説明

光通信装置および光通信システム、電子機器

【課題】クロストークを防止でき、部品点数の増加を回避でき、小型化を図れ、光の結合効率の低下を回避できる安価な光通信装置および光通信システムを提供する。
【解決手段】この光通信システムが備える第1の光通信装置11は、受光素子としてSi製のPINフォトダイオード22を有し、このSi製PINフォトダイオード22は電極間方向のP領域52の厚さL1とI領域53の厚さL2との和Lを薄くして、赤外領域以上の長波長光では動作しないものとなっている。よって、第1の光通信装置11では、レーザダイオード21からの光信号を赤外領域以上の長波長光とすることで、この長波長光が光ファイバ13の端部で反射してSi製PINフォトダイオード22に入射してもSi製PINフォトダイオード22が動作しないので、クロストークの問題を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光通信装置および光通信システムに関し、たとえば単芯の光伝送路により、速度の異なる双方向光通信を行う光通信システムに関し、一例として、デジタルTV,デジタルBSチューナ,CSチューナ,DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)プレーヤー,DVDレコーダー,ハイビジョンレコーダー,HDDレコーダー,スーパーオーディオCDプレーヤー,AVアンプ,オーディオ機器,パーソナルコンピュータ,パソコン周辺機器,携帯電話,PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント),ゲーム機等の電子機器に使用される光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信の方式には、送信用と受信用にそれぞれ光伝送路を使用する二芯通信方式と、一つの光伝送路により双方向の通信を行う一芯通信方式がある。一芯通信方式は、二芯通信方式と比べて、伝送路のコストを抑えることができ、その敷設性も優れるという長所があるものの、一方でクロストークという問題がある。ここで、問題となるクロストークとは、発光素子から送信された光信号が直接もしくはファイバ等の端面における反射により、そのまま上記発光素子と同端の受光素子に混入してしまうことである。
【0003】
このクロストークの問題を回避するために、ファイバ面における光受信位置と光送信位置とをずらして、送受信経路を空間的に分割する構造が提案されている(特許文献1(特開平11−3523674号公報)参照)。
【0004】
しかし、この構造では光学部品の数が増えて装置の小型化は困難になり、実装精度も高いものが必要とされる。
【0005】
一方、ファイバと受発光部の間にY分岐パターンの伝送路を配置し、送信経路と受信経路を分割する構造も提案されている(特許文献2(特開2002−139659号公報)参照)。
【0006】
しかし、この構造では、上記Y分岐パターンの伝送路で分岐した受信経路だけでなく送信経路にも受信光が伝播するので、結合効率が大幅に低下してしまう。
【0007】
そこで、ファイバと受発光部との間にプリズムを配置し、結合経路を、送信部と結合する送信経路と受信部と結合する受信経路とに分割する構造が提案されている(特許文献3(特開2005−84098号公報)参照)。
【0008】
しかし、この構造では小型化は難しく、また受信経路はファイバからの出射光の一部にしか対応しないことから、結合効率が大幅に低下してしまう問題がある。
【特許文献1】特開平11−3523674号公報
【特許文献2】特開2002−139659号公報
【特許文献3】特開2005−84098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、クロストークを防止でき、部品点数の増加を回避でき、小型化を図れ、光の結合効率の低下を回避できる安価な光通信装置および光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の光通信装置は、光伝送路の一端からの光信号を受信する受光素子と、
上記光伝送路の一端へ赤外領域以上の波長の光信号を送信する発光素子としてのレーザダイオードとを有し、
上記受光素子は、
赤外領域の波長以上の波長の光を受光しても動作しないように、P領域の電極間方向の厚さとI領域の電極間方向の厚さとの和を設定したSi製のPINフォトダイオードであることを特徴としている。
【0011】
この発明の光通信装置は、受光素子として、Si製のPINフォトダイオードを有し、このSi製PINフォトダイオードは電極間方向のP領域の厚さとI領域の厚さを薄くして、750nm以上の赤外領域以上の長波長光では動作しないものとなっている。これにより、この光通信装置では、発光素子であるレーザダイオードからの赤外領域以上の長波長光である光信号が光伝送路の端部で反射して受光素子であるSi製PINフォトダイオードに入射したときに、このSi製PINフォトダイオードが動作しないようにすることができる。よって、クロストークの問題を回避することが可能となる。
【0012】
また、一実施形態の光通信システムは、単芯の光伝送路と、
上記光伝送路の一端に接続された第1の光通信装置と、
上記光伝送路の他端に接続された第2の光通信装置とを備え、
請求項1に記載の光通信装置を上記第1の光通信装置とし、
上記第1の光通信装置が有する上記レーザダイオードは、上記光伝送路の一端へ1Gbps以上の高速信号を送信する発光素子であり、
上記第2の光通信装置は、
上記光伝送路の他端からの光信号を受信する受光素子と、
上記光伝送路の他端へ500Mbps以下の低速信号を送信する発光素子としての発光ダイオードとを有する。
【0013】
この実施形態の光通信システムは、上記第1の光通信装置による高速信号の生成にはレーザダイオードを使用し、第2の光通信装置による低速信号の生成には発光ダイオードを使用している。よって、双方向通信のうちでも特に一方向で高速信号が求められる用途に適する。また、上記第2の光通信装置では、発光素子として発光ダイオードを使用しているので、APC(オートパワーコントロール)等のフィードバック用の回路やデバイスを必要とせず、設計の簡単化、低コスト化が可能となる。さらに、上記第1の光通信装置は、受光素子として、Si製のPINフォトダイオードを有し、このSi製PINフォトダイオードは電極間方向のP領域の厚さとI領域の厚さを薄くして、750nm以上の赤外領域以上の長波長光では動作しないものとなっている。これにより、第1の光通信装置では、発光素子であるレーザダイオードからの光信号を赤外領域以上の長波長光とすることで、この長波長光が光伝送路の端部で反射して受光素子であるSi製PINフォトダイオードに入射したときに、このSi製PINフォトダイオードが動作しないようにすることができる。よって、クロストークの問題を回避することが可能となる。
【0014】
また、一実施形態の光通信システムでは、上記第2の光通信装置は、受光素子としてのGaAs製のフォトダイオードを有する。
【0015】
この実施形態によれば、上記第2の光通信装置で高速信号を受信する受光素子はGaAs製のフォトダイオードとなっている。このため高速信号を受信する場合でもバイアス電圧を低く抑えることが可能となる。さらに、この第2の光通信装置が発光素子として有する発光ダイオードが650nm等の可視光を発光する場合、この波長では上記受光素子であるGaAs製のフォトダイオードは動作しないので、クロストークの問題も回避することが可能である。
【0016】
また、一実施形態の光通信システムでは、上記第1の光通信装置が有する上記レーザダイオードとSi製PINダイオードとは隣接して配置されている。
【0017】
この実施形態では、上記レーザダイオードと上記Si製のフォトダイオードとを隣接して配置することで、クロストークを回避しつつ第1の光通信装置の小型化を容易に実現可能となる。
【0018】
また、一実施形態の光通信システムでは、上記第2の光通信装置が有する上記発光ダイオードと受光素子とは隣接して配置されている。
【0019】
この実施形態では、上記第2の光通信装置の小型化を実現可能となる。
【0020】
また、一実施形態の光通信システムでは、上記光伝送路は光ファイバである。
【0021】
この実施形態では、光ファイバによる光伝送路によって、低損失で品質の高い伝送路を安価に実現可能となる。
【0022】
また、一実施形態の光通信システムでは、上記光伝送路は光導波路である。
【0023】
この実施形態では、光導波路による光伝送路によって、光伝送路の集積化を図ることが可能になる。また、光伝送路をフレキシブル基板等と一体に作製することもでき電気信号を送ることも可能になる。
【発明の効果】
【0024】
この発明の光通信装置によれば、受光素子として、Si製のPINフォトダイオードを有し、このSi製PINフォトダイオードは電極間方向のP領域の厚さとI領域の厚さを薄くして、750nm以上の赤外領域以上の長波長光では動作しないものとなっている。これにより、この光通信装置では、発光素子であるレーザダイオードからの赤外領域以上の長波長光である光信号が光伝送路の端部で反射して受光素子であるSi製PINフォトダイオードに入射したときに、このSi製PINフォトダイオードが動作しないようにすることができる。よって、クロストークの問題を回避することが可能となる。これにより、この発明の光通信装置により、単芯の双方向光通信において、クロストークの問題を解決し小型の光通信システムを小型でかつ安価にて提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の光通信システムの第1実施形態を示す。この第1実施形態の光通信システムは、第1の光通信装置11と第2の光通信装置12と単芯の光伝送路としての光ファイバ13を備える。この光ファイバ13の一端に第1の光通信装置11が接続され、上記光ファイバ13の他端に第2の光通信装置12が接続されている。
【0027】
上記第1の光通信装置11は、発光素子としてのレーザダイオード21と受光素子としてのSi製のPIN型フォトダイオード22とを内蔵している。このレーザダイオード21とPIN型フォトダイオード22とは隣接して配置されている。また、上記Si製PIN型フォトダイオード22は、受信部32に接続されている。この受信部32は、上記Si製PIN型フォトダイオード22からの受光信号が入力され、この受光信号に基づいて信号処理を行う。また、上記レーザダイオード21は、送信部31に接続されている。この送信部31は、上記レーザダイオード21に送信信号を出力する。そして、このレーザダイオード21は、1Gbps以上の高速信号を光ファイバ13の一端へ送信する。
【0028】
この第1の光通信装置11が有する発光素子としてのレーザダイオード21には、ファブリペロ型レーザダイオード、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)、RC−LED(Resonant Cavity Light Emitting Diode)等が使用される。また、上記レーザダイオード21の発光波長は750nm帯以上のものが価格上好ましい。そして、この第1の光通信装置11では、上記レーザダイオード21の発光波長を750nm帯以上とした。また、上記受光素子としてのSi製のPIN型フォトダイオード22は、図6に示すように、電極51,52間方向のP領域52の厚さL1と電極間方向のI領域53の厚さL2とを薄くして厚さL1とL2との和L=(L1+L2)を薄くして、750nm以上の赤外領域の波長の光を受光しても動作しないようにした。なお、図6において、符号54はN領域を示している。
【0029】
これにより、この第1の光通信装置11では、レーザダイオード21の750nm以上の長波長光が光ファイバ13の端面で反射してSi製PIN型フォトダイオード22に入射してもSi製PIN型フォトダイオード22は動作しない。よって、この第1の光通信装置11では、クロストークの問題を回避することができる。
【0030】
ここで、図7に、上記Si製PIN型フォトダイオード22のP領域52の電極51,52間方向の厚さL1とI領域53の電極間方向の厚さL2との和Lと、赤外領域での感度との関係を示す。P領域52の厚さL1とI領域53の厚さL2との和Lを小さくすることで、赤外領域での感度を低下させることができることが分かる。すなわち、一般のSi製のPINフォトダイオードは、850nm付近に強い感度をもつが、P領域とI領域の深さ方向の厚さを小さくすると長波長側の感度が小さくなる。
【0031】
そして、この実施形態では、第1の光通信装置11が受光素子として有するSi製PIN型フォトダイオード22は、赤外領域での感度が十分に小さく調整されて赤外領域では動作しなくなっている。このため、レーザダイオード21からの光が雑音になることはない。
【0032】
一方、上記第2の光通信装置12は、発光素子としての発光ダイオード23と受光素子としてのGaAsフォトダイオード24を内蔵している。この発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24とは隣接して配置されている。また、上記GaAsフォトダイオード24は受信部34に接続されている。この受信部34は、上記GaAsフォトダイオード24からの受光信号が入力され、この受光信号に基づいて信号処理を行う。また、上記発光ダイオード23は送信部33に接続されている。この送信部33は、発光ダイオード23に送信信号を出力する。
【0033】
この第2の光通信装置12が有する発光ダイオード23は、発光波長が650nm帯のものが価格上望ましい。また、この第2の光通信装置12では、発光波長が650nm帯の発光ダイオード23を有することで、GaAsフォトダイオード24は650nm帯の波長の光信号では動作しないので、発光ダイオード23からの迷光を雑音とすることなく動作することができる。また、この第2の光通信装置12では、第1の光通信装置11からの高速信号を受信するのにGaAsフォトダイオード24を使用しているので、バイアス電圧を抑えることができる。
【0034】
次に、図2に、この第1実施形態における光ファイバ13と、第1の光通信装置11のレーザダイオード21およびSi製PIN型フォトダイオード22との光結合構造を示す。図2に示すように、レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22とは隣接して配置されているので、第1の光通信装置11を小型化することが可能となる。なお、図2において、21aはレーザダイオード21の発光部であり、22aはSi製PIN型フォトダイオード22の受光部である。
【0035】
また、この実施形態では、光ファイバ13をレーザダイオード21およびSi製PIN型フォトダイオード22に直接結合で光結合させることができるように、光ファイバ13とレーザダイオード21およびSi製PIN型フォトダイオード22との距離を近くした。
【0036】
また、上記レーザダイオード21およびSi製PIN型フォトダイオード22は、Agペースト等の導電性樹脂によって基板41上に形成された電極にダイボンドされている。また、上記レーザダイオード21の電極およびSi製PIN型フォトダイオード22の電極は、基板41上に形成された電極との間を、Au線等のワイヤー42によるボンディングで電気的に接続されている。
【0037】
また、光ファイバ13とレーザダイオード21,Si製PIN型フォトダイオード22との光結合部はトランスファーモールドで成型された樹脂部42にて封止されている。この樹脂部42は、例えばエポキシ樹脂などを採用し、波長が異なる送信信号と受信信号の両方の信号の波長に対して透過率の高い樹脂材料を採用することが望ましい。
【0038】
樹脂部42を覆うように光ファイバ固定用凸部44が形成され、この固定用凸部44の嵌合内周面44Aに光ファイバ13の一端13Cが嵌合されて、光ファイバ13と上記レーザダイオード21,Si製PIN型フォトダイオード22との間の相対的位置が位置決めされている。なお、この光ファイバ固定用凸部44はトランスファーモールドにより成型される。
【0039】
なお、図2では、第1の光通信装置11におけるレーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22と光ファイバ13の一端13Cとの光結合構造を示したが、第2の光通信装置12における発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24と光ファイバ13の他端との光結合構造も、図2の光結合構造と同様である。すなわち、図2において、レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22を発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24に置き換えることで、第2の光通信装置12における光結合構造となる。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、図3に、この発明の光通信システムの第2実施形態の光結合構造を示す。この第2実施形態は、図3に示す光結合構造だけが、前述の第1実施形態と異なるので、前述の第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付して、前述の第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0041】
図3に示すように、この第2実施形態では、光ファイバ13とレーザダイオード21,Si製PIN型フォトダイオード22とをレンズ45,46を使用して光結合している。このレンズ45,46は上記樹脂部42に形成されている。レンズ45は、レーザダイオード21の出射光を集光して光ファイバ13の一端13Cへ入射させる。一方、レンズ46は、光ファイバ13の一端13Cからの入射光を集光してSi製PIN型フォトダイオード22の受光部22aに入射させる。
【0042】
この図3の光結合構造は、レンズ45,46を備えたことで、図2に示すような直接結合では必要な光結合効率を確保できない場合にも、必要な光結合効率を確保できる。
【0043】
なお、図3では、第1の光通信装置11におけるレーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22と光ファイバ13の一端13Cとの光結合構造を示したが、第2の光通信装置12における発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24と光ファイバ13の他端との光結合構造も、図3の光結合構造と同様である。すなわち、図3において、レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22を発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24に置き換えることで、第2の光通信装置12における光結合構造となる。
【0044】
(第3の実施の形態)
次に、図4に、この発明の光通信システムの第3実施形態の光結合構造を示す。この第3実施形態は、図4に示す光結合構造だけが、前述の第1実施形態と異なるので、前述の第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付して、前述の第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0045】
図4に示すように、この第3実施形態では、光ファイバ13とレーザダイオード21,Si製PIN型フォトダイオード22とを1つのレンズ47を使用して光結合している。このレンズ47は上記樹脂部42に形成されている。レンズ47は、レーザダイオード21の出射光を集光して光ファイバ13の一端13Cへ入射させると共に、光ファイバ13からの出射光を集光してSi製PIN型フォトダイオード22の受光部22aに入射させる。
【0046】
上記レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22とを隣接させ近接させていることで、1つのレンズ47で光結合構造を実現している。このため、光結合領域を小さくでき、部品点数を削減できる。ただし、レーザダイオード21の出射光による送信信号とSi製PIN型フォトダイオード22への入射光による受信信号との波長が異なる。したがって、レンズ47のレンズ効果は出射光と入射光とで変わる点を考慮して出射光と入射光に対するレンズ効果を設計する必要がある。
【0047】
なお、図4では、第1の光通信装置11におけるレーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22と光ファイバ13の一端13Cとの光結合構造を示したが、第2の光通信装置12における発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24と光ファイバ13の他端との光結合構造も、図4の光結合構造と同様である。すなわち、図4において、レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22を発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24に置き換えることで、第2の光通信装置12における光結合構造となる。
【0048】
(第4の実施の形態)
次に、図5に、この発明の光通信システムの第4実施形態の光結合構造を示す。この第4実施形態は、図5に示す光結合構造だけが、前述の第1実施形態と異なるので、前述の第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付して、前述の第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0049】
図5に示すように、この第4実施形態では、光ファイバ13とレーザダイオード21,Si製PIN型フォトダイオード22とを、樹脂部48に一体のレンズ構造48A,48Bを使用して光結合している。このレンズ構造48Aは、レーザダイオード21の出射光を集光して光ファイバ13の一端13Cへ入射させる。一方、レンズ構造48Bは、光ファイバ13の一端13Cからの入射光を集光してSi製PIN型フォトダイオード22の受光部22aに入射させる。
【0050】
この第4実施形態によれば、レンズ構造つきの樹脂部48にて光素子を封止しており、部品点数の低減させている。また、樹脂部48はトランスファーモールドで成型することができる。
【0051】
なお、図5では、第1の光通信装置11におけるレーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22と光ファイバ13の一端13Cとの光結合構造を示したが、第2の光通信装置12における発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24と光ファイバ13の他端との光結合構造も、図5の光結合構造と同様である。すなわち、図5において、レーザダイオード21とSi製PIN型フォトダイオード22を発光ダイオード23とGaAsフォトダイオード24に置き換えることで、第2の光通信装置12における光結合構造となる。
【0052】
尚、上記第1〜第4実施形態では、光伝送路として光ファイバ13を使用したが、伝送距離が長い場合はシリカ製の光ファイバ、伝送距離が短い場合はプラスチック光ファイバやプラスチッククラッドファイバの他に光導波路を使用することもできる。この光導波路としてはエポキシやアクリル、ポリイミド等の有機材料を使用して作製したものでもよい。光導波路による光伝送路によって、光伝送路の集積化を図ることが可能になる。また、光伝送路をフレキシブル基板等と一体に作製することもでき電気信号を送ることも可能になる。
【0053】
また、上記第1〜第4実施形態における記述は本発明に係る光通信システムの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。上記第1〜第4実施の形態における細部構成及び詳細な動作等に関しては、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の光通信システムの第1実施形態を示す図である。
【図2】上記第1実施形態の光結合構造を示す断面図である。
【図3】この発明の光通信システムの第2実施形態の光結合構造を示す断面図である。
【図4】この発明の光通信システムの第3実施形態の光結合構造を示す断面図である。
【図5】この発明の光通信システムの第4実施形態の光結合構造を示す断面図である。
【図6】上記第1〜第4実施形態の第1の光通信装置11が有するSi製PIN型フォトダイオード22の構造を示す断面図である。
【図7】上記Si製PIN型フォトダイオード22のP領域とI領域の厚さの和Lと赤外領域の感度との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
1 光通信システム
11 第1の光通信装置
12 第2の光通信装置
13 光ファイバ
13a コア
13b クラッド
21 レーザダイオード
21a 発光部
22 Si製PIN型フォトダイオード
22a 受光部
23 発光ダイオード
24 GaAsフォトダイオード
31 送信部
32 受信部
33 送信部
34 受信部
41 基板
42 樹脂部
43 ワイヤー
44 光ファイバ固定用凸部
45〜47 レンズ
48 樹脂部
51 電極
52 P領域
53 I領域
54 N領域
55 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路の一端からの光信号を受信する受光素子と、
上記光伝送路の一端へ赤外領域以上の波長の光信号を送信する発光素子としてのレーザダイオードとを有し、
上記受光素子は、
赤外領域の波長以上の波長の光を受光しても動作しないように、P領域の電極間方向の厚さとI領域の電極間方向の厚さとの和を設定したSi製のPINフォトダイオードであることを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
単芯の光伝送路と、
上記光伝送路の一端に接続された第1の光通信装置と、
上記光伝送路の他端に接続された第2の光通信装置とを備え、
請求項1に記載の光通信装置を上記第1の光通信装置とし、
上記第1の光通信装置が有するレーザダイオードは、上記光伝送路の一端へ1Gbps以上の高速信号を送信する発光素子であり、
上記第2の光通信装置は、
上記光伝送路の他端からの光信号を受信する受光素子と、
上記光伝送路の他端へ500Mbps以下の低速信号を送信する発光素子としての発光ダイオードとを有することを特徴とする光通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の光通信システムにおいて、
上記第2の光通信装置は、
受光素子としてのGaAs製のフォトダイオードを有することを特徴とする光通信システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光通信システムにおいて、
上記第1の光通信装置が有する上記レーザダイオードとSi製PINダイオードとは隣接して配置されていることを特徴とする光通信システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の光通信システムにおいて、
上記第2の光通信装置が有する上記発光ダイオードと受光素子とは隣接して配置されていることを特徴とする光通信システム。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1つに記載の光通信システムにおいて、
上記光伝送路は光ファイバであることを特徴とする光通信システム。
【請求項7】
請求項2から5のいずれか1つに記載の光通信システムにおいて、
上記光伝送路は光導波路であることを特徴とする光通信システム。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか1つに記載の光通信システムを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−253670(P2009−253670A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99235(P2008−99235)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】