説明

光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法

【課題】表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して得られるオーバープリント及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光カチオン重合開始剤、及び、(C)カチオン重合性化合物、を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用したオーバープリント、及び、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光硬化性組成物、特に紫外線による硬化性組成物が多量に使用されてきている。例えば、印刷インキ、オーバーコートワニス、塗料、接着剤、フォトレジスト等を挙げることができる。
特に、電子写真法のようなトナーベースの画像情報の上にオーバープリントコーティングを施すことにより印刷物の保護性向上、光沢性付与された印刷物は銀塩写真プリントの代替商品として商品化されており、注目を集めている。
トナーベースの印刷物が得られる電子写真法とは、潜像保持体表面、例えば感光体(photoreceptor)に均一に帯電させることによって、静電荷を潜像保持体表面に形成させる。次いで、その均一帯電させた領域を、原稿の画像に対応する活性化照射のパターンにより選択的に電荷を逃がす。その表面に残る潜像電荷パターンは、照射に暴露されなかった領域に対応する。次いで、その感光体を、トナーを含む1つ又は複数の現像ハウジングに通すことにより、トナーが、静電引力によって電荷パターンで付着するので、その潜像電荷パターンが可視化される。次いでその現像された画像を、画像形成表面に定着させるか、又は、印刷基材、例えば紙に転写させ、適切な定着技術によりそれに定着させて、電子写真印刷物、すなわちトナーベースの印刷物が得られる。
【0003】
印刷物を保護するための公知の方法としては、印刷物にオーバープリントコーティングを施すことが提案されている。例えば、特許文献1及び2には、電子写真法のような、トナーベースの画像の上に、透明トナーを転写した後に定着を行い、表面を被覆する方法が提案されている。
また、特許文献3には、紫外線などによって硬化させることが可能な液膜コーティングを施し、光によってコーティング成分を重合(架橋)させることにより、オーバープリントコーティングを施す方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、三官能不飽和アクリル樹脂からなる群より選択される放射線硬化性オリゴマーと、1種又は複数のジ−アクリレート又はトリ−アクリレートを含む、多官能アルコキシル化アクリルモノマー又はポリアルコキシル化アクリルモノマー、からなる群より選択される放射線硬化性モノマーと、少なくとも1種の光重合開始剤と、少なくとも1種の界面活性剤と、を含むオーバープリント組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献5には、カルボン酸を含有する重量平均分子量5000以上の付加重合ポリマーと、水酸基を含有するフェニルケトン化合物とをエステル化反応させて得られる光開始剤が開示されている。
また、特許文献6には、共重合可能なフェノン誘導体が開示されている。
さらに、特許文献7には、光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを用いた画像形成方法において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−70647号公報
【特許文献2】特開2003−241414号公報
【特許文献3】特開昭61−210365号公報
【特許文献4】特開2005−321782号公報
【特許文献5】特開平7−33811号公報
【特許文献6】特開平2−270844号公報
【特許文献7】特開2006−334925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して得られるオーバープリント及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下に記載の<1>、<8>又は<9>により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<7>とともに以下に記す。
<1> (A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光カチオン重合開始剤、及び、(C)カチオン重合性化合物を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、
<2> 前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーにおけるカチオン重合性基が、エポキシ基、オキセタニル基、及び、ビニルオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基である上記<1>に記載の光硬化性コーティング組成物、
<3> 前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーにおけるカチオン重合性基が、エポキシ基、及び/又は、オキセタニル基である上記<1>又は<2>に記載の光硬化性コーティング組成物、
<4> 前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーが、カチオン重合性基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有する上記<1>〜<3>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
【0008】
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、複数あるR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【0009】
<5> 可視域に実質的に吸収を有しない上記<1>〜<4>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<6> オーバープリント用である上記<1>〜<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<7> 電子写真印刷物のオーバープリント用である上記<1>〜<6>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<8> 電子写真印刷物上に上記<1>〜<7>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント、
<9> 印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、前記電子写真印刷物上に上記<1>〜<7>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含むオーバープリントの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して得られるオーバープリント及びその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(光硬化性コーティング組成物)
本発明の光硬化性コーティング組成物(以下、単に「コーティング組成物」ともいう。)は、(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光カチオン重合開始剤、及び、(C)カチオン重合性化合物、を含有することを特徴とする。
本発明のオーバープリントは、印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含む。
また、前記印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。
【0013】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、電子線、紫外線等の活性放射線の照射により硬化可能な光硬化性コーティング組成物であり、特に、平版、凸版、凹版、スクリーン印刷、インクジェット、電子写真等の方法でインク及び/又はトナーを印刷基材(受像基材)上に配置して作成した画像に対してコーティングを行うための光硬化性コーティング組成物として好適に用いることができる。さらに、電子写真法により印刷されたトナーベースの印刷物をコーティングするための光硬化性オーバープリント組成物(overprint compositions)として特に好適である。
【0014】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、可視域に実質的に吸収を有しないことが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティング組成物として支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、70%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、オーバープリント用として好適に使用することができ、電子写真印刷物のオーバープリント用として特に好適に使用することができる。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像部がトナー分の厚みを有する電子写真印刷物に対してオーバープリント層を形成する場合においても、非タック性及び表面平滑性に優れ、艶や光沢のあるオーバープリントを与え、視覚的に従来からの銀塩写真プリントに近い印象を与えることができる。
電子写真法のようなトナーベースの画像において、画像表面にフェザーオイル層が存在する場合には、印刷物表面が疎水的であり、かつ表面エネルギーが低いために、硬化性、表面平滑性、強度、保存安定性等の全てにおいて満足する光硬化性組成物を得ることは難しい現状にある。
しかしながら、本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像表面にフェザーオイル層が存在するトナー画像であっても、非タック性と表面平滑性に優れ、艶や光沢があり、反りの少ない柔軟性に富む画像印刷物を与え、視覚的に銀塩写真プリントに近いオーバープリントを得ることができる。
【0015】
また、電子写真法のようなトナーベースの画像は、画像表面にフェザーオイル層が存在する場合には、印刷物表面が疎水的であり、かつ表面エネルギーが低いために、硬化性、表面平滑性、強度、保存安定性等の全てにおいて満足する光硬化性組成物を得ることは難しい現状にある。
特に、トナーベースの画像情報の上にオーバープリントコーティングを施して銀塩写真プリントの代替商品として扱う場合、一般消費者が直接手にするために、商品の臭気・安全性が重要な品質の一つとなる。
臭気発生の原因としては、重合性モノマーのような揮発性を有する化合物の残存(未硬化モノマー)や、硬化性組成物と共重合性を有さないために、硬化皮膜中に取り込まれない重合開始剤の分解物などが挙げられる。
重合性モノマーに起因する臭気の低減に関しては、低揮発性の観点で、固体モノマーや高分子量液体モノマーの活用が考えられるが、重合性組成物の粘度が上昇する為に表面平滑性が低下し、印刷物表面にスジなどが発生するという問題点がある。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーを含有することにより、表面平滑性及び非タック性(表面ベトツキ抑制)に優れ、かつ、オーバープリントにおける臭気を抑制できた。
【0016】
(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー
本発明の光硬化性コーティング組成物は、(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー(以下、単に「特定ケイ素ポリマー」ともいう。)を少なくとも含有する。
本発明に用いることができるカチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーは、カチオン重合性基を1つ以上有し、かつ、ケイ素原子を含有するポリマーであり、上記以外には特に制限はない。
【0017】
カチオン重合性基の好ましい例としては、例えば、環状エーテル基、及び、ビニルオキシ基が挙げられる。
環状エーテル基としては、エポキシ基(脂環エポキシ基を含む。以下においても同様である。)、オキセタニル基、オキソラニル基などが挙げられる。
環状エーテル基の中でも、炭素原子数2〜6の環状エーテル基であることが好ましく、炭素原子数2〜3の環状エーテル基(エポキシ基、オキセタニル基)であることがより好ましい。また、環状エーテル基は、単環であってもよいし、多環であってもよい。
環状エーテル基として具体的には、下記に示す環状エーテル基であることが特に好ましい。これらの中でも、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
環状エーテル基を構成する炭素原子には、置換基が導入されていてもよい。導入し得る置換基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、炭素数1〜18のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基等が挙げられる。
【0020】
また、環状エーテル基以外の好ましいカチオン重合性基としては、ビニルオキシ基が挙げられる。なお、ビニルオキシ基を構成する炭素原子には、置換基が導入されていてもよい。導入し得る置換基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、炭素数1〜18のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基等が挙げられる。
【0021】
また、特定ケイ素ポリマー中におけるカチオン重合性基の導入量としては、0.1〜100mmol/gの範囲であることが好ましく、0.2〜80mmol/gの範囲のであることがより好ましい。特定ケイ素ポリマー中におけるカチオン重合性基の導入量が0.1mmol/g以上であると、表面ベトツキ抑制の性能に優れ、また、導入量が100mmol/g以下であると、保存安定性に優れる。
【0022】
カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、及び/又は、ビニルオキシ基がより好ましく例示でき、エポキシ基、及び/又は、オキセタニル基がさらに好ましく例示できる。
特定ケイ素ポリマーにおけるするカチオン重合性基は、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
また、本発明のコーティング組成物において、特定ケイ素ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、特定ケイ素ポリマーは、下記に示す式(A)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することが好ましい。式(A)で表されるケイ素原子を含む基は、特定ケイ素ポリマーの主鎖にあっても、側鎖にあっても、その両方にあってもよいが、特定ケイ素ポリマーの側鎖にあることが好ましい。
【0024】
【化3】

(式(A)中、R及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、pは1以上の整数を表す。)
【0025】
式(A)におけるR及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることがさらに好ましい。
前記一価炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基等が例示できる。
また、前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。前記アルコキシ基のアルキル部分は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アリーロキシ基としては、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーロキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
式(A)におけるpは1以上の整数を表し、1以上2,000以下の整数であることが好ましく、1以上1,000以下であることがより好ましい。
また、式(A)で表されるケイ素原子を含む基は、−Si(CH32−O−、又は、ポリジメチルシロキサン基であることが好ましい。
【0026】
また、特定ケイ素ポリマーは、下記に示す式(B)又は式(C)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することがより好ましく、下記に示す式(B)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することがさらに好ましい。式(B)又は式(C)で表されるケイ素原子を含む基は、特定ケイ素ポリマーの主鎖にあっても、側鎖にあっても、その両方にあってもよいが、特定ケイ素ポリマーの側鎖にあることが好ましい。
【0027】
【化4】

(式(B)及び式(C)中、R及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシを表し、RB及びRCは、水素原子又は一価の有機基を表し、pは1以上の整数を表す。)
【0028】
式(B)におけるR、R’及びpは、前記式(A)におけるR、R’及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、式(C)におけるR及びR’は、前記式(A)におけるR及びR’と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(B)及び式(C)におけるRB及びRCはそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、特に制限はなく、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましい。
また、式(B)におけるRBは、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数1〜20のアルキル基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることがさらに好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることが特に好ましい。
また、式(C)におけるRCは、水素原子、一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましい。
また、前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。前記アルキル基は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。前記アルコキシ基のアルキル部分は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アリーロキシ基としては、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーロキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
また、式(B)で表されるケイ素原子を含む基は、ポリジメチルシロキサン基を含む基であることが好ましく、末端にアルキル基を有するポリジメチルシロキサン基を含む基であることがより好ましい。
また、式(C)で表されるケイ素原子を含む基は、トリアルキルシリルオキシ基であることが好ましく、トリメチルシリルオキシ基であることがより好ましい。
【0029】
本発明に用いることができる特定ケイ素ポリマーは、付加重合により重合した付加重合系樹脂であることが好ましく、ラジカル重合により重合したラジカル重合系樹脂であることがより好ましい。
また、特定ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含む基を有するモノマーと、カチオン重合性基を有するモノマー又はカチオン重合性基を導入可能な基を有するモノマーとの共重合体であることが好ましい。
前記カチオン重合性基を導入可能な基とは、例えば、カチオン重合性基を有する基を別途結合することができる、ヒドロキシ基やアミノ基のような反応性基が挙げられる。
【0030】
特定ケイ素ポリマーは、カチオン重合性基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有することが好ましい。
【0031】
【化5】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、複数あるR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【0032】
式(1)における複数存在するR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)におけるmは1〜6の整数を表し、2〜6の整数であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
式(1)におけるnは2〜1,000の整数を表し、4〜800の整数であることが好ましく、6〜600の整数であることがより好ましい。上記範囲であると、コーティング組成物の表面エネルギーが大きく低下し、表面平滑性の向上に大きく寄与することができる。
【0033】
特定ケイ素ポリマーの製造に使用するケイ素原子を有するモノマーとしては、特に制限はないが、ケイ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物及び/又はケイ素原子を有する(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましく、ケイ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
また、特定ケイ素ポリマーの製造に使用するケイ素原子を有するモノマーは、下記式(1−1)で表されるモノマーであることが好ましい。
【0034】
【化6】

【0035】
式(1−1)におけるR1、R2、m及びnは、前記式(1)におけるR1、R2、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0036】
また、特定ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含むモノマー単位を、全モノマー単位中、1〜60モル%の範囲で有していることが好ましく、3〜50モル%の範囲で有していることがより好ましく、5〜40モル%の範囲で有していることがさらに好ましい。ケイ素原子を含むモノマー単位の含有量が1モル%以上であると、所望の表面平滑性が得られる。また、ケイ素原子を含むモノマー単位の含有量が60モル%以下であると、特定ケイ素ポリマーの溶解性が十分である。
【0037】
特定ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含むモノマー単位、及び、カチオン重合性基を有するモノマー単位を少なくとも有するポリマーであることが好ましく、前記式(1)で表されるモノマー単位及び下記式(2)で表されるモノマー単位を少なくとも有するポリマーであることがより好ましく、前記式(1)で表されるモノマー単位及び下記式(2)で表されるモノマー単位のみを有するポリマーであることがさらに好ましい。
特定ケイ素ポリマーは、前記カチオン重合性基を有するモノマー単位を、1種単独で有していても、2種以上有していてもよく、ケイ素原子を含むモノマー単位がカチオン重合性基をさらに有していてもよい。
前記カチオン重合性基を有するモノマー単位としては、下記式(2)で表されるモノマー単位が好ましい。
【0038】
【化7】

(式(2)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、XはO又はNRを表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表し、R5はカチオン重合性基を有する基を表す。)
【0039】
式(2)におけるR5は、カチオン重合性基を少なくとも1つ有する基を表す。R5におけるカチオン重合性基は1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
また、カチオン重合性基は、R5のいずれの位置に有していてもよいが、R5の末端に有していることが好ましい。
式(2)におけるカチオン重合性基は、前述したカチオン重合性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0040】
式(2)におけるR5として、前記カチオン重合性基とXとは、二価以上の多価の連結基を介して結合されていてもよい。
前記多価の連結基としては下記の部分構造、又は、これらが2以上組み合わされて構成される連結基が挙げられる。
【0041】
【化8】

【0042】
式(2)におけるR5はさらに置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等を挙げることができる。
また、式(2)おけるRは、水素原子又は一価の有機基を表す。
前記一価の有機基としては、特に制限はないが、炭化水素基、又は、R5におけるカチオン重合性基を有する基であることが好ましい。
前記Rとしては、水素原子、アルキル基、前記カチオン重合性基を有する基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0043】
前記カチオン重合性基を有するモノマー単位としては、下記に示す具体例を好ましく例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化9】

【0045】
特定ケイ素ポリマーの製造に使用するカチオン重合性基又はカチオン重合性基を導入可能な基を有するモノマーとしては、特に制限はないが、(メタ)アクリレート化合物及び/又は(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0046】
特定ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含むモノマー単位、及び、カチオン重合性基を有するモノマー単位以外に、他のモノマー単位を有していてもよい。
他のモノマー単位としては、公知のモノマーより形成されるモノマー単位であればよく、公知のラジカル重合性モノマーより形成されるモノマー単位であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物、及び/又は、(メタ)アクリルアミド化合物より形成されるモノマー単位であることがより好ましい。
【0047】
特定ケイ素ポリマーの製造に用いることができるモノマーとしては、特に限定はないが、ラジカル重合性モノマーであることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有するモノマーであることがより好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0048】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知の単官能ラジカル重合性モノマーを用いることができる。
【0049】
また、特定ケイ素ポリマーは、下記式(3)で表されるポリマーであることが好ましい。
【0050】
【化10】

(式(3)中、RSiはケイ素原子を含む基を表し、RCaはカチオン重合性基を有する基を表し、RNはケイ素原子及びはカチオン重合性基を含まない有機基を表し、Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、xは1〜60を表し、yは20〜99を表し、zは0〜79を表し、また、x+y+z=100である。)
【0051】
式(3)におけるRSiは、ケイ素原子を含む基を表し、式(A)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有する基であることが好ましく、式(B)又は式(C)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有する基であることがより好ましい。
式(3)におけるRCaは、カチオン重合性基を有する基を表し、−COORD、又は、−CONHRDであることが好ましい。前記RDはカチオン重合性基を少なくとも1つ有する基を表し、カチオン重合性基を1つ又は2つ有する基であることが好ましく、カチオン重合性基を1つ有する基であることがより好ましい。
式(3)におけるRNは、ケイ素原子及びカチオン重合性基を含まない有機基を表し、−COORE、又は、−CONHREであることが好ましい。前記REは一価の有機基を表し、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
式(3)におけるおけるx、y及びzは、各モノマー単位のモル比を表し、x+y+z=100とする。
式(3)におけるxは、1〜60を表し、3〜50が好ましく、5〜40がより好ましい。
式(3)におけるyは、20〜99を表し、30〜97が好ましい。
式(3)におけるzは、0〜79を表し、0〜20であることが好ましく、0であることがより好ましい。
式(3)における各モノマー単位はそれぞれ、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
また、式(3)で表されるポリマーの末端は、重合反応のクエンチ方法等にも依存するが、水素原子、ヒドロキシ基、不飽和二重結合等が例示できるが、水素原子であることが好ましい。
【0052】
本発明にて好適に用いることのできる、特定ケイ素ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本発明では、化学式において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
また、下記具体例において、各モノマー単位の括弧に付記されている数字は、ポリマー中の各モノマー単位のモル比を表し、100は当該モノマー単位のみで構成されたホモポリマーであることを意味する。
【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
なお、前記具体例中、「n≒8」とは、nの平均値が8であることを表す。他についても同様である。また、(S−24)〜(S−26)における各シリルオキシ単位は、ランダムに結合しており、(S−24)〜(S−26)におけるモル比p1〜p3及びq1〜q3は、以下の値である。
p1=70、q1=30、p2=80、q2=20、p3=70、q3=30。
【0059】
特定ケイ素ポリマーの重量平均分子量は、5,000〜200,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、50,000〜120,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、表面の皮膜性に優れ、非タック性に優れる。また、重量平均分子量が200,000以下であると、コーティング組成物への溶解性に優れる。
【0060】
本発明の光硬化性コーティング組成物における特定ケイ素ポリマーの含有量は、表面ベトツキ抑制(非タック性)、表面平滑性の観点から、光硬化性コーティング組成物全体の重量に対して、0.001〜40重量%の範囲であることが好ましく、0.01〜30重量%の範囲がより好ましく、0.1〜20重量%の範囲であることがさらに好ましく、0.5〜5重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0061】
(B)光カチオン重合開始剤
本発明のコーティング組成物は、(B)光カチオン重合開始剤を含有する。
光カチオン重合開始剤としては、公知の光カチオン重合開始剤を使用することができる。
本発明のコーティング組成物に使用する光カチオン重合開始剤は、活性放射線による外部エネルギーを吸収してカチオン重合開始種を生成する化合物である。活性放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。使用する波長は特に限定されないが、好ましくは200〜500nmの波長領域であり、より好ましくは200〜450nmの波長領域である。
本発明における光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0062】
本発明における光カチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物の総量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、0.5〜30重量%であることがさらに好ましい。
また、光カチオン重合開始剤は、後述する増感剤を用いる場合、増感剤に対して、光カチオン重合開始剤:増感剤の重量比で、200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明において、上記のカチオン重合性化合物と併用するカチオン光重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページを参照することができる。)。
本発明に好適なカチオン光重合開始剤の例を以下に挙げる。
すなわち、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどのオニウム化合物が挙げられる。これらのオニウム塩は、芳香族オニウム塩であることが好ましい。また、カウンターアニオンとしては特に限定されないが、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-が特に好ましく用いられる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光により発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
上記如きカチオン光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
(C)カチオン重合性化合物
本発明のコーティング組成物は、(C)カチオン重合性化合物を含有する。
本発明におけるカチオン重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、前述のカチオン重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。また、カチオン重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、環状エーテル基及び/又はビニルオキシ基を有する化合物であることが好ましく、エポキシ基、オキセタニル基及び/又はビニルオキシ基を有する化合物であることがより好ましく、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する化合物であることがさらに好ましい。
また、本発明のコーティング組成物は、エポキシ基を有する化合物及びはオキセタニル基を有する化合物の両方を含有することが特に好ましい。
【0065】
ここで、本明細書において、エポキシ基を有する化合物(以下、適宜「オキシラン化合物」と称する場合がある。)とは、分子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物であり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。また、オキセタニル基を有する化合物(以下、適宜「オキセタン化合物」と称する場合がある。)とは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物である。
【0066】
以下、本発明に適用し得るカチオン重合性化合物について詳細に説明する。
カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0067】
本発明に用いることができる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0068】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0069】
本発明に用いることができる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0071】
本発明におけるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0072】
本発明に用いることができるオキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0073】
本発明に用いることができる単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル[ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0074】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキサイド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0075】
このようなオキセタン化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落0021乃至0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用し得る。
本発明に用いることができるオキセタン化合物のなかでも、オキセタン環を1〜4個有する化合物を使用することが好ましく、オキセタン環を1及び/又は2個有する化合物を使用することがより好ましい。
本発明においては、これらのカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の光硬化性コーティング組成物におけるカチオン重合性化合物の含有量は、硬化性と表面平滑性の観点から、コーティング組成物全体の重量に対して、10〜97重量%の範囲であることが好ましく、30〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜90重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0077】
なお、本発明のコーティング組成物は、後述するラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを併用したラジカル・カチオンのハイブリッド型コーティング組成物としてもよい。
【0078】
<ラジカル重合性化合物>
本発明のコーティング組成物は、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物とを併用してもよい。
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。
本発明におけるラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。反応性、物性などの性能を制御する点から、2種以上のラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。
【0079】
ラジカル重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0080】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを用いることができる。
【0081】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0082】
<光ラジカル重合開始剤>
本発明のコーティング組成物にラジカル重合性化合物を併用する場合、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤とを併用することが好ましい。
本発明で好ましく使用できるラジカル光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
透明性の観点から好ましい光重合開始剤としては、光重合開始剤を3g/cm2の厚みで製膜した際に、400nmの波長の吸光度が0.3以下の化合物であることが好ましく、0.2以下の化合物であることがより好ましく、0.1以下の化合物であることがさらに好ましい。
上記の中でも、好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物が挙げられる。
【0083】
<増感剤>
本発明のコーティング組成物には、前記光重合開始剤の活性放射線の照射による分解を促進させるために増感剤を添加することができる。
増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより光重合開始剤の化学変化、すなわち、分解、ラジカル、酸又は塩基の生成を促進させるものである。
また、本発明に用いることのできる増感剤は、本発明のコーティング組成物をオーバープリントに使用した際に、着色等の影響が小さい化合物又は量を使用することが好ましい。
本発明における増感剤の含有量は、コーティング組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがさらに好ましい。この添加量であると、硬化性が向上し、着色の影響が少ない。
【0084】
増感剤は、使用する光重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なコーティング組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0085】
より好ましい増感剤の例としては、下記式(II)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【化16】

【0087】
式(II)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0088】
【化17】

【0089】
式(III)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(II)に示したものと同義である。
【0090】
【化18】

【0091】
式(IV)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0092】
【化19】

【0093】
式(V)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0094】
【化20】

【0095】
式(VI)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又はNR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及び、R65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0096】
式(II)〜(VI)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記具体例におけるPhは、フェニル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0097】
【化21】

【0098】
【化22】

【0099】
<共増感剤>
本発明のコーティング組成物は、共増感剤を含有することもできる。
本発明において共増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が例示できる。
【0100】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特表昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が例示できる。
【0101】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(例えば、ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0102】
<界面活性剤>
本発明のコーティング組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤として有機フルオロ化合物やポリシロキサン化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサン化合物が好ましく例示できる。
これらの界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0103】
<その他の成分>
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。重合禁止剤は、本発明のコーティング組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
アエロジル(デグサ社製二酸化ケイ素粒子)のような無機粒子や、架橋したポリメチルメタクリレート(PMMA)のような有機粒子を本発明のコーティング組成物に添加して、意図的に表面光沢を下げたオーバープリント層又はオーバープリントを形成することができる。
【0104】
本発明のコーティング組成物が放射線硬化性コーティング組成物であることに鑑み、塗布後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、本発明のコーティング組成物は溶剤を含まないことが好ましい。しかし、コーティング組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。
本発明において、溶剤としては、有機溶剤が使用でき、硬化速度の観点から水は実質的に添加しないことが好ましい。有機溶剤は、印刷基材(紙などの受像基材)との密着性を改良するために添加され得る。
有機溶剤を使用する場合も、その量は少ないほど好ましく、本発明のコーティング組成物全体の重量に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0105】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のコーティング組成物に添加することができる。
例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。
【0106】
また、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の印刷基材への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、エチレン性不飽和基を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0107】
<光硬化性コーティング組成物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物における好ましい物性について説明する。
光硬化性コーティング組成物として使用する場合には、塗布性を考慮し、25〜30℃における粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、7〜75mPa・sであることがより好ましい。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。
25℃〜30℃における粘度を上記の値に設定することにより、非タック性に優れ(表面ベトツキがなく)、表面平滑性に優れたオーバープリント層を有するオーバープリントが得られる。
本発明の光硬化性コーティング組成物の表面張力は、16〜40mN/mであることが好ましく、18〜35mN/mであることがより好ましい。
【0108】
(オーバープリント及びその製造方法)
本発明のオーバープリントは、印刷物上に本発明のコーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
前記オーバープリントとは、電子写真印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷又は凸版印刷等の印刷方法により得られた印刷物の表面上に、少なくとも1層のオーバープリント層を形成したものである。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層は、印刷物の一部に形成しても、印刷物の表面全体に形成してもよく、また、両面印刷物の場合には印刷基材の両方側全面に形成することが好ましい。また、前記オーバープリント層は、印刷物における印刷されていない部分に形成してもよいことは言うまでもない。
本発明のオーバープリントに使用する印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。電子写真印刷物上に本発明のコーティング組成物の硬化層であるオーバープリント層を形成することにより、非タック性、表面平滑性、光沢性に優れ、視覚的に銀塩写真プリントに類似したオーバープリントを得ることができる。
また、本発明のオーバープリントは、非タック性に優れるため、複数作製した本発明のオーバープリントを重ねて長期間保存しても、オーバープリント同士が張り付いたりせず、保管性に優れる。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の厚みは、1〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。
【0109】
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことが好ましい。
また、本発明のオーバープリントの製造方法は、潜像担持体の上に静電潜像を発生させる工程と、前記静電潜像をトナーにより現像する工程と、現像された静電画像を印刷基材へ転写させ電子写真印刷物を得る工程と、前記電子写真印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程とを含むことがより好ましい。
前記印刷基材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、受像用紙であることが好ましく、普通紙又はコート紙であることがより好ましく、コート紙であることがさらに好ましい。コート紙としては、両面コート紙が、フルカラー画像を美しく両面印刷できるので好ましい。印刷基材が紙又は両面コート紙である場合、好ましい坪量は20〜200g/m2であり、より好ましい坪量は40〜160g/m2である。
【0110】
電子写真法における画像を現像させるための方法に特に制限はなく、当業者には公知の方法から任意に選択することができる。例えば、カスケード法、タッチダウン法、パウダー・クラウド(powder cloud)法、磁気ブラシ法などが挙げられる。
また、現像された画像を印刷基材に転写させるための方法としては、コロトロン又はバイアスロールを使用する方法が例示できる。
電子写真法における画像を定着させるための定着工程(fixing step)は、各種適切な方法により実施することができる。例えば、フラッシュ定着、加熱定着、加圧定着、蒸気定着(vapor fusing)などが挙げられる。
電子写真法による画像形成方法、装置及びシステムとしては、特に制限はないが、公知のものを使用することができる。具体的には、以下の米国特許に記載されているようなものである。
米国特許第4,585,884号明細書、米国特許第4,584,253号明細書、米国特許第4,563,408号明細書、米国特許第4,265,990号明細書、米国特許第6,180,308号明細書、米国特許第6,212,347号明細書、米国特許第6,187,499号明細書、米国特許第5,966,570号明細書、米国特許第5,627,002号明細書、米国特許第5,366,840号明細書;米国特許第5,346,795号明細書、米国特許第5,223,368号明細書、及び、米国特許第5,826,147号明細書。
【0111】
光硬化性コーティング組成物を塗布するためには、通常使用される液膜コーティング装置(liquid film coating device)を使用することができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤバー、浸漬(dips)、エアナイフ、カーテンコーター、スライドコーター、ドクターナイフ、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、スロットコーター、及び、押出しコーターなどが例示できる。それらの装置は、通常と同じようにして使用することができるが、例えば、ダイレクトロールコーティング及びリバースロールコーティング(direct and reverse roll coating)、ブランケットコーティング(blanket coating)、ダンプナーコーティング(dampner coating)、カーテンコーティング、平版コーティング、スクリーンコーティング、及び、グラビアコーティングなどがある。好ましい実施の態様においては、本発明のコーティング組成物の塗布及び硬化は、2台又は3台のロールコーターとUV硬化ステーションを使用して実施する。
また、本発明のコーティング組成物の塗設時や硬化時においては、必要に応じ、加熱を行ってもよい。
本発明のコーティング組成物の塗布量は、単位面積当たりの重量で表して、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
また、本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の形成量は、単位面積当たり、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
【0112】
本発明のコーティング組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始させるために使用するエネルギー源としては、例えば、スペクトルの紫外線又は可視光線の波長を有する放射線のような、化学線作用のある(actinic)もの(活性放射線)が挙げられる。活性放射線の照射による重合は、重合の開始及び重合速度の調節に優れる。
好適な活性放射線照射源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、太陽光などが挙げられる。
【0113】
紫外線照射(UV光照射)の下で、高速コンベヤ(好ましくは、20〜70m/分)を用いた中圧(medium pressure)水銀ランプによる照射が好ましく、その場合UV光照射は、波長200〜500nmで、1秒未満の間与えることが好ましい。高速コンベヤの速度を15〜35m/分とし、波長200〜450nmのUV光を10〜50ミリ秒(ms)間照射するのがより好ましい。UV光源の発光スペクトルは通常、UV重合開始剤の吸収スペクトルと重なっている。場合によっては使用される硬化装置(curing equipment)としては、UV光を焦点に集めたり拡散させたりする反射板や、UV光源により発生する熱を除去するための冷却システムなどがあるが、これらに限定される訳ではない。
【0114】
<光硬化性コーティング組成物を硬化させた硬化物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物を光照射(好ましくは紫外線照射(UV光照射))により硬化させた硬化物は、可視域に実質的に吸収を有しないことが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティングとして支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、70%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
【実施例】
【0115】
以下に示す実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
【0116】
<ポリマー(S−3)の合成>
ポリジメチルシロキサン末端がメタクリルオキシプロピル基で修飾されたモノマー(MCR−M11、Gelest社製)(0.25モル)、メタクリル酸グリシジル(0.8モル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AIBN、和光純薬(株)製)(0.01モル)の、1−メトキシ−2−プロパノール(300g)溶液を、窒素気流下、80℃の1−メトキシ−2−プロパノール(300g)中に4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに85℃で3時間撹拌し、ポリマー(S−3)を得た。
ポリマー(S−3)の重量平均分子量は、1.9万であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
さらに得られたポリマー(S−3)は、NMRにより構造を同定した。
【0117】
【化23】

【0118】
<ポリマー(S−1)、(S−6)、(S−10)、(S−13)〜(S−15)、(S−18)及び(S−22)、並びに、比較ポリマー(Z−2)〜(Z−4)の合成>
モノマー及びその使用量をそれぞれ変更した以外は、上記ポリマー(S−3)の合成と同様の方法により、ポリマー(S−1)、(S−6)、(S−10)、(S−13)〜(S−15)、(S−18)及び(S−22)、並びに、比較ポリマー(Z−2)〜(Z−4)を合成した。
なお、比較ポリマー(Z−2)〜(Z−4)は、以下に示すポリマーである。
【0119】
【化24】

【0120】
また、ポリマー(S−24)は、アルドリッチ社製のものを使用した。
【0121】
(実施例1)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物1を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021:ダイセルユーシービー社製) 25重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 40重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製) 20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 10重量%
・アントラセン(アルドリッチ社製) 2重量%
・ポリマー(S−1) 3重量%
【0122】
【化25】

【0123】
(実施例2〜10)
ポリマー(S−1)を表1に記載の化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして光硬化性コーティング組成物2〜10をそれぞれ得た。
【0124】
(比較例1)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性オーバープリント組成物11を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021:ダイセルユーシービー社製) 25重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 40重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製) 20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 10重量%
・アントラセン(アルドリッチ社製) 2重量%
・比較ポリマー(Z−1) 3重量%
【0125】
(比較例2〜4)
比較ポリマー(Z−1)を表1に記載の化合物に代えた以外は、比較例1と同様にして比較用光硬化性コーティング組成物12〜14をそれぞれ得た。
【0126】
(比較例5)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物15を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021:ダイセルユーシービー社製) 25重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 40重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製) 23重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 10重量%
・アントラセン(アルドリッチ社製) 2重量%
【0127】
〔性能評価〕
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた光硬化性コーティング組成物1〜15をそれぞれ、以下の方法により性能評価した。
【0128】
<表面平滑性(レベリング性)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、シナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いて5g/m2の膜厚で片面にコーティングを行い、コーティングされた印刷物表面のタテスジ発生状態を目視にて評価した。評価基準を以下に示す。
◎:タテスジなし
○:少しタテスジが残る
△:タテスジが残るが実用上問題のないレベルである
×:著しくタテスジが見られ、実用上問題が生じるレベルである
【0129】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にバーコートで塗布を行い、得られた塗布膜に対して、浜松ホトニクス(株)製UVランプ(LC8)を用いて、1.0W/cm2の照度で120mJ/cm2露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
△:若干のベトツキあり
×:表面が未硬化
【0130】
<臭気評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にシナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いてコーティングを行った後に1時間放置した印刷物について、臭気を嗅いで官能評価を行い、下記の基準に従って臭気のレベルを評価した。
専門パネラー8人で下記評価基準(評価点)で評価した。
評価基準(評価点):
5(点):8人中8人が臭気低減効果を認めた。
4(点):8人中6〜7人が臭気低減効果を認めた。
3(点):8人中4〜5人が臭気低減効果を認めた。
2(点):8人中1〜3人が臭気低減効果を認めた。
1(点):臭気低減効果が認められなかった。
なお、評価点が4点以上の場合、実用使用上問題がないと考えられる。
【0131】
【表1】

【0132】
なお、表1に記載の比較ポリマー(Z−1)は、アルドリッチ社製ポリジメチルシロキサンである。
また、実施例1〜10のコーティング組成物を使用し、前記性能評価を行った際において、コーティング組成物を塗布量5g/m2で両面コート紙に塗布し硬化して得られたオーバーコート層の形成量は、塗布量と同様に5g/m2であった。また、前記形成したオーバープリント層の厚みは、それぞれ約5μmであった。なお、前記形成したオーバープリント層の厚みは、オーバープリントの断面を光学顕微鏡により観察し測定した。
【0133】
(実施例11)
A4サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)上の両面に各数コマずつのフルカラー画像を電子写真印刷した20枚の印刷物を作製し、その印刷物の両面に、前記の実施例1〜10にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射してオーバープリントを作製した。これらを製本して表紙と共に写真アルバムとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られる写真アルバムが得られた。
【0134】
(実施例12)
A3サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)10枚の両面に献立写真を含むフルカラー画像とテキストを電子写真印刷した。これらの印刷物の両面に、前記の実施例1〜10にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、片面5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射して両面オーバープリントを作製した。これらを綴じてレストランメニューとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られるレストランメニューが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマー、
(B)光カチオン重合開始剤、及び、
(C)カチオン重合性化合物、を含有することを特徴とする
光硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーにおけるカチオン重合性基が、エポキシ基、オキセタニル基、及び、ビニルオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基である請求項1に記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーにおけるカチオン重合性基が、エポキシ基、及び/又は、オキセタニル基である請求項1又は2に記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
前記(A)カチオン重合性基を有する含ケイ素ポリマーが、カチオン重合性基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有する請求項1〜3いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、複数あるR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【請求項5】
可視域に実質的に吸収を有しない請求項1〜4いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
オーバープリント用である請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
電子写真印刷物のオーバープリント用である請求項1〜6いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
電子写真印刷物上に請求項1〜7いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント。
【請求項9】
印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、
前記電子写真印刷物上に請求項1〜7いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、
前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含む
オーバープリントの製造方法。

【公開番号】特開2009−256553(P2009−256553A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110370(P2008−110370)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】