説明

光硬化型加飾積層フィルム用組成物

【課題】硬化させた後も加工性に優れ、かつ、硬化膜の耐擦傷性に優れた加飾積層フィルム及びその製造方法の提供、及び当該加飾積層フィルム用の光硬化型組成物の提供。
【解決手段】2個以上のエチレン性不飽和基及びイソシアヌレート環を有する化合物(A)及び光重合開始剤(B)を含む組成物であって、エチレン性不飽和基濃度が0.1〜4.0meq/gである光硬化型加飾積層フィルム用組成物。さらに、2個以上のアクリロイル基を有する(A)成分以外の化合物(C)を含むものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品を加飾する光硬化型加飾積層フィルム用組成物及び加飾積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品に、意匠性を付与する、又は、表面を保護する場合、従来は、紫外線硬化型塗料又は熱硬化型塗料が用いられていた。しかしながら、塗装工程、乾燥工程や硬化工程が必要であり、工程が長くなること、又、塗料の歩留まりが悪いこと等から、最近では、加飾フィルムが使用されるケースが多くなってきた。
【0003】
加飾フィルムにより成形品を加飾する方法には、(1)加飾フィルムを射出成形の金型内に挿入し、射出成形を行い、フィルム全体を成形品に貼り付けるインサート成形、(2)加飾層を有する加飾フィルムを金型内に挿入し、射出成形を行った後、フィルムを剥がし、加飾層のみを成形品に残す転写法、等がある。いずれの方法においても、ほとんどの場合、成形品の表面を保護する目的で、表面保護層を設けており、この表面保護層は、耐擦傷性、耐摩耗性、耐溶剤性等の観点から、活性エネルギー線により硬化させた塗膜が多く用いられている。このような加飾フィルムにおいて、成形時の加工性を保つために、表面保護層を未硬化の状態で成形加工し、成形品に貼り付け、その後、硬化させる方法がよく用いられてきた(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−57792号公報
【特許文献2】特開2000−85065号公報
【特許文献3】特開2005−255781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は2の方法の場合、加飾フィルムが成形品に貼り付け、三次元加工した後に、活性エネルギー線によって硬化させるため、複雑な形状の成形品に対しては、活性エネルギー線が照射されない場所がある、又は、活性エネルギー線を照射する角度が多方向になり、装置や工程が複雑になるといった問題があった。この問題を回避する方法としては、成形加工に用いる前の平面フィルムの段階で、表面保護層を硬化させる方法がある。しかしながら、この場合は、硬化により、樹脂の伸びが低下し、加工性が悪くなるという問題があった。特許文献3では、加工性をよくする検討がなされているが、硬化後の伸びは不十分であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解決することであり、硬化させた後も加工性に優れ、かつ、硬化膜の耐擦傷性に優れた加飾積層フィルム及びその製造方法を提供することである。もう一つの課題は、上記の加飾積層フィルム用の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、2個以上のエチレン性不飽和基及びイソシアヌレート環を有する化合物を必須成分として含み、特定のエチレン性不飽和基濃度を有する硬化型組成物が有効であることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書では、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物によれば、加飾積層フィルムの表面保護材に使用する際に、硬化物の伸び率が高いため加工性に優れ、三次元加工前に硬化することができるため複雑な形状の成形品にも対応できる。さらに、硬化膜は、耐擦傷性に優れるため、成型品の耐擦傷性を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.光硬化型加飾積層フィルム用組成物
本発明は、2個以上の以上のエチレン性不飽和基及びイソシアヌレート環を有する化合物(A)及び光重合開始剤(B)を含む組成物であって、エチレン性不飽和基濃度が0.1〜4.0meq/gである光硬化型加飾積層フィルム用組成物に関する。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0010】
1)(A)成分
(A)成分は、2個以上のエチレン性不飽和基及びイソシアヌレート環を有する化合物である。
エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられ、製造が容易である点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0011】
(A)成分としては、オキシアルキレン基又は/及び−COCN2NO−(Nは2〜6の整数)で表される基を有する化合物であることが、組成物の硬化物が伸びに優れるため好ましい。
【0012】
さらに、(A)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
[一般式(1)における符号は、それぞれ下記を意味する。
●X1、X2及びX3は、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1、m2及びm3は、それぞれ独立して1〜3の数を表す。但し、m1+m2+m3=3〜9である。
●Y1、Y2及びY3は、−COCN2NO−(Nは2〜6の整数)で表される基を表す。n1、n2及びn3は、それぞれ独立して0〜9の数を表す。但し、n1+n2+n3=0〜9である。
●Z1、Z2及びZ3は、水素原子又は(メタ)アクリロイル基を表す。]
【0015】
1、X2及びX3は、炭素数1〜8のアルキレン基である。炭素数1〜8のオキシアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられる。
1、m2及びm3は、それぞれ独立して1〜3の数を表し、イソシアヌル環1分子に対するオキシアルキレン基の付加数を表す。
但し、m1+m2+m3=3〜9である。
【0016】
1、Y2及びY3は、−COCN2NO−で表される基(Nは2〜6の整数)を表す。Nとしては5である基、即ちε−カプロラクトンの開環付加により得られる化合物が好ましい。
1、n2及びn3は、それぞれ独立して0〜9の数を表し、イソシアヌル環1分子に対するY1、Y2及びY3の数を意味する。
但し、n1+n2+n3=0〜9であり、好ましくは、n1+n2+n3=3〜9である。n1+n2+n3が3以上の化合物とすることで、硬化物の伸びを向上させることができる。
【0017】
1、Z2及びZ3は、水素原子又は(メタ)アクリロイル基を表す。
1、Z2及びZ3としては、Z1、Z2及びZ3のいずれか2〜3個が(メタ)アクリロイル基を示し、いずれか0〜1個が水素基であるものが好ましい。
【0018】
式(1)の化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
(a)n1+n2+n3=0の化合物
当該化合物としては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド(以下、「EO」と記載する)変性ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート、並びにイソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートとしては、アロニックスM−215〔東亞合成(株)製。以下「アロニックス」は東亞合成株(株)製であり、会社名の記載を省略〕が挙げられ同トリアクリレートとしては、アロニックスM−315が挙げられる。
(b)n1+n2+n3≠0の化合物
当該化合物としては、ε−カプロラクトン変性トリス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート及びε−カプロラクトン変性トリス〔(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕イソシアヌレート等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、上記ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートとしては、アロニックスM−327が挙げられる。
【0019】
(A)成分は、単独で用いても、複数種を併用して用いてもよい。
【0020】
2)(B)成分
本発明の組成物は、前記(A)成分を光により硬化させるため、(B)成分である光重合開始剤を含有する。
(B)成分の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤のうち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類が好適である。
【0021】
(B)成分の含有割合としては、(A)成分の100重量部に対して、後記する(C)成分をさらに含有する場合は、(A)及び(C)成分の合計100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0022】
3)エチレン性不飽和基濃度
本発明の組成物は、エチレン性不飽和基濃度が0.1〜4.0meq/gの範囲内とする。
エチレン性不飽和濃度を0.1meq/g以上とすることで、硬化物の硬度や耐擦傷性を向上させることができ、4.0meq/g以下にすることで、硬化物に十分な伸びを付与することができる。
エチレン性不飽和濃度としては、硬度、擦傷性、伸びの性能のバランスをとる観点から、1.0〜3.5meq/gの範囲とすることがより好ましい。
【0023】
本発明の組成物におけるエチレン性不飽和基濃度とは、下記計算式を用いて得られた値を意味する。
〔式1〕
各成分のエチレン性不飽和濃度(meq/g)=
1分子当たりの平均エチレン性不飽和基数/分子量×1,000
〔式2〕
組成物のエチレン性不飽和濃度(meq/g)=
(a×α+c×γ)/(a+c)
※a:(A)成分の重量部、α:(A)成分のエチレン性不飽和濃度
※c:(C)成分の重量部、γ:(C)成分のエチレン性不飽和濃度
【0024】
4)その他の成分
本発明の組成物は、前記(A)及び(B)成分を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を配合することができる。
4-1)2個以上のアクリロイル基を有する(A)成分以外の化合物
その他の成分としては、2個以上のアクリロイル基を有する(A)成分以外の化合物(C)〔以下、「(C)成分」という〕を配合することが、組成物の硬化物が耐擦傷性及び伸びに優れたものとなるため好ましい。
【0025】
(C)成分としては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であれば種々の化合物を使用することができ、低分子量化合物(以下、「モノマー」という)、比較的高分子量の化合物(以下、「オリゴマー」という)及び高分子量の化合物(以下、「ポリマー」という)のいずれも使用することができる。
【0026】
モノマーの具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレー及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0027】
オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。又、各種デンドリマー型ポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
【0029】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ビフェニル型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエンのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエン内部エポキシ化物の(メタ)アクリル酸付加物、エポキシ基を有するシリコーン樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、リモネンジオキサイドの(メタ)アクリル酸付加物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、有機ポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物や、有機ポリイソシアネートとポリオールとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物が挙げられる。
ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、及びグリセリン等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール及び/又はポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
ポリマーとしては、エチレン性不飽和基を有する高分子量化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
それらの中でも、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する共重合体(C2)〔以下、(C2)成分という〕が好ましい。
【0032】
(C2)成分としては、グリシジル(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なその他の単量体(以下、その他単量体という)を共重合して、グリシジル基を有する共重合体〔以下、(C2-1)前駆体という〕を製造した後に、(C2-1)前駆体のグリシジル基にカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物のカルボキシル基を付加反応させることで得られる(メタ)アクリロイル基を側鎖に導入した樹脂〔以下、(C2-1)成分という〕が好適に用いることができる。
【0033】
(C2-1)前駆体において、グリシジル(メタ)アクリレートとその他単量体の共重合の方法には特に制限がなく、公知のラジカル重合法が好ましく使用でき、溶液重合法がより好ましく使用できる。
例えば、有機溶剤、グリシジル(メタ)アクリレート及びその他単量体を反応器に仕込み、有機過酸化物、アゾ系化合物等の熱重合開始剤を添加して、50〜300℃に加熱して、共重合することができる。
単量体を含む各原料の仕込み方法は、すべての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。
【0034】
溶液重合法に用いられる有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;並びにヘキサン、ヘプタン及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0035】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスシアノバレリックアシッド等のアゾ系開始剤;並びにt-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジt-ブチルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0036】
その他単量体としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であれば良く、(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、α−オレフィン類及びビニルエーテル類等が例示できる。
その他単量体としては、(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートであれば良く、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等が例示できる。
これらの単量体の中での、硬化物の伸びと硬度のバランスを取りやすいことから、メチルメタクリレートが好ましい。
【0037】
(C2-1)前駆体の共重合組成としては、グリシジル(メタ)アクリレートとその他単量体との合計を100重量部とした場合、グリシジル(メタ)アクリレートを5〜60重量部である。5重量部以上とすることで、硬化物の硬度を高いものとすることができ、60重量部以下とすることで、硬化物の伸びに優れたものとなる。
【0038】
(C2-1)前駆体である共重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで、2,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜60,000であることがより好ましい。
2,000以上にすることで、塗膜が靭性に優れ、硬化後の加工性に優れたものとなる。又、100,000以下にすることで、共重合体を低粘度とし、熱可塑性フィルムへの塗装性に優れたものとすることができる。
【0039】
(C2-1)成分は、得られた(C2-1)前駆体のグリシジル基に対して、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の付加反応により側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入して製造する。この導入反応は、溶液重合に引き続いて実施することができる。
(C2-1)前駆体の溶液に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させる方法は、従来公知の方法を採用することができる。
具体的には、(C2-1)前駆体の溶液に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、反応触媒、場合により重合禁止剤を添加し、60〜120℃で加熱することにより、側鎖にアクリロリル基を有するポリ(メタ)アクリル樹脂〔(C2-1)成分〕が得られる。
【0040】
カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。得られる(C2-1)が硬化性に優れるものとなる点で、アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
さらにこれらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましく、得られる(C2-1)成分が硬化性に優れるものとなる点でアクリル酸がより好ましい。
【0041】
カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の添加量は、(C2-1)前駆体のグリシジル基を基準として、カルボキシル基が0.8〜1.2当量、より好ましくは、0.9〜1.0当量である。
【0042】
付加反応の触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリエチレンジアミン及びテトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン;トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルセチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トリフェニルブチルホスホニウムブロミド及びテトラブチルホスホニウムブロミド等の4級ホスホニウム塩;並びにトリフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。樹脂分を100重量部とした場合、触媒は、0.1〜5質量部添加される。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられ、樹脂分に対して、50〜3000ppm添加することが好ましい。
【0043】
(C)成分は、上記化合物をそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の割合で混合させて用いてもよい。
【0044】
(C)成分としては、モノマー又は/及びオリゴマー〔以下、これらをまとめて(C1)成分という〕及び(C2)成分を使用することが好ましい。
(C1)成分と(C2)成分を併用する場合において、これらの割合としては、これらの合計量を基準として(C1)成分が0〜80重量%であり、(C2)成分が100〜20重量%が好ましい。
(C2)成分の割合を20重量%以上とすることで、硬化物の伸びと硬度のバランスに優れたものとなる。
【0045】
(C)を使用する場合、(A)と(C)成分の配合割合としては、上記のエチレン性不飽和基濃度を満たすことを前提としたうえで、(A)の(C)成分の合計量を基準として(A)成分が10〜80重量%及び(C)成分が90〜20重量%であることが好ましい。(A)成分の割合を10重量%以上とすることで、硬化物の硬度、耐擦傷性に優れたものが得られる。又、(A)の割合を80重量%以下とすることで、硬化物の伸びに優れたものが得られる。この重量比のうち、伸びと硬度、擦傷性のバランスの観点から、より好ましくは、(A)成分が20〜60重量%及び(C)成分が40〜80重量%である。
【0046】
4-2)(A)及び(C)以外の(メタ)アクリレート
本発明の組成物には、必要に応じて(A)及び(C)以外の(メタ)アクリレートを含有することができる。
当該(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という。)が挙げられる。
【0047】
単官能(メタ)アクリレートとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイミド基を有する(メタ)アクリレート及び1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
4-3)無機微粒子
又、本発明の組成物には、硬化物の耐摩耗性により優れたものとする目的で無機微粒子を配合することが好ましい。
無機微粒子としては、金属酸化物微粒子が好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ及び酸化スズ等の粒子が挙げられ、好ましくはシリカ及び酸化アルミニウムであり、特に好ましくはシリカである。
これらの粒子は、1種単独で使用することもでき、又は2種以上を併用することもできる。
【0049】
無機微粒子の配合割合としては、(A)成分の100重量部に対して、(C)成分を使用する場合は、(A)及び(C)成分の合計量を100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、より好ましくは10〜60重量部である。この割合を1重量部以上とすることで、無機微粒子の添加による硬化膜の耐摩耗性向上効果が十分なものとすることができ、100重量部以下とすることで、組成物中の分散性に優れたものとなり、均一な硬化膜を得ることができる。
【0050】
無機微粒子の平均粒子径としては、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜50nmである。平均粒子径を1nm以上とすることで、取り扱いや混合分散を容易にすることができ、一方、200nm以下とすることで、組成物に混合分散させた場合に、沈降を防止し、硬化膜の透明性が低下を防止することができる。
本発明において平均粒子径とはBET法によって算出した平均粒子径を意味する。
【0051】
無機微粒子の使用状態は特に制限されるものではないが、例えば、乾燥状態で使用することができるし、又は水若しくは有機溶剤に分散した状態で使用することもできる。又、分散溶媒を用いて、微粒子状のシリカ粒子を分散させた状態の液を用いることもでき、特に透明性を追求する目的においては好ましい。
【0052】
ここで、分散溶媒が有機溶剤の場合、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等を使用することができる。尚、より好ましい分散溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びキシレン等である。又、これらの有機溶剤と相溶するこれら以外の有機溶剤または水との混合物として用いてもよい。
【0053】
4-4)有機溶剤
本発明の組成物においては、塗工性を改善するために、有機溶剤を含有することが好ましい。
この場合の有機溶剤の例としては、(C2-1)前駆体の溶液重合において有機溶剤として例示したものと同様のものが使用できる。
本発明の組成物に有機溶剤を含有する場合における配合割合としては、組成物全体の固形分が20〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量%である。
【0054】
4-5)その他の成分
上記以外の任意成分としては、スリップ剤、レベリング剤、消泡剤、たれ防止剤、酸化防止剤等の添加剤を含有することができる。
【0055】
2.加飾積層フィルム
本発明の組成物は、光照射により硬化させて得られる組成物の硬化膜を加飾積層フィルムの表面保護層を形成するために使用する。表面保護層は、成形品の表面において、耐擦傷性を向上させる。
加飾積層フィルムの一般構成は、以下の2つの実施形態が例示できる。
【0056】
まず、インサート成形で良く用いられるのが、表面保護層/基材フィルム/加飾層の層構成(以下、「実施形態1」という。)を必須とするものである。この実施形態1の場合、成形において、表面保護層が金型と接触する。
【0057】
次に、転写法では、基材フィルム/剥離層/表面保護層/加飾層の層構成(以下、「実施形態2」という。)を必須とするものである。この実施形態の場合、成形において、剥離シート(基材フィルム/剥離層)が金型と接触する。成形後、金型から取り出し、剥離シートを剥離層と表面保護層の界面で剥離して、表面保護層が成形品の最外層(表面)となる。
【0058】
まず、実施形態1について説明する。
実施形態1において、基材フィルムの材質としては、柔軟性を有する材料であれば良く、プラスチックが好ましく、特に熱可塑性プラスチックが好ましい。
熱可塑性プラスチックとしては、特に制限はないが、PET樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂等が例示でき、PET樹脂が好ましい。基材フィルムとしては、PETフィルムを好ましく使用することができる。
加飾層は、基材フィルムの表面保護層とは反対の面上に、テキスト、図形、模様及び商標等の図柄を印刷等により形成したものである。この場合、インクジェット法により図柄を形成するのが好ましい。
【0059】
次に、実施形態2について説明する。
実施形態2において、剥離層としては、実施形態1における基材フィルムと同様の材料に剥離処理を施した剥離シートが使用できる。剥離層を設けるか、又は、剥離処理を施したPETフィルムが剥離シートとして好ましく使用できる。
剥離処理又は剥離層側の面に、本発明の組成物を塗布し、光硬化して表面保護層である硬化膜を形成し、この表面保護層の上に、上記と同様の方法で加飾層を形成する。
【0060】
以上、加飾積層フィルムの必須の構成層として加飾層と表面保護層を説明したが、加飾層にさらに接着層を設けることができる。接着層は、成形体と加飾層の間の接着を向上する機能を奏する。
【0061】
3.加飾積層フィルムの製造方法
本発明の組成物は、前記実施形態1の加飾積層フィルムの表面保護層として好ましく使用できる。以下、この場合の加飾積層フィルムの製造方法について詳細に説明する。
この場合の好ましい製造方法としては、裏面に加飾層を有する基材フィルム上へ本発明の組成物の塗布し、必要に応じて乾燥させ、光照射して硬化させる方法が挙げられる。
基材フィルム上への組成物の塗布方法としては、アプリケータ、ナイフコーター、コンマコーター等、公知の方法が使用できる。
組成物の乾燥後の膜厚は、特に制限はないが、1〜50μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることが特に好ましい。
組成物の形態としては、前記した通り有機溶剤を配合して溶剤型の組成物としたものが好ましい。この場合、溶剤型の組成物溶液を塗布後、室温〜80℃に適宜加熱して、有機溶剤を揮発させ、乾燥塗膜とする。
乾燥塗膜は、光照射により硬化させ表面保護層とする。硬化工程には、紫外線照射ランプや可視光硬化ランプ等の光源を用いる。
【0062】
4.成形方法
この加飾積層フィルムは成形加工用に好ましく使用できる。
このようにして得られた加飾積層フィルムは、射出成形機の金型キャビティにセットされ、射出成形を行い、成形品の表面を被覆する、あるいは、予め、加飾フィルムを真空成形等により三次元加工した後、射出成形機の金型キャビティにセットし、成形品の表面を被覆する等の方法により、成形品を加飾することができる。バック面又は加飾層側に印刷された図柄等により、本発明の加飾積層フィルムは、成形加工物の表面をすり傷から保護することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の例において、「%」及び「部」は、それぞれ「重量%」及び「重量部」を示す。
【0064】
《製造例1》
[アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体〔(C2-1)成分〕の製造]
4つ口フラスコに、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)35部及びメチルメタクリレート(以下、「MMA」という)14.2部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という)2.5部を充填し、フラスコの内容物を180rpmで回転撹拌しながら、窒素雰囲気下で内温を89℃まで昇温した。内温が一定になった後、MMAの70.8部とGMAの12.5部からなる単量体混合液を2.5時間かけて供給し、他方で2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬社製V−65。以下、「V−65」という)1.1部とMEK23部からなる重合開始剤溶液を3.5時間かけて、それぞれ連続的に供給した。連続供給終了後、V−65 0.3部とMEK6部を一括で追加して未反応の単量体を重合させた後、内温を89℃に保って熟成を1.5時間行った。
次いで、得られた重合体に更にMEK35部を加えて、固形分濃度が48%のメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-1)前駆体」という)溶液に調整した。
【0065】
前記前駆体溶液の200mgを採取してガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、未反応のMMA及びGMAは検出されなかった。重合溶液中に含まれている(C2-1-1)前
駆体の重量平均分子量(以下、「Mw」という)及び数平均分子量(以下、「Mn」という)をゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したところ、標準ポリスチレン換算で、Mw=36000、Mn=16000、分子量分布(Mw/Mn)=2.25であった。
【0066】
続いて、前記前駆体溶液の温度を83℃に調整した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MQ」という)0.1部を加えて180rpmで回転撹拌しながら、5%酸素窒素混合気を2時間かけてバブリングさせた。十分なバブリングの後、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」という)1.0部、アクリル酸(以下、「AA」という)7.5部、MEKの25部を加えて30時間撹拌し、アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-1)」という)を含む溶液を得た。
(C2-1-1)溶液中の酸価をオートタイトレーター(COM−900、平沼産業(株)製)で測定したところ、酸価が1.1mgKOH/gであり、原料のAAがほぼ反応したことが確認された。
【0067】
《製造例2》
[アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体〔(C2-1)成分〕の製造]
製造例1において、GMAの総部数を25部に、AAの部数を12.5部に変更した以外は、同一の方法にて、アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-2)」という)を含む溶液を得た。
尚、(C2-1-2)の前駆体溶液の中の重合体は、Mw=38000、Mn=16000、分子量分布(Mw/Mn)=2.38、又酸価は1.6mgKOH/gであった。
【0068】
《製造例3》
[アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体〔(C2-1)成分〕の製造]
製造例1において、GMAの総部数を50部に、AAの部数を25部に変更した以外は、同一の方法にて、アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-3)」という)を含む溶液を得た。
尚、(C2-1-3)の前駆体溶液の中の重合体は、Mw=36000、Mn=16000、分子量分布(Mw/Mn)=2.25、又酸価は1.3mgKOH/gであった。
【0069】
《製造例4》
[アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体〔(C2-1)成分〕の製造]
製造例1において、GMAの総部数を2.5部に、AAの部数を1.2部に変更した以外は、同一の方法にて、アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-4)」という)を含む溶液を得た。
尚、(C2-1-4)の前駆体溶液の中の重合体は、Mw=37000、Mn=16000、分子量分布(Mw/Mn)=2.31、又酸価は0.9mgKOH/gであった。
【0070】
《製造例5》
[アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体〔(C2-1)成分〕の製造]
製造例1において、GMAの総部数を75部に、AAの部数を38部に変更した以外は、同一の方法にて、アクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(以下、「(C2-1-5)」という)を含む溶液を得た。
尚、(C2-1-5)の前駆体溶液中の重合体は、Mw=40000、Mn=17000、分子量分布(Mw/Mn)=2.35、又酸価は1.8mgKOH/gであった。
【0071】
【表1】

【0072】
<実施例1>
(光硬化型加飾積層フィルム用組成物の製造)
攪拌機を備えた容器に、(A)成分のEO変性イソシアヌル酸アクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM−215〕を20部、(B)成分の1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン〔チバ・ジャパン(株)製IRGACURE184。以下「IRG184」という。〕を3部、製造例1で得られたアクリロイル基を有するメタクリル系共重合体(C2-1-1)の溶液を80部(樹脂分:37.4部、MEK:42.6部)、更にコロイダルシリカ〔日産化学(株)製MEK−AC−2101。有機溶媒:MEK(固形分30.8%)。平均粒子径(BET法)10〜15μm。以下、「AC2101」という。〕を40部、表面調整剤〔ビックケミー(株)製BYK−UV−3570。以下、「BYK」という。〕1部を添加した。溶剤としてメチルエチルケトンを最終的な固形分が35%となるために必要な量を調整して添加した。
この混合物を1時間攪拌して、クリヤー塗料溶液である光硬化型加飾積層フィルム用組成物を得た。
【0073】
<実施例2〜11、比較例1〜4>
(光硬化型加飾積層フィルム用組成物の製造)
実施例1において、各成分を、表2及び表3に示すとおりに変更した以外は、上記と全く同様の方法で、組成物を製造した。
尚、表2及び表3において、製造例1〜同5で得られたアクリロイル基を有するメタクリル系共重合体溶液及びAC2021において、組成物中の組成比を明確にするため、共重合体、コロイダルシリカ及び有機溶剤(MEK)を分けて記載した。NVは不揮発分(固形分)(%)を意味し、BVは、得られた組成物をB型粘度計で測定した粘度(mPa・s)を意味する。
【0074】
尚、下記表2及び同3における前記以外の略号は、以下を意味する。
・M−215:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM−215、不飽和基濃度:5.42meq/g〕
・M−315:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM−315、不飽和基濃度:7.09meq/g〕
・M−327:ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート〔東亞合成(株)製アロニックスM−327、不飽和基濃度:3.92meq/g〕
・M−1200:ウレタンアクリレートオリゴマー〔東亞合成(株)製アロニックスM−1200、不飽和基濃度:1.64meq/g〕
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(不飽和基濃度:10.4meq/g)
【0075】
<評価>
組成物の硬化物を熱可塑性フィルム上に有する加飾積層フィルムに関連する、以下に示す方法で評価を行った。熱可塑性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した場合を想定した。
評価結果は、表2及び表3に示した。
【0076】
(組成物の乾燥塗膜層を有する試験体(1)の作製)
易成形PETフィルム(テフレックスFT−7、膜厚50μm、帝人フィルム(株)製)上に、バーコータ#8を用いて、上記で得られた組成物の塗布膜厚が5μmとなるように均一に塗布した後、組成物内の溶剤を除去する為に、室温、又は必要に応じて加温乾燥を行って、PETフィルム上に組成物の乾燥塗膜層を有する試験体(1)を製造した。
この試験体(1)を使用して、タック性の評価を行い、紫外線照射後の硬化膜を使用して、カール性、耐摩耗性及び破断伸び率の評価を行った。
尚、紫外線硬化後の試験体(1)は、組成物の硬化物を熱可塑性フィルム上に有する加飾積層フィルムに相当する。
【0077】
<タック性の評価>
紫外線照射前の試験体(1)について、表面タックの評価を行った。
この評価は、塗膜表面のタック感の有無を指触によって判定した。
タック感がない場合にはクリヤー塗膜層に粘着性がないものとして合格(○)とし、タック感がある場合にはクリヤー塗膜層に粘着性があるものとして不合格(×)とした。
【0078】
<カール性の評価>
試験体(1)を100mm×100mmの大きさに切り分け、その4辺をテープで板に完全に固定した状態で、以下の条件で紫外線を照射して紫外線硬化させた。
○紫外線照射条件
紫外線硬化装置(ECS−401GX、アイグラフィックス(株)製)
乾燥塗膜側から80W/cmの高圧水源灯を用いて、380mJ/cm2の光量の紫外線を照射。
硬化後、テープを除去して板からはがしたときの4隅の反り返り高さを定規にて測定し、その平均値をもってカール性を決定した。反りが著しいものは、不合格(×)とした。
【0079】
<耐擦傷性の評価>
試験体(1)をカール性試験と同様の条件で紫外線照射した後の試験体(2)について評価した。
試験体(2)を30×100mmの大きさに切り分け、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所(株)製)にセットした。
スチールウール#0000を用いて、300gf荷重をかけてフィルム上を10往復擦った後、擦った箇所のHAZEをヘイズメーターにて測定し、擦る前のサンプルのHAZE値との差で評価した。
【0080】
<破断伸び率の評価>
試験体(1)をカール性試験と同様の条件で紫外線照射した後の試験体(2)について評価した。
試験体(2)を10×60mmの試験片に切り分け、破断評価用サンプルとした。
ストログラフ(STROGRAPH R、東洋精機(株)製)を用いて、チャック間距離が2cmとなるよう試験体(2)をセットした後、80℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて試験体(2)を易成形PETフィルムごと引っ張り、塗膜層にクラックが生じたときの伸び長さから破断伸び率(%)を決定した。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
本発明の組成物は、硬化前におけるタック感がなく、硬化物のカールがないもので、耐擦傷性及び伸びにも優れるものであった。
これに対して、(A)成分を含まない比較例1の組成物は、硬化物の耐擦傷性及び伸びが不十分なものであった。(A)成分を含まない組成物ではあるがウレタンアクリレートを含む比較例4の組成物は、硬化物の伸びに優れるものの、耐擦傷性が不十分なものであった。
(A)及び(B)成分を含むが、エチレン性不飽和基濃度が4.0meq/gを超える比較例2及び同3の組成物は、硬化物の耐擦傷性に優れるものの、伸びが不十分なものであった。
【0085】
<応用例>
前記実施例の組成物を使用し、裏面に加飾層を有するPETフィル上に塗工し、前記と同様の条件で乾燥し溶剤を蒸発させた。
組成物の乾燥塗膜に上記と同様の条件で紫外線を照射し、組成物を硬化させ加飾積層フィルムを製造した。
得られた加飾積層フィルムを、金型に向かい合うように金型キャビティに配置し、ヒーターで加熱しながら真空吸引し、フィルムを金型に密着させた。その金型内に230℃で溶融したABS樹脂を射出し、樹脂を固化させインサート成形を行った。
その結果、成形体上に良好な加飾積層が形成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の組成物は、プラスチック成形品を加飾する加飾積層フィルム用組成物として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のエチレン性不飽和基及びイソシアヌレート環を有する化合物(A)及び光重合開始剤(B)を含む組成物であって、エチレン性不飽和基濃度が0.1〜4.0meq/gである光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項2】
(A)成分が、オキシアルキレン基又は/及び−COCN2NO−(Nは2〜6の整数)で表される基を有する化合物である請求項1記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項3】
(A)成分が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【化1】

[一般式(1)における符号は、それぞれ下記を意味する。
●X1、X2及びX3は、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1、m2及びm3は、それぞれ独立して1〜3の数を表す。但し、m1+m2+m3=3〜9である。
●Y1、Y2及びY3は、−COCN2NO−(Nは2〜6の整数)で表される基を表す。n1、n2及びn3は、それぞれ独立して0〜9の数を表す。但し、n1+n2+n3=0〜9である。
●Z1、Z2及びZ3は、水素原子又は(メタ)アクリロイル基を表す。]
【請求項4】
前記一般式(1)において、Y1、Y2及びY3がN=5の基で、かつn1+n2+n3=3〜9である化合物である請求項3に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項5】
2個以上のアクリロイル基を有する(A)成分以外の化合物(C)をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項6】
(A)及び(C)成分を、これらの合計量を基準として、(A)成分が10〜80重量%及び(C)成分が90〜20重量%の割合で含有する請求項5に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項7】
(C)成分が、2個以上のアクリロイル基を有するモノマー又は/及びオリゴマー(C1)である請求項5又は請求項6に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項8】
(C)成分が、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する共重合体(C2)である請求項5又は請求項6に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項9】
(C2)成分が、グリシジル(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加反応させて得られる側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する共重合体である請求項8記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項10】
(C)成分が、(C1)及び(C2)成分を含み、これらの合計量を基準として(C1)成分が0〜80重量%であり、(C2)成分が100〜20重量%である請求項6〜請求項9のいずれかに記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項11】
さらに無機微粒子を含有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項12】
無機微粒子がシリカである請求項11に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項13】
さらに有機溶剤を含有する、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の光硬化型加飾積層フィルム用組成物。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の組成物の硬化膜を、裏面に加飾層を有する熱可塑性フィルム上に有する加飾積層フィルム。
【請求項15】
射出成形加工用である、請求項14に記載の加飾積層フィルム。
【請求項16】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の組成物を、裏面に加飾層を有する熱可塑性フィルム上に設ける工程、及び当該組成物を光照射により硬化させる工程を含む加飾積層フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−225679(P2011−225679A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95324(P2010−95324)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】