説明

光電変換素子及び固体撮像装置

【課題】従来よりも感度、応答性に優れた有機材料から構成された光電変換材料層を備えた光電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の光電変換素子は、(a−1)離間して設けられた第1電極21及び第2電極22、並びに、(a−2)第1電極21と第2電極22との間に設けられた光電変換材料層30を備え、光電変換材料層30は、以下の構造式(1)で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、及び、係る光電変換素子を備えた固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を用いた光電変換素子(有機フォトダイオード)は、特定の色(波長帯)だけを光電変換することが可能である。そして、このような特徴を有するが故に、固体撮像装置における光電変換素子として用いる場合、オンチップカラーフィルター(OCCF)と光電変換素子との組合せから副画素が成り、副画素が2次元配列されている従来の固体撮像装置では不可能な、副画素を積層した構造を得ることが可能である。従って、入射する光を高効率で受光できることから、固体撮像装置の高感度化が見込まれる。また、デモザイク処理を必要としないことから偽色が発生しないといった利点がある。
【0003】
一方、固体撮像装置に用いられる有機光電変換素子の構造は、各種有機薄膜太陽電池と同一又は類似した構造を有し(例えば、特開2006−339424、特開2007−123707、特開2007−311647、特開2007−088033参照)、光電変換効率の向上を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−339424
【特許文献2】特開2007−123707
【特許文献3】特開2007−311647
【特許文献4】特開2007−088033
【特許文献5】特開2010−006794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、シリコン系半導体材料と比較し、有機材料は、高抵抗であり、移動度、キャリア密度が非常に低い。よって、感度、応答性において、従来のシリコン系半導体材料に代表される無機材料を用いた光電変換素子に匹敵する特性を示すまでには至っていない。尚、本出願人は、ジオキサアンタントレン系化合物及びジオキサアンタントレン系化合物を用いた半導体装置に関する特許出願を行っている(特願2008−136292。特開2010−006794参照)。しかしながら、この特許出願には、光電変換素子や固体撮像装置については、何ら、言及されていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来よりも感度、応答性に優れた有機材料から構成された光電変換材料層を備えた光電変換素子、及び、係る光電変換素子を備えた固体撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光電変換素子は、
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、以下の構造式(1)[本発明の第1の態様]あるいは構造式(2)[本発明の第2の態様]で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る。
【0008】


但し、構造式(1)において、R3及びR9の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、また、構造式(2)において、R1〜R11の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、
水素以外の該置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基、及び、シリル基から成る群から選択された置換基である。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る固体撮像装置は、
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、上記の構造式(1)[本発明の第1の態様]あるいは構造式(2)[本発明の第2の態様]で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換素子を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る電変換素子あるいは固体撮像装置において、光電変換材料層を構成するのに適したジオキサアンタントレン系化合物は、電圧無印加の中性状態及び電圧印加時のイオン性状態においてπスタック構造にパッキングされる。従って、特に嵩高い置換基を導入することなく、光電変換材料層中において、ジオキサアンタントレン系化合物の骨格は、容易にπスタック構造のパッキングとなり得る。それ故、0.4cm2/V・sといった高いキャリア移動度を示し、光照射の有無による光電流のオン/オフ応答特性に優れ、また、光電変換材料層を構成する有機半導体材料の分子設計の自由度が高く、分子設計が容易となる。しかも、プロセス適応性の向上を図ることができる。即ち、PVD法だけでなく、塗布法や印刷法といった所謂ウェット・プロセスに基づき、光電変換材料層の形成が可能である。そして、これによって、高いキャリア移動度を有し、高性能の光電変換素子を容易に製造することが可能になる。また、置換基を容易に導入することができ、しかも、適切な置換基を選択することで吸収波長を選択することができるので、光電変換材料層によって特定の波長の光を吸収することが可能となる。それ故、本発明の光電変換素子によって固体撮像装置を構成する場合、オンチップカラーフィルターが不要であり、光電変換素子の多層化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の光電変換素子の模式的な断面図である。
【図2】図2は、3,9−ビス(p−エチルフェニル)ペリキサンテノキサンテンの合成スキームの一部を説明する図である。
【図3】図3は、実施例1の光電変換素子において、波長428nmの光の照射の有無によって得られた光電流のオン/オフ応答特性を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1の固体撮像装置の概念図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、実施例13及び実施例14の光電変換素子の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様及び第2の態様に係る光電変換素子及び固体撮像装置、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様及び第2の態様に係る光電変換素子及び固体撮像装置)
3.実施例2(実施例1の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
4.実施例3(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
5.実施例4(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
6.実施例5(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
7.実施例6(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
8.実施例7(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
9.実施例8(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
10.実施例9(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
11.実施例10(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
12.実施例11(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
13.実施例12(実施例1の別の変形。異なるジオキサアンタントレン系化合物を使用)
14.実施例13(実施例1の変形。光電変換素子の構造の変形)
15.実施例14(実施例1の別の変形。光電変換素子の構造の変形)、その他
【0013】
[本発明の第1の態様及び第2の態様に係る光電変換素子及び固体撮像装置、全般に関する説明]
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光電変換素子あるいは固体撮像装置における光電変換素子(以下、これらを総称して、単に『本発明の光電変換素子等』と呼ぶ場合がある)にあっては、
透明導電材料から成る第1電極は、透明な基板上に形成されており、
光電変換材料層は、第1電極上に形成されており、
第2電極は、光電変換材料層上に形成されている構成とすることができる。あるいは又、
第1電極は、基板上に形成されており、
光電変換材料層は、第1電極上に形成されており、
透明導電材料から成る第2電極は、光電変換材料層上に形成されている構成とすることができる。ここで、第1電極と第2電極とは離間されているが、係る離間状態として、第1電極の上方に第2電極が設けられている形態を挙げることができる。
【0014】
本発明の光電変換素子等においては、上述したとおり、光入射側の電極は透明導電材料から成ることが好ましい。尚、係る電極を『透明電極』と呼ぶ。ここで、透明電極を構成する透明導電材料として、インジウム−錫酸化物(ITO,SnドープのIn23、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、IFO(FドープのIn23)、酸化錫(SnO2)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)、酸化亜鉛(AlドープのZnOやBドープのZnO、GaドープのZnOを含む)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化チタン(TiO2)、スピネル形酸化物、YbFe24構造を有する酸化物を例示することができる。尚、このような材料から成る透明電極は、通常、高仕事関数を有し、アノード電極として機能する。透明電極を形成する方法として、透明電極を構成する材料にも依るが、真空蒸着法や反応性蒸着法、各種のスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法(PVD法)、パイロゾル法、有機金属化合物を熱分解する方法、スプレー法、ディップ法、MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法)、無電解メッキ法、電解メッキ法を挙げることができる。場合によっては、もう一方の電極も透明導電材料から構成してもよい。
【0015】
透明性が不要である場合、第1電極あるいは第2電極を構成する導電材料として、第1電極あるいは第2電極をアノード電極(陽極)として機能させる場合、即ち、正孔を取り出す電極として機能させる場合、高仕事関数(例えば、φ=4.5eV〜5.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、ゲルマニウム(Ge)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、テルル(Te)を例示することができる。一方、第1電極あるいは第2電極をカソード電極(陰極)として機能させる場合、即ち、電子を取り出す電極として機能させる場合、低仕事関数(例えば、φ=3.5eV〜4.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、アルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タリウム(Tl)、ナトリウム−カリウム合金、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属、あるいは、これらの合金を挙げることができる。あるいは又、第1電極や第2電極を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体、カーボン・ナノ・チューブ、グラフェン等の導電性物質を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、第1電極や第2電極を構成する材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。また、これらの導電性材料をバインダー(高分子)に混合してペースト又はインクとしたものを硬化させ、電極として用いてもよい。第1電極や第2電極の形成方法として、これらを構成する材料にも依るが、各種のPVD法;MOCVD法を含む各種のCVD法;各種の塗布法;リフト・オフ法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;電解メッキ法や無電解メッキ法あるいはこれらの組合せといったメッキ法;及び、スプレー法の内のいずれかと、必要に応じてパターニング技術との組合せを挙げることができる。
【0016】
基板として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができ、あるいは又、雲母を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基板を使用すれば、例えば電子機器への組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは又、基板として、各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ステンレス等の各種合金や各種金属から成る金属基板を挙げることができる。尚、絶縁膜として、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG));窒化ケイ素(SiNY);酸窒化ケイ素(SiON);酸化アルミニウム(Al23);金属酸化物や金属塩を挙げることができる。また、表面にこれらの絶縁膜が形成された導電性基板(金やアルミニウム等の金属から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板)を用いることもできる。基板の表面は、平滑であることが望ましいが、光電変換材料層の特性に悪影響を及ぼさない程度のラフネスがあっても構わない。基板の表面にシランカップリング法によるシラノール誘導体を形成したり、SAM法等によりチオール誘導体、カルボン酸誘導体、リン酸誘導体等から成る薄膜を形成したり、CVD法等により絶縁性の金属塩や金属錯体から成る薄膜を形成することで、第1電極や第2電極と基板との間の密着性を向上させてもよい。透明な基板とは、基板を介して光電変換材料層に入射する光を過度に吸収しない材料から構成された基板を指す。
【0017】
場合によっては、電極や光電変換材料層を被覆層で被覆してもよい。被覆層を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。尚、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。
【0018】
本発明の光電変換素子等において、光電変換材料層の厚さは、限定するものではないが、2.5×10-8m乃至3×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、より好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。構造式(1)あるいは構造式(2)で表されるジオキサアンタントレン系化合物は高いキャリア移動度(〜0.4cm2/V・秒)を有している。そして、光電変換材料層の厚さを薄くすることが可能となり、従来の有機材料の有する欠点であった高抵抗、低移動度、低キャリア密度といった問題を解消することができ、高感度、高速応答性を有する光電変換素子あるいは固体撮像装置を提供することができる。尚、光電変換材料層の厚さを薄くすることによって、同一電位印加時に光電変換材料層に加わる電界強度Eを大きくすることができ、たとえ、移動度やキャリア密度が低くても、高い光電流を得ることが可能となる。
【0019】
光電変換材料層の形成方法として、塗布法、PVD法;MOCVD法を含む各種のCVD法を挙げることができる。ここで、塗布法として、具体的には、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を例示することができる。尚、塗布法においては、溶媒として、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、エタノールといった無極性又は極性の低い有機溶媒を例示することができる。また、PVD法として、電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法;プラズマ蒸着法;2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法;DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。あるいは又、固体撮像装置を構成する光電変換素子を集積化する場合、PLD法(パルスレーザーデポジション法)に基づきパターンを形成する方法を採用することもできる。
【0020】
光電変換材料層を形成すべき下地の表面粗さRa、具体的には、例えば、第1電極や基板の表面粗さRaは、1.0nm以下であることが好ましい。下地を平坦化することで、光電変換材料層を構成する分子を、平坦な下地上、水平方向、垂直方向のどちらにも整然と並べることができ、光電変換材料層と第1電極との界面に大きな電位降下が生じ難い構造となる。尚、このような電位降下は、光電変換材料層と第1電極との界面における格子不整合に起因しており、欠陥準位の形成や界面抵抗の増大を招くことが広く知られており、結果として第1電極と光電変換材料層との間のキャリア移動を阻害する。光電変換材料層と基板との間に平坦化層を形成してもよい。平坦化層は、基板を通過した光の反射を防止する機能を有していてもよい。ここで、平坦化層は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、酸化ケイ素系材料、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、又は、酸化アルミニウムから成る構成とすることができる。
【0021】
光電変換材料層を形成すべき下地としての第1電極の表面に、プラズマアッシング処理を施してもよい。プラズマアッシングのガス種として、Ar、N2及びO2から選ばれた少なくとも1種以上のガス種を挙げることができる。第1電極の表面にプラズマアッシング処理を施すことで、光電変換におけるバラツキ及びノイズレベルが低減され、光電流値を保ったまま、暗電流レベルを1ナノアンペア/cm2まで低減できた。そして、このように暗電流レベルを低減することができる結果、ダイナミックレンジが広く、高感度でコントラストをとることが可能な有機光電変換素子を提供することができる。
【0022】
本発明の第1の態様に係る光電変換素子等における光電変換材料層を構成する構造式(1)で表されるジオキサアンタントレン系化合物は、6,12−ジオキサアンタントレン(所謂、ペリキサンテノキサンテン,6,12-dioxaanthanthreneであり、『PXX』と略称する場合がある)の3位、9位の少なくとも一方を水素以外の置換基で置換した有機半導体材料である。また、本発明の第2の態様に係る光電変換素子等における光電変換材料層を構成する構造式(2)で表されるジオキサアンタントレン系化合物は、6,12−ジオキサアンタントレンの1位、2位、3位、4位、5位、7位、8位、9位、10位、11位の少なくとも1つを水素以外の置換基で置換した有機半導体材料である。
【0023】
あるいは又、ジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンをハロゲン化して3,9−ジハロペリキサンテノキサンテンを得た後、ハロゲン原子を置換基で置換することで得られ、6,12−ジオキサアンタントレンの3位、9位の少なくとも一方を水素以外の該置換基で置換して成る。ここで、この場合、ハロゲン原子は臭素(Br)である形態とすることができる。そして、このような形態を含むジオキサアンタントレン系化合物において、置換基は、アリール基又はアリールアルキル基から成る形態とすることができるし、あるいは又、置換基は、2位乃至6位のいずれか少なくとも1つがアルキル基で置換されたアリール基から成る形態、又は、2位乃至6位のいずれか少なくとも1つがアリール基で置換されたアリール基から成る形態とすることができるし、あるいは又、置換基は、p−トリル基、p−エチルフェニル基、p−イソプロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ノニルフェニル基、又は、p−ビフェニルから成る形態とすることができる。
【0024】
本発明の第1の態様に係る光電変換素子等にあっては、
(1−1)R3を水素以外の置換基とし、R9を水素原子とするケース
(1−2)R9を水素以外の置換基とし、R3を水素原子とするケース
(1−3)R3及びR9を水素以外の置換基とするケース
がある。ここで、ケース(1−3)の場合、R3とR9とは、同一の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0025】
一方、本発明の第2の態様に係る光電変換素子等にあっては、
(2−1)R1を水素以外の置換基とし、R2〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−2)R2を水素以外の置換基とし、R1,R3〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−3)R3を水素以外の置換基とし、R1〜R2,R4〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−4)R4を水素以外の置換基とし、R1〜R3,R5〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−5)R5を水素以外の置換基とし、R1〜R4,R7〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−6)R7を水素以外の置換基とし、R1〜R5,R8〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−7)R8を水素以外の置換基とし、R1〜R7,R9〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−8)R9を水素以外の置換基とし、R1〜R8,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−9)R10を水素以外の置換基とし、R1〜R9,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
(2−10)R11を水素以外の置換基とし、R1〜R10を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、29通りのケース)
が存在し得る。尚、上記のケースの数は重複したケースを含んでいる。また、R1,R2,R3,R4,R5,R7,R8,R9,R10,R11のそれぞれは、同一の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0026】
あるいは又、本発明の第2の態様に係る光電変換素子等にあっては、R3及びR9の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、R1,R4,R5,R7,R10,R11の内の少なくとも1つは水素以外の置換基である構成とすることができる。あるいは又、本発明の第2の態様において、R3及びR9の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、R4,R5,R10,R11の内の少なくとも1つは水素以外の置換基である構成とすることができる。ここで、係る好ましい構成にあっては、具体的には、例えば、
(3−1)R3を水素以外の置換基とし、R1,R4〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、27通りのケース)
(3−2)R9を水素以外の置換基とし、R1〜R7,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、27通りのケース)
(3−3)R3及びR9を水素以外の置換基とし、R1,R4,R5,R7,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、26通りのケース)
(3−4)R3を水素以外の置換基とし、R1を水素原子とし、R4〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、26通りのケース)
(3−5)R3を水素以外の置換基とし、R7を水素原子とし、R1,R4,R5,R9〜R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、26通りのケース)
(3−6)R9を水素以外の置換基とし、R1を水素原子とし、R3〜R7,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、26通りのケース)
(3−7)R9を水素以外の置換基とし、R7を水素原子とし、R1,R3〜R5,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、26通りのケース)
(3−8)R3及びR9を水素以外の置換基とし、R1を水素原子とし、R4〜R7,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、25通り)
(3−9)R3及びR9を水素以外の置換基とし、R7を水素原子とし、R1,R4,R5,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、25通り)
(3−10)R3及びR9を水素以外の置換基とし、R1及びR7を水素原子とし、R4,R5,R10,R11を水素以外の置換基又は水素原子とするケース(合計、24通り)
が存在し得る。尚、上記のケースの数は重複したケースを含んでいる。また、R1,R3,R4,R5,R7,R9,R10,R11のそれぞれは、同一の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0027】
構造式(1)あるいは構造式(2)におけるアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができる。尚、直鎖、分岐は問わない。また、シクロアルキル基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができるし;アルケニル基として、ビニル基等を挙げることができるし;アルキニル基として、エチニル基等を挙げることができるし;アリール基として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができるし;アリールアルキル基として、メチルアリール基、エチルアリール基、イソプロピルアリール基、ノルマルブチルアリール基、p−トリル基、p−エチルフェニル基、p−イソプロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ノニルフェニル基を挙げることができるし;芳香族複素環として、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等を挙げることができるし;複素環基として、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等を挙げることができるし;アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を挙げることができるし;シクロアルコキシ基として、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるし;アリールオキシ基として、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を挙げることができるし;アルキルチオ基として、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等を挙げることができるし;シクロアルキルチオ基として、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を挙げることができるし;アリールチオ基として、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等を挙げることができるし;アルコキシカルボニル基として、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等を挙げることができるし;アリールオキシカルボニル基として、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等を挙げることができるし;スルファモイル基として、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等を挙げることができるし;アシル基として、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等を挙げることができるし;チオカルボニル基として、チオアセチル基、エチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、シクロヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、2−エチルヘキシルチオカルボニル基、ドデシルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、ナフチルチオカルボニル基、ピリジルチオカルボニル基等を挙げることができるし;アシルオキシ基として、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等を挙げることができるし;アミド基として、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等を挙げることができるし;カルバモイル基として、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等を挙げることができるし;ウレイド基として、メチルウレイド基、エチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等を挙げることができるし;スルフィニル基として、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等を挙げることができるし;アルキルスルホニル基として、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等を挙げることができるし;アリールスルホニル基として、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等を挙げることができるし;アミノ基として、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等を挙げることができるし;ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができるし;フッ化炭化水素基として、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができる。更には、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基を挙げることができるし、シリル基として、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等を挙げることができる。ここで、以上で例示した置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は、複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0028】
本発明の固体撮像装置は、表面照射型とすることもできるし、裏面照射型とすることもでき、また、単板式カラー固体撮像装置を構成することができる。固体撮像装置における固体撮像素子には、その他、必要に応じて、オンチップ・マイクロ・レンズや遮光層を設けてもよいし、光電変換素子(固体撮像素子)を駆動するための駆動回路や配線が設けられている。必要に応じて、光電変換素子(固体撮像素子)への光の入射を制御するためのシャッターを配設してもよいし、固体撮像装置の目的に応じて光学カットフィルターを具備してもよい。更には、固体撮像装置における固体撮像素子を本発明の光電変換素子の単層から構成する場合、光電変換素子の配列として、ベイヤ配列、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。尚、本発明の光電変換素子によって、テレビカメラ等の撮像装置(固体撮像装置)以外にも、光センサーやイメージセンサー、太陽電池を構成することができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る光電変換素子及び固体撮像装置に関する。模式的な一部断面図を図1に示すように、実施例1の光電変換素子11は、
(a−1)離間して設けられた第1電極21及び第2電極22、並びに、
(a−2)第1電極21と第2電極22との間に設けられた光電変換材料層30、
を備えている。より具体的には、透明導電材料から成る第1電極21は透明な基板20上に形成されており、光電変換材料層30は第1電極21上に形成されており、第2電極22は光電変換材料層30上に形成されている。
【0030】
光入射側の電極である第1電極21は、透明導電材料、具体的には、厚さ120nmのインジウム−錫酸化物(ITO)から成る。また、第2電極22は、厚さ100nmのアルミニウム(Al)から成る。透明導電材料から成る第1電極21は、透明な基板20上に形成されており、光電変換材料層30は第1電極21上に形成されており、第2電極22は光電変換材料層30上に形成されている。光は、基板20及び第1電極21を介して光電変換材料層30に入射する。基板20は厚さ0.7mmの石英基板から成る。尚、光電変換材料層側の第1電極21の表面粗さRaは0.28nmであり、Rmaxは3.3nmであった。一般に、第1電極21の表面粗さRaは、1.0nm以下、好ましくは0.3nm以下であることが望ましい。
【0031】
そして、光電変換材料層30は、上述した構造式(1)[本発明の第1の態様]あるいは構造式(2)[本発明の第2の態様]で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る。尚、実施例1においては、より具体的には、光電変換材料層30は、以下の構造式(3)で表されるジオキサアンタントレン系化合物、即ち、3,9−ビス(p−エチルフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(C2Ph)2』と表す)から成り、青色から緑色の光を吸収する。ここで、R3及びR9は、アリールアルキル基(アルキル基で一部が置換されたアリール基。以下においても同様)から構成されている。
【0032】

【0033】
云い換えれば、実施例1のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンをハロゲン化して3,9−ジハロペリキサンテノキサンテンを得た後、ハロゲン原子を置換基で置換することで得られ、6,12−ジオキサアンタントレンの3位、9位の少なくとも一方を水素以外の該置換基で置換して成る。ここで、ハロゲン原子は、具体的には、臭素(Br)である。また、置換基は、アリール基又はアリールアルキル基から成り、あるいは又、置換基は、2位乃至6位のいずれか少なくとも1つがアルキル基で置換されたアリール基、あるいは又、2位乃至6位のいずれか少なくとも1つがアリール基で置換されたアリール基から成る。後述する実施例2〜実施例12においても同様である。
【0034】
具体的には、実施例1のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をp−エチルフェニル基で置換することで得ることができる。即ち、実施例1のジオキサアンタントレン系化合物であるPXX−(C2Ph)2は、以下のスキームに基づき合成することができる。
【0035】
先ず、図2のスキームに示すように、PXX臭素体であるPXX−Br2を合成する。具体的には、PXX(1当量)のジクロロメタン溶液に、−78゜Cにおいて、臭素のジクロロメタン溶液(2当量)を反応させた。その後、反応液を室温に戻して、亜硫酸水素ナトリウム水溶液で処理することにより、黄緑色の粗生成物を得た。そして、濾取した粗生成物をジクロロメタンで洗浄し、3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテン(PXX−Br2)を得た。尚、飛行時間型質量分析装置(Time-of-flight Mass Spectrometry,『Tof−MS』と略称する)、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光法)により二臭素化体であることが確認できた。
【0036】
次いで、PXX−Br2(1当量)及びp−エチルフェニルボロン酸(2当量)のトルエン溶液に、炭酸ナトリウム存在下、触媒量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え、48時間、還流させた。その後、反応液を室温まで放冷して、メタノールに注ぎ入れることによって沈殿した黄色固体を濾取し、メタノール、塩酸、水で洗浄した。そして、テトラヒドロフランから再結晶化することにより、黄色針状結晶を得た。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、3,9−ビス(p−エチルフェニル)ペリキサンテノキサンテン[PXX−(C2Ph)2]であることが確認できた。
【0037】
実施例1の光電変換素子11を、以下の方法で作製した。即ち、先ず、基板20上に、厚さ120nmのITOから成る第1電極21を、フォトマスクを用いたリソグラフィ技術に基づき形成する。次いで、基板20及び第1電極21上に絶縁材料から成る凸部31を形成した後、真空蒸着法にて、上記の構造式(1)、(2)あるいは(3)で示されたジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換材料層30(厚さ100nm)を、第1電極21から凸部31の上に亙り、メタルマスクを用いた真空蒸着法に基づき形成(成膜)する。尚、真空蒸着時の基板温度を110゜Cとし、光電変換材料層30の成膜速度を0.1nm/秒とした。次に、光電変換材料層30上から基板20上に亙り、厚さ100nmのアルミニウムから成る第2電極22を、メタルマスクを用いてPVD法にて形成する。尚、第2電極22の形成条件として、基板温度を30゜Cとし、第2電極22の成膜速度を0.5nm/秒とした。凸部31は、光電変換材料層30を形成すべき基板20の領域を囲むように形成されている。また、光電変換材料層30の成膜前に、下地である第1電極21及び凸部31に対して、UVオゾン処理を施した。後述する実施例2〜実施例14においても、同様の方法で光電変換素子を作製することができる。
【0038】
得られた実施例1の光電変換素子11において、波長428nmの光の照射の有無によって得られた光電流のオン/オフ応答特性を図3に示す。光照射時から5ミリ秒以内で、光電流は飽和を示し、光照射を中止すると電流値は瞬時に立ち下がったことから、光応答性が早いことが判る。尚、後述する各実施例においても、用いるジオキサアンタントレン系化合物に依存して照射する光の波長は異なるものの、実施例1と同様に、光の照射の有無によって光電流のオン/オフ応答が得られ、しかも、光照射時から直ちに光電流は飽和を示し、光照射を中止すると電流値は瞬時に立ち下がったことから、光応答性が早いことが判った。
【0039】
図4に、実施例1の固体撮像装置(固体撮像素子)の概念図を示す。尚、後述する実施例2〜実施例14においても、固体撮像装置(固体撮像素子)は、実施例1の固体撮像装置(固体撮像素子)と同様の構成、構造を有する。実施例1の固体撮像装置40は、半導体基板(例えばSi基板)上に、上述した光電変換素子11が2次元アレイ状に配列された撮像領域41、並びに、その周辺回路としての垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43、水平駆動回路44、出力回路45及び制御回路46等から構成されている。尚、これらの回路は周知の回路から構成することができるし、また、他の回路構成(例えば、従来のCCD撮像装置やCMOS撮像装置にて用いられる各種の回路)を用いて構成することができることは云うまでもない。
【0040】
制御回路46は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、生成されたクロック信号や制御信号は、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44に入力される。
【0041】
垂直駆動回路42は、例えば、シフトレジスタによって構成され、撮像領域41の各光電変換素子11を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各光電変換素子11における受光量に応じて生成した電流(信号)に基づく画素信号は、垂直信号線47を介してカラム信号処理回路43に送られる。
【0042】
カラム信号処理回路43は、例えば、光電変換素子11の列毎に配置されており、1行分の光電変換素子11から出力される信号を光電変換素子毎に黒基準画素(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅の信号処理を行う。カラム信号処理回路43の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線48との間に接続されて設けられる。
【0043】
水平駆動回路44は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路43の各々を順次選択し、カラム信号処理回路43の各々から信号を水平信号線48に出力する。
【0044】
出力回路45は、カラム信号処理回路43の各々から水平信号線48を介して順次供給される信号に対し、信号処理を行って出力する。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(4)で表される3,9−ジフェニルペリキサンテノキサンテン(『PXX−Ph2』と表す)を用いた。即ち、実施例2のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をフェニル基で置換することで得られた、3,9−ジフェニルペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリール基(具体的には、フェニル基)であり、青色から緑色の光を吸収する。
【0046】

【0047】
実施例2のジオキサアンタントレン系化合物[PXX−Ph2]は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼンに変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、[PXX−Ph2]であることが確認できた。
【実施例3】
【0048】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(5)で表される3,9−ジ(トランス−1−オクテン−1−イル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(VC6)2』と表す)を用いた。即ち、実施例3のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をトランス−1−オクテン−1−イル基で置換することで得られた、3,9−ジ(トランス−1−オクテン−1−イル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアルケニル基(具体的には、ビニル基)及びアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0049】

【0050】
実施例3のPXX−(VC6)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸をトランス−1−オクテン−1−イルボロン酸ピナコールエステルに変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、トルエンから再結晶化することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(VC6)2であることが確認できた。
【実施例4】
【0051】
実施例4も、実施例1の変形である。実施例4においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(6)で表される3,9−ジ(2−ナフチル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(Nap)2』と表す)を用いた。即ち、実施例4のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をβナフチル基で置換することで得られた、3,9−ジ(2−ナフチル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリール基(具体的には、βナフチル基)であり、青色から緑色の光を吸収する。
【0052】

【0053】
実施例4のPXX−(Nap)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸をナフタレン−2−ボロン酸ピナコールエステルに変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、テトラヒドロフランを用いて抽出することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(Nap)2であることが確認できた。
【実施例5】
【0054】
実施例5も、実施例1の変形である。実施例5においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(7)で表される3,9−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(BT)2』と表す)を用いた。即ち、実施例5のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子を2,2’−ビチオフェン−5−イル基で置換することで得られた、3,9−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9は芳香族複素環(具体的には、2,2’−ビチオフェン−5−イル基)であり、青色から緑色の光を吸収する。
【0055】

【0056】
実施例5のPXX−(Nap)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸ピナコールエステルに変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、テトラヒドロフランを用いて抽出することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(BT)2であることが確認できた。
【実施例6】
【0057】
実施例6も、実施例1の変形である。実施例6においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(8)で表される3,9−ビス(トランス−2−(4−ペンチルフェニル)ビニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(VPC5)2』と表す)を用いた。即ち、実施例6のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をトランス−2−(4−ペンチルフェニル)ビニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(トランス−2−(4−ペンチルフェニル)ビニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はビニル基、フェニル基及びアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0058】

【0059】
実施例6のPXX−(VPC5)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を2−[2−(4−ペンチルフェニル)ビニル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランに変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、テトラヒドロフランを用いて抽出することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(VPC5)2であることが確認できた。
【実施例7】
【0060】
実施例7も、実施例1の変形である。実施例7においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(9)で表される3,9−ジ(p−トリル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(C1Ph)2』と表す)を用いた。即ち、実施例7のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をp−トリル基で置換することで得られた、3,9−ジ(p−トリル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリールアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0061】

【0062】
実施例7のPXX−(C1Ph)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸をp−トリルボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、テトラヒドロフランを用いて抽出することにより精製を行った。Tof−MSによって、二置換体、PXX−(C1Ph)2であることが確認できた。
【実施例8】
【0063】
実施例8も、実施例1の変形である。実施例8においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(10)で表される3,9−ビス(p−イソプロピルフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(iC3Ph)2』と表す)を用いた。即ち、実施例8のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をp−イソプロピルフェニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(p−イソプロピルフェニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリールアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0064】

【0065】
実施例8のPXX−(iC3Ph)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸をp−イソプロピルフェニルボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、トルエンを用いて再結晶することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(iC3Ph)2であることが確認できた。
【実施例9】
【0066】
実施例9も、実施例1の変形である。実施例9においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(11)で表される3,9−ビス(4−プロピルフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(C3Ph)2』と表す)を用いた。即ち、実施例9のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子を4−プロピルフェニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(4−プロピルフェニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリールアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0067】

【0068】
実施例9のPXX−(C3Ph)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を4−プロピルフェニルボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、トルエンを用いて再結晶することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(C3Ph)2であることが確認できた。
【実施例10】
【0069】
実施例10も、実施例1の変形である。実施例10においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(12)で表される3,9−ビス(4−ブチルフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(C4Ph)2』と表す)を用いた。即ち、実施例10のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子を4−ブチルフェニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(4−ブチルフェニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリールアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0070】

【0071】
実施例10のPXX−(C4Ph)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を4−ブチルフェニルボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、トルエンを用いて再結晶することにより精製を行った。Tof−MS、1H−NMRによって、二置換体、PXX−(C4Ph)2であることが確認できた。
【実施例11】
【0072】
実施例11も、実施例1の変形である。実施例11においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(13)で表される3,9−ビス(4−ノニルフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(C9Ph)2』と表す)を用いた。即ち、 実施例11のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子を4−ノニルフェニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(4−ノニルフェニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリールアルキル基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0073】

【0074】
実施例11のPXX−(C9Ph)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を4−ノルマル−ノニルベンゼンボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、トルエンを用いて再結晶することにより精製を行った。Tof−MSによって、二置換体、PXX−(C9Ph)2であることが確認できた。
【実施例12】
【0075】
実施例12も、実施例1の変形である。実施例12においては、ジオキサアンタントレン系化合物として、以下の構造式(14)で表される3,9−ビス(p−ビフェニル)ペリキサンテノキサンテン(『PXX−(BPh)2』と表す)を用いた。即ち、実施例12のジオキサアンタントレン系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、臭素原子をp−ビフェニル基で置換することで得られた、3,9−ビス(p−ビフェニル)ペリキサンテノキサンテンから成る。そして、R3及びR9はアリール基から構成されており、青色から緑色の光を吸収する。
【0076】

【0077】
実施例12のPXX−(BPh)2は、実施例1の合成におけるp−エチルフェニルボロン酸を4−ビフェニルボロン酸に変更した以外は、実施例1と同じスキームを経ることで得ることができた。そして、高真空下で昇華後、ベンゼンを用いて抽出することにより精製を行った。Tof−MSによって、二置換体、PXX−(BPh)2であることが確認できた。
【実施例13】
【0078】
実施例13は、実施例1の光電変換素子の変形である。実施例13の光電変換素子12にあっては、図5の(A)に模式的な一部断面図を示すように、第1電極21Aは基板20A上に形成されており、光電変換材料層30は第1電極21A上に形成されており、透明導電材料から成る第2電極22Aは光電変換材料層30上に形成されている。尚、光は、第2電極22Aを介して光電変換材料層30に入射する。ここで、具体的には、基板20Aは例えばシリコン半導体基板から成り、第1電極21Aはアルミニウムから成り、第2電極22AはITOから成る。この点を除き、実施例13の光電変換素子12の構成、構造は、実施例1の光電変換素子11の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例14】
【0079】
実施例14も、実施例1の光電変換素子の変形である。実施例14の光電変換素子13にあっては、図5の(B)に模式的な一部断面図を示すように、第1電極21B及び第2電極22Bは基板上に形成されており、光電変換材料層30は、第1電極21Bから第2電極22Bに亙り、基板20B上に形成されている。尚、光は、第2電極22Bを介して光電変換材料層30に入射する。あるいは又、光は、基板20B、第1電極21Bを介して光電変換材料層30に入射する。ここで、具体的には、基板20Bは例えばシリコン半導体基板から成り、第1電極21B及び第2電極22Bは金属材料あるいは透明導電材料から成る。この点を除き、実施例14の光電変換素子13の構成、構造は、実施例1の光電変換素子11の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0080】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した光電変換素子、固体撮像装置の構造や構成、製造条件、製造方法、使用した材料は例示であり、適宜変更することができる。光電変換材料層は、1種類のジオキサアンタントレン系化合物から構成してもよいし、複数種のジオキサアンタントレン系化合物の混合品から構成してもよい。あるいは又、光電変換材料層を多層化し、各光電変換材料層を異なるジオキサアンタントレン系化合物から構成してもよい。あるいは又、実施例1において説明した光電変換素子を、例えば、シリコン半導体基板の上に設け、係る光電変換素子の下方に位置するシリコン半導体基板の内部に光電変換領域を1層あるいは複数層(例えば2層)、設けることで、光電変換素子(受光領域)が積層化された構造、即ち、副画素を積層した構造を有する固体撮像装置を得ることができる。このような固体撮像装置にあっては、例えば、実施例1において説明した光電変換素子によって青色の光を受光し、シリコン半導体基板の内部に光電変換領域を1層あるいは複数層、設けることで、他の色の光を受光することができる。尚、シリコン半導体基板の内部に光電変換領域を設ける代わりに、光電変換領域を、エピタキシャル成長法にて半導体基板上に形成することもできるし、あるいは又、所謂SOI構造におけるシリコン層に形成することもできる。また、本発明の光電変換素子を太陽電池として機能させる場合には、第1電極と第2電極との間に電圧を印加しない状態で光電変換材料層に光を照射すればよい。
【符号の説明】
【0081】
11・・・光電変換素子、20・・・基板、21・・・第1電極、22・・・第2電極、30・・・光電変換材料層、31・・・凸部、40・・・固体撮像装置、41・・・撮像領域、42・・・垂直駆動回路、43・・・カラム信号処理回路、44・・・水平駆動回路、45・・・出力回路、46・・・制御回路、47・・・垂直信号線、48・・・水平信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、以下の構造式(1)で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換素子。

但し、R3及びR9の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、
水素以外の該置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基、及び、シリル基から成る群から選択された置換基である。
【請求項2】
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、以下の構造式(2)で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換素子。

但し、R1〜R11の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、
水素以外の該置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基、及び、シリル基から成る群から選択された置換基である。
【請求項3】
光入射側の電極は透明導電材料から成る請求項1又は請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、以下の構造式(1)で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換素子を備えている固体撮像装置。

但し、R3及びR9の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、
水素以外の該置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基、及び、シリル基から成る群から選択された置換基である。
【請求項5】
(a−1)離間して設けられた第1電極及び第2電極、並びに、
(a−2)第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換材料層、
を備え、
光電変換材料層は、以下の構造式(2)で表されるジオキサアンタントレン系化合物から成る光電変換素子を備えている固体撮像装置。

但し、R1〜R11の内の少なくとも1つは水素以外の置換基であり、
水素以外の該置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボン酸シアニド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドラジド基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホ基、及び、シリル基から成る群から選択された置換基である。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−19132(P2012−19132A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156643(P2010−156643)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】