説明

光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物

【課題】従来のエポキシ樹脂硬化物の耐熱性及び脆さの問題を解決し、耐熱性、耐光性、吸湿性、密着性、無色透明性に優れると共に十分な強度を有する硬化物を与えることができ、特に短波長の光を発するLEDの封止材として有用な光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分;脂環式エポキシ樹脂、(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂、及び、(C)成分;酸無水物、酸無水物の変性物、及びカチオン重合開始剤から選ばれる1種又は2種以上の硬化剤を含有し、(A)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して99〜50質量%であり、(B)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して1〜50質量%である光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式エポキシ樹脂と、ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂と、硬化剤とが配合された発光素子封止材用のエポキシ樹脂組成物に関するものである。
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の硬化物は、耐熱性、耐光性、密着性、透明性に優れる上に、脆性の問題もないため、LED、CCDのような光半導体関連の用途、特に短波長の光を発するLEDの封止材として有用である。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で使用されている。常温又は加熱硬化型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノ−ルAのジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルFのジグリシジルエ−テル、フェノ−ル又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が一般的である。
【0003】
近年、種々の表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等に実用化されている光半導体(LED)等の発光装置の多くは、樹脂封止によって製造されている。ここに使用されている封止用の樹脂は、上記の芳香族エポキシ樹脂と、硬化剤として脂環式酸無水物を含有するものが一般的である。
【0004】
一方で、今日のLEDの飛躍的な進歩により、LED素子の高出力化及び短波長化が急速に現実のものとなりつつあり、特に周期表第III族の窒化物半導体を用いたLEDは、短波長でかつ高出力な発光が可能となる。
しかしながら、窒化物半導体を用いたLED素子を、上述の芳香族エポキシ樹脂で封止すると、エポキシ樹脂の芳香環が短波長の光を吸収するため、経時的に封止した樹脂の劣化が起こり、黄変により発光輝度が顕著に低下するという問題が発生する。
【0005】
そこで、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに代表される、環状オレフィンを酸化して得られる脂環式エポキシ樹脂を用いて封止したLEDが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
しかし、上述の脂環式エポキシ樹脂で封止した硬化樹脂は非常に脆く、冷熱サイクルによって亀裂破壊を生じ易く、耐湿性も極端に悪いため、長時間の信頼特性が要求される用途には不向きであった。
【0006】
そこで、環状オレフィンを酸化して得られる脂環式エポキシ樹脂と、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代表される水素化エポキシ樹脂を用いて封止したLEDが提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
しかし、上述の環状オレフィンを酸化して得られる脂環式エポキシ樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂を水素化してなる脂環式エポキシ樹脂とを併用した硬化樹脂では耐湿性は改善されるが、脆さの改善効果は不十分であり、冷熱サイクルによって発生する亀裂破壊を抑える点では不十分であった。
【0007】
このようなことから、無色透明の硬化物が得られ、かつ耐湿性及び密着性に優れ、エポキシ硬化物の脆さを改善するLED封止材の根本的問題の解決方法が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−213997号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2000−143939号公報
【特許文献4】特開平11−199645号公報
【特許文献5】特開2001−19742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のエポキシ硬化物の耐熱性及び脆さの問題点を解決し、耐熱性、耐湿性、耐光性、密着性、無色透明性に優れると共に、十分な強度を有する硬化物を与えることができ、特に短波長の光を発するLEDの封止材として有用な光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、脂環式エポキシ樹脂と、ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂と、特定の硬化剤とを配合したエポキシ樹脂組成物により、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
【0011】
[1] 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、(A)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して99〜50質量%であり、(B)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して1〜50質量%であることを特徴とする光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
(A)成分;脂環式エポキシ樹脂
(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂
(C)成分;酸無水物、酸無水物の変性物、及びカチオン重合開始剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の硬化剤。
【0012】
[2] (A)成分の脂環式エポキシ樹脂が、環状オレフィンをエポキシ化して得られるエポキシ樹脂、及び芳香族エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂よりなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂であることを特徴とする[1]に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0013】
[3] (A)成分の脂環式エポキシ樹脂が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂、及びビフェノール型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[2]に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0014】
[4] (B)成分のポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0015】
[5] (C)成分の硬化剤が、無水ヘキサヒドロフタル酸及びそのグリコール変性物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸及びそのグリコール変性物、並びにオニウム塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0016】
[6] 更に、下記(D)成分及び/又は(E)成分を、全エポキシ樹脂成分に対してそれぞれ0.01〜10質量%含有することを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
(D)成分;フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤
(E)成分;紫外線吸収剤
【0017】
[7] 光学素子が、波長350〜550nmに主発光ピークを有する発光素子であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0018】
[8] 光学素子が発光ダイオード(LED)であることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【0019】
[9] [1]ないし[8]のいずれかに記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の硬化物は、耐熱性、耐湿性、密着性に優れると共に、十分な強度を有し、また、耐光性も優れるため、短波長の光を放出するIII族窒化物系化合物半導体を用いたLED等の光学素子の封止材用エポキシ樹脂組成物として工業的に有利に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
[封止材用エポキシ樹脂組成物]
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、(A)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して99〜50質量%であり、(B)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して1〜50質量%であることを特徴とする。本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物はまた、更に、下記(D)成分及び/又は(E)成分を、全エポキシ樹脂成分に対してそれぞれ0.01〜10質量%含有することが好ましい。
(A)成分;脂環式エポキシ樹脂
(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂
(C)成分;酸無水物、酸無水物の変性物、及びカチオン重合開始剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の硬化剤。
(D)成分;フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤
(E)成分;紫外線吸収剤
以下に各成分について説明する。
【0023】
{A成分:脂環式エポキシ樹脂}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の(A)成分の脂環式エポキシ樹脂としては、環状オレフィンをエポキシ化して得られるエポキシ樹脂、及び芳香族エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂から選ばれるものが好ましい。
【0024】
環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−ビニルシクロヘキセン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、オリゴマー型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社商品名;エポリードGT300、エポリードGT400、EHPE−3150)等が挙げられる。これらの中で、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく、この脂環式エポキシ樹脂を配合すると、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させることができ、作業性を向上することができる。
【0025】
また、芳香族エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3、3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂の芳香環を水添した水素化エポキシ樹脂が、高水添率のエポキシ樹脂が得られるという点で特に好ましい。
【0026】
このような芳香族エポキシ樹脂を水素化して得られる水素化エポキシ樹脂の水素化率は90〜100%の範囲が好ましく、95〜100%の範囲が更に好ましい。水素化率が90%未満であると、窒化物半導体のLEDを封止した時、短波長の光を吸収し、経時的に樹脂の劣化が起こり、黄変により発光輝度が顕著に低下するため好ましくない。この水素化率は分光光度計を用い、吸光度の変化(波長;275nm)を求めることにより測定できる。
【0027】
上述のような水素化エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂を触媒の存在下、公知の方法で選択的に芳香環を水素化することにより製造することができる。より好ましい製造方法の例としては、芳香族エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解し、ロジウム又はルテニウムをグラファイトに担持した触媒の存在下、芳香環を選択的に水素化する方法が挙げられる。触媒担体のグラファイトとしては、表面積が10〜400m2/gの範囲のものを用いることが好ましい。反応は、通常、圧力1〜30MPa、温度30〜150℃、時間0.5〜20時間の範囲内で行う。反応終了後、触媒等を濾過により除去し、有機溶剤を減圧で実質的に無くなるまで留去して、水素化エポキシ樹脂を得ることができる。
【0028】
上述の脂環式エポキシ樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
なお、(A)成分の脂環式エポキシ樹脂の全塩素含有量は、0.3質量%以下が好ましい。全塩素含有量が0.3質量%を超えると、耐湿性、高温電気特性及び耐光性の低下、被封止物の金属材料の腐食が発生してしまうため、好ましくない。
なお、本明細書において、「全塩素」とは、エポキシ樹脂中に含まれる全ての塩素をさす。
【0030】
また、(A)成分の脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量(WPE)は、100〜4000g/当量が好ましい。エポキシ当量が4000g/当量を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、取り扱いが困難になるため好ましくない。エポキシ当量が100g/当量未満では、エポキシ樹脂の分子量が小さくなりすぎ、エポキシ硬化時にエポキシ樹脂が蒸発してしまうため、好ましくない。
【0031】
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物中の(A)成分;脂環式エポキシ樹脂の配合割合は全エポキシ樹脂成分に対し、99〜50質量%であり、好ましくは98〜70質量%、より好ましくは97〜80質量%である。脂環式エポキシ樹脂の配合割合が多すぎるとエポキシ硬化物の脆さの改善効果が十分に得られなくなり、少なすぎると耐熱劣化性が著しく低下するため好ましくない。
【0032】
耐熱性、密着性等の物性バランスを取るため、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の(A)成分として、芳香族エポキシ樹脂を水素化したエポキシ樹脂と環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂とを併用する場合の配合割合は、
(A)成分を100質量%として
芳香族エポキシ樹脂を水素化したエポキシ樹脂:5〜95質量%
環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂:95〜5質量%
とするのが好ましい。
芳香族エポキシ樹脂を水素化したエポキシ樹脂が多すぎると耐熱性に劣り、環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂が多すぎると密着性や可撓性に劣るものとなる。
【0033】
{(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の(B)成分のポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類の単独、及び/又は2種類以上を重合して得られる数平均分子量が200〜2000、好ましくは250〜1500の範囲のポリエーテルグリコールとエピクロルヒドリンを反応させることにより得られたものであることが好ましい。ポリエーテルグリコールの数平均分子量が200未満であるとエポキシ硬化物の可撓性が低下し、2000を超えると得られるエポキシ樹脂が固体となり取り扱い性が悪くなるため好ましくない。
【0034】
このポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂は、三弗化ホウ素エチルエーテル、四塩化錫等の酸性触媒、又は第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、クラウンエーテル類等の相間移動触媒の存在下に、ポリエーテルグリコールをエピクロヒドリン及び水酸化ナトリム等のアルカリ化合物と反応させる定法に従って製造することができる。
具体的には、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとエピクロルヒドリンを、硫酸、三弗化ホウ素エチルエーテル、四塩化錫等の酸性触媒、又は第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、クラウンエーテル類等の相間移動触媒の存在下に反応させ、クロルヒドリンエーテル体を製造し、次いで、このクロルヒドリンエーテル体を水酸化ナトリウム等の脱ハロゲン化水素剤と反応させて閉環せしめる2段階法により、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのエポキシ樹脂を得ることができる。
【0035】
このような(B)成分のポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0036】
なお、(B)成分のエポキシ樹脂は、全塩素の含有量が0.01〜0.6質量%であることが好ましい。全塩素含有量が0.6質量%を超えると、被封止物において、アルミ等の金属材料の腐食が発生してしまうため好ましくない。また、耐光性を要求される用途に用いた場合、エポキシ樹脂硬化層が着色(劣化)してしまうため好ましくない。全塩素含有量を0.01質量%未満に低減することは全塩素含有量低減の効果がこれ以上余り期待できない上に、特殊な低減工程を要するために経済的でない。
【0037】
また、(B)成分のポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂のエポキシ当量(WPE)は、100〜1000g/当量が好ましい。エポキシ当量が1000g/当量を超えると、得られるエポキシ樹脂が固形となり、取り扱いが悪くなるため好ましくない。エポキシ当量が100g/当量未満では硬化物の可撓性が低下する。
【0038】
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物中の(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂成分に対し、1〜50質量%であり、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%である。ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂の配合割合が多すぎると耐熱劣化性が著しく低下し、少なすぎるとエポキシ硬化物の脆さの改善効果が十分に得られない。
【0039】
{他のエポキシ樹脂}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)成分及び(B)成分以外の他のエポキシ樹脂を併用して使用することができる。併用できる他のエポキシ樹脂の例として、例えば次のものが挙げられる。
【0040】
(1) 芳香環及び/又は脂環構造を有する2官能型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、テルペンジフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂
【0041】
(2) 多官能型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、石油系重質油又はピッチ類とホルムアルデヒド重合物とフェノール類とを酸触媒の存在下に重縮合させた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂
【0042】
(3) その他の構造のエポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミンなどの種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸などの種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、本発明のグリシジル化合物以外の脂肪族モノアルコール又は多価アルコールのグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル、モノフェノール類のグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂用反応性希釈剤、或いは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ樹脂
【0043】
これらのエポキシ樹脂の中でも、一分子中に芳香環及び/又は脂環構造を1個以上有するグリシジルエーテル基を2個有する2官能型エポキシ樹脂が、本発明で用いる(A)成分及び(B)成分との相溶性に優れるため作業性の面で特に好ましい。
【0044】
上述のその他のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0045】
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物中の(A)成分及び(B)成分以外のその他のエポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂成分に対して、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。その他のエポキシ樹脂の配合割合が多すぎると本発明の効果が十分に得られない。
【0046】
{(C)成分;硬化剤}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物で用いる(C)成分;硬化剤は、酸無水物、酸無水物の変性物、及びカチオン重合開始剤よりなる群から選ばれる。
【0047】
<酸無水物>
本発明の発光素子封止材用エポキシ樹脂組成物中における硬化剤としての酸無水物は、分子中に炭素−炭素の二重結合を持たない酸無水物が好ましく、具体的には、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、水添無水ナジック酸、水添無水メチルナジック酸、水添無水トリアルキルヘキサヒドロフタル酸、無水2,4−ジエチルグルタル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。これらの中で、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が耐熱性に優れ、無色の硬化物が得られる点で特に好ましい。
【0048】
硬化剤として酸無水物のみを用いる場合、酸無水物の配合割合は、光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分のエポキシ当量により異なるが、好ましくは全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、40〜200質量部の範囲内で配合される。
【0049】
<酸無水物の変性物>
本発明の発光素子封止材用エポキシ樹脂組成物中における酸無水物の変性物とは、上述の酸無水物、好ましくは無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸をグリコール等で変性したものである。
変性に用いることのできるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコール類を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0050】
変性量は酸無水物1モルに対してグリコール0.4モル以下が好ましい。変性量が多くなると、組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなってしまったり、エポキシ樹脂との反応性が低下し、硬化が遅くなり、素子を封止する時の生産性が悪くなってしまうため好ましくない。
【0051】
硬化剤として酸無水物の変性物のみを用いる場合、酸無水物の変性物の配合割合は、光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分のエポキシ当量により異なるが、好ましくは全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、40〜200質量部の範囲内で配合される。
【0052】
<カチオン重合開始剤>
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物中の硬化剤としてのカチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する活性エネルギー線カチオン重合開始剤、或いは熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0053】
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロ硼素錯塩及び三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されたようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されたようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されたような周期表第VIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されたような周期表第Va族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されたような周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されたようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されたようなMF6陰イオン(ここでMは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形の周期表第VIb元素;米国特許第4231951号に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)、ポリマー・ケミストリー(Polymer Chemistry)版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されたようなビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)等が挙げられる。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩及びシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。
【0054】
好ましい陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びに周期表第II族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990及びUVR−6974(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック(General Electric)社)、KI−85(デグッサ(Degussa)社)、SP−150及びSP−170(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)として商品として入手できる。
【0055】
熱カチオン重合開始剤としては、トリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素等のようなカチオン系又はプロトン酸触媒を用いることができる。好ましい熱カチオン重合開始剤としては、トリフル酸塩であり、例としては、3M社からFC−520として入手できるトリフル酸ジエチルアンモニウム、トリフル酸トリエチルアンモニウム、トリフル酸ジイソプロピルアンモニウム、トリフル酸エチルジイソプロピルアンモニウム等(これらの多くはR.R.Almによって1980年10月発行のモダン・コーティングス(Modern Coatings)に記載されている)がある。また一方、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。例としては、サンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)がある。
【0056】
これらの光及び熱カチオン重合開始剤の中で、オニウム塩が、取り扱い性及び潜在性と硬化性のバランスに優れるという点で好ましく、その中で、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩が取り扱い性及び潜在性のバランスに優れるという点で特に好ましい。
【0057】
これらのカチオン重合開始剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0058】
硬化剤としてカチオン重合開始剤のみを用いる場合、カチオン重合開始剤の配合割合は、光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分のエポキシ当量により異なるが、全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.05〜5質量部の範囲内で配合される。
上記範囲を外れると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなるため好ましくない。
【0059】
{硬化促進剤}
硬化剤として酸無水物及び/又は酸無水物の変性物を用いる場合、本発明の発光素子封止材用エポキシ樹脂組成物中には、エポキシ樹脂と酸無水物及び/又はその変性物との硬化反応を促進する目的で、硬化促進剤を使用することができる。
【0060】
硬化促進剤の例としては、3級アミン類及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、有機ホスフィン化合物類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の有機酸金属塩類が挙げられ、特に好ましい硬化促進剤は、有機ホスフィン化合物類である。
【0061】
硬化促進剤の配合割合は、硬化剤として配合した酸無水物及び/又はその変性物100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部の範囲内である。上記範囲を外れると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなるため好ましくない。
【0062】
{(D)成分;酸化防止剤}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物には、(D)成分;酸化防止剤を配合して、加熱時の酸化劣化を防止し、着色の少ない硬化物とすることが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤を使用することができ、具体的には、以下のような酸化防止剤が挙げられる。
【0063】
(フェノール系酸化防止剤)
モノフェノール類;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等
ビスフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等
高分子型フェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジンー2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等。
【0064】
(硫黄系酸化防止剤)
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等
【0065】
(リン系酸化防止剤)
ホスファイト類;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等
オキサホスファフェナントレンオキサイド類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等
【0066】
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良いが、フェノール系/硫黄系の組み合わせ、或いはフェノール系/リン系の組み合わせで使用することが特に好ましい。
【0067】
これらの酸化防止剤の配合割合は、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分に対して0.01〜10質量%とすることが好ましい。酸化防止剤の配合量が少な過ぎると十分な添加効果を得ることができず、多過ぎると硬化後の物性、特に耐紫外線劣化性が低下するため、好ましくない。
【0068】
{(E)成分;紫外線吸収剤}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物にはまた、(E)成分;紫外線吸収剤を配合して、更に耐光性を向上させることもできる。
紫外線吸収剤としては、一般のプラスチック用紫外線吸収剤を使用することができ、例としては次のものが挙げられる。
【0069】
フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2’−ヒドロキシ−3’、3’’、4’’、5’’、6’ ’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等のヒンダートアミン類
【0070】
これらの紫外線吸収剤の配合割合は、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分に対して0.01〜10質量%とすることが好ましい。酸化防止剤の配合量が少な過ぎると十分な添加効果を得ることができず、多過ぎると硬化後の物性、特に耐熱劣化性が低下するため、好ましくない。
【0071】
{その他の添加剤}
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じてその他の添加剤を、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の特性を損なわない程度に適宜に配合することができる。
その他の添加剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0072】
(i) 粉末状の補強剤や充填剤
例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、ガラスビーズ等の透明フィラー、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等
これらの補強剤や充填剤は、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物の透明性を損なわない範囲で配合され、通常本発明のエポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、100質量部以下が適当である。
【0073】
(ii) 着色剤又は顔料
例えば二酸化チタン、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤及び有機色素等
(iii) 難燃剤
例えば、三酸化アンチモン、ブロム化合物及びリン化合物等
(iv) イオン吸着体
(v) カップリング剤
これら(ii)〜(v)の成分は、通常、本発明のエポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、各々0.01〜30質量部配合される。
【0074】
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物には、エポキシ硬化物の特性を改善する目的で、更に種々の硬化性モノマ−、オリゴマ−及び合成樹脂を配合することができる。
このような特性改善のための化合物や樹脂類としては、例えば、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂用希釈剤、ジオール又はトリオール類、ビニルエーテル類、オキセタン化合物、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコ−ン樹脂等の1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
これらの化合物及び樹脂類の配合割合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわち本発明のエポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、50質量部以下が好ましい。
【0075】
[硬化体]
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させて得られる硬化体は、耐熱性、耐光性、密着性、透明性に優れる上に、脆性の問題もなく、十分な強度を有するため、LED、CCDのような光半導体関連の用途、特に短波長の光を発するLEDの封止材として有用である。
【0076】
[発光素子]
本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物は、耐光性に優れることにより、ピーク波長が350〜550nmの比較的短い波長の光を発光する発光素子の封止に有効である。
【0077】
このような発光素子としては、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)により形成された周期表第III族窒化物系化合物半導体が挙げられ、一般式としてAlXGaYIn1-X-YN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦X+Y≦1)で表され、AlX、GaN及びInNのいわゆる2元系、AlXGa1-XN、AlXIn1-XN及びGaXIn1-XN(以上において0≦X≦1)のいわゆる3元系を包含する。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0078】
[封止方法]
封止の一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられるが、射出成形、圧縮成形、注型、ポッティング、キャスティング、スクリーン印刷等により封止することもできる。成形時および/または成形後の硬化条件は、エポキシ樹脂組成物の各成分の種類や、配合量により異なるが、通常、硬化温度は50〜200℃、硬化時間は1分〜10時間が好ましい。
【実施例】
【0079】
以下に、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0080】
なお、以下において、各種の評価方法は次の通りである。
【0081】
〈全塩素含有量の測定方法〉
エポキシ樹脂の全塩素含有量は、サンプル0.1gをトルエン12.5ml/ジメチルセロソルブ12.5mlの混合溶媒へ溶解し、ビフェニルナトリウム4mlを添加し、室温で2分間攪拌した後、0.01Nの硝酸銀溶液で滴定することにより求めた。
【0082】
〈ガラス転位点Tg〉
TMA法(5℃/分で昇温)により測定した。
【0083】
〈耐紫外線劣化性(色差測定)〉
エポキシ硬化物に、メタリイングバーチカルウェザーメーター(スガ試験機社製)を使用して、照射強度0.4kW/m、ブラックパネル温度63℃の条件で72時間紫外線照射した後、メタリイングバーチカルウェザーメーターから取り出し、エポキシ硬化物を室温に冷却後、色差計を用いて色差YI値(Yellowness Index)を測定した。この値が小さい程、耐紫外線劣化性に優れる。
【0084】
〈耐熱劣化性(色差測定)〉
エポキシ硬化物を、オーブン中に150℃で100時間放置した後、オーブンから取り出し、エポキシ硬化物を室温に冷却後、色差計を用いて色差YI値(Yellowness Index)を測定した。この値が小さい程、耐熱劣化性に優れる。
【0085】
〈アイゾット衝撃強度〉
JIS−K−6911に従って測定した。
【0086】
〈引張剪断接着強度〉
JIS−K−6850に従って、鉄−鉄の引張剪断接着強度を測定した。
【0087】
〈吸湿率〉
硬化試験片(直径50mm、厚さ3mmの円盤)を121℃、100%RHに24時間放置した後の吸湿率であり、下記式で算出される。
吸湿率={(121℃、100%RHの恒温恒湿槽に24時間後の試験片の質量
−処理前の試験片の質量)/処理前の試験片の質量}×100
【0088】
[製造例1]
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した数平均分子量が650のポリテトラメチレンエーテルグリコール (三菱化学社 商品名:PTMG#650)162.5gと三弗化ホウ素エチルエーテル1.046gを仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならないように1時間かけてエピクロルヒドリン50.9g(ジオールの水酸基1当量あたり1.1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。ここへ48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液170.5gを加え、70℃に加熱して4時間激しく攪拌した。60℃まで冷却して、メチルイソブチルケトンを208.75g加えて溶解し、水150gを加えて水洗し、水相を分離することにより生成した塩を除去した。この水洗操作を3回繰り返した後、有機層を分離し、常圧で150℃まで昇温してメチルイソブチルケトンを溜去し、さらに減圧下に150℃で30分脱溶媒を行うことによって、無色透明のポリテトラメチレンエーテルグリコールから得られたエポキシ樹脂200gを得た。
このものの分析値はエポキシ当量(WPE)437g/当量であり、全塩素含有量は2.0質量%であった。
【0089】
[製造例2]
攪拌機、滴下ロート、温度計及びコンデンサー付き分離機を備えた1L容ガラス製フラスコに、数平均分子量が650のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学社 商品名:PTMG#650)292g、エピクロルヒドリン416g(ポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基1当量に対し5モル)、及びテトラメチルアンモニウムクロライド10gを仕込み、攪拌しながら絶対圧5.3kPaまで減圧にし、70℃のオイルバスで40℃まで加熱した。そこに48質量%水酸化ナトリウム150gを4時間かけて滴下した。滴下中、水とエピクロルヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離機にてエピクロルヒドリンは系内に循環し、水のみ反応系外へ留去した。滴下終了後、共沸脱水を継続しながら40℃に保ち、1.5時間熟成脱水を行った。その後、系内を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために水210gを添加した。40℃で5分間攪拌後、10分間静置した。水相を除去し、残った油相を絶対圧4kPa、温度135℃まで加熱して未反応のエピクロルヒドリンを除去し、一旦常圧に戻し、系内に15gの水を添加し、再び絶対圧4kPa、温度135℃まで加熱して、エピクロルヒドリンと水を減圧蒸留除去した。析出した微量の塩を濾過により除去し、目的としたポリテチラメチレンエーテルグリコールのエポキシ化合物285gが得られた。
このものの分析値は、エポキシ当量(WPE)420g/当量であり、全塩素含有量は0.6質量%であった。
【0090】
[製造例3]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた1L容ガラス製フラスコに、酸無水物硬化剤 リカシッドMH−700(新日本理化社商品名;無水メチルヘキサヒドロフタル酸)165gと、エチレングリコール12.4gを仕込み(無水メチルヘキサヒドロフタル酸1モルに対して0.2モル)、攪拌しながら130℃まで加熱し、液温が130℃に到達してから2時間保持し反応させ、無水メチルヘキサヒドロフタル酸のグリコール変性物220gを得た。このものの分析値は、25℃における粘度が380mPa.sであった。
【0091】
[実施例1]
水素化芳香族エポキシ樹脂としてYX8000(ジャパンエポキシレジン社商品名;ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水添したエポキシ樹脂。水素化率;約100%、エポキシ当量;205g/当量)55g、脂環式エポキシ樹脂として171D(ジャパンエポキシレジン社商品名;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)40g、製造例1で得られたポリエーテルグリコールから得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量;437g/当量,25℃における粘度;193mPa.s)5g、酸無水物硬化剤としてリカシッドMH−700(新日本理化社商品名;無水メチルヘキサヒドロフタル酸)90gを温度80℃で均一になるまで混合した後、硬化促進剤としてヒシコーリンPX−4MP(日本化学工業社商品名;メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート)0.5gを添加し、攪拌、溶解してエポキシ樹脂組成物を得た。
この組成物を減圧下で脱泡した後、型の中に流し込み、オーブン中にて100℃で3時間、次いで、140℃で3時間加熱して硬化物を得た。
このエポキシ硬化物の評価結果を表1に示す。
【0092】
実施例2〜5及び比較例1〜3
エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を表1に示すように変える以外は、実施例1と同様の操作を行って、エポキシ硬化物を得た。
得られたエポキシ硬化物の評価結果を表1に示す。
【0093】
なお、表中、用いた成分の詳細は次の通りである。
水素化芳香族エポキシ樹脂YX8034;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量290g/当量、全塩素含有量0.14質量%(ジャパンエポキシレジン社製)
水素化芳香族エポキシ樹脂YL7170;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1200g/当量、全塩素含有量0.07質量%(ジャパンエポキシレジン社製)
水素化芳香族エポキシ樹脂YX8000;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量205g/当量、全塩素含有量0.15質量%(ジャパンエポキシレジン社製)
芳香族エポキシ樹脂jER828;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/当量(ジャパンエポキシレジン社製)
環状オレフィンを水素化して得られるエポキシ樹脂171D;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量130g/当量、全塩素含有量0.01質量%以下(ジャパンエポキシレジン社製)
酸無水物MH−700;無水メチルヘキサヒドロフタル酸(新日本理化社製)
カチオン重合開始剤SI−100L;芳香族スルホニウム塩(三新化学社製)
硬化促進剤PX−4MP;メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(日本化学工業社製)
紫外線吸収剤HMB;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
酸化防止剤BHT;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0094】
【表1】

【0095】
表1より、本発明の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物は、耐光性、耐熱性、溶着性、耐湿性、耐衝撃性にバランス良く優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、(A)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して99〜50質量%であり、(B)成分の含有量が全エポキシ樹脂成分に対して1〜50質量%であることを特徴とする光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
(A)成分;脂環式エポキシ樹脂
(B)成分;ポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂
(C)成分;酸無水物、酸無水物の変性物、及びカチオン重合開始剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の硬化剤。
【請求項2】
(A)成分の脂環式エポキシ樹脂が、環状オレフィンをエポキシ化して得られるエポキシ樹脂、及び芳香族エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂よりなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分の脂環式エポキシ樹脂が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂、及びビフェノール型エポキシ樹脂を水素化して得られるエポキシ樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分のポリエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールから得られるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分の硬化剤が、無水ヘキサヒドロフタル酸及びそのグリコール変性物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸及びそのグリコール変性物、並びにオニウム塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に、下記(D)成分及び/又は(E)成分を、全エポキシ樹脂成分に対してそれぞれ0.01〜10質量%含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
(D)成分;フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤
(E)成分;紫外線吸収剤
【請求項7】
光学素子が、波長350〜550nmに主発光ピークを有する発光素子であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
光学素子が発光ダイオード(LED)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに1項に記載の光学素子封止材用エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化体。

【公開番号】特開2012−132028(P2012−132028A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88338(P2012−88338)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2007−178613(P2007−178613)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】