説明

光学部品

【課題】光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができ製造が容易な光学部品を提供する。
【解決手段】光学部品16Aは、ガラス管61、光ファイバ62、ガラスロッド63および樹脂64を備える。ガラスロッド63は、円柱形状のものであって、光ファイバ62のクラッド62bの外径と等しい外径を有し、光ファイバ62に対して端面同士で融着接続されている。ガラス管61は、第1端61aと第2端61bとの間に貫通孔を有し、その貫通孔に光ファイバ62およびガラスロッド63が挿入されている。ガラス管61の第1端61aの位置において、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面が同一平面上にある。ガラス管61の第1端61aを含む長手方向に沿った第1範囲61cにおいて、ガラス管61の内壁面は、ガラスロッド63の外周面と融着接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを含んで構成される光学部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光増幅器またはレーザ発振器として、Er元素やYb元素などの希土類元素が添加された増幅用光ファイバを用い、この増幅用光ファイバに励起光を供給して希土類元素を励起し、これにより光増幅またはレーザ発振をするものが知られている。また、このような光増幅器またはレーザ発振器において光を出力するための光学部品として、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された光学部品は、該文献の記載によれば光入力を意図したものであるが、光出力にも利用可能である。この光学部品は、光ファイバと同じ外径を有するガラスロッドが該光ファイバの端面に融着接続されたものである。
【0004】
特許文献2に開示された光学部品は、光ファイバと同じ外径を有するガラスロッドが該光ファイバの端面に融着接続されていて、そのガラスロッドより高屈折率の被覆材が該ガラスロッドの周囲に設けられたものである。その被覆材として紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂が挙げられている。
【0005】
光増幅器またはレーザ発振器において光を出力するための光学部品として、これら特許文献1,2に開示された光学部品を用いれば、増幅用光ファイバにおいて光増幅された後の高パワーの光は、光ファイバのコアにより導波された後、ガラスロッドを経て外部へ出力される。光ファイバのコアからガラスロッドへ入射された光は発散されるので、ガラスロッドから外部へ出力される際の光のビーム径は拡大されている。したがって、この光出力端での損傷が抑制され、高パワーの光を出力する上で好都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3224106号公報
【特許文献2】特開2005−303166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示された光学部品は、光ファイバと同じ外径を有するガラスロッドが該光ファイバの端面に融着接続されたものであることから、ガラスロッドから外部へ出力される際の光のビーム径は、ガラスロッドの外径(すなわち、光ファイバの外径)により制限される。すなわち、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーは、光ファイバの径により制限される。
【0008】
仮に、光ファイバの外径より大きい外径を有するガラスロッドを該光ファイバの端面に融着接続して光学部品を構成すれば、ガラスロッドから外部へ出力される際の光のビーム径は、光ファイバの外径により制限されることはない。この場合には、ガラスロッドの外径が大きいほど、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができる。しかしながら、このように光ファイバの外径とガラスロッドの外径の差が大きいほど、光ファイバとガラスロッド融着接続は難しくなり、このような光学部品の製造は容易でない。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができ製造が容易な光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光学部品は、(1) コアと、該コアの周囲に設けられ該コアより低屈折率であるクラッドと、を有する光ファイバと、(2)光ファイバに対して端面同士で融着接続されたガラスロッドと、(3) 第1端と第2端との間に貫通孔を有し、その貫通孔に光ファイバおよびガラスロッドが挿入されたガラス管と、を備えることを特徴とする。さらに、ガラスロッドおよびガラス管の双方が、光ファイバのコアの屈折率と略等しい屈折率を有するか、または、光ファイバのクラッドの屈折率と略等しい屈折率を有しており、ガラス管の第1端の位置において、ガラスロッドおよびガラス管それぞれの端面が同一平面上にあり、ガラス管の第1端を含む長手方向に沿った第1範囲において、ガラスロッドの外周面とガラス管の内壁面とが互いに融着接続されており、光ファイバのコアからガラスロッドに入射した光を、ガラス管の第1端においてガラスロッドおよびガラス管の双方の端面から出射することを特徴とする。
【0011】
第1範囲において、光ファイバおよびガラスロッドそれぞれの外周面とガラス管の内壁面とが互いに融着接続されているのが好適である。ガラスロッドの外径は、光ファイバのクラッドの外径と略等しいのが好ましいが、光ファイバのクラッドの外径の2倍以下であれば、光ファイバとの融着接続が可能である。また、ガラスロッドは、略円柱形状であるのが好ましいが、多角柱形状であってもよい。
【0012】
この光学部品は例えば光増幅器やMOPA型レーザ装置、高平均出力レーザ等において用いられる。その場合、光学部品に含まれる光ファイバは、増幅用光ファイバに接続され、或いは、それ自体が増幅用光ファイバであってもよい。増幅用光ファイバにおいて光増幅された光は、光学部品に含まれる光ファイバのコアにより導波されて来てガラスロッドに入射され、このガラスロッドの端面から出射されるだけでなく、一部がガラス管の端面からも出射され得る。したがって、ガラスロッドおよびガラス管それぞれの端面から出射される際の光のビーム径は、ガラスロッドの外径(すなわち、光ファイバの外径)により制限されることは無く、第1端におけるガラス管の外径まで拡大できることになる。これにより、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができる。また、ガラスロッドおよび光ファイバそれぞれの外径が互いに等しいので、容易に両者を端面同士で融着接続することができる。
【0013】
なお、理想的には、ガラスロッドおよびガラス管それぞれの屈折率は、光ファイバのコアの屈折率と略等しいのが好ましい。この場合には、光ファイバのコアとガラスロッドとの境界や、ガラスロッドとガラス管との境界で、光の反射や屈折率が生じない。しかし、実用上では、ガラスロッドおよびガラス管それぞれの屈折率は、光ファイバのクラッドの屈折率と略等しくてもよい。この場合には、ガラスロッドおよびガラス管それぞれの入手が容易である。
【0014】
本発明に係る光学部品では、ガラス管の第2端を含む長手方向に沿った第2範囲において、光ファイバとガラス管との間に間隙が設けられているのが好適である。また、第2範囲において、光ファイバとガラス管との間に樹脂が充填されているのが好適である。
【0015】
本発明に係る光学部品では、ガラス管の第1端の位置において、ガラスロッドの軸に垂直な面に対してガラスロッドおよびガラス管それぞれの端面が傾斜しているのが好適である。ガラス管の第1端の位置におけるガラスロッドおよびガラス管それぞれの端面に反射低減膜が形成されているのが好適である。また、ガラス管の第2端の位置におけるガラス管の端面に反射低減膜が形成されているのが好適である。
【0016】
本発明に係る光増幅器は、(1) 上記の本発明に係る光学部品と、励起光を出力する励起光源部と、を備え、(2)光学部品に含まれる光ファイバまたはこれに接続される他の光ファイバが増幅用光ファイバであり、(3) 励起光源部から出力された励起光を増幅用光ファイバに導入し、(4)光増幅されるべき被増幅光を増幅用光ファイバにより伝搬させて、この被増幅光を増幅用光ファイバにおいて光増幅し、その光増幅後の光を、光学部品に含まれる光ファイバおよびガラスロッドを経て出力する、ことを特徴とする。本発明に係る光増幅器は、光学部品に含まれるガラス管の第2端から放射される光を検出する光検出器を更に備えるのが好適であり、また、光学部品に含まれるガラス管の第2端に入射させるべき光を出力する光源を更に備えるのも好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光学部品は、光増幅器等において用いられ、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができ、容易に製造することができる。また、光ファイバへの戻り光を低減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る光増幅器10を含むMOPA光源装置1の構成図である。
【図2】本実施形態に係る光学部品16の縦断面図である。
【図3】本実施形態に係る光学部品16の第1構成例としての光学部品16Aを示す縦断面図である。
【図4】光学部品16Aの製造工程を説明する図である。
【図5】本実施形態に係る光学部品16の第2構成例としての光学部品16Bを示す縦断面図である。
【図6】変形例に係る光増幅器10Aを含むMOPA光源装置1Aの構成図である。
【図7】他の変形例に係る光増幅器10Bを含むMOPA光源装置1Bの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る光増幅器10を含むMOPA光源装置1の構成図である。この図に示されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)光源装置1は、光増幅器10,種光源20および光アイソレータ30を備え、種光源20から出力されて光アイソレータ30を経た種光を光増幅器10において光増幅し、その光増幅した光を出力するものである。
【0021】
光増幅器10は、6個の励起光源11〜11、6本の光ファイバ12〜12、光ファイバ13、光コンバイナ14、増幅用光ファイバ15および光学部品16を備える。光ファイバ12の一端は励起光源11の光出射端に接続されており、光ファイバ12の他端は光コンバイナ14の光入射端に接続されている。光ファイバ13の一端は光アイソレータ30の光出射端に接続されており、光ファイバ13の他端は光コンバイナ14の光入射端に接続されている。増幅用光ファイバ15の一端は光コンバイナ14の光出射端に接続されており、増幅用光ファイバ15の他端は光学部品16の光入射端に接続されている。また、光学部品16の光出射端は光増幅器10の光出射端とされている。
【0022】
増幅用光ファイバ15は、Er元素やYb元素などの希土類元素が添加された石英ガラスからなる光ファイバであり、添加されている希土類元素を励起し得る波長の励起光が供給されることで、利得を有する波長帯域に含まれる波長の被増幅光を光増幅することができる。この増幅用光ファイバ15は、いわゆるダブルクラッド構造のものであって、コア,内側クラッドおよび外側クラッドを有し、被増幅光をコアに閉じ込めて導波させることができるとともに、励起光をコアおよび内側クラッドに閉じ込めて導波させることができる。
【0023】
6個の励起光源11〜11は、増幅用光ファイバ15に添加されている希土類元素を励起し得る波長の励起光を出力するものであり、好適にはレーザダイオードを含む。光ファイバ12は、励起光源11から出力された励起光を一端に入力し、その励起光を光コンバイナ14へ向けて導波させる。光ファイバ13は、種光源20から出力され光アイソレータ30を通過した種光を一端に入力し、その種光を光コンバイナ14へ向けて導波させる。
【0024】
光コンバイナ14は、6本の光ファイバ12〜12それぞれにより導波されて到達した励起光を入力するとともに、光ファイバ13により導波されて到達した種光を入力して、これら励起光および種光を増幅用光ファイバ15へ出力する。そして、増幅用光ファイバ15は、励起光および種光(被増幅光)を入力し、励起光により励起され、種光を光増幅して、この光増幅した光を出力する。
【0025】
光学部品16は、増幅用光ファイバ15において光増幅されて出力された光を入力して、その光を光増幅器10の出力とする。
【0026】
このMOPA光源装置1では、種光源20から出力された種光は、光アイソレータ30を経て光増幅器10に入力される。光増幅器10では、励起光源11から出力された励起光は、光ファイバ12より伝搬され、光コンバイナ14を経て、増幅用光ファイバ15に入力される。また、光アイソレータ30から出力されて光増幅器10に入力された種光は、光ファイバ13により伝搬され、光コンバイナ14を経て、増幅用光ファイバ15に入力される。そして、この増幅用光ファイバ15において種光が光増幅されて、その光増幅された後の光は、光学部品16を経て外部へ出力される。
【0027】
図2は、本実施形態に係る光学部品16の縦断面図である。この図に示される光学部品16は、ガラス管61、光ファイバ62、ガラスロッド63、樹脂64、樹脂65、樹脂66、保護管67およびガラス68を備える。
【0028】
光ファイバ62は、その一端が保護管67の中に配置されていて、一端から一定範囲において被覆層が除去されてガラスが露出している。保護管67の一方の端部において、光ファイバ62は被覆層が残されたままの状態とされていて、この光ファイバ62と保護管67との間に樹脂65が充填されている。また、保護管67の他方の端部には、例えば石英ガラスからなるガラス窓68が取り付けられている。
【0029】
光ファイバ62は、コア62aと、このコア62aの周囲に設けられコア62aより低屈折率であるクラッド62bと、を有する。光ファイバ62の一端は、保護管67の内部空間において、ガラスロッド63の一端と端面同士で融着接続されている。ガラスロッド62は、光ファイバ62の外径と略等しい外径を有し、光ファイバ62のクラッド62bの屈折率と略等しい屈折率を有する。
【0030】
ガラス管61は、光ファイバ62のクラッド62bの屈折率と略等しい屈折率を有し、貫通孔を有しており、その貫通孔に光ファイバ62およびガラスロッド63が挿入されている。ガラス管61の一端の位置において、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面が同一平面上にある。ガラス管61の一端を含む長手方向に沿った所定範囲において、ガラス管61の内壁面は、ガラスロッド63の外周面と融着接続されており、更に好適には、光ファイバ62の外周面とも融着接続されている。
【0031】
光ファイバ62とガラス管61との間に樹脂64が挿入されている。また、保護管67とガラス管61とは樹脂66により互いに固定されており、この樹脂を注入するための孔部が保護管67に設けられている。保護管61の内部空間が樹脂により充填されてもよいが、その場合であっても、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面とガラス窓68との間は樹脂が存在しないことが好ましい。光ファイバ62の他端は増幅用光ファイバ15と接続されている。なお、光ファイバ62および増幅用光ファイバ15は一連長の光ファイバであってもよい。
【0032】
このように構成される光学部品16が光増幅器10において用いられることで、増幅用光ファイバ15において光増幅された光は、光学部品16に含まれる光ファイバ62,ガラスロッド63およびガラス窓68を経て出力される。また、この光学部品16では、光ファイバ62のコア62aからガラスロッド63に入射した光は、ガラスロッド63の端面から出射されるだけでなく、一部がガラス管61の端面からも出射され得る。
【0033】
したがって、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面から出射される際の光のビーム径は、ガラスロッド63の外径(すなわち、光ファイバ62の外径)により制限されることはない。光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができる。また、ガラスロッド63および光ファイバ62それぞれの外径が互いに等しいので、容易に両者を端面同士で融着接続することができる。
【0034】
また、この光学部品16では、光ファイバ62の被覆除去部は、保護管67内に入れられて、樹脂65により封止されていることにより、外力や湿気から保護される。なお、この保護管67は、光ファイバ62の熱膨張係数と略等しい熱膨張係数を有する材料からなるのが好ましく、また、光ファイバ62の材料と同じ石英ガラスからなるのが好ましい。
【0035】
また、保護管67内に樹脂66が充填されていることによっても、光ファイバ62の被覆除去部は振動や湿気から保護される。なお、この樹脂66は、光ファイバ62のクラッド62bの屈折率より低い屈折率を有するのが好ましく、紫外線照射により硬化する樹脂であるのが好適である。この場合、保護管67は透明ガラスからなるのが好適である。すなわち、保護管67の孔部により樹脂を保護管67の内部空間に注入した後、外部からの紫外光が保護管67を透過して樹脂に照射され、これにより樹脂を硬化させることができる。なお、ガラス窓68の代わりに、コリメートレンズを装着し、略平行光として出力してもよい。また、ガラス窓やレンズを装着せず、光コネクタの部品として用いることも可能である。
【0036】
次に、本実施形態に係る光学部品16の要部について変形例を含めて更に詳細に説明する。以下の実施形態の光学部品16A,16Bの説明においては、図2中のガラス管61、光ファイバ62、ガラスロッド63および樹脂64それぞれに相当するものを含む部分を要部として説明し、その他の樹脂65,66、保護管67およびガラス窓68それぞれに相当するものについては説明を省略する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る光学部品16の第1構成例としての光学部品16Aを示す縦断面図である。この図に示されるように、光学部品16Aは、ガラス管61、光ファイバ62、ガラスロッド63および樹脂64を備える。
【0038】
光ファイバ62は、コア62aと、該コア62aの周囲に設けられ該コア62aより低屈折率であるクラッド63bと、を有する。光ファイバ62aは、石英ガラスからなり、コア62aにGeO2が添加されていて、これによりクラッド62bよりコア62aが高屈折率とされている。また、光ファイバ62は、ガラスロッド63と融着接続される端面を含む一定範囲において被覆が除去されている。具体的には、コア62aの外径は約25μmであり、クラッド62bの外径は約250μmである。
【0039】
ガラスロッド63は、石英ガラスからなる円柱形状のものであって、光ファイバ62のクラッド62bの外径と等しい外径を有し、光ファイバ62のクラッド62bの屈折率と略等しい屈折率を有する。ガラスロッド63は、光ファイバ62に対して端面同士で融着接続されている。具体的には、ガラスロッド63の外径は約250μmである。
【0040】
ガラス管61は、石英ガラスからなり、光ファイバ62のクラッド62bの屈折率と略等しい屈折率を有し、第1端61aと第2端61bとの間に貫通孔を有し、その貫通孔に光ファイバ62およびガラスロッド63が挿入されている。ガラス管61の第1端61aの位置において、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面が同一平面上にある。ガラス管61の第1端61aを含む長手方向に沿った第1範囲61cにおいて、ガラス管61の内壁面は、ガラスロッド63の外周面と融着接続されており、より好適には、光ファイバ62の外周面とも融着接続されている。具体的には、ガラス管61は、第2端61bにおいて、外径が約600μmであり、内径が約500μmであり、長さが約8mmである。
【0041】
ガラス管61の第2端61bを含む長手方向に沿った第2範囲61dにおいて、光ファイバ62とガラス管61との間に間隙が設けられている。この間隙は、真空であってもよいが、他の媒質が設けられていてもよく、例えば、好適には樹脂64であるが、不活性ガスや空気などの気体であってもよく、マッチングオイルなどの液体であってもよい。
【0042】
ガラス管61の第1端61aの位置におけるガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面に反射低減膜が形成されているのが好適である。また、ガラス管61の第2端61bの位置におけるガラス管61の端面に反射低減膜が形成されているのが好適である。この反射低減膜は、誘電体多層膜からなり、出射すべき光の波長において反射率を低減するものである。例えば、Yb添加ファイバをレーザファイバとして用いる場合、反射低減膜は少なくとも波長範囲1.0μm〜1.1μmにおいて反射率を低減するのが好ましい。
【0043】
このように構成される光学部品16Aでは、光ファイバ62のコア62aにより導波されて来てガラスロッド63に入射した光は、ガラスロッド63の端面から出射されるだけでなく、一部がガラス管61の端面からも出射され得る。したがって、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面から出射される際の光のビーム径は、ガラスロッド63の外径(すなわち、光ファイバ62の外径)により制限されることは無く、第1端61aにおけるガラス管61の外径まで拡大できることになる。これにより、光出力端での損傷がなく出力可能な光のパワーを大きくすることができる。また、ガラスロッド63および光ファイバ62それぞれの外径が互いに等しいので、容易に両者を端面同士で融着接続することができる。
【0044】
また、この光学部品16Aが光増幅器10において用いられることにより、以下のような効果も得られる。すなわち、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの出射端面で一部の光が反射されるが、その反射光の一部はガラス管61の第2端61b側の端面から外部へ放射されるので、光ファイバ62を経て増幅用光ファイバ15に戻る光のパワーは低減される。一般に、増幅用光ファイバへの戻り光のパワーが大きいと、寄生発振の閾値が低下し、増幅率の上限が低下する。しかし、本実施形態では、光学部品16Aが光増幅器10において用いられることにより、増幅用光ファイバ15への戻り光のパワーが低減されるので、寄生発振の閾値の低下が抑制され、増幅率の上限の低下が抑制され得る。このような効果を有効に発揮する上で、ガラス管61の第2端61bの位置におけるガラス管61の端面に反射低減膜が形成されているのが好適である。なお、ガラス管61を光ファイバ62に融着する際に、この反射低減膜を施した部分は、ガラスの熱伝導率の低さ故に加熱に因る悪影響を受ける心配がない。
【0045】
また、ガラス管61の第2端61bを含む長手方向に沿った第2範囲61dにおいて、光ファイバ62とガラス管61との間に樹脂64が充填されていることにより、機械的強度が得られる他、以下のような効果も得られる。すなわち、樹脂64の屈折率がガラスロッド63の屈折率と等しいか高い場合に、第1端61aで生じた反射光の一部は、樹脂64にも入り、第2端61bの位置で樹脂64から外部へ放射される。したがって、増幅用光ファイバ15への戻り光のパワーが更に低減されるので、寄生発振の閾値の低下が更に抑制され、増幅率の上限の低下が更に抑制され得る。
【0046】
このような樹脂64による戻り光パワー低減の効果を有効に発揮する上で、樹脂64は出力光波長において吸収が小さいのが好適である。しかし、これは出力光の平均出力パワーが比較的低い場合には有効であるが、出力光の平均出力パワーが高い場合には、樹脂64を光が通るので樹脂64が焼損する危険性もある。したがって、出力光の平均出力パワーが高い場合には、ガラスロッド63より低屈折率の樹脂64が充填されることが望ましい。
【0047】
図4は、光学部品16Aの製造工程を説明する図である。この図には、ガラス管61、光ファイバ62およびガラスロッド63について製造工程が示されている。初めに、同図(a)に示されるように、コア62a,クラッド62bおよび被覆層62cを有する光ファイバ62が用意され、その光ファイバ62の一端から一定範囲(例えば3cm程度の範囲)において被覆層62bが除去されてガラスが露出される。
【0048】
そして、光ファイバ62の露出されたガラスの端面は、ファイバクリーバにより軸方向に垂直になるように融着可能な綺麗な端面に仕上げられる。また、同一径のガラスロッド63A(例えば長さ3cm程度)の端面も、ファイバクリーバにより軸方向に垂直になるように融着可能な綺麗な端面に仕上げられる。そして、光ファイバ62およびガラスロッド63Aは、互いに端面同士が融着接続される。
【0049】
続いて、同図(b)に示されるように、互いに端面同士が融着接続された光ファイバ62の被覆除去部およびガラスロッド63Aは、ガラス管61Aの内部に挿入される。このガラス管61Aは、外径および内径それぞれが軸方向に沿って略一様であり、第2端61b側の端面に反射低減膜が形成されている。
【0050】
更に続いて、同図(c)に示されるように、ガラス管61Aの中央領域が加熱され、その加熱された中央領域が表面張力により収縮する。このときの加熱は、例えば、炭酸ガスレーザ光源から出力される波長10.6μmのレーザ光、放電、マイクロバーナなどが用いられる。これにより収縮したガラス管61Bは、当該収縮した範囲の一部において、ガラスロッド63Aおよび光ファイバ62それぞれの外周面に接続される。
【0051】
そして、同図(d)に示されるように、ガラス管61Bの収縮範囲の何れかの位置で切断される。さらに、その切断面が研磨されて当該研磨面に反射低減膜が形成され、また、ガラス管61と光ファイバ62との間に樹脂64が充填されて、これにより光学部品16Aが製造される。なお、この切断に際しては、炭酸ガスレーザ光源から出力されたレーザ光が集光されて用いられた。また、ガラスロッド63の融着位置と切断位置との間の距離は、光ファイバ62の被覆端からの距離が基準とされ得る。
【0052】
なお、光ファイバ62の先端にガラスロッド63を融着接続する代わりに、コア-クラッド構造を有するマルチモード光ファイバを光ファイバ62の先端に融着接続し、マルチモード光ファイバのクラッドをエッチングにより除去した後にガラス管61を融着してもよい。
【0053】
図5は、本実施形態に係る光学部品16の第2構成例としての光学部品16Bを示す縦断面図である。この図に示されるように、光学部品16Bは、ガラス管61、光ファイバ62、ガラスロッド63および樹脂64を備える。
【0054】
前に図3に示された第1構成例の光学部品16Aと比較すると、この図5に示される第2構成例の光学部品16Bは、ガラス管61の第1端61a側におけるガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面が傾斜している点で相違する。すなわち、ガラス管61の第1端61aの位置において、ガラスロッド63およびガラス管61それぞれの端面は、ガラスロッド63の軸に垂直な面に対して傾斜している。その傾斜角は例えば8度である。
【0055】
このような光学部品16Bを製造するには、前に図4に示された製造工程のうち切断工程(図4(d))の際に、切断面が傾斜するようにすればよい。このように光出射端面が傾斜していることにより、増幅用光ファイバ15への戻り光のパワーが更に低減されるので、寄生発振の閾値の低下が更に抑制され、増幅率の上限の低下が更に抑制され得る。
【0056】
次に、図6および図7を用いて、本実施形態に係る光増幅器の変形例について説明する。図6は、変形例に係る光増幅器10Aを含むMOPA光源装置1Aの構成図である。図1に示された構成と比較すると、この図6に示されるMOPA光源装置1Aは、光増幅器10に替えて光増幅器10Aを備える点で相違する。また、光増幅器10Aは、光増幅器10の構成に加えて光ファイバ17および光検出器18を更に備える。光ファイバ17の一端は光学部品16に含まれるガラス管61の第2端に接続され、光ファイバ17の他端は光検出器18に接続されている。光検出器18は、ガラス管61の第2端から放射されて光ファイバ17を経て到達した光を検出する。これにより、簡単な構成で、光検出器18により、増幅用光ファイバ15を励起した際の蛍光強度やレーザ出力を測定することができ、また、寄生発振を検出することが可能になる。また、レーザ光を照射した対象物からの反射光を光検出器18により測定することも可能である。光ファイバ17はガラス管61の第2端に融着接続や接着または突き合わせ接続しても良いし、ガラス管61内の樹脂に光ファイバ17先端を埋め込んでも良い。測定または検出した信号は、光増幅器10Aの動作の安定化や損傷防止、あるいは、装置の状態を把握する等、目的に応じて活用することができる。
【0057】
図7は、他の変形例に係る光増幅器10Bを含むMOPA光源装置1Bの構成図である。図1に示された構成と比較すると、この図7に示されるMOPA光源装置1Bは、光増幅器10に替えて光増幅器10Bを備える点で相違する。また、光増幅器10Bは、光増幅器10の構成に加えて光ファイバ17および光源19を更に備える。光ファイバ17の一端は光学部品16に含まれるガラス管61の第2端に接続され、光ファイバ17の他端は光源19に接続されている。光源19は、光学部品に含まれるガラス管の第2端に入射させるべき光を出力する。光源19から出力された光は、光ファイバ17を経てガラス管61の第2端に入射され、光学部品16を経て外部へ出射され、加工対象物を照明することができる。これにより、例えばレーザ加工の際に加工状態を観察し易くなる。この照明光は、光学部品から出射されるレーザ光を取り囲むように出るので、レーザ光のコリメートレンズや加工用集光レンズを共用できて便利である。光源19は光ファイバ17を介してガラス管61の第2端に供給してもよいし、ガラス管61の第2端付近に光源を置いて、直接、照明光を供給してもよい。なお、光ファイバ17はガラス管61の第2端に融着接続や接着または突き合わせ接続しても良いし、ガラス管61内の樹脂に光ファイバ17先端を埋め込んでも良い。
【符号の説明】
【0058】
1…MOPA光源装置、10…光増幅器、11〜11…励起光源、12〜12…光ファイバ、13…光ファイバ、14…光コンバイナ、15…増幅用光ファイバ、16,16A,16B…光学部品、20…種光源、30…光アイソレータ、61…ガラス管、62…光ファイバ、63…ガラスロッド、64〜66…樹脂、67…保護管、68…ガラス窓。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、該コアの周囲に設けられ該コアより低屈折率であるクラッドと、を有する光ファイバと、
前記光ファイバに対して端面同士で融着接続されたガラスロッドと、
第1端と第2端との間に貫通孔を有し、その貫通孔に前記光ファイバおよび前記ガラスロッドが挿入されたガラス管と、
を備え、
前記ガラスロッドおよび前記ガラス管の双方が、前記光ファイバのコアの屈折率と略等しい屈折率を有するか、または、前記光ファイバのクラッドの屈折率と略等しい屈折率を有しており、
前記ガラス管の第1端の位置において、前記ガラスロッドおよび前記ガラス管それぞれの端面が同一平面上にあり、
前記ガラス管の第1端を含む長手方向に沿った第1範囲において、前記ガラスロッドの外周面と前記ガラス管の内壁面とが互いに融着接続されており、
前記光ファイバのコアから前記ガラスロッドに入射した光を、前記ガラス管の第1端において前記ガラスロッドおよび前記ガラス管の双方の端面から出射する、
ことを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記第1範囲において、前記光ファイバおよび前記ガラスロッドそれぞれの外周面と前記ガラス管の内壁面とが互いに融着接続されている、ことを特徴とする請求項1記載の光学部品。
【請求項3】
前記ガラス管の第2端を含む長手方向に沿った第2範囲において、前記光ファイバと前記ガラス管との間に間隙が設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の光学部品。
【請求項4】
前記第2範囲において、前記光ファイバと前記ガラス管との間に樹脂が充填されている、ことを特徴とする請求項3記載の光学部品。
【請求項5】
前記ガラス管の第1端の位置において、前記ガラスロッドの軸に垂直な面に対して前記ガラスロッドおよび前記ガラス管それぞれの端面が傾斜している、ことを特徴とする請求項1記載の光学部品。
【請求項6】
前記ガラス管の第1端の位置における前記ガラスロッドおよび前記ガラス管それぞれの端面に反射低減膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学部品。
【請求項7】
前記ガラス管の第2端の位置における前記ガラス管の端面に反射低減膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学部品。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の光学部品と、励起光を出力する励起光源部と、を備え、
前記光学部品に含まれる前記光ファイバまたはこれに接続される他の光ファイバが増幅用光ファイバであり、
前記励起光源部から出力された励起光を前記増幅用光ファイバに導入し、
光増幅されるべき被増幅光を前記増幅用光ファイバにより伝搬させて、この被増幅光を前記増幅用光ファイバにおいて光増幅し、その光増幅後の光を、前記光学部品に含まれる前記光ファイバおよび前記ガラスロッドを経て出力する、
ことを特徴とする光増幅器。
【請求項9】
前記光学部品に含まれる前記ガラス管の第2端から放射される光を検出する光検出器を更に備えることを特徴とする請求項8記載の光増幅器。
【請求項10】
前記光学部品に含まれる前記ガラス管の第2端に入射させるべき光を出力する光源を更に備えることを特徴とする請求項8記載の光増幅器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−68664(P2012−68664A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242650(P2011−242650)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2006−286584(P2006−286584)の分割
【原出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】