説明

光学試験表面の形状を判定する方法及び装置

【課題】光学試験表面の誤差と適合光学系の誤差とを分離することを可能にする方法及び装置を提供する。
【解決手段】光学試験表面14の形状を判定する方法は、測定ビーム30の波面を適合光学系20により光学試験表面14の所望の形状に適合させ、光学試験表面14の形状を適合済測定ビームにより干渉測定するステップと、適合済測定ビームを光学試験表面に種々の入射角で照射し、測定ビームの波面を光学試験表面14との相互作用後にそれぞれ測定するステップと、個々の入射角ごとに測定された波面からの干渉測定結果に対する適合光学系20の影響を確定するステップと、光学試験表面の形状を、適合光学系20の確定された影響を干渉測定結果から除去することにより判定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学試験表面の形状を判定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2011年2月18日付けで出願された独国特許出願公開第10 2011 004 376.4号の優先権を主張する。この特許出願の全開示を参照により本願に援用する。
【0003】
回転対称性からの偏差が従来の干渉計のダイナミクスを明らかに超える高精度光学自由曲面の形状は、いわゆる補償システム(Cシステム)を用いて測定される。以下で適合光学系(adaptation optics)とも称するこのような補償システムは、例えば平面波面又は球面波面を有する入射波から、被測定自由曲面の所望の形状と同一の波面を有する波を形成するよう構成される。多くの場合、計算機ホログラム(CGH)又は複数のCGHの組み合わせが適合光学系として用いられる。
【0004】
2つのCGHからなる適合光学系を用いる場合、特許文献1に記載のように、球面較正ミラーを用いた適合光学系の部分的な較正が可能である。しかしながら、未知の偏差が残る。
【0005】
回転対称球面は、回転平均化を用いて高精度で測定される。回転平均化は、それぞれ異なる試料の回転位置での一連の測定値の記録及び処理を意味すると理解される。回転平均化は、非対称試料と適合光学系のシステム誤差とを分離することを可能にする。回転対称誤差は分離することができず、複雑な理論的バジェット考察により評定しなければならない。回転平均化は、さらに、不完全な干渉計コンポーネントの結果としての干渉計ビーム経路における僅かな偏差に起因して生じる短波誤差の平均化も達成する。自由曲面では、回転対称性がないことにより回転平均化を実施することが不可能である。これに起因して、適合光学系の回転対称誤差及び非対称誤差の両方が不確定のままとなり、バジェット考察により評定しなければならない。さらに、干渉計で生じる短波誤差の平均化が省かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0128829号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、特に光学試験表面の誤差と適合光学系の誤差とを分離することを可能にする方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明によれば、光学試験表面の形状を判定する方法であって、測定ビームの波面を適合光学系により光学試験表面の所望の形状に適合させ、光学試験表面の形状を適合済測定ビームにより干渉測定する方法により達成される。さらに、適合済測定ビームは、光学試験表面に種々の入射角で照射され、測定ビームの波面は、光学試験表面との相互作用後に、すなわち種々の入射角のそれぞれに関して測定される。さらに、個々の入射角ごとに測定された波面からの干渉測定結果に対する適合光学系の影響が確定され、光学試験表面の形状が、適合光学系の確定された影響を干渉測定結果から除去することにより判定される。
【0009】
例えばミラー又はレンズ等の光学素子の光学有効表面を、光学試験表面と称する。好ましくは、測定ビームの波長の測定は、測定ビームが光学試験表面との相互作用後に適合光学系と再度相互作用した後に行われる。
【0010】
換言すれば、本発明の基本概念は、適合光学系及び光学試験表面を備えるシステムを種々の画角で測定するというものである。通常の干渉法では、試験光線が試験表面に垂直に差し込むが、本発明による方法では、種々の入射角で測定が行われる。種々の入射角で、試験光線は横方向に異なる位置で個々の表面を通過する。コンポーネントから出る波面の個別寄与の横方向シアリング(lateral shearing)が生じる。
【0011】
本発明に従って測定を行うことにより、種々の入射角で、波面全体に対する関連の個々の光学表面の寄与を分離することができる。光学試験表面の誤差と適合光学系の誤差との分離が、このようにして可能である。さらに、短波干渉計誤差を平均化することができる。
【0012】
本発明による一実施形態によれば、光学分岐デバイスにより、参照ビームが測定ビームから分岐される。干渉測定結果に対する分岐デバイスの影響は、個々の入射角ごとに測定された波面から確定され、光学試験表面の形状の確定中に、分岐デバイスの確定された影響が干渉測定結果から除去される。
【0013】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、測定ビームの波面の測定は、検出器カメラにより記録された干渉パターンを評価することにより実施される。測定ビームの個別光線は、検出器カメラにおける個々の測定点に割り当てられる。さらに、レイトレーシングを用いて、個別光線の突入点(break-through points)のシミュレーション座標が、入射角の関数として適合光学系の少なくとも1つの光学表面に関して提供され、干渉測定結果に対する適合光学系の影響の確定中に、突入点の座標が考慮される。これに関連して、適合光学系の光学表面は、適合光学系と相互作用する波の波面を変える全表面、例えば回折構造を有するCGHの表面等を意味すると理解される。レイトレーシングは、所望の状態の干渉計、適合光学系、及び光学試験表面を備えるシステムで行われることが好ましい。
【0014】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、波面は、レイトレーシングにより入射角の関数としてシミュレートされ、シミュレーション中に考慮した波面に対する適合光学系の少なくとも1つの光学表面の寄与がそれにより変更され、シミュレーション結果を測定波面と比較することにより、少なくとも1つの光学表面の寄与が確定される。さらに、確定された寄与は、干渉測定結果に対する適合光学系の影響を確定する際に用いられる。
【0015】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、光学試験表面の所望の形状は自由曲面である。これに関して、自由曲面は、回転対称性を有さない表面を意味すると理解される。特に、自由曲面は、表面の少なくとも1つの点において各回転対称面から5μm以上の偏差を有する。換言すれば、自由曲面は、少なくとも1つの点において全回転対称面から5μm以上ずれるという点で全回転対称面とは異なる表面により表すことができる。
【0016】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、適合済測定ビームの照射時に、光学試験表面に対する入射角は2次元で変更される。入射角の2次元変化は、測定ビームのビーム方向が光学試験表面に対する垂線に対応しない2つの傾斜軸に関する傾斜により変更されることを意味すると理解される。
【0017】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、光学試験表面は、マイクロリソグラフィ用の光学素子により形成される。特に、光学素子は、マイクロリソグラフィ用の投影露光機械(projection exposure tool)の一部として、例えば、該機械の投影対物光学系又は照明系の一部として働く。本発明によるさらに別の実施形態によれば、光学素子はEUVミラーとして構成される。
【0018】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、適合光学系は、回折光学素子、特にCGHを備える。
【0019】
さらに、本発明によれば、光学試験表面の形状を判定する装置が提供される。本装置は、測定ビームの波面を光学試験表面の所望の形状に適合させる適合光学系を備える。本装置は、光学試験表面の形状を干渉測定するよう構成される。本発明による装置は、適合済測定ビームを種々の入射角で光学試験表面に照射する入射角変更デバイスと、評価デバイスとをさらに備える。評価デバイスは、光学試験表面との相互作用後に種々の入射角で測定された測定ビームの波面からの干渉測定結果に対する適合光学系の影響を確定し、且つ適合光学系の確定された影響を干渉測定結果から除去することにより光学試験表面の形状を判定するよう構成される。
【0020】
本発明による装置の一実施形態によれば、入射角変更デバイスは調整可能な偏向ミラーを備える。偏向ミラーにより、適合済測定ビームを種々の入射角で光学試験表面に照射することができる。
【0021】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、入射角偏光デバイスは、偏向ミラーと、測定ビームの伝播方向に対して横方向に相互にシフトさせた複数の異なる位置から、測定ビームを偏向ミラーに照射するよう構成された測定ビーム発生デバイスとを備える。一変形形態によれば、測定ビーム発生デバイスは、測定ビームを放出する出口開口と、測定ビームの伝播方向に対して横方向に出口開口を移動させるよう構成された並進デバイスとを備える。測定ビーム発生デバイスは、可撓性導波管、特に光ファイバを含むことができ、導波管の端には出口開口が配置される。別の変形形態によれば、測定ビーム発生デバイスは、相互に横方向に変位して配置された複数の放射源を備える。
【0022】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、入射角変更デバイスは少なくとも1つの屈折素子を備える。別の実施形態によれば、入射角変更デバイスは、偏向ミラーの隣に少なくとも1つの反射素子を備える。
【0023】
本発明によるさらに別の実施形態によれば、適合光学系は、測定ビームと適合光学系との相互作用により参照ビーム及び物体ビームを発生させるよう構成された2つの回折構造を備え、物体ビームは、光学試験表面の所望の形状に適合した波面を有する。参照ビームは、反射性参照素子の参照表面に適合した波面を有することができ、例えば、参照ビームの波面は、球面フィゾーレンズにおける反射のために球状であり得る。一変形形態によれば、適合光学系は、例えば計算機ホログラムの形態の、測定ビームのビーム経路内に連続して配置された2つの回折光学素子を備える。別の変形形態によれば、適合光学系は、二値化(double coded)計算機ホログラム等の二値化回折光学素子を備え得る。
【0024】
さらに別の実施形態によれば、本発明による装置は、上掲の実施形態のいずれかによる方法を実施するよう構成される。
【0025】
本発明による方法の上掲の実施形態に関して特定した特徴を、本発明による装置に準用することができる。逆に、本発明による装置の上掲の実施形態に関して特定した特徴を、本発明による方法に準用することができる。本発明の実施形態のこれら及び他の特徴は、特許請求の範囲並びに明細書及び部面に記載される。個々の特徴は、本発明の実施形態として単独で又は組み合わせて実施してもよく、又は他の応用分野で実施してもよい。さらに、個々の特徴は、本願及び/又は継続出願の係属中に保護を請求する、それ自体が保護可能な有利な実施形態を表し得る。
【0026】
本発明の上記の及びさらに他の有利な特徴は、添付の概略図面を参照して以下の発明を実施するための形態に示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】測定ビームを種々の入射角で光学表面に照射することにより光学表面の形状を判定する装置であって、干渉計ユニット及びキャビティユニットを備える装置の本発明による一実施形態の概略断面図である。
【図2】入射角εでの入射測定ビームの反射を示す、図1に示す光学表面の拡大断面図である。
【図3】図1に示す実施形態と比較して異なる干渉計ユニットの実施形態を有する、光学表面の形状を判定する装置の本発明によるさらに別の実施形態の概略断面図である。
【図4】図3に示す実施形態と比較して異なる干渉計ユニットの実施形態を有する、光学表面の形状を判定する装置の本発明によるさらに別の実施形態の概略断面図である。
【図5】図1、図3、及び図4のいずれか1つに示す装置で使用される本発明によるキャビティユニットのさらに別の実施形態の概略断面図である。
【図6】図1、図3、及び図4のいずれか1つに示す装置で使用される本発明によるキャビティユニットのさらに別の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下で説明する例示的な実施形態では、相互に機能的又は構造的に同様である要素には、可能な限り同一又は同様の参照符号を付けてある。したがって、特定の例示的な実施形態の個々の要素の特徴を理解するためには、他の例示的な実施形態の説明又は本発明の概説を参照すべきである。
【0029】
投影露光機械の説明を容易にするために、図中、図示のコンポーネントの各相対位置を示す直交xyz座標系が明記されている。図1において、y方向は図平面から垂直に延び、x方向は右側に延び、z方向は下側に延びる。
【0030】
図1は、光学試験表面14の形状を判定する装置10の本発明による一実施形態を示し、光学試験表面14は、極紫外(EUV)波長域の放射線を反射する光学素子12の反射面の形態である。光学試験表面14は、いわゆる自由曲面として構成され、すなわち回転対称性を有さず、特に少なくとも1つの点において各回転対称面から5μm以上の偏差を有する。換言すれば、自由曲面は、全回転対称面から少なくとも1つの点において5μm以上ずれると言う点で全回転対称面とは異なる表面により表すことができる。装置10により測定される光学素子12は、例えば、マイクロリソグラフィ用の投影露光機械のミラー、特に該機械の投影対物光学系又は照明系のミラーであり得る。
【0031】
装置10は、干渉計ユニット24、キャビティユニット21、及び評価デバイス26を備える。キャビティユニット21は、フィゾー板22、回折光学素子20の形態の補償システム(Cシステム)、及び保持デバイス16を備える。保持デバイス16は、被測定光学素子12、回折光学素子20、及びフィゾー板22を保持して、上記コンポーネントが剛性キャビティを形成するようにする役割を果たす。この目的で、保持デバイス16は、被測定光学素子12、回折光学素子20、及びフィゾー板22を支持するために、素子ホルダ18−1、18−2、及び18−3がそれぞれ突出する複数の保持柱19を備える。キャビティユニット21内の素子は、測定後に交換することができ、他の被測定光学素子及び対応の回折光学素子を保持デバイス16にその後挿入できるようになっている。
【0032】
干渉計ユニット24は、干渉測定を行うのに十分なコヒーレンスを有する測定放射線を発生させる放射源27を備える。測定放射線は、可視又は不可視波長域にあり得る。例えば、測定放射線は、約633nmの波長を有するヘリウムネオンレーザの光であり得る。放射源27には、光ファイバの形態の導波管28が取り付けられ、その端から測定放射線が発散測定ビーム30の形態で最初に出射する。測定ビーム30は、最初にコリメータ31を通過し、コリメータ31により上記測定ビームが平行拘束に変換される。測定ビーム30は、続いて調整可能な偏向ミラー32により、フィゾー板22、回折光学素子20、及び被測定光学素子12から形成されたキャビティの方向に偏向される。
【0033】
偏向ミラー32での反射後、測定ビーム30は、調整可能なスプリッタミラー36を通過してからフィゾー板22に当たり、フィゾー板22の下側にあるフィゾー面42において入射測定ビーム30の強度の一部が反射され参照ビーム44を形成する。測定ビーム30の非反射部分は、計算機ホログラム(CGH)の形態であり適合光学系として働く回折光学素子20を通過する。この目的で、回折光学素子20は、測定ビーム30の波面を光学試験表面14の所望の形状に適合させるよう構成され、光学試験表面14は、上述のように、回転対称性を有さない自由曲面として構成される。調整可能な偏向ミラー32は、測定ビームが光学試験表面14に垂直に当たるようここでは設定される。適合光学系は、異なる構成とすることもでき、例えば、連続して配置されたCGHの形態の2つの回折素子により形成することもできる。
【0034】
光学試験表面14での測定ビーム30の反射後、測定ビーム30は、回折光学素子20、フィゾー板22を再度通過してから参照ビーム44と共に調整可能なスプリッタミラー36により干渉計ユニット24の検出アームへ反射される。検出アームは、コリメータ46、アパーチャ48、接眼レンズ50、及び2次元分解放射線検出器(two-dimensionally resolving radiation detector)の形態のカメラ52を備える。カメラ52において重畳することにより、測定ビーム30及び参照ビーム44はインターフェログラムを生成し、そこから、測定された光学試験表面14の所望の形状からのその偏差が確定される。光学試験表面14の所望の形状が既知であるので、光学試験表面14の実際の形状は確定された偏差から導出される。
【0035】
図1に示す干渉計ユニット24と、図3及び図4に関して続いて説明する干渉計ユニットとは、いわゆるサブアパーチャ測定ステッチング干渉計(subaperture-measuring stitching interferometer)として設計される。本実施形態では、測定ビームは、被測定光学試験表面14の部分領域のみを対象とする。したがって、光学試験表面14は、干渉計ユニット24を変位させることにより重複部分で測定される。この目的で、干渉計ユニット24は、干渉計ユニット24を矢印25で示すようにxy平面内で変位させる変位デバイスを備える。測定された表面部分の測定結果は、続いて計算により合成される。代替的に、干渉計ユニット24は、全面測定干渉計として設計することもできる。この場合、測定ビーム30の断面は、光学試験表面14全体を対象とするのに十分なほど大きい。サブアパーチャ測定ステッチング干渉計が、より高い局所分解能を可能にする一方で、全面測定干渉計としての設計は、干渉計ユニット24の光学系により導入されるアーチファクトを平均化して所要測定時間を短縮することを可能にする。
【0036】
しかしながら、上述の干渉測定により判定された光学試験表面14の形状の精度は、本例の場合は回折光学素子20により形成される適合光学系の精度により制限される。換言すれば、適合光学系における誤差、すなわち波面適合の不正確さが、干渉測定結果に含まれる。以下で説明する措置は、適合光学系誤差を干渉測定結果から除去することを可能にする。
【0037】
上述の措置によれば、調整可能な偏向ミラー32は、図2に示す入射測定ビーム30aの入射角εを2次元的に変更するよう種々の連続した傾斜位置に配置される。この目的で、調整可能な偏向ミラー32をy軸及びx軸の両方に対して傾斜させる。図1は、例として、両矢印によりy軸に対する傾斜運動34を示す。
【0038】
入射測定ビーム30aを光学試験表面14に対する垂線29に対して角度εだけ傾斜させるよう調整可能な偏向ミラー32を傾斜させた場合、光学試験表面14での反射により発生した戻り測定ビーム30bは、垂線29に対して角度−εだけ傾斜する。これにより、戻り測定ビーム30bは、フィゾー板22及び回折光学素子20を通過する際に横方向にずれる。詳細には、横方向オフセットは、光学表面54−1として示すフィゾー板22の上側ではΔxであり、光学表面54−2として示す参照表面42を形成するフィゾー板22の下側ではΔxであり、光学表面54−3として示す回折光学素子20の上側ではΔxであり、光学表面54−4として示す回折光学素子20の下側ではΔxである。換言すれば、個々の光学表面から生じる全波面への個別寄与の横方向シアリングが生じる。調整可能なスプリッタミラー36は、戻り測定ビーム30bの変更方向への対応した傾斜運動38により適合される。
【0039】
x方向及びy方向の個々の傾斜位置εに関して、カメラ52で測定された各波面Wε(x,y)がカメラ画素x及びyの関数として記録される。波面Wε(x,y)は、往路及び復路での(while passing in and returning)、干渉計ユニット24の外部の光学表面iの全部の個別波面寄与からなる。図1に示す例示的な実施形態では、表面iは、表面54−1、54−2、54−3、54−4、及び光学試験表面14を含む。以下が適用される。
【0040】
【数1】

【0041】
式中、Wε,i(x,y)は、突入点x,yへ進む際の表面iの個別寄与であり、W′εi(x′,y′)は、突入点x′,y′へ戻る際の表面iの個別寄与であり、Nは、干渉計ユニット24の外部の表面iの数である。方程式(1)は、図5及び図6に示す実施形態に対応して適用可能であり、これを続いて説明する。入射角εの変更時に測定ビームの横方向シアリングが生じる各キャビティユニットにおける全表面の、個別波面寄与が解析され得る。
【0042】
x方向及びy方向で変更した種々の入射角εを有する一連の波形Wε(x,y)は、カメラ52により検出された各干渉パターンを評価することにより記録される。ε=0での光学表面iの個別寄与W(x,y)が、続いて評価デバイス26により記録された波面Wε(x,y)から反復して求められる。これは、種々のアルゴリズムで実施することができる。
【0043】
本発明の実施形態による第1アルゴリズムによれば、測定ビーム30の個別光線は、検出器カメラ52における個々の測定点に、すなわち個々のカメラ画素(x,y)に割り当てられる。各カメラ画素(x,y)に割り当てられた個別光線は、光学表面iを備える光学系を通して対応のカメラ画素を照明する放射線の経路を特定する。続いて、レイトレーシングにより、光学表面iに対する個別光線の突入点のシミュレーション座標が、入射角εの関数として提供される。レイトレーシングは、完全な光学系で、すなわち所望の状態の干渉計ユニット24及び光学表面iで実施される。続いて、突入点の座標を考慮して、ε=0で測定された波面測定結果に対する個々の光学表面iの影響W(x,y)が反復して求められる。反復の結果として、個別寄与W(x,y)の変更時に突入点が変わらないと想定される。
【0044】
本発明によるアルゴリズムのさらに別の実施形態によれば、波面Wε(x,y)は、レイトレーシングにより入射角εの関数としてシミュレートされる。シミュレーション中に考慮された光学表面iの寄与W(x,y)はここで変更される。シミュレーション結果を測定された波面Wε(x,y)と比較することにより、光学表面の寄与W(x,y)が求められる。換言すれば、このアルゴリズムによれば、表面寄与W(x,y)の反復がレイトレーシングプログラムを直接用いて実施される。この場合、表面寄与は、シミュレーションが測定結果に対応するまで補間により、例えばスプラインにより点毎に変更される。
【0045】
最後に、ε=0で測定された波面に基づき計算された光学試験表面14の形状が、光学試験表面14から生じない個別寄与W(x,y)を除去することにより補正される。
【0046】
設計変形形態による図1に示す装置10は、以下で説明するように構成される。装置10は、ベストフィット球面からのずれが5mm以下である自由曲面を測定するよう設計される。回折光学素子20の通常のサイズとして、4インチ、6インチ、9インチ、及び12インチが挙げられる。単一の測定サブアパーチャにおいて測定されるサブアパーチャの直径は、25mm〜250mmの範囲内にある。4個〜1,000個のサブアパーチャ測定値を相互にステッチングすることができる。入射角εは、0.5°〜5°で変わり得る。傾斜から得られる個々の素子の測定ビームの横方向シアリングは、各素子の直径の2%〜20%であり得る。
【0047】
図3は、光学素子12の光学試験表面14の形状を判定する装置10の本発明によるさらに別の実施形態を示す。図3に示す装置10は、図1に示す実施形態のキャビティ21及び干渉計ユニット324を備える。
【0048】
干渉計324は、図1を参照して説明したタイプの放射源27及び導波管28を備え、これらが合わせて測定ビーム発生デバイスを形成する。測定放射線は、発散測定ビーム30の形態で導波管28の端から出射する。測定ビーム30が導波管28から出射する場所を、出口開口56と称する。測定ビーム30は、スプリッタミラー364の形態の偏向ミラーによりキャビティユニット21の方向へ偏向され、屈折コリメータ366を通過した後に、いわゆる入射測定ビーム30aとしてフィゾー板22に当たる。屈折コリメータは、1つ又は複数のレンズを備え得る。
【0049】
図2に示すような入射測定ビーム30aの入射角εは、図3に示す実施形態において、出口開口56を含む導波管28の端を、出口開口56から出射する測定ビーム30の伝播方向に関して、すなわち図3の座標系のyz平面において横方向に並進させることにより変更される。導波管28の端の並進運動は、図3に両矢印362で示され、並進デバイスにより行われる。運動362は、出口開口56から出射する測定ビーム30をその伝播方向に関して横方向にシフトさせるよう行われる。このシフトが、フィゾー板22に対する入射測定測定ビーム30aの傾斜をもたらす。
【0050】
光学試験表面14での入射測定ビーム30aの反射後にキャビティユニット21から出る戻り測定ビーム30bは、参照ビーム44と共にコリメータ366を逆方向に通過した後、スプリッタミラー364を通過して干渉計ユニット324の検出アームに入る。干渉計ユニット324の検出アームは、図1に関して上述した干渉計ユニット24の検出アームに相当し、アパーチャ48、屈折接眼レンズ50、及びカメラ52を備え、カメラ52に評価デバイス26が取り付けられる。屈折接眼レンズ50は、1つ又は複数のレンズを備え得る。カメラ52により検出された信号の評価は、図1の実施形態に関して上述したように行われる。
【0051】
図3に示す干渉計ユニット324の実施形態の変形形態では、横方向に並進可能な導波管28は、横方向に相互に変位して配置される複数の放射源に置き換えられる。種々の入射角εは、対応の放射源のオンオフを切り替えることにより得られる。
【0052】
図4は、光学素子12の光学試験表面14の形状を判定する装置10の本発明によるさらに別の実施形態を示す。図4に示す装置は、干渉計ユニットの構成のみが図3に示す装置と異なる。参照符号424で示す図4による干渉計ユニットが図3に示す干渉計ユニット324とは異なる点は、屈折コリメータ366及び屈折接眼レンズ50の両方が反射素子で、すなわちそれぞれ放物面ミラー466、450で置き換えられることである。
【0053】
コリメータ366及び接眼レンズ50の屈折性を用いる干渉計324を屈折望遠鏡と称し得るが、干渉計324をミラー望遠鏡と称し得る。ミラー望遠鏡の利点として、放物面ミラー466及び450がそれぞれ1つのミラーのみにより構成され得るので、干渉反射がなく関連する光学表面の数が最小化されることが挙げられる。このようにして、測定結果に対する個々の光学表面の誤差寄与の解析が促進される。
【0054】
図5は、図1、図3、及び図4に示す装置10のいずれかにおいて、これらの図に示すキャビティユニット21の代わりに用いることができるキャビティユニットのさらに別の実施形態521を示す。キャビティユニット521は、キャビティユニット21の単一の回折素子20の代わりに二重回折素子系70を備えることが、キャビティユニット21とは異なる。回折素子系70は、入射測定ビーム30aのビーム経路内に連続して配置された計算機ホログラム(CGH)の形態の2つの回折素子520a及び520bを備え、入射測定ビームが最初に第1回折素子520を通過した後に第2光学素子520bを通過するようになっている。キャビティユニット521はさらに、フィゾー板22の代わりに球面フィゾーレンズ522を備える点がキャビティユニット21とは異なる。フィゾーレンズ522は、ここでは、入射測定ビーム30aのビーム経路内で回折素子520a及び520bの後に配置される。
【0055】
入射測定ビーム30aは回折素子系70を通過し、回折素子系70は、適合光学系として働き、光学試験表面14の所望の形状に適合された波面を有する入射物体ビーム530aを+1次回折次数で発生させるよう構成される。素子系70は、球面波面を有する参照ビーム544を−1次回折次数で発生させるようさらに構成される。参照ビーム544は、フィゾーレンズ522の球面参照表面542に垂直に当たることで、そのまま反射された後に素子系70を逆方向に通過して干渉計ユニットに入る。
【0056】
図5に示すビーム経路の場合にように、干渉計ユニットにより入射角が0°に調整される場合、入射物体ビーム530aは、球面フィゾーレンズ522を通過して光学素子12の試験表面14に垂直に当たる。入射物体ビーム530aは、試験表面14においてそのまま反射され、戻り物体ビーム530bとして逆方向にフィゾーレンズ522及び回折素子系570を通過し、戻り測定ビーム30bとして干渉計ユニットに入る。
【0057】
上記測定アルゴリズムを用いて、回折素子系570の2つの回折光学素子520a及び520bのそれぞれの個別波形寄与Wε,i(x,y)を求めることができる。方程式(1)を参照すると、Nは、入射角εの変更時にビーム30a及び物体ビーム530aを含む測定ビームの横方向シアリングが生じるキャビティユニット521における表面の数である。
【0058】
図6は、図5に示すキャビティユニット521の代わりに用いることができるキャビティユニットの別の実施形態621を示す。キャビティユニット621は、単一の回折光学素子620が二重回折素子系570の代わりに用いられる点がキャビティユニット521とは異なる。回折光学素子620は、複素コーディング(complexly coded)CGHとも称する二値化CGHの形態で二値化される。このような二値化回折光学素子620は、同一表面上に配置された2つの回折構造を備える。第1回折構造の一次回折次数は、球面参照ビーム544を発生させ、第2回折構造の一次回折次数は、光学試験表面14の所望の形状に適合された波面を有する入射物体ビーム530aを発生させる。
【0059】
キャビティユニット521及び621において、光学素子12の参照表面542及び試験表面14は、相互に直接対向して配置されるので、比較的小さなキャビティを形成する。したがって、測定が振動及び大気乱流の影響を非常に受け難い。キャビティユニットは、いわゆる三点試験法及び回転シフト法等の当業者に既知の較正手順を用いて、光学素子12を球面を有する較正素子で置き換えることにより較正することができる。フィゾーレンズ522自体は、フィゾーレンズ522が引き起こす残余誤差を低減するために測定プロセスにおいて回転させることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 光学試験表面の形状を判定する装置
12 光学素子
14 光学試験表面
16 保持デバイス
18−1 素子ホルダ
18−2 素子ホルダ
18−3 素子ホルダ
19 保持柱
20 回折光学素子
21 キャビティユニット
22 フィゾー板
24 干渉計ユニット
25 変位デバイス
26 評価デバイス
27 放射源
28 導波管
29 垂線
30 測定ビーム
30a 入射測定ビーム
30b 戻り測定ビーム
31 コリメータ
32 調整可能な偏向ミラー
34 傾斜運動
36 調整可能なスプリッタミラー
38 傾斜運動
40 並進運動
42 参照表面
44 参照ビーム
46 コリメータ
48 アパーチャ
50 接眼レンズ
52 カメラ
54−1 光学表面
54−2 光学表面
54−3 光学表面
54−4 光学表面
56 出口開口
70 回折素子系
324 干渉計ユニット
362 並進運動
364 スプリッタミラー
366 コリメータ
424 干渉計ユニット
450 放物面ミラー
466 放物面ミラー
520a 第1回折光学素子
520b 第2回折光学素子
521 キャビティユニット
522 球面フィゾーレンズ
530a 入射物体ビーム
530b 戻り物体ビーム
542 参照表面
544 参照ビーム
570 二重回折素子系
620 二値化回折光学素子
621 キャビティユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学試験表面の形状を判定する方法であって、
測定ビームの波面を適合光学系により前記光学試験表面の所望の形状に適合させ、前記光学試験表面の前記形状を適合済測定ビームにより干渉測定するステップと、
前記適合済測定ビームを前記光学試験表面に種々の入射角で照射し、前記測定ビームの前記波面を前記光学試験表面との相互作用後にそれぞれ測定するステップと、
個々の入射角ごとに測定された前記波面からの干渉測定結果に対する前記適合光学系の影響を確定するステップと、
前記光学試験表面の前記形状を、前記適合光学系の確定された影響を前記干渉測定結果から除去することにより判定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
光学分岐デバイスにより、参照ビームが前記測定ビームから分岐され、前記干渉測定結果に対する前記分岐デバイスの影響が、前記個々の入射角ごとに測定された前記波面から確定され、前記光学試験表面の前記形状の確定中に、前記分岐デバイスの確定された影響が前記干渉測定結果から除去される方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記測定ビームの前記波面の測定は、検出器カメラにより記録された干渉パターンを評価することにより実施され、前記測定ビームの個別光線が、前記検出器カメラにおける個々の測定点に割り当てられ、さらに、レイトレーシングを用いて、前記個別光線の突入点のシミュレーション座標が、前記入射角の関数として前記適合光学系の少なくとも1つの光学表面に関して提供され、前記干渉測定結果に対する前記適合光学系の影響の確定中に、前記突入点の前記座標が考慮される方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記波面は、レイトレーシングにより前記入射角の関数としてシミュレートされ、シミュレーション中に考慮した前記波面に対する前記適合光学系の前記少なくとも1つの光学表面の寄与がそれにより変更され、シミュレーション結果を前記測定波面と比較することにより、前記少なくとも1つの光学表面の寄与が確定され、前記確定された寄与は、前記干渉測定結果に対する前記適合光学系の影響を確定する際に用いられる方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、前記光学試験表面の前記所望の形状は自由曲面である方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記適合済測定ビームの照射時に、前記光学試験方面に対する前記入射角は2次元で変更される方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
前記光学試験表面はマイクロリソグラフィ用の光学素子により形成される方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記光学素子はEUVミラーとして構成される方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記適合光学系は回折光学素子を含む方法。
【請求項10】
光学試験表面の形状を判定する装置であって、
測定ビームの波面を前記光学試験表面の所望の形状に適合させる適合光学系であり、前記装置は前記光学試験表面の前記形状を干渉測定するよう構成された適合光学系と、
適合済測定ビームを種々の入射角で前記光学試験表面に照射する入射角変更デバイスと、
前記光学試験表面との相互作用後に前記種々の入射角で測定された前記測定ビームの前記波面からの干渉測定結果に対する前記適合光学系の影響を確定し、且つ前記適合光学系の確定された影響を前記干渉測定結果から除去することにより前記光学試験表面の前記形状を判定するよう構成された評価デバイスと
を備える装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、
前記入射角変更デバイスは調整可能な偏向ミラーを含む装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の装置において、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成された装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−198197(P2012−198197A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−29778(P2012−29778)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】