説明

光電変換モジュール

【課題】 太陽光を受光した光電変換装置で発生した熱が車両の外板を通して放熱され、光電変換装置の温度上昇を抑え、発電性能が劣化するのを抑えることができるものとすること。
【解決手段】 光電変換モジュールは、車両の曲面状の外板の外面に形成された凹部にその凹部の曲面に沿って設置された、光電変換作用を有する多数の球状の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置1と、その光電変換装置1上にその曲面に沿って設けられた透光板3とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の屋根等に設置される太陽電池等の光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光電変換モジュールとして、例えば特許文献1には、車室上方の車体骨部材に車体上面を形成するルーフガラスが取り付けられた車両において、そのルーフガラスの下方には車室内壁を形成するトリムが車体骨部材に対して着脱可能に配設され、そのトリムの上面にはルーフガラスを通して太陽光を採光可能に太陽電池が取り付けられている構成が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、ガラスサンルーフの下方に、収納引出自在なバイザー(サンシェード)が設けられ、そのサンシェードにおける採光可能な部位に、太陽電池が配設されている自動車用太陽電池取付構造が提案されている。
【特許文献1】実公平5−42680号公報
【特許文献2】登録実用新案2035501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車等の車両のサンルーフ等に光電変換装置を設置する場合、太陽光を受光したときに光電変換装置での発熱のために車内温度が高くなるという問題点がある。特に夏において、車両は車内の空調のためにエネルギーを消費するため、光電変換装置で発生したエネルギーをロスしてしまうことになる。
【0005】
また、サンルーフとして用いるには充分な強度が必要であり、厚い強化ガラスを用いるために重くなり、また、サンルーフ周辺の保持機構も複雑な構成となるという問題点があった。
【0006】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、以下のようなものである。
【0007】
(1)太陽光を受光した光電変換装置で発生した熱が車両の外板を通して放熱され、光電変換装置の温度上昇を抑え、発電性能が劣化するのを抑えることができるものとすること。
【0008】
(2)車両室内への熱伝達を減らし、室内の温度上昇を抑制することができ、室内空調の稼動に要するエネルギーを低減することで省エネルギーを達成することができるものとすること。
【0009】
(3)光電変換装置が狭い隙間に保持されているため、車両の運転時の振動に強く、それ自体で有する機械的強度を軽減することができるものとすること。
【0010】
(4)廃車時には光電変換装置を容易に取り外しできるため、リユースを容易にすること。
【0011】
(5)光電変換装置が可撓性を有しており、車体の流線型に沿わせて曲げることができ、その結果、光電変換モジュールが形状変化の自由度が高いものとなるため、いろいろなデザインの車両に一体的に設置することができるものとすること。
【0012】
(6)光電変換装置が、可撓性を有するとともに強度が高いため、シリコン結晶板を用いたもののように割れることもないので、車両の機械的振動に対して強いものとなるようにすること。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光電変換モジュールは、車両の曲面状の外板の外面に形成された凹部にその凹部の曲面に沿って設置された、光電変換作用を有する多数の球状の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置と、該光電変換装置上にその曲面に沿って設けられた透光板とを具備していることを特徴とする。
【0014】
本発明の光電変換モジュールにおいて、好ましくは、前記外板は、前記凹部とそれよりも外周側である外周部との間に段差が形成されており、前記凹部の底部の上面が前記外周部の上面よりも下側にあるとともに前記凹部の底部の下面が前記外周部の下面よりも下側にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の光電変換モジュールにおいて、好ましくは、前記透光板は、その上面と前記外板の前記凹部よりも外周側である外周部の上面とが同じ曲面内にあること特徴とする。
【0016】
本発明の光電変換モジュールにおいて、好ましくは、前記凹部の下面と前記外板の下方に設けられたルーフライニングとの間に空間が形成されており、前記空間と前記車両の室内との間で空気が流通可能とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明の光電変換モジュールにおいて、好ましくは、前記光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに該結晶半導体粒子間に絶縁体が形成され、前記結晶半導体粒子及び前記絶縁体上に透光性導体層が形成され、該透光性導体層上に前記結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光電変換モジュールによれば、車両の曲面状の外板の外面に形成された凹部にその凹部の曲面に沿って設置された、光電変換作用を有する多数の球状の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置と、その光電変換装置上にその曲面に沿って設けられた透光板とを具備していることにより、太陽光を受光した光電変換装置で発生した熱は熱伝導性の良い金属製の外板を通して放熱され、光電変換装置の温度上昇を抑え、発電性能が劣化するのを抑えることができる。
【0019】
また、車両室内への熱伝達を減らし、室内の温度上昇を抑制することができ、室内空調の稼動に要するエネルギーを低減することで省エネルギーを達成することができる。
【0020】
さらに、光電変換装置が狭い隙間に保持されているため、運転時の振動に強く、それ自体で有する機械的強度を軽減することができる。
【0021】
また、廃車時には光電変換装置を容易に取り外しできるため、リユースするのに容易である。
【0022】
また、光電変換装置は、導電性基板等上に設置された多数の球状の結晶半導体粒子を用いたものからなることにより、可撓性を有しており、車体の流線型に沿わせて曲げることができる。即ち、光電変換モジュールは、形状変化の自由度が高いため、いろいろなデザインの車両に一体的に設置することができる。
【0023】
また、多数の球状の結晶半導体粒子を設置する導電性基板として金属基板を用いれば、シリコン結晶板を用いた光電変換装置のように割れることもないので、車両の機械的振動に対して強いものとなる。
【0024】
また、透光板は、外板の凹部に保持されているため、設計強度が軽減され、ガラス等から成る場合にその厚みを薄くするなどの軽量化が図れる。さらに、透光板の材料として透明プラスチックを採用することにより、さらに軽量化されるともに安全性の高い割れない透光板を有する光電変換モジュールを作製することができる。
【0025】
本発明の光電変換モジュールによれば、好ましくは、外板は、凹部とそれよりも外周側である外周部との間に段差が形成されており、凹部の底部の上面が外周部の上面よりも下側にあるとともに凹部の底部の下面が外周部の下面よりも下側にあることにより、透光板及び光電変換装置を凹部に収容し装備した状態で、外板の外周部との間でスムーズな曲面を形成することができる。
【0026】
また、外板は、凹部と外周部との間に縦断面形状が鉤状(クランク状)の段差が形成されているため、凹部と外周部との間に温度差があったとしても、その温度差による熱膨張係数差に起因する応力が段差で有効に緩和されるため、応力が光電変換装置及び透光板に直接伝わらない。その結果、凹部と外周部との間の温度差によって光電変換装置及び透光板が破損するのを防ぐことができる。
【0027】
またこの場合、外板は、凹部の底部の厚みが外周部の厚みよりも薄いのがよく、これにより凹部に若干の変形の自由度を付与して、外板と光電変換装置との熱膨張係数差による光電変換装置の破損を防ぐことができる。
【0028】
本発明の光電変換モジュールによれば、好ましくは、透光板は、その上面と外板の凹部よりも外周側である外周部の上面とが同じ曲面内にあることにより、車両が運転操作されるときの空気抵抗等の流体抵抗を減ずることができる。また、塵埃や水が上記段差で滞留せず、車体をクリーンに維持することができる。
【0029】
本発明の光電変換モジュールによれば、好ましくは、凹部の下面と外板の下方に設けられたルーフライニングとの間に空間が形成されており、その空間と車両の室内との間で空気が流通可能とされていることにより、空間内の暖められた空気を車室内の空気と入れ替えることにより放熱性を向上させることができる。
【0030】
本発明の光電変換モジュールによれば、好ましくは、光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともにその結晶半導体粒子間に絶縁体が形成され、結晶半導体粒子及び絶縁体上に透光性導体層が形成され、その透光性導体層上に結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であることにより、車両が種々の方向に向きを変えても、透光性集光層によって入射光を有効に光電変換装置に取り込むことができる。また、透光性集光層が透光板で覆われているので、透光性集光層が巻き上げられた砂などによって破損したり摩耗するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の光電変換モジュールの実施の形態を図面に基づいて以下に詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の光電変換モジュールについて実施の形態の1例を示す断面図である。また、図2は、従来の構成の光電変換モジュールを示す断面図である。図3は、本発明の光電変換モジュールにおける光電変換装置部を拡大して示す拡大断面図である。
【0033】
図1,図2において、1は光電変換装置、2は外板としてのルーフ外板、3は透明プラスチックや薄板ガラス等からなる透光板、4は空間、5はルーフライニング、11は導電性基板、12は結晶半導体粒子、13は透光性導体層、14は透明樹脂層、15はバックシート、16は透光性集光層、17は接着樹脂層である。
【0034】
光電変換装置1は、図3に示すように、以下のような構成である。
【0035】
導電性基板11は、アルミニウムの融点以上の融点を有する、塩基性水溶液と反応を起こす金属から成るものであればよく、例えばアルミニウム,アルミニウム合金,鉄,ニッケル合金等から成る。導電性基板11の材料がアルミニウム以外である場合、導電性基板11はその材料とアルミニウムから成る電極層(不図示)とを積層した構成とする。導電性基板11の厚みは、可撓性を有するように、0.1〜0.5mmが好ましい。
【0036】
結晶半導体粒子12は、B,Al,Ga等を微量含むp型、あるいはP,As等を微量含むn型を呈する第1導電型であり、結晶半導体粒子12表面の下部を除いた部位に、第1導電型とは逆導電型である第2導電型の半導体部としての半導体層12aを熱拡散法やプラズマCVD法を用いて形成したものである。
【0037】
結晶半導体粒子12は、平均粒径が0.2〜0.8mmがよい。0.8mmを超えると、本発明の光電変換装置1における半導体の使用量が多くなり、従来の結晶板型の光電変換装置におけるシリコン等の半導体の使用量と変わらなくなるため、結晶半導体粒子12を用いる利点がなくなる。また、0.2mmよりも小さいと、導電性基板11への結晶半導体粒子12の組み込みがしにくくなるという問題が発生する。結晶半導体粒子12の平均粒径は、シリコン等の半導体の使用量を抑制するという観点から0.2〜0.6mmがより好適である。
【0038】
本発明のルーフ外板2は、車両の天板であることが好ましく、この場合、車両が種々の方向に向きを変えても、その向きに左右されることが少なく、入射光を有効に光電変換装置1に取り込むことができる。また、光電変換モジュールが設置される車両の外板は、車両の側板、後板、ボンネット等の太陽光等の光が照射され得る部位にあるものであればよい。
【0039】
以下、結晶半導体粒子12がシリコンから成り、導電性基板11がアルミニウムから成る場合について、説明する。
【0040】
結晶半導体粒子12は、導電性基板11上に結晶半導体粒子12を互いに接触しないように離散させて多数配設した後、結晶半導体粒子12の上から一定の加重を掛けてアルミニウムから成る導電性基板11とシリコンから成る結晶半導体粒子12の共晶温度(577℃)以上に加熱することによって、導電性基板11と結晶半導体粒子12との合金層12bを形成し、その合金層12bを介して導電性基板11と結晶半導体粒子12とを接合させる。
【0041】
導電性基板11と結晶半導体粒子12とを接合させた後、導電性基板11とpn接合部(第1導電型の結晶半導体粒子12と第2導電型の半導体層4との接合部)とを分離するために、例えば結晶半導体粒子12の表面の一部(上部)をレジスト層等で覆ってエッチングし、導電性基板11と結晶半導体粒子12上の半導体層4とを電気的に分離する。
【0042】
絶縁体18は、光電変換装置1の正極と負極の分離を行うための絶縁材料からなり、ポリイミド樹脂またはシリコーン樹脂等の透明樹脂から成る絶縁材料を用いることができる。この絶縁材料を結晶半導体粒子12の上半分が露出するように塗布して、大気中で加熱することによって、結晶半導体粒子12間の導電性基板11を被覆する。
【0043】
結晶半導体粒子12上(半導体層12a上)及び絶縁体18の表面に、他方の電極を兼ねる透光性導体層13を形成する。透光性導体層13は、SnO,In,ITO,ZnO等から選ばれる1種または複数種の酸化物系膜などから成り、スパッタリング法、気相成長法または塗布焼成法等で形成される。透光性導体層13は、膜厚を適宜に選べば反射防止膜としての効果も有するものとなる。
【0044】
結晶半導体粒子12同士の間の直列抵抗値を小さくするために、透光性導体層13上にさらに上部電極として、一定間隔をおいて形成された導電性接着剤からなるフィンガー電極部から成るパターン電極を設け、さらにバスバー電極部を設けて結晶半導体粒子12同士の間を接続する。
【0045】
なお、集光性を高めた集光構造とするために、結晶半導体粒子12の上に全体にわたって結晶半導体粒子12の凹凸に沿うようにポリカーボネート樹脂等からなる凸レンズ状の凸部を有する透光性集光層16を形成しても良い。
【0046】
即ち、他方の電極を兼ねる透光性導体層13及びフィンガー電極等の集電極上に、各結晶半導体粒子12上において、縦断面における輪郭形状が結晶半導体粒子12よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されている透光性集光層16を形成する。
【0047】
たとえば、透光性集光層16の凸部は非球面形状であり、好ましくは、凸部の頂部が結晶半導体粒子12の曲率と同じ球面状であり、凸部の縦断面における輪郭形状の頂部以外の両側部が結晶半導体粒子12よりも直径が大きな円弧から成る。また、凸部は、その中心を通る垂線(鉛直線)を回転軸とした、非球面形状(縦置きしたラグビーボール状)の回転体である。
【0048】
さらに凸部は、縦断面において、頂部以外の両側部が結晶半導体粒子12よりも直径が大きな円弧となっているが、その円弧は、導電性基板11の主面に平行で結晶半導体粒子12の中心を通る水平線上に中心を持つ、結晶半導体粒子12の円よりも直径が大きい2つの円の円弧である。また、凸部の頂部が、回転軸上に中心をもつとともに結晶半導体粒子12の直径と同じ直径を有する円の円弧となっている。従って、凸部は、縦断面において、頂部の円弧と両側部の円弧とがつながった形状を有する。
【0049】
また、凸部の縦断面における両側部の円弧は、左右でそれぞれ同じ直径の2つの円の一部であるが、それら2つの円の直径は、結晶半導体粒子12の円の直径の2〜2.5倍程度の大きさを有する。
【0050】
そして、光電変換装置1を複数個縦横に配列し接続したストリングスの上に、光学的に透明で柔軟性のあるエチレン酢酸ビニル重合体(EVA),ポリオレフィン等の樹脂から成る透明樹脂層14とあわせて、上記の透光性集光層16となる樹脂シートをのせて、真空中で加圧しながら加熱することで、一体化させる。
【0051】
次に、透光板3の一面に接着樹脂層17を形成した後、上記の透光性集光層16が形成された光電変換装置1を透光板3の一面に載せ、さらに透明保護層とバックシート15で挟み込み、真空中で加圧しながら加熱することで、一体化させる。
【0052】
あるいは、透光性集光層16となる樹脂シートを載置せずに、光電変換装置1を平面視で複数個縦横に配列し接続したストリングスを、光学的に透明で柔軟性のあるエチレン酢酸ビニル重合体(EVA),ポリオレフィン等の樹脂から成る透明樹脂層14とあわせて、透明保護層とバックシート15で挟み込み、真空中で加圧しながら加熱することで、一体化させたものを、車両上部に載置される透光板3によって押し付けて成る構成としてもよい。
【0053】
ここで、上記の透明保護層は、光学的に透明で耐候性のある樹脂からなり、ポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ4フッ化エチレン(PTFE),4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシ共重合体(PFA),4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂でもよく、ポリカーボネート樹脂からなる集光レンズをそのまま透明保護層として用いてもよい。
【0054】
接着樹脂層17としては、エチレン酢酸ビニル重合体(EVA),ポリオレフィン等の樹脂フィルム、またはそれらの塗布液を用いる。
【0055】
バックシート15は、耐候性のある材料からなっていれば良く、例えばポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂、或いはこれらの樹脂から成る樹脂フィルムを使ってアルミニウム箔や金属酸化膜を挟んで張り合わせたシート、ステンレス等の金属シート等から成る。
【0056】
透光板3は、好ましくは光透過率の高いホウ珪酸ガラスからなる白板ガラスであり、強度を増すため、熱強化処理したものがよい。厚みは4〜8mmが好ましい。あるいは、透光板3は、ポリカーボネートあるいはアクリル樹脂等からなるプラスチック板でも良い。この場合、ガラスのように割れることもなく、搭載重量も軽減することができる。
【0057】
本発明の構成では、透光板3はルーフ外板2に保持されているため、設計強度は軽減され、厚みを薄くするなどして軽量化が図れるという効果がある。また、透光板3として透明プラスチック板の採用も可能であり、さらなる軽量化と安全で割れない透光板3とすることができる。
【0058】
光電変換装置1及び透光板3の形状は空気抵抗が少なくなるように、車体形状の一部であるルーフ外板2とほぼ同じ曲率を持った曲面形状が好ましい。本発明の光電変換モジュールは好ましくは、ルーフ外板2は、凹部とそれよりも外周側である外周部との間に段差が形成されており、凹部の底部の上面が外周部の上面よりも下側にあるとともに凹部の底部の下面が外周部の下面よりも下側にあることにより、透光板3及び光電変換装置1を凹部に収容し装備した状態で、ルーフ外板2の外周部と透光板3上面との間でスムーズな連続的な曲面を形成することができる。
【0059】
また、ルーフ外板2は、凹部と外周部との間に縦断面形状が鉤状の段差が形成されているため、凹部と外周部との間に温度差があったとしても、その温度差による熱膨張係数差に起因する応力が段差で有効に緩和されるため、応力が光電変換装置1及び透光板3に直接伝わらない。その結果、凹部と外周部との間の温度差によって光電変換装置1及び透光板3が破損するのを防ぐことができる。
【0060】
また、ルーフ外板2は、凹部の底部の厚みが外周部の厚みよりも薄いのがよく、これにより凹部に若干の変形の自由度を付与して、ルーフ外板2と光電変換装置1との熱膨張係数差による光電変換装置1の破損を防ぐことができる。
【0061】
さらに、本発明の光電変換モジュールは好ましくは、透光板3は、その上面とルーフ外板2の外周部の上面とが同じ曲面内にあることにより、車両が運転操作されるときの空気抵抗等の流体抵抗を減ずることができる。このような流体抵抗の低減は、走行性を追及する車両の設計上極めて重要な要請となっているため、本発明の構成はきわめて好適である。また、塵埃や水が上記段差で滞留しにくくなり、車体をクリーンに維持することができる。
【0062】
ルーフ外板2の曲面形状に沿わせて光電変換装置1を凹部に貼り付けることになるが、従来の板状のシリコン基板からなる太陽電池素子を用いた光電変換モジュールは、厚みが200〜300μmの薄型のシリコン基板が使用されるようになってきており、若干撓んでも容易に割れずにしなうことができるものの、撓みとその開放が長期間繰り返されると、クラックが入って最後には割れてしまい、断線する可能性もある。
【0063】
これに対して、本発明においては、光電変換装置1は、導電性基板11上に、表層に第2導電型の半導体層12aが形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子12の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともにその結晶半導体粒子12間に絶縁体18が形成され、結晶半導体粒子12及び絶縁体18上に透光性導体層13が形成され、その透光性導体層13上に結晶半導体粒子12のそれぞれに光を集光させる透光性集光層16が形成された光電変換装置であることにより、車両が種々の方向に向きを変えても、透光性集光層16によって入射光を有効に光電変換装置1に取り込むことができる。また、透光性集光層16が透光板3で覆われているので、透光性集光層16が巻き上げられた砂などによって破損したり摩耗するのを防ぐことができる。
【0064】
また、アルミニウム製の導電性基板11上にシリコン製の結晶半導体粒子12を多数個配設して成る光電変換装置1は、結晶半導体粒子12を設置するための導電性基板11が金属基板であることから、熱伝導性が良くかつ外力による曲げ応力に対し強いものとなる。また、金属基板を用いればシリコン基板のように割れることもないので、車両の機械的振動に対して強い。さらに、種々の形状の車両に設置できる。
【0065】
また、従来の非晶質シリコンを用いた薄膜太陽電池は、ガラス基板の形状に合わせて成膜することができるが、通常平板なガラス基板上に形成する製造設備によって作製されており、車両の機種ごとに異なるガラス基板の曲面にあわせて作製するのは困難である。また、本発明の結晶半導体粒子12からなる光電変換装置1は、薄膜太陽電池よりも高変換効率であり、優れたエネルギー供給機能を持っている。
【0066】
また、一般に、光電変換装置としての太陽電池において、太陽光はガラス基板側より入射し、発電するための15〜20%以外の光エネルギーは大半が熱となるため、太陽電池の温度が上昇してしまう。よく晴れた日では、光電変換モジュールの基板温度が90℃近くまで上昇してしまう。市場の大半を占める板状のシリコン基板を用いた太陽電池においては、基板の動作温度が1℃上昇するごとに光電変換効率は0.5%低下する。このため、測定温度25℃との温度差が65℃あるため、光電変換効率は32.5%低下する。その結果、光電変換装置の光電変換効率15%が、実質10.1%程度しか得られないことになってしまう。
【0067】
また、車両が動作せずに停止しているときなどには、熱が室内に充満し、80℃を超える温度になることは良く知られており、光電変換装置を車体上に載置することにより、さらに車内温度が上昇することになってしまう。この車内温度の上昇は、車内環境を悪化させるだけでなく、車内に取り付けた低耐熱材料の樹脂や電子機器の劣化につながる。さらに、前述したように、光電変換装置は発熱源ともなるため、車内温度はさらに高温になってしまう。
【0068】
例えば図2に示した従来例の場合、光電変換装置21の直下にルーフ外板22がないため、熱は光電変換装置21直下の空間に蓄積され、ルーフライニングに直接的に伝わり、車内温度を急速に上昇させてしまう。また、サンルーフにそのまま光電変換装置21が設置された場合は、熱がそのまま車内に拡散されるため、同様に車内温度が急激に上昇する。
【0069】
こうしたエンジン停止時の車内温度の上昇に対して、本発明の光電変換モジュールにおいては、光電変換装置1によって得られた電気出力が車内ファンを回すことで外気を導入し、車内温度の上昇を抑えることができる。車内温度が上昇する日射量の大きさに比例して車内ファンを駆動させることができるため、車内温度の降下に効果的である。
【0070】
また、本発明の光電変換モジュールは、車両に装備された電子機器に供給されるバッテリーの補助充電に用いたり、動力用高圧バッテリーへの供給などにも用いられる。しかしながら、光電変換装置1自身が熱源となり、車内に熱を流入させるのでは、本来の効果が低減されてしまう。
【0071】
そこで、本発明では、透光板3を取り付けた凹部の下面とルーフ外板2の下方に設けられたルーフライニング5との間に形成された空間4と、車内との間で空気の流通を可能とすることにより、空間4内の暖められた空気を車内の空気と入れ替えることができ、放熱を促進することもできる。さらに、空間4内に断熱材等を設けることで熱の流入をさらに低減することができる。
【0072】
従来より、車内の居住環境を快適にするために、空調で車内温度を調整する機構が多く車両に装備されているが、図2のような従来例では、光電変換装置21の熱の流入により、車内温度がより高くなる分、空調負荷が高くなるため、エネルギーを消費してしまう。しかし、本発明の光電変換モジュールにおいては、車内への熱の流入は低減され、省エネルギーを図ることができる。
【0073】
さらに、光電変換装置1が狭い隙間に保持されているため、運転時の振動に強く、それ自体で持つ機械的強度を軽減することができる。また、廃車時には光電変換装置1を容易に取り外しできるため、リユースするのが容易である。従って、車両の再生率を向上させるためにも本発明は有効である。
【0074】
以上述べたように、本発明においては、導電性基板11に多数の結晶半導体粒子12を配置して成る光電変換モジュールを、凹部が形成された車両のルーフ外板2の凹部に沿わせるように搭載された透光板3との空間4に、光電変換装置1を設置することにより、光電変換装置1の発した熱をルーフ外板2を通して外部に放出し、光電変換効率を向上させると共に車内環境への悪影響を低減し、改善することができる。
【0075】
また、本発明においては、光電変換装置1が結合された透光板3を車両の屋根のルーフ外板2上に設置する。ルーフ外板2は、透光板3及び光電変換装置1の厚み分だけ凹んだ凹部を有する構造となっており、透光板3及び光電変換装置1を凹部に設置することで空気抵抗となる段差を、透光板3の上面とルーフ外板2外周部の上面との間で、それらの曲面に対して生じることのないよう取り付けられる。ルーフ外板2には冷間圧延鋼板等が用いられ、厚みは1〜2mmのもので、プレス成型により成型されている。
【0076】
車両のルーフには、他の車両で跳ね上げられた小石や、大きな雹などの衝突によっても安全に走行できるように剛性を持たしている。本発明では、透光板3はその直下のルーフ外板2で保持されているので、自身で大きな剛性をもつ必要は無い。従って、透光板3は、厚みを薄くした強化ガラス板でも良いし、耐候性のあるプラスチック板でも良い。
【0077】
本発明の構成において、図3に示すように、透光性導体層13上に結晶半導体粒子12のそれぞれに光を集光させる透光性集光層16が形成された光電変換装置を用いるとき、透光性集光層16が透光板3で覆われているので、巻き上げられた砂などによる透光性集光層16の摩耗を防ぐことができる。また、透光性集光層16により、車両が向きを変えても入射光を有効に光電変換装置に取り込むことができる。
【0078】
また、透光板3はルーフ外板2とほぼ一体構造となっており、光電変換装置で発生した熱は、透光板3を通して大気中に放散されることに加え、ルーフ外板2を通じて横方向に伝熱して熱を放散する効果が高い。つまり、ルーフ外板2により、熱に対する遮蔽効果をもたせているため、車内への熱の流入を抑制することができる。
【0079】
本発明でいう車両は、自動車、鉄道車両、密閉した運転室を有する2輪自動車や3輪自動車等であり、特に、電気モーター等の電気的動力源を備えたハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等がよく、その場合本発明の光電変換モジュールは補助電源として機能し、電気的動力源の負担を軽減することができる。また、本発明の光電変換モジュールは、車両以外の船舶、密閉した操舵室を有するボート等にも適用することもできる。
【0080】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、車両のルーフ外板2における凹部とほぼ凹部に合わせるように搭載された透光板3との間の空間4に、透光板3に貼り付けること無く光電変換装置を載置するだけでも同様の効果を得ることができる。特に、光電変換装置表面がポリカーボネート樹脂製のレンズ部材で被覆されているときには、充分な信頼性が得られ、透光板3に接着樹脂層17を用いて、透光性集光層16が載置された光電変換装置1をラミネートする工程が簡略化できる。
【実施例】
【0081】
本発明の光電変換モジュールの実施例を以下に説明する。
【0082】
まず、図3に示すような光電変換装置1を以下のようにして作製した。第1導電型の結晶半導体粒子12として、直径約0.4mmのp型シリコン粒子の表面に、熱拡散法により第2導電型の半導体部としてn型シリコン層を形成したものを用いた。
【0083】
次に、一方の電極である0.3mm厚みのアルミニウム基板から成る導電性基板11上に、多数個の結晶半導体粒子12を互いに間隔をあけて配設して、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以上の温度(590℃)で約10分加熱して、結晶半導体粒子12を導電性基板11に接合した。
【0084】
次に、結晶半導体粒子12の上部のみをレジスト層で覆い、弗酸硝酸の混酸でエッチングしてpn分離を行った。レジスト層の除去後、樹脂からなる絶縁体18をpn分離部に充填した。
【0085】
次に、結晶半導体粒子12の上部表面を洗浄して、他方の電極である透光性導体層13としてITO膜を80nmの厚みに形成した。その上に熱硬化性のエポキシ樹脂と銀粉とを混合した導電性ペーストでフィンガー電極を形成し、200℃で硬化させた。さらに、ニッケルコートされた銅リボンからなるバスバー電極を透光性導体層13と導電性基板11に取り付け、隣接する光電変換装置1同士を電気的に接続した。
【0086】
次に、光電変換装置1が多数個接続されたストリングスの透光性導体層13、フィンガー電極及びバスバー電極の上を、0.5mm厚みのエチレン酢酸ビニル重合体(EVA)から成る透明樹脂層14で覆って、レンズ形状に成形されたポリカーボネート樹脂から成る透光性集光層16を合わせて、ラミネーターでラミネートすることで光電変換モジュールを作製した。
【0087】
次に、強化ガラスからなる透光板3に、キシレンに溶解させたEVA樹脂液を塗布し予備乾燥し、上記透光性集光層16と合わされた光電変換装置1を置き、さらにその上にエチレン酢酸ビニル重合体(EVA樹脂)の樹脂シートを載せ、バックシート15を載せたものをラミネーターで挟み込んだ。
【0088】
ラミネーターを真空に引くことによって、大気圧で加圧され、EVA樹脂を加熱して軟化させ、次いで硬化させることにより、光電変換装置1上に透光板3が接合されたラミネート型の光電変換モジュールを作製した。
【0089】
この光電変換モジュールを自動車のルーフ外板2の凹部にはめ込み、車内温度の上昇を調べた。100mmW/cmの太陽光が照射したときでも80℃程度であり、下記の比較例よりも20℃以上低かった。このことにより、本発明の光電変換装置1を用いた光電変換モジュールは、比較例よりも10%程度良い特性を得ることができ、車内への熱的影響が大きく改善されていることがわかった。
【0090】
[比較例]
図2のように、サンルーフに光電変換装置21を直接貼り付けた光電変換モジュールを搭載した自動車の車内温度は、100mmW/cmの太陽光が照射したときに100℃を超えた。これは、光電変換装置21のない自動車におけるサンルーフ直下の車内の停止時の車内温度75℃よりも25℃高く温度であった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の光電変換モジュールについて実施の形態の1例を示す断面図である。
【図2】従来の光電変換モジュールを示す断面図である。
【図3】本発明の光電変換モジュールの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1・・・光電変換装置
2・・・ルーフ外板(外板)
3・・・透光板
4・・・空間
5・・・ルーフライニング
11・・・導電性基板
12・・・結晶半導体粒子
13・・・透光性導体層
16・・・透光性集光層
18・・・絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の曲面状の外板の外面に形成された凹部にその凹部の曲面に沿って設置された、光電変換作用を有する多数の球状の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置と、該光電変換装置上にその曲面に沿って設けられた透光板とを具備していることを特徴とする車両一体型の光電変換モジュール。
【請求項2】
前記外板は、前記凹部とそれよりも外周側である外周部との間に段差が形成されており、前記凹部の底部の上面が前記外周部の上面よりも下側にあるとともに前記凹部の底部の下面が前記外周部の下面よりも下側にあることを特徴とする請求項1記載の車両一体型の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記透光板は、その上面と前記外板の前記凹部よりも外周側である外周部の上面とが同じ曲面内にあることを特徴とする請求項1または2記載の車両一体型の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記凹部の下面と前記外板の下方に設けられたルーフライニングとの間に空間が形成されており、前記空間と前記車両の室内との間で空気が流通可能とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両一体型の光電変換モジュール。
【請求項5】
前記光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに該結晶半導体粒子間に絶縁体が形成され、前記結晶半導体粒子及び前記絶縁体上に透光性導体層が形成され、該透光性導体層上に前記結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車両一体型の光電変換モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−134571(P2007−134571A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327503(P2005−327503)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】