説明

光素子アレイ部品及びその製造方法並びに光モジュールの製造方法

【課題】アレイ基板にガイドピンを高精度で容易に取付けることができ、しかも、高精度の加工を必要としない光素子アレイ部品とその製造方法並びに光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子または受光素子からなる光素子アレイを備え、他の光学部品と円柱状のガイドピンを用いて光学的に位置決めして実装する光素子アレイ部品であって、アレイ基板11a,11bの両側部分に基板辺縁に開口する位置決め溝13,14を設け、ガイドピン18が該位置決め溝の端部13a,14bに当接して接着固定される。位置決め溝13,14は、ガイドピン18の外径に整合する幅の溝で形成され、溝の端部は、例えば、ガイドピンに複数個所で接触する接触面を有する多角形状で形成され、V字形状に形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子または受光素子を備えた光素子アレイ部品及びその製造方法、並びに前記光素子アレイ部品を用いた光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用の光モジュール等において、多数の発光素子または受光素子を備えた光素子アレイ部品を光コネクタと光結合させる形態のものがある(例えば、特許文献1参照)。図4(A)は、前記特許文献1に開示の光素子アレイ部品1を、光コネクタフェルール2に光結合させて実装する一例である。光素子アレイ部品1は、半導体基板3に多数の面発光型レーザダイオード等の発光素子または面受光型フォトダイオード等の受光素子が、アレイ状に一体に作り込まれ、樹脂基板4に実装されている。
【0003】
光コネクタフェルール2には多数の光ファイバ5が挿着され、その両側にガイドピン6が取付けられている。光素子アレイ部品1の樹脂基板4にはガイド孔7が設けられ、光コネクタ側のガイドピン6と嵌合させることにより、位置決めされて結合される。光素子アレイ部品1の半導体基板3に形成された多数の光素子は、透明コンタクト樹脂により保護されていて、各光ファイバ5に接触するように組み付けられ、光結合される。
【0004】
また、マイクロレンズアレイ等の光学部品を実装するのに、ガイドピンとガイド孔を用いて位置決めすることが知られている(例えば、特許文献2参照)。図4(B)は、前記特許文献2に開示のマイクロレンズアレイで、石英等の透光基板8の一面側に複数のレンズ8aがドライエッチング処理等により形成され、透光基板8の両側にガイド孔9が高精度で形成されている。ガイド孔9にはガイドピンが挿入されて位置決めされるが、ガイド孔9の欠けを防止するために孔の周囲を金属層で保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−49389号公報
【特許文献2】特開2004−333692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1または特許文献2に開示のように、光素子アレイ部品と光コネクタとをガイドピンとガイド孔を用いて光結合することにより、位置合わせが機械的に行われ、調心に要するコストを低減することができる。しかしながら、光ファイバ等を用いる光モジュールにおける光結合は、ミクロンオーダの高精度での組立てが要求される。このため、アレイ基板にガイドピンを取付けるのに、ガイドピンおよび当該ガイドピンを挿着固定する挿着孔は、高精度に加工されていることが必要とされ、また、ガイドピンと挿着孔の嵌合固定作業にも時間を要している。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、アレイ基板にガイドピンを高精度で容易に取付けることができ、しかも、高精度の加工を必要としない光素子アレイ部品とその製造方法並びに光モジュールの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光素子アレイ部品は、発光素子または受光素子からなる光素子アレイを備え、他の光学部品と円柱状のガイドピンを用いて光学的に位置決めして実装する光素子アレイ部品であって、アレイ基板の両側部分に基板辺縁に開口する位置決め溝を設け、ガイドピンが位置決め溝の端部に当接して接着固定されていることを特徴とする。
前記の位置決め溝は、ガイドピンの外径に整合する幅の溝で形成され、キー溝の端部は、例えば、ガイドピンに複数個所で接触する接触面を有する多角形状で形成され、V字形状に形成されていることが好ましい。また、位置決め溝は、発光素子または受光素子の光素子の製造工程中で形成することができる。なお、ガイドピンは位置決め溝内に横方向から押し当てて溝の端部に当接させた後、位置決め溝の端部に接着剤で固定される。
【0009】
また、本発明による光モジュールの製造方法は、上記の光素子アレイ部品を用い、該光素子アレイ部品のガイドピンを用いて、レンズアレイ部品を係合位置決めし、光コネクタとともに実装基板上に実装する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光素子アレイ部品によれば、アレイ基板にガイドピンを取付け固定するのに、高精度の加工や位置合わせを行う必要がなくなり、製造コストおよび組立ての作業コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光素子アレイ部品の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明による光素子アレイ部品の他の実施形態を説明する図である。
【図3】本発明による光素子アレイ部品と光コネクタとを組み付け、実装基板上に実装する例を説明する図である。
【図4】従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1,2により本発明の実施の形態を説明する。図において、10a〜10dは光素子アレイ部品、11a〜11eはアレイ基板、12は光素子、13〜17は位置決め溝、13a〜17aは溝の端部、18はガイドピンを示す。
本発明は、図に示すように、実装基板に実装されるアレイ基板11a〜11eに、後述する他の部品(例えば、レンズアレイ部品)との位置決めを行うガイドピン18を取付け固定して、光素子アレイ部品10a〜10dとするものである。
【0013】
光素子アレイ部品10a〜10dは、多数の面発光素子または面受光素子等の光素子12(例えば、12素子)を、所定の間隔で細長のアレイ基板11a〜11e上に有し、光通信用の光モジュール等に実装される。光モジュールは、後述するように、例えば、レンズアレイ部品等を介して光素子アレイ部品と光コネクタとが光結合されて実装基板上に実装されるように構成されている。
アレイ基板11a〜11eは、例えば、半導体ウエハからなり、該半導体ウエハに多数の光素子12を、成膜、リソグラフィ、不純物拡散等の工程等を経て作り込んだ後、所定のチップ単位でダイシング加工されて形成される。
【0014】
通常、光素子アレイ部品と光コネクタとの組み付けには、光結合が最大になるように調心が行われるが、各部品間をガイドピンとガイド孔等を用いることにより機械的に位置決めして光結合することもできる。ただ、ガイドピンとガイド孔を用いた組み付けは、位置決め機構の高精度な加工と組み付け作業が必要とされる。
本発明は、後者のガイドピンを用いることにより、調心を行うことなく機械的に位置決めして組み付けることができる形態において、上述したように位置決め用のガイドピン18が予め光素子アレイ部品10a〜10dに設けられ、このガイドピン18の取付け固定が高精度で行える構成に特徴を有するものである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の一例を示し、図1(A)は、光素子アレイ部品10aに一対のガイドピン18を取付ける前の状態、図1(B)は取付けた後の状態を示し、また、図1(C)は他の例を示す。
図1(A),(B)に示すように、アレイ基板11aの両端部に、円柱状のガイドピン18を取付けるための位置決め溝13が設けられる。この位置決め溝13は、アレイ基板11aにガイドピン18を横方向から挿入させるように、細長のアレイ基板11aの長辺側の一方の辺縁から切り込まれ、その切り込みの端部13aは、例えば、V字状にして形成される。
【0016】
位置決め溝13は、ガイドピン18の外径に整合する幅で形成され、ガイドピン18は、位置決め溝13内に矢印で示すように横方向から挿入して溝の端部13aに当たって挿入が規制された状態で、接着材が付与され接着固定される。ガイドピン18は、溝の端部13aに形成されたV字状の2つの壁面に接触して、位置決めが正確に行われた状態で固定されるため、精度の良い取付けができる。この結果、ガイドピン18と光素子12との位置関係が一定となり、他の光部品とはガイドピン18を基準に位置決めして組み付けられ、光結合が精度よく行える。
【0017】
図1(C)に示す光素子アレイ部品10bも、アレイ基板11bに設ける位置決め溝14の端部14aの形状が異なるだけで、その他の構成は図1(A)(B)の例と同じである。位置決め溝14は、端部14aが円柱状のガイドピン16の外径と一致する円弧で形成される。ガイドピン18は、位置決め溝14内に矢印で示すように横方向から挿入して端部14aに当たって挿入が規制された状態で、接着材が付与されて接着固定される。この結果、図1(B)の例と同様に、ガイドピン18は、溝の端部14aに形成された円弧状の壁面に接触して正確に位置決めされて取付け固定される。また、横方向から挿入することにより、軸方向から挿入する場合のように、ガイドピン先端が光素子を突いて破損することを防止することができる。
【0018】
図2(A)に示す光素子アレイ部品10cは、位置決め溝15が、細長のアレイ基板11cの短辺側の両方の辺縁から半円状に切り込まれて形成された例である。ガイドピン18は、アレイ基板11cの両端の短辺に、横方向から位置決め溝15内に挿入され、溝の端部15a(半円状の壁面)に当てて位置決めした状態で、接着材を付与して接着固定される。
この位置決め溝15は、溝の切込みが浅くガイドピンの半分がガイド基板からはみ出る形態となるが、図1(C)に示す例と同様に、ガイドピン18が完全に挿入されるように深い切り込みで形成してもよい。このように、ガイドピンの横方向から光素子アレイ部品を挿入する形態とすることで、位置決め溝の設計の自由度が向上するという利点もある。
【0019】
図2(B)に示す光素子アレイ部品10dは、位置決め溝16が、細長のアレイ基板11dの端部で、長辺側の反対側の辺縁から切り込まれて形成された例である。ガイドピン18は、アレイ基板11dの両端の長辺に、互いに反対側の横方向から位置決め溝16内に挿入され、溝の端部16aに当たって挿入が規制された状態で、接着材が付与されて接着固定される。
この位置決め溝16の形状は、図1(A)(B)で説明した位置決め溝13と同様のもので、図1(C)の形状に位置決め溝14と同じであってもよい。
【0020】
また、図2(C)は、アレイ基板11eに設ける位置決め溝17の端部17aを、円柱状のガイドピン18の外周に複数個所Sで接する複数の接触面を有する多角形状で形成する例である。
位置決め溝の端部17aを、円柱状のガイドピン16に複数個所Sで接触する複数の接触面を有する形状で閉口するように形成すれば、例えば、キー溝15に寸法誤差が生じた場合にもガイドピン16の周方向における複数個所Sでガイドピンを支持することができ、固定精度が向上する。また、ガイドピン18と位置決め溝17の接触箇所Sを、所定の箇所に限定しておくことでガイドピン18の姿勢が規定された状態で固定することが可能になり、その結果、温度変動等が生じてもガイドピン18の位置ズレを防ぐことができる。さらに、位置決め溝の端部を図1(A(B))に示したようにV字形状とすれば、この効果が得られるほか、簡単な構造であることから製造が容易となる。
【0021】
上記構成の光素子アレイ部品によれば、ガイドピン18の側面は、通常、円弧面であるので、アレイ基板11a〜11eのガイド溝13〜17の開口に入り込み易く、続いて、位置決め溝に沿ってガイドピン18が案内されて溝の端部13a〜17aに当接させて組み付けることができる。これは、図4のガイドピンとガイド孔の中心軸を一致させて嵌合させる場合と較べて極めて容易に行うことができ、軸方向からの結合も可能で作業性の自由度もある。また、位置決め溝13〜17の端部13a〜17aにガイドピン18の側面が当接することで、位置決めが自動的になされ、ガイドピンとガイド孔とのクリアランスのある状態の嵌合による位置決めと較べて、精度の高い位置決めを行うことができる。
【0022】
また、アレイ基板11a〜11eに光素子12が一体に作り込まれる場合は、光素子の形成と同時に位置決め溝も形成することができ、精度の高い位置決め溝を得ることができる。このため、本発明による光素子アレイ部品10a〜10dを用いることにより、光コネクタ等の光学部品との光結合が、調心を行うことなく実現することができ作業性も向上させることができる。
【0023】
図3は、本発明による光素子アレイ部品10を、光コネクタを用いた光モジュールに実装する例を示す図である。図中、19はガイドピン、20は光コネクタ、20aはコネクタ背面、21は光ファイバ、23は実装基板、24は配線導体、25は配線ワイヤ、26はガイド孔、27はレンズアレイ部品を示す。その他の符号は、図1,2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0024】
図3は、多数の光ファイバ挿通孔が貫通形成されており、光ファイバ21が挿着された光コネクタ20に、上述した光素子アレイ部品10を、レンズアレイ部品27を用いて光軸が直交するように組み付けて光結合させ、実装基板23上に実装させる例である。図3(A)に示すように、まず、実装基板23上に一対のガイドピン18が取付けられた光素子アレイ部品10が、接着材等により接着固定され、実装基板23上の配線導体24に配線ワイヤ25等を用いて電気される。
【0025】
光コネクタ20は、多数の光ファイバ挿通孔が貫通形成されており、そのコネクタ背面20aには、挿通された多数の光ファイバ21の端面が露出する形態で一列に配列されている。そして、その両側に一対のガイド孔26が形成されている。レンズアレイ部品27は、光素子アレイ部品10の光素子12と光コネクタ20内の光ファイバを、光軸を変換して光結合する部品で、複数の光ファイバ挿通孔21と対向する位置に複数のレンズが形成されている。そして、例えば、前述したガイドピン18が嵌合するガイド孔(第2のガイドピン挿通孔、図示されず)と、コネクタ背面20aに設けたガイド孔26により結合されるガイドピン19が(第1のガイドピン)取り付けられている。
【0026】
実装基板23上に光素子アレイ部品10が実装された後、図3(B)に示すように、レンズアレイ部品27が、ガイドピン18により位置決めされて、レンズアレイ部品27のレンズ素子は、光素子アレイ部品10の光素子と光学的に光結合される。次いで、光コネクタ20とレンズアレイ部品27とは、例えば、ガイドピン19とガイド孔26により光学的に光結合されて一体化される。この結果、光コネクタ20と光素子アレイ部品10とは、精度よく光結合される。
【0027】
本例は、光素子アレイ部品10に取付けられたガイドピン18が位置決めの基準ピンとなって、レンズアレイ部品27を介して光コネクタ20が位置決めされて取り付けられる。なお、図3では、レンズアレイ部品27を光素子アレイ部品10に組み付けた後に光コネクタを組み付ける順序で説明したが、予め光コネクタ20とレンズアレイ部品27を組み付けた後に、レンズアレイ部品27を光素子アレイ部品10に組み付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10〜10d…光素子アレイ部品、11a〜11e…アレイ基板、12…光素子、13〜17…位置決め溝、13a〜17a…溝の端部、18,19…ガイドピン、20…光コネクタ、20a…コネクタ背面、21…光ファイバ挿通孔、23…実装基板、24…配線導体、25…配線ワイヤ、26…ガイド孔、27…レンズアレイ部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子または受光素子からなる光素子アレイを備え、他の光学部品と円柱状のガイドピンを用いて光学的に位置決めして実装する光素子アレイ部品であって、
アレイ基板の両側部分に基板辺縁に開口する位置決め溝を設け、前記ガイドピンが前記位置決め溝の端部に当接して接着固定されていることを特徴とする光素子アレイ部品。
【請求項2】
前記位置決め溝は、前記ガイドピンの外径に整合する幅の溝で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子アレイ部品。
【請求項3】
前記位置決め溝の端部は、前記ガイドピンに複数個所で接触する接触面を有する多角形状で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光素子アレイ部品。
【請求項4】
前記位置決め溝の端部は、V字形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光素子アレイ部品。
【請求項5】
前記位置決め溝は、前記発光素子または受光素子の光素子の製造工程中で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光素子アレイ部品。
【請求項6】
請求項1に記載の光学素子アレイ部品の製造において、前記位置決め溝内に前記ガイドピンを横方向から押し当てて溝の端部に当接させた後、前記ガイドピンを前記位置決め溝の端部に接着剤で固定することを特徴とする光素子アレイ部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光素子アレイ部品と、複数の光ファイバ挿通孔を有しその配列方向の両側に第1のガイドピン挿入孔とを備える光コネクタと、複数の光ファイバ挿通孔と対向する位置に複数のレンズが形成され、その両側に前記第1のガイドピン挿入孔と係合する一対の第1のガイドピンを備え、前記第1のガイドピン挿通孔が形成された面と異なる面に一対の第2のガイドピン挿通孔を備えるレンズアレイ部品と、前記光素子アレイ部品と前記光コネクタを実装する実装基板と、を用意する工程と、
前記光素子アレイ部品を前記実装基板に実装する工程と、
前記光コネクタの前記第1のガイドピン挿入孔に、前記レンズアレイ部品の前記第1のガイドピンを係合する工程と
前記レンズアレイ部品の前記第2のガイドピン挿通孔を、前記光素子アレイ部品のガイドピンに係合する工程と、を含むことを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109379(P2012−109379A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256705(P2010−256705)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】