説明

光硬化性塗工液、硬化性樹脂組成物およびそれらを用いた積層体の製造方法

【課題】 一般に塗工液をはじきやすい材料、例えば、ポリオルガノシロキサンやポリフッ化ビニリデン等からなる表面層を有する基材に対して光硬化性塗工液あるいは硬化性樹脂組成物を比較的薄く塗布した際に、得られる塗布膜にはじきやピンホールなどの発生がなく、均一で薄い塗布膜を形成できるようにする。
【解決手段】 光硬化性塗工液は、固体状光重合性物質の微粒子が液状光重合性組成物中に分散してなるものである。微粒子の粒径は1nm〜10μmである。固体状光重合性物質としては、不飽和結合を有する有機カルボン酸の2価または3価金属塩が好ましい。また、液状光重合性組成物は、光重合性エチレン系不飽和化合物を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性塗工液およびその具体的態様としての硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、一般に表面張力の低い材料、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂やガラスなどからなる表面を有する基材の表面に比較的薄く塗布した場合であっても、得られる塗布膜に、はじきやピンホールなどの発生がなく、均一で薄い(例えば、約0.01〜10μm厚)の塗布膜を与えることのできる光硬化性塗工液およびその具体的態様である硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、この光硬化性塗工液あるいは硬化性樹脂組成物を用いた積層体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な反射防止膜が示す反射防止機能の原理は、高屈折率層の表面に低屈折率層を設け、高屈折率層で反射する光と低屈折率層で反射する光とをそれらの光路差を利用して互いに干渉させることにより反射光を低減させるものである。近年の液晶表示デバイスやプラズマディスプレイデバイス等の画像表示デバイスは、このような反射防止機能を有することが強く求められているだけでなく、更に、ハードコート機能も求められている。このような場合、反射防止膜は、ハードコート処理を施した基材上に、ディップ法やロールコート法などによって高屈折率層形成用塗工液を成膜した後に硬化させ、更に、その上に低屈折率層形成用塗工液を同様に成膜した後に硬化させることにより作製されている。
【0003】
ところで、このようなハードコート処理にはポリオルガノシランが広く用いられているが、ポリオルガノシランは塗工液に対する濡れ性が十分でないために、基材上に形成されたポリオルガノシラン層の表面に高屈折率層形成用塗工液や低屈折率層形成用塗工液を塗布すると、はじきやピンホールなどが頻繁に発生するという問題があった。同様な問題は、樹脂の中でも比較的表面張力の低いフッ素系樹脂やオレフィン系樹脂で表面処理をしたプラスチック基材やガラス基材等の基材上に光硬化性樹脂塗工液を塗布する場合にも発生していた。
【0004】
この問題に対しては、光硬化性樹脂塗工液の粘度を増加させることが考えられるが、塗工が困難となるため均一薄膜が得られにくくなる。そこで、光硬化性樹脂塗工液の主成分としてエポキシ基を有する重合性化合物とフッ素系重合体とを併用すること(特許文献1)、光硬化性樹脂塗工液にフッ素系界面活性剤を添加すること(特許文献2)、また、光硬化性樹脂塗工液に金属アルコキシドあるいはその分解物を配合することが提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−25590号公報
【特許文献2】特開平11−323255号公報
【特許文献3】特開昭61−130382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術の場合には、フッ素系重合体を用いているため塗工液の製造コストが高く、また、重合性化合物のエポキシ基が水と反応し易いため、光硬化性樹脂塗工液の保存安定性が大きく低下する虞があるという問題があった。特許文献2の技術の場合には、特許文献1の技術よりもフッ素含有成分の添加量が少ないために塗工液の製造コストが低いという利点があるものの、塗工液中にアルコキシシランの部分加水分解物が含まれているため、特許文献1と同様に、塗工液中に水が混入すると加水分解反応が促進されるため、塗工液の保存安定性が低下する虞があり、しかも、塗工液の塗膜の熱硬化に時間を要するために硬化樹脂層の製造コストが増大することが懸念される。また、特許文献3の技術の場合には、比較的濡れ性の良好な塗工液が得られ、また、硬化時間も熱硬化性樹脂塗工液に比べて短縮することが可能であるが、特許文献2の技術の場合と同様に、アルコキシシランの加水分解が必要なため、塗工液の保存安定性に問題が生ずる虞がある。
【0007】
本発明は、一般に塗工液をはじきやすい材料、例えば、ポリオルガノシロキサンやポリフッ化ビニリデン等からなる表面層を有する基材に対して光硬化性塗工液あるいは硬化性樹脂組成物を比較的薄く塗布した際に、得られる塗布膜にはじきやピンホールなどの発生がなく、均一で薄い(例えば、約0.01〜10μm厚)塗布膜を形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光硬化性塗工液を均一な液状とするのではなく、固体状重合性物質の微粒子を光硬化性塗工液中に分散させておくことにより上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、固体状光重合性物質の微粒子が液状光重合性組成物中に分散してなる光硬化性塗工液を提供する。また、その光硬化性塗工液を硬化させてなる硬化層を少なくとも一層有する積層体も提供する。
【0010】
更に、本発明は、基材上に硬化層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に上述の光硬化性塗工液を塗布して光硬化性膜を形成する工程; および
(b)得られた光硬化性膜に活性エネルギー線を照射することにより該光硬化性膜を硬化させて硬化層を形成する工程
を含む積層体の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、上述の光硬化性塗工液、積層体および製造方法の以下に示す好ましい具体的な態様も包含する。
【0012】
本発明は、以下の成分(A)〜(C):
(A)不飽和結合を有する有機カルボン酸と2価または3価の金属とからなる固体状光重合性金属塩;
(B)光重合性エチレン系不飽和化合物; および
(C)光重合開始剤
を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)および(2)を満足する光硬化性樹脂組成物を提供する。また、その光硬化性樹脂組成物からなる硬化層を少なくとも一層有する積層体も提供する。
【0013】
【数1】

【0014】
更に、本発明は、基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)基材上に前述の光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより該光硬化性樹脂層を硬化させて硬化樹脂層を形成する工程
を含む積層体の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光硬化性塗工液によれば、撥塗工液性あるいは低濡れ性の表面上に、はじきやピンホールを生じさせることなく、均一で薄い(例えば、約0.01〜10μm厚)薄膜を形成できる。従って、ラミネート箔や画像表示画面保護板、ヘルメットシールド等の物品に有利に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の光硬化性塗工液は、固体状光重合性物質の微粒子が液状光重合性組成物中に分散してなるものである。ここで、固体状光重合性物質の「固体状」という意味は、光硬化性塗工液中で固体として存在することを意味しており、従って、光硬化性塗工液に使用する溶剤種や硬化条件により、同じ光重合性物質であっても、固体状となったり液状となったりすることがあり得るが、一般的には、固体状光重合性物質とは、低級アルコール類、エステル類等の汎用溶媒に溶解せず、融点を示さずあるいは150℃以上の融点を示す光重合可能な物質を意味する。また、光硬化性塗工液の「光硬化性」とは、紫外線、可視光線、電子線、X線などの活性エネルギー線の照射で硬化する性質を意味し、同様に、固体状光重合性物質の「光重合性」とは、前述したような活性エネルギー線の照射で重合する性質を意味する。
【0017】
このような構成の本発明の光硬化性液は、一般に塗工液をはじきやすい材料からなる表面層を有する基材に対して比較的薄く塗布した場合でも、得られる塗布膜にはじきやピンホールなどの発生がなく、均一で薄い(例えば、約0.01〜10μm厚)塗布膜を与えることができる。この理由は、明確ではないが以下のような理由であると考えられる。
【0018】
即ち、本発明の光硬化性塗工液を撥塗工液性の高い基材表面に塗布した場合には、その表面に固体状光重合性物質の微粒子が分散して存在することになる。すると、固体状光重合性物質の微粒子間あるいは微粒子と基材表面との境界に液状光重合性組成物を保持することが可能となり、即ち微粒子が塗工液保持機能を発揮し、その結果、はじきやピンホールのない均一な薄膜を形成可能となるからであると考えられる。
【0019】
また、固体状重合性物質は、それを取り巻く液状光重合性組成物中の重合性成分と反応するので、単なる充填剤ではなく、硬化層と一体化する成分である。従って、重合後には、固体状重合体の微粒子と液状重合性組成物との境界が実質的に消失し、その結果、単なる充填剤を加える方法に比べて硬度が高くなり、硬化層の可視光線に対する光等方性的性質が一層改善されることが期待できる。
【0020】
本発明において、固体状重合性物質の微粒子の粒径は、小さすぎるとはじきが発生し、大きすぎると光等方性が確保できなくなるので、好ましくは1nm〜10μm、より好ましくは5nm〜1μmである。
【0021】
固体状光重合性物質は、光硬化性塗工液に溶解せずに固体として存在し、しかも塗工液中に溶解している重合性物質と重合可能な物質である。例えば、重合性物質(重合性モノマー、オリゴマーまたはポリマー)の金属塩等、好ましくは、不飽和結合を有する有機カルボン酸の金属塩が挙げられる。ここで、有機カルボン酸の金属塩中の不飽和結合数としては、硬化層の機械的強度を向上させる点から、金属塩中に不飽和結合が少なくとも2つ存在することが好ましい。従って、有機カルボン酸に複数の不飽和結合が存在する場合には、1価の金属(ナトリウム、カリウム等)を使用可能であるが、有機カルボン酸中の不飽和結合数の如何に関わりなく、多価金属を使用することが、不飽和結合を有する有機カルボン酸の選択の幅が広がるので好ましい。但し、金属の価数が大きくなりすぎると金属塩が液状となりやすく、また、金属塩全体の立体障害が大きくなり、不飽和基(例えば二重結合)が有効に利用できず、硬化層中に不飽和基が残存する場合が考えられ、そのような場合には硬化層の耐候性が低下する可能性があるので、多価金属の価数としては2価または3価が好ましい。
【0022】
不飽和結合を有する有機カルボン酸としては、多価金属もしくは多価金属化合物との間で造塩して固体状の金属塩を形成することができるものを使用でき、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸とを併せて(メタ)アクリル酸と称する。また、アクリロイル基とメタクリロイル基とを併せて(メタ)アクリロイル基と称する。)、クロトン酸、オレイン酸、ウンデセン酸、9,12−オクタジエノイル酸、9,12,15−オクタトリエノイル酸などが挙げられる。中でも、高硬度の膜を形成するためには重合時の反応性が高いものがより好ましい点から、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0023】
2価の金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、カドミウムなどが挙げられ、3価の金属としては、コバルト、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。これらは単独でもよく、複数でもよい。中でも、安全性、入手容易性の点から、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムが好ましく、特に亜鉛を用いることがより好ましい。
【0024】
固体状光重合性物質の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸アルミニウムなどが挙げられる。中でも塗工液中での分散性の点から(メタ)アクリル酸亜鉛、特にアクリル酸亜鉛が好ましい。
【0025】
一方、液状光重合性組成物は、光重合性エチレン系不飽和化合物を含有する。ここで、光重合性エチレン系不飽和化合物の「光重合性」とは、活性エネルギー線の照射により重合可能な性質を意味する。このような光重合性エチレン系不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、フェニルエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−1−エン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−4−エン等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニル系モノマー;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、エチレンオキサイド変性テトラブロモビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌール酸トリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホルマール、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−ヒドラジンなどの多官能性モノマー;ウレタンアクリレート、エステルアクリレートなどのオリゴマーアクリレートが挙げられる。これらは単一種でも複数種併用してもよい。これらのうち2官能以上の他官能性モノマーが好ましく使用される。
【0026】
また、例えば、屈折率が1.60以上の高屈折率の硬化層を得る場合には、光重合性エチレン系不飽和化合物として、9,9−ビス(アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(EO変性アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(エポキシ変性アクリロイルオキシフェニル)フルオレン等のフルオレン系(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシチオフェニルサルファイド)、ビス(4−ビニルチオフェニル)サルファイド等の含硫黄化合物、チタン(メタ)アクリレートトリイソプロポキサイド、チタン(メタ)アクリロイルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート等のチタンカップリング剤、などの高屈折重合性化合物を使用することが好ましい。
【0027】
また、液状光重合性組成物は、光重合性エチレン系不飽和化合物の他に、必要に応じて光重合可能なビニルエーテル系化合物、エポキシ系化合物またはオキセタン系化合物を含有することができる。
【0028】
ビニルエーテル系化合物としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−F−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性カテコールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシノールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性−1,3,5,ベンゼントリオールトリビニルエーテル、エポキシ系化合物としては、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、オキセタン化合物としては3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0029】
また、活性エネルギー線の照射により重合をするために、通常、光重合開始剤を含有する。その他に光増感剤や光促進剤等の光触媒化合物を一種以上含有することが好ましい。光触媒化合物としては公知の光触媒化合物から適宜選択して使用することができる。
【0030】
光重合開始剤としては、硬化手段である活性エネルギー線の種類(紫外線、可視光線、電子線など)に応じて適宜選択することができる。
【0031】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−チオキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。また、N−アクリロイルオキシエチルマレイミドのように分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤も用いることができる。
【0032】
光重合開始剤の配合量は、後述する希釈剤を除いた光硬化性塗工液の固形分(硬化前に既に固形の成分および硬化後に固形となる成分のトータル)100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは3〜5質量部である。
【0033】
光重合を促進させるために光重合開始剤と共に使用できる光増感剤の具体例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。また、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に使用できる光促進剤の具体例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチルなどを挙げることができる。
【0034】
また、光硬化性塗工液には、その塗工性を改善するために、希釈剤を添加することができる。希釈剤の添加量は、形成すべき硬化層の膜厚等に応じて、適宜決定することができる。例えば、硬化層の厚みを0.1μm程度とする場合には、固形分5.25質量%に対し希釈剤94.75質量%とし、ウェット膜厚で1.9μmで塗工することが好ましい
【0035】
希釈剤としては、一般の樹脂塗工液に用いられている希釈剤を使用することができ、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物などを挙げることができる。また、稀釈剤としては、固体状光重合性物質との間に高い親和性を示す水、低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)を好ましく使用できる。
【0036】
液状光重合性組成物には、必要に応じて、更に、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー、近赤外線吸収剤などを本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0037】
本発明の光硬化性塗工液は、以上説明した固体状光重合性物質が、液状光重合性組成物中に分散したものであるが、光硬化性塗工液中の固体状光重合性物質の配合量が少なすぎると、塗工液の基材への濡れ性が低下し、多すぎると固体状光重合性物質が沈殿しやすくなる。従って、光硬化性塗工液中の固体状光重合性物質の配合量は、全樹脂固形分(固形樹脂だけでなく硬化後に固形となる液状樹脂分も含む)中に好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0038】
特に、固体状光重合性物質が不飽和結合を有する有機カルボン酸の2価または3価金属塩で、液状光重合性組成物が光重合性エチレン系不飽和化合物を含有している場合、不飽和結合を有する有機カルボン酸の2価または3価金属塩の配合量(質量部)を(Awt)とし、光重合性エチレン系不飽和化合物の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに、本発明の光硬化性塗工液は、下記式(1)および(2)を満足することが好ましい。この理由は、「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.05未満であると基材への濡れ性が低下し、0.4以上であると成分(A)が沈殿しやすくなり、また、「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の値が0.6未満であると相対的に成分(A)の含有量が増加し成分(A)沈殿しやすくなり、0.95以上になると相対的に(A)の含有量が低下するため濡れ性が低下するためである。
【0039】
【数2】

【0040】
また、硬化層の屈折率および塗工液の基材への濡れ性の観点から、本発明の光硬化性塗工液は、更に以下の式(1a)および(2a)の関係を満足することが好ましい。
【0041】
【数3】

【0042】
本発明の光硬化性塗工液は、上述の固体状光重合性物質と液状光重合性組成物とを常法に従って均一に混合することにより製造することができる。
【0043】
なお、屈折率1.62の硬化層を得る場合、光硬化性塗工液の具体的配合例の一例として、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート30質量%、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシチオフェニル)サルファイド40質量%、エチレンオキサイド変性イソシアヌール酸トリアクリレート10質量%およびアクリル酸亜鉛20質量%という配合を挙げることができる。
【0044】
本発明の光硬化性塗工液は、重合性を示し且つ塗工液中では溶解せず粒子状に存在する光重合性物質粒子を含有するので、撥塗工液性を示す基材表面にはじきやピンホールを生じさせることなく均一で薄い膜を形成でき、しかもその膜は高屈折率(例えば1.60以上)の硬化層となる。従って、このような薄い硬化層、好ましくは0.01〜10μm厚の硬化層を基材上に少なくとも一層設けた積層体は、ラミネート箔や画像表示画面保護板、ヘルメットシールド等の物品に有利に利用することができる。
【0045】
このような硬化層が設けられるシート状、フィルム状或いは板状の積層体の基材としては、その表面材料が本発明の光硬化性塗工液と親和性を示すものが好ましいが、前述したように本発明の光硬化性塗工液は、撥塗工液性を示す基材表面に対しても適用可能である。具体的には、20℃で少なくとも40dyn/cm以下の表面張力を示す表面を有する材料からなる基材を使用できる。そのような表面材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリヘプタフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、などのフッ素原子含有重合体、ポリオキシジメチルシリレン、ポリオキシメチルシリレン、ポリオキシジメチルシリレン−α、ω−ジブタン酸、ポリオキシビニルシリレン、などケイ素含有重合体などが挙げられる。また、これら自体で基材を構成してもよいが、これらを、鉄、アルミニウムなどの金属、ガラス、セラミック等の無機系基材、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネートなどの有機系基材、中でも光学用途に用いる場合には、アクリル樹脂基材、ポリエステル樹脂基材がより好ましい。
【0046】
なお、本発明の積層体は、本発明の光硬化性塗工液から形成された少なくとも一層の硬化層の他に、熱可塑性樹脂層、熱硬化性樹脂層、光硬化性樹脂層などを有することができる。
【0047】
本発明の積層体は、以下に説明するように工程(a)と工程(b)とからなる製造方法に従って製造することができる。
【0048】
工程(a)
基材上に本発明の光硬化性塗工液を塗布し光硬化性膜を形成する。基材、光硬化性塗工液については、既に説明したとおりである。光硬化性塗工液の塗布方法としては、ディップ法、凸版印刷法、平版印刷法、凹版印刷法、スプレー法、カーテンフロー法、ロールコート法等の公知の塗工方法を採用することができる。光硬化性塗工液に稀釈剤が含有されている場合には、その塗工膜を加熱炉や遠赤外炉、超遠赤外炉中で加熱し乾燥することが好ましい。
【0049】
工程(b)
工程(a)で得られた光硬化性膜に、紫外線、可視光線、レーザー、電子線、エックス線等の、既に説明したような活性エネルギー線を照射すると、光硬化性膜は硬化して硬化層となる。これにより、本発明の光硬化性塗工液からなる硬化層を有する積層体が得られる。なお、紫外線を使用する場合の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0050】
このようにして得られる積層体は、基材と硬化層との2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていてもよく、あるいは硬化層形成後に改めて設けてもよい。
【0051】
以上、本発明の光硬化性塗工液、それからなる硬化層を有する積層体およびその製造方法について説明したが、これらの光硬化性塗工液、積層体および製造方法の好ましい具体的な態様の一例を以下に示す。なお、それらの中の用語の意味は既に説明した通りである。
【0052】
本発明の光硬化性塗工液の好ましい具体的態様としては、以下の成分(A)〜(C):
(A)不飽和結合を有する有機カルボン酸と2または3価の金属とからなる固体状光重合性金属塩;
(B)光重合性エチレン系不飽和化合物; および
(C)光重合開始剤
を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)および(2)を満足する光硬化性樹脂組成物が挙げられる。この場合、成分(A)は、Ca、Zn、Mg、Alのいずれか1つの金属原子を有する(メタ)アクリル酸の多価金属塩である。特に、成分(A)がアクリル酸亜鉛であることが好ましい。
【0053】
【数4】

【0054】
また、本発明の積層体の好ましい具体的態様としては、基材上に上述の光硬化性樹脂組成物から光硬化性樹脂層を形成したものが挙げられる。この場合、この積層体は、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)基材上に請求項11〜13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより該光硬化性樹脂層を硬化させて硬化樹脂層を形成する工程
を含む積層体の製造方法により製造できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
実施例1〜6、比較例1〜5
シリカ微粉末(平均粒径20nm)3質量部、メチルトリエトキシシラン3質量部、酢酸0.2質量部、イソプロピルアルコール54質量部およびエタノール40質量部からなるシリコーン系ハードコート層形成用塗工液を、板厚2mmのアクリル樹脂基板上に、固形分乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコータにて塗布し、80℃で30分間乾燥することにより、ハードコート層を形成した。この層上に、表1に示す光硬化性樹脂組成物を固形分乾燥膜厚が0.1μmとなるようにバーコータで塗布し、140℃で30秒乾燥した後、80W高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製)を備えたベルトコンベア(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm)を用いて紫外線を1回照射し、硬化させた。これによりアクリル樹脂基板/ハードコート層/高屈折率硬化樹脂層からなる積層体を得た。
【0057】
(評価方法)
はじき
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた積層体を100マスになるよう区切り、硬化性樹脂層の被覆面積を測定し、得られた結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2「被膜面積(%)」は、はじきやピンホールの発生が観察されない完全に光硬化性樹脂に覆われているマス目の数を数え、百分率表示した。
【0058】
屈折率:
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた積層体を5°反射率を測定(400〜700nm)し、最低反射率から高屈折率層の屈折率を算出し、得られた結果を表1および表2に示す。
【0059】
反射率:
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた積層体上に低屈折率層としてオプスタ−JN1214(JSR株式会社製)を固形分膜厚0.1μmになるように塗布したのち80℃で30分乾燥させ、5°反射率を測定(400〜700nm)し、得られた測定波長域における最低値を表1および表2に示す。
【0060】
【表1】



















【0061】
【表2】

【0062】
表1および表2注
*1: 50ml3口フラスコを窒素置換した後、エタノール30gを加えた後、塩化亜鉛4.1g(Mw.136.29 30mmol)、p−スチレンスルホン酸ナトリウム6.8g(Mw.206.20 35mmol)を投入し、3時間室温にて攪拌した後得られた沈殿物をろ過後、24時間真空乾燥機にて乾燥させた後、組成物に用いた。
*2: APTMS: γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 KBM5103 信越化学工業株式会社製)
*3: ATIT :(2−アクリロイルオキシ)トリイソプロポキシチタネート 50ml3口フラスコを窒素置換した後、テトライソプロポキシチタネート10.0g(Mw.284.25 35.2mmol)を投入し、室温にてアクリル酸2.5g(Mw.72.06 35.2mmol)とイソプロパノール 8.3gの混合溶液を30分間かけて添加した後、一晩室温にて攪拌しATITの50質量%溶液を得、組成物に用いた。
*4: Mw10万(商品名 パラペットHR−L、株式会社クラレ製)
*5: エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名 ビスコート#540、大阪有機化学工業株式会社製)
*6: エチレンオキサイド変性イソシアヌール酸トリアクリレート(商品名 M315、東亞合成株式会社製)
*7: ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシチオフェニル)サルファイド(商品名 MPSMA 住友精化株式会社製)
*8: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名 イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
*9: 固形分が分離したので塗工できず
*10: はじきが多く、成膜出来なかったため、参考値としてアクリル板上に直接塗工し、反射率から計算した屈折率値を記す。
*11: はじきが多く、成膜出来なかったため、参考値として高屈折率層の屈折率から計算した反射率を示す
【0063】
表1に示すように、実施例1〜6の結果から、重合性の有機カルボン酸金属塩を使用した場合には被覆率が100%であり、硬化樹脂層が基材上で、はじきやピンホールを発生させることなく均一に形成されていることが分かる。
【0064】
実施例7
シリカ微粉末(平均粒径20nm)3質量部、メチルトリエトキシシラン3質量部、酢酸0.2質量部、イソプロピルアルコール54質量部およびエタノール40質量部からなるシリコーン系ハードコート層形成用塗工液を板厚2mmのアクリル樹脂基板上に固形分膜厚5μmになるようにバーコータにて塗布し、80℃で30分間乾燥した。このハードコート層上に、アクリル酸亜鉛6質量%、多官能アクリレート(商品名:アートレジンUN3320HC 根上工業株式会社製)24質量%、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)1.5質量%、メチルエチルケトン20質量%、イソプロパノール28.5質量%およびメタノール20質量%からなる光硬化性樹脂組成物を固形分膜厚で5μmになるように塗工し、140℃で30秒乾燥した後、80W高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製)を備えたベルトコンベア(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm)を用いて紫外線を1回照射し、硬化させた。これにより、アクリル樹脂基板/ハードコート層/硬化樹脂層とからなる積層体を得た。
【0065】
得られた積層体を100マスになるように区切り、硬化性樹脂層の被覆面積を測定した。評価方法は、実施例1と同様であり、被覆面積は100%であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の光硬化性塗工液は、濡れ性の悪い表面に対し均一な薄膜(例えば、膜厚0.01μm以上10μm以下の皮膜)を得ることができるので、ラミネート箔や画像表示画面保護板、ヘルメットシールド等の物品に有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状光重合性物質の微粒子が液状光重合性組成物中に分散してなる光硬化性塗工液。
【請求項2】
該微粒子の粒径が1nm〜10μmである請求項1記載の光硬化性塗工液。
【請求項3】
固体状光重合性物質が不飽和結合を有する有機カルボン酸の2価または3価金属塩であり、液状光重合性組成物が光重合性エチレン系不飽和化合物を含有する請求項1記載の光硬化性塗工液。
【請求項4】
固体状光重合性物質が、(メタ)アクリル酸と、カルシウム、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムから選択される少なくとも一つの金属とからなる金属塩である請求項1記載の光硬化性塗工液。
【請求項5】
固体状光重合性物質がアクリル酸亜鉛である請求項1記載の光硬化性塗工液。
【請求項6】
不飽和結合を有する有機カルボン酸の2価または3価金属塩の配合量(質量部)を(Awt)とし、光重合性エチレン系不飽和化合物の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)および(2)
【数1】

を満足する請求項3記載の光硬化性塗工液。
【請求項7】
更に、光重合開始剤を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性塗工液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性塗工液を硬化させてなる硬化層を少なくとも一層有する積層体。
【請求項9】
硬化層の屈折率が1.60以上である請求項8記載の積層体。
【請求項10】
基材上に硬化層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性塗工液を塗布して光硬化性膜を形成する工程; および
(b)得られた光硬化性膜に活性エネルギー線を照射することにより該光硬化性膜を硬化させて硬化層を形成する工程
を含む積層体の製造方法。
【請求項11】
以下の成分(A)〜(C):
(A)不飽和結合を有する有機カルボン酸と2価または3価の金属とからなる固体状光重合性金属塩;
(B)光重合性エチレン系不飽和化合物; および
(C)光重合開始剤
を含み、成分(A)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)および(2)


【数2】

を満足する光硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
成分(A)が、カルシウム、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムのいずれか1つの金属原子を有する(メタ)アクリル酸の多価金属塩である請求項11記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
成分(A)がアクリル酸亜鉛である請求項11または12記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を少なくとも1層含む積層体。
【請求項15】
硬化樹脂層の屈折率が1.60以上である請求項14記載の積層体。
【請求項16】
基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)基材上に請求項11〜13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより該光硬化性樹脂層を硬化させて硬化樹脂層を形成する工程
を含む積層体の製造方法。

【公開番号】特開2006−45354(P2006−45354A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228631(P2004−228631)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】