説明

光学装置、偏波合成装置、及び光学装置の製造方法

【課題】レンズの焦点を任意の位置に調整可能な光学装置を提供する。
【解決手段】光学素子10と、光学素子10に接する第1面N1および第1面N1に対し傾斜した第2面N2を有する透光性の第1傾斜部材21と、第1傾斜部材21の第2面N2に接する第3面N3および第1傾斜部材21の第1面N1に略平行な第4面N4を有する透光性の第2傾斜部材22と、第2傾斜部材22の第4面N4に接し、第1傾斜部材21の第1および第2面N1,N2ならびに第2傾斜部材22の第3および第4面N3,N4を介して光学素子10に光学的に結合されるレンズ30と、を備え、第1傾斜部材21の第2面N2と第2傾斜部材22の第3面N3を接触させた状態で第1傾斜部材21と第2傾斜部材22とをスライド移動させることによりレンズ30と光学素子10との距離が調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、偏波合成装置、及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、光導波路素子710の出力端面Mにロッドレンズ720を接するようにして設けた光学装置の一構成例(上面図)である。このような構成においては、ロッドレンズ720の長さLに応じて焦点Fの位置が変わることによって、出射光が拡散したり(同図(A))、平行光となったり(同図(B))、集光したり(同図(C))する。そのため、例えば出射光を平行光としたい場合には、焦点Fが光導波路730の出力端に一致するよう適正なレンズ長さを有したロッドレンズ720を使用する必要がある。レンズ長さLが適正値から十数μmでもずれてしまうと出射光が平行光とならないため、ロッドレンズの製造許容誤差は非常に小さい。また、光導波路の屈折率やコア径によっても所要のレンズ長さが異なるので、光導波路素子の製造ばらつきに対応するためには、レンズ長さの異なる多数のロッドレンズを用意しなければならない。
【0003】
また、レンズ基板の一方の面に複数のマイクロレンズを形成し、他方の面を一方の面に対して傾斜した傾斜面としたマイクロレンズアレイが知られている(特許文献1)。このようなマイクロレンズアレイによれば、複数のマイクロレンズのうち、最適な基板厚さにもっとも近い箇所のマイクロレンズを選択することで焦点の位置を調整できるので、図7のロッドレンズの場合のような製造上の許容誤差を低減する効果や、光導波路素子の製造ばらつきへの対応が容易であるといった効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−101848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成において、マイクロレンズアレイの焦点は、任意の位置に自由に調整できる訳ではなく、複数設けられたマイクロレンズの位置に対応した有限個の位置しかとり得ない。そのため、出射光を平行光にすることができない場合が生じてしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レンズの焦点を任意の位置に調整可能な光学装置、偏波合成装置、及び光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の光学装置は、光学素子と、前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有する透光性の第1傾斜部材と、前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有する透光性の第2傾斜部材と、前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1および第2面ならびに前記第2傾斜部材の第3および第4面を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、を備え、前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離が調整可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の光学装置は、光学素子と、前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有し、前記第1面と前記第2面を貫通する第1貫通穴が設けられた第1傾斜部材と、前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有し、前記第3面と前記第4面を貫通する第2貫通穴が設けられた第2傾斜部材と、前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1貫通穴および前記第2傾斜部材の第2貫通穴を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、を備え、前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離が調整可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の光学装置において、前記第1または第2傾斜部材は、前記第1または第2貫通穴の内壁へ通じた第3貫通穴を有し、前記第3貫通穴を介して前記第1および第2貫通穴の内部が吸引されることにより前記スライド移動が可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の光学装置において、前記光学素子は、光軸が互いに非平行な2つの光を出射する光学素子であり、前記レンズと前記光学素子との距離は、前記レンズを通過後の前記2つの光の光軸が互いに平行となるような距離に調整されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の偏波合成装置は、上記の光学装置と偏波合成素子とを備え、前記光学素子は、偏波面が互いに直交し且つ光軸が互いに非平行な2つの光を出射する光学素子であり、前記レンズと前記光学素子との距離は、前記レンズを通過後の前記2つの光の光軸が互いに平行となるような距離に調整され、前記偏波合成素子は、前記レンズを通過した前記2つの光を入射して同一光軸上に出射することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の偏波合成装置において、前記光学素子は、偏波面が互いに直交し且つ光軸が互いに非平行な2つの変調光を出射する光変調器であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の光学装置の製造方法は、光学素子と、前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有する透光性の第1傾斜部材と、前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有する透光性の第2傾斜部材と、前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1および第2面ならびに前記第2傾斜部材の第3および第4面を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、を備えた光学装置の製造方法であって、前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離を調整する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レンズの焦点を任意の位置に調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による光学装置において第1,第2透光性基板の位置と半球レンズから出射される光の関係を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。
【図4】本発明の第3実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。
【図5】本発明の第4実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。
【図6】本発明の第5実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。
【図7】従来の光学装置の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。図1において、光学装置1は、光導波路素子(光学素子)10と、第1透光性基板(第1傾斜部材)21と、第2透光性基板(第2傾斜部材)22と、半球レンズ30とを含んで構成されている。
【0018】
光導波路素子10は、基板101上に光導波路102が形成された光学素子であり、光導波路102が基板101の端面M1に対して直角に(すなわち図中Z方向に平行に)配置されている。光導波路素子10の例として、光変調器や半導体レーザなどが適用可能である。
図1には、光導波路素子10の出力端部付近を示しており、光導波路102を図中左方向(−Z方向)から伝搬してきた光は、後述する第1透光性基板21、第2透光性基板22、及び半球レンズ30を介して、光学装置1から図中右方向(+Z方向)へ向けて出射される。
【0019】
第1透光性基板21は、平面N1と平面N1に対して傾斜した平面N2とを有する基板であり、使用する波長の光に対して十分な透光性を有する材質(例えばガラス)で形成されている。第1透光性基板21は、平面N1が光導波路素子10の端面M1と接した状態で、光導波路素子10に固定されている。
【0020】
第2透光性基板22は、第1透光性基板21と同様に、平面N3と平面N3に対して傾斜した平面N4とを有する基板であり、使用する波長の光に対して十分な透光性を有する材質(例えばガラス)で形成されている。第2透光性基板22は、平面N3が第1透光性基板21の平面N2と接した状態で、第1透光性基板21に固定されている。平面N3と平面N4のなす角度は、第1透光性基板21の平面N1と平面N2のなす角度に等しい。そのため、第2透光性基板22の平面N4は、第1透光性基板21の平面N1と平行になっている。
【0021】
半球レンズ30は、外周面が半球面と平面M2とで構成されたレンズである。半球レンズ30は、平面M2が第2透光性基板22の平面N4と接した状態で、第2透光性基板22に固定されている。
【0022】
次に、図2を参照し、光学装置1における光導波路素子10と第1透光性基板21と第2透光性基板22と半球レンズ30の詳細な位置関係を、光学装置1の製造方法とあわせて以下説明する。
【0023】
まず、光導波路素子10と第1透光性基板21と第2透光性基板22と半球レンズ30を、この順番に配置する。そして、半球レンズ30を半球面の中心Cが光導波路102の延長線上に来るようにした状態で、基板101の端面M1と第1透光性基板21の平面N1、第1透光性基板21の平面N2と第2透光性基板22の平面N3、及び、第2透光性基板22の平面N4と半球レンズ30の平面M2を、それぞれ接触させる。光導波路102と直角な方向(図中X方向)における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置は、この時点では任意である。また、光導波路素子10と第1透光性基板21と第2透光性基板22の各部材間は、この時点ではまだ固定せず、第2透光性基板22と半球レンズ30間のみを接着などにより固定しておく。
【0024】
次に、光導波路素子10の光導波路102に、図中左方向(−Z方向)から光を伝搬させる。このとき、光導波路102に対し直角な方向(X方向)における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置に応じて、光導波路102の出射端部と半球レンズ30との距離が変わるため、半球レンズ30を通過後の光は、図2(A)のように拡散した光であるか、同図(B)のようにコリメートされた光であるか、同図(C)のように集光された光であるかのいずれかの状態となっている。
【0025】
例えば、図2(B)においては、第1透光性基板21と第2透光性基板22を併せた厚さ(平面N1と平面N4の距離、すなわち光導波路102の出射端部と半球レンズ30との距離)が半球レンズ30の焦点距離に等しい厚さT2となるように、図中X方向における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置が調整されている。この場合、半球レンズ30の焦点Fが光導波路102の出射端部と丁度一致することになるため、半球レンズ30を通過後の光は、図のようにコリメートされた状態になる。
【0026】
また、図2(A)においては、第1透光性基板21と第2透光性基板22を併せた厚さ(平面N1と平面N4の距離、すなわち光導波路102の出射端部と半球レンズ30との距離)T1が図2(B)の厚さT2(=半球レンズ30の焦点距離)よりも薄くなるように、図中X方向における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置が調整されている。この場合、半球レンズ30の焦点Fは、光導波路102の出射端部よりも半球レンズ30から遠い図中左側(−Z方向)に位置することになるため、半球レンズ30を通過後の光は、図のように拡散された状態になる。
【0027】
また、図2(C)においては、第1透光性基板21と第2透光性基板22を併せた厚さ(平面N1と平面N4の距離、すなわち光導波路102の出射端部と半球レンズ30との距離)T3が図2(B)の厚さT2(=半球レンズ30の焦点距離)よりも厚くなるように、図中X方向における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置が調整されている。この場合、半球レンズ30の焦点Fは、光導波路102の出射端部よりも半球レンズ30に近い図中右側(+Z方向)に位置することになるため、半球レンズ30を通過後の光は、図のように集光された状態になる。
【0028】
さて次に、基板101の端面M1と第1透光性基板21の平面N1、及び、第1透光性基板21の平面N2と第2透光性基板22の平面N3をそれぞれ接触させたまま、第1透光性基板21の位置を光導波路102と直角な方向(図中X方向)に適宜移動(スライド)させて、半球レンズ30を通過後の光が、例えば図2(B)のようにコリメートされた状態となるように調整する。第1透光性基板21の位置を図中X方向に移動させることにより、第1透光性基板21と第2透光性基板22を併せた平面N1,N4間の厚さが変化するので、半球レンズ30の焦点Fの位置を光軸方向(図中Z方向)に変化させることができる。このとき、第1透光性基板21の移動を必要に応じた細かさで行えば、半球レンズ30の焦点Fの位置が連続的に変化するので、半球レンズ30を通過後の光を必ずコリメートされた状態に調整することが可能である。
なお、光学装置1の用途によっては、図2(A)や(C)のような状態となるよう調整してもよい。
【0029】
最後に、上記のように所望の位置へ移動させた第1透光性基板21と光導波路素子10及び第2透光性基板22とを、接着などにより固定する。
こうして、光学装置1を構成している各部材の位置が調整される。
【0030】
なお、第1透光性基板21と第2透光性基板22の界面(平面N2,N3)で光が屈折しないように、第1透光性基板21と第2透光性基板22は屈折率が同じであることが望ましい。
また、上記説明では本発明を光学装置1の出力側に適用した場合について記載したが、本発明は入力側にも同様に適用可能である。
また、半球レンズ30に代えて、外周面が非球面の一部と平面とで構成されたレンズを用いてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。図3において、光学装置2は、第1実施形態の光学装置1の第1透光性基板21および第2透光性基板22に代えて、貫通穴が設けられた第1傾斜基板(第1傾斜部材)23および第2傾斜基板(第2傾斜部材)24を備えて構成されている。
【0032】
第1傾斜基板23は、平面N1と平面N2を貫通する貫通穴H1が設けられている点を除いて、第1実施形態の光学装置1の第1透光性基板21と同様の構成である。また、第2傾斜基板24は、平面N3と平面N4を貫通する貫通穴H2が設けられている点を除いて、第1実施形態の光学装置1の第2透光性基板22と同様の構成である。なお、貫通穴H2の径は半球レンズ30の径よりも小さく、貫通穴H1の径は貫通穴H2の径と同程度であるとする。
【0033】
図3において、光導波路素子10の光導波路102を図中左方向(−Z方向)から伝搬してきた光は、第1傾斜基板23の貫通穴H1、第2傾斜基板24の貫通穴H2、及び半球レンズ30を介して、光学装置2から図中右方向(+Z方向)へ向けて出射される。このように光導波路102からの出射光が貫通穴H1,H2を通過する構成であるため、第1傾斜基板23および第2傾斜基板24の材質は、当該光に対して透光性を有している必要がなく、例えば金属や樹脂などを適用することができる。そのため、第1実施形態のようにガラスなどの透光性の材質を用いる場合に比べて、光学装置2は加工性に優れ、また安価に製造可能である。
【0034】
上記のように構成された光学装置2においても、基板101の端面M1と第1傾斜基板23の平面N1、及び、第1傾斜基板23の平面N2と第2傾斜基板24の平面N3をそれぞれ接触させたまま、第1傾斜基板23の位置を光導波路102と直角な方向(図中X方向)に適宜移動(スライド)させることにより、半球レンズ30を通過後の光をコリメートされた状態(図2(B)参照)となるように調整することが可能である。
【0035】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。図4において、光学装置3は、第2実施形態の光学装置2と同様の第1傾斜基板25に、さらにもう1つの貫通穴H3を設けて構成されている。
【0036】
貫通穴H3は、第1傾斜基板25の外側面Noutから貫通穴H1の内壁面Ninへ貫通して設けられている。また、貫通穴H3の外側面Nout側には、吸引用ニードル40が接続されている。吸引用ニードル40は、貫通穴H3を通じて貫通穴H1および貫通穴H2内の空気を吸引するための管状の部品である。
【0037】
本実施形態の光学装置3においても、基板101の端面M1と第1傾斜基板25の平面N1、及び、第1傾斜基板25の平面N2と第2傾斜基板24の平面N3をそれぞれ接触させたまま、第1傾斜基板25の位置を光導波路102と直角な方向(図中X方向)に適宜移動(スライド)させることにより、半球レンズ30を通過後の光をコリメートされた状態(図2(B)参照)となるように調整する。
【0038】
このとき、貫通穴H1および貫通穴H2によって形成されている中空内の空気を貫通穴H3を通じて吸引用ニードル40により吸引しながら、第1傾斜基板25のX方向への移動を行う。吸引によって貫通穴H1および貫通穴H2の中空内が負圧に保たれるため、第1傾斜基板25をX方向に移動させた際に、第1傾斜基板25が基板101や第2傾斜基板24から離れてしまうことがない。よって、基板101の端面M1と第1傾斜基板25の平面N1、及び、第1傾斜基板25の平面N2と第2傾斜基板24の平面N3をそれぞれ接触させた状態を、容易に維持することが可能であり、作業性に優れる。
【0039】
また、第2傾斜基板24と半球レンズ30間を接着などにより固定し、さらに、図4に示すように半球レンズ30の+X側と−X側に半球レンズ30と接する規制用治具50を設置することで、第2傾斜基板24のX方向への動きが規制されるようにしておく。これにより、第1傾斜基板25をX方向に移動させた際に、基板101と第1傾斜基板25と第2傾斜基板24が互いに接触した状態のまま、第2傾斜基板24をZ方向にのみ移動させることができる。
【0040】
なお、本実施形態の変形例として、貫通穴H3を第2傾斜基板24の方に設けるようにしてもよい。
【0041】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。図5において、光学装置4は、光導波路素子(光学素子)11の構成のみが第1実施形態と異なる。
【0042】
光導波路素子11は、基板101上に2つの光導波路103,104が形成された光学素子である。一方の光導波路103は、基板101の端面M1近傍において、端面M1に近いほどもう一方の光導波路104から離れるように端面M1に対して斜めに配置され、他方の光導波路104は、基板101の端面M1近傍において、端面M1に近いほど光導波路103から離れるように端面M1に対して斜めに配置されている。これにより、光導波路103,104を図中左方向(−Z方向)から伝搬してきた光は、光導波路素子11から図中右方向(+Z方向)へ向けて互いに非平行な光軸上に出射される。
【0043】
本実施形態の光学装置4では、図中X方向における第1透光性基板21と第2透光性基板22の相対位置に応じて、半球レンズ30を通過後の2つの光は、図5(B)のように互いに光軸が平行な状態となるか、または、同図(A)や(C)のように互いに光軸が非平行な状態となる。
【0044】
そして、第1実施形態と同様に、基板101の端面M1と第1透光性基板21の平面N1、及び、第1透光性基板21の平面N2と第2透光性基板22の平面N3をそれぞれ接触させたまま、第1透光性基板21の位置を図中X方向に適宜移動(スライド)させることで、半球レンズ30を通過後の2つの光を、例えば図5(B)のように互いに光軸が平行な状態となるように調整することが可能である。
なお、光学装置4の用途によっては、図5(A)や(C)のような状態となるよう調整してもよい。
【0045】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態による光学装置の構成を示す上面図である。この光学装置5は、偏波合成された変調光を出力する偏波合成型変調器(偏波合成装置)であり、上述した第4実施形態による光学装置4の光導波路素子11を、LN光変調器60と1/2波長板70aとガラス板70bとにより構成するとともに、半球レンズ30の後段にさらに偏波合成素子80を備えたものである。
【0046】
LN光変調器60は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)(以下LNと称す)基板上に光導波路及び変調電極が形成されてなる。
このLN光変調器60の光導波路は、マッハツェンダー導波路MAの両アームにマッハツェンダー導波路MB,MCが設けられ、マッハツェンダー導波路MBの両アームにマッハツェンダー導波路601,602が、マッハツェンダー導波路MCの両アームにマッハツェンダー導波路603,604が、それぞれ設けられた入れ子構造を有する。即ち、LN光変調器60への入力光は、マッハツェンダー導波路MAの入力導波路605へ導入され、アーム上のマッハツェンダー導波路MBとMCへ分岐される。また、マッハツェンダー導波路MBへ入力された光は、マッハツェンダー導波路601と602へ分岐され、マッハツェンダー導波路MCへ入力された光は、マッハツェンダー導波路603と604へ分岐される。そして、マッハツェンダー導波路601と602からの出力光は、マッハツェンダー導波路MBにより合波されてマッハツェンダー導波路MAのアーム606へ導入され、マッハツェンダー導波路603と604からの出力光は、マッハツェンダー導波路MCにより合波されてマッハツェンダー導波路MAのアーム607へ導入される。
【0047】
マッハツェンダー導波路601〜604は、それぞれに設けられた不図示の変調電極とともにLN光変調器を形成している。各LN光変調器601〜604の変調電極には、不図示の駆動回路から例えば10Gb/sの駆動信号が与えられ、各LN光変調器601〜604は、10Gb/sで変調された変調光を出力する。マッハツェンダー導波路MBのLN光変調器601と602の変調方式は、ここではDQPSK(差動四相位相偏移変調)を用いる。マッハツェンダー導波路MCのLN光変調器603と604の変調方式も同様である。DQPSKにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム606,607へ導入される光は、20Gb/sの変調光となる。
【0048】
マッハツェンダー導波路MAのアーム606は、LN基板(LN光変調器60)の一端面Mの近傍部分(出力導波路6061)が、端面Mの法線に対して角度θをなすように設けられている。また、同様に、マッハツェンダー導波路MAのアーム607は、端面Mの近傍部分(出力導波路6071)が、端面Mの法線に対して角度θをなすように設けられている。角度θ,θは、出力導波路6061と出力導波路6071がLN基板の内部で交差するような角度である。このような導波路配置により、出力導波路6061からは図中の下方へ向けて斜めに光が出射され、出力導波路6071からは図中の上方へ向けて斜めに光が出射されることとなる。なお、出力導波路6061,6071が端面Mに対して斜めに設けられていることにより、端面Mから出力導波路6061,6071への戻り光を低減することができる。
【0049】
1/2波長板70aは、出力導波路6061から出射された光の偏波面を90°回転させる。また、ガラス板70bは、出力導波路6071から出射された光に、出力導波路6061から出射された光が1/2波長板70aから受ける位相遅延と同じ位相遅延を付与する(偏波面は変化させない)。これにより、1/2波長板70aを出射した光とガラス板30bを出射した光は、互いに偏波面が90°傾いた状態(位相差なし)になる。
【0050】
本実施形態の光学装置5では、第1透光性基板21と1/2波長板70aおよびガラス板70bならびに第2透光性基板22とを、第4実施形態と同様にそれぞれ接触させたまま、第1透光性基板21の位置を図中X方向に適宜移動(スライド)させることで、半球レンズ30を通過後の2つの光が互いに光軸が平行な状態となるように調整しておく。
【0051】
偏波合成素子80は、平板状に形成された複屈折媒質であり、出力導波路6061から出射され1/2波長板70aを通過した光が常光LOとして偏波合成素子80内を伝搬し、出力導波路6071から出射されガラス板70bを通過した光が異常光LEとして偏波合成素子80内を伝搬するように、その光学軸の向きが設定されている。これにより、偏波合成素子80を通過した常光LOと異常光LEが同一の光路上に出射されて、互いの偏波面が直交する20Gb/sの変調光が合成されてなる40Gb/sの変調光が得られる。偏波合成素子80としては、例えば、ルチルや方解石から作られたものを用いることができる。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1〜5…光学装置 10,11…光導波路素子 21…第1透光性基板 22…第2透光性基板 23,25…第1傾斜基板 24…第2傾斜基板 30…半球レンズ 40…吸引用ニードル 50…規制用治具 60…LN光変調器 70a…1/2波長板 70b…ガラス板 80…偏波合成素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、
前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有する透光性の第1傾斜部材と、
前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有する透光性の第2傾斜部材と、
前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1および第2面ならびに前記第2傾斜部材の第3および第4面を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、
を備え、
前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離が調整可能であることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
光学素子と、
前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有し、前記第1面と前記第2面を貫通する第1貫通穴が設けられた第1傾斜部材と、
前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有し、前記第3面と前記第4面を貫通する第2貫通穴が設けられた第2傾斜部材と、
前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1貫通穴および前記第2傾斜部材の第2貫通穴を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、
を備え、
前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離が調整可能であることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
前記第1または第2傾斜部材は、前記第1または第2貫通穴の内壁へ通じた第3貫通穴を有し、前記第3貫通穴を介して前記第1および第2貫通穴の内部が吸引されることにより前記スライド移動が可能であることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記光学素子は、光軸が互いに非平行な2つの光を出射する光学素子であり、
前記レンズと前記光学素子との距離は、前記レンズを通過後の前記2つの光の光軸が互いに平行となるような距離に調整されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の項に記載の光学装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1の項に記載の光学装置と偏波合成素子とを備え、
前記光学素子は、偏波面が互いに直交し且つ光軸が互いに非平行な2つの光を出射する光学素子であり、
前記レンズと前記光学素子との距離は、前記レンズを通過後の前記2つの光の光軸が互いに平行となるような距離に調整され、
前記偏波合成素子は、前記レンズを通過した前記2つの光を入射して同一光軸上に出射する
ことを特徴とする偏波合成装置。
【請求項6】
前記光学素子は、偏波面が互いに直交し且つ光軸が互いに非平行な2つの変調光を出射する光変調器であることを特徴とする請求項5に記載の偏波合成装置。
【請求項7】
光学素子と、前記光学素子に接する第1面および該第1面に対し傾斜した第2面を有する透光性の第1傾斜部材と、前記第1傾斜部材の第2面に接する第3面および前記第1傾斜部材の第1面に略平行な第4面を有する透光性の第2傾斜部材と、前記第2傾斜部材の第4面に接し、前記第1傾斜部材の第1および第2面ならびに前記第2傾斜部材の第3および第4面を介して前記光学素子に光学的に結合されるレンズと、を備えた光学装置の製造方法であって、
前記第1傾斜部材の第2面と前記第2傾斜部材の第3面を接触させた状態で前記第1傾斜部材と前記第2傾斜部材とをスライド移動させることにより前記レンズと前記光学素子との距離を調整する工程を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29653(P2013−29653A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165370(P2011−165370)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】