光走査装置
【課題】オーバーフィルド光学系を用いて、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる光走査装置を得る。
【解決手段】光源11と、複数の平面の反射面を有する偏光器14と、光源11と偏向器14との間の光路中に配置されたコリメータレンズ12及び自由曲面レンズ13と、偏向器14と感光体10との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において偏向器14の反射面と感光体10とが副走査方向について共役となるように構成された走査レンズ1,2と、を備えた光走査装置。レンズ13から偏向器14に向かう光束は、偏向器14の走査方向に関して、光束幅が偏向器14の反射面より広く、走査幅の端部に相当する偏向角におけるレンズ13の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角におけるレンズ13の光束通過範囲とでは、偏向器14に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向zについて、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さい。
【解決手段】光源11と、複数の平面の反射面を有する偏光器14と、光源11と偏向器14との間の光路中に配置されたコリメータレンズ12及び自由曲面レンズ13と、偏向器14と感光体10との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において偏向器14の反射面と感光体10とが副走査方向について共役となるように構成された走査レンズ1,2と、を備えた光走査装置。レンズ13から偏向器14に向かう光束は、偏向器14の走査方向に関して、光束幅が偏向器14の反射面より広く、走査幅の端部に相当する偏向角におけるレンズ13の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角におけるレンズ13の光束通過範囲とでは、偏向器14に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向zについて、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、特に、感光体に光を照射して静電潜像を形成する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光走査装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、走査効率のよいオーバーフィルド光学系を用いて、走査光学系の収差を光源光学系の収差で打ち消すことにより、光走査装置の小型化を達成する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、オーバーフィルド光学系を用いると、ポリゴンミラーの回転に伴う反射面の移動に基づいて、光源光学系によってポリゴンミラーの近傍で光束が集光する位置が、画角によっては反射面からずれる。それゆえ、反射面と被走査面(感光体面)を共役に保てば集光位置が被走査面からずれ、逆に、被走査面で集光することを優先すると、共役関係が崩れて面倒れ補正が不完全になるという問題点を有していた。特に、装置を小型化した際には、副走査倍率が高くなって面倒れ補正と副走査像面補正とが両立しなくなるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−208995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、オーバーフィルド光学系を用いて、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である光走査装置は、
光束を放射する光源と、
複数の平面の反射面を有する偏向器と、
前記光源と前記偏向器との間の光路中に配置された第1の光学系と、
前記偏向器と被走査面との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において前記偏向器の反射面と前記被走査面とが副走査方向について共役となるように構成された第2の光学系と、
を備え、
前記第1の光学系から前記偏向器に向かう光束は、前記偏向器の走査方向に関して、光束幅が前記偏向器の各反射面より広く、
走査幅の端部に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲とでは、前記偏向器に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向について、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さくなっていること、
を特徴とする光走査装置。
【0007】
前記光走査装置において、第2の光学系は、偏向器の反射面が移動しても該反射面と被走査面と副走査方向の共役関係を保つ。そして、オーバーフィルド光学系を採用することで、偏向器の回転に伴って第1の光学系上の光束通過範囲が移行するようにし、また、偏向器の反射面近傍での副走査方向のフォーカス位置が変化することで、光束の走査時に発生する副走査方向の像面湾曲を補正する。即ち、各画角での共役関係を維持することによって発生するフォーカスずれを打ち消すように、第1の光学系の副走査方向の集光位置を変化させることにより、面倒れ補正を維持しつつ被走査面上での結像状態の変化を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オーバーフィルド光学系を用いて、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される光走査装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図3】実施例1においてポリゴンミラーでの反射光束を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角においてポリゴンミラーから反射される光束を示す説明図、(B)は画像中央に相当する偏向角においてポリゴンミラーから反射される光束を示す説明図である。
【図4】実施例1における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図5】実施例1における像面湾曲を示すグラフである。
【図6】比較例1における像面湾曲を示すグラフである。
【図7】比較例2における像面湾曲を示すグラフである。
【図8】実施例1、比較例1,2におけるワッブル量を示すグラフである。
【図9】実施例1における副走査倍率を示すグラフである。
【図10】実施例2の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図11】実施例2における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図12】実施例2における像面湾曲を示すグラフである。
【図13】実施例2におけるワッブル量を示すグラフである。
【図14】実施例2における副走査倍率を示すグラフである。
【図15】実施例3の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図16】実施例3における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図17】実施例3における像面湾曲を示すグラフである。
【図18】実施例3におけるワッブル量を示すグラフである。
【図19】実施例3における副走査倍率を示すグラフである。
【図20】実施例4の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図21】実施例4における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図22】実施例4において光束内全体で計算したデフォーカス量を示すグラフである。
【図23】実施例4において主光線近傍で計算したデフォーカス量を示すグラフである。
【図24】実施例4におけるワッブル量を示すグラフである。
【図25】実施例4における副走査倍率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る光走査装置の実施例について説明する。なお、各図において同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(光走査装置の基本的構成、図1参照)
まず、本発明が適用される光走査装置の概略構成について図1を参照して説明する。この光走査装置は、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。レーザダイオード11から放射されたレーザ光束は、コリメータレンズ12によって平行光とされた後、自由曲面レンズ13を透過することで副走査方向zについて収束光とされ、ポリゴンミラー14の各反射面によって主走査方向yに偏向され、走査レンズ1,2を経て感光体10上に集光する。このように、光束による主走査と感光体10の回転(副走査)によって感光体10上に画像を描画する基本的な動作は周知である。
【0012】
(実施例1、図2〜図9参照)
実施例1である光走査装置は、図2に示すように、レーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、ポリゴンミラー14、走査レンズ1,2が配置されている。ポリゴンミラー14の反射面に入射する光束B1は、ポリゴンミラー14の各反射面14aよりも主走査方向yの幅が広く(図3参照)、反射面14aによって光束規制されているが、図2では、光束規制後の幅で上流側まで描かれている。図2(A)と図2(B)とを比較すると分かるように、描画に使用される光束B2が自由曲面レンズ13を通過する範囲が偏向角の変化につれて移動している。
【0013】
図3(A),(B)では、描画に使用されない光束B3をも含めて、ポリゴンミラー14によって反射される光束B2を示している。ポリゴンミラー14への入射光束B1は点線で示している。図3(A)は画像端部に相当する偏向角での描画光束B2を示し、図3(B)は画像中央に相当する偏向角での描画光束B2を示している。描画に使用されない光束B3は感光体10に到達しないように図示しない遮光部材によって遮光されている。
【0014】
以下に示す表1、表2及び表3は、実施例1を数値的に示すコンストラクションデータである。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
コリメータレンズ12はガラス製の軸対称非球面レンズである。自由曲面レンズ13は、樹脂製の非軸対称レンズであり、光源側の面は自由曲面とされている。走査レンズ1,2は、それぞれ、樹脂製レンズであり、自由曲面を有している。光束の波長は780nmで、その波長に対するガラス(レンズ13)の屈折率は1.564、樹脂(レンズ13,1,2)の屈折率は1.572である。なお、表1においては、ポリゴンミラー14の座標は偏向角0°で描画光束B2を反射する反射面について示している。実施例1でのポリゴンミラー14は、内接円径20mmの12角形である。
【0019】
ところで、自由曲面の面形状は、次式(1)によって表現される。
【0020】
【数1】
【0021】
また、軸対称非球面の面形状は、次式(2)によって表現される。
【数2】
【0022】
表に示されていない係数は、全て0である。
【0023】
実施例1における自由曲面は、yは偶数の次数しか使用しておらず、y方向について対称な形状となっている。光源側の自由曲面レンズ13は、z方向について2次しか使用しておらず、z=0では直線になっている。また、xz断面内形状は放物線であり、yの値によってその放物線の曲がり具合が変化するような面となっている。
【0024】
自由曲面レンズ13に入射する光束は平行光であるが、レンズ13からの射出光は主走査方向yについては平行光、副走査方向zについては収束光となっている。また、副走査方向zの集光位置は光束内の位置によって異なっている。図4は、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0025】
図5は、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。
【0026】
図6は、比較例1についてデフォーカス量を計算したものである。比較例1は、実施例1の自由曲面レンズ13をシリンドリカルレンズに置き換えたものである。比較例1では、オーバーフィルド光学系で偏向角によって光源側光学系での光束通過範囲が移動しても、ポリゴンミラー14の近傍での副走査方向zの集光位置は一定で変化しない。
【0027】
図7は、比較例2についてデフォーカス量を計算したものである。比較例2は、比較例1の走査レンズを変更して像面湾曲を補正したものであり、本発明に対しては従来例といえるものである。
【0028】
図8は、前記実施例1、比較例1,2におけるワッブル量を示している。ここでのワッブル量とは、ポリゴンミラー14の反射面が僅かに傾いたときに、評価面(被走査面)上で光束がずれる量をいう。ここで与えている反射面の傾きは1分である。
【0029】
ポリゴンミラー14は複数の反射面14aを有するため、それらが相対的に傾いていると、それぞれの反射面に応じて反射光束の角度が差を持つことになる。ポリゴンミラー14が回転して繰り返し走査(描画)を行うと、反射面ごとの角度差が画像の周期的なムラになる。それゆえ、通常は、比較例2のように、シリンドリカルレンズを用いて反射面14aの近傍で副走査方向zのみに集光させ、走査レンズによって感光体10上で再び集光させるようにして、各反射面14aと感光体10を略共役の関係を保ってワッブル量を小さくしている。
【0030】
ところが、反射面14aはポリゴンミラー14の回転に伴って移動するが、シリンドリカルレンズによって集光する位置は移動しないので、ある偏向角において共役な関係に設定すると、他の偏向角においては感光体10上での集光位置にずれを生じることになる。比較例2では、偏向角0°で共役に設定されており、ワッブル量はほぼ0となっている。しかし、偏向角が大きくなるとともにワッブル量が増大し、画像周辺部では約1μmのワッブルが生じることになる。偏向角が0°以外でも、ある特定の偏向角について共役関係に設定することは可能であるが、それ以外の偏向角ではやはりワッブルが生じることになる。
【0031】
比較例1は、各偏向角で共役な関係が維持されるように走査レンズを構成しており、ワッブル量は比較例2と比べて小さい状態が維持されている。しかし、比較例1は光源側の光学系が従来技術のままであるため、図6に示したように、副走査方向zについてデフォーカスが生じており、結像状態の均一性が低くなっている。このときのデフォーカス量は、副走査方向zの集光点と反射面14aの主光線上での距離に、副走査倍率の2乗を掛けたものとなる。比較例1では、ポリゴンミラー14に入射する光束が主走査方向yに関して、画像中央の方向であり、偏向角が0°のとき反射面14a上で集光するようになっており、主光線に沿った方向で見た副走査方向zのデフォーカス量dは、以下の式(3)で表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
前記式(3)において、βは副走査倍率、rはポリゴンミラーの内接円半径、θは偏向角、αはポリゴンミラーへの入射光束の副走査方向zの傾きである。なお、比較例1においてαは5°である。
【0034】
通常は、比較例2のように、共役関係のほうを外してデフォーカスを抑える。その場合は、前記式におけるデフォーカス量は反射面14aと共役な点の感光体からのずれ量に相当する。
【0035】
走査レンズ1,2をポリゴンミラー14に近付けた場合、レンズ1,2が短くなり、また、光走査装置が全体的にコンパクトにできる一方で、副走査倍率の絶対値が大きくなる。従来技術では、副走査倍率の絶対値を大きくすると、共役関係のずれが大きくなってワッブルが大きくなり、画質が悪化するというトレードオフが生じていた。しかし、実施例1では副走査倍率の絶対値を大きくしてもワッブルが悪化しないようにできるため、副走査倍率の絶対値が大きいときに、より効果的である。実施例1での副走査倍率の絶対値を図9に示している。
【0036】
(実施例2、図10〜図14参照)
実施例2である光走査装置は、図10に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。実施例2において、実施例1と異なるのは、走査レンズ1,2がポリゴンミラー14から若干離れている点である。そして、本実施例2での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0037】
以下に示す表4、表5及び表6は、実施例2を数値的に示すコンストラクションデータである。位置関係は実施例1と異なるが、面の種類、配置順序、使用波長、ガラス及び樹脂の種類、ポリゴンミラー14の面数及びサイズは、いずれも実施例1と同じである。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
図11は、実施例2において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0042】
図12は、実施例2において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。図13は、実施例2におけるワッブル量を示している。そして、実施例2での副走査倍率の絶対値を図14に示している。実施例2では、実施例1よりも走査レンズ1,2がポリゴンミラー14から離れているので、その分、副走査倍率の絶対値は小さめになっている。
【0043】
(実施例3、図15〜図19参照)
実施例3である光走査装置は、図15に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。実施例3において、実施例1と異なるのは、走査レンズ1,2がポリゴンミラー14に若干近付いている点である。そして、本実施例3での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0044】
以下に示す表7、表8及び表9は、実施例3を数値的に示すコンストラクションデータである。位置関係は実施例1と異なるが、面の種類、配置順序、使用波長、ガラス及び樹脂の種類、ポリゴンミラー14の面数及びサイズは、いずれも実施例1と同じである。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
図16は、実施例3において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0049】
図17は、実施例3において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。図18は、実施例3におけるワッブル量を示している。そして、実施例3での副走査倍率の絶対値を図19に示している。実施例3では、実施例1よりも走査レンズ1,2がポリゴンミラー14に近づいているので、その分、副走査倍率の絶対値は大きめになっている。
【0050】
(実施例4、図20〜図25参照)
実施例4である光走査装置は、図20に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ2とで構成されている。実施例4において、実施例1と異なるのは、一つの走査レンズ2のみを配置した点である。そして、本実施例4での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0051】
以下に示す表10、表11及び表12は、実施例4を数値的に示すコンストラクションデータである。実施例4において、光源側の自由曲面レンズ13はZ0次の項が0ではなく、主走査方向yに曲率を持っている。その一方で、ポリゴンミラー14後の自由曲面レンズ(走査レンズ2)はZ0次の項が0であり、z=0の断面内では主走査方向yに曲率を持たない。即ち、実施例4では、主走査方向yについて、光源側の自由曲面レンズ13で光束を収束光とし、感光体10上で集光するようにしており、ポリゴンミラー14後の自由曲面レンズ(走査レンズ2)は主走査方向yについて集光する作用を持っていない。また、使用波長、ガラスの種類は実施例1と同じである。樹脂は使用波長における屈折率が1.525であり、ポリゴンミラー14は内接円径10mmの12角形である。
【0052】
【表10】
【0053】
【表11】
【0054】
【表12】
【0055】
図21は、実施例4において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0056】
図22は、実施例4において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。前記実施例1〜3では、十分に収差補正されているので、主光線近傍で見た集光位置と光束内全体でみた集光位置に差が生じていない。しかし、実施例4では、光源側の自由曲面レンズ13で発生する収差によって集光位置をコントロールしている関係上、残存収差が大きめになっており、両者に差が生じている。そこで、実施例4について、主光線近傍で計算したデフォーカス量を図23に示す。
【0057】
図24は、実施例4におけるワッブル量を示している。そして、実施例4での副走査倍率の絶対値を図25に示している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、画像形成装置に搭載される光走査装置に有用であり、特に、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる点で優れている。
【符号の説明】
【0059】
1,2…走査レンズ
10…感光体
11…レーザダイオード(光源)
12…コリメータレンズ
13…自由曲面レンズ
14…ポリゴンミラー
14a…反射面
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、特に、感光体に光を照射して静電潜像を形成する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光走査装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、走査効率のよいオーバーフィルド光学系を用いて、走査光学系の収差を光源光学系の収差で打ち消すことにより、光走査装置の小型化を達成する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、オーバーフィルド光学系を用いると、ポリゴンミラーの回転に伴う反射面の移動に基づいて、光源光学系によってポリゴンミラーの近傍で光束が集光する位置が、画角によっては反射面からずれる。それゆえ、反射面と被走査面(感光体面)を共役に保てば集光位置が被走査面からずれ、逆に、被走査面で集光することを優先すると、共役関係が崩れて面倒れ補正が不完全になるという問題点を有していた。特に、装置を小型化した際には、副走査倍率が高くなって面倒れ補正と副走査像面補正とが両立しなくなるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−208995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、オーバーフィルド光学系を用いて、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である光走査装置は、
光束を放射する光源と、
複数の平面の反射面を有する偏向器と、
前記光源と前記偏向器との間の光路中に配置された第1の光学系と、
前記偏向器と被走査面との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において前記偏向器の反射面と前記被走査面とが副走査方向について共役となるように構成された第2の光学系と、
を備え、
前記第1の光学系から前記偏向器に向かう光束は、前記偏向器の走査方向に関して、光束幅が前記偏向器の各反射面より広く、
走査幅の端部に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲とでは、前記偏向器に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向について、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さくなっていること、
を特徴とする光走査装置。
【0007】
前記光走査装置において、第2の光学系は、偏向器の反射面が移動しても該反射面と被走査面と副走査方向の共役関係を保つ。そして、オーバーフィルド光学系を採用することで、偏向器の回転に伴って第1の光学系上の光束通過範囲が移行するようにし、また、偏向器の反射面近傍での副走査方向のフォーカス位置が変化することで、光束の走査時に発生する副走査方向の像面湾曲を補正する。即ち、各画角での共役関係を維持することによって発生するフォーカスずれを打ち消すように、第1の光学系の副走査方向の集光位置を変化させることにより、面倒れ補正を維持しつつ被走査面上での結像状態の変化を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オーバーフィルド光学系を用いて、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される光走査装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図3】実施例1においてポリゴンミラーでの反射光束を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角においてポリゴンミラーから反射される光束を示す説明図、(B)は画像中央に相当する偏向角においてポリゴンミラーから反射される光束を示す説明図である。
【図4】実施例1における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図5】実施例1における像面湾曲を示すグラフである。
【図6】比較例1における像面湾曲を示すグラフである。
【図7】比較例2における像面湾曲を示すグラフである。
【図8】実施例1、比較例1,2におけるワッブル量を示すグラフである。
【図9】実施例1における副走査倍率を示すグラフである。
【図10】実施例2の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図11】実施例2における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図12】実施例2における像面湾曲を示すグラフである。
【図13】実施例2におけるワッブル量を示すグラフである。
【図14】実施例2における副走査倍率を示すグラフである。
【図15】実施例3の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図16】実施例3における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図17】実施例3における像面湾曲を示すグラフである。
【図18】実施例3におけるワッブル量を示すグラフである。
【図19】実施例3における副走査倍率を示すグラフである。
【図20】実施例4の光路構成を示し、(A)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内の光路図、(B)は画像端部に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー前の光路図、(C)は画像中央に相当する偏向角における主走査断面内のポリゴンミラー後の光路図、(D)は副走査断面内の光路図である。
【図21】実施例4における光束内の波面の副走査方向の平均的な曲率を示すグラフである。
【図22】実施例4において光束内全体で計算したデフォーカス量を示すグラフである。
【図23】実施例4において主光線近傍で計算したデフォーカス量を示すグラフである。
【図24】実施例4におけるワッブル量を示すグラフである。
【図25】実施例4における副走査倍率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る光走査装置の実施例について説明する。なお、各図において同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(光走査装置の基本的構成、図1参照)
まず、本発明が適用される光走査装置の概略構成について図1を参照して説明する。この光走査装置は、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。レーザダイオード11から放射されたレーザ光束は、コリメータレンズ12によって平行光とされた後、自由曲面レンズ13を透過することで副走査方向zについて収束光とされ、ポリゴンミラー14の各反射面によって主走査方向yに偏向され、走査レンズ1,2を経て感光体10上に集光する。このように、光束による主走査と感光体10の回転(副走査)によって感光体10上に画像を描画する基本的な動作は周知である。
【0012】
(実施例1、図2〜図9参照)
実施例1である光走査装置は、図2に示すように、レーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、ポリゴンミラー14、走査レンズ1,2が配置されている。ポリゴンミラー14の反射面に入射する光束B1は、ポリゴンミラー14の各反射面14aよりも主走査方向yの幅が広く(図3参照)、反射面14aによって光束規制されているが、図2では、光束規制後の幅で上流側まで描かれている。図2(A)と図2(B)とを比較すると分かるように、描画に使用される光束B2が自由曲面レンズ13を通過する範囲が偏向角の変化につれて移動している。
【0013】
図3(A),(B)では、描画に使用されない光束B3をも含めて、ポリゴンミラー14によって反射される光束B2を示している。ポリゴンミラー14への入射光束B1は点線で示している。図3(A)は画像端部に相当する偏向角での描画光束B2を示し、図3(B)は画像中央に相当する偏向角での描画光束B2を示している。描画に使用されない光束B3は感光体10に到達しないように図示しない遮光部材によって遮光されている。
【0014】
以下に示す表1、表2及び表3は、実施例1を数値的に示すコンストラクションデータである。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
コリメータレンズ12はガラス製の軸対称非球面レンズである。自由曲面レンズ13は、樹脂製の非軸対称レンズであり、光源側の面は自由曲面とされている。走査レンズ1,2は、それぞれ、樹脂製レンズであり、自由曲面を有している。光束の波長は780nmで、その波長に対するガラス(レンズ13)の屈折率は1.564、樹脂(レンズ13,1,2)の屈折率は1.572である。なお、表1においては、ポリゴンミラー14の座標は偏向角0°で描画光束B2を反射する反射面について示している。実施例1でのポリゴンミラー14は、内接円径20mmの12角形である。
【0019】
ところで、自由曲面の面形状は、次式(1)によって表現される。
【0020】
【数1】
【0021】
また、軸対称非球面の面形状は、次式(2)によって表現される。
【数2】
【0022】
表に示されていない係数は、全て0である。
【0023】
実施例1における自由曲面は、yは偶数の次数しか使用しておらず、y方向について対称な形状となっている。光源側の自由曲面レンズ13は、z方向について2次しか使用しておらず、z=0では直線になっている。また、xz断面内形状は放物線であり、yの値によってその放物線の曲がり具合が変化するような面となっている。
【0024】
自由曲面レンズ13に入射する光束は平行光であるが、レンズ13からの射出光は主走査方向yについては平行光、副走査方向zについては収束光となっている。また、副走査方向zの集光位置は光束内の位置によって異なっている。図4は、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0025】
図5は、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。
【0026】
図6は、比較例1についてデフォーカス量を計算したものである。比較例1は、実施例1の自由曲面レンズ13をシリンドリカルレンズに置き換えたものである。比較例1では、オーバーフィルド光学系で偏向角によって光源側光学系での光束通過範囲が移動しても、ポリゴンミラー14の近傍での副走査方向zの集光位置は一定で変化しない。
【0027】
図7は、比較例2についてデフォーカス量を計算したものである。比較例2は、比較例1の走査レンズを変更して像面湾曲を補正したものであり、本発明に対しては従来例といえるものである。
【0028】
図8は、前記実施例1、比較例1,2におけるワッブル量を示している。ここでのワッブル量とは、ポリゴンミラー14の反射面が僅かに傾いたときに、評価面(被走査面)上で光束がずれる量をいう。ここで与えている反射面の傾きは1分である。
【0029】
ポリゴンミラー14は複数の反射面14aを有するため、それらが相対的に傾いていると、それぞれの反射面に応じて反射光束の角度が差を持つことになる。ポリゴンミラー14が回転して繰り返し走査(描画)を行うと、反射面ごとの角度差が画像の周期的なムラになる。それゆえ、通常は、比較例2のように、シリンドリカルレンズを用いて反射面14aの近傍で副走査方向zのみに集光させ、走査レンズによって感光体10上で再び集光させるようにして、各反射面14aと感光体10を略共役の関係を保ってワッブル量を小さくしている。
【0030】
ところが、反射面14aはポリゴンミラー14の回転に伴って移動するが、シリンドリカルレンズによって集光する位置は移動しないので、ある偏向角において共役な関係に設定すると、他の偏向角においては感光体10上での集光位置にずれを生じることになる。比較例2では、偏向角0°で共役に設定されており、ワッブル量はほぼ0となっている。しかし、偏向角が大きくなるとともにワッブル量が増大し、画像周辺部では約1μmのワッブルが生じることになる。偏向角が0°以外でも、ある特定の偏向角について共役関係に設定することは可能であるが、それ以外の偏向角ではやはりワッブルが生じることになる。
【0031】
比較例1は、各偏向角で共役な関係が維持されるように走査レンズを構成しており、ワッブル量は比較例2と比べて小さい状態が維持されている。しかし、比較例1は光源側の光学系が従来技術のままであるため、図6に示したように、副走査方向zについてデフォーカスが生じており、結像状態の均一性が低くなっている。このときのデフォーカス量は、副走査方向zの集光点と反射面14aの主光線上での距離に、副走査倍率の2乗を掛けたものとなる。比較例1では、ポリゴンミラー14に入射する光束が主走査方向yに関して、画像中央の方向であり、偏向角が0°のとき反射面14a上で集光するようになっており、主光線に沿った方向で見た副走査方向zのデフォーカス量dは、以下の式(3)で表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
前記式(3)において、βは副走査倍率、rはポリゴンミラーの内接円半径、θは偏向角、αはポリゴンミラーへの入射光束の副走査方向zの傾きである。なお、比較例1においてαは5°である。
【0034】
通常は、比較例2のように、共役関係のほうを外してデフォーカスを抑える。その場合は、前記式におけるデフォーカス量は反射面14aと共役な点の感光体からのずれ量に相当する。
【0035】
走査レンズ1,2をポリゴンミラー14に近付けた場合、レンズ1,2が短くなり、また、光走査装置が全体的にコンパクトにできる一方で、副走査倍率の絶対値が大きくなる。従来技術では、副走査倍率の絶対値を大きくすると、共役関係のずれが大きくなってワッブルが大きくなり、画質が悪化するというトレードオフが生じていた。しかし、実施例1では副走査倍率の絶対値を大きくしてもワッブルが悪化しないようにできるため、副走査倍率の絶対値が大きいときに、より効果的である。実施例1での副走査倍率の絶対値を図9に示している。
【0036】
(実施例2、図10〜図14参照)
実施例2である光走査装置は、図10に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。実施例2において、実施例1と異なるのは、走査レンズ1,2がポリゴンミラー14から若干離れている点である。そして、本実施例2での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0037】
以下に示す表4、表5及び表6は、実施例2を数値的に示すコンストラクションデータである。位置関係は実施例1と異なるが、面の種類、配置順序、使用波長、ガラス及び樹脂の種類、ポリゴンミラー14の面数及びサイズは、いずれも実施例1と同じである。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
図11は、実施例2において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0042】
図12は、実施例2において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。図13は、実施例2におけるワッブル量を示している。そして、実施例2での副走査倍率の絶対値を図14に示している。実施例2では、実施例1よりも走査レンズ1,2がポリゴンミラー14から離れているので、その分、副走査倍率の絶対値は小さめになっている。
【0043】
(実施例3、図15〜図19参照)
実施例3である光走査装置は、図15に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ1,2とで構成されている。実施例3において、実施例1と異なるのは、走査レンズ1,2がポリゴンミラー14に若干近付いている点である。そして、本実施例3での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0044】
以下に示す表7、表8及び表9は、実施例3を数値的に示すコンストラクションデータである。位置関係は実施例1と異なるが、面の種類、配置順序、使用波長、ガラス及び樹脂の種類、ポリゴンミラー14の面数及びサイズは、いずれも実施例1と同じである。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
図16は、実施例3において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0049】
図17は、実施例3において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。図18は、実施例3におけるワッブル量を示している。そして、実施例3での副走査倍率の絶対値を図19に示している。実施例3では、実施例1よりも走査レンズ1,2がポリゴンミラー14に近づいているので、その分、副走査倍率の絶対値は大きめになっている。
【0050】
(実施例4、図20〜図25参照)
実施例4である光走査装置は、図20に示すように、基本的には前記実施例1と同様に、概略、光源であるレーザダイオード11、コリメータレンズ12、自由曲面レンズ13、複数の平面の反射面を有するポリゴンミラー14、走査レンズ2とで構成されている。実施例4において、実施例1と異なるのは、一つの走査レンズ2のみを配置した点である。そして、本実施例4での作用効果は実施例1と基本的に同様である。
【0051】
以下に示す表10、表11及び表12は、実施例4を数値的に示すコンストラクションデータである。実施例4において、光源側の自由曲面レンズ13はZ0次の項が0ではなく、主走査方向yに曲率を持っている。その一方で、ポリゴンミラー14後の自由曲面レンズ(走査レンズ2)はZ0次の項が0であり、z=0の断面内では主走査方向yに曲率を持たない。即ち、実施例4では、主走査方向yについて、光源側の自由曲面レンズ13で光束を収束光とし、感光体10上で集光するようにしており、ポリゴンミラー14後の自由曲面レンズ(走査レンズ2)は主走査方向yについて集光する作用を持っていない。また、使用波長、ガラスの種類は実施例1と同じである。樹脂は使用波長における屈折率が1.525であり、ポリゴンミラー14は内接円径10mmの12角形である。
【0052】
【表10】
【0053】
【表11】
【0054】
【表12】
【0055】
図21は、実施例4において、自由曲面レンズ13から射出された直後の光束内の波面の平均的な曲率を、副走査方向zについて計算した結果である。偏向角が大きくなるに従って曲率が小さくなっている。
【0056】
図22は、実施例4において、感光体10上でのデフォーカス量を計算したもので、像面湾曲を示している。前記実施例1〜3では、十分に収差補正されているので、主光線近傍で見た集光位置と光束内全体でみた集光位置に差が生じていない。しかし、実施例4では、光源側の自由曲面レンズ13で発生する収差によって集光位置をコントロールしている関係上、残存収差が大きめになっており、両者に差が生じている。そこで、実施例4について、主光線近傍で計算したデフォーカス量を図23に示す。
【0057】
図24は、実施例4におけるワッブル量を示している。そして、実施例4での副走査倍率の絶対値を図25に示している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、画像形成装置に搭載される光走査装置に有用であり、特に、被走査面での集光位置の安定化と面倒れ補正を両立できる点で優れている。
【符号の説明】
【0059】
1,2…走査レンズ
10…感光体
11…レーザダイオード(光源)
12…コリメータレンズ
13…自由曲面レンズ
14…ポリゴンミラー
14a…反射面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を放射する光源と、
複数の平面の反射面を有する偏向器と、
前記光源と前記偏向器との間の光路中に配置された第1の光学系と、
前記偏向器と被走査面との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において前記偏向器の反射面と前記被走査面とが副走査方向について共役となるように構成された第2の光学系と、
を備え、
前記第1の光学系から前記偏向器に向かう光束は、前記偏向器の走査方向に関して、光束幅が前記偏向器の各反射面より広く、
走査幅の端部に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲とでは、前記偏向器に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向について、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さくなっていること、
を特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記第2の光学系は主走査方向について屈折力を有していないこと、を特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第2の光学系は、主走査方向について、前記偏向器によって等角速度で偏向された光束を、被走査面上で等速に走査するように屈折させる特性を有していること、を特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第2の光学系は、副走査方向について、前記偏向器の各反射面と被走査面との間の、副走査方向に関する結像倍率の絶対値が2.5倍以上であること、を特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光走査装置。
【請求項1】
光束を放射する光源と、
複数の平面の反射面を有する偏向器と、
前記光源と前記偏向器との間の光路中に配置された第1の光学系と、
前記偏向器と被走査面との間の光路中に配置され、画像範囲中の各偏向角において前記偏向器の反射面と前記被走査面とが副走査方向について共役となるように構成された第2の光学系と、
を備え、
前記第1の光学系から前記偏向器に向かう光束は、前記偏向器の走査方向に関して、光束幅が前記偏向器の各反射面より広く、
走査幅の端部に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲と、走査幅の中央に相当する偏向角における前記第1の光学系の光束通過範囲とでは、前記偏向器に向かう光束の波面の光束範囲内での平均的な曲率が、副走査方向について、走査幅の端部に相当する偏向角のほうが小さくなっていること、
を特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記第2の光学系は主走査方向について屈折力を有していないこと、を特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第2の光学系は、主走査方向について、前記偏向器によって等角速度で偏向された光束を、被走査面上で等速に走査するように屈折させる特性を有していること、を特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第2の光学系は、副走査方向について、前記偏向器の各反射面と被走査面との間の、副走査方向に関する結像倍率の絶対値が2.5倍以上であること、を特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光走査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−13831(P2012−13831A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148850(P2010−148850)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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