光装置が収納されているチャンバ内の温度と同程度に設定される。
【0138】
液体回収装置6は、液体7のタンク(図示せず)、吸引ポンプ(図示せず)等により構成されている。また、液体回収装置6には、図3に示すように、回収管23を介してテーパー面4Bの−X方向側に広い先端部を有する流入ノズル23a、23bが、回収管24を介してテーパー面4Bの+X方向側に広い先端部を有する流入ノズル24a、24bが接続されている。なお、流入ノズル23a、23b、24a、24bは、ウエハW側の先端部4Aの中心を通りX軸に平行な軸に対して扇状に開いた形で配置されている。また、液体回収装置6には、図4に示すように、回収管29を介してテーパー面4Bの−Y方向側に広い先端部を有する流入ノズル29a、29bが、回収管30を介してテーパー面4Bの+Y方向側に広い先端部を有する流入ノズル30a、30bが接続されている。なお、流入ノズル29a、29b、30a、30bは、ウエハW側の先端部4Aの中心を通りY軸に平行な軸に対して扇状に開いた形で配置されている。
【0139】
液体回収装置6は、流入ノズル23a及び23b、24a及び24b、29a及び29b、30a及び30bの中の少なくとも1つの流入ノズルより、回収管23、24、29、30の中の少なくとも1つの回収管を介して液体7をウエハW上から回収する。
【0140】
次に、液体7の供給及び回収方法について説明する。図3において、実線で示す矢印25Aの方向(−X方向)にウエハWをステップ移動させる際には、液体供給装置5は、供給管21及び排出ノズル21aを介して透過光学素子4のウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BとウエハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管23及び流入ノズル23a,23bを介してウエハW上から液体供給装置5によりウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、液体7はウエハW上を矢印25Bの方向(−X方向)に流れており、ウエハWと透過光学素子4との間は液体7により安定に満たされている。
【0141】
一方、図3において、鎖線で示す矢印26Aの方向(+X方向)にウエハWをステップ移動させる際には、液体供給装置5は、供給管22及び排出ノズル22aを介して透過光学素子4のウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BとウエハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管24及び流入ノズル24a,24bを介して、液体供給装置5によりウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、液体7はウエハW上を矢印26Bの方向(+X方向)に流れており、ウエハWと透過光学素子4との間は液体7により安定に満たされている。
【0142】
また、ウエハWをY方向にステップ移動させる際には、Y方向から液体7の供給及び回収を行なう。即ち、図4において、実線で示す矢印31Aの方向(−Y方向)にウエハWをステップ移動させる際には、液体供給装置5は、供給管27及び排出ノズル27aを介して、液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管29及び流入ノズル29a,29bを介して、液体供給装置5によりウエハW側の先端部4A及びテーパー面4BとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、露光領域上を矢印31Bの方向(−Y方向)に流れており、ウエハWと透過光学素子4との間は液体7により安定に満たされている。
【0143】
また、ウエハWを+Y方向にステップ移動させる際には、液体供給装置5は、供給管28及び排出ノズル28aを介して、液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管30及び流入ノズル30a,30bを介して、液体供給装置5によりウエハW側の先端部4AとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、液体7は、露光領域上を+Y方向に流れており、ウエハWと透過光学素子4との間は液体7により安定に満たされている。
【0144】
なお、X方向またはY方向から液体7の供給及び回収を行うノズルだけでなく、例えば斜めの方向から液体7の供給及び回収を行うためのノズルを設けてもよい。
【0145】
次に、液体7の供給量及び回収量の制御方法について説明する。図4は、投影光学系PLを構成する光学素子4とウエハWの間に液体7を供給及び回収している状態を示す図である。図4に示すように、ウエハWが矢印25Aの方向(−X方向)に移動している場合において、排出ノズル21aより供給された液体7は、矢印25Bの方向(−X方向)に流れ、流入ノズル23a,23bにより回収される。ウエハWが移動中であっても光学素子4とウエハWとの間に充填される液体7の量を一定に保つため、液体7の供給量Vi(m/s)と回収量Vo(m/s)とを等しくする。また、XYステージ10(ウエハW)の移動速度vに基づいて液体7の供給量Vi及び回収量Voを調整する。即ち、数式1に基づいて液体7の供給量Vi及び回収量Voが算出される。
【数1】

ここで、Dは図1に示すように光学素子4の先端部4Aの直径(m)、vはXYステージ10の移動速度(m/s)、dは投影光学系PLの作動距離(ワーキング・ディスタンス)(m)である。XYステージ10をステップ移動するときの速度vは主制御系14により設定され、D及びdは予め入力されているため、数式1に基づいて液体7の供給量Vi及び回収量Voを算出し、調整することにより、液体7は光学素子4とウエハWとの間に常時満たされる。
【0146】
なお、投影光学系PLの作動距離dは、光学素子4とウエハWとの間に液体7を安定して存在させるために可能な限り狭いほうが望ましい。例えば、投影光学系PLの作動距離dは、2mm程度に設定される。
【0147】
この第1の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、光学素子の表面に溶解防止膜が成膜されているため、光学素子の溶解を防止することができる。したがって、投影光学系の先端部と基板との間に満たされた液体により光学素子が溶解することがないため、光学素子を頻繁に交換する必要がなく、露光装置の高スループットを維持することができる。また、溶解した光学素子を交換するために露光装置の稼動を止める必要がなくなり、最終製品を効率よく生産することができる。更に、液体により光学素子が溶解することがないため、投影光学系の光学性能を維持することができることから、生産される最終製品の品質を安定させることができ、最適な状態で露光を続けることができる。
【0148】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、投影光学系PLのウエハW側の透過光学素子4のテーパー面4Bに密着力強化膜を兼ねる金属製溶解防止膜が成膜されているため、金属製溶解防止膜を透過光学素子4に密着させることができる。また、金属製溶解防止膜の表面に二酸化珪素(SiO)膜が成膜されているため、柔らく耐擦傷性が低い金属製溶解防止膜の損傷を防止することができ、金属製溶解防止膜を保護することができる。従って、ウエハWの表面と投影光学系PLとの間に介在させた液体7の透過光学素子4への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。また、液体7により透過光学素子4が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子4を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0149】
また、透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光ILが通過しない部分に金属製溶解防止膜が成膜されるため、透過光学素子4の表面に成膜される金属製溶解防止膜が露光光ILを遮光することなく、最適な状態で露光を続けることができる。
【0150】
また、波長が200nm程度の露光光に対する純水の屈折率nは約1.44であり、波長193nmであるArFエキシマレーザ光は、ウエハW上において1/n、即ち134nmに短波長化されるため、高い解像度を得ることができる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、即ち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
【0151】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、X方向及びY方向に互いに反転した2対の排出ノズルと流入ノズルとを備えているため、ウエハを+X方向、−X方向、+Y方向または−Y方向に移動する場合においても、ウエハと光学素子との間を液体により安定に満たし続けることができる。
【0152】
また、液体がウエハ上を流れるため、ウエハ上に異物が付着している場合であっても、その異物を液体により流し去ることができる。また、液体が液体供給装置により所定の温度に調整されているため、ウエハ表面の温度も一定となり、露光の際に生じるウエハの熱膨張による重ね合わせ精度の低下を防止することができる。従って、EGA(エンハンストグローバル・アライメント)方式のアライメントのように、アライメントと露光とに時間差のある場合であっても、ウエハの熱膨張による重ね合わせ精度の低下を防ぐことができる。
【0153】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、ウエハを移動させる方向と同一の方向に液体が流れているため、異物や熱を吸収した液体を透過光学素子の表面の直下の露光領域上に滞留させることなく液体回収装置により回収することができる。
【0154】
なお、上述の各実施の形態においては、溶解防止膜として、フッ化マグネシウム(MgF)及び二酸化珪素(SiO)を用いたが、これに代えてフッ化ランタン(LaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化イットリウム(YF)、フッ化ルテニウム(LuF)、フッ化ハフニウム(HfF)、フッ化ネオジム(NdF)、フッ化ガドリニウム(GdF)、フッ化イッテリビウム(YbF)、フッ化ディスプロシウム(DyF)、フッ化アルミニウム(AlF)、クリオライト(NaAlF)、チオライト(5NaF・3AlF)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化クロム(Cr)、酸化ジルコン(ZrO)、五酸化タンタル(Ta)及び五酸化ニオブ(Nb)の中の少なくとも1つを溶解防止膜として使用してもよい。
【0155】
また、上述の各実施の形態においては、真空蒸着法によりフッ化マグネシウム(MgF)及び二酸化珪素(SiO)により形成される溶解防止膜を光学素子に成膜したが、これに代えてイオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、RFスパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法及び光CVD法の中の少なくとも1つの成膜方法により成膜してもよい。
【0156】
なお、光学素子の溶解防止膜としてフッ化物を成膜する場合には、最適な成膜方法として真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法が挙げられる。しかしながら、フッ化マグネシウム(MgF)及びフッ化イットリウム(YF)については、スパッタリング法により成膜してもよい。また、光学素子の溶解防止膜として酸化物を成膜する場合には、上述の全ての成膜方法を用いることができる。
【0157】
また、成膜される溶解防止膜、特にフッ化ランタン(LaF)は、結晶方位が(111)面である蛍石を光学素子の基材とした場合、その成膜面に成膜されることによりヘテロエピタキシャル成長する。この場合において、成膜された溶解防止膜は、非常に緻密となり、かつ非常に欠陥の少ない結晶構造となる。
【0158】
さらに、第1の実施の形態にかかる投影露光装置においては、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)としてタンタル(Ta)により形成される膜により構成される金属膜を用いたが、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)及びクロム(Cr)の中の少なくとも1つにより形成される膜により構成される金属膜を用いてもよい。
【0159】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置においては、タンタル(Ta)により形成される膜により構成される密着力強化膜を用いたが、クロム(Cr)により形成される膜により構成される密着力強化膜を用いてもよい。
【0160】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置においては、二酸化珪素(SiO)により形成される膜により構成される金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)を用いたが、酸化イットリウム(Y)、フッ化ネオジム(Nd)、酸化クロム(Cr)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化ニオブ(Nb)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ハフニウム(HfO)及び酸化ランタン(La)の中の少なくとも1つにより形成される膜により構成される金属製溶解防止膜保護膜を用いてもよい。即ち、金属製溶解防止膜保護膜を選択することができるため、透過光学素子の基材、透過光学素子が設置されている環境、基材の表面と投影光学系との間に介在させる液体の種類等に基づいて、最適な金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)を選択することができる。
【0161】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置においては、溶解防止膜と金属製溶解防止膜保護膜とを兼ねる二酸化珪素(SiO)膜を湿式成膜法により成膜しているが、スパッタリング法等の乾式成膜法により成膜してもよい。
【0162】
また、この第1の実施の形態にかかる透過光学素子のテーパー面においては、、金属製溶解防止膜(密着力強化膜を兼ねる)と金属製溶解防止膜保護膜が成膜されているが、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)のみを成膜してもよい。また、密着力強化膜と金属製溶解防止膜とを分けて、密着力強化膜と金属製溶解防止膜、或いは密着力強化膜と金属製溶解防止膜と金属製溶解防止膜保護膜を成膜してもよい。
【0163】
また、この第1の実施の形態にかかる投影露光装置においては、最もウエハW側の透過光学素子4が蛍石により形成されており、そのテーパー面に密着力強化膜、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)、金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)が成膜されているが、最もウエハW側の透過光学素子4を石英ガラスにより形成し、そのテーパー面にこれらの膜を成膜してもよい。
【0164】
また、上述の実施の形態においては、ウエハの表面と投影光学系のウエハ側の蛍石により形成された光学素子との間を液体により満たしているが、ウエハの表面と投影光学系のウエハ側の蛍石により形成された光学素子との間の一部に液体を介在させるようにしてもよい。
【0165】
また、上述の実施の形態においては、液体7として純水を使用したが、液体としては、純水に限らず、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系やウエハ表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油等)を使用することもできる。
【0166】
[実施形態2]
光学素子4の先端部4A、即ち、液体7と接触する部分に、単層膜により構成される溶解防止膜としてフッ化マグネシウム(MgF)を真空蒸着法により成膜するようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0167】
この第2の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、光学素子の表面に単層膜により構成される溶解防止膜が成膜されているため、光学素子の溶解を防止することができる。また、多層膜と比較した場合において界面を少なくすることができるため、溶解防止膜としての保護層の界面から液体が侵入した場合に起こり得る化学反応による悪影響を極力抑えることができる。また、多層膜により構成される溶解防止膜を成膜する場合と比較して、簡易に成膜することができる。
【0168】
また、光学素子の表面を液体に浸した場合に、光学素子の屈折率がその液体の屈折率と同一または低い屈折率となるように単層溶解防止膜を成膜することにより、多層により成膜されている光学素子と同一の光学性能を得ることができる。
【0169】
[実施形態3]
透過光学素子4を図6及び以下のように変更した以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
(i)透過光学素子4のウエハW側の先端部4A、即ち露光光が透過する部分に、単層膜により構成されるフッ化マグネシウム(MgF)膜F1が真空蒸着法により成膜されている。
(ii)透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光が透過しない部分は、密着力強化膜F4としてタンタル(Ta)の膜がスパッタリング法により成膜されている。密着力強化膜F4は、透過光学素子4のテーパー面4Bと後述する金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の密着力を向上させる。
(iii)密着力強化膜F4の表面には、液体7への溶解を防止するための金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5として金(Au)により構成される金属膜がスパッタリング法により、150nmの厚さで成膜されている。
(iv)金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の表面には、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)を保護するための金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)F6として二酸化珪素(SiO)膜がスパッタリング法により成膜されている。ここで、透過光学素子4のテーパー面4Bに成膜される金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の純水への溶解度は2ppt以下であり、充填密度は95%以上である。
【0170】
この第3の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、投影光学系PLのウエハW側の透過光学素子4のテーパー面4Bに成膜されている密着力強化膜の表面に金属膜が成膜されているため、金属膜を透過光学素子4に密着させることができる。また、金属膜の表面に二酸化珪素(SiO)膜が成膜されているため、柔らく耐擦傷性が低い金属膜の損傷を防止することができ、金属膜を保護することができる。従って、ウエハWの表面と投影光学系PLとの間に介在させた液体7の透過光学素子4への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。また、液体7により透過光学素子4が溶解することがないため、投影露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子4を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0171】
[実施形態4]
光学素子4の先端部4A及び側面部(テーパー部)4B、即ち、液体7と接触する部分に溶解防止膜としてフッ化マグネシウム(MgF)を成膜するようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0172】
この第4の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、光学素子の基板側の表面及び光学素子の側面に溶解防止膜が成膜されているため、光学素子の溶解を防止することができる。また、光学素子の基板側の表面及び光学素子の側面へ同一の材料を用いた溶解防止膜を成膜しているため、溶解防止膜の成膜を一度に行うことができ、簡易な工程により溶解防止膜の成膜を行うことができる。
【0173】
[実施形態5]
透過光学素子4を以下のように変更した以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
(i)透過光学素子4のウエハW側の先端部4A、即ち露光光が透過する部分には、第1の膜として二酸化珪素(SiO)膜が乾式成膜方法であるスパッタリング法により成膜されている。
(ii)第1の膜の表面には、第2の膜として二酸化珪素(SiO)膜が湿式成膜方法であるスピンコートにより成膜されている。
(iii)透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光が透過しない部分は、その表面の粗さ及び表面積を増大させるために例えば#2000の砥石で磨かれており、砥石で磨かれることにより表面処理を施されたテーパー面4Bには、酸化物溶解防止膜として二酸化珪素(SiO)膜が湿式成膜方法であるスピンコートにより成膜されている。
【0174】
この第5の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、投影光学系の最もウエハ側の透過光学素子のウエハW側の先端部に第1の膜として二酸化珪素(SiO)膜がスパッタリング法により成膜されている。また、第1の膜の表面には、第2の膜として二酸化珪素(SiO)膜がスピンコートにより成膜されている。従って、蛍石により形成されている透過光学素子に第1の膜を密着させることができ、第1の膜を透過光学素子と第2の膜とを密着させる密着力強化層として機能させることができる。
【0175】
また、第2の膜が高い均質性と空孔に対する高い埋め込み性を特徴とする湿式成膜方法により成膜されているため、第1の膜の空孔へ第2の膜が入り込んで空孔が無くなるので、ウエハ表面と投影光学系との間に介在させている液体の透過光学素子への浸透及び浸食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。また、第1の膜と第2の膜とが二酸化珪素(SiO)膜であるため、スパッタリング法により成膜された第1の膜とスピンコートにより成膜された第2の膜との結合力が強化され、第1の膜と第2の膜とをより強固に密着させることができる。従って、第1の膜及び第2の膜が透過光学素子から剥離することなく、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0176】
また、投影光学系の最もウエハ側の透過光学素子のテーパー面はその表面の粗さ及び表面積を増大させるために例えば#2000の砥石で磨かれており、そのテーパー面には酸化物溶解防止膜として二酸化珪素(SiO)膜がスピンコートにより成膜されている。酸化物溶解防止膜が高い均質性と空孔に対する高い埋め込み性を特徴とする湿式成膜方法により成膜されているため、液体の透過光学素子への浸透及び浸食を防止することができ、投影光学系の光学性能を維持することができる。従って、液体により透過光学素子が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。また、透過光学素子を頻繁に交換する必要がなくなるため、露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0177】
なお、この第5の実施の形態にかかる投影露光装置においては、透過光学素子4のウエハW側の先端部4A、即ち露光光が透過する部分に乾式成膜方法により第1の膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜して、第1の膜の表面に湿式成膜方法により第2の膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜しているが、透過光学素子4のウエハ側の先端部4Aに湿式成膜方法のみにより酸化物溶解防止膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜するようにしてもよい。この場合には、透過光学素子4と酸化物溶解防止膜との密着力を向上させるために、透過光学素子4の先端部4Aに投影光学系PLの光学性能が劣化しない程度の表面処理を施す。即ち、先端部4Aの表面を例えば#2000の砥石で磨くなどして先端部4Aの粗さ及び表面積を増大させる。
【0178】
また、この第5の実施の形態にかかる投影露光装置においては、透過光学素子4のテーパー面4B、即ち露光光が透過しない部分に湿式成膜方法のみにより酸化物溶解防止膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜しているが、テーパー面4Bに乾式成膜方法により第1の膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜して、第1の膜の表面に湿式成膜方法により第2の膜として二酸化珪素(SiO)膜を成膜してもよい。
【0179】
[実施形態6]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0180】
すなわち、図7は、本発明の実施の形態6において使用される光学素子の構成を示す図である。ここで、光学素子1は、光学基板101と多層膜100の構成からなる。光学基板101には蛍石を用いた。また、多層膜100は、光学基板101から、順に1層目102にフッ化ランタン(以下、LaF),2層目103にフッ化マグネシウム(以下、MgF),3層目104に酸化アルミニウム(以下、Al),4層目105に酸化シリコン(以下、SiO)を成膜した4層構造である。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0181】
4層目(SiO)105や3層目(Al)104の水に対する溶解度は、測定器の下限値1.0×10−7g/水100gを示す。従って、4層目(SiO)105や3層目(Al)104は、水に対して溶けない物質であり、これら物質によって作成した膜は水に対する保護機能を有する。
【0182】
ここでは成膜方法は真空蒸着法で行った。なお、成膜方法は、この方法に限られることなく、緻密な構造を作製できる各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法であってもよい。
【0183】
1層目(LaF)102,2層目(MgF)103,3層目(Al)104,4層目(SiO)105の屈折率およびλを設計主波長とした光学的膜厚を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
表1に示すように、奇数番目の層である1層目102及び3層目104の屈折率は、隣接する蛍石基板101、2層目103及び3層目104の屈折率よりも高いことがわかる。表1に示した順序で多層膜100を光学基板101に成膜することによって、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することができる。
【0186】
図8は、本発明の実施の形態1において使用される光学素子の波長193nmにおける角度反射特性を示す図である。ここで、ArF(波長193nm)エキシマレーザを用いた。図8から明らかなように、入射光20によるS偏光RsとP偏光Rpとの平均反射率Raは、出射角θ=40度においても約0.3%以下となっており、出射角θ=50度においても約0.5%以下になっており、非常に良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0187】
[実施形態7]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0188】
図9は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。光学素子1は、光学基板101と多層膜100の構成からなる。多層膜100は光学基板101上に、順に1層目102にフッ化ランタン(以下、LaF),2層目103にフッ化マグネシウム(以下、MgF),3層目104に酸化アルミニウム(以下、Al)を成膜した3層構造からなる。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0189】
1層目(LaF)102,2層目(MgF)103,3層目(Al)104の屈折率およびλを設計主波長とした光学的膜厚を表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
表2に示すように、1層目102のLaFの屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目103のMgFの屈折率よりも高いことがわかる。このような配置の屈折率にすることによって、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することができる。
【0192】
図10は、本発明の実施の形態7において使用される光学素子の波長193nmにおける角度反射特性を示す図である。ここで、ArF(波長193nm)エキシマレーザを用いた。図10から明らかなように、入射光20によるS偏光RsとP偏光Rsとの平均反射率Raは、出射角θ=40度においても約0.3%以下となっており、出射角θ=50度においても約0.8%以下になっており、非常に良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0193】
[実施形態8]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0194】
図11は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。光学素子1は、光学基板101と多層膜100の構成からなる。多層膜100は光学基板101上に、順に1層目102にフッ化ランタン(以下、LaF),2層目103にフッ化マグネシウム(以下、MgF)を成膜した2層構造からなる。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0195】
1層目(LaF)102,2層目(MgF)103の屈折率およびλを設計主波長とした光学的膜厚を表3に示す。
【0196】
【表3】

【0197】
表3に示すように、1層目102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目103のMgFの屈折率よりも高いことがわかる。表1に示した順序で多層膜100を光学基板101に成膜することによって、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。
【0198】
図12は、本発明の実施の形態8において使用される光学素子の波長193nmにおける角度反射特性を示す図である。ここで、ArF(波長193nm)エキシマレーザを用いた。図12から明らかなように、入射光20によるS偏光RsとP偏光Rpとの平均反射率Raは、出射角θ=40度において約0.3%以下となっており、出射角θ=50度においても約2%以下になっており、十分使用可能である。
【0199】
2層目(MgF)103は水に対して幾分溶解度を持っている(文献値:2×10−4g/水100g)ため、長期間使用することで溶出していくが、本発明の実施の形態8では浸液は水(屈折率=1.44)であるため、2層目(MgF)103が溶出しても光学性能の変化が比較的小さいという利点がある。
【0200】
図13は、2層目(MgF)103の膜厚が半減(0.3λ)したときの光学素子のArF(波長193nm)エキシマレーザ10における、反射率と出射角θとの関係を示す図である。図13から明らかなように、入射光20によるS偏光RsとP偏光Rpとの平均反射率Raは、ほとんど変化しておらず、十分使用可能である。従って、MgF103の膜厚を400nm程度に成膜することによって、およそ10年使用可能となる。
【0201】
なお、図11においては、1層目(LaF)102,2層目(MgF)103の2層の多層膜100を用いて記載したが、1層目(LaF)102,2層目(MgF)103を交互に積層させた4層構造の多層膜を用いても良い。
【0202】
[実施形態9]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0203】
図14は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。この光学素子1は、蛍石基板101上に多層膜100が積層された構成である。この多層膜100は、2層構成で、蛍石基板101から、1層目102としてMgFが、2層目103としてSiOが順に積層された構成である。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0204】
ここで1層目(MgF)102,2層目(SiO)103の屈折率および各層102…の光学的膜厚、膜厚範囲は、λを設計主波長とすると、以下のようになる。
【0205】
【表4】

【0206】
成膜方法は、真空蒸着法で行ったが、これにこの方法に限られることなく、緻密な構造を作製できる各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法であってもよい。
【0207】
図15は、この実施の形態9の光学素子1のArF(波長193nm)エキシマレーザにおける、反射率と出射角との関係を示す図である。図15から明らかなように、S偏光とP偏光との平均反射率は、出射角θ=40度においても約0.6%以下となっており、出射角θ=60度においても約1%以下になっており、良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0208】
上記表4に示すように、1層目(MgF)102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目(SiO)103の屈折率よりも低屈折率であることが分かる。このような屈折率の配置にすることにより、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。
【0209】
[実施形態10]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0210】
図16は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。この光学素子1は、蛍石基板101上に多層膜100が積層された構成である。この多層膜100は、1層目102がMgF、2層目103がSiOであり、更に、この2層目103は、2分割されており、乾式成膜法により成形された分割1層目103aと、湿式成膜法により成形された分割2層目103bとが順に積層されている。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0211】
ここで1層目102のMgF,分割1層目103aの乾式成膜SiO,分割2層目103bの湿式成膜SiOの屈折率および各層102…の光学的膜厚、膜厚範囲は、λを設計主波長とすると、以下のようになる。
【0212】
【表5】

【0213】
ここで、1層目102及び分割1層目103aは、真空蒸着法で行ったが、この方法に限られることなく、各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法などの他の乾式成膜法であっても良い。
【0214】
この乾式成膜法は、基板加熱温度や成膜速度などの条件により薄膜の構造が変わることが知られている。緻密性の不十分な構造の場合、膜中に水が通り蛍石基板101まで届く危険性が高くなる。蛍石は水に対して溶解するため水への浸漬により所望の光学性能が失われる危険性が高くなる。一般的に基板加熱温度が低い真空蒸着のSiO膜は水や水蒸気を通過させることがわかっている。
【0215】
この場合、分割2層目103bの湿式成膜SiO層を設けることにより、乾式成膜SiOの空隙へ湿式成膜SiOが入り込んで空隙が無くなるので、基板107の表面と投影光学系PLとの間に介在させた所定の浸液108の光学素子1への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。従って、この光学素子1を液浸型の投影露光装置に用いた場合、本発明の多層膜100が蛍石基板101から剥離することが無く、液体により光学素子1が溶解することがないため、投影露光装置の性能を維持することができる。また、光学素子1を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0216】
この分割2層目103bの湿式成膜SiO層は、一般的なSiO溶解液でのスピンコートを行っている。SiO溶解液にはゾルゲル用シリカ液を用い、蛍石基板101を回転数1000〜2000回転/分で回転させて塗布を行う。塗布による膜厚はSiO溶解液の濃度,スピンコートでの蛍石基板101回転数,温湿度等の条件に依存するため、事前に濃度をパラメータとして膜厚に対する検量線を作成しておけば、その後に所望の膜厚を得ることができる。
【0217】
ここでは、分割2層目103bの湿式成膜SiO層の膜厚を0.40λ(50nm)としたが、これに限定するものではない。但し、例えば1.2λ(150nm)以上というような膜厚を塗布する場合は、膜応力によるクラックの発生には注意が必要である。また、後処理として分割2層目103bの湿式成膜SiO層塗布後に大気下にて160℃/2時間のアニールを行った。これはSiO溶解液の主溶媒であるアルコールを蒸発させることと、湿式成膜したSiO層自体を焼結させることが目的である。
【0218】
図17は、この発明の実施の形態5の光学素子1のArF(波長193nm)エキシマレーザにおける、反射率と出射角との関係を示す図である。図17から明らかなように、S偏光とP偏光との平均反射率は、出射角θ=40度においても約0.6%以下となっており、出射角θ=60度においても約1%以下になっており、良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0219】
また、上記表5に示すように、1層目(MgF)102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目(SiO)103の屈折率よりも低いことが分かる。このような屈折率の配置にすることにより、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。なお、2層目(SiO)103は、乾式成膜法により成形された分割1層目103aと、湿式成膜法により成形された分割2層目103bとから構成されているが、同じ材質であるため、光学的には1層とみなされる。
【0220】
[実施形態11]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0221】
図18は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。この光学素子1は、蛍石基板101上に多層膜100が積層された構成である。多層膜100は、4層構成で、蛍石基板101より、1層目102としてLaF3,2層目103としてMgF,3層目104としてLaF,4層目105としてSiOが順に積層された構成である。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0222】
ここで、1層目102のLaF,2層目103のMgF,3層目104のLaF,4層目105のSiOの屈折率および各層102…の光学的膜厚、膜厚範囲は、λを設計主波長とすると、以下のようになる。
【0223】
【表6】

【0224】
ここでの成膜方法は、真空蒸着法で行ったが、これにこの方法に限られることなく、緻密な構造を作製できる各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法であっても良い。
【0225】
図19は、この発明の実施の形態11の光学素子1のArF(波長193nm)エキシマレーザにおける、反射率と出射角との関係を示す図である。図19から明らかなように、S偏光とP偏光との平均反射率は、出射角θ=50度においても約0.3%以下となっており、出射角θ=60度においても約0.5%以下になっており、非常に良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0226】
また、上記表6に示すように、1層目(LaF)102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目(MgF)103の屈折率よりも高いことが分かる。また、3層目(LaF)104の屈折率は、隣接する2層目(MgF2)103及び4層目(SiO)105の屈折率よりも高いことが分かる。このような屈折率の配置にすることにより、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。
【0227】
本実施の形態11では、4層目105のSiOを真空蒸着法にて成膜したが、実施の形態5に記載の分割2層目103bのように湿式成膜法にて成膜することも可能である。この場合、湿式成膜SiO層を設けることにより、乾式成膜法による3層目(LaF)104の空隙へ湿式成膜SiOが入り込んで空隙が無くなるので、基板107の表面と投影光学系PLとの間に介在させた所定の浸液108の光学素子1への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。従って、この光学素子1を液浸型の投影露光装置に用いた場合、本発明の多層膜100が蛍石基板101から剥離することが無く、液体により光学素子1が溶解することがないため、投影露光装置の性能を維持することができる。また、光学素子1を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0228】
[実施形態12]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0229】
図20は、本発明の光学素子1の構成を示す図である。この光学素子1は、蛍石基板101上に多層膜100が積層された構成である。この多層膜100は、5層構成で、蛍石基板101より、1層目102としてLaFが、2層目103としてMgFが、3層目104としてLaF、4層目105としてMgFが、5層目106としてSiOが順に積層された構成である。浸液108は水であり、基板107はレジストを塗布したシリコンである。
【0230】
ここで、1層目102のLaF、2層目103のMgF、3層目104のLaF、4層目105としてMgF、5層目106のSiOの屈折率および各層102…の光学的膜厚、膜厚範囲は、λを設計主波長とすると、以下のようになる。
【0231】
【表7】

【0232】
ここでは、成膜方法は、真空蒸着法で行ったが、これにこの方法に限られることなく、緻密な構造を作製できる各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法であってもよい。
【0233】
図21は、実施の形態12の光学素子のArF(波長193nm)エキシマレーザにおける、反射率と出射角との関係を示す図である。図21から明らかなように、S偏光とP偏光との平均反射率は、出射角θ=50度においても約0.3%以下となっており、出射角θ=60度においても約0.5%以下になっており、非常に良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0234】
また、上記表7に示すように、1層目(LaF)102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目(MgF)103の屈折率よりも高いことが分かる。また、3層目(LaF)104の屈折率は、隣接する2層目(MgF)103及び4層目(MgF)105の屈折率よりも高いことが分かる。このような屈折率の配置にすることにより、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。
【0235】
本実施の形態12では、5層目106のSiOを真空蒸着法にて成膜したが、実施の形態10に記載の分割2層目103bのように湿式成膜法にて成膜することも可能である。この場合、湿式成膜SiO層を設けることにより、乾式成膜法による4層目(MgF)105の空隙へ湿式成膜SiOが入り込んで空隙が無くなるので、基板107の表面と投影光学系PLとの間に介在させた所定の浸液108の光学素子1への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。従って、この光学素子1を液浸型の投影露光装置に用いた場合、本発明の多層膜100が蛍石基板101から剥離することが無く、液体により光学素子1が溶解することがないため、投影露光装置の性能を維持することができる。また、光学素子1を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0236】
[実施形態13]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0237】
この実施の形態13は、実施の形態12と比較すると、4層目105の材質が相違している。すなわち、この実施の形態8では、4層目105としてAlが成膜されている。
【0238】
ここで、1層目102のLaF、2層目103のMgF、3層目104のLaF、4層目105のAl、5層目106のSiOの屈折率および各層102…の光学的膜厚、膜厚範囲は、λを設計主波長とすると、以下のようになる。
【0239】
【表8】

【0240】
ここでは、成膜方法は、真空蒸着法で行ったが、これにこの方法に限られることなく、緻密な構造を作製できる各種スパッタ法,イオンビームアシスト法,イオンプレーティング法であってもよい。
【0241】
この実施の形態13も実施の形態12と同様に、S偏光とP偏光との平均反射率は、出射角θ=50度においても約0.3%以下となっており、出射角θ=60度においても約0.5%以下になっており、非常に良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0242】
また、上記表8に示すように、1層目(LaF)102の屈折率は、隣接する光学基板101及び2層目(MgF)103の屈折率よりも高いことが分かる。また、3層目(LaF)104の屈折率は、隣接する2層目(MgF)103及び4層目(Al)105の屈折率よりも高いことが分かる。このような屈折率の配置にすることにより、全体として多層膜100は、反射防止機能を有することとなる。
【0243】
本実施の形態13では、5層目106のSiOを真空蒸着法にて成膜したが、実施の形態10に記載の分割2層目103bのように湿式成膜法にて成膜することも可能である。この場合、湿式成膜SiO層を設けることにより、乾式成膜法による4層目(Al)105の空隙へ湿式成膜SiOが入り込んで空隙が無くなるので、基板107の表面と投影光学系PLとの間に介在させた所定の浸液108の光学素子1への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLの光学性能を維持することができる。従って、この光学素子1を液浸型の投影露光装置に用いた場合、本発明の多層膜100が蛍石基板101から剥離することが無く、液体により光学素子1が溶解することがないため、投影露光装置の性能を維持することができる。また、光学素子1を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0244】
以上説明した第6〜13の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、前記光学素子の表面に多層膜が成膜され、該多層膜は前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビーム(入射光)が反射されるのを防止する反射防止機能とを備えているので、液体による浸食のない安定した光学素子を提供できる。従って、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学素子を提供できる。また、前記多層膜は所定の期間前記保護機能を備えているので、例えば10年間液浸である水から保護することができる。したがって、液浸法を用いて解像度が高く焦点深度が深い高性能な投影露光装置を可能とする光学素子を提供すると共に、所定の期間、液体による浸食のない安定した光学素子を提供できる。
【0245】
[実施形態14]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0246】
図22は、本発明の実施の形態14において使用される光学部材の構成を示す図である。光学部材1は、蛍石を用いた光学素子101上に石英ガラス薄板102を接合された構成である。ここで浸液は水103であり、基板はレジストを塗布したシリコン104である。接合方法は、露光波長がArFレーザのような紫外光の場合、接合面同士を平坦面にし、オプティカルコンタクトを行っている。オプティカルコンタクトとは互いに平坦な面を密着させると、分子間力によりあたかも固体同士が接合される現象である。光学的には固体と固体の界面しか存在しない。
【0247】
オプティカルコンタクトの両界面の面精度が悪く所望の密着力が得られない場合には、界面間に光学素子101の表面を浸食しない程度の純水を薄くぬって密着力を向上させてもよい。光学素子101と石英ガラス薄板102の屈折率はそれぞれ1.50および1.55である。
【0248】
図23は、図22のオプティカルコンタクト(石英ガラス/蛍石)界面の角度反射特性を示す図である。図23から明らかなように、入射光20によるS偏向RsとP偏向Rpとの平均反射率Raは、出射角θ=60度においても、0.3%以下となっており、良好な特性を示しており十分使用可能である。
【0249】
光学基板として光学素子101自体を石英ガラスにしない理由は、石英ガラス薄板102はレーザ照射によりコンパクションが発生する可能性があり、好ましくないためである。また、石英ガラス薄板102にしたのは、上記コンパクションが仮に発生しても影響を最小限に出来るためである。
【0250】
以上説明した第14の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、石英ガラス薄板102は水に対して溶解度が非常に小さいため、浸食による性能劣化が無く使用可能であり、この素子を液浸法に使用することで光学劣化のない液浸光学系が可能となる。
【0251】
[実施形態15]
以下に説明する透過光学素子4を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0252】
図24は、本発明の実施の形態15において使用される光学部材の構成を示す図である。光学部材1は、蛍石からなる光学素子101上に結晶フッ化マグネシウム(以下MgF)薄板105を接合された構成である。ここで浸液は水103であり、基板はレジストを塗布したシリコン104である。光学素子101とMgF薄板105の間には、屈折率差の小さい液体(補間溶液)106で満たしてある。この補間溶液106はそれぞれの基板に対して屈折率差0.2以下であれば、残存反射も小さく良好に使用できる。
【0253】
MgFは水に対して、幾分溶解度を持っている(文献値:2×10−4g/水100g)ため、長期間使用することで溶出していく。溶出が進むと投影レンズの透過波面を崩す恐れがある。光学素子101に適切な膜厚でないフッ化マグネシウム(MgF)が直接コーティングされた場合、溶出により透過波面を崩す可能性があり、その際は光学素子101自体を交換しなくてはいけないため、大掛かりになりやすい。特に光学素子101がレンズ形状をしている場合は、交換時に投影レンズの光軸との調整が必須となり、容易ではない。本発明の実施の形態2の場合、薄板のみを交換出来るため、結像性能への影響を最小限に抑えて交換することが可能である。
【0254】
本発明の実施の形態15では、結晶フッ化マグネシウム(MgF)薄板としたが、フッ化マグネシウム(MgF)は焼結体でも構わない。また、フッ化マグネシウム(MgF)でコーティングされた蛍石薄板や非常に薄いPTFE(テフロン(登録商標))薄板を使用しても構わない。この場合のコーティング方法としては、一般的な真空蒸着のみならずイオンプレーティング法や各種スパッタ法など特に方法は選ばない。
【0255】
なお、本発明を実施するための最良の形態に記載された薄板は、平行平板のような形状であってもよい。
【0256】
以上説明した第15の実施の形態にかかる投影露光装置によれば、投影光学系の先端部が液体によって浸食されない。したがって、水等で浸食された光学部材1を交換するために、投影露光装置の稼動をとめることがないので、最終製品を効率よく生産することができる。また、本発明の光学部材1は、投影露光装置を稼働している所定の期間浸食されないので、光学特性が安定しており、本発明を搭載した投影露光装置によって、生産される最終製品の品質が安定する。
【0257】
以上、実施形態1〜15に即して説明したが、本発明は上記実施形態1〜15に限定されるものではない。例えば、実施形態4等においては、溶解防止膜として、投影光学系の基板側の光学素子の基板側の表面及び側面にフッ化マグネシウム(MgF)を用いた溶解防止膜を成膜しているが、投影光学系の基板側の光学素子の基板側の表面に親水性の酸化珪素(SiO)を用いた溶解防止膜を成膜し、投影光学系の基板側の光学素子の側面にアルキルケテンダイマーにより構成される撥水性の溶解防止膜を形成するようにしても良い。
【0258】
ここで光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜は、光学素子の基板側の表面に成膜されている溶解防止膜に比較して、撥水性能に優れた溶解防止膜であり、基板側の表面に成膜されている溶解防止膜は、光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜に比較して、親水性能に優れた溶解防止膜である。光学素子の側面に成膜されている溶解防止膜が撥水性の溶解防止膜であることから、光学素子の側面に付着した液体を基板側に容易に回り込ませることができ、光学素子の基板側の表面に成膜されている溶解防止膜が親水性の溶解防止膜であることから、光学素子の基板側表面と基板との間を常に液体で満たすことができる。
【0259】
また、上述の実施形態5等においては、スパッタリング法により二酸化珪素(SiO)膜により形成される第1の膜を透過光学素子に成膜したが、これに代えて真空蒸着法またはCVD法の乾式成膜方法により成膜してもよい。
【0260】
さらに、上述の実施形態5等においては、第1の膜として乾式成膜方法により二酸化珪素(SiO)膜を成膜し、第2の膜として湿式成膜方法により二酸化珪素(SiO)膜を成膜しているが、第1の膜として乾式成膜方法によりフッ化マグネシウム(MgF)膜を成膜し、第2の膜として湿式成膜方法により二酸化珪素(SiO)膜を成膜してもよい。
【0261】
また、上述の実施形態においては、ウエハの表面と投影光学系のウエハ側の蛍石により形成された光学素子との間を液体により満たしているが、ウエハの表面と投影光学系のウエハ側の蛍石により形成された光学素子との間の一部に液体を介在させるようにしてもよい。
【0262】
さらに、上述の実施形態においては、液体として純水を使用したが、液体としては、純水に限らず、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系やウエハ表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油等)を使用することもできる。露光光としてF2レーザ光を用いる場合は、液体としてはF2レーザ光が透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いればよい。
【0263】
また、上述の実施形態においては本発明にかかる光学素子はレンズ形状としたが、これに限ることなく、従来の蛍石レンズと液体との間にカバーガラスとして、蛍石の板状基板に成膜し、本発明にかかる光学素子とすることも可能である。
【0264】
さらに、上記実施形態14から15においては接合両界面に純水を薄く塗ることを例にあげて説明したが、フッ素系溶剤であるPFC(パーフルオロカーボン)、HPE(ハイドロフルオロエーテル)、PFPE(パーフルオロポリエーテル)を適用することもできる。
【0265】
また、実施形態において使用するノズルの数や形状は特に限定されるものでなく、例えば先端部4Aの長辺について2対のノズルで液体の供給又は回収を行うようにしてもよい。なお、この場合には、+X方向、又は−X方向のどちらの方向からも液体の供給及び回収を行うことができるようにするため、排出ノズルと流入ノズルとを上下に並べて配置してもよい。
【0266】
[実施形態16]
以下のようにして、膜を介して光学部材がオプティカルコンタクトしている光学素子を用いるようにした以外は第1の実施の形態と同様にして投影露光装置を構成した。
【0267】
この実施形態16にかかるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置は、図1に示すように、レチクル(マスク)Rを照明する照明光学系1と、レチクルRを支持するレチクルステージ装置RSTと、ウェハ(基板)Wを支持するウェハステージ装置と、ウェハステージ装置を駆動してウェハWを3次元的に移動させるウェハステージ駆動系15と、レチクルRに形成されたパターン像をウェハW上に投影する投影光学系PLと、投影光学系PLとウェハWとの間に液体7を供給する液体循環装置と、投影露光装置の全体的な動作を統括的に制御する主制御系14とを備える。
【0268】
照明光学系1は、露光光源であるArFエキシマレーザ光源を含み、オプティカルインテグレータ(ホモジナイザー)、視野絞り、コンデンサレンズ等から構成される。光源から射出された波長193nmの紫外パルス光よりなる露光光ILは、照明光学系1を射出して、レチクルRに設けられたパターン像を照明する。レチクルRを通過した像光は、投影光学系PLを介して、フォトレジストが塗布されたウェハW上の露光領域に投影される。なお、露光光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、Fレーザ光(波長157nm)や水銀ランプのi線(波長365nm)等を使用してもよい。
【0269】
レチクルステージ装置RSTは、レチクルRを保持した状態でその位置や姿勢を調節することができるようになっている。すなわち、レチクルステージ装置には、投影光学系PLの光軸AXに対して実質的に垂直なX方向及びY方向や、光軸AXまわりの回転方向にレチクルRを微動させる機構が組み込まれている。レチクルRのX方向、Y方向及び回転方向の位置は、レチクルレーザ干渉計(不図示)によってリアルタイムで計測されており、レチクルステージ駆動系(不図示)によって制御されている。
【0270】
ウェハステージ装置は、ウェハWを保持した状態でその位置や姿勢を調節することができるようになっている。具体的な構造について説明すると、ウェハWは、ウェハホルダを介してZステージ9上に固定されており、このZステージ9は、ウェハWのフォーカス位置すなわち光軸AXに対して実質的に平行なZ方向の位置及びこれに対する傾斜角の調節を可能にする。Zステージ9は、XYステージ10上に固定されており、このXYステージ10は、ベース11上に支持されている。XYステージ10は、ウェハホルダを投影光学系PLの像面に対して実質的に平行なXY平面に沿って移動させることができ、ウェハW上のショット領域の変更等を可能にする。なお、Zステージ9のX方向、Y方向及び回転方向の位置は、ウェハホルダ上に設けた移動鏡12と、移動鏡12に計測光を供給するウェハレーザ干渉計13とによってリアルタイムで計測されている。
【0271】
ウェハステージ駆動系15は、主制御系14からの制御信号に応じて動作しており、ウェハWをその姿勢を所望の状態に保ちつつ、適当なタイミングで目的の位置に移動させることができる。
【0272】
投影光学系PLは、石英または蛍石を加工することによって形成されたレンズ等の複数の光学素子又は光学部品を収納する鏡筒3を備えている。この投影光学系PLは、両側テレセントリック又はウェハW側に片側テレセントリックな結像光学系であり、レチクルRのパターン像が、投影光学系PLを介して、ウェハW上のショット領域に、例えば1/4,1/5等の所定投影倍率βで縮小投影される。
【0273】
なお、この投影光学系PLは、ウェハWとの間に所定の液体7を満たした状態で使用される液浸光学系となっている。つまり、この投影露光装置においては、露光波長を実質的に短くし、かつ、解像度を向上させるために液浸法が適用されている。このような液浸型の投影露光装置においては、少なくともレチクルRのパターン像をウェハW上に転写している間は、ウェハWの表面と投影光学系PLのウェハW側に露出する光学素子4の先端面との間に液体7が満たされている。液体7としては、半導体製造工場等で容易に大量に入手できる純水が使用されている。純水は、不純物の含有量が極めて低いため、ウェハWの表面を洗浄する作用が期待できる。なお、露光中において、投影光学系PLのうち光学素子4のウェハW側の先端部のみが液体7と接触するように構成されているので、金属からなる鏡筒3の腐食等が防止される。
【0274】
図25は、この実施形態で用いた投影光学系PLのウェハW側に突起する光学素子4の構造を概念的に説明する側方断面図である。
【0275】
図25からも明らかなように、光学素子4は、蛍石で形成された光学素子である基板材201と、合成石英で形成された基板材からなる光学部材202とを、互いにオプティカルコンタクト(光学接着)させることによって形成したものである。この投影光学系PLでは、光学素子4のうち先端側の光学部材202のみが純水等である液体7と接触し、奥側の基板材201は液体7と直接接触しないようになっている。このように、光学部材202によって投影光学系PLの先端をカバーしている理由は、蛍石からなる光学素子4が純水等である液体7に対してわずかであるが可溶性を有することを考慮したものであり、高い耐水性を有する合成石英からなる光学部材202によって光学素子4を保護することとしたものである。
【0276】
オプティカルコンタクトを利用して光学部材202を光学素子4上に保持、固着させる場合、光学部材202が光学素子4に対して位置ずれしたり脱落しないように、光学素子4と光学部材202との間の接合強度を高める必要がある。このため、光学素子4の基板材201のオプティカルコンタクトに供される側の表面には、酸化物からなる薄い被覆膜203が形成されている。一方、光学部材202のオプティカルコンタクトに供される側の表面には、特に被覆膜を形成していない。このように、光学素子4の基板材201と光学部材202との間に被覆膜203を介在させることによって、光学素子4と光学部材202との間の接合強度が高まる。
【0277】
以下、光学素子4と光学部材202との間の接合強度が高まる理由について簡単に説明する。オプティカルコンタクトの接合強度に影響する因子として、特開平9−221342号公報に示されているように、接合面の面粗さが知られている。しかしながら、オプティカルコンタクトに際して、面粗さの他に化学的因子が影響することが最近分かって来ており、本発明者は、このような化学的因子を制御することによって、投影光学系PL先端の光学素子4を構成する基板材201及び光学部材202間の接合強度を高め得ることを見出した。
【0278】
従来行われている酸化物光学材料相互間のオプティカルコンタクトでは、接合に供される表面の双方に水酸基(−OH)が高密度で存在するため、これらを密着させることで水素結合もしくは脱水縮合による共有結合が生じ、強固な接合が得られるものと考えられる。一方、本実施形態の光学素子4において、光学素子4の基板材201を構成するフッ化物(具体的にはCaF)の表面は、酸化物表面と比較して水酸基密度が低いため、そのままで光学部材202と密着させても強固な接合が得られないと考えられる。そこで、基板材201のフッ化物表面を酸化物からなる被覆膜203によって被覆することで、接合面に十分な量の水酸基を導入することとした。これにより、基板材201及び光学部材202相互間で、強固なオプティカルコンタクトを達成することができた。具体的には、真空蒸着を利用して、基板材201上に二酸化珪素(SiO)からなる薄い被覆膜203を均一に堆積している。
【0279】
また、蛍石からなる基板材201上に二酸化珪素からなる被覆膜203を真空蒸着しているので、被覆膜203にクラック等が発生することを抑制できる。すなわち、蛍石の熱膨張係数と二酸化珪素の熱膨張係数との間には大きな差がないので、加熱した状態の基板材201上に被覆膜203を成膜した後に基板材201等を常温まで冷却しても、被覆膜203にクラックが発生したり、応力歪が残存したりすることを防止できる。なお、石英上にフッ化物膜を成膜した場合には、熱膨張係数の差が1桁程度あることに起因して膜にクラックが発生しやすくなる。
【0280】
図26〜図29は、図25に示す光学素子4の製造工程を簡単に説明する図である。図26に示すように、まず蛍石(CaF)を加工して所定の光学面OS1を有する光学素子である基板材201を準備する。次に、図27に示すように、基板材201を加熱しつつ光学面OS1上にSiO層を堆積して被覆膜203とする。これにより、被覆膜203を形成した基板材201を準備することができる。この際、真空蒸着を利用することにより、基板材201に対して密着性が良く、高密度の被覆膜203を形成することができる。次に、図28に示すように、合成石英(SiO)を加工して所定の光学面OS2を有する光学部材202を準備する。最後に、図29に示すように、基板材201及び光学部材202を張り合わせて、基板材201の被覆膜203の表面OS3と、光学部材202の光学面OS2との間にオプティカルコンタクトを形成し、光学素子4を完成する。
【0281】
具体的な作製例では、光学素子4の基板材201を構成する蛍石(CaF)の射出側の光学面OS1を平坦面に加工した。また、真空蒸着による成膜時における基板材201を加熱し、形成する被覆膜203の膜厚を10nm程度とした。一方、光学部材202については、合成石英の基板を加工して1mm厚の平行平板とした。その後、接着剤を利用することなく、光学素子4の基板材201のオプティカルコンタクト面と光学部材202のオプティカルコンタクト面とを張り合わせて接合する。このようにして形成した光学素子4のオプティカルコンタクトの強度を確認するため、以下の実験を行った。
【0282】
すなわち、光学素子4の透過率評価のため、紫外測定用分光光度計にて、波長193.4nmにおける透過率(%)の測定を行った。また、光学素子4の強度評価のため、精密万能材料試験機による引張り加重試験を行った。なお、引張り加重試験に際しては、光学素子4の基板材201から光学部材202を引き剥がす方向、すなわちオプティカルコンタクト面に対して垂直な方向に離間させる引張り加重を与えて、光学部材202が剥離した加重値を剥離加重(Kgf/cm)とした。比較のため、被覆膜203を有しない基板材201を準備し、この基板材201と光学部材202とを直接オプティカルコンタクトした比較試料も準備した。結果は、以下の表9に示す通りである。
【0283】
【表9】

【0284】
以上の表9から明らかなように、この実施形態の光学素子4(実施例:SiO層あり)では、オプティカルコンタクトに関して比較試料(比較例:SiO層なし)の光学素子よりも数倍以上の耐剥離強度が得られており、露光光波長に関する光量ロスも同等で遜色ないことが分かる。
【0285】
図1に戻って、液体循環装置は、液体供給装置5と液体回収装置6とを備える。このうち、液体供給装置5は、液体7用のタンク、加圧ポンプ、温度制御装置等からなり、供給管21及び排出ノズル21aを介してウェハWと光学素子4の先端部と間に温度制御された状態の液体7を供給する。また、液体回収装置6は、液体7用のタンク、吸引ポンプ等からなり、回収管23及び流入ノズル23a,23bを介してウェハWと光学素子4の先端部との間の液体7を回収する。このような液体循環装置によって循環する液体7の温度は、例えば本実施形態の投影露光装置が収納されているチャンバ内の温度と同程度に設定されている。なお、波長が200nm程度の露光光に対する純水の屈折率nは約1.44であり、波長193nmであるArFエキシマレーザ光は、ウェハW上において1/n、即ち見かけ上134nmに短波長化されるため、高い解像度を得ることができる。
【0286】
図3は、図1の排出ノズル21aと流入ノズル23a,23bのうちX方向に関するものの配置関係を示す平面図であり、図4は、図1の排出ノズル21aと流入ノズル23a,23bのうちY方向に関するものの配置関係を示す平面図である。
【0287】
図4(a)に示すように、投影光学系の先玉である光学素子4の先端部4Aを挟むように、+X方向側に細い先端部を有する第1排出ノズル21aが配置されており、−X方向側に細い先端部を有する第2排出ノズル22aが配置されている。これら第1及び第2排出ノズル21a,22aは、それぞれ第1及び第2供給管21,22を介して液体供給装置5に接続されている。また、光学素子4の先端部4Aを挟むように、+X方向側に先端部で広がった一対の第1流入ノズル23aが配置されており、−X方向側に先端部で広がった一対の第2流入ノズル24aが配置されている。これら第1及び第2流入ノズル23a,24aは、それぞれ第1及び第2回収管23,24を介して液体回収装置6に接続されている。
【0288】
実線で示す矢印25Aの方向(−X方向)にウェハWをステップ移動させる際には、第1供給管21及び第1排出ノズル21aを介して光学素子4の先端部4AとウェハWとの間に液体7を供給する。これと同期して、第2回収管24及び第2流入ノズル24aを介して光学素子4の先端部4AとウェハWとの間に供給された液体7を回収する。一方、点線で示す矢印の方向26Aの(+X方向)にウェハWをステップ移動させる際には、第2供給管22及び第2排出ノズル22aを介して光学素子4の先端部4AとウェハWとの間に液体7を供給する。これと同期して、第1回収管23及び第1流入ノズル23aを介して光学素子4の先端部4AとウェハWとの間に供給された液体7を回収する。
【0289】
図4に示すように、光学素子4の先端部4Aを挟むように、+Y方向側に細い先端部を有する第3排出ノズル27aが配置されており、−Y方向側に細い先端部を有する第4排出ノズル28aが配置されている。これら第3及び第4排出ノズル27a,28aは、それぞれ第3及び第4供給管27,28を介して液体供給装置5に接続されている。また、光学素子4の先端部4Aを挟むように、+Y方向側に先端部で広がった一対の第3流入ノズル29aが配置されており、−Y方向側に先端部で広がった一対の第4流入ノズル30aが配置されている。これら第3及び第4流入ノズル29a,30aは、それぞれ第3及び第4回収管29,30を介して液体回収装置6に接続されている。
【0290】
±Y方向にウェハWをステップ移動させる場合も、±X方向のステップ移動と同様であり、第3及び第4供給管27,28を切り替えて第3及び第4排出ノズル27a,28aのうち対応する一方で液体7を吐出させ、第3及び第4回収管29,30を切り替えて第3及び第4流入ノズル29a,30aのうち対応する一対で液体7を吸引させる。
【0291】
なお、以上のように、X方向またはY方向から液体7の供給及び回収を行うノズル23a〜30aだけでなく、例えば斜めの方向から液体7の供給及び回収を行うためのノズルを設けてもよい。
【0292】
図1に戻って、主制御系14は、レチクルステージ装置RSTに組み込まれている駆動機構に制御信号を送信し、レチクルステージを微動させることによりレチクルRの位置や姿勢の調整を行う。この際、不図示のレチクルレーザ干渉計により、レチクルRのX方向、Y方向及び回転方向の位置の計測が行われる。
【0293】
また、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15を介してZステージ9を駆動させることにより、ウェハWのフォーカス位置及び傾斜角の調整を行う。また、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15を介してXYステージ10を駆動させることにより、ウェハWのX方向、Y方向及び回転方向の位置調整を行う。この際、ウェハレーザ干渉計13により、レチクルRのX方向、Y方向及び回転方向の位置の計測が行われる。
【0294】
露光時には、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15を介してXYステージ10を駆動させることにより、ウェハW上の各ショット領域を順次露光位置にステップ移動させる。すなわち、ステップ・アンド・リピート方式によりレチクルRのパターン像をウェハW上に露光する動作が繰り返される。
【0295】
主制御系14は、露光中又はその前後において、液体供給装置5や液体回収装置6からなる液体循環装置を適宜動作させて、ウェハWの移動中における投影光学系PL下端とウェハWとの間に充填される液体7に関し供給量及び回収量の制御を行う。図5を参照して、ウェハWの移動が例えば矢印25Aに沿った−X方向である場合において、第1排出ノズル21aより供給された液体7は、矢印25Aの方向(−X方向)に流れ、第2流入ノズル23a、23bにより回収される。ここで、ウェハWが移動中に光学素子4とウェハWとの間に充填される液体7の量を一定に保つため、液体7の供給量Vi(m/s)と回収量Vo(m/s)とを等しくする。また、液体7の過剰な循環や不十分な循環を回避するため、XYステージ10すなわちウェハWの移動速度vに基づいて、液体7の供給量Vi及び回収量Voの総量を調整する。例えば、以下の式(1)に基づいて、液体LQの供給量Vi及び回収量Voを算出することができる。
【0296】
Vi=Vo=D・v・d … (1)
ここで、Dは、光学素子4の先端部4Aの直径(m)、vはXYステージ10によるウェハWの移動速度(m/s)、dは投影光学系PLの作動距離(ワーキング・ディスタンス)(m)である。主制御系14は、XYステージ10のステップ移動を制御しており、XYステージ10のステップ移動に対応する式(1)に基づいて液体7の供給量Vi及び回収量Voを算出することにより、液体7を光学素子4とウェハWとの間に常時安定した状態に満たすことができる。このように、液体7の供給量Vi及び回収量Voを制御することにより、液体7が光学素子4から不必要にはみ出したり、光学素子4先端の光学部材202までも液体7に浸かったりすることを防止できる。よって、光学素子4の浸食や光学部材202との間のオプティカルコンタクトの損傷を防止することができ、光学素子4の性能を長期に亘って維持することができる。つまり、光学素子4の交換頻度を低減して、ウェハWの露光処理のスループットを高く維持することができ、延いては、最終製品を安定した品質で効率良く生産することができる。
【0297】
以上は、ウェハWを±X方向に移動させる場合に関するものであったが、ウェハWを±Y方向に移動させる場合も同様の制御によって、光学素子4とウェハWとの間に保持される液体7の量を安定に維持することができる。
【0298】
なお、投影光学系PLの作動距離dは、光学素子4とウェハWとの間に液体7を安定して存在させるために可能な限り狭いほうが望ましい。例えば、投影光学系PLの作動距離dは、2mm程度に設定される。
【0299】
以上説明から明らかなように、この実施形態の投影露光装置によれば、優れたオプティカルコンタクトによって光学素子4と光学部材202と強固に接合することによって得られるとともに高い透過率を有する光学素子4を組み込んだ投影光学系PLを用いているので、高い性能を長期に亘って維持できる液浸型の露光処理が可能になる。
【0300】
以上、実施形態16に即して説明したが、本発明は上記実施形態16に限定されるものではない。例えば、光学素子4の基板材201の材料としては、使用波長にもよるが、蛍石に代えてフッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)等を用いることができる。
【0301】
また、光学素子4の基板材201の材料としては、使用波長にもよるが、二酸化珪素(SiO)に代えて酸化アルミニウム(Al)等を用いることができる。なお、被覆膜203は、単一の組成の膜に限らず、複数種類の2以上の膜を積層したものとすることができるが、この場合も、最上層は二酸化珪素等の酸化膜とすることが望ましい。
【0302】
また、光学部材202の材料としては、使用波長にもよるが、石英に代えてサファイア等を用いることができる。さらに、フッ化物ガラス等の表面に二酸化珪素(SiO)等の薄膜を堆積したものを光学部材202とすることもできる。
【0303】
また、光学素子4の基板材201や光学部材202の形状は、上記実施形態のものに限らない。例えば、光学素子4や光学部材202のオプティカルコンタクトに供する面は平面に限らず、様々な曲率を有する曲面とすることができる。
【0304】
また、上記実施形態では、真空蒸着法により基板材201上に二酸化珪素(SiO)を成膜したが、これに代えてイオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、RFスパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等のいずれかの成膜方法を用いることができる。
【0305】
また、上記実施形態では、光学素子4の先端部4AとウェハWの表面との隙間空間の全体を液体7により満たしているが、このような隙間空間の一部に液体7を介在させるようにしてもよい。
【0306】
また、上記実施形態では、液体7として純水を使用したが、純水に限らず、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系やウェハ表面に塗布されているフォトレジストに対して安定な各種液体(例えばセダー油等)を使用することができる。なお、露光光としてFレーザ光を用いる場合、液体7として、Fレーザ光が透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いることができる。
【0307】
また、上記実施形態のノズル等の配置や個数は例示であり、ウェハWのサイズや移動速度等に応じてノズルの配置や個数を適宜変更できる。
【0308】
[実施形態17]
次に、図面を参照して、実施形態17にかかる投影露光装置について説明する。図30は、実施形態17にかかるステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置の投影光学系PLAの下部、液体供給装置5及び液体回収装置6等を示す正面図である。また、以下の説明においては、図30中に示すXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がウエハWに対して平行となるよう設定され、Z軸がウエハWに対して直交する方向に設定されている。図中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。なお、図30においては、この実施形態にかかる投影露光装置と同一の構成には、実施形態1で用いたのと同一の符号を付して説明を行なう。
【0309】
この投影露光装置においては、投影光学系PLAの鏡筒3Aの最下端の透過光学素子32は、ウエハW側の先端部32Aが走査露光に必要な部分だけを残してY方向(非走査方向)に細長い矩形に削られている。走査露光時には、ウエハW側の先端部32Aの直下の矩形の露光領域にレチクル(図示せず)の一部のパターン像が投影され、投影光学系PLAに対して、レチクル(図示せず)が−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ10を介してウエハWが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、1つのショット領域への露光終了後に、ウエハWのステッピングによって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下ステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域への露光が順次行われる。
【0310】
この実施形態においては、実施形態1において用いた透過光学素子4(図2参照)と同様のものを透過光学素子32として用いる。すなわち、透過光学素子32の基材は蛍石であり、その蛍石の成膜面の結晶方位は(111)面である。また、透過光学素子32のウエハW側の先端部32A、即ち露光光が透過する部分には、溶解防止膜として、フッ化マグネシウム(MgF)膜F1及び二酸化珪素(SiO)膜F2が真空蒸着法により成膜され、更に二酸化珪素(SiO)膜F3が湿式製膜法により成膜されている。
【0311】
また、透過光学素子32のテーパー面32B、即ち露光光が透過しない部分は、金属製溶解防止膜(密着力強化膜を兼ねる)としてタンタル(Ta)膜F5(F4)がスパッタリング法により成膜されている。また、金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の表面には、金属製溶解防止膜を保護するための金属製溶解防止膜保護膜(溶解防止膜保護膜)として二酸化珪素(SiO)膜F6が、二酸化珪素(SiO)膜F3と同時に湿式製膜法により成膜されている。ここで、透過光学素子4のテーパー面32Bに成膜される金属製溶解防止膜(溶解防止膜)F5の純水への溶解度は2ppt以下であり、充填密度は95%以上である。また、透過光学素子32の先端部32Aに成膜された溶解防止膜F1〜F3による、露光ビームの出射角度が50度の時における平均反射率は2%以下である。
【0312】
この実施形態17においても実施形態1と同様に、液浸法が適用されるため、走査露光中に透過光学素子32とウエハWの表面との間に液体7が満たされる。液体7としては、純水が使用されている。液体7の供給及び回収は、それぞれ液体供給装置5及び液体回収装置6によって行われる。
【0313】
図31は、投影光学系PLAの透過光学素子32の表面(ウエハW側の先端部32A及びテーパー面32B)と液体7をX方向に供給及び回収するための排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。液体供給装置5には、図31に示すように、供給管21を介してY方向に細長い矩形状である先端部32A及びテーパー面32Bの+X方向側に3個の排出ノズル21a〜21cが、先端部32A及びテーパー面32Bの−X方向側に3個の排出ノズル22a〜22cが接続されている。また、液体回収装置6には、図31に示すように、回収管23を介して先端部32A及びテーパー面32Bの−X方向側に2個の流入ノズル23a、23bが、回収管24を介して先端部32A及びテーパー面32Bの+X方向側に2個の流入ノズル24a、24bが接続されている。
【0314】
実線の矢印で示す走査方向(−X方向)にウエハWを移動させて走査露光を行う場合には、液体供給装置5は、供給管21及び排出ノズル21a〜21cを介して透過光学素子32の先端部32A及びテーパー面32BとウエハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管23及び流入ノズル23a,23bを介して、液体供給装置5により先端部32A及びテーパー面32BとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、液体7はウエハW上を−X方向に流れており、透過光学素子32とウエハWとの間は液体7により満たされる。
【0315】
また、2点鎖線の矢印で示す方向(+X方向)にウエハWを移動させて走査露光を行う場合には、液体供給装置5は、供給管22及び排出ノズル22a〜22cを介して光学素子32の先端部32AとウエハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管24及び流入ノズル24a,24bを介して、液体供給装置5により先端部32AとウエハWとの間に供給された液体7を回収する。この場合においては、液体7はウエハW上を+X方向に流れており、光学素子32とウエハWとの間は液体7により満たされる。
【0316】
また、液体7の供給量Vi(m/s)及び回収量Vo(m/s)は、以下の数式2により算出される。
【数2】

ここで、DSYは光学素子32の先端部32AのX方向の長さ(m)である。DSYは予め入力されているため、数式2に基づいて液体7の供給量Vi(m/s)及び回収量Vo(m/s)を算出し、調整することにより、走査露光中においても光学素子32とウエハWとの間に液体7は安定に満たされる。
【0317】
また、ウエハWをY方向にステップ移動させる際には、実施形態1と同一の方法によりY方向から液体7の供給及び回収を行なう。
【0318】
図32は、投影光学系PLAの光学素子32の先端部32AとY方向用の排出ノズル及び流入ノズルとの位置関係を示す図である。図32に示すように、ウエハWを走査方向に直交する非走査方向(−Y方向)にステップ移動させる場合には、Y方向に配列された排出ノズル27a及び流入ノズル29a,29bを使用して液体7の供給及び回収を行なう。また、ウエハを+Y方向にステップ移動させる場合には、Y方向に配列された排出ノズル28a及び流入ノズル30a,30bを使用して液体7の供給及び回収を行なう。この場合においては、液体7の供給量Vi(m/s)、及び回収量Vo(m/s)は、以下の数式3により算出される。
【数3】

ここで、DSXは光学素子32の先端部32AのY方向の長さ(m)である。実施形態1と同様に、Y方向にステップ移動させる際にもウエハWの移動速度vに応じて液体7の供給量を調整することにより、光学素子32とウエハWとの間を液体7により満たし続ける。
【0319】
この実施形態17にかかる投影露光装置によれば、実施形態1と同様の作用・効果が奏される。
【0320】
すなわち、先ず、光学素子の表面に溶解防止膜が成膜されているため、光学素子の溶解を防止することができる。したがって、投影光学系の先端部と基板との間に満たされた液体により光学素子が溶解することがないため、光学素子を頻繁に交換する必要がなく、露光装置の高スループットを維持することができる。また、溶解した光学素子を交換するために露光装置の稼動を止める必要がなくなり、最終製品を効率よく生産することができる。更に、液体により光学素子が溶解することがないため、投影光学系の光学性能を維持することができることから、生産される最終製品の品質を安定させることができ、最適な状態で露光を続けることができる。
【0321】
また、この実施形態17にかかる投影露光装置によれば、投影光学系PLAのウエハW側の透過光学素子32のテーパー面32Bに密着力強化膜を兼ねる金属製溶解防止膜が成膜されているため、金属製溶解防止膜を透過光学素子32に密着させることができる。また、金属製溶解防止膜の表面に二酸化珪素(SiO)膜が成膜されているため、柔らく耐擦傷性が低い金属製溶解防止膜の損傷を防止することができ、金属製溶解防止膜を保護することができる。従って、ウエハWの表面と投影光学系PLAとの間に介在させた液体7の透過光学素子32への浸透及び侵食を防止することができ、投影光学系PLAの光学性能を維持することができる。また、液体7により透過光学素子32が溶解することがないため、露光装置の性能を維持することができる。更に、透過光学素子32を頻繁に交換する必要がなくなるため、投影露光装置のスループットを高く維持することができる。
【0322】
[実施形態18〜31]
実施形態2〜15において用いた透過光学素子4と同様のものを透過光学素子32としてそれぞれ用いるようにした以外は実施形態17と同様にして実施形態18〜31の投影露光装置を構成した。
【0323】
このようにして構成された実施形態18〜31の投影露光装置によれば、それぞれ実施形態2〜15で構成された投影露光装置と同様の作用・効果が奏される。
【0324】
[実施形態32]
以下のようにして、膜を介して光学部材がオプティカルコンタクトしている光学素子を用いるようにした以外は実施形態17と同様にして投影露光装置を構成した。なお、実施形態32の投影露光装置は、実施形態16の投影露光装置を部分的に変更して、ステップ・アンド・スキャン方式で露光を行うようにしたものであり、実施形態16と共通する部分については同一の符合を引用して重複説明を省略する。
【0325】
図30に示す実施形態32の投影露光装置において、投影光学系PLAの鏡筒3Aの最下端から突出する光学素子32は、先端部32Bが走査露光に必要な部分だけを残してY方向(非走査方向)に細長い矩形に削られている。走査露光時には、先端部32B直下の矩形の露光領域にレチクルの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLAに対して、レチクル(不図示)が−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ10を介してウェハWが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、1つのショット領域への露光終了後に、ウェハWのステッピングによって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下ステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域への露光が順次行われる。
【0326】
この実施形態32においても実施形態16と同様に、液浸法が適用されるため、走査露光中に光学素子32下面とウェハW表面との間に純水等の液体7が満たされる。なお、光学素子32は、実施形態16の場合と同様、蛍石製の基板材201と石英製の光学部材202とからなる(図25参照)。そして、この光学素子32では、光学素子32の基板材201上に二酸化珪素(SiO)からなる薄い被覆膜203を均一に堆積して、強固なオプティカルコンタクトを実現している。これにより、蛍石からなる基板材201を液体7から保護することができ、光学素子32延いては投影光学系PLAの耐久性を向上させることができる。
【0327】
図31は、液体を投影光学系PLA直下に供給及び回収するための排出ノズル及び流入ノズルの位置関係を示す図である。液体供給装置5には、供給管21を介して先端部32Aの+X方向側に3個の排出ノズル21a〜21cが、また、供給管22を介して先端部32Aの−X方向側に3個の排出ノズル22a〜22cが接続されている。また、液体回収装置6には、回収管23を介して先端部32Aの+X方向側に2個の流入ノズル23a,23bが、回収管24を介して先端部32Aの−X方向側に2個の流入ノズル24a,24bが接続されている。
【0328】
実線の矢印で示す走査方向(−X方向)にウェハWを移動させて走査露光を行う場合、液体供給装置5は、供給管21及び排出ノズル21a〜21cを介して光学素子32の先端部32AとウェハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管23及び流入ノズル23a,23bを介して、先端部32AとウェハWとの間に保持された液体7を回収する。この場合、液体7がウェハW上を−X方向に流れており、光学素子32とウェハWとの間が常時液体7によって満たされる。
【0329】
また、一点鎮線の矢印で示す方向(+X方向)にウェハWを移動させて走査露光を行う場合、液体供給装置5は、供給管22及び排出ノズル22a〜22cを介して光学素子32の先端部32AとウェハWとの間に液体7を供給する。液体回収装置6は、回収管24及び流入ノズル24a,24bを介して、先端部32AとウェハWとの間に保持された液体7を回収する。この場合、液体7がウェハW上を+X方向に流れており、光学素子32とウェハWとの間が常に液体7により満たされる。
【0330】
なお、ウェハWを±Y方向に移動させる際に液体7を光学素子32とウェハWとの間に循環させるための排出ノズル及び流入ノズルの配置等は、実施形態16の場合とほぼ同様である。
【0331】
実施形態32の走査型投影露光装置によれば、優れたオプティカルコンタクトによって光学素子32と光学部材202と強固に接合することによって得られるとともに高い透過率を有する光学素子32を組み込んだ投影光学系PLAを用いているので、高い性能を長期に亘って維持できる液浸型の露光処理が可能になる。
【0332】
[実施形態33]
図面を参照して、本発明の実施形態33にかかる露光装置について説明する。本実施形態にかかる露光装置は、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置である。図33は、本実施形態にかかる露光装置の投影光学系PLを構成する複数の蛍石により形成された光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1、第1光学素子LS1に次いで投影光学系PLの像面に近い第2光学素子LS2などを示す図である。
【0333】
この露光装置は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の下面T1と基板Pとの間を第1液体LQ1で満たすための第1の液浸機構を備えている。基板Pは投影光学系PLの像面側に設けられており、第1光学素子LS1の下面T1は基板Pの表面と対向するように配置されている。第1の液浸機構は、第1光学素子LS1の下面T1と基板Pとの間に第1液体LQ1を供給する第1液体供給機構90と、第1液体供給機構90で供給された第1液体LQ1を回収する第1液体回収機構91とを備えている。
【0334】
また、この露光装置は、第1光学素子LS1と、第1光学素子LS1に次いで投影光学系PLの像面に近い第2光学素子LS2との間を第2液体LQ2で満たすための第2の液浸機構を備えている。第2光学素子LS2は第1光学素子LS1の上方に配置されており、第1光学素子LS1の上面T2は、第2光学素子LS2の下面T3と対向するように配置されている。第2の液浸機構は、第1光学素子LS1と第2光学素子LS2との間に第2液体LQ2を供給する第2液体供給機構92と、第2液体供給機構92で供給された第2液体LQ2を回収する第2液体回収機構93とを備えている。
【0335】
鏡筒PKには第1光学素子LS1の上面T2の周縁領域と対向する対向面89が設けられている。そして、上面T2の周縁領域と対向面89との間には第1シール部材94が設けられている。第1シール部材94は例えばOリング(例えば、デュポンダウ社製「カルレッツ」)あるいはCリングにより構成されている。第1シール部材94により、上面T2上に配置された第2液体LQ2の上面T2の外側への漏出、ひいては鏡筒PKの外側への漏出が防止されている。また、第2光学素子LS2の側面C2と鏡筒PKの内側面PKCとの間には第2シール部材95が設けられている。第2シール部材95は例えばVリングにより構成されている。第2シール部材95により、鏡筒PKの内側において、第2流体LQ2、第2流体LQ2により発生した湿った気体などが第2光学素子LS2の上方へ流通するのを規制する。
【0336】
また、第1光学素子LS1の側面C1と鏡筒PKの内側面PKCとの間には第3シール部材96が設けられている。第3シール部材96は例えばVリングにより構成されている。第3シール部材96により、鏡筒PKの内側において、第1流体LQ1、第1流体LQ1により発生した湿った気体などが第1光学素子LS1の上方へ流通するのを規制する。
【0337】
第1光学素子LS1の側面(テーパー面)C1及び第2光学素子LS2の側面(テーパー面)C2には、150nmの膜厚で金(Au)を成膜した遮光膜が形成されている。従って、遮光膜により投影光学系の基板側の透過光学素子のテーパー面の周辺部に設けられた第1シール部材94、第2シール部材95及び第3シール部材96に露光光及びウエハからの露光光反射光が照射されるのを防止することができ、シール部材の劣化を防止することができる。
【0338】
なお、上述の第33の実施の形態においては、第1光学素子LS1の側面(テーパー面)C1及び第2光学素子LS2の側面(テーパー面)C2に、金(Au)を用いた金属膜による遮光膜が形成されているが、金属膜による遮光膜は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)及びクロム(Cr)の中の少なくとも1つにより形成される膜により構成しても良い。また、遮光膜を金属酸化物膜により構成しても良い。この場合には、金属酸化物膜が二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ハフニウム(HfO)、二酸化チタン(TiO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化珪素(SiO)及び酸化クロム(Cr)の中の少なくとも1つにより形成される膜により構成される。
【0339】
以上説明した実施形態1〜33においては、投影光学系PLと基板Pとの間を局所的に液体で満たす露光装置を採用しているが、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定の深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。
【0340】
さらに、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報等に開示されているように、ウエハ等の被処理基板を別々に載置してXY方向に独立に移動可能な2つのステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0341】
以上の説明に加えて、本発明の露光装置に適用可能な構成が記載されている上記の国際公開公報WO2004/019128号、国際公開公報WO2004/053950号、国際公開公報WO2004/053951号は、参考文献としてこの明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0342】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0343】
[実施例1]
図34は、本発明の光学素子50の構成を示す図である。図34に示すように、成膜面52aの結晶方位が(111)面である蛍石52の基板上に、RFスパッタリング法を用いて、蛍石52の溶解防止膜としての酸化珪素54を0.55λ(λ=193nm)の光学的膜厚にして成膜することにより光学素子50を形成した。ここで、酸化珪素膜の光学的膜厚は、図35に示すように、蛍石52に光が実線矢印56の方向から入射して、蛍石52により破線矢印58の方向に反射される場合において、蛍石52の基板上から残存反射される光によって発生するゴースト現象を抑制するために制限される必要がある。即ち、図36は、蛍石基板に光が入射したときの蛍石の残存反射率を示す図である。蛍石基板に酸化珪素膜を成膜していない場合の蛍石の残存反射率を図36の実線60に示す。また、蛍石基板に酸化珪素膜を成膜した場合の蛍石の残存反射率を図36の破線62に示す。図36に示すように、酸化珪素膜の光学的膜厚は、蛍石に光が入射する入射角度が60°であるときの蛍石の残存反射率が0.5%以下となるように設定されている。
【0344】
光学素子50を用いて実験を行った。図37は、この実施例にかかる実験装置の構成を示す図である。光学素子50の体積に対して十分大きなポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作られた水槽64に70℃の純水66を入れる。テフロン(登録商標)製の撹拌子68を純水66中に投入する。図37に示すように、光学素子50を半分だけ純水66中に浸かるように純水66中に投入する。光学素子50、純水66、攪拌子68を含む水槽64を恒温槽70に入れて温度を一定に保持する。
【0345】
ここで、水槽64は、純水66の蒸発による液面変化を小さくするために、光学素子50の体積に対し十分大きなものが用いられる。また、撹拌子68は、光学素子50が純水66に溶解し緩衝溶液が生成された場合においても、溶解度を一定に保つために用いられる。光学素子50を純水66に浸した状態で3時間経過した後、純水66に浸していない部分の光学素子50と純水68に浸した部分の光学素子50との段差を分解能0.5nmの段差測定器にて測定したところ、段差は発生しなかった。
【0346】
[実施例2]
図38は、本発明の光学素子74の構成を示す図である。図38に示すように、成膜面76aの結晶方位が(111)面である蛍石76の基板上に、真空蒸着法を用いて、蛍石76の溶解防止膜としてのフッ化ランタン78を0.68λ(λ=193nm)の光学的膜厚にして成膜することにより光学素子74を形成した。蛍石76の結晶方位(111)面上のフッ化ランタン78は、蛍石76の結晶方位を反映し(111)面にヘテロエピタキシャル成長することが知られている(WO 03/009015参照)。従って、成膜されたフッ化ランタン78は、非常に緻密であり、非常に欠陥の少ない結晶構造を形成する。
【0347】
光学素子74を用いて実験を行った。この実施例にかかる実験装置の構成は、図37に示す実施例1にかかる実験装置の構成と同一であるため、同一の構成には実施例1と同一の符号を付して説明を行なう。
【0348】
まず、光学素子74の体積に対して十分大きな水槽64に70℃の純水66を入れ、撹拌子68を純水66中に投入する。光学素子74を半分だけ純水66中に浸かるように純水66中に投入する。光学素子74、純水66、攪拌子68を含む水槽64を恒温槽70に入れて温度を一定に保持する。光学素子74を純水66に浸した状態で3時間経過した後、純水66に浸していない部分の光学素子74と純水66に浸した部分の光学素子74との段差を分解能0.5nmの段差測定器にて測定したところ、段差は発生しなかった。
【0349】
なお、上述の実施例においては、緻密な溶解防止膜の構造を作製するために、溶解防止膜の成膜方法として真空蒸着法を用いたが、スパッタリング法またはCVD法を用いて溶解防止膜を成膜してもよい。
【0350】
[比較例1]
溶解防止膜を成膜していない蛍石の基板について実験を行った。図39は、この比較例にかかる実験装置の構成を示す図である。この比較例においては、実施例1の光学素子50に代えて蛍石基板72を用いる。この比較例にかかるその他の実験装置の構成は実施例1にかかる実験装置の構成と同一であるため、同一の構成には実施例1と同一の符号を付して説明を行なう。
【0351】
まず、蛍石基板72の体積に対して十分大きな水槽64に70℃の純水66を入れ、撹拌子68を純水66中に投入する。蛍石基板72を半分だけ純水66中に浸かるように純水66中に投入する。蛍石基板72、純水66、攪拌子68を含む水槽64を恒温槽70に入れて温度を一定に保持する。蛍石基板72を純水66に浸した状態で3時間経過した後、純水66に浸していない部分の蛍石基板72と純水66に浸した部分の蛍石基板72との段差を分解能0.5nmの段差測定器にて測定した。純水66に浸した部分の蛍石基板72が溶解したため、50nmの段差が測定された。
【0352】
実施例1及び実施例2にかかる光学素子によれば、比較例1にかかる光学素子と比較した場合において、純水に対する溶解度を1/50以下にすることができる。図40は、比較例1、実施例1及び実施例2にかかる光学素子の実験後に段差測定器にて測定された段差の測定結果を示す図である。図40に示すように、酸化珪素またはフッ化ランタンを溶解防止膜として成膜された蛍石は純水に溶解しないため、溶解による段差は発生しない。従って、光学素子を液浸法を用いた投影露光装置の液体に接触する部分に搭載した場合に、投影露光装置の投影光学系の透過波面を維持することができる。
【0353】
[実施例3]
図41は、実施例3にかかる透過光学素子50の構成を示す図である。図41に示すように、蛍石52の基板上に、スパッタリング法を用いて、タンタル(Ta)を10nm成膜し、密着力強化膜53を形成する。密着力強化膜53は、蛍石52と密着力強化膜53の表面に成膜される金属膜54の密着力を向上させるために機能する。また、密着力を強化するために必要な膜厚は10nm以上であるが、3〜5nmの膜厚においても密着力としての効果を得ることができる。
【0354】
次に、密着力強化膜53の表面に、スパッタリング法を用いて、水に対する溶解を防止するための溶解保護膜として金(Au)により構成される金属膜54を200nm成膜する。
【0355】
ここで、金属膜54の密度はX線回折の臨界角より求めることができ、スパッタリング法により成膜した場合、金属膜54の充填密度は97%以上である。また、金属膜54の水への溶解度は、スパッタリング法により成膜した場合、1ppt以下である。
【0356】
次に、金属膜54の表面に、スパッタリング法を用いて、金属膜54の機械的強度を向上させるための溶解防止膜保護膜として二酸化珪素(SiO)膜55を50nm成膜する。
【0357】
透過光学素子50を用いて実験を行った。図42は、この実施例にかかる試験器80の構成を示す図である。図42に示すように試験器80は、サンプルホルダ81、循環ポンプ82、重水供給装置83、バッファータンク84により構成されている。サンプルホルダ81は、その一面が解放されており、その解放面にOリング85を備えている。サンプルホルダ81の解放面に透過光学素子50の密着力強化膜53,金属膜54,二酸化珪素(SiO)膜55が成膜されている面がOリング85によってシールされている。循環ポンプ82により重水供給装置83から供給される重水をバッファータンク84を介してサンプルホルダ81内部に流す。ここで、バッファータンク84は、循環ポンプ82の振動がサンプルホルダ81に伝わらないようにするために設置されている。また、純水(HO)ではなく重水(DO)を流すことにより、耐水性試験後に透過光学素子50の表面からの深さ方向に対して重水が浸透する量を計測することができる。
【0358】
試験器80にて透過光学素子50上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子50の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子50の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子50の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、金属膜54に重水は浸透していなかった。
【0359】
[実施例4]
図43は、実施例4にかかる透過光学素子58の構成を示す図である。図43に示すように、蛍石59の基板上に、スパッタリング法を用いて、水に対する溶解を防止するための溶解保護膜として金(Au)により構成される金属膜60を200nm成膜する。ここで、金属膜60の密度はX線回折の臨界角より求めることができ、スパッタリング法により成膜した場合、金属膜60の充填密度は97%以上である。また、金属膜60の水への溶解度は、スパッタリング法により成膜した場合、1ppt以下である。
【0360】
次に、金属膜60の表面に、スパッタリング法を用いて、金属膜60の機械的強度を向上させるための溶解防止膜保護膜として二酸化珪素(SiO)膜61を50nm成膜する。
【0361】
透過光学素子58を用いて実験を行った。実施例3と同様に、図42に示す試験器80にて透過光学素子58上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子58の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子58の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子58の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、金属膜60に重水は浸透していなかった。
【0362】
[実施例5]
図44は、実施例5にかかる透過光学素子65の構成を示す図である。図44に示すように、蛍石66の基板上に、スパッタリング法を用いて、タンタル(Ta)を10nm成膜し、密着力強化膜67を形成する。密着力強化膜67は、蛍石66と密着力強化膜67の表面に成膜される金属膜68の密着力を向上させるために機能する。また、密着力を強化するために必要な膜厚は10nm以上であるが、3〜5nmの膜厚においても密着力としての効果を得ることができる。
【0363】
次に、密着力強化膜67の表面に、スパッタリング法を用いて、水に対する溶解を防止するための溶解保護膜として金(Au)により構成される金属膜68を200nm成膜する。
【0364】
ここで、金属膜67の密度はX線回折の臨界角より求めることができ、スパッタリング法により成膜した場合、金属膜67の充填密度は97%以上である。また、金属膜67の水への溶解度は、スパッタリング法により成膜した場合、1ppt以下である。
【0365】
透過光学素子65を用いて実験を行った。実施例3と同様に、図42に示す試験器80にて透過光学素子65上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子65の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子65の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子65の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、重水は浸透していなかった。
【0366】
なお、上述の各実施例においては、成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、真空蒸着法またはCVD法を用いて密着力強化膜、金属膜、溶解防止膜保護膜を成膜してもよい。
【0367】
[実施例6]
図45は、本実施例に係る光学素子50の構成を示す図である。図45に示すように、蛍石により形成された投影光学系の先端部の光学部材51の基板側の表面51A及び光学部材51の側面51Bにフッ化マグネシウム(MgF)により構成される溶解防止膜52をスプレーコートを用い湿式成膜する。なお、光学部材51の基板側の表面51Aには、光学膜厚0.65λ(λ=193nm)でフッ化マグネシウム(MgF)により構成される溶解防止膜を成膜する。ここで湿式成膜とは、ある溶媒中に成膜させたい物質を分散させ成膜面に塗布し、塗布後溶媒を乾燥除去する成膜法である。用いられる溶媒は成膜させたい物質が凝縮、沈殿等せず、均一な状態で溶媒中に分散すれば良く、アルコールや有機溶剤等が用いられる。
【0368】
湿式成膜法により、フッ化マグネシウム(MgF)膜を形成する場合には、以下に示す3種類の反応プロセスを用いることが好ましい。
(i) フッ酸/酢酸マグネシウム法
2HF+Mg(CHCOO) → MgF+2CHCOOH
(ii)フッ酸/アルコキシド法
2HF+Mg(CO) → MgF+2COH
(iii)トリフルオロ酢酸/アルコキシド法
2CFCOOH+Mg(CO)
Mg(CFCOO)+2COH
Mg(CFCOO) → 熱分解 →MgF
これらのプロセスにおいて、ゾル溶液を調整した後、前処理として、オルガノサーマル処理、またはハイドロサーマル処理を行うのが好ましい。このとき、加圧または加熱熟成の何れか一方または両方を行っても良い。上記の湿式法の詳細は、米国特許5,835,275号に開示されているので参照されたい。ゾル溶液の基板への塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング、メニスカス法、スプレーコート法、及び印刷法から選ばれた何れか一以上の方法が用いられる。ゾル液の塗布後に加熱して有機物が除去されて膜が形成される。この形成された膜により、蛍石により構成される光学部材51の基板側表面51A、および側面51Bが隙間無く保護されている必要がある。
【0369】
湿式成膜法で成膜された膜は真空蒸着やスパッタリングに代表される一般的な乾式成膜法に比べ機械的耐久性が非常に低い。そのため機械的耐久性を向上させるために加熱アニールする必要がある。特に蛍石により構成される光学部材に湿式成膜法で成膜した場合、急激な温度上昇によるアニールを行うと、蛍石の線膨張係数から面変化や極端な場合、蛍石が割れるという危険性がある。これを避けるために、昇温を低速で行う必要がある。
【0370】
本実施例では、溶解防止膜としてフッ化マグネシウム(MgF)を用いたが、これに限ることなく酸化珪素(SiO)を用いた湿式成膜でいいことはいうまでもない。
【0371】
[実施例7]
図46は、本実施例に係る光学素子53の構成を示す図である。図46に示すように、蛍石により形成された投影光学系の先端部の光学部材54の基板側の表面54Aに光学膜厚0.65λ(λ=193nm)の酸化珪素(SiO)により構成される溶解防止膜55をイオンビームスパッタリングにより成膜する。その後、光学部材54の側面54Bに加熱した状態でアルキルケテンダイマー(AKD)を溶液状態で塗布する。液状のアルキルケテンダイマーを結晶化させると凹凸形状の中に繰り返し小さな凹凸形状を示すフラクタル構造となり、接触角160°以上の超撥水膜56になる。
【0372】
これは接触角θの物質が表面積r倍のフラクタル構造になった時の接触角をθとするとyoungの式を拡張した以下の式が成り立つことから理解される。
【0373】
(数式)

【0374】
ここでγは、固体の表面張力、γは、液体の表面張力、γSLは、固体/液体の界面張力である。この式に示されるようにcosθが正(θ>90°)の時は、接触角はより大きく、つまり液体をより弾く状態になり、cosθが負(θ<90°)の時は、接触角はより小さく、つまり液体に対してよりぬれる状態になる。
【0375】
ここではフラクタル構造を有するアルキルケテンダイマーを側面溶解防止膜に用いたが、一般的な撥水処理、例えばシランカップリング剤(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリクロロシラン)等で撥水処理することでも側面溶解防止効果を得ることができる。また、一般的な無電解メッキによる撥水処理等を用いても良い。
【0376】
実施例6、実施例7にかかる光学素子の検証結果を以下に示す。
【0377】
図47に示すような直方体の蛍石光学素子の底面に溶解防止膜としてフッ化マグネシウム(MgF)をスプレーコートにて湿式成膜し、側面に溶解防止膜としてフッ化7グネシウム(MgF)をスプレーコートにて湿式成膜する。図47に示す光学素子57には、実施例6の溶解防止膜と同一の溶解防止膜が形成されている。この図47に示す光学素子を試料1とする。
【0378】
図48に示すような直方体の蛍石光学素子の底面に溶解防止膜として酸化珪素(SiO)をイオンビームスパッタリングにて成膜し、側面に溶解防止膜としてアルキルケテンダイマー溶液を塗布、乾燥させる。図48に示す光学素子58には、実施例7の溶解防止膜と同一の溶解防止膜が形成されている。この図48に示す光学素子を試料2とする。
【0379】
図49に示すような直方体の蛍石光学素子の底面に溶解防止膜としてフッ化マグネシウム(MgF)をスプレーコートにて湿式成膜し、側面にはコートを施さないでおく。この図49に示す光学素子59を試料3(参考例1)とする。
【0380】
試料1,2,3に対して以下の実験を行った。図50は、実験装置の構成を示す図である。光学素子57,58,59の体積に対して十分大きなポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作られた水槽64に70℃の純水66を入れる。テフロン(登録商標)製の撹拌子68を純水66中に投入する。図50に示すように、光学素子57,58,59の底面部が純水66中に浸かるように純水66中に投入する。光学素子57,58,59、純水66、攪拌子68を含む水槽64を恒温槽70に入れて温度を一定に保持した。
【0381】
ここで、水槽64は、純水66の蒸発による液面変化を小さくするために、光学素子57,58,59の体積に対し十分大きなものが用いられる。また、撹拌子68は、光学素子57,58,59が純水66に溶解し緩衝溶液が生成された場合においても、溶解度を一定に保つために用いられる。光学素子57,58,59を純水66に浸した状態で3時間経過した後、光学素子57,58,59の底面部、側面部における溶解による段差を分解能0.5nmの段差測定器にて測定した。
【0382】
図51に示すように、光学素子57(試料1)、光学素子58(試料2)は底面部、側面部共に全く溶解されなかった。これに対して、光学素子59(試料3)では側面部は約50nm浸食されていた。また、光学素子59(試料3)の底面部の中央付近は変化しなかったが、周辺は側面が浸食された事により、図52に示すように一部底面の溶解防止膜が破壊されていた。
【0383】
[実施例8]
図53は、実施例8にかかる透過光学素子50の構成を示す図である。図53に示すように、蛍石52の基板上に、スパッタリング法を用いて、二酸化珪素(SiO)膜54を200nm成膜する。
【0384】
次に、スパッタリング法により蛍石52の基板上に成膜された二酸化珪素(SiO)膜54の表面に、スピンコートによる湿式成膜方法を用いて、二酸化珪素(SiO)膜56を50nm成膜する。即ち、基板回転数1000〜2000回転/分で市販の湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液を塗布する。なお、湿式成膜方法による二酸化珪素(SiO)膜56の膜厚は、湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度、粘度、スピンコートでの基板回転数、及び温湿度等に依存するため、予め湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度及び粘度をパラメータとして二酸化珪素(SiO)膜56の膜厚に対する湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度及び粘度の検量線を作成しておく必要がある。また、膜の引っ張り応力を極力低減させるために湿式成膜方法による二酸化珪素(SiO)膜56の膜厚を50nmとしているが、二酸化珪素(SiO)膜56の膜厚を150nm以上とすると応力緩和から膜にクラックが発生する場合があるため注意する必要がある。
【0385】
次に、湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の主溶媒であるアルコールを蒸発させ、かつ湿式成膜された二酸化珪素(SiO)膜56を焼結させるために、二酸化珪素(SiO)膜56に対して大気下にて160℃/2時間のアニールを行う。アニールは大気下で行われ、蛍石52の基板全体が均等に加熱されるため、破損や面形状変化は生じない。
【0386】
図42に示す試験器80を用いて透過光学素子50について実験を行った。図42に示すように試験器80は、サンプルホルダ81、循環ポンプ82、重水供給装置83、バッファータンク84により構成されている。サンプルホルダ81は、その一面が解放されており、その解放面にOリング85を備えている。サンプルホルダ81の解放面に透過光学素子50の二酸化珪素(SiO)膜54,56が成膜されている面がOリング85によってシールされている。循環ポンプ82により重水供給装置83から供給される重水をバッファータンク84を介してサンプルホルダ81内部に流す。ここで、バッファータンク84は、循環ポンプ82の振動がサンプルホルダ81に伝わらないようにするために設置されている。また、純水(HO)ではなく重水(DO)を流すことにより、耐水性試験後に透過光学素子50の表面からの深さ方向に対して重水が浸透する量を計測することができる。
【0387】
試験器80にて透過光学素子50上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子50の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子50の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子50の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、重水は浸透していなかった。
【0388】
なお、実施例8においては、乾式成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、真空蒸着法またはCVD法を用いて透過光学素子の溶解を防止するための膜を成膜してもよい。
【0389】
[実施例9]
次に、実施例9にかかる透過光学素子について説明する。加熱した蛍石の基板上に、真空蒸着法を用いて、フッ化マグネシウム(MgF)膜を70nm成膜する。なお、真空中でフッ化マグネシウム(MgF)膜を成膜する場合の加熱は、熱膨張率が大きい蛍石基板の熱衝撃による破損や面形状変化を防止するために、蛍石基板全体を均一に加熱する。また、蛍石基板を加熱または冷却させる場合、低速で加熱または冷却を行う必要がある。
【0390】
次に、真空蒸着法により蛍石の基板上に成膜されたフッ化マグネシウム(MgF)膜の表面に、スピンコートによる湿式成膜方法を用いて、二酸化珪素(SiO)膜を50nm成膜する。即ち、基板回転数1000〜2000回転/分で市販の湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液を塗布する。なお、湿式成膜方法による二酸化珪素(SiO)膜の膜厚は、湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度、粘度、スピンコートでの基板回転数、及び温湿度等に依存するため、予め湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度及び粘度をパラメータとして二酸化珪素(SiO)膜の膜厚に対する湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の濃度及び粘度の検量線を作成しておく必要がある。また、膜の引っ張り応力を極力低減させるために湿式成膜方法による二酸化珪素(SiO)膜の膜厚を50nmとしているが、二酸化珪素(SiO)膜の膜厚を150nm以上とすると応力緩和から膜にクラックが発生する場合があるため注意する必要がある。
【0391】
次に、湿式成膜用ゾル−ゲルシリカ液の主溶媒であるアルコールを蒸発させ、かつ湿式成膜された二酸化珪素(SiO)膜を焼結させるために、二酸化珪素(SiO)膜に対して大気下にて160℃/2時間のアニールを行う。アニールは大気下で行われ、蛍石の基板全体が均等に加熱されるため、破損や面形状変化は生じない。
【0392】
実施例9にかかる透過光学素子を用いて実験を行った。実施例8と同様に、図42に示す試験器80にて実施例9にかかる透過光学素子上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、重水は浸透していなかった。
【0393】
なお、実施例9においては、乾式成膜方法として真空蒸着法を用いたが、スパッタリング法またはCVD法を用いて透過光学素子の溶解を防止するための膜を成膜してもよい。
【0394】
[実施例10]
図54は、実施例10にかかる中心波長193.4nmにおいて反射防止効果を有する透過光学素子58の構成を示す図である。図54に示すように、加熱した蛍石(CaF)59の基板上に、第1層のフッ化ランタン(LaF)膜60、第2層のフッ化マグネシウム(MgF)膜61、第3層のフッ化ランタン(LaF)膜62を抵抗加熱にて真空蒸着法により成膜する。ここで、次に、第4層の一部である第1の膜としての二酸化珪素(SiO)膜63を光学膜厚0.08まで電子銃加熱にて真空蒸着法により成膜し、第1層から第4層の一部まで成膜された蛍石59を真空槽から取り出す。次に、二酸化珪素(SiO)膜63の上にスピンコートによる湿式成膜方法を用いて、第4層の一部である第2の膜としての二酸化珪素(SiO)膜64を光学膜厚0.04塗布する。次に、湿式成膜された二酸化珪素(SiO)膜64の膜を焼結させるために、二酸化珪素(SiO)膜64に対して大気下にて160℃/2時間のアニールを行う。以下に透過光学素子58を構成する基板及び酸化物膜等の中心波長193.4nmの光束に対する屈折率n、中心波長193.4nmの光束に対する光学膜厚ndを示す。
基板:CaF(n=1.50)
第一層:LaF(n=1.69,nd=0.60)
第二層:MgF(n=1.43,nd=0.66)
第三層:LaF(n=1.69,nd=0.52)
第四層:SiO(n=1.55,nd=0.12)
媒質:HO(n=1.44)
透過光学素子58を用いて実験を行った。実施例8と同様に、図42に示す試験器80にて透過光学素子58上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子58の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子58の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子58の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、重水は浸透していなかった。
【0395】
[実施例11]
図55は、実施例11にかかる透過光学素子65の構成を示す図である。図55に示すように、蛍石66の基板上に表面処理を施す。即ち、その蛍石66の表面の粗さ及び表面積を増大させるために#2000の砥石で磨く。また、砥石で磨かれることにより表面処理を施された蛍石66の基板上にスピンコートによる湿式成膜方法を用いて、溶解防止酸化物膜としての二酸化珪素(SiO)膜67を膜厚100nmまで塗布する。次に、湿式成膜された二酸化珪素(SiO)膜67の膜を焼結させるために、二酸化珪素(SiO)膜67に対して大気下にて160℃/2時間のアニールを行う。
【0396】
透過光学素子65を用いて実験を行った。実施例8と同様に、図42に示す試験器80にて透過光学素子65上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。その結果、透過光学素子65の表面に成膜されている膜は剥離することなく、透過光学素子65の外観に変化は見られなかった。また、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子65の表面からの深さ方向に対しての重水の浸透を評価した結果、重水は浸透していなかった。
【0397】
[参考例2]
図56は、参考例2にかかる中心波長193.4nmにおいて反射防止効果を有する透過光学素子73の構成を示す図である。図56に示すように、加熱した蛍石74の基板上に、第1層のフッ化ランタン(LaF)膜75、第2層のフッ化マグネシウム(MgF)膜76、第3層のフッ化ランタン(LaF)膜77を抵抗加熱にて真空蒸着法により成膜する。次に、第4層の二酸化珪素(SiO)膜78を電子銃加熱にて真空蒸着法により成膜する。
【0398】
なお、参考例2にかかる透過光学素子73を構成する第1層のフッ化ランタン(LaF)膜74、第2層のフッ化マグネシウム(MgF)膜75、第3層のフッ化ランタン(LaF)膜76は、実施例1にかかる透過光学素子58を構成する第1層のフッ化ランタン(LaF)膜60、第2層のフッ化マグネシウム(MgF)膜61、第3層のフッ化ランタン(LaF)膜62の中心波長193.4nmの光束に対する屈折率及び光学膜厚と同一の屈折率及び光学膜厚を有している。また、第4層の二酸化珪素(SiO)膜77は、実施例9にかかる第4層を構成する二酸化珪素(SiO)膜63及び二酸化珪素(SiO)膜64の中心波長193.4nmの光束に対する屈折率及び光学膜厚と同一の屈折率及び光学膜厚を有している。
【0399】
透過光学素子73を用いて実験を行った。実施例8と同様に、図42に示す試験器80にて透過光学素子73上での重水の移動速度が50cm/秒となるように設定し、30日間の耐水試験を行った。耐水試験後、二次イオン質量分析法(SIMS)にて透過光学素子73の表面から深さ方向に対して重水の浸透を評価した結果、透過光学素子73の表面に成膜されている第4層の二酸化珪素(SiO)膜77の内部や、第3層のフッ化ランタン(LaF)膜76との界面付近から重水が検出された。
【0400】
実施例10にかかる透過光学素子によれば、参考例2にかかる透過光学素子と比較した場合において、その光学特性を変化させることなく重水の浸透及び侵食を防止することができる。図57は、媒質(純水)から実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子に光が入射した場合における角度反射特性を示す図である。図57の実線90は、実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子に入射した光のS偏光成分の角度反射特性を示している。また、図57の破線91は、実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子に入射した光のP偏光成分の角度反射特性を示している。図57に示すように、実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子に入射した光のS偏光成分及びP偏光成分の角度反射特性は同一であり、実施例10及び参考例2にかかる透過光学素子の光学特性が同一であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0401】
以上説明した本発明によれば、液浸法を適用した場合に、投影光学系の先端部が液体によって浸食されない光学素子を得ることが可能となる。したがって、本発明によれば、光学素子の溶解が十分に防止され、投影光学系の光学性能が長時間にわたって維持される露光装置を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置に使用される光学素子において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の表面に第1の溶解防止部材を備えている光学素子。
【請求項2】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する単層膜により構成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記単層膜は、純水に対する溶解度が1.0×10−7g/水100g以下である、請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する多層膜により構成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記多層膜は、少なくとも最表層として純水に対する溶解度が1.0×10−7g/水100g以下である層を有しており、かつ、前記露光ビームの出射角度が50度の時に平均反射率が2%以下である、請求項4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、
前記光学素子側から順次1層目、2層目、・・・、最表層をn層目として、奇数番目の層は、隣接する前記光学素子又は隣接する偶数番目の層の屈折率に比して高屈折率を有する膜であり、前記1層目乃至前記n層目は、全体として前記反射防止機能を備えている、請求項4に記載の光学素子。
【請求項7】
前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、
前記光学素子側から順次1層目、2層目、・・・、最表層をn層目として、奇数番目の層は、隣接する前記光学素子又は隣接する偶数番目の層の屈折率に比して低屈折率を有する膜であり、前記1層目乃至前記n層目は、全体として前記反射防止機能を備えている、請求項4に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1の溶解防止部材は、MgF、LaF、SrF、YF、LuF、HfF、NdF、GdF、YbF、DyF、AlF、NaAlF、5NaF・3AlF、Al、SiO、TiO、MgO、HfO、Cr、ZrO、Ta及びNbからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、下記層構成(1層目/2層目/・・・/n層目):
(i)LaF/MgF
(ii)MgF/SiO
(iii)MgF/SiO/SiO
(iv)LaF/MgF/SiO
(v)LaF/MgF/Al
(vi)LaF/MgF/Al/SiO
(vii)LaF/MgF/LaF/MgF
(viii)LaF/MgF/LaF/SiO
(ix)LaF/MgF/LaF/MgF/SiO、及び
(x)LaF/MgF/LaF/Al/SiO
からなる群から選択される層構成を有している、請求項4に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の溶解防止部材は、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、RFスパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法及び光CVD法からなる群から選択される少なくとも一つの成膜方法によって成膜されたものである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1の溶解防止部材は、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる膜を備えている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
前記多層膜は、乾式成膜方法によって成膜された第1の膜と、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる第2の膜とを備えている、請求項4に記載の光学素子。
【請求項13】
前記多層膜は、少なくとも最表層として湿式成膜方法によって成膜されたSiO膜を備えている、請求項4に記載の光学素子。
【請求項14】
前記湿式成膜方法によって成膜されたSiO膜の前記光学素子側に、乾式成膜方法によって成膜されたSiO膜を更に備えている、請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する薄板により構成されており、前記薄板が前記光学素子の表面に取り外し可能に接合されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記薄板は、前記光学素子の表面にオプティカルコンタクトで接合されており、前記露光ビームの出射角度が50度の時に平均反射率が2%以下である、請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
前記薄板は、フッ化物、酸化物及び樹脂からなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項15に記載の光学素子。
【請求項18】
前記薄板は、石英ガラス薄板、フッ化マグネシウム薄板、螢石薄板及びポリテトラフルオロエチレン薄板からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項15に記載の光学素子。
【請求項19】
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に第2の溶解防止部材を更に備えている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項20】
前記第1の溶解防止部材と前記第2の溶解防止部材とが、同一の材料を用いて成膜された膜を備えている、請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
前記同一の材料を用いて成膜された膜は、湿式成膜方法によって成膜されたものである、請求項20に記載の光学素子。
【請求項22】
前記同一の材料は、MgF又はSiOである、請求項20に記載の光学素子。
【請求項23】
前記第1の溶解防止部材は親水性の溶解防止膜を備えており、前記第2の溶解防止部材は撥水性の溶解防止膜を備えている、請求項19に記載の光学素子。
【請求項24】
前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する金属製溶解防止膜を備えている、請求項19に記載の光学素子。
【請求項25】
前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子の側面と前記金属製溶解防止膜との間に成膜された密着力強化膜を更に備えている、請求項24に記載の光学素子。
【請求項26】
前記第2の溶解防止部材は、前記金属製溶解防止膜の表面に成膜された金属製溶解防止膜保護膜を更に備えている、請求項24に記載の光学素子。
【請求項27】
前記金属製溶解防止膜は、純水に対する溶解度が2ppt以下であり、充填密度が95%以上のものである、請求項24に記載の光学素子。
【請求項28】
前記金属製溶解防止膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項24に記載の光学素子。
【請求項29】
前記密着力強化膜は、Ta及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項25に記載の光学素子。
【請求項30】
前記金属製溶解防止膜保護膜は、SiO、Y、Nd、Cr、Ta、Nb、TiO、ZrO、HfO及びLaからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項26に記載の光学素子。
【請求項31】
前記第2の溶解防止部材は、遮光膜を備えている、請求項19に記載の光学素子。
【請求項32】
前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、請求項31に記載の光学素子。
【請求項33】
前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項32に記載の光学素子。
【請求項34】
前記光学素子の表面に前記第1の溶解防止部材を介してオプティカルコンタクトで接合されている光学部材を更に備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項35】
前記第1の溶解防止部材はSiOにより形成されている膜であり、前記光学部材は石英により形成されている部材である、請求項34に記載の光学素子。
【請求項36】
前記露光ビームはArFレーザ光であり、前記光学素子は螢石により形成されている素子であり、前記光学素子の前記表面の結晶方位が(111)面である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項37】
露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置に使用される光学素子において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に遮光膜を備えている光学素子。
【請求項38】
前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、請求項37に記載の光学素子。
【請求項39】
前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項38に記載の光学素子。
【請求項40】
露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の表面に形成されている第1の溶解防止部材を備えている露光装置。
【請求項41】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する単層膜により構成されている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項42】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する多層膜により構成されている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項43】
前記第1の溶解防止部材は、MgF、LaF、SrF、YF、LuF、HfF、NdF、GdF、YbF、DyF、AlF、NaAlF、5NaF・3AlF、Al、SiO、TiO、MgO、HfO、Cr、ZrO、Ta及びNbからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項44】
前記多層膜はn層(nは整数)で構成され、下記層構成(1層目/2層目/・・・/n層目):
(i)LaF/MgF
(ii)MgF/SiO
(iii)MgF/SiO/SiO
(iv)LaF/MgF/SiO
(v)LaF/MgF/Al
(vi)LaF/MgF/Al/SiO
(vii)LaF/MgF/LaF/MgF
(viii)LaF/MgF/LaF/SiO
(ix)LaF/MgF/LaF/MgF/SiO、及び
(x)LaF/MgF/LaF/Al/SiO
からなる群から選択される層構成を有している、請求項42に記載の露光装置。
【請求項45】
前記第1の溶解防止部材は、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる膜を備えている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項46】
前記多層膜は、乾式成膜方法によって成膜された第1の膜と、湿式成膜方法によって成膜された酸化物からなる第2の膜とを備えている、請求項42に記載の露光装置。
【請求項47】
前記第1の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能と、前記露光ビームが反射されるのを防止する反射防止機能とを有する薄板により構成されており、前記薄板が前記光学素子の表面に取り外し可能に接合されている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項48】
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に形成された第2の溶解防止部材を更に備えている、請求項40に記載の露光装置。
【請求項49】
前記第1の溶解防止部材と前記第2の溶解防止部材とが、同一の材料を用いて成膜された膜を備えている、請求項48に記載の露光装置。
【請求項50】
前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子を前記液体から保護する保護機能を有する金属製溶解防止膜を備えている、請求項48に記載の露光装置。
【請求項51】
前記第2の溶解防止部材は、前記光学素子の側面と前記金属製溶解防止膜との間に成膜された密着力強化膜を更に備えている、請求項50に記載の露光装置。
【請求項52】
前記第2の溶解防止部材は、前記金属製溶解防止膜の表面に成膜された金属製溶解防止膜保護膜を更に備えている、請求項50に記載の露光装置。
【請求項53】
前記金属製溶解防止膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項50に記載の露光装置。
【請求項54】
前記金属製溶解防止膜保護膜は、SiO、Y、Nd、Cr、Ta、Nb、TiO、ZrO、HfO及びLaからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項52に記載の露光装置。
【請求項55】
前記第2の溶解防止部材は、遮光膜を備えている、請求項48に記載の露光装置。
【請求項56】
前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、請求項55に記載の露光装置。
【請求項57】
前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項56に記載の露光装置。
【請求項58】
前記光学素子の表面に前記第1の溶解防止部材を介してオプティカルコンタクトで接合されている光学部材を更に備える、請求項40に記載の露光装置。
【請求項59】
前記露光ビームはArFレーザ光であり、前記光学素子は螢石により形成されている素子であり、前記光学素子の前記表面の結晶方位が(111)面である、請求項40に記載の露光装置。
【請求項60】
露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写するための露光装置であって、前記基板の表面と前記投影光学系との間に所定の液体を介在させた前記露光装置において、
前記投影光学系の前記基板側の透過光学素子の側面に形成されている遮光膜を備えている露光装置。
【請求項61】
前記遮光膜は、金属膜又は金属酸化物膜により形成されている、請求項60に記載の露光装置。
【請求項62】
前記金属膜は、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されており、前記金属酸化物膜は、ZrO、HfO、TiO、Ta、SiO及びCrからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、請求項61に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【国際公開番号】WO2005/020298
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513361(P2005−513361)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012296
【国際出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】