説明

光学装置、レーザ装置および極端紫外光生成装置

【課題】レーザ光の安定性を向上する。
【解決手段】光学装置は、レーザ光のビーム伝播経路上に配置された光学モジュールと、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するアクチュエータ部と、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記ビーム伝播経路を検出する計測部と、 前記計測部によって検出された前記レーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する制御部と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置、レーザ装置および極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(Extreme Ultra violet:EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ励起プラズマ)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0117009号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様による光学装置は、レーザ光のビーム伝播経路上に配置された光学モジュールと、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するアクチュエータ部と、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記ビーム伝播経路を検出する計測部と、前記計測部によって検出された前記レーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の態様によるレーザ装置は、レーザ光のビーム伝播経路上に配置された光学モジュールと、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するアクチュエータ部と、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記ビーム伝播経路を検出する計測部と、前記計測部によって検出された前記レーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する制御部と、を備える光学装置を少なくとも1つ含んでもよい。
【0007】
本開示の他の態様によるEUV光生成装置は、レーザ光のビーム伝播経路上に配置された光学モジュールと、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するアクチュエータ部と、前記ビーム伝播経路上に配置され、前記ビーム伝播経路を検出する計測部と、前記計測部によって検出された前記レーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する制御部と、を備える光学装置を少なくとも1つ含むレーザ装置を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本開示の一態様による例示的なLPP方式のEUV光生成装置(EUV光生成装置)の概略構成を示す。
【図2】図2は、図1に示すEUV光生成装置におけるレーザシステムをより具体化した図である。
【図3】図3は、本実施の形態による光学装置の一態様を示す。
【図4】図4は、本実施の形態による光学装置の他の態様を示す。
【図5】図5は、図3に示す光学モジュールをスラブ型増幅器とした光学装置の垂直断面図である。
【図6】図6は、図5に示す光学装置のV−V断面図である。
【図7】図7は、図3に示す光学モジュールを高速軸流型増幅器とした光学装置の垂直断面図である。
【図8】図8は、図7に示す光学装置のVII―VII断面図である。
【図9】図9は、図3に示す光学モジュールを2枚の凹面ミラーを備えているリレー光学系とした光学装置の垂直断面図である。
【図10】図10は、図9に示すリレー光学系のIX−IX断面図である。
【図11】図11は、図3に示す光学モジュールを空間フィルタとした場合を示す。
【図12】図12は、図3に示す光学モジュールを過飽和吸収セルとした場合を示す。
【図13】図13は、図3に示す光学モジュールをビーム伝播経路長調節モジュールとした場合を示す。
【図14】図14は、図3に示す光学モジュールを偏光アイソレータとした場合を示す。
【図15】図15は、図3に示すアクチュエータ部の一例を示す。
【図16】図16は、図15に示すミラーを保持するミラーホルダの一例を示す。
【図17】図17は、図3に示すアクチュエータ部の他の一例を示す。
【図18】図18は、図17に示すアクチュエータ部を駆動した一例を示す。
【図19】図19は、図3に示すアクチュエータ部の他の一例を示す。
【図20】図20は、図3に示す計測部の一例を示す。
【図21】図21は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図22】図22は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図23】図23は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図24】図24は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図25】図25は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図26】図26は、図3に示す計測部の他の一例を示す。
【図27】図27は、図3に示す制御部の主動作を示すフローチャートである。
【図28】図28は、図27のステップS102に示す光計測サブルーチンを示す。
【図29】図29は、図22に示す計測部を用いた際の光計測サブルーチンを示す。
【図30】図30は、図23に示す計測部を用いた際の光計測サブルーチンを示す。
【図31】図31は、図27のステップS103に示すアライメントサブルーチンを示す。
【図32】図32は、図22に示す計測部を用いた際のアライメントサブルーチンを示す。
【図33】図33は、図23に示す計測部を用いた際のアライメントサブルーチンを示す。
【図34】図34は、図27のステップS104に示すアライメント完了確認サブルーチンを示す。
【図35】図35は、図22に示す計測部を用いた際のアライメント完了確認サブルーチンを示す。
【図36】図36は、図23に示す計測部を用いた際のアライメント完了確認サブルーチンを示す。
【図37】図37は、本実施の形態による光学装置が適用されたEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図38】図38は、図37に示すEUV光生成制御システムの動作を示す。
【図39】図39は、図38のステップS201に示すアライメント開始判定サブルーチンを示す。
【図40】図40は、図38のステップS202に示すレーザ発振サブルーチンを示す。
【図41】図41は、図38のステップS202に示すレーザ発振サブルーチンの他の態様を示す。
【図42】図42は、図37に示す光学装置の制御部が実行する光計測サブルーチンを示す。
【図43】図43は、図37に示す光学装置の制御部が実行するアライメントサブルーチンを示す。
【図44】図44は、図37に示す光学装置の制御部が実行するアライメント完了確認サブルーチンを示す。
【図45】図45は、本実施の形態によるガイドレーザ光を用いて光学装置のアライメントが可能なEUV光生成装置の概略構成を示す。
【図46】図46は、図45に示すEUV光生成制御システムが実行するレーザ発振サブルーチンを示す。
【図47】図47は、図37に示すレーザシステムが設置されるサブファブリックと、上階の床に設置されたチャンバおよび露光装置とを示す垂直断面図である。
【図48】図48は、図47におけるIVXVIII−IVXVIII断面図である。
【図49】図49は、図37に示すレーザシステムが設置されるサブファブリックの他の例を示す上視図である。
【図50】図50は、図49におけるIVXIV−IVXIV断面図である。
【図51】図51は、本実施の形態による位置決めピンを用いた光学装置の位置決め機構の一例を示す。
【図52】図52は、図51のVXI−VXI断面図を示す。
【図53】図53は、本実施の形態によるレールを用いた光学装置の位置決め機構の一例を示す。
【図54】図54は、図53のVXIII−VXIII断面図を示す。
【図55】図55は、本実施の形態によるレールを用いた位置決め機構の個々の他の一例を示す。
【図56】図56は、本実施の形態によるレールを用いた位置決め機構の個々の他の一例を示す。
【図57】図57は、VRWMの一例を示す。
【図58】図58は、VRWMの一例を示す。
【図59】図59は、VRWMの一例を示す。
【実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
以下、本開示の実施の形態による光学装置、レーザ装置およびEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0011】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成装置
3.1 構成
3.2 動作
4.LPP用レーザ装置
4.1 構成
4.2 動作
4.3 課題の発見
5.光学装置のコンセプト
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用
6.光学モジュールが増幅器の場合
6.1 スラブ型増幅器
6.2 高速軸流型増幅器
7.光学モジュールがその他の場合
7.1 リレー光学系
7.2 空間フィルタ
7.3 過飽和吸収体
7.4 ビーム伝播経路長調節モジュール
7.5 偏光アイソレータ
8.アクチュエータ部
8.1 2枚高反射ミラー
8.2 1枚高反射ミラーとVRMWM高反射ミラーとの組み合わせ
8.3 1枚高反射ミラーと1枚ディフォーマブル高反射ミラーの組み合わせ
9.計測部
9.1 ビーム伝播経路上の2地点でのビームプロファイル計測
9.2 ビームプロファイル+ビームポインティング
9.3 少なくとも1つの貫通口とビームプロファイルラの組み合わせ
9.4 光学モジュールとビームプロファイルラの組み合わせ
9.5 シャックハルトマン干渉計
10.制御部
10.1 制御部の制御フロー
10.2 少なくとも1つの貫通穴がある場合の制御フロー
11 LPP式EUV光生成装置
11.1 構成
11.2 レーザコントローラの制御フロー
12.ガイドレーザ光を含むレーザ装置とEUV光源装置
12.1 構成
12.2 レーザコントローラの制御フロー
13.位置決め機構
13.1 ピンによる位置決め
13.1 レールによる位置決め
14.補足説明
【0012】
1.概要
実施の形態の概要について、以下に説明する。実施の形態は、その概要として、レーザ光のビーム伝播経路上配置された光学モジュールと、前記ビーム伝播経路上に配置された前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するためのアクチュエータ部と、前記ビーム伝播経路上に配置された前記レーザ光のビーム伝播経路を検出するための計測部と、を備える。
【0013】
2.用語の説明
つぎに、本開示において使用する用語について、以下のように定義する。「ドロップレット」とは、溶融したターゲット物質の液滴である。したがって、その形状は、表面張力によって略球形となる。「プラズマ生成サイト」とは、プラズマを生成する空間として予め設定された3次元空間である。「ビーム拡大」とは、ビーム断面が徐々に広がることをいう。
【0014】
3.EUV光生成装置の全体説明
3.1 構成
図1に本開示の一態様による例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の概略構成を示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザシステム3と共に用いてもよい(EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する)。図1に示し、かつ以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置(例えばドロップレット生成器26)を更に含んでもよい。ターゲット供給装置は、例えばチャンバ2の壁に取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置が供給するターゲットの材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0015】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔をレーザシステム3によって発生したパルスレーザ光32が通過してもよい。チャンバ2には、レーザシステム3によって発生したパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウィンドウ21が設けられていてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1の焦点、及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ発生位置(プラズマ生成サイト25)又はその近傍に位置し、その第2の焦点が露光装置6の仕様によって規定される所望の集光位置(中間焦点(IF)292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過することができる貫通孔24が設けられていてもよい。
【0016】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5を含むことができる。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含むことができる。ターゲットセンサ4は、ターゲットの存在、軌道、位置の少なくとも1つを検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有していてもよい。
【0017】
更に、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通する接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャ(aperture)が形成された壁291を設けてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置してもよい。
【0018】
更に、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34、レーザ光集光ミラー22、ドロップレットターゲット27を回収するターゲット回収器28などを含んでもよい。レーザ光進行方向制御アクチュエータ34は、レーザ光の進行方向を制御するために、レーザ光の進行方向を規定する光学素子と、この光学素子の位置または姿勢を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0019】
3.2 動作
図1を参照すると、レーザシステム3から出射されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34を経てパルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザビーム経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光ミラー22で反射して、パルスレーザ光33として少なくとも1つのドロップレットターゲット27に照射されてもよい。
【0020】
ドロップレット生成器26は、ドロップレットターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成サイト25に向けて出射してもよい。ドロップレットターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光33が照射されたドロップレットターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が生成される。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって反射されるとともに集光されてもよい。EUV集光ミラー23に反射されたEUV光252は、中間焦点292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのドロップレットターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0021】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5はターゲットセンサ4によって撮像されたドロップレットターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、ドロップレットターゲット27を放出するタイミングの制御およびドロップレットターゲット27の放出方向の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザシステム3のレーザ発振タイミングの制御、パルスレーザ光32の進行方向の制御、及びパルスレーザ光33の集光位置の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加することもできる。
【0022】
4.LPP用レーザ装置
つづいて、図1に示すEUV光生成装置1におけるレーザシステム3をより具体的に説明する。図2は、図1に示すEUV光生成装置1におけるレーザシステム3をより具体化した図である。なお、図2では、説明の簡略化のため、図1におけるEUV光生成制御システム5およびターゲットセンサ4については、省略する。
【0023】
4.1 構成
図2に示すように、レーザシステム3は、マスターオシレータ(MO)301と、複数の増幅器304、306、311および313と、複数のリレー光学系303、305、307、310、312および314とを備えている。増幅器304、306、311および313は、入射したパルスレーザ光31の光強度を増幅する。リレー光学系303、305、307、310、312および314は、パルスレーザ光31を適宜、ビーム拡径したり、平行光化したりする。レーザシステム3は、マスターオシレータ301から出力されたパルスレーザ光31の光特性を調整する空間フィルタ302と、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を変更する高反射ミラー308および309とを備えてもよい。
【0024】
以下の説明において、増幅器304、306、311および313、リレー光学系303、305、307、310、312および314を総称して、光学モジュールという。この光学モジュールには、マスターオシレータ301、空間フィルタ302、および高反射ミラー308および309など、その他の光学的な特性を有する装置や部品等が含まれてもよい。
【0025】
4.2 動作
マスターオシレータ301は、たとえば図1に示すEUV光生成制御システム5の制御の下、所定の繰返し周波数で発振することで、パルスレーザ光31を出力する。出力されたパルスレーザ光31は、空間フィルタ302を通過した後、複数の増幅器304、306、311および313を順次通過する。パルスレーザ光31は、それぞれのリレー光学系303、305、307、310、312および314で増幅される。この際、パルスレーザ光31は、各増幅器304、306、311および313の増幅領域の大きさや形状等に合わせるように、そのビーム断面積やビーム断面の形状や偏光状態等が、リレー光学系303、305、307、310、312および314によって調整される。その後、レーザシステム3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34を経由して、チャンバ2内へ入射する。
【0026】
4.3 課題の発見
マスターオシレータ301からチャンバ2内のプラズマ生成サイト25までのビーム伝播経路長は、数十mから100m以上となる場合がある。このため、設置時、メンテナンス時または不具合発生時には、マスターオシレータ301から各光学モジュールを経由したターゲット照射位置までのビーム伝播経路のアライメントに、長い時間を要する場合がある。この時間は、たとえば数日から数週間程度となることがある。
【0027】
5.光学装置のコンセプト
そこで本開示では、以下のような態様を例として提案する。図3は、本実施の形態による光学装置の一態様を示す。図4は、本実施の形態による光学装置の他の態様を示す。
【0028】
5.1 構成
図3および図4に示すように、光学装置330および340は、それぞれ、パルスレーザ光のビーム伝播経路上配置された光学モジュール331と、前記ビーム伝播経路上に配置された前記パルスレーザ光31のビーム伝播経路を調節するためのアクチュエータ部332と、前記ビーム伝播経路上に配置された前記パルスレーザ光31のビーム伝播経路を検出するための計測部333と、を含む。また、光学装置330および340は、アクチュエータ部332を制御する制御部334を含む。
【0029】
光学モジュール331と、アクチュエータ部332と、計測部333との配置は、図3に示すように、アクチュエータ部332、光学モジュール331、計測部333の順であってもよいし、図4に示すように、光学モジュール331、アクチュエータ部332、計測部333の順であってもよい。
【0030】
5.2 動作
計測部333は、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を検出する。制御部334は、計測部333で計測された検出値に基づいて、アクチュエータ部332を制御する。たとえば制御部334は、光学モジュール331の交換前後で、計測部333で計測されたパルスレーザ光31のビーム伝播経路の変化量を特定する。そして、制御部334は、特定したビーム伝播経路の変化量に応じてアクチュエータ部332を駆動することで、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を交換前のビーム伝播経路に近づけるように調整する。
【0031】
5.3 作用
以上のように、本態様では、光学装置330および340から出射するパルスレーザ光31のビーム伝播経路を正しい位置(目的のビーム伝播経路)とする調整動作が、自動的に実行される。その結果、たとえば光学モジュール331を新設したり交換したりした場合においても、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を、容易且つ迅速に正しい位置に調整することが可能となる。
【0032】
6.光学モジュールが増幅器の場合
つづいて、光学装置のより具体例を、以下に説明する。図5は、光学モジュール331をスラブ型増幅器331Aとした光学装置330Aの垂直断面図である。図6は、図5に示す光学装置330AのV−V断面図である。増幅器331Aは、増幅器304、306、311および313のいずれであってもよい。
【0033】
6.1 スラブ型増幅器
図5および図6に示すように、光学装置330Aは、アクチュエータ部332、スラブ型増幅器331Aおよび計測部333を、それぞれ一つの定盤335上の所定の位置にそれぞれ位置決めするための位置決めプレート336〜338を備える。位置決めプレート336〜338は、定盤335に位置決めされて固定される。アクチュエータ部332、スラブ型増幅器331Aおよび計測部333は、それぞれ位置決めプレート336〜338上の規定された位置に設置される。これにより、アクチュエータ部332、スラブ型増幅器331Aおよび計測部333のアライメントが大まかに調整された状態を得られる。
【0034】
たとえばユニット化されているスラブ型増幅器331Aは、位置決めプレート336の規定位置に設置される。また、1つ以上のミラー332aおよび332bよりなるアクチュエータ部332においては、各ミラー332aおよび332bが位置決めプレート337の規定位置に図示しないホルダ等の光学部品保持部材を介して設置される。なお、ミラーを保持するホルダおよびその姿勢角度調整機構については後述する。また、ビームスプリッタ333aおよびセンサ333bよりなる計測部333においては、ビームスプリッタ333aおよびセンサ333bが位置決めプレート338の規定位置に図示しないホルダ等の光学部品保持部材を介して設置される。すなわち、ユニット化されている光学要素群については、位置決めプレートの規定位置に設置すればよい。また、複数の構成よりなる光学要素群については、各構成を位置決めプレートの規定位置に設置すればよい。
【0035】
たとえば、故障したスラブ型増幅器331Aを交換する場合は、故障したスラブ型増幅器331Aを取り外した後、位置決めプレート336上に正常なスラブ型増幅器331A2を設置すればよい。これにより、正常なスラブ型増幅器331A2のアライメントが大まかに調整された状態を得られる。そして、制御部334は、スラブ型増幅器331A2の搭載後、計測部333の検出値に基づいて交換前のスラブ型増幅器331Aのビーム伝播経路と略一致するようにアクチュエータ部332を制御する。これにより、光学装置330Aの光学アライメントが自動的に実行される。
【0036】
6.2 高速軸流型増幅器
つぎに、光学モジュール331に高速軸流型増幅器331Bを用いた場合を説明する。図7は、光学モジュール331を高速軸流型増幅器331Bとした光学装置330Bの垂直断面図である。図8は、図7に示す光学装置330BのVII―VII断面図である。
【0037】
図7および図8に示す高速軸流型増幅器331Bでは、パルスレーザ光31の高速軸流型増幅器331Bへの入射口と出射口が同じ面に隣接して配置されている。したがって、このような高速軸流型増幅器331Bに対しては、アクチュエータ部332および計測部333を隣接して配置するとよい。そこで、本例では、アクチュエータ部332および計測部333を1つのユニット332Aとして構成する。
【0038】
このように、アクチュエータ部332と計測部333とを1つのユニットとすることで、光学装置のコンパクト化が可能となる。また、アクチュエータ部332と計測部333とを1つのユニットとすることで、各部のビーム伝播経路の検出誤差を低減することもできる。
【0039】
7.光学モジュールがその他の場合
つぎに、光学モジュール331を増幅器以外とした場合を以下に例を挙げて説明する。光学モジュール331の他の例としては、空間フィルタ、過飽和吸収体、ビーム伝播経路長調節器、偏光制御光学系および波面調節器などが挙げられる。
【0040】
7.1 リレー光学系
図9は、光学モジュール331を2枚の凹面ミラーを備えているリレー光学系331Cとした光学装置330Cの垂直断面図である。図10は、図9に示すリレー光学系331CのIX−IX断面図である。リレー光学系331Cは、リレー光学系303、305、307、310、312および314のいずれであってもよい。このようなリレー光学系331Cに対してもアクチュエータ部332および計測部333を設けることで、その置き換え後のアライメントを容易且つ迅速に行うことが可能となる。
【0041】
7.2 空間フィルタ
光学モジュール331は、図11に示すような空間フィルタ331Dとしてもよい。空間フィルタ331Dは、たとえば2つの軸外放物面ミラーD331aおよびD331bと、ピンホールプレートD331cとを備えている。ピンホールDプレート331cは、軸外放物面ミラーD331aおよびD331bの焦点位置付近に配置されている。
【0042】
図11では、45度反射の軸外放物面ミラーD331aおよびD331bを組み合わせた場合を示した。ただし、これに限定されない。たとえば球面凹面ミラーや凸レンズの組み合わせで構成された空間フィルタであってもよい。
【0043】
7.3 過飽和吸収体
光学モジュール331は、図12に示すような過飽和吸収体セル331Eであってもよい。過飽和吸収体セル331Eは、入射ウィンドウE331cと、チャンバE331aと、出射ウィンドウE331dとからなる。チャンバE331aの中には、過飽和吸収体(たとえばSF)であるガスまたは可飽和吸収体を含む混合ガスが封入されている。このガスは、たとえば不図示の循環機構と冷却機構を組み合わせてチャンバE331aと冷却機構とを循環してもよい。
【0044】
7.4 ビーム伝播経路長調節モジュール
光学モジュール331は、図13に示すようなビーム伝播経路長調節モジュール331Fであってもよい。ビーム伝播経路長調節モジュール331Fは、たとえば2つの反射面が互いに90°の角度で配置されたミラーF331aと、同様のミラーF331bよりなる。このミラーF331aおよびF331bのどちらか一方または両方をビーム伝播経路に平行(図の白抜き矢印の方向)に移動させることにより、パルスレーザ光31のビーム伝播経路長を調節することができる。
【0045】
7.5 偏光アイソレータ
光学モジュール331は、図14に示すような偏光アイソレータ331Gであってもよい。偏光アイソレータ331Gは、3つのミラーG331a〜G331cを含む。
【0046】
ミラーG331aの反射面には、たとえば反射面に対してS偏光のパルスレーザ光を高反射して、P偏光のパルスレーザ光を透過する膜C1がコートされている。ミラーG331aの反射面と反対側の面には、ミラーG331aを冷却するためのヒートシンクが設置されている。また、ミラーG331bの表面には、反射面に対して直線偏光のパルスレーザ光を円偏光に変換して高反射するλ/4膜C2がコートされている。ミラーG331cの表面には、反射面に対して円偏光のパルスレーザ光を高反射する膜C3がコートされている。
【0047】
ミラーG331aは、その反射面に対してS偏光のパルスレーザ光31をミラーG331bへ反射する。ミラーG331bは、入射したパルスレーザ光31を円偏光に変換しつつ、ミラーG331cへ高反射する。ミラーG331cは、入射したパルスレーザ光31を円偏光のまま、反射する。この円偏光のパルスレーザ光31は、その後、レーザ光集光ミラー22などの集光光学系によってプラズマ生成サイト25に集光させられる。これにより、プラズマ生成サイト25に供給されたドロップレット27にパルスレーザ光33が照射される。
【0048】
パルスレーザ光33の一部は、プラズマ生成サイト25のドロップレット27で反射する場合がある。ドロップレット27で反射した円偏光のパルスレーザ光33の一部は、戻り光となって集光光学系によってコリメートされた後、ミラーG331cによって高反射される。そして、高反射されたパルスレーザ光33は、ミラーG331cによって円偏光からミラーG331aの反射面に対してP偏光となる直線偏光のパルスレーザ光に変換される。このP偏光のパルスレーザ光は、ミラーG331aの膜を透過し基板材料によって吸収される。このように、ドロップレット27からの戻り光は、偏光アイソレータ331Gによって抑制される。
【0049】
8.アクチュエータ部
つぎに、光学装置におけるアクチュエータ部332について、例を挙げて説明する。
【0050】
8.1 2枚高反射ミラー
図15は、アクチュエータ部332の一例を示す。図15に示すように、アクチュエータ部332は、たとえば2つのミラー332aおよび332bと、これらをそれぞれ保持するミラーホルダよりなる。ミラー332aおよび332bは、それぞれの姿勢角度(θx、θy)を制御可能なジンバル機構を有するミラーホルダによって保持されている。ミラー332aおよび332bそれぞれの姿勢角度(θx、θy)を制御することによって、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調整できる。ここで、θxの方向とθyの方向とは、互いに垂直であってもよい。
【0051】
ここで、図16に、ミラー332aおよび332bを保持するミラーホルダ332cの一例を示す。図16に示すように、ミラーホルダ332cは、平面ミラー332a/332bを保持するホルダ3321と、たとえば2つの自動マイクロメータ3323、3324とを備える。ホルダ3321を自動マイクロメータ3323、3324を介して所定のプレートに取り付けることで、ホルダ3321に保持された平面ミラー332a/332bのX軸方向のアオリ角度θxとY軸方向のアオリ角度θyとを所定のプレートに対して調節可能である。このようなミラーホルダには市販品を用いることができる。たとえば、NEWPORT社製AG−M100NV6などであってもよい。
【0052】
このように、パルスレーザ光31のビーム伝播経路は、2つのミラー332aおよび332bそれぞれの姿勢角度(θx、θy)を制御することによって、所望のビーム伝播経路となるように補正できる。ただしアクチュエータ部332の構成は、図15に示す構成に限定されない。たとえば、レーザの光を透過する2つのウエッジ基板をパルスレーザ光31のビーム伝播経路上に配置した構成であってもよい。この構成の場合、それぞれのウエッジ基板をたとえばビーム伝播経路の中心軸を中心に回転させることによって、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調節することができる。このように、アクチュエータ部332は、パルスレーザ光31のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調節できる機構を含んでいればよい。
【0053】
8.2 1枚高反射ミラーとVRMWM高反射ミラーとの組み合わせ
アクチュエータ部332は、図17および図18に示すようなアクチュエータ部332Aに置き換えられてもよい。図17に示すように、アクチュエータ部332Aは、アクチュエータ部332における一方のミラー332aまたは332b(本例ではミラー332b)が、反射光の波面を制御可能なVRWM(Variable Radius Waveform Mirror)332dに置き換えられてもよい。このように、VRWM332dを用いることで、少ない光学素子(本例では2つ)を用いて、パルスレーザ光31のビーム伝播経路と波面との両方を補正することが可能となる。図18はアクチュエータ部332Aによる波面補正の例を示す。
【0054】
8.3 1枚高反射ミラーと1枚ディフォーマブル高反射ミラーの組み合わせ
ビーム伝播経路と波面との両方を補正可能なアクチュエータ部332は、図19に示すようにも構成することができる。図19に示すアクチュエータ部332Bは、デフォーマブルミラー332eと高反射ミラー332bとを備える。デフォーマブルミラー332eには、曲率だけでなく、反射面の凹凸を変更可能なMMDM(Micromachined Membrance Deformable Mirror)などを用いることができる。
【0055】
9.計測部
つぎに、光学装置330における計測部333について、例を挙げて説明する。
【0056】
9.1 ビーム伝播経路上の2点でのビームプロファイル計測
図20は、計測部333の一例を示す。図20に示すように、計測部333は、ビームスプリッタ3331aと、ミラー3331bと、レンズ3332aおよび3332bと、ビームプロファイラ3333aおよび3333bとを含む。ビームプロファイラ3333aの受光面には、ビーム伝播経路上の位置A1でのパルスレーザ光31のビームプロファイル(レーザビームの断面強度プロファイル)が、レンズ3332aによって結像される。一方、ビームプロファイラ333bの受光面には、分岐したビーム伝播経路上の位置A2でのパルスレーザ光31のビームプロファイルが、レンズ3332bによって結像される。このように、離れた複数の位置(A1およびA2)におけるビームプロファイルを計測することで、パルスレーザ光31の方向やダイバージェンス(波面の曲率)などを算出することができる。たとえば各ビームプロファイルの中心位置と、位置A1およびA2間のビーム伝播経路上の距離とから、ビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向を計算することができる。さらに、位置A1およびA2におけるビームプロファイルの大きさの差から、パルスレーザ光31のダイバージェンス(波面の曲率)を計算することができる。
【0057】
9.2 ビームプロファイル+ビームポインティング
計測部333は、図21に示すような計測部333Aに置き換えられてもよい。図21に示すように、計測部333Aは、くさび形ビームスプリッタ3331cと、レンズ3332aおよび3332cと、ビームプロファイラ3333aおよび3333cとを含む。レンズ3332aおよびビームプロファイラ3333aは、計測部333と同様に、くさび形ビームスプリッタ33331cを透過したパルスレーザ光31のビームプロファイルを計測する。一方、ビームプロファイラ3333cは、レンズ3332cの焦点位置に配置される。ビームプロファイラ3333cは、くさび形ビームスプリッタ3331cで反射されたパルスレーザ光31の集光位置におけるビームプロファイルを計測する。各ビームプロファイルの中心位置とレンズ3332cの焦点距離から、パルスレーザ光31のビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向を求めることができる。さらに、各ビームプロファイルの大きさと各プロファイラの観測位置から、パルスレーザ光31のダイバージェンスを求めることができる。
【0058】
9.3 少なくとも1つの貫通穴付きプレートとビームプロファイラの組み合わせ
計測部333は、図22に示すような計測部333Bに置き換えられてもよい。図22に示すように、計測部333Bは、貫通穴付きプレートおよびその貫通孔3334と、ビームスプリッタ3331aと、レンズ3332aと、ビームプロファイラ3333aと、エネルギーセンサ3333dとを含む。貫通穴付きプレートの貫通孔3334は、ビームプロファイルの実質的な計測位置(位置A1)と異なる位置に配置される。ビームプロファイラ3333aの受光面には、貫通穴付きプレートの貫通孔3334を通過したパルスレーザ光31のビーム伝播経路上の位置A1におけるビームプロファイルが結像される。貫通穴付きプレートの貫通孔3334の空間的位置および大きさが既知であれば、この位置とビームプロファイラ3333aで得られるビームプロファイルとから、ビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向、さらにダイバージェンスを求めることができる。また、エネルギーセンサ3333dは、ビームスプリッタ3331aで反射されたパルスレーザ光31のエネルギーを計測する。なお、パルスレーザ光31のエネルギーは、ビームプロファイラ3333aによるビームプロファイルの計測結果から算出してもよい。
【0059】
計測部333は、図23に示すような計測部333Cに置き換えられてもよい。測部333Cは、図22に示す計測部333Bと同様の構成において、レンズ3332aおよびビームプロファイラ3333aが、レンズ3332cおよびビームプロファイラ3333cに置き換えられている。ビームプロファイラ3333cは、レンズ3332cの焦点位置でのレーザスポットの位置および大きさを計測する。図22の場合と同様、貫通孔3334の空間的位置および大きさが既知であれば、この位置とビームプロファイラ3333cで得られるレーザスポットのビームプロファイルとから、ビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向、さらにダイバージェンスを求めることができる。図23の計測部333Cではレーザスポットの位置および大きさを計測するので、図22の333Bに比べてビーム伝播経路の方向を計測する精度を向上することができる。なお、エネルギーセンサ3333dは、ビームスプリッタ3331aで反射されたパルスレーザ光31のエネルギーを計測する。なお、パルスレーザ光31のエネルギーは、ビームプロファイラによる強度分布の計測結果から算出してもよい。
【0060】
9.4 光学モジュールとビームプロファイルラの組み合わせ
計測部333は、図24に示すような計測部333Dに置き換えられてもよい。図24に示すように、計測部333Dは、図22に示す計測部333Bにおける貫通穴付きプレートの貫通孔3334が、増幅器3311の放電管3311aに置き換えられている。このような構成としても、図22に示す計測部333Bと同様の機能を果たすことが可能である。なお、増幅器3311の入射口に貫通穴を配置してもよい。
【0061】
計測部333は、図25に示すような計測部333Eに置き換えられてもよい。図25に示すように、計測部333Eは、図23に示す計測部333Cにおける貫通穴の貫通孔付きプレート3334が、過飽和吸収セル3312に置き換えられている。このような構成としても、図23に示す計測部333Cと同様の機能を果たすことが可能である。なお、過飽和吸収セル3312の入射口に貫通穴を配置してもよい。
【0062】
9.5 シャックハルトマン干渉計
計測部333は、図26に示すような計測部333Fに置き換えられてもよい。図26に示すように、計測部333Fは、シャックハルトマン型の計測部である。計測部333Fは、CCDカメラ3336と、CCDカメラ3336の受光面前面に配置されたマイクロレンズアレイ3335と、を備える。このシャックハルトマン型の計測部333Fによれば、1つのセンサを用いてビーム伝播経路の方向およびダイバージェンスを検出することが可能である。
【0063】
10.制御部
つぎに、光学装置330における制御部334の動作について、例を挙げて説明する。
【0064】
10.1 制御部の制御フロー
図27は、制御部334の主動作を示すフローチャートである。図27に示すように、制御部334は、アライメント動作を開始すると、まず、不図示のメモリ等から、これに予め記憶されている目標値を読み込む(ステップS101)。なお、目標値とは、ビーム伝播経路が所望の状態であるときに計測部333で計測されたビームプロファイルであってもよいし、この値から得られるビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向であってもよい。本例では、パルスレーザ光31のビーム伝播経路の目標位置Ppt(x,y)と、ビーム伝播経路の目標方向Ppθt(θx,θy)とを目標値とする。
【0065】
つぎに、制御部334は、パルスレーザ光31のビームプロファイルを計測する光計測サブルーチンを実行し(ステップS102)、つづいて、計測されたビームプロファイルに基づいて、当該光学装置330におけるアクチュエータ部332を駆動してパルスレーザ光31のビーム伝播経路をアライメントするアライメントサブルーチンを実行する(ステップS103)。その後、制御部334は、アライメントが完了したか否かを確認するアライメント完了確認サブルーチンを実行し(ステップS104)、アライメントが完了したか否かを判定する(ステップS105)。
【0066】
ステップS105の判定の結果、アライメントが完了していない場合(ステップS105のNO)、制御部334は、ステップS102へ帰還して、以降の動作を繰り返す。一方、アライメントが完了している場合(ステップS105のYES)、制御部334は、アライメント後に計測部333で計測された値から得られたビーム伝播経路の位置Pp(x,y)および方向Ppθ(θx,θy)を、次回のアライメント時の目標値に設定するか否かを判定する(ステップS106)。この判定基準は、アライメント回数を基準にしてもよい。たとえば、目標値を毎回のアライメント毎に更新してもよいし、複数回(たとえば2回)のアライメント毎に1回の割合で目標値を更新してもよい。
【0067】
ステップS106の判定の結果、アライメント後の値を目標値に設定する場合(ステップS106のYES)、制御部334は、この値で上述のメモリ等内の目標値を更新し(ステップS107)、処理を終了する。一方、アライメント後の値を目標値に設定しない場合(ステップS106のNO)、制御部334は、処理を終了する。
【0068】
図27のステップS102に示す光計測サブルーチンでは、図28に示すように、制御部334は、計測部333で計測された値を取得する(ステップS111)。つぎに、制御部334は、取得した計測値からビーム伝播経路の位置Pp(x,y)を計算し(ステップS112)、また、取得した計測値におけるレーザスポットの位置からビーム伝播経路の方向Ppθ(θx,θy)を計算する(ステップS113)。その後、制御部334は、図27に示す動作へリターンする。
【0069】
10.2 少なくとも1つの貫通穴がある場合の制御フロー
ここで、図22または図23に示すように、少なくとも1つの貫通穴付きプレートの貫通孔3334を用いた場合、もしくは、図24または図25に示すように、貫通穴付きプレートの貫通孔3334の代わりに貫通穴として機能する光学装置(3311a,3312)を用いた場合、図28に示す光計測サブルーチンは、図29または図30に示すフローに置き換えることができる。図29は、計測部333Bもしくは計測部333Dを用いた際の光計測サブルーチンを示す。図30は、計測部333Cもしくは計測部333Eを用いた際の光計測サブルーチンを示す。
【0070】
図29に示す動作では、制御部334は、計測部333Bもしくは計測部333Dで計測された値を取得すると(ステップS121)、この取得した計測値からビーム伝播経路位置Pp(x,y)を計算する(ステップS122)。また、制御部334は、パルスレーザ光31の強度分布から光強度の積分値Sを計算する(ステップS123)。その後、制御部334は、図27に示す動作へリターンする。なお、この場合、目標値における方向Ppθt(θx,θy)の代わりに、目標の積分値Stが目標値として用いられる。
【0071】
図30に示す動作では、制御部334は、計測部333Cもしくは計測部333Eで計測された値を取得すると(ステップS131)、この取得した計測値におけるレーザスポットの位置から方向Ppθ(θx,θy)を計算する(ステップS132)。また、制御部334は、レーザスポットの強度分布から光強度の積分値Sを計算する(ステップS133)。その後、制御部334は、図27に示す動作へリターンする。なお、この場合、目標値における位置Ppt(x,y)の代わりに、目標の積分値Stが目標値として用いられる。
【0072】
なお、図29および図30に示す動作では、光強度の積分値Sの代わりに、エネルギーセンサ3333dで計測される値を用いてもよい。
【0073】
また、図27のステップS103に示すアライメントサブルーチンを、図31に示す。なお、図31は、図27における光計測サブルーチンを図28に示す光計測サブルーチンとした場合のフローである。図31に示すように、制御部334は、光計測サブルーチンで算出した値と目標値との差を計算する(ステップS141)。この差には、位置Ppの差ΔPp(Δx,Δy)(=Pp(x,y)−Ppt(x,y))と、方向Ppθの差ΔPpθ(Δθx,Δθy)(=Ppθ(θx,θy)−Ppθt(θx,θy))とが含まれる。つぎに、制御部334は、アクチュエータ部332におけるビーム伝播経路調整用ミラー(たとえばミラー332aおよび332b)の角度制御部(たとえばミラーホルダ332c)に、差ΔPp(Δx,Δy)およびΔPpθ(Δθx,Δθy)をゼロに近づけるようにの制御信号を出力する(ステップS142)。この制御信号に応じてアクチュエータ部332が駆動することで、パルスレーザ光31のビーム伝播経路が目標のビーム伝播経路に調整される。
【0074】
図27における光計測サブルーチンを図29に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメントサブルーチンでは、図32に示すように、制御部334は、光計測サブルーチンで算出した値と目標値との差を計算する(ステップS151)。この差には、位置Ppの差ΔPp(Δx,Δy)と、積分値Sの差ΔS(=S−St)とが含まれる。つぎに、制御部334は、アクチュエータ部332におけるビーム伝播経路調整用ミラーの角度制御部に、差ΔPp(Δx,Δy)およびΔSをゼロに近づけるようにの制御信号を出力する(ステップS152)。この制御信号に応じてアクチュエータ部332が駆動することで、パルスレーザ光31のビーム伝播経路が目標のビーム伝播経路に調整される。
【0075】
図27における光計測サブルーチンを図30に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメントサブルーチンでは、図33に示すように、制御部334は、光計測サブルーチンで算出した値と目標値との差を計算する(ステップS161)。この差には、方向Ppθの差ΔPpθ(Δθx,Δθy)(=Ppθ(θx,θy)−Ppθt(θx,θy))と、積分値Sの差ΔSとが含まれる。つぎに、制御部334は、アクチュエータ部332におけるビーム伝播経路調整用ミラーの角度制御部に、差ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびΔSをゼロに近づけるようにの制御信号を出力する(ステップS162)。この制御信号に応じてアクチュエータ部332が駆動することで、パルスレーザ光31のビーム伝播経路が目標のビーム伝播経路に調整される。
【0076】
また、図27のステップS104に示すアライメント完了確認サブルーチンを、図34に示す。なお、図34は、図27における光計測サブルーチンを図28に示す光計測サブルーチンとした場合のフローである。図34に示すように、制御部334は、図27のステップS103によるアライメント後に、計測部333で計測された値を取得する(ステップS171)。つぎに、制御部334は、取得した計測値からアライメント後のビーム伝播経路の位置Pp(x,y)を計算し(ステップS172)、また、取得した計測値におけるレーザスポットの位置からアライメント後のビーム伝播経路の方向Ppθ(θx,θy)を計算する(ステップS173)。つぎに、制御部334は、アライメント後のビーム伝播経路の位置Pp(x,y)と目標値Ppt(x,y)との差ΔPp(Δx,Δy)、および方向Ppθ(θx,θy)と目標値Ppθt(θx,θy)との差ΔPpθ(Δθx,Δθy)を計算する(ステップS174)。さらに、この差ΔPp(Δx,Δy)およびΔPpθ(Δθx,Δθy)の絶対値が、予め設定しておいた許容値ΔPpr(Δx,Δy)およびΔPpθr(Δθx,Δθy)以下であるかどうかを計算する(ステップS175)。図27のステップS105では、差ΔPp(Δx,Δy)およびΔPpθ(Δθx,Δθy)の絶対値が許容値ΔPpr(Δx,Δy)およびΔPpθr(Δθx,Δθy)以下である場合、アライメントが完了したと判断する(ステップS105のYES)。
【0077】
図27における光計測サブルーチンを図29に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメント完了確認サブルーチンでは、図35に示すように、制御部334は、図27のステップS103によるアライメント後に、計測部333で計測された値を取得する(ステップS181)。つぎに、制御部334は、取得した計測値からアライメント後のビーム伝播経路の位置Pp(x,y)を計算し(ステップS182)、また、取得した計測値におけるパルスレーザ光31の強度分布からアライメント後のパルスレーザ光31の光強度の積分値Sを計算する(ステップS183)。つぎに、制御部334は、アライメント後のパルスレーザ光31の位置Pp(x,y)と目標値Ppt(x,y)との差ΔPp(Δx,Δy)、および積分値Sと目標値Stとの差ΔSを計算する(ステップS184)。さらに、この差ΔPp(Δx,Δy)およびΔSの絶対値が、予め設定しておいた許容値ΔPpr(Δx,Δy)およびΔSr以下であるかどうか計算する(ステップS185)。図27のステップS105では、差ΔPp(Δx,Δy)およびΔSの絶対値が許容値ΔPpr(Δx,Δy)およびΔSr以下である場合、アライメントが完了したと判断する(ステップS105のYES)。
【0078】
図27における光計測サブルーチンを図30に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメント完了確認サブルーチンでは、図36に示すように、制御部334は、図27のステップS103によるアライメント後に、計測部333で計測された値を取得する(ステップS191)。つぎに、制御部334は、取得した計測値におけるレーザスポットの位置からアライメント後のビーム伝播経路の方向Ppθ(θx,θy)を計算し(ステップS192)、また、取得した計測値におけるレーザスポットの強度分布からアライメント後のパルスレーザ光31の光強度の積分値Sを計算する(ステップS193)。つぎに、制御部334は、アライメント後のパルスレーザ光31の方向Ppθ(θx,θy)と目標値Ppθt(θx,θy)との差ΔPpθ(Δθx,Δθy)、および積分値Sと目標値Stとの差ΔSを計算し(ステップS194)、この差ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびΔSの絶対値が、予め設定しておいた許容範囲ΔPpθr(Δθx,Δθy)およびΔSr以下であるかどうか計算する(ステップS195)。図27のステップS105では、差ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびΔSの絶対値が許容範囲ΔPpθr(Δθx,Δθy)およびΔSr以下である場合、アライメントが完了したと判断する(ステップS105のYES)。
【0079】
11.LPP式EUV光生成装置
つぎに、上述した光学装置をEUV光生成装置1(図2参照)のレーザシステム3に適用した場合を、以下に説明する。図37は、光学装置が適用されたEUV光生成装置1Aの概略構成を示す。なお、図37では、説明の簡略化のため、図1におけるターゲットセンサ4については、省略する。
【0080】
11.1 構成
図37に示すレーザシステム3Aでは、各光モジュール(304〜307および310〜314)が、アクチュエータ部304a〜307aおよび310a〜314a、計測部304b〜307bおよび310b〜314b、および制御部304c〜307cおよび310c〜314cを備えた光学装置304A〜307Aおよび310A〜314Aに置き換えられている。EUV光生成制御システム5は、各光学装置304A〜307Aおよび310A〜314Aにおける制御部304c〜307cおよび310c〜314cを統括する。制御部304c〜307cおよび310c〜314cは、EUV光生成制御システム5から与えられた命令をトリガとして、上述したアライメント動作を独自に実行することで、個々のアライメントを実行するようにしてもよい。また、各制御部304c〜307cおよび310c〜314cは、各々光学装置304A〜307Aおよび310A〜314Aのアライメントを完了した場合、アライメント完了信号をEUV光生成制御システム5に送信するようにしてもよい。
【0081】
11.2 レーザコントローラの制御フロー
つぎに、図37に示すEUV光生成制御システム5の動作を、以下に例を挙げて説明する。図38は、EUV光生成制御システム5の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、アライメントを実行する光学装置数がnであるとする。また、マスターオシレータ301側の光学装置を第1光学装置とし、順にチャンバ2側の光学装置を第n光学装置とする。図37に示すEUV光生成制御システム5では、アライメントを実行する順序はnが示す序数順として説明する。ただし、部分的な光学装置のメンテナンスを実施した場合は、メンテナンスを実施した光学装置とそれより下流の光学装置のみをアライメントするようにしてもよい。
【0082】
図38に示すように、EUV光生成制御システム5は、起動後、アライメントが必要か否かを判定するアライメント開始判定サブルーチンを実行する(ステップS201)。アライメント開始判定サブルーチンにおいて、アライメントを開始する必要があると判断すると、EUV光生成制御システム5は、マスターオシレータ301をレーザ発振させるレーザ発振サブルーチンを実行する(ステップS202)。
【0083】
つぎに、EUV光生成制御システム5は、不図示のカウンタの値kをリセット(k=0)し(ステップS203)、つづいてカウンタを1つインクリメント(k=k+1)する(ステップS204)。つぎに、EUV光生成制御システム5は、k番目の第k光学装置にアライメントを実行させる制御サブルーチンを実行する(ステップS205)。
【0084】
つぎに、EUV光生成制御システム5は、カウンタの値kがnに達したか否か(k=n)を判定し(ステップS206)、kがnに達していない場合(ステップS206のNO)、ステップS204へ帰還して、次の光学装置に対する動作を実行する。一方、kがnに達している場合(ステップS206のYES)、EUV光生成制御システム5は、アライメントを終了し(ステップS207)、本動作を終了する。
【0085】
図38のステップS201に示すアライメント開始判定サブルーチンでは、図39に示すように、EUV光生成制御システム5は、レーザシステム3Aのビーム伝播経路に関与する部品の新設やメンテナンス等があったか否かを判定し(ステップS211)、部品の新設やメンテナンス等があるまで本動作を待機する(ステップS211のNO)。一方、部品の新設やメンテナンス等があった場合(ステップS211のYES)、EUV光生成制御システム5は、図38に示す動作へリターンする。
【0086】
図38のステップS202に示すレーザ発振サブルーチンでは、図40に示すように、EUV光生成制御システム5は、マスターオシレータ301の発振を開始し(ステップS221)、図38に示す動作へリターンする。これにより、マスターオシレータ301からプラズマ生成サイト25までのビーム伝播経路に、マスターオシレータ301から出力されたパルスレーザ光が導入される。なお、EUV光生成制御システム5は、マスターオシレータ301の発振を開始後、外部等から停止の指示が入力されるまで、所定繰返し周波数の発振トリガをマスターオシレータ301に出力し続けてもよい。
【0087】
なお、図38のステップS202に示すレーザ発振サブルーチンは、図41に示すレーザ発振サブルーチンに置き換えてもよい。図41では、EUV光生成制御システム5は、マスターオシレータ301の発振を開始し(ステップS231)、つづいて、増幅器304、306、311および313のうち少なくとも1つに電力を供給し(ステップS232)、その後、図38に示す動作へリターンする。なお、増幅器304、306、311および313の少なくとも1つに供給される電力は、十分な検出精度を得るのに必要となるエネルギーのパルスレーザ光31が各計測部304b〜307bおよび310b〜314bに入力される程度に、パルスレーザ光31を増幅可能な電力であるとよい。
【0088】
図38のステップS205に示す個々の光学装置の制御サブルーチンは、たとえば図27〜図36を用いて説明したアライメント動作と同様である。ただし、図27のステップS102に示す光計測サブルーチンと、ステップS103に示すアライメントサブルーチンと、ステップS104に示すアライメント完了確認サブルーチンとは、それぞれ図42〜図44に示す動作に置き換えてもよい。また、ダイバージェンスの補正を行う場合はアクチュエータ部を図17〜図19に示した、アクチュエータ部332A若しくは332Bとするとよい。
【0089】
図42に示す光計測サブルーチンでは、制御部334は、計測部333で計測された値を取得すると(ステップS241)、この取得した計測値からビーム伝播経路の位置Pp(x,y)およびビームプロファイルの大きさDを計算する(ステップS242)。また、制御部334は、取得した計測値におけるレーザスポットの大きさBDおよび位置からビーム伝播経路の方向PpθおよびダイバージェンスBpθを計算する(ステップS243)。その後、制御部334は、図27に示す動作へリターンする。なお、この場合、目標値として、位置Ppt(x,y)と、方向Ppθt(θx,θy)と、ダイバージェンスBpθtとが用いられる。
【0090】
図27における光計測サブルーチンを図42に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメントサブルーチンでは、図43に示すように、制御部334は、光計測サブルーチンで算出した値と目標値との差を計算する(ステップS251)。この差には、位置Ppの差ΔPp(Δx,Δy)と、方向Ppθの差ΔPpθ(Δθx,Δθy)と、ダイバージェンスBpθの差ΔBpθとが含まれる。つぎに、制御部334は、たとえば、アクチュエータ部332Aにおけるビーム伝播経路調整用ミラーの角度制御部に、差ΔPp(Δx,Δy)およびΔPpθをゼロに近づけるための制御信号を出力する(ステップS252)。つづいて、制御部334は、アクチュエータ部332A(波面調整可能なアクチュエータ部)における波面調整用ミラーの制御部に、差ΔBpθをゼロに近づけるための制御信号を出力する(ステップS253)。この制御信号に応じてアクチュエータ部332Aが駆動することで、パルスレーザ光31のビーム伝播経路が目標のビーム伝播経路に調整される。
【0091】
図27における光計測サブルーチンを図42に示す光計測サブルーチンとした場合、アライメント完了確認サブルーチンは図44に示すようにするとよい。図44において制御部334は、図27のステップS103によるアライメント後に、計測部333で計測された値を取得する(ステップS261)。つぎに、制御部334は、取得した計測値からアライメント後のビーム伝播経路の位置Pp(x,y)およびビームプロファイルの大きさDを計算し(ステップS262)、また、取得した計測値におけるレーザスポットの大きさBDおよび位置からアライメント後のビーム伝播経路の方向PpθおよびダイバージェンスBpθを計算する(ステップS263)。つぎに、制御部334は、アライメント後のパルスレーザ光31の位置Pp(x,y)と目標値Ppt(x,y)との差ΔPp(Δx,Δy)、方向Ppθ(θx,θy)と目標値Ppθt(θx,θy)との差ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびダイバージェンスBpθと目標値ダイバージェンスBpθtとの差ΔBpθを計算する(ステップS264)。この差ΔPp(Δx,Δy)、ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびΔBpθの絶対値が、予め設定しておいた許容範囲ΔPpr(Δx,Δy)、ΔPpθr(Δθx,Δθy)およびΔBpθr以下であるかどうか計算する(ステップS265)。その後リターンし、図27のステップS105に移行する。図27のステップS105では、差ΔPp(Δx,Δy)、ΔPpθ(Δθx,Δθy)およびΔBpθの絶対値が許容範囲ΔPpr(Δx,Δy)、ΔPpθr(Δθx,Δθy)およびΔBpθr以下である場合、アライメントが完了したと判断する(ステップS105のYES)。
【0092】
12.ガイドレーザ光を含むレーザ装置とEUV光源装置
各光学装置におけるアライメントには、ガイドレーザ光が用いられてもよい。図45に、ガイドレーザ光を用いた光学装置のアライメントが可能なEUV光生成装置1Bの概略構成を示す。なお、図45では、説明の簡略化のため、図1におけるターゲットセンサ4については、省略する。
【0093】
12.1 構成
図37と図45と比較すると明らかなように、EUV光生成装置1Bのレーザシステム3Bは、ガイドレーザ光を出力可能なガイドレーザ装置350をさらに備える。ガイドレーザ装置350から出力されたガイドレーザ光351は、たとえばビーム伝播経路合成部352として機能するダイクロイックミラーによって、空間フィルタ302を出力したパルスレーザ光31と略同一のビーム伝播経路に導入される。ガイドレーザ光351は、たとえば計測部333におけるビームプロファイラなどのセンサに対して感度が高い波長の光であってもよい。このガイドレーザ装置350には、たとえば1μm付近の波長のレーザ光を出力可能なYAGレーザやファイバーレーザなどを適用できる。また、ガイドレーザ光351は、可視光線であってもよい。この場合、ガイドレーザ装置350には、HeNeレーザ(633nm)、YAGレーザ(ただし、第二高調波光(533nm))を適用できる。
【0094】
12.2 レーザコントローラの制御フロー
図45に示すEUV光生成制御システム5の動作は、基本的には、図37に示すEUV光生成制御システム5の動作と同様である。ただし、図45に示すEUV光生成制御システム5は、各光学装置のアライメント時(図38のステップS202)において、マスターオシレータ301の代わりに、ガイドレーザ装置350を発振させる(図46のステップS301参照)。各光学装置でのアライメントは、このガイドレーザ光351を計測して得られた値に基づいて実行される。
【0095】
このように、ガイドレーザ光351を用いる構成とすることで、ビームプロファイラやエネルギーセンサ等として使用する半導体光センサの感度が高い波長(たとえば200nm〜5000nm)のレーザ光をアライメントに使用することが可能となる。これにより、ガイドレーザ光351のビーム伝播経路を高精度に検出することができる。その結果、各光学装置において高精度なアライメントが可能となる。また、ターゲット照射用のパルスレーザ光31を出力する必要がないため、安全な状態で、アライメントを行うことができる。
【0096】
13.位置決め機構
つぎに、EUV光生成装置の設置例を、以下に例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、図37に示すEUV光生成装置1Aを引用して説明する。ただし、以下の説明では、マスターオシレータ301および空間フィルタ302についても、アクチュエータ部332、計測部333および制御部334を備えた光学装置として構成する。また、本例では増幅器として、図7および図8に示す光学装置330Bを適用する。
【0097】
図47は、レーザシステム3Aが設置されるサブファブリックフロア(以下、サブファブという)1Fと、上階の床2Fに設置されたチャンバ2および露光装置60とを示す垂直断面図である。図48は、図47におけるIVXVIII−IVXVIII断面図である。
【0098】
レーザシステム3Aにおけるマスターオシレータ301、空間フィルタ302、増幅器304、306、311、313、およびリレー光学系305、310、312、314等の光学モジュール331は、サブファブ1F上の定盤335に、位置決めプレート301d、302d、304d〜306dおよび313d〜314dを用いてそれぞれ固定される。また、各光学モジュール331に設けられるアクチュエータ部332、計測部333および制御部334は、ユニット化するとよい。以下の説明では、これらのユニットを、アライメントユニット301B、302B、304B〜307Bおよび310B〜314Bとする。各アライメントユニット301B、302B、304B〜307Bおよび310B〜314Bは、同じくサブファブ1F上の定盤335に、位置決めプレート301e、302e、304e〜307eおよび310e〜314eを用いてそれぞれ固定される。なお、定盤335は一体成形品であっても、互いに位置決め可能な複数の定盤を締結した構成であってもよい。また、定盤335には床からの振動伝達を軽減するダンパ等を介して床に設置されるとよい。さらに、床自体が制振機能を有する場合は床に直接位置決め可能なようにしてもよい。この場合、床を定盤335とみなす事ができる。
【0099】
レーザシステム3Aから出力されたパルスレーザ光31は、ミラー341により高反射され、床2Fの貫通穴2Faを通過して、ミラー342に入射する。このミラー342により反射されたパルスレーザ光31は、チャンバ2に入射する。レーザシステム3Aからミラー341およびミラー342を介してチャンバ2までは、図示しないビーム伝播経路管により接続されていてもよい。望ましくは、ビーム伝播経路管内が不活性ガス(N2、He等)によってパージされているとよい。
【0100】
図49および図50に、レーザシステム3Aの他の設置例を示す。図49は、レーザシステム3Aのサブファブにおける配置の例を示す上視図である。図50は、図49におけるIVXIX−IVXIX断面図である。図49および図50に示すように、レーザシステム3Aは、複数の定盤335Aおよび335Bに分かれて設置されてもよい。要求されるレーザ出力によってはレーザシステムが巨大になり、ビーム伝播経路が長大となる場合がある。このような場合にレーザシステム3Aを1つの定盤335上に構成すると、定盤自体が周囲温度の変動によって膨張あるいは収縮することが想定される。結果として、レーザシステム3Aにおけるビーム伝播経路の空間的な位置が変動してしまう可能性がある。そのような場合は、レーザシステム3Aを複数の定盤に分割し、分割した各定盤を離間して設置してもよい。たとえば、図49および図50に示すように定盤を2つに分割配置した場合、マスターオシレータ301が設置された定盤335Aの出射側には、アクチュエータ部303Aを設けるとよい。さらに定盤335B上における、アクチュエータ部303Aから出力されたパルスレーザ光31が入射する位置には、計測部303Bを設けるとよい。
【0101】
アクチュエータ部303Aは、姿勢制御可能な1つ以上のミラー3031〜3033を用いて構成される。計測部303Bは、ビームスプリッタ3034、ミラー3035およびセンサ3036を用いて構成される。アクチュエータ部303Aの各ミラー3031〜3033は、上述した光学装置と同様、計測部303Bで計測された値に基づいて、不図示の制御部によって制御される。これにより、定盤335Aおよび335B間のビーム伝播経路をアライメントすることが可能となる。結果、定盤を分割配置した場合でも、分割した定盤間のビーム伝播経路をアライメントすることが可能となる。
【0102】
13.1 ピンによる位置決め
つぎに、個々の光学装置の位置決め機構について、以下に例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、図5に示した光学装置330Aを例に挙げる。
【0103】
図51は、位置決めピンを用いた光学装置の位置決め機構の一例を示す。図52は、図51のVXI−VXI断面図を示す。上述したように、光学モジュール331、アクチュエータ部332および計測部333は、位置決めプレート336〜338にそれぞれ固定される。各位置決めプレート336〜338は、たとえば定盤335に設けられた位置決めピン339によって設置位置が規制された状態で定盤335に保持されてもよい。これにより、光学装置のアライメントを容易に粗調整することが可能となる。なお、各位置決めプレート336〜338には、定盤335に設けられた位置決めピン339と嵌合する穴が所定の位置に所定の径および深さで形成されている。なお位置決めピンは各位置決めプレートにつき3個設置する例を示したが、2個でもよい。
【0104】
13.1 レールによる位置決め
図53は、レールを用いた光学装置の位置決め機構の一例を示す。図54は、図53のVXIII−VXIII断面図を示す。図53および図54に示すように、光学モジュール331、アクチュエータ部332および計測部333は、レール339aと図示しない車輪等により、定盤335上をスライドさせて移動することが可能である。レール339aは、位置決めプレート336〜338の所定の位置に固定されてもよい。あるいは、定盤335上の所定の位置に直接固定されていてもよい。レール339aの終端には、光学モジュール331、アクチュエータ部332および計測部333を規定位置で停止させるための位置決めブロック339cが設けられる。この位置決めブロック339cは、光学モジュール331を交換した際の位置再現性を確保する。光学モジュール331、アクチュエータ部332および計測部333は、規定位置に移動後、固定ブロック339bで固定されるとよい。このように、光学モジュール331、アクチュエータ部332および計測部333を移動機構によって移動可能とすることで、これらが手持ちで移動することが困難な重量物であっても、新設やメンテナンスや交換等を容易に行うことが可能となる。
【0105】
ここで、レールを用いた位置決め機構の個々の一例を、図55に示す。なお、図55では、光学モジュール331を例に説明する。図55に示す例では、位置決めプレート336が、光学モジュール331を所定の位置に搭載する台車336aと、定盤335に固定されるベース336bとに分かれている。ベース336bは、たとえばボルト339fによって定盤335に固定される。このベース336bには、台車336aをスライドさせる方向に延在するレール339aと、脱輪防止のための溝機構339dとが設けられる。一方、台車336aには、レール339a上を走行するための車輪339gと、脱輪防止のために溝機構339dにスライド可能に嵌合される脱輪防止版339eとが設けられる。車輪339gは、台車336aがレール339aに沿って走行するための構成である。溝機構339dおよび脱輪防止板339eは、車輪339gのレール339aからの脱輪を防止するだけでなく、台車336aのベース336bに対する左右(走行方向と垂直方向)のずれを最小限に規制する。
【0106】
図56に、レールを用いた位置決め機構の個々の他の一例を示す。図56に示すように、本例では、ベース336bには、レール339aの代わりに、スライドレール(オス)339kが設けられる。一方、台車336aには、車輪339gの代わりに、スライドレール(オス)339kにかみ合うスライドレール(メス)339hが設けられる。スライドレール339kおよび339hは、台車336aをベース336bに対してスライドさせるだけでなく、台車336aのベース336bに対する左右(走行方向と垂直方向)のずれを最小限に規制する。その他の構成は、図55に示す構成と同様である。
【0107】
14.補足説明
ここで、上述したVRWM332dについて説明する。図57〜図59は、VRWM332dの一例を示す。図57〜図59に示すように、VRWM332dは、たとえば反射面の曲率を変更することが可能なデフォーマブルミラーである。VRWM332dは、たとえば反射面が平面である場合、図57に示すように、平行光のパルスレーザ光31を平行光として反射する。また、たとえば反射面が凹面となるように曲率が調整されていた場合、図58に示すように、VRWM332dは、平行光のパルスレーザ光31を焦点距離が+F離れた焦点F12に集光するように反射する。一方、たとえば反射面が凸面となるように曲率が調整されていた場合、図59に示すように、VRWM332dは、平行光のパルスレーザ光31を焦点距離−F離れた位置に焦点F13を持つようにビーム拡大されたパルスレーザ光として反射する。このように、反射面の曲率を変更可能なVRWM332dを用いることで、入射光に対する反射光の波面を所定の波面に調節することが可能である。
【0108】
また、上記実施の形態およびその変形例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば各実施の形態に対して適宜例示した変形例は、他の実施の形態に対して適用することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B LPP式EUV光生成装置
2 チャンバ
3、3A、3B レーザシステム
4 ターゲットセンサ
5 EUV光生成制御システム
6 露光装置
21 ウィンドウ
22 レーザ光集光ミラー
23 EUV集光ミラー
24 貫通孔
25 プラズマ生成サイト
26 ドロップレット生成器
27 ドロップレット(ドロップレットターゲット)
28 ターゲット回収器
29 接続部
291 壁
292 中間焦点(IF)
31 パルスレーザ光
32 パルスレーザ光
33 パルスレーザ光
34 レーザ光進行方向制御アクチュエータ
251、252 EUV光
291 壁
292 中間焦点
301 マスターオシレータ
302 空間フィルタ
304、306、311、313 増幅器
303、305、307、310、312、314 リレー光学系
304A〜307A、310A〜314A、330、330A、330B、330C、340 光学装置
304a〜307a、310a〜314a、332 アクチュエータ部
304b〜307b、310b〜314b、333 計測部
304c〜307c、310c〜314c、334 制御部
331 光学モジュール
331A スラブ型増幅器
331B 高速軸流型増幅器
331C リレー光学系
331D 空間フィルタ
331E 過飽和吸収体セル
331F ビーム伝播経路長調節モジュール
331G 偏光アイソレータ
332a、332b ミラー
333a ビームスプリッタ
333b センサ
335,335A、335B 定盤
301d〜307d、310d〜314d、301e、302e、304e〜307e、310e〜314e、336〜338 位置決めプレート
301B、302B、304B〜307Bおよび310B〜314B アライメントユニット
350 ガイドレーザ装置
351 ガイドレーザ光
3031〜3033、3035 ミラー
3034 ビームスプリッタ
3036 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光のビーム伝播経路上に配置された光学モジュールと、
前記ビーム伝播経路上に配置され、前記レーザ光のビーム伝播経路を調節するアクチュエータ部と、
前記ビーム伝播経路上に配置され、前記ビーム伝播経路を検出する計測部と、
前記計測部によって検出された前記レーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する制御部と、
を備える光学装置。
【請求項2】
前記光学モジュールは、レーザ光を増幅する増幅器、リレー光学系、過飽和吸収セル、ビーム伝播経路長を調整する光学系、空間フィルタ、および偏光制御素子を備えた光学系のうち少なくとも1つを1つ以上含む請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ部は、前記光学モジュールの入力側に配置されている請求項1記載の光学装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ部は、前記光学モジュールの出力側に配置されている請求項1記載の光学装置。
【請求項5】
前記レーザ光と異なる波長のガイドレーザ光を出力するガイドレーザ光源と、
前記ガイドレーザ光のビーム伝播経路を前記レーザのビーム伝播経路に略一致させるビーム伝播経路合成部と、
をさらに備え、
前記計測部は、前記ガイドレーザ光のビーム伝播経路を検出し、
前記制御部は、前記計測部による前記ガイドレーザ光のビーム伝播経路の検出結果に基づいて、前記アクチュエータ部を制御する請求項1記載の光学装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の光学装置を少なくとも1つ含むレーザ装置。
【請求項7】
請求項6記載のレーザ装置を備える極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【公開番号】特開2012−175006(P2012−175006A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37703(P2011−37703)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】