説明

光学素子測定用治具、並びに、光学素子の面形状測定装置及び方法

【課題】 光学素子を確実に固定することによって高精度の形状測定を可能にし、好ましくは、光学素子を表裏の両面から計測することができる光学素子測定用治具を提供すること。
【解決手段】 この光学素子測定用治具10において、3つの球面部30と、3つの当接部材50A,50B,50Cとは、光学素子OEの外縁部PAに沿って等間隔で互い違いに配置されている。この結果、球面部30と当接部材50A,50B,50Cとの干渉を防止しつつ両者を効率的に配置でき、基板20上に光学素子OEを安定した状態で固定することができる。つまり、球面部30や光学素子OEの光学面の計測を確実に行うことができ、その作業性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の面形状を測定する際に用いる光学素子測定用治具に関し、かかる光学素子測定用治具を利用しての光学素子の面形状測定装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学素子の3次元的な表面形状を高精度に測定するための技術として、ワークに触針を接触させて、その変位量を測定する接触式測定法がある。
【0003】
この種の接触式測定法おいては、光学素子の表面形状を測定するばかりでなく、光学素子の外形基準に対する光学面の位置ずれ、すなわち偏芯を測定することが必要となる場合がある。このような偏心の測定を可能にするものとして、例えば、治具上に位置決め治具を配置して光学素子の位置決めを行なうことにより外形を基準とする光軸ずれを測定する形状測定装置が開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、偏心の測定を行うものではないが、表面形状を測定に際して光学素子を固定するため、光学素子の側面に当接する複数の半球状の突起を設けた突き当てジグと、突起の反対側の角部分に当接して角部分を押圧するプランジャとを備える形状測定装置も開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−71344号公報
【特許文献2】特開平11−173835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、円柱状の位置決め治具を使用する前者の形状測定装置では、位置決め治具が治具ホルダ上に固定的に取り付けられているだけであり、位置決め治具が安定して外形に接触せず、計測中に光学素子が移動して測定精度が低下する可能性がある。また、円柱状の位置決め治具の先端が光学素子の上方に配置されるので、光学素子の表面に触針を近接させる際の妨げになりやすい。また、円柱状の位置決め治具によって光学素子の横方向の移動を制限するだけであるので、治具を反転して測定しようとした場合、光学素子が脱落して測定ができなくなると考えられる。
【0006】
また、突き当てジグ等を使用する後者の形状測定装置では、突起やプランジャの点接触によって光学素子を固定するので、光学素子の固定が不確実となる。また、光学素子を表裏の両面から計測することは不可能である。
【0007】
そこで、本発明は、光学素子を確実に固定することによって高精度の形状測定を可能にし、好ましくは、プリンタ用光学系、光ピックアップ装置用光学系等で用いられる光学素子を計測することができる光学素子測定用治具を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記のような光学素子測定用治具を用いた光学素子の面形状測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の光学素子測定用治具は、測定対象となる光学素子を載置する、第1面と該第1面の裏面に相当する第2面とを有する基板と、基板に固定され、載置される光学素子側面部に対して当接する当接部を有する支持手段とを有する。そして、支持手段は、光学素子周囲に複数設けられるとともに、支持手段の当接部は、光学素子側面部に密着して当接可能な弾性材料で構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記光学素子測定用治具では、光学素子を基板上に載置した後、複数の支持手段によって光学素子を周囲から固定することができる。この際、支持手段は、支持手段の当接部が光学素子側面部に密着して当接可能な弾性材料で構成されているので、当接部での面接触による比較的大きな摩擦によって光学素子を確実に固定することができる。また、光軸方向での光学素子の支持が不要となり、形状測定時に光学素子の表面に対して接触走査する領域を広く取ることが可能となる。よって、各種形状を有する光学素子について高精度で形状測定等を行うことができる。
【0011】
本発明の具体的な態様又は観点では、弾性材料がゴム系の材料を主成分として構成されている。この場合、光学素子側面部に対する当接部の密着性を簡易に高めることができ、光学素子の安定した支持が可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、支持手段の当接部が、光学素子の光軸方向からみた外形輪郭に沿った形状を有する。この場合、当接部と光学素子の外形との密着度を高めて、基板上における光学素子の固定をより確実なものとすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、光学素子の光軸方向からみた外形輪郭が円形であり、複数の支持手段の各当接部が円弧状の当接面を有する。ここで、円形とは、真円に限らず楕円等を含む。この場合、円形輪郭の光学素子を確実に固定することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、光学素子の光軸方向からみた外形輪郭は矩形であり、複数の支持手段の各当接部が、直線状の当接面を有し、光学素子の対向する少なくとも1組の辺に沿って配置可能である。ここで、略矩形とは、正方形や長方形に限らず、角が丸まった形状を含む。この場合、矩形輪郭の光学素子を辺の部分で確実に固定することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、光学素子の光軸方向からみた外形輪郭は矩形であり、複数の支持手段の各当接部が、矩形の頂点を含んで当接できるようL字形状の当接面を有し、光学素子の少なくとも2箇所の頂点に配置可能である。この場合も、矩形輪郭の光学素子を角の部分で確実に固定することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、基板に一部が支持され、既知の球面形状を有する球面部を光学素子の側面部に光軸と垂直な方向から当接可能に備える外形基準検知手段を複数有する。そして、外形基準検知手段は、当接した球面部を測定することにより光学素子の外形基準が把握できるよう基板の複数位置に配置され、複数の外形基準検知手段の内の少なくとも一つは、光学素子を押圧するような付勢力を以って当接可能に構成されている。なお、「光軸と垂直な方向から当接」とは、実施形態に示されるような光学素子のフランジに相当する外縁部のような平坦面は勿論のこと、多少の光軸と垂直な面から傾きを持って形成された面に対する当接を意味し、要は実質的に光軸方向への押圧力が最大又はこれに準じて効率的となるような面に当接するだけでよい。この場合、光学素子の側面部に対して外形基準検知手段の球面部を安定して保持又は配置することができ、光学素子の外縁部から精度よく外形基準、すなわち光学素子の中心を定めることができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、複数の外形基準検知手段の内、光学素子を押圧するような付勢力を以って当接する外形基準検知手段が、基板に支持された支持部と球面部との間に弾性部材を有するとともに、弾性部材と球面部との間であって弾性部材による光学素子に対する付勢力を調整可能な調整手段を有する。この場合、外縁部の輪郭のサイズや形状が異なる光学素子の計測も高精度で行うことができる。なお、「弾性部材と球面部との間」の調整手段とは、実施形態に示されるようなバネ端部に調整手段を設ける場合の他、バネの一部の固定箇所を変えることで弾性力による付勢力を調整する調整手段であってもよい。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、外形基準検知手段と支持手段とが光学素子と当接する位置が、光学素子の光軸方向から見て互いに異なる位置に交互に配置されるよう構成した。この場合、外形基準検知手段と支持手段とがともに外周を略均等に分割した位置で外周の当接又は保持を行うことができるので、外形基準検知手段による計測を容易にしつつ、光学素子の固定を確実にすることができる。
【0019】
本発明に係る第2の光学素子測定用治具は、(a)形状測定対象としての光学素子の有効径外部の少なくとも一部に当接して当該光学素子を光軸方向に関して一方から支持可能な支持部と、(b)光学素子の有効径外部に対向する支持部に吸引口を有し、負圧によって光学素子を支持部側に吸着させる吸着装置とを備える。
【0020】
上記光学素子保持治具光学素子測定用治具では、吸着装置が負圧によって光学素子を支持部側に吸着させるので、光学素子を裏面側から確実に固定することができ、各種形状の光学素子について計測精度を高めることができる。
【0021】
また、本発明では、上述した様な光学素子測定用治具を備えた光学素子形状測定装置を提供できる。この場合、測定精度を高くし易い治具を用いて、精度の高い外形基準を測定できる測定装置を提供できる。
【0022】
また、上述した光学素子測定用治具を用いた光学素子形状測定方法により、精度の高い外形基準測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る光学素子測定用治具を図面を用いて説明する。図1(a)は、面形状測定用の光学素子測定用治具の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の光学素子測定用治具のAA矢視断面図である。また、図2(a)は、図1(a)に示す治具の中央部の部分拡大平面図であり、図2(b)は、図2(a)に対応する部分拡大断面図である。
【0024】
光学素子測定用治具10は、マイクロレンズ(光ピックアップの結像系や携帯カメラ用の撮像素子、主に外径が10mm以下の小型光学素子を意味する)等の光学素子OEを被測定対象として保持して不図示の面形状測定装置にセットするためのものであり、かかる面形状測定装置において、光学素子OEの光学面の形状を表側と裏側から計測できるようにするとともに、光学素子OEの偏芯を計測することができるようにしている。光学素子測定用治具10は、以上の目的で、以下に詳述する、基板20と、球面部30を有する外形基準検知手段40と、当接部材50A,50B,50Cと、付勢装置60と、球状被計測部材70とを備える。なお、各当接部材50A,50B,50Cとこれに対応する付勢装置60とは、光学素子OEを基板20上に固定するための挟持装置として機能する。
【0025】
基板20は、四角形の厚板上の外観を有し、第一面とその裏面に第二面を有している。中央には光学素子OEを載置するための円形ステージ21を有している。円形ステージ21は、中央に開口22を有しており、開口22の縁部分で光学素子OEの回転非対称な外縁部PAを支持する。これにより、円形ステージ21すなわち基板20上に支持された光学素子OEを図1(a)に示す表側と反対の裏側との両側から観察することができ、面形状測定装置(後述)に設けた計測用の触針を、図2(a)、2(b)に示す光学素子OEの両光学面OS1,OS2に下ろすことができる。なお、基板20は、外形基準検知手段40、付勢装置60、及び球状被計測部材70を、光学素子OEの保持位置の周囲の適所に支持する際の支持体としても機能する。
【0026】
球面部30は、基板20上に3つ配置された略同一形状の球体であり、後述する外形基準検知手段40の先端にそれぞれ固定されている。各球面部30は、既知の球面形状を有しており、図2に示すように、光学素子OEの有効径外部である外縁部PAの側面SFに当接する。各球面部30が外縁部PAの側面SFに当接する位置は、外縁部PAを3等分した均等な位置に対応しており、光学素子OEの中心から120°異なる3方向(光軸OAのまわりに等分割された方向)に配置されている。なおここでの等分した位置には、厳密に等分された位置だけでなく、ほぼ等分となる位置も含む。各球面部30は、外形基準検知手段40に付勢されて、光学素子OEの外縁部PAの側面に当接するとともに、外縁部PAの側面SFをこれに対して垂直な方向から適当な大きさの押圧力で押圧する。各球面部30に付与する押圧力は、光学素子OEの材料やサイズにも依存するが、光学素子OEの形状に歪みを与えない程度とするものとし、かつ、既知の球面形状を有する球面部30と外縁部PA側面とが十分に密着する程度とする。具体的には、この押圧力をF’(N)とするとき、0.01<F’<10程度となるようにする。このようにして、3つの球面部30を外縁部PAの適所に適度に密着させることにより、外縁部PAの中心を求めることができ、さらに、光学素子OEの光軸OAとの位置ずれ量である偏芯を算出することもできる。
【0027】
なおここで複数の外形基準検知手段における各球面部30は、全て付勢力を以って光学素子側面に押圧するよう当接するよう構成されている必要はなく、いずれか少なくとも一つがそのように当接するものであればよい。この場合、他の外形基準検知手段40は基板に対して固定的に配置されているものであってよい。
【0028】
外形基準検知手段40は、先端に球面部30を固定したロッド41と、ロッド41を軸方向に滑らかに移動させる摺動機構42と、ロッド41を先端側に付勢するバネ43aを内蔵するとともにバネ43aの根元位置を調節する付勢部材43とを備える。ロッド41は、図2(a)に示すように、円形ステージ21に刻設された溝21aに案内された状態で溝21aに沿って往復移動する。摺動機構42は、基板20上面に固設されたガイドであり、ロッド41の根元側が嵌合しており、ロッド41の軸方向に沿った滑らかな移動を可能にしている。付勢部材43は、基板20上面に着脱可能に取り付けられた機構であり、弾性部材であるバネ43aに付勢されて突出しようとするピン43bによって、ロッド41を先端方向に付勢することができるとともに、光学素子OEの外縁部PAの側面SFに球面部30を所定の力で押し付けることができる。ここで、付勢部材43は、バネ43aやピン43bを収納し外周にネジを形成したアジャスタ部43cを調整手段として備えており、アジャスタ部43cのねじ込み量の調整によって、バネ43aの根元位置を微調整することができる。このアジャスタ部43cにより、ロッド41の標準的な位置やロッド41に対する付勢力を適宜調整することができる。また、アジャスタ部43cの調節により、被測定対象である光学素子OEのサイズを変更した場合にも一定範囲で対応することができる。
【0029】
当接部材50A,50B,50Cは、基板20上に3つ配置された円弧状の可動部材であり、後述する3つの付勢装置60の先端にそれぞれ固定されている。各当接部材50A,50B,50Cは、図2に示すように、光学素子OEの有効径外部である外縁部PAの側面SFに密着するように当接する。各当接部材50A,50B,50Cは、図2(a)に示すように、接触体51A,51B,51Cと支持体52とを有しており、各接触体51A,51B,51Cの内側の当接面55が外縁部PAの側面SFと密着する。接触体51A,51B,51Cは、外縁部PAの側面SFの形状になじむ形状変化が生じる弾性体すなわち弾性材料からなる当接部であり、付勢装置60によって各当接部材50A,50B,50Cを光学素子OEの外縁部PAに適当な力で押し付けることにより、当接面55と側面SFとの間に摩擦力が発生し、保持が確実なものとなる。接触体51A,51B,51Cに用いられる弾性体の材質としては、光学素子OEとの密着性に優れ、適度なゴム弾性があり、また装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されない。かかる材質として、例えばポリウレタンゴム、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等の合成ゴムあるいは天然ゴムの一種あるいは二種以上の混合物等のゴムを例示することができる。
【0030】
各当接部材50A,50B,50Cが外縁部PAの側面SFに当接する位置は、外縁部PAを3等分した均等な位置に対応しており、光学素子OEの中心から120°異なる3方向(光軸OAのまわりに等分割された方向)に配置されている。なお、各当接部材50A,50B,50Cは、3つの球面部30の間に配置されており、両者の干渉を避けた配置となっている。このように、当接部材50A,50B,50Cと球面部30との干渉を回避することによって、各球面部30を確実に計測することができ、光学素子OEの外縁部PAを高精度で検出することができる。
【0031】
各当接部材50A,50B,50Cは、付勢装置60に付勢されて、光学素子OEの外縁部PAの側面に当接するとともに、外縁部PAの側面SFをこれに対して垂直な方向から適当な大きさの押圧力で押圧する。各当接部材50A,50B,50Cに付与する押圧力は、光学素子OEの材料やサイズにも依存するが、各当接部材50A,50B,50Cが外縁部PAの側面SFと密着する際の摩擦力によって光学素子OEの安定した支持が確保される程度とし、かつ、光学素子OEの形状に歪みを与えない程度とする。具体的には、この押圧力をF(N)とするとき、0.1<F<10程度となるようにする。この際、各当接部材50A,50B,50Cと側面SFとの摩擦係数は、1以上であることが好ましい。このようにして、3つの当接部材50A,50B,50Cによって外縁部PAを挟持することにより、基板20上に光学素子OEを安定して固定することができ、基板20を上下反転した場合にも光学素子OEの脱落や変位を防止できる。
【0032】
さらに、これら当接部材50A,50B,50Cにより、基板20上において、光学素子OEの光軸OAまわりの姿勢を特定方向(図示の場合、紙面右側)に向けることができる。なお、各当接部材50A,50B,50Cに付与する押圧力は、各球面部30に付与する押圧力よりも大きくしてある。
【0033】
3つの当接部材50A,50B,50Cのうち、1つの当接部材50Cは、光学素子OEの光軸OAまわりの回転を規制する回転位置決め部材として機能する。当接部材50Cは、光学素子OEの側面SF側に窪んだ当接面55を有しており、この当接面55と光学素子OEに形成された平坦部FP及び突起部PPとが係合することによって光学素子OEの光軸OAのまわりの回転位置が調節される。以上の平坦部FP及び突起部PPは、外縁部PAの輪郭に関して隣接部と異なる不規則部であり、光学素子OEの射出成形時によって不可避的に形成され、このうち突起部PPの先端は、ゲートカット部と呼ばれる。光学素子OEの形状測定において光学素子OEの方向を特定することが重要となる場合があるが、上記突起部PP等をこの目的で使用することができる。つまり、突起部PP等は、光学素子OEの形状測定結果を利用する際に基準となるものであり、具体的には、光学素子OEを成形した金型を形状測定結果に基づいて補正する際に、金型の光学面の補正箇所を特定するために不可欠となる。このように突起部PPを基準として金型補正を行うことにより、光学素子OEを高精度で生産できるようになる。また、突起部PPは光学素子OEを撮像装置や光ピックアップ装置に組み込む際の目印となり、光学素子OEの取付時における回転位置を調整するために役立つ。光学素子OEの取付方向を調整することで、偏芯や収差の方向性を制御できるので、撮像装置や光ピックアップ装置の許容収差等の仕様に適合させることができる。
【0034】
図3(a)は、当接部材50Cの部分拡大図であり、図3(b)は、図3(a)の当接部材50Cの変形例を示す。図3(a)に示すように、光学素子OEの外周に直線状の平坦部FPと矩形の突起部PPとが形成されている場合、当接部材50Cに設けた当接面55は、平坦部FPに対応する形状の直線部分55aと突起部PPと嵌り合う溝部分55bとを有する。なお、図3(b)に示すように、光学素子OEの外周に不規則部としてゲートカット部を先端に有する単なる突起部PPが形成されている場合、当接部材50Cに設けた凹部155は、このような突起部PPと嵌り合う溝部分155aを有する。
【0035】
図1に戻って、各付勢装置60は、各当接部材50A,50B,50Cとともに、光学素子OEを基板20上に外周側から固定するための支持手段として機能する。付勢装置60は、外形基準検知手段40と同様の構造を有し、先端に当接部材50A,50B,50Cを固定したロッド61と、ロッド61を軸方向に滑らかに移動させる摺動機構62と、ロッド61を先端側に付勢するバネ63aを内蔵するとともにバネ63aの根元位置を調節する付勢部材63とを備える。ロッド61は、図2(a)に示すように、円形ステージ21に刻設された溝21bに案内された状態で溝21bに沿って往復移動する。摺動機構62は、基板20上面に固設されたガイドであり、ロッド61の根元側が嵌合しており、ロッド61の軸方向に沿った滑らかな移動を可能にしている。付勢部材63は、基板20上面に着脱可能に取り付けられた機構であり、弾性部材であるバネ63aに付勢されて突出しようとするピン63bによって、ロッド61を先端方向に付勢することができるとともに、光学素子OEの外縁部PAの側面SFに当接部材50A,50B,50Cを所定の力で押し付けることができる。ここで、付勢部材63は、バネ63aやピン63bを収納し外周にネジを形成したアジャスタ部63cを調整手段として備えており、アジャスタ部63cのねじ込み量の調整によって、バネ63aの根元位置を微調整することができる。このアジャスタ部63cにより、ロッド61の標準的な位置やロッド61に対する付勢力を適宜調整することができる。また、アジャスタ部63cの調節により、被測定対象である光学素子OEのサイズを変更した場合にも一定範囲で対応することができる。
【0036】
球状被計測部材70は、基板20上に3つ配置された略同一形状の球体であり、基板20上に設けた固定部材25によって基板20に位置ずれしないようにしっかりと固定されている。なお、基板20上において球状被計測部材70を固定した位置には、開口23が形成されており、固定部材25に固定された球状被計測部材70を図1(a)に示す表側と反対の裏側との両側から観察することができ、面形状測定装置(後述)の触針を球状被計測部材70の上下面に接触させて当該上下面をなぞるように移動させることができる。
【0037】
以上説明した光学素子測定用治具10において、3つの球面部30と、3つの当接部材50A,50B,50Cとは、光学素子OEの外縁部PAに沿って等間隔で互い違いに配置されている。この結果、球面部30と当接部材50A,50B,50Cとの干渉を防止しつつ両者を効率的に配置でき、基板20上に光学素子OEを安定した状態で固定することができる。つまり、球面部30や光学素子OEの光学面OS1,OS2の計測を確実に行うことができ、その作業性を高めることができる。
【0038】
図4(a)及び4(b)は、図1に示す光学素子測定用治具10を用いた面形状測定装置100の構造を説明する正面図及び側面図である。この面形状測定装置100は、定盤81上に、XYステージ装置82と、Z駆動装置84とを固定した構造を有する。XYステージ装置82やZ駆動装置84の動作は、制御装置99によって制御されている。
【0039】
XYステージ装置82は、説明を省略する駆動機構に駆動されて動作し、XYステージ装置82の上部に設けた載置台82a上に着脱可能に固定された光学素子測定用治具10を、XY面内で2次元的に任意の位置に滑らかに移動させることができる。光学素子測定用治具10の位置は、載置台82aに設けたXミラー83aとYミラー83bとを利用して検出される。すなわち、Xミラー83aに対向して定盤81上に取り付けたレーザ干渉計83dを利用して載置台82aのX軸方向の位置が分かる。また、Yミラー83bに対向して定盤81上に取り付けたレーザ干渉計83eを利用して載置台82aのY軸方向の位置が分かる。
【0040】
Z駆動装置84は、フレーム85上に昇降機構86を固定したものであり、昇降機構86は、フレーム85上部に固定されZ方向に伸びる支持軸86aと、支持軸86aに支持されてZ軸方向に移動する昇降部材86bと、昇降部材86bを昇降させる昇降駆動手段(不図示)と、昇降部材86bに支持された触針保持部86dと、触針保持部86dに昇降可能に支持された触針PRとを備える。
【0041】
昇降機構86は、昇降部材86bが支持軸86aに非接触に支持されて滑らかに昇降運動する。昇降保持部86dは触針PRを保持しており、これに伴って滑らかに昇降運動する。なお触針PRは、先端に一定の負荷を掛けた状態で高精度で滑らかに昇降することができるようにフィードバックをかけて不図示の昇降駆動手段を動作させている。結果的に、触針PRを低応力で昇降させつつ、XYステージ装置82を適宜動作させて光学素子測定用治具載置した光学素子OEを2次元的に走査するように移動させるならば、触針PRの先端を光学素子測定用治具10に載置した光学素子OEの光学面等に沿って2次元的に移動させることができる。この際、触針PRの先端位置は、触針PRとともに昇降する部材の上端に設けたZミラー91aを利用して検出される。すなわち、Zミラー91aに対向してフレーム85上に取り付けたレーザ干渉計91bを利用して触針PR下端のZ軸方向の位置が分かる。
【0042】
図5は、図4に示す面形状測定装置を用いた測定方法の手順を説明するフローチャートである。
【0043】
最初に、光学素子OEを図4の面形状測定装置100にセットする(ステップS10)。この工程は、ロボットに行わせることもできるが通常オペレータが行う。内容を具体的に説明すると、光学素子OEの表側の光学面OS1を上側にして、光学素子測定用治具10上に取り付ける(図1参照)。つまり、3つの外形基準検知手段40と、3つの付勢装置60とを解除状態として、光学素子OEを円形ステージ21上に載置する。その後、3つの外形基準検知手段40及び付勢装置60を係止状態となるように取り付ける。これにより、光学素子OEの固定が完了する。この際、光学素子OEの外縁部PAが、3つの当接部材50A,50B,50Cによって周囲から把持されて確実に固定され、3つの球面部30が、光学素子OEの外縁部PAの側面SFに周囲から適当な力で押しつけられる。その後、このように光学素子OEを固定した光学素子測定用治具10をXYステージ装置82上の載置台82aに固定する。
【0044】
次に、基板20の周辺部に配置された3つの球状被計測部材60の表面形状を計測することによって、表側の面頂点座標系を測定する(ステップS11)。具体的には、各球状被計測部材60の頂点近傍に触針PRを配置した状態で、XYステージ装置82を動作させて球状被計測部材60の表面に対して触針PRを例えば十字に移動させつつ、駆動装置84を動作させて触針PR先端を球面部30の表面から離れないように移動させる。これにより、各球状被計測部材60の中心が算出される。
【0045】
次に、光学素子OEの周囲に配置された3つの球面部30の表面形状を計測することによって、面頂点座標を測定する(ステップS12)。具体的には、各球面部30の頂点近傍に触針PRを配置した状態で、XYステージ装置82を動作させて球面部30の表面に対して触針PRを十字移動を行わせつつ、駆動装置84を動作させて触針PR先端を球面部30の表面から離れないように移動させる。これにより、各球面部30の中心が算出される。
【0046】
次に、光学素子OEの外縁部PAの中心に対応する表面外形基準位置を算出する(ステップS13)。ここで、表面外形基準位置は、外縁部PAの側面が真円であると仮定して、3つの球面部30の中心が通る円の中心を算出して得られた座標とする。なお、外形基準位置の計算方法は、3つの球面部30の中心が通る円を求めるものに限らず、様々な幾何的計算方法を用いることができる。
【0047】
次に、光学素子OEの表側の光学面OS1の表面形状を測定する(ステップS14)。具体的には、光学素子OEの光学面OS1上方に触針PRを配置した状態で、XYステージ装置82を動作させて光学素子OEに対して触針PRを2次元的に走査移動させつつ、駆動装置84を動作させて触針PR先端を光学面OS1から離れないように移動させる。これにより、2次元的な表面形状データが得られる。
【0048】
次に、ステップS14で得た表面形状データを設計値でフィッティングする座標変換を行う(ステップS15)。具体的には、表面形状データをZとし、設計値をZ0とし、これらの差分であるZd=Z0−Zの最小2乗平均値(RMS)が最小になるように座標変換を行う。この際、座標変換に必要なデータが座標変換データとして保管される。
【0049】
次に、光学素子OEの表面外形偏芯を算出する(ステップS16)。ここで、光学素子OEの表面外形偏芯は、外縁部PAの中心に相当する外形基準位置が光学素子OEに関する光学面OS1の表面形状の計測値から得た光軸OAからずれている量とする。なお、光学素子OEの表面形状は、ステップS15で得た座標変換後の表面形状データに対応するものとなっている。
【0050】
次に、光学素子測定用治具10を裏返して面形状測定装置の保持部(不図示)にセットする(ステップS17)。この工程は、ロボットに行わせることもできるが通常オペレータが行ってもよい又は行うことが好ましい。内容を具体的に説明すると、光学素子OEを固定した光学素子測定用治具10をXYステージ装置82上の載置台82aから取り外し、光学素子測定用治具10をそのままにして上下反転させて再度載置台82aに固定する。
【0051】
次に、基板20の周辺部に配置された3つの球状被計測部材60の表面形状を計測することによって、裏側の面頂点座標を測定する(ステップS18)。具体的には、各球状被計測部材60の頂点近傍に触針PRを配置した状態で、XYステージ装置82を動作させて球状被計測部材60の裏面に対して触針PRを例えば十字に移動させつつ、駆動装置84を動作させて触針PR先端を球面部30の表面から離れないように移動させる。これにより、各球状被計測部材60の中心が算出される。
【0052】
次に、ステップS11で得た表側の面頂点座標系と、ステップS18で得た表側の面頂点座標系とを比較して、表側座標系と裏側座標系との関係を算出する(ステップS19)。球状被計測部材60の計測結果を利用すると、基板20の表側座標系と裏側座標系との関係が得られる。
【0053】
次に、光学素子OEの外縁部PAの中心に対応する裏面外形基準位置を算出する(ステップS20)。ここで、裏面外形基準位置は、ステップS13で得た表面外形基準位置をステップS19で得た表側座標系と裏側座標系との関係を利用して座標変換することによって得られる。
【0054】
次に、光学素子OEの裏側の光学面OS2の表面形状を測定する(ステップS21)。具体的には、光学素子OEの光学面OS2上方に触針PRを配置した状態で、XYステージ装置82を動作させて光学素子OEに対して触針PRを2次元的に走査移動させつつ、駆動装置84を動作させて触針PR先端を光学面OS2から離れないように移動させる。これにより、2次元的な裏面形状データが得られえる。
【0055】
次に、ステップS21で得た表面形状データを設計値でフィッティングする座標変換を行う(ステップS22)。具体的な手法は、表側のステップS15と同様であるので説明を省略する。
【0056】
次に、ステップS15で得た座標変換データと、ステップS22で得た座標変換データとを、ステップS19で得た関係を利用して比較して、光学素子OEの両光学面OS1,OS2の相対的偏芯を算出する(ステップS23)。
【0057】
次に、光学素子OEの裏面外形偏芯を算出する(ステップS24)。ここで、光学素子OEの裏面外形偏芯は、外縁部PAの中心に相当する外形基準位置が光学素子OEの光学面OS2に関する表面形状の計測値から得た光軸OAからずれている量とする。
【0058】
なお、以上説明した測定方法は単なる例示であり、種々の変形が可能である。例えばステップS11,S12,S14,S18,S21の計測を最初に行って、残った計算を一括して行うことも可能である。また、ステップS17以降を省略することもできる。この場合、光学素子OEの表面側について表面形状と偏芯とが得られる。
【0059】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る光学素子測定用治具について説明する。第2実施形態の光学素子測定用治具は、第1実施形態の治具を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態の装置と共通しており、図面において共通する部分には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0060】
図6は、第2実施形態の光学素子測定用治具の平面図であり、図7は、図6に示す治具の中央部の部分拡大平面図である。
【0061】
本実施形態の光学素子測定用治具210も、光学素子OEを保持して面形状測定装置(図4参照)にセットすることにより、光学素子OEの光学面の形状を表側と裏側とから計測することができ、光学素子OEの偏芯を計測することができるようにしている。このため、基板220上に、球面部30と、第1外形基準検知手段240A,240Bと、第2外形基準検知手段246A,246Bと、付勢装置260A,260Bと、球状被計測部材70とを設けている。なお、この光学素子測定用治具210に固定される光学素子OEは、輪郭が矩形になっている。
【0062】
基板220は、四角形の厚板上の外観を有し、中央に開口(不図示)を有しており、この開口の縁部分で光学素子OEの外縁部PAを支持する。これにより、基板220上に支持された光学素子OEを表と裏の両側から計測することができる。
【0063】
第1外形基準検知手段240A,240Bは、それぞれ球面部30を光学素子OEの外縁部PAの側面SFに当接させるとともに、各球面部30を介して外縁部PAの側面SFを適当な力で押圧する役割を有する。ここで、一方の第1外形基準検知手段240Aは、球面部30を先端に固定したロッド41と、ロッド41を軸方向に滑らかに移動させる摺動機構242Aと、ロッド41を先端側に付勢する板バネ状の付勢部材243とを備える。他方の第1外形基準検知手段240B,240Bは、球面部30を先端に固定したロッド41と、ロッド41を軸方向に滑らかに移動させる共通の摺動機構242Bと、ロッド41を先端側に付勢する板バネ状の付勢部材243とを備える。
【0064】
第2外形基準検知手段246A,246Bは、3つの球面部30を基板220上に適当な配置で固定する板状の部材であり、複数の輪郭段差部分246a,246b,246cの隅に球面部30を接着剤等によって固定している。この際、第2外形基準検知手段246A,246Bの形状は、光学素子OEの外縁部PAとの干渉を避け得るものとなっている。
【0065】
各付勢装置260A,260Bは、図1等で説明した付勢装置60と同様の構造を有し、先端に当接部材250を固定したロッド61と、ロッド61を軸方向に滑らかに移動させる摺動機構62と、ロッド61を先端側に付勢するバネ63aを内蔵するとともにバネ63aの根元位置を調節する付勢部材63とを備える。
【0066】
一対の当接部材250は、光学素子OEを構成する外縁部PAの側面SFのうち、対向する一対の辺部分に密着するように当接する。当接部材250は、接触体251と支持体252とを有しており、各接触体251の内側の当接面255が外縁部PAの直線状の側面部分と密着する。直線状の接触体251は、外縁部PAの側面SFの形状になじむ弾性体とすることもできるが、当接面255が外縁部PAの側面SFに略一致する形状を有する場合、接触体251の少なくとも1つを弾性体から非弾性体に置き換えることができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る光学素子測定用治具について説明する。第3実施形態の光学素子測定用治具は、第2実施形態の治具を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第2実施形態の装置と共通しており、図面において共通する部分には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0068】
図8は、第3実施形態の光学素子測定用治具の平面図である。本実施形態の光学素子測定用治具310も、光学素子OEを保持して面形状測定装置(図4参照)にセットすることにより、光学素子OEの光学面の形状を表側と裏側とから計測することができる。このため、基板220上に、第1付勢装置360Aと、第2付勢装置360Bとを設けている。
【0069】
第1付勢装置360Aは、図6で説明した付勢装置260Aと同様の構造を有し、先端に当接部材250を固定したロッド61と、ロッド61を軸方向に滑らかに移動させる摺動機構242Aと、ロッド61を先端側に付勢する板バネ状の付勢部材243とを備える。
【0070】
一対の当接部材350は、光学素子OEを構成する外縁部PAの側面SFのうち、対向する一対の角部分に密着するように当接する。当接部材350は、接触体351と支持体352とを有しており、各接触体351の内側の当接面355が外縁部PAのL字状の側面部分と密着する。L字状の接触体351は、外縁部PAの側面SFの形状になじむ弾性体とすることもできるが、当接面355が外縁部PAの側面SFに略一致する形状を有する場合、接触体351の少なくとも1つを弾性体から非弾性体に置き換えることができる。
【0071】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る光学素子測定用治具について説明する。第4実施形態の光学素子測定用治具は、第1実施形態の治具を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態の装置と共通しており、図面において共通する部分には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0072】
図9(a)は、第4実施形態の光学素子測定用治具の部分拡大平面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す治具の中央部の側方拡大断面図である。
【0073】
光学素子OEの外縁部PAは、基板420に設けた支持部である円形ステージ421に設けた開口22の縁部分によって支持される。円形ステージ421上には、複数の突起421eが形成されており、光学素子OEの外縁部PAの側面SFの移動を制限することによって、光学素子OEの基板420上における位置決めを行う。この際、一対の突起421eが、光学素子OEの外縁部PAに形成された平坦部FP及び突起部PPを挟むように配置されており、光学素子OEの光軸OAのまわりの回転位置が調節される。つまり、一対の突起421eは、光学素子OEの光軸OAまわりの回転位置を設定する回転位置決め部材として機能する。
【0074】
円形ステージ421の内部には、3つの排気路421hが形成されており、各排気路421hの一端は、円形ステージ421に設けた開口22の周りの縁部分に形成された3つの吸引口421jにそれぞれ連通している。また、各排気路421hの他端は、円形ステージ421の周囲に形成された通気路421mを介して吸引器92に接続されている。吸引器92は、排気路421hを適度の負圧にすることができ、光学素子OEの外縁部PAは、吸引口421jの負圧によって円形ステージ421に吸着される。ここで、排気路421h、吸引口421j、通気路421m、及び吸引器92は、光学素子OEを円形ステージ421上に固定するための吸着装置となっている。
【0075】
以上説明した第4実施形態の光学素子測定用治具では、吸引口421j、吸引器92等を備える吸着装置によって、光学素子OEが基板420上に確実に固定されるので、光学素子OEの光学面の計測を確実に行うことができ、その作業性を高めることができる。
【0076】
なお、図8、9には、球状位置決め部材が特に図示されていないが、光学素子の外形基準を測定する場合は、当接部と干渉しない位置であってかかる外形基準を測定可能な位置に複数備えていても良い。
【0077】
また、この実施形態の場合、円形ステージ421に開口22を設けているが、円形ステージ421に開口22を設ける必要はない。開口22を設けない場合、光学素子OEの表裏光学面のうち表側のみの形状を測定することができる。
【0078】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、すべての当接部材50A,50B,50Cを付勢装置60によって可動としているが、当接部材50A,50B,50Cの1つ又は2つを円形ステージ21上に固定されたものとできる。
【0079】
また、第1実施形態では、3つの球面部30をすべて外形基準検知手段40によって可動としているが、1又は2つの球面部30を円形ステージ21上に固定し、残った球面部30を外形基準検知手段40によって可動に支持し光学素子OEの外縁部PAに付勢することもできる。
【0080】
また、当接部材50A,50B,50Cや球面部30の数は3つに限らず、目的に応じて個数を適宜増減できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(a)、(b)は、第1実施形態の光学素子測定用治具の平面図及び断面図である。
【図2】(a)、(b)は、図1の光学素子測定用治具の拡大平面図及び拡大断面図である。
【図3】(a)は、当接部材の部分拡大図であり、(b)は、当接部材の変形例を示す。
【図4】(a)、(b)は、面形状測定装置の構造を説明する正面図及び側面図である。
【図5】図4に示す面形状測定装置を用いた測定方法を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施形態の光学素子測定用治具の平面図である。
【図7】図6に示す治具の中央部の部分拡大平面図である。
【図8】第3実施形態の光学素子測定用治具の平面図である。
【図9】(a)は、第4実施形態の光学素子測定用治具の部分拡大平面図であり、(b)は、治具の中央部の側方拡大断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10…光学素子測定用治具、 20…基板、 22…開口、 30…球面部、 40…外形基準検知手段、 50A,50B,50C…当接部材、 51A,51B,51C… 接触体、 52…支持体、 55…当接面、 60…球状被計測部材、 60…付勢装置、 61…ロッド、 62…摺動機構、 63…付勢部材、 63a…バネ、 63b…ピン、 63c…アジャスタ部、 70…球状被計測部材、 81…定盤、 82…XYステージ装置、 83a,83b,91a…ミラー、 83d,83e,91b…レーザ干渉計、 84…Z駆動装置、 86…昇降機構、 99…制御装置、100…面形状測定装置、 OA…光軸、 OE…光学素子、 OS1,OS2…両光学面、 PA…外縁部、 PR…触針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる光学素子を載置する、第1面と該第1面の裏面に相当する第2面とを有する基板と、
前記基板に固定され、載置される光学素子側面部に対して当接する当接部を有する支持手段とを有し、
前記支持手段は、前記光学素子周囲に複数設けられるとともに、前記支持手段の当接部は、前記光学素子側面部に密着して当接可能な弾性材料で構成されていることを特徴とする光学素子測定用治具。
【請求項2】
前記弾性材料は、ゴム系の材料を主成分として構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学素子測定用治具。
【請求項3】
前記支持手段の当接部は、前記光学素子の光軸方向からみた外形輪郭に沿った形状を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一つに記載の光学素子測定用治具。
【請求項4】
前記光学素子の光軸方向からみた外形輪郭は円形であり、前記複数の支持手段の各当接部は、円弧状の当接面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光学素子測定用治具。
【請求項5】
前記光学素子の光軸方向からみた外形輪郭は矩形であり、前記複数の支持手段の各当接部は、直線状の当接面を有し、前記光学素子の対向する少なくとも1組の辺に沿って配置可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光学素子測定用治具。
【請求項6】
前記光学素子の光軸方向からみた外形輪郭は矩形であり、前記複数の支持手段の各当接部は、前記矩形の頂点を含んで当接できるようL字形状の当接面を有し、前記光学素子の少なくとも2箇所の頂点に配置可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光学素子測定用治具。
【請求項7】
前記基板に一部が支持され、既知の球面形状を有する球面部を前記光学素子の側面部に光軸と垂直な方向から当接可能に備える外形基準検知手段を複数有し、
前記外形基準検知手段は、当接した球面部を測定することにより前記光学素子の外形基準が把握できるよう前記基板の複数位置に配置され、複数の外形基準検知手段の内の少なくとも一つは、前記光学素子を押圧するような付勢力を以って当接可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光学素子測定用治具。
【請求項8】
前記複数の外形基準検知手段の内、前記光学素子を押圧するような付勢力を以って当接する外形基準検知手段は、前記基板に支持された支持部と前記球面部との間に弾性部材を有するとともに、前記弾性部材と球面部との間であって前記弾性部材による前記光学素子に対する付勢力を調整可能な調整手段を有することを特徴とする請求項7記載の光学素子測定用治具。
【請求項9】
前記外形基準検知手段と前記支持手段とが前記光学素子と当接する位置は、前記光学素子の光軸方向から見て互いに異なる位置に交互に配置されるよう構成したことを特徴とする請求項7又は8記載の光学素子測定用治具。
【請求項10】
形状測定対象としての光学素子の有効径外部の少なくとも一部に当接して当該光学素子を光軸方向に関して一方から支持可能な支持部と、
前記光学素子の前記有効径外部に対向する支持部に吸引口を有し、負圧によって前記光学素子を前記支持部側に吸着させる吸着装置と、
を備える光学素子保持治具光学素子測定用治具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の光学素子保持治具光学素子測定用治具を備える光学素子の面形状測定装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の光学素子保持治具光学素子測定用治具を用いた光学素子の面形状測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−170930(P2007−170930A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367250(P2005−367250)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】