説明

光透過性電磁波シールド材の製造方法、光透過性電磁波シールド材、およびディスプレイ用フィルタ

【課題】光透過性、電磁波シールド性、外観性、および視認性に優れ、高精度のメッシュパターンを有する光透過性電磁波シールド材を、簡易な方法で製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を、透明基板11上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基板11上にメッシュ状の前処理層12を形成する工程A1、及び、
前記前処理層12上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の金属導電層13を形成する工程A3、
を含む光透過性電磁波シールド材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面フィルタや、病院などの電磁波シールドを必要とする建築物の窓に用いられ得る貼着用シート等として有用な光透過性電磁波シールド材の製造方法、前記製造方法により製造された光透過性電磁波シールド材、および前記光透過性電磁波シールド材を含むディスプレイ用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器や通信機器等の普及にともない、これらの機器から発生する電磁波によりもたらされる人体への影響が懸念されている。また、携帯電話等の電磁波により精密機器の誤作動などを起こす場合もあり、電磁波は問題視されている。
【0003】
そこで、OA機器のPDPの前面フィルタとして、電磁波シールド性および光透過性を有する光透過性電磁波シールド材が開発され、実用に供されている。このような光透過性電磁波シールド材はまた、電磁波から精密機器を保護するために、病院や研究室等の精密機器設置場所の窓材としても利用されている。
【0004】
この光透過性電磁波シールド材では、光透過性と電磁波シールド性を両立することが必要である。そのために、光透過性電磁波シールド材には、例えば、(1)透明基板の一方の面に、金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュからなる電磁波シールド層が設けられたものが使用される。この導電性のメッシュの部分によって電磁波がシールドされ、開口部によって光の透過が確保される。
【0005】
この他にも、光透過性電磁波シールド材には、電子ディスプレイ用フィルタとして種々のものが提案されている。例えば、(2)金属銀を含む透明導電薄膜が設けられた透明基板、(3)透明基板上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明基板上に導電性粉末を含む導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が一般的に知られている。
【0006】
このような電磁波シールド層において、優れた光透過性と電磁波シールド性を両立させるには、メッシュ状の透明導電層を用い、極めて線幅を細くし、非常に微細なパターンとする必要がある。しかしながら、前記した従来の光透過性電磁波シールド材では、光透過性と電磁波シールド性を十分に両立させるのが困難であった。すなわち、(1)の光透過性電磁波シールド材では、細線化に限界があり、微細なメッシュパターンを得るのが困難なうえ、目ずれや目曲がりなどの繊維の配列が乱れる問題がある。(2)の光透過性電磁波シールド材の場合、電磁波シールド性が十分ではなく、金属特有の反射光沢が強いなどの問題がある。(3)の光透過性電磁波シールド材では、製造工程が長く、コストが高くなるなどの問題がある。また、(4)の光透過性電磁波シールド材では、十分な電磁波シールド性を得ることが困難であり、電磁波シールド性を向上させるためにパターンを厚くして導電性粉末の量を多くすると、光透過性が低下するなどの問題を有している。
【0007】
しかしながら、前記(4)の光透過性電磁波シールド材の製造は、例えば、金属粉末又はカーボン粉末などの導電性粉末と、樹脂とを含む導電性インクを用い、透明基板上に凹版オフセット印刷法により印刷パターンを形成する方法を用いて行われる。したがって、前記(4)の光透過性電磁波シールド材では、エッチング加工などを必要とせず、簡易な方法かつ低コストで製造できるという利点を有している。
【0008】
そこで、前記(4)の技術を改良したものとして、特許文献1および2では、導電性インクを凹版オフセット印刷法により透明基板上に印刷パターンを形成した後、さらに電磁波シールド性を向上させるために、無電解めっきまたは電解めっきなどにより、前記印刷パターン上に金属層を選択的に形成する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献3では、透明基体に、貴金属超微粒子触媒と反対の表面電荷をもった粒子に前記貴金属超微粒子触媒を担持させて作製した担持体を含有するペーストでパターン印刷を行い、このパターン印刷された貴金属超微粒子触媒上に無電解めっき処理を施して、パターン印刷部のみに導電性の金属層を形成させる光透過性電磁波シールド材の製造方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特許第3017987号明細書
【特許文献2】特許第3532146号明細書
【特許文献3】特許第3363083号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1〜3による光透過性電磁波シールド材では、導電性インクまたはペーストを精度よく印刷して微細なパターンを形成するのが困難であることから、光透過性と電磁波シールド性との両立に依然として改善の余地を残している。さらに、光透過性電磁波シールド材では、印刷による特有の問題であるスジやカブリが形成され、電子ディスプレイの外観性の低下だけでなく、視認性の低下をも招く問題があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、光透過性、電磁波シールド性、外観性、および視認性に優れ、高精度のメッシュパターンを有する光透過性電磁波シールド材を、簡易な方法で製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した問題は、従来の光透過性電磁波シールド材の製造に用いられる導電性インクまたはペーストでは、導電性粉末や貴金属超微粒子触媒を有する担持体の存在によって生じると考えられる。すなわち、これらの導電性粉末や貴金属超微粒子触媒を有する担持体は、接触抵抗を低くして均一な厚さを有する層を形成するために微細な粒子径を有する粉末が用いられるが、一方でこれらの粉末は凝集を招き易い。したがって、導電性インクまたはペーストにおいて、導電性粉末や貴金属超微粒子触媒を有する担持体が凝集することによって、上述した問題が生じると考えられる。
【0014】
したがって、本発明者等は、前記問題に着目して種々の検討を行った結果、従来の電磁波シールド材に用いられる導電性インクやペーストに代わって、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いて光透過性電磁波シールド材を製造することにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を、透明基板上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基板上にメッシュ状の前処理層を形成する工程、及び
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の金属導電層を形成する工程、
を含む光透過性電磁波シールド材の製造方法により前記課題を解決する。
【0016】
以下、本発明の光透過性電磁波シールド材の製造方法の好ましい態様を以下に列記する。
【0017】
(1)前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物が、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含む。
【0018】
(2)前記前処理剤が、下記式(I)
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合にはxは1であり、M1がAgである場合にはxは2であり、nは1〜20の整数である)で示される複合金属酸化物水化物を含む。
【0021】
(3)前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径が、0.01〜10μmである。
【0022】
(4)前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の含有量が、前記合成樹脂100質量部に対して10〜80質量部である。
【0023】
(5)前記合成樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である。これらによれば、透明基板および金属導電層との高い密着性を向上させることができる。
【0024】
(6)前記無電解めっき前処理剤が、無機微粒子をさらに含有する。これにより、無電解めっき前処理剤の印刷精度を向上することができる。
【0025】
(7)前記無電解めっき前処理剤が、チキソトロピック剤をさらに含有する。これによっても、無電解めっき前処理剤の印刷精度を向上することができる。
【0026】
(8)前記無電解めっき前処理剤が、黒色着色剤をさらに含有する。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる光透過性電磁波シールド材において透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
【0027】
(9)前記無電解めっき前処理剤を前記透明基板上にメッシュ状に印刷した後、80〜160℃で乾燥させる。これにより、微細なパターンを有する前処理層を形成することができる。
【0028】
(10)メッシュ状の金属導電層を形成する工程の前に、前記前処理層を還元処理する工程を実施する。
【0029】
(11)前記還元処理が、前記前処理層が形成された透明基板を、還元剤を含む溶液に浸漬させることにより行われる。
【0030】
(12)前記還元剤が、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンよりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0031】
(13)前記還元剤を含む溶液における前記還元剤の濃度が、0.01〜200g/Lである。
【0032】
(14)前記金属導電層は、前処理層との密着性、および、電磁波シールド性を向上させることができることから、銀、銅、またはアルミニウムを含む。
【0033】
(15)前記無電解めっきを行った後、さらに、電解めっきを行う。これにより、所望する厚さを有する金属導電層を得ることができる。
【0034】
(16)前記金属導電層を黒化処理し、前記金属導電層の表面の少なくとも一部に黒化処理層を形成する工程をさらに有する。これにより、前記金属導電層に防眩性を付与して視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の方法によれば、分散性の高い複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物を用いることで、これらがバインダとしての合成樹脂中に均一に高分散し、スジやカブリの発生もない微細なパターンを有する前処理層を形成することが可能となる。したがって、前記前処理層上に均一な厚さで精度よく形成された金属導電層を得ることができる。
【0036】
ゆえに本発明の方法によれば、光透過性、電磁波シールド性、外観性、および視認性に優れる光透過性電磁波シールド材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の製造方法の各工程を説明するための概略断面図の一例を図1に示す。
【0038】
本発明の方法では、まず、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を、透明基板11上にメッシュ状に印刷し、前記透明基板11上にメッシュ状の前処理層12を形成する(図1の矢印A1)。
【0039】
前記無電解めっき前処理剤は、無電解めっき触媒として複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物を用いる。複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、前処理剤中で安定性及び分散性に優れる。このような複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物を用いることにより、これらが均一に高分散且つ固着することによりスジやカブリの発生がなく、微細なパターンを有するメッシュ状の前処理層を精度よく形成することが可能となる。また、複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、安定性及びめっき金属の析出能力が高い。したがって、後工程の無電解めっきによって前記前処理層上に選択的にばらつきのない金属導電層を速やかに形成することができ、均一な厚さを有するメッシュ状の金属導電層を得ることが可能となる。さらに、前処理層における透明基板と金属導電層との密着性は合成樹脂によって向上され、これによって前処理層が剥離し難くなり、金属導電層をより精度よく形成することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の方法では、無電解めっき処理を行うことにより、前記メッシュ状の前処理層12上に金属導電層13を形成する(図1の矢印A3)。これにより、複合金属酸化物及び/又はその水化物を用いて形成された前処理層上に微細な金属粒子が濃密で実質的な連続皮膜として沈積形成され、前記前処理層上に選択的に接着し、微細なパターンを有する金属導電層を得ることが可能となる。
【0041】
このように、本発明によれば、簡易な方法によって、微細なパターンを有するメッシュ状の金属導電層を形成することができ、光透過性および電磁波シールド性の双方に優れる光透過性電磁波シールド材を提供することが可能となる。さらに、分散性に優れる複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物によって、粒子の凝集に基づくスジやカブリの形成もなく、外観性および視認性にも優れる光透過性電磁波シールド材を提供することが可能となる。
【0042】
以下に、本発明の電磁化シールド材の製造方法について、順を追ってより詳細に説明する。
【0043】
まず、本発明の方法では、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を、透明基板上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基板上にメッシュ状の前処理層を形成する工程を実施する。
【0044】
前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物としては、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含むものが好ましく用いられる。より好ましくは、Pd又はAgの金属元素と、Si、Ti又はZrの金属元素とを含むものが挙げられる。このような複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、高いめっき金属析出能力を有し、さらに前処理剤中での安定性及び分散性に優れた特性を有する。
【0045】
なかでも、前記特性が特に優れることから、下記式(I)
【0046】
【化2】

【0047】
(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合、xは1であり、M1がAgである場合、xは2であり、nは1〜20の整数である)で示される複合金属酸化物水化物を用いるのが特に好ましい。
【0048】
前記式(I)において、M1はPd又はAgであるが、Pdであるのが好ましい。また、M2はSi、Ti又はZrであるが、Tiであるのが好ましい。これにより、高いめっき析出能力を有する複合金属酸化物水水化物が得られる。
【0049】
前記複合金属酸化物水化物として具体的には、PdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などの水化物が挙げられる。
【0050】
上述した複合金属酸化物水化物は、それぞれの相当する金属塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、相当する金属酸化物の水和物等を原料とし、これらを加熱し、加水分解する方法などを用いることによって得られる。
【0051】
また、前記複合金属酸化物としては、M1X・M22(M1、M2及びXについては、上記式(I)と同義である)で示されるものが好ましく用いられる。
【0052】
前記無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.02〜1μmのものを用いるのが好ましい。これにより、凝集が抑制された高い分散性および触媒活性を有する複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物とすることができる。
【0053】
なお、本発明において、前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物を電子顕微鏡(好ましくは透過型電子顕微鏡)により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子の面積円相当径を求めた数平均値とする。
【0054】
前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは30〜60質量部とするのが好ましい。前記含有量が、10質量部未満では十分なめっき析出能力が得られない恐れがあり、80質量部を超えるとこれらの複合金属酸化物の凝集に基づくスジやカブリが形成する恐れがある。
【0055】
次に、前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記合成樹脂は、透明基板および金属導電層との密着性を確保できるものであれば、特に制限されない。前記合成樹脂として、好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。これらによれば、透明基板および金属導電層との高い密着性が得られ、前処理層上に金属導電層を精度よく形成することができる。また、これらの合成樹脂は、1種単独で用いられてもよいほか、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
前記アクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタアクリル酸アルキルエステル類のホモポリマーが使用できるが、特にポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートまたはポリブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0057】
前記ポリエステル樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレートなどを用いることができる。
【0058】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂 、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
【0059】
前記ポリウレタン樹脂として具体的には、ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応生成物からなるポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。前記ポリエステル系ウレタン樹脂の平均分子量は、一般的に1万〜50万である。
【0060】
前記ポリエステル系ポリオールとしては、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。なお、前記低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、グリセリン等のトリオール、ソルビトール等のヘキサオールが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、等が単独使用又は2種以上使用される。また、前記ラクトンには、ε−カプロラクトン等が使用される。
【0061】
そして、ポリエステル系ポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられ、これらが単独使用又は2種以上使用される。
【0062】
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等);脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等);脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等)のポリイソシアネート、或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体、又は多量体等が、単独使用又は2種以上使用される。
【0063】
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との使用比率は、特に限定されないが、通常はポリエステル系ポリオール:ポリイソシアネート化合物=1:0.01〜0.5程度(モル比)の範囲内において、使用する化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
【0064】
前記ポリエステル系ウレタン樹脂を使用する場合、無電解めっき前処理剤は、ポリイソシアネート硬化剤をさらに含むのが好ましい。前記ポリイソシアネート硬化剤としては、上述したポリイソシアネート化合物が用いられる。前記硬化剤の含有量は、前記ポリエステル系ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部、特に0.1〜1.0質量部とするのが好ましい。
【0065】
前記塩化ビニル樹脂は、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが良い。
【0066】
前記合成樹脂は、高い密着性が得られることから、活性水素を含有する官能基を分子末端に有するものが好ましく用いられる。前記活性水素を含有する官能基としては、活性水素を有していれば特に制限されず、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドラジド基、アミジノ基、ヒドロキシル基、ヒドロペルオキシ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、チオール基、チオホルミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、インダゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基である。特に好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基またはヒドロキシル基である。なお、これらの基はハロゲン原子や炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されていてもよい。なかでも、ヒドロキシル基、カルボニル基、およびアミノ基が好ましく挙げられる。
【0067】
前記無電解めっき前処理剤における合成樹脂の含有量は、無電解めっき前処理剤の全量に対して、10〜40質量%、特に10〜20質量%とするのが好ましい。これにより、高い密着性を有する前処理層を形成することが可能となる。
【0068】
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらに無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含有することにより、印刷精度を向上することができ、より精度の高い金属導電層を形成することが可能となる。前記無機微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミッックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト等が好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよい他、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
前記無機微粒子の平均粒子径は、0.01〜5μm、特に0.1〜3μmとするのが好ましい。前記無機微粒子の平均粒子径が、0.01μm未満であると無機微粒子の添加により所望するほどの印刷精度の向上が得られない恐れがあり、5μmを超えるとスジやカブリが発生し易くなる恐れがある。
【0070】
前記無電解めっき前処理剤における無機微粒子の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、特に5〜15質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0071】
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらにチキソトロピック剤を含有してもよい。前記チキソトロピック剤によれば、前処理剤の流動性を調整することにより印刷精度を向上させることができ、より精度の高い金属導電層を形成することが可能となる。チキソトロピック剤としては、従来公知のものであれば使用できる。好ましくは、アマイドワックス、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
【0072】
前記無電解めっき前処理剤におけるチキソトロピック剤の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0073】
本発明の無電解めっき前処理剤は、黒色着色剤をさらに含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる光透過性電磁波シールド材において透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
【0074】
前記黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
【0075】
前記無電解めっき前処理剤における黒色着色剤の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、防眩効果を有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。
【0076】
黒色着色剤を用いる場合、市販されている墨インキを用いて無電解めっき前処理剤を調製するのが好ましい。このような墨インキとしては、東洋インキ製造株式会社製 SS8911、十条ケミカル株式会社製 EXG−3590、大日精化工業株式会社製 NTハイラミック 795R墨などがある。例えば、東洋インキ製造株式会社製 SS8911の場合、溶剤中に、カーボンブラックの他、さらに塩化ビニルおよびアクリル樹脂などを含む。したがって、前記した市販品であれば、合成樹脂および黒色着色剤を含む無電解めっき前処理剤の調製を容易に行うことができる。
【0077】
また、前記無電解めっき前処理剤は、適当な溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
前記無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤などの各種添加剤をさらに含有させてもよい。
【0079】
本発明の方法において、前記前処理剤を塗布する透明基板としては、透明性および可とう性を備え、その後の処理に耐えるものであれば特に制限はない。透明基板の材質としては、例えば、ガラス、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PC、PMMAが好ましい。また、透明基板は、これらの材質からなるシート、フィルム、または板として用いられる。
【0080】
透明基板の厚みは特に限定されないが、光透過性電磁波シールド材の光透過性を維持するという観点からすると薄いほど好ましく、通常は、使用時の形態や必要とされる機械的強度に応じて0.05〜5mmの範囲で適宜、厚みが設定される。
【0081】
本発明の方法では、上述した無電解めっき前処理剤を、透明基板上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基板上にメッシュ状の前処理層を形成する。これにより、簡易な方法で所望する微細なパターンを有する前処理層を形成することができる。
【0082】
前記無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
【0083】
前記無電解めっき前処理剤を透明基板に印刷するには、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、静電印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転オフセット印刷などの印刷方法を用いることができる。特に、細線化のためにはグラビア印刷が好適である。グラビア印刷を用いる場合、印刷速度は5〜50m/分とするのがよい。
【0084】
また、前記前処理層は、転写方式によって印刷されてもよい。転写方式の場合は、例えば、前記透明基板とは別の任意の転写用基材シートに、無電解めっき前処理剤を前記と同様の印刷方法等によって印刷し、熱ラミネート法、ドライラミネート法、またはウエットラミネート法、押出ラミネート法等により、前記透明基板と貼り合わせた後に、前記転写用基材シートのみを剥離して、無電解めっき前処理剤を前記前処理層に転写する方法などを用いることができる。
【0085】
このように前記無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では、溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
【0086】
メッシュ状の前処理層におけるパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状などが挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。
【0087】
金属導電層に高い光透過性および電磁波シールド性を付与する観点からは、前処理層における開口部は、等間隔で規則的に配列されているのが望ましい。また、高い光透過性を有する金属導電層を形成するには、前記金属導電層において、開口部の形状が角形状、特に正方形または長方形とし、開口率を高くするのが望ましい。したがって、前記前処理層における開口部の大きさは、微小であるのが好ましい。例えば、開口部15の形状が正方形である前処理層12のパターンの一例を図2に示す。
【0088】
前記前処理層において、線幅(W1)1〜40μm、開口率50〜95%、好ましくは線幅(W1)5〜30μm、開口率60〜95%とするのがよい。なお、前処理層の開口率とは、当該前処理層(外枠がある場合はそれを除いた領域)の投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。また、前記前処理層において、線間隔(W2)は、50〜1000μm、好ましくは100〜400μmとするのがよい。このように本発明によれば、微細なバターンを有する前処理層を精度よく形成することができる。
【0089】
前記前処理層は、透明基板上の中央部では上述したメッシュ状のパターンを有し、前記透明基板上の中央部を除く周縁部に開口部がない額縁状のパターンを有するものであってもよい。このような構成を有する前記前処理層上に金属導電層を形成すれば、前記金属導電層において、額縁状のパターンを有する部位がメッシュ状のパターンを有する部位を保護することができる。
【0090】
前記前処理層の厚さは、0.01〜3μm、好ましくは0.1〜1μmとするのがよい。これにより、透明基板および金属導電層との高い密着性を確保することができる。さらに、前処理層の厚さを薄くすることができ、メッシュ状の金属導電層を形成しても光透過性電磁波シールド材を斜めから見た際の視認性を向上させることができるだけでなく、光透過性電磁波シールド材上にハードコート層等を形成する場合に平滑化が容易となる。
【0091】
本発明の方法では、上述の通りにして透明基板上にメッシュ状の前処理層を形成する工程の後、メッシュ状の金属導電層を形成する工程の前に、前記前処理層12に還元処理を行う工程(図1の矢印(A2))を実施するのが好ましい。還元処理することで、前記前処理層12に含まれる無電解めっき触媒である複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物に含まれる金属種を還元し、活性成分である金属種のみを超微粒子状で均一に析出させることができる。このように還元析出した金属種は、高い触媒活性を有し且つ安定であることから、前記前処理層12と前記透明基板11との密着性及び無電解めっきの析出速度を向上させ、さらには複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の使用量を少なくすることが可能となる。
【0092】
前記還元処理は、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物を還元して金属化できる方法であれば特に制限されない。具体的には、(i)前記前処理層が形成された透明基板を、還元剤を含む溶液を用いて処理する液相還元法、(ii)前記前処理層が形成された透明基板を、還元性ガスと接触させる気相還元法などが好ましく用いられる。
【0093】
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法として、具体的には、前記前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法、前記透明基板の前記前処理層が形成された面に還元剤を含む溶液をスプレーする方法などが用いられる。
【0094】
前記還元剤を含む溶液は、所定の還元剤を水などの溶媒に分散又は溶解させて調製されるものである。前記還元剤としては、特に制限されないが、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ブドウ糖、アミノボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、ヒドラジン、ジエチルアミンボラン、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、イミダゾール、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、硫酸ヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、ハイドロサルファイト(Na224:亜二チオン酸ナトリウムともいう)等が挙げられる。前記還元剤は、後工程で用いる無電解めっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いると、還元処理後の前記透明基板を水洗処理することなく無電解めっきを行うことができ、また無電解めっき浴の組成を変化させる恐れも少ない。
【0095】
前記還元剤としては、高い還元性が得られることから、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンを用いるのが好ましい。
【0096】
前記還元剤を含む溶液における還元剤の含有量は、0.01〜200g/L、特に0.1〜100g/Lとするのが好ましい。還元剤の濃度が低すぎる場合には十分に還元処理を行うのに所要時間が長くなる恐れがあり、還元剤の濃度が高すぎる場合には析出させためっき触媒が脱落する恐れがある。
【0097】
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法としては、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の高い還元性が得られることから、前記前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法を用いるのが好ましい。
【0098】
前記透明基板を浸漬させる場合、前記還元剤を含む溶液の温度は、20〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。また、浸漬時間は、少なくとも1分以上、好ましくは1〜10分程度とすればよい。
【0099】
一方、前記気相還元法を用いて還元処理を行う場合、前記還元性ガスとしては、水素ガス、ジボランガスなど、還元性を有する気体であれば特に制限されない。還元ガスを用いた還元処理時の反応温度および反応時間は、使用する還元ガスの種類などに応じて適宜決定すればよい。
【0100】
次に、本発明の方法では、上述の通りに形成した前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の金属導電層を形成する工程を実施する。無電解めっき処理を行うことにより、微細な金属粒子が濃密で実質的な連続皮膜として沈積形成されて、前処理層上のみに選択的に金属導電層を得ることが可能となる。
【0101】
めっき金属は、導電性を有してメッキ可能である金属であれば使用することができ、金属単体、合金、導電性金属酸化物等であってもよく、均一な金属薄膜又は一様に塗布された微細な微粒子等からなるものであってもよい。
【0102】
無電解めっきにおけるめっき金属としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、白金、銅、チタン、コバルト、鉛等を用いることができる。特に、高い電磁波シールド性が得られる金属導電層が得られることから、好ましくは、銀、銅又はアルミニウムが好ましく用いられる。これらのめっき金属を用いて形成される金属導電層は、前処理層との密着性に優れる他、光透過性と電磁波シールド性の両立に好適である。
【0103】
前記無電解めっきは、無電解めっき浴を用いて常法に従って常温または加温下で行うことができる。即ち、めっき金属塩、キレート剤、pH調整剤、還元剤などを基本組成として含むめっき液を建浴したものにめっき基材を浸漬して行うか、構成めっき液を2液以上と分けて添加方式でめっき処理を施すなど適宜選択すれば良い。
【0104】
無電解めっきとして一例を挙げると、Cuからなる金属導電層を形成する場合、硫酸銅等の水溶性銅塩1〜100g/L、特に5〜50g/L、ホルムアルデヒド等の還元剤0.5〜10g/L、特に1〜5g/L、EDTA等の錯化剤20〜100g/L、特に30〜70g/Lを含み、pH12〜13.5、特に12.5〜13に調整した溶液に、前処理層が形成された透明基板を50〜90℃、30秒〜60分浸漬する方法を採用することができる。
【0105】
無電解めっきをする際に、めっきされる基板を揺動、回転させたり、その近傍を空気撹拌させたりしてもよい。
【0106】
本発明の方法では、前記金属導電層が所望の厚さ、線幅を有するように、前処理層が形成された透明基板に、無電解めっきを行った後、さらに、電解めっきを行ってもよい。
【0107】
電解めっきにおけるめっき金属としては、無電解めっきにおいて上述したものと同様のものが用いられる。
【0108】
電解めっきは、特に制限されず、常法に従って行えばよい。例えば、メッシュ状の前処理層および金属導電層が形成された透明基板をめっき液に浸漬させ、前記透明基板を陰極とし、単体のめっき金属を陽極とし、めっき液に電流をかけて行えばよい。めっき液の組成は、特に制限されない。例えば、Cuからなる金属導電層を形成する場合には、硫酸銅水溶液などが用いられる。
【0109】
メッシュ状の金属導電層におけるパターンの形状には特に制限はなく、前処理層において上述したのと同様である。
【0110】
前記金属導電層において、線幅(W1)1〜40μm、開口率50〜95%、好ましくは線幅(W1)5〜30μm、開口率60〜95%とするのがよい。なお、金属導電層の開口率とは、当該金属導電層(外枠がある場合はそれを除いた領域)の投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。また、金属導電層において、線間隔(W2)は、50〜1000μm、好ましくは100〜400μmとするのがよい。このように本発明によれば、微細なパターンを有する前処理層上に金属導電層を精度よく形成することができる。
【0111】
また、前処理層の説明において記載した通り、金属導電層は、透明基板上の中央部に上述したメッシュ状のパターンを有し、前記透明基板上の中央部を除く周縁部に額縁状のパターンを有するものであってもよい。
【0112】
前記金属導電層の厚さは、1〜200μm、好ましくは2〜10μm程度とするのがよい。前記金属導電層の厚さが、薄すぎると十分な電磁波シールド性が得られない恐れがあり、厚すぎると光透過性電磁波シールド材の薄型化の観点から好ましくない。
【0113】
次に、本発明の方法では、図1に示すように、前記金属導電層13を黒化処理し、前記金属導電層13の表面の少なくとも一部に黒化処理層14を形成する工程(図1の矢印(A3))をさらに実施してもよい。
【0114】
前記黒化処理は、金属導電層面を粗化及び/又は黒化するものである。前記金属導電層の金属の酸化処理又は硫化処理によって行うことが好ましい。特に酸化処理は、より優れた防眩効果を得ることができ、さらに廃液処理の簡易性及び環境安全性の点からも好ましい。
【0115】
前記黒化処理として酸化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を使用することが可能であり、特に経済性の点から、次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を使用することが好ましい。
【0116】
前記黒化処理として硫化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には硫化カリウム、硫化バリウム及び硫化アンモニウム等の水溶液を使用することが可能であり、好ましくは、硫化カリウム及び硫化アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫化アンモニウムを使用することが好ましい。
【0117】
また、黒化処理としては、酸化処理又は硫化処理の他にも、黒色めっきにより行ってもよい。これにより密着性に優れ、十分に黒色化された黒化処理層を形成することができる。
【0118】
黒色めっきは、従来公知の方法に準じて行えばよく、電解めっきまたは無電解めっきのいずれを用いて行ってもよい。また、黒色めっきは、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、クロム、およびこれらの合金をめっきすることにより行われる。十分に黒色化するには、ニッケル、亜鉛、およびクロムよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む合金の黒色めっきにより行われるのが好ましい。
【0119】
例えば、ニッケルおよび亜鉛の合金からなる黒化処理層を形成するには、硫酸ニッケル50〜150g/L、硫酸ニッケルアンモン10〜50g/L、硫酸亜鉛20〜50g/L、チオシアン酸ナトリウム10〜30g/L及びナトリウムサッカリン0.05〜3g/Lを含有するめっき浴を用いることができる。その後、常法に従って電解めっきなどにより黒色めっきを行えばよい。
【0120】
黒化処理層の厚さは、特に制限されないが、0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μmとするのがよい。前記厚さが、0.01μm未満であると、光の防眩効果が充分でない恐れがあり、1μmを超えると、斜視した際の見かけ上の開口率が低下する恐れがある。
【0121】
上述した本発明の方法によれば、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いることにより、微細なパターンを有する金属導電層を精度よく作製することができ、光透過性、電磁波シールド性、外観性、および視認性に優れる光透過性電磁波シールド材を提供することが可能となる。
【0122】
前記光透過性電磁波シールド材は、透明基板、前記透明基板上に設けられたメッシュ状の前処理層、前記前処理層上に設けられたメッシュ状の金属導電層を有し、
前記前処理層が、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いて形成されたものである構成を有する。
【0123】
前記光透過性電磁波シールド材は、前記金属導電層に防眩性を付与するため、前記金属導電層の表面の少なくとも一部に黒化処理層を有していてもよい。
【0124】
前記光透過性電磁波シールド材は、所定の成分を含む無電解めっき前処理剤を用いることで前処理層が高い光透過性を有する。したがって、前処理層が形成されることによって光透過性電磁波シールド材の光透過性が低下することがなく、前記光透過性電磁波シールド材は、75%以上、特に80〜90%と高い全光線透過率を有する。
【0125】
なお、前記光透過性電磁波シールド材の全光線透過率の測定は、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機株式会社製)等を用いて、光透過性電磁波シールド材の厚み方向の全光線透過率を測定することにより行われる。
【0126】
なお、前記光透過性電磁波シールド材における各層についての詳細な説明は、本発明の製造方法において上述した通りであるため、ここでは省略する。
【0127】
本発明による光透過性電磁波シールド材は、光透過性が要求される用途、例えば電磁波を発生する各種電気機器のLCD、PDP、CRT等のディスプレイ装置のディスプレイ面、又は、施設や家屋の透明ガラス面や透明パネル面に好適に適用される。前記光透過性電磁波シールド材は、高い光透過性および電磁波シールド性を有しているので、前述したディスプレイ装置のディスプレイ用フィルタに好適に用いられる。
【0128】
本発明のディスプレイ用フィルタは、特に制限されないが、前記方法によって製造された光透過性電磁波シールド材を、ガラス板等の透明基板に接着剤層などを介して貼り合わせる等することにより得られる。このようなディスプレイ用フィルタでは、メッシュ状の前処理層および金属導電層の開口部は、接着剤層により埋められる。
【0129】
また、前記電子ディスプレイ用フィルタは、透明基板、電磁波シールド層、および接着剤層の他、さらに反射防止層、色調補正フィルタ層、近赤外線カット層などを有していてもよい。これらの各層の積層の順序は、目的に応じて決定される。また、ディスプレイ用フィルタには、電磁波シールド機能を高めるために、PDP本体のアース電極と接続するための電極を設けてもよい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0131】
(実施例1)
1.前処理剤の調製
複合金属酸化物水化物粒子(PdTiO3・6H2O、平均粒子径0.5μm)を、2液硬化型ポリエステル系ウレタン樹脂溶液に、ポリエステル系ウレタン樹脂100質量部に対して複合金属酸化物水化物粒子を30質量部として配合して前処理剤を調製した。
【0132】
なお、前記2液硬化型ポリエステル系ウレタン樹脂溶液は、ポリエステル樹脂(東洋モートン株式会社製 AD−335A、Tg:10℃)と脂環族イソシアネート(東洋モートン株式会社製 CAT−10L)とを質量比で100:0.5含み、固形分濃度が10質量%のものを用いた。
【0133】
2.メッシュ状の前処理層の作製
次に、前記前処理剤を、PETフィルム(厚さ100μm)上にグラビア印刷によってパターニングした後、120℃、5分間乾燥させることにより、前記PETフィルム上にメッシュ状の前処理層を形成した。なお、前記前処理層は、線幅を20μm、線間隔を254μm、開口率を85%、厚さを0.5μmとした。
【0134】
3.前処理層の還元処理
次に、上記で得られた前処理層が形成されたPETフィルムを、60℃の次亜リン酸ナトリウム溶液(NaH2PO2濃度:30g/L)に、3分間浸漬させ、前処理層の還元処理を行った。
【0135】
4.金属導電層の作製
上記で還元処理された前処理層が形成されたPETフィルムを、無電解銅めっき液(メルテックス株式会社製 メルプレートCU−5100)に浸漬し、50℃、20分間で、無電解銅めっき処理して、メッシュ状の金属導電層を得た。前記金属導電層において、線幅を28μm、線間隔を227μm、開口率を79%、厚さを4μmとした。
【0136】
5.金属導電層の黒化処理
さらに、前記で得られた金属導電層が形成されたPETフィルムに対して、下記組成の黒化処理を行った。
【0137】
黒化処理液組成(水溶液)
亜塩素酸ナトリウム: 10質量%
水酸化ナトリウム: 4質量%
黒化処理条件
浴温: 約60℃
時間: 5分間
【0138】
この黒化処理により、金属導電層の表面が黒化処理された光透過性電磁波シールド材を得た。得られた光透過性電磁波シールド材の表面の黒化処理された厚みは、平均0.5μmであった。
【0139】
(実施例2)
実施例1と同様にして還元処理された前処理層が形成されたPETフィルムを作製し、これを無電解銅めっき液(メルテックス株式会社製 メルプレートCU−5100)に浸漬し、50℃、5分間で、無電解銅めっき処理を行った後、さらに、電気めっき用の硫酸銅水溶液に浸漬させ、整流器により発生させた2A/dm2の電流を5分間かけることによりメッシュ状の金属導電層を得た。前記金属導電層において、線幅を28μm、線間隔を227μm、開口率を79%、厚さを4μmとした。
【0140】
次に、実施例1と同様にして、前記で作製した金属導電層を黒化処理し、金属導電層の表面が黒化処理された光透過性電磁波シールド材を得た。
【0141】
(実施例3)
実施例1と同様にして還元処理された前処理層が形成されたPETフィルムを、無電解ニッケルめっき−ホウ素合金めっき液(奥野製薬工業株式会社製 トップケミアロイB−1)に浸漬し、60℃、5分間で、無電解めっき処理を行った後、さらに、電解めっき用の硫酸銅水溶液に浸漬させ、整流器により発生させた2A/dm2の電流を5分間かけることによりメッシュ状の金属導電層を得た。前記金属導電層において、線幅を28μm、線間隔を227μm、開口率を79%、厚さを4μmとした。
【0142】
次に、実施例1と同様にして、前記で作製した金属導電層を黒化処理し、金属導電層の表面が黒化処理された光透過性電磁波シールド材を得た。
【0143】
(評価)
前記実施例1〜3において、前処理剤をスジ、カブリなどなく印刷することができ、さらに、前処理層は無電解めっき中に剥離することもなかった。したがって、前記実施例1〜3において得られた各光透過性電磁波シールド材は、外観および歩留まりが非常に優れていた。
【0144】
さらに、光透過性電磁波シールド材の金属導電層が形成された面にセロファンテープを貼り付け、剥がすことにより、透明基板、前処理層、および金属導電層の密着性を評価したが、いずれの光透過性電磁波シールド材もこれらの層が剥離しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本願発明による光透過性電磁波シールド材の製造方法の各工程を、断面図を用いて説明した図である。
【図2】前処理層のパターンの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0146】
11…透明基板、
12、22…メッシュ状の前処理層、
13…メッシュ状の金属導電層、
14…黒化処理層、
25…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を、透明基板上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基板上にメッシュ状の前処理層を形成する工程、及び、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の金属導電層を形成する工程、
を含む光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項2】
前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物が、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含む請求項1に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項3】
前記複合金属酸化物水化物が、下記式(I)
【化1】

(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合にはxは1であり、M1がAgである場合にはxは2であり、nは1〜20の整数である)で示される請求項1または2に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項4】
前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径が、0.01〜10μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項5】
前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の含有量が、前記合成樹脂100質量部に対して10〜80質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項6】
前記合成樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項7】
前記合成樹脂が、活性水素を含有する官能基を分子末端に有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項8】
前記活性水素を含有する官能基が、ヒドロキシル基、カルボニル基、およびアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項9】
前記合成樹脂の含有量が、前記無電解めっき前処理剤の全量に対して10〜40質量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項10】
前記無電解めっき前処理剤が、無機微粒子をさらに含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項11】
前記無機微粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミッックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、およびスメクタイトよりなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である請求項10に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項12】
前記無電解めっき前処理剤が、チキソトロピック剤をさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項13】
前記無電解めっき前処理剤が、黒色着色剤をさらに含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項14】
前記黒色着色剤が、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項13に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項15】
前記印刷が、グラビア印刷により行われる請求項1〜14のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項16】
前記無電解めっき前処理剤を前記透明基板上にメッシュ状に印刷した後、80〜160℃で乾燥させる請求項1〜15のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項17】
前記前処理層は、線幅が1〜40μmであり、開口率が50〜95%であり、線間隔が50〜1000μmである請求項1〜16のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項18】
前記前処理層の厚さが、0.01〜3μmである請求項1〜17のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項19】
前記メッシュ状の金属導電層を形成する工程の前に、前記前処理層を還元処理する工程を有する請求項1〜18のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項20】
前記還元処理を、前記前処理層が形成された透明基板を、還元剤を含む溶液に浸漬させることにより行う請求項19に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項21】
前記還元剤が、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項20に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項22】
前記還元剤を含む溶液における前記還元剤の濃度が、0.01〜200g/Lである請求項20または21に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項23】
前記無電解めっきによるめっき金属が、銀、銅、またはアルミニウムである請求項1〜22のいずれかに記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項24】
前記無電解めっきを行った後、さらに電解めっきを行う請求項1〜23のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項25】
前記金属導電層を黒化処理し、前記金属導電層の表面の少なくとも一部に黒化処理層を形成する工程をさらに有する請求項1〜24のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項26】
前記黒化処理が、前記金属導電層を酸化処理または硫化処理することによって行われる請求項25に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項27】
前記黒化処理が、ニッケル、亜鉛、およびクロムよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む合金の黒色めっきによって行われる請求項25または26に記載の光透過性電磁波シールド材の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された光透過性電磁波シールド材。
【請求項29】
透明基板、前記透明基板上に設けられたメッシュ状の前処理層、前記前処理層上に設けられたメッシュ状の金属導電層を有し、
前記前処理層が、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いて形成されたものである光透過性電磁波シールド材。
【請求項30】
前記金属導電層の表面の少なくとも一部に黒化処理層を有する請求項29に記載の光透過性電磁波シールド材。
【請求項31】
請求項28〜30のいずれか1項に記載の光透過性電磁波シールド材を有するディスプレイ用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−85305(P2008−85305A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191915(P2007−191915)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】