説明

光走査によるファインダー表示機能を備えたカメラ

【課題】光走査によるファインダー表示の間、表示パターンを正確な位置に表示する。
【解決手段】光走査によってファインダー表示可能な一眼レフ型デジタルカメラにおいて、可視光と近赤外光とを重ねた走査光をマイクロミラー56へ導き、マイクロミラー56を2次元駆動させることでピントグラス24をラスタ走査する。ピントグラス24には、走査方向に並ぶPDアレイ30A〜30Cから構成されたフォトセンサ30を配置し、ファインダー表示の間、レーザー光源60Bの近赤外光によってミラー振幅を検出する。振幅が適正でない場合、マイクロミラー56の駆動周波数を調整し、適正な走査範囲Mを維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタプリズムなど光学ファインダーを備えたカメラに関し、特に、マイクロミラーを使った2次元走査によって文字情報等をスーパーインポーズ表示可能なファインダー表示機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフ型カメラでは、撮影レンズを通った光がクイックリターンミラーによってミラー上方にあるピントグラスに導かれ、被写体像がピントグラスに形成される。カメラ上部に設けられたペンタプリズム、あるいはペンタミラーによって被写体像が観察可能となり、接眼レンズを通して被写体の構図、合焦状態が確認される。
【0003】
ピントグラス上面には、合焦位置などをファインダー視野内に表示するため、複数の微小プリズムが測距点位置に形成されたスクリーン板が配置されている。レリーズボタン半押しによってオートフォーカスが機能すると、ファインダー傍に設けられたLEDなどの光源から合焦位置に向けて光を照射し、これによって合焦マークが被写体像にスーパーインポーズ表示される。また、絞り、シャッタスピードなど露出値がLEDなどによりファインダー視野枠の外に表示される。
【0004】
合焦マークの表示位置は微小プリズムの形成位置にしか表示できず、また、文字情報の表示位置もファインダー視野外の所定領域に定められる。このようなパターン表示位置の制限を解消するため、マイクロミラーを配置して合焦マークをスーパーインポーズ表示し、あるいは、ピントグラスの表面を二次元走査して文字情報や記録画像をファインダー表示する方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1では、所定角度で傾斜したマイクロミラーにLED光源の光を照射させ、反射光を被写体像の光と重ね合わせることによって合焦マークをスーパーインポーズ表示する。また、特許文献2では、2軸周りに軸回転可能なマイクロミラーを二次元駆動し、ミラーに反射する光をラスタ走査させる。そして、走査に同期して光源の光を変調して文字情報、あるいは記録画像などをファインダー表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−15063号公報
【特許文献2】特開2006−259078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光を二次元走査させて文字情報などのパターンをスーパーインポーズ表示する場合、合焦マーク、文字情報などの表示パターンをファインダー視野内で正確な位置に表示させ、位置決め精度の高いパターン表示が要求される。しかしながら、走査時のマイクロミラーの連続駆動は高速であり、ミラー傾斜角度の僅かな誤差によっても走査ラインの位置にずれが生じ、正確な位置でパターン表示させることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカメラは、光走査によるファインダー表示可能なカメラであり、観察用の被写体像を形成する光学ファインダーと、可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって、走査面に対し走査光を走査させる走査手段と、可視光を変調し、ファインダー視野内に表示される表示パターンを形成する表示制御手段を備える。走査中、可視光と不可視光は同じ位置を同時走査している。表示パターンとしては、例えば合焦マーク、文字情報、あるいは記録画像などが含まれる。
【0009】
ここでは、走査光に含まれる可視光を、表示パターンを形成可能となる可視光波長領域の光として表す。一方、不可視光は、ファインダー表示のとき実質的に視認されない程度の条件を満たす波長領域の光を表す。可視光を変調することを考慮すれば、別々に放射される可視光と不可視光を重ねるのがよい。例えば、可視光を放射する第1光源と、不可視光を放射する第2光源と、ビームスプリッタなど可視光と不可視光を同軸進行させる光学部材が設けられる。また、焦点板の表面を走査面として走査することが可能である。
【0010】
本発明では、不可視光を検出するフォトセンサが、走査面の走査範囲に合わせて配置されている。不可視光は表示パターンに合わせて変調させる必要がなく、どのような表示パターンでも不可視光を常時検出可能である。
【0011】
そして本発明は、フォトセンサの出力信号に基づいて微小ミラーを制御するパターン表示位置制御手段を備え、パターン表示位置制御手段は、適正な走査範囲でライン走査するように微小ミラーを制御する。微小ミラーを制御することによって可視光の走査範囲も調整される。
【0012】
走査中に微小ミラーの駆動状態をリアルタイムで検出し、走査範囲を調整することができるため、ファインダー表示中に外乱などによって微小ミラーの駆動が乱れても、常に適正な走査範囲を維持し、表示パターンの表示位置が正確に定められる。
【0013】
走査範囲が適正であるか否かは、連続的に軸回転運動する微小ミラーの傾斜角度、特に最大傾斜角度の精度に起因する。したがって、パターン表示位置制御手段は、連続的に軸回転運動する微小ミラーの駆動周波数、もしくは駆動電圧を調整することによって走査範囲を調整すればよい。
【0014】
ピントグラスにフォトセンサを配置する場合、フォトセンサを周囲に配置し、できるだけファインダー視野枠を広げるのが望ましい。このため、フォトセンサを、走査ラインの走査開始位置、走査終了位置に対応する走査範囲の少なくとも一方の端付近に配置するのがよい。
【0015】
走査範囲の端で不可視光を検出する場合、例えば複数のフォトセンサを所定間隔で走査方向に並べ、不可視光を検出するセンサ、検出しないセンサに基づいて走査範囲が適正であるか判断させるのがよい。さらに、一つの走査ラインだけでなく走査領域全体に渡って走査範囲をモニタリングするため、フォトセンサが副走査に沿って不可視光を検出可能であるのが望ましい。
【0016】
本発明のファインダー表示制御装置は、ファインダー表示のため、可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって、走査面に対し走査光を走査させる間、不可視光を検出可能なフォトセンサと、フォトセンサからの出力信号から検出される走査範囲とあらかじめ定められた走査範囲との差に応じて、微小ミラーの駆動を制御するパターン表示位置制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明のカメラをハードウェアとして制御するソフトウェアに関するプログラムは、ファインダー表示のため、可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって、走査面に対し走査光を走査させる間、不可視光の走査範囲を検出する検出手段と、走査範囲が適正であるか否かを判別する判別手段と、適正な走査範囲で走査していない場合、走査範囲のずれに応じて微小ミラーの駆動を修正するパターン表示位置制御手段とを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、光走査によるファインダー表示の間、表示パターンを正確な位置に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態であるデジタルカメラの部分的な内部構成図である。
【図2】ピントグラスの表面を示した平面図である。
【図3】デジタルカメラのブロック図である。
【図4】レリーズボタンが半押しされた状態におけるファインダー表示を示した図である。
【図5】表示位置制御処理を示したフローチャートである。
【図6】走査中の走査範囲を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して本実施形態であるデジタルカメラについて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態であるデジタルカメラの部分的な内部構成図である。図2は、ピントグラスの表面を示した平面図である。
【0022】
一眼レフ型デジタルカメラ10では、鏡筒を含む撮影光学系12がカメラ本体11に着脱自在に装着されており、撮影光学系12後方にはクイックリターンミラー13、フォーカルプレーンシャッタ(図示せず)、CCD14が配置されている。クイックリターンミラー13が配置されるミラーボックス上方には、ピントグラス24、ペンタプリズム(ペンタゴナルダハプリズム)26、そしてルーペ光学系22を含む光学ファインダー20が配置されている。
【0023】
撮影光学系12を通った光は、クイックリターンミラー13によって上方に導かれ、ピントグラス24に被写体像が形成される。ピントグラス24を通った光は、ファイダー視野枠(図示せず)を通過してペンタプリズム26内で反射し、ルーペ光学系22へ導かれる。これにより、撮影光学系12によって捉えられた被写体の光学像が、ルーペ光学系22を通して観察される。
【0024】
スキャナ機構50は、レーザー光源60A、60B、マイクロミラーデバイス55を備え、プリズム27を介してペンタプリズム26の第2反射面26Bに隣接配置されている。レーザー光源60Aは可視光(例えば、赤色光)を放射する一方、レーザー光源60Bは非可視光である近赤外光)を放射する。可視光、近赤外光は、それぞれレンズ59A、59Bを通ってビームスプリッタ57に入射する。
【0025】
ビームスプリッタ57は、レーザー光源60Aの可視光を透過するとともにレーザー光源60Bの近赤外光を反射し、可視光と近赤外光を重ね合わせて同軸にする。同軸進行する可視光と近赤外光(以下、走査光という)は、マイクロミラーデバイス55のマイクロミラー56で反射する。
【0026】
マイクロミラーデバイス55は、支持枠を構成するシリコンウェハ基板(図示せず)にマイクロミラー56を一体形成したMEMSデバイスであり、支持枠とマイクロミラー56を連結する2対のトーションバー(図示せず)を軸として回転可能である。ここでは、直交する2軸に沿って形成されたトーションバー周りにマイクロミラー56がそれぞれ軸回転可能であり、基板に沿った基準面に対して二次元的に傾斜する。
【0027】
支持枠に取り付けられた固定電極(図示せず)とマイクロミラー56に取り付けられた可動電極(図示せず)との間に正負の電荷を生じさせることでマイクロミラー56が傾斜し、電荷量を調整することによってミラー傾斜角が連続的に変化する。ここでは、表示パターンの光が走査面であるピントグラス24の表面をラスタ走査するように、マイクロミラー56が二次元駆動される。
【0028】
図2に示すように、ピントグラス24の表面24Sの両端には、フォトセンサ30、32が配置されている。フォトセンサ30は、それぞれ走査方向に垂直な方向(副走査方向)に沿って光を検出可能なように受光素子を並べたPD(フォトダイオード)アレイ30A〜30Cから構成され、PDアレイ30A〜30Cは所定間隔で走査方向に並んでいる。同様に、フォトセンサ32はPDアレイ32A〜32Cから構成されている。
【0029】
フォトセンサ30、32は、走査光のうちレーザー光源60Bから放射される近赤外光を検出し、PDアレイ30A〜30C、32A〜32C各々は、走査光が通過するときに信号を出力する。ここでの近赤外光の光強度は、フォトセンサ30、32が検出できる最小限度に定められている。PDアレイ30A〜30C、32A〜32Cは、各走査ラインの走査開始、終了位置付近であって、走査中のマイクロミラー56の最大傾斜角度およびそれに近い傾斜角度に対応する走査位置に設置されている。
【0030】
マイクロミラー56で反射した走査光は、ペンタプリズム26に入射し、ピントグラス24の表面24Sに照射される。表示パターンに応じた走査光はペンタプリズム26内で被写体像の光と重なり合い、文字情報、合焦マークなどの表示パターンが被写体像にスーパーインポーズ表示される。一方、走査光のうち近赤外光は、ルーペ光学系22とペンタプリズム26との間に配置された近赤外光カットフィルタ29によって除去され、安全基準内に入る光強度にされる。なお、レーザー光源60Bから射出するレーザー光の光強度および波長帯が所定の安全基準範囲内である場合は、赤外光カットフィルタ29は不要である。
【0031】
図3は、デジタルカメラ10のブロック図である。図4は、レリーズボタンが半押しされた状態におけるファインダー表示を示した図である。
【0032】
電源ON操作によってメインスイッチS1がON状態になると、電源回路82からシステムコントロール回路80を含む回路全体に電源が供給される。ROM97、RAM99を備えたシステムコントロール回路80は、カメラ動作を制御し、AF制御部90、分割測光制御部98などへ制御信号を出力する。撮影光学系12によって形成される被写体像は、ルーペ光学系22を通して表示されている。
【0033】
レリーズボタン(図示せず)が半押しされて測光スイッチS2がON状態になると、分割測光制御部58によって被写体の明るさが計測され、露出値が算出される。また、撮影光学系12を通った光がミラーボックス下部に設けられたAF用CCDセンサ91に導かれると、AF制御部90は合焦状態であるか否かを検出する。そして、多分割オートフォーカス機能に従い、システムコントロール回路80はAFモータ93を制御し、撮影光学系12のフォーカシングレンズをシフトさせる。
【0034】
一方、ファインダー表示のため、レーザー駆動回路61はレーザー光源60A、60Bを駆動し、ビームスプリッタ57は可視光と近赤外光から成る走査光をマイクロミラー56に向けて同軸進行させる。また、ミラー駆動回路63がマイクロミラーデバイス55を制御し、マイクロミラー56を二次元駆動させてマイクロミラー56で反射する走査光をラスタ走査させる。
【0035】
マイクロミラー56によるラスタ走査領域は、ファインダー表示される被写体像の視野領域に従う。また、マイクロミラー56の2軸に関する傾斜角度は、ファインダー視野領域内での走査位置と1対1対応関係になっている。したがって、レーザー光源60Aから放射される光を所定のタイミングでON/OFF制御することで、文字、マークなどのパターンを所望するサイズ、位置で表示可能である。
【0036】
システムコントロール回路80は、表示パターンを所定サイズ、所定位置で表示するため、レーザー駆動回路61へ制御信号を出力する。レーザー駆動回路61はレーザー光源60AをON/OFF制御し、可視光が表示位置を通過するときにレーザー光源60をONに切り替える。表示パターンのサイズ、表示位置に関するデータは、あらかじめROM97に記憶されている。
【0037】
図4では、ファインダー表示される被写体像とともに、多分割オートフォーカス動作によって検出された合焦位置にフレーム状の合焦マークK1がスーパーインポーズ表示されている。また、露出値である絞り値K2、シャッタスピードK3が表示領域右端付近にスーパーインポーズ表示されている。
【0038】
レリーズボタンが全押しされてレリーズスイッチS3がON状態になると、一連の記録動作が実行され、露出制御部95がクイックリターンミラー13を退避させるとともにシャッタ55を開閉させる。その結果、被写体像がCCD14に結像される。被写体像に応じた画像信号は、CCD駆動回路92によってCCD14から読み出される。信号処理回路99では、読み出された画像信号に対しホワイトバランス、ガンマ補正、マトリクス変換など様々な処理が施され、デジタルのR,G,B画像信号が生成される。
【0039】
デジタル画像信号は、圧縮処理された後にメモリカード88に記録される。モードダイヤル(図示せず)に対する操作よって再生モードが選択された場合、記録された画像データがメモリカード88から読み出される。そして、伸張処理により復元した画像がLCD96に再生表示される。
【0040】
図5は、表示位置制御処理を示したフローチャートである。図6は、走査中の走査範囲を示した図である。表示パターンをファインダー表示する処理が実行されると開始される。
【0041】
ステップS101では、フォトセンサ30、32によって走査光の走査開始位置、走査終了位置が検出される。マイクロミラー56は、ファインダー表示の間、軸回転運動を周期的に行い、走査方向に対応する(走査方向に垂直な)トーションバー周りに往復揺動する。一方向へマイクロミラー56を最大傾斜させたときの角度が、各走査ラインの走査開始に対応し、反対方向へ最大傾斜させたときの角度が、各走査ラインの走査終了位置に対応する。
【0042】
上述したように、PDアレイ30A〜30C、32A〜32Cは、各走査ラインの走査開始位置、修了位置付近に所定間隔で配列し、PDアレイ30A〜30Cは走査開始位置、PDアレイ32A〜32Cは走査終了位置を検出する。
【0043】
走査中のミラー傾斜角度の時系列変化をみると、最大傾斜角度をライン走査の振幅とみなすことができる。外乱等なくマイクミラー56があらかじめ定められた走査範囲Mで駆動する場合、走査開始位置はPDアレイ30Bの位置に該当し、走査終了位置はPDアレイ32Bの位置に該当する(図6参照)。
【0044】
PDアレイ30A〜30Cは、近赤外光が通過すると受光に応じたレベルの信号を出力する。適正な走査範囲Mの場合、PDアレイ30B、30Cが受光に応じたレベル(ここでは1とする)の信号を出力する一方、PDアレイ30Aは受光せず、0レベルの信号出力となる。
【0045】
外乱などによってマイクロミラー56の駆動が不安定になると、振幅が変動し、走査範囲がずれる。振幅が小さくなる、すなわち走査範囲が短くなると、PDアレイ30B、30Cの一方、もしくは両方とも受光しない。また、振幅が大きくなって走査範囲が長くなると、PDアレイ30A〜30Cがすべて受光する(図6参照)。PDアレイ32A〜32Cも、振幅が変化することによって受光状態が同様に変化する。
【0046】
図4のステップS102では、フォトセンサ30、32から出力される信号に基づいて振幅の大きさが適正であるか、すなわち各走査ラインの走査範囲が適正であるか否かが判断される。ここでは、各走査ラインの振幅を検出する。走査範囲が適正である場合、ステップS106へ進む。一方、走査範囲が適正ではない場合、ステップS103へ進む。
【0047】
ステップS103では、振幅が適正振幅よりも大きいか否かが判断される。振幅が大きい場合、ステップS104へ進み、ミラー駆動回路63によってマイクロミラー56の駆動周波数を下げる。ただし、駆動周波数は、走査中マイクロミラー56が周期的揺動運動するときの周波数を表す。
【0048】
一般に、駆動周波数と最大傾斜角度との関係はガウス分布的な関数で表され、最大傾斜角度時の周波数をシフトさせることで傾斜角度、すなわち走査範囲を調整することが可能である。振幅が大きすぎる場合、周波数分布を全体的に下げる(シフトさせる)ことにより、適正な振幅に修復される。
【0049】
一方、ステップS103において、振幅が適正振幅よりも小さい場合、ステップS105に進み、駆動周波数を上げる制御が行われる。ステップS104もしくはステップS105が実行されると、ステップS106に進む。ステップS106では、ファインダー表示終了であるか否かが判断される。レリーズボタンが全押しされるか、もしくは押下されなくなるまで、ステップS101〜S106が繰り返し実行される。
【0050】
このように本実施形態によれば、光走査によってファインダー表示可能な一眼レフ型デジタルカメラ10において、レーザー光源60Aの可視光とレーザー光源60Bの近赤外光とを同軸に重ねた走査光をマイクロミラー56へ導き、マイクロミラー56を2次元駆動させることでピントグラス24の表面24Sをラスタ走査する。表示パターンの表示位置に基づいてレーザー光源60AをON/OFF制御することで、文字情報などの表示パターンが被写体像とともにスーパーインポーズ表示される。
【0051】
ピントグラス24の表面24Sには、走査方向に並ぶPDアレイ30A〜30C、32A〜32Cから構成されたフォトセンサ30、32が走査範囲の両端に配置されており、ファインダー表示の間、フォトセンサ30、32によって検出される近赤外光からミラー振幅、すなわちミラー最大傾斜角度が検出される。振幅、すなわち走査範囲が適正でない場合、マイクロミラー56の駆動周波数を調整し、適正な走査範囲Mを維持する。
【0052】
可視光と同じ位置を近赤外光が同時走査することにより、マイクロミラー56の振幅をリアルタイムで検出し、ファインダー表示中に走査範囲を制御することができる。したがって、撮影前後に表示委位置を調整する処理を別途実行する必要がなく、高精度制御可能なマイクロミラーを使用しなくても、表示パターンを常に正確な位置でファインダー表示することができる。また、近赤外光によってモニタリングするため、ユーザがモニタリング用の光によって注意を奪われることがない。
【0053】
フォトセンサ30、32が走査方向に沿ってピントグラス24の両端に配置されているため、ファインダー視野枠を最大限広げることができる。さらに、副走査方向に沿ってフォトセンサ30、32が配置されるため、走査領域全体に渡って各走査ラインの走査範囲を検出、調整することが可能である。
【0054】
走査方向に沿って並べるPDアレイの数は任意であり、ファインダー視野枠のサイズを調整してPDアレイを視野枠からはずしてもよい。フォトセンサ30、32は、走査範囲の一方の端だけ、あるいは両端以外に設置することも可能であり、例えば、マイクロミラー56の傾斜角度が0度である中心位置付近に配置してもよい。また、フォトセンサの配置されている部分だけ不可視光を変調するように構成してもよい。
【0055】
ビームスプリッタ以外の構成で可視光と近赤外光を同軸にしてもよく、光学部材を使用せずに近赤外光成分と可視光成分を含む光を放射させるようにしてもよい。また、近赤外光以外の不可視光を放射するように構成してもよく、レーザー光源以外の光源の光を変調するように構成してもよい。
【0056】
走査対象に関しては、ピントグラスの表面以外を走査面とすることも可能であり、例えば専用スクリーン板を設けるようにしてもよい。一方、表示内容に関しては、文字情報、マークに限定されず、記録した画像をファインダー表示するように光源をON/OFF制御してもよい。
【0057】
ミラー振幅制御に関しては、駆動周波数を調整する代わりに、マイクロミラーデバイス56の駆動電圧、すなわちマイクロミラーデバイス間で静電作用を生じさせる電荷量を調整するように構成してもよい。ミラー振幅は、一フレーム分の平均振幅を検出してもよく、所定の走査ラインで検出してもよい。
【0058】
ムービーカメラなどデジタルカメラ以外のカメラにも適用可能であり、ファインダー表示する撮影装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 デジタルカメラ
12 撮影光学系
20 光学ファインダー
24 ピントグラス
26 ペンタプリズム
30、32 フォトセンサ
30A〜30C PDアレイ
32A〜32C PDアレイ
50 スキャナ機構
55 マイクロミラーデバイス
56 マイクロミラー(微小ミラー)
57 ビームスプリッタ
60A レーザー光源(第1光源)
60B レーザー光源(第2光源)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察用の被写体像を形成する光学ファインダーと、
可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって、走査面に対し走査光を走査させる走査手段と、
可視光を変調し、ファインダー視野内に表示される表示パターンを形成する表示制御手段と、
前記走査面の走査範囲に合わせて配置され、不可視光を検出するフォトセンサと、
適正な走査範囲で走査するように、前記フォトセンサの出力信号に基づいて前記微小ミラーを制御するパターン表示位置制御手段と
を備えたことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記フォトセンサが、走査範囲の少なくとも一方の端付近に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記フォトセンサが、所定間隔で走査方向に並ぶことを特徴とする請求項2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記フォトセンサが、副走査方向に沿って不可視光を検出可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ。
【請求項5】
前記走査手段が、
可視光を放射する第1光源と、
不可視光を放射する第2光源と、
可視光と不可視光を同軸進行させる光学部材と
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ。
【請求項6】
前記光学部材が、入射する可視光と不可視光を同軸射出するビームスプリッタを有することを特徴とする請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
前記パターン表示位置制御手段が、前記微小ミラーの駆動周波数、もしくは駆動電圧を調整することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のカメラ。
【請求項8】
前記走査面が、焦点板の表面であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のカメラ。
【請求項9】
ファインダー表示のため、可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって走査面に対し走査光を走査させる間、不可視光を検出可能なフォトセンサと、
前記フォトセンサからの出力信号から検出される走査範囲とあらかじめ定められた走査範囲との差に応じて、前記微小ミラーの駆動を制御するパターン表示位置制御手段と
を備えたことを特徴とするファインダー表示制御装置。
【請求項10】
ファインダー表示のため、可視光と不可視光とを含む走査光を反射する微小ミラーを傾斜させることによって走査面に対し走査光を走査させる間、不可視光の走査範囲を検出する検出手段と、
走査範囲が適正であるか否かを判別する判別手段と、
適正な走査範囲で走査していない場合、走査範囲のずれに応じて前記微小ミラーの駆動を修正するパターン表示位置制御手段と
を機能させることを特徴とするカメラのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185905(P2010−185905A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28062(P2009−28062)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】