説明

光電変換装置及び放射線検出装置

【課題】光電変換部を簡易な構成としながら残留電荷のリセットを確実に行うことができる光電変換装置及び放射線検出装置を提供する。
【解決手段】光を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する画素11を2次元的に配列した光電変換パネル2と、該光電変換パネル2の電荷蓄積部に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部6と、前記読出信号ライン5に接続されて前記電荷蓄積部の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部9とを備え、前記読出制御部6とリセット部9とを、前記光電変換パネル2の異なる端部に配設した構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷蓄積素子を有する光検出部をマトリックス状に配列した光電変換パネルと、この光電変換パネルの電荷蓄積素子の蓄積電荷を信号読出信号ラインを介して読出す読出制御部と、前記電荷蓄積素子の残留電荷をリセットするリセット部とを備えた光電変換装置及びこれを使用した放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用や被破壊検査などのX線撮影は、銀塩フィルムなどを用いてアナログ手法から、カセッテと称される輝尽発光体が形成された板にX線照射情報を撮像記録紙、別途レーザーなどで照射像を読取デジタルかするCR(Computed Radiography)法、さらには、PIN素子やMIS素子のような光電変換素子とTFTアクティブスイッチとを組み合わせた2次元イメージセンサ基板上に、放射線を可視光変換するシンチレータを形成した間接変換型放射線デジタル撮像器(FPD:フラットパネルディテクター)あるいはa−Seのように放射線を直接光電変換する材料とTGTアクティブスイッチとを組み合わせた直接変換型FPDのようなDR(Digital Radiography)法が開発され実用に供されている。
このようなFPDは、70〜200umの分解能を持ちながら大面積等倍露光が可能という利点から、一般投資撮影装置やCT装置や案義尾装置と言った比較的大きなシステムに組込まれた固定型と、X線源とともにFPDを患者のいる場所に持ち歩いて設置することができる可搬型の2タイプがある。
【0003】
このような、FPDにおいては、生体組織に潜む病巣や物体内の異物などを感度よく検知する必要があることから、X線イメージ画像を12〜16bit以上のデジタルデータとして読出し、これをさらに画像処理によって画像かすることが求められているため、本来のイメージ信号(シグナル信号成分)と、それ以外の信号(ノイズ成分)との比であるS/N比を向上させることは重要である。このS/N比の向上には、ノイズ成分の低減とシグナル成分の向上が必要である。
ノイズ信号は、配線抵抗に起因するサーマルノイズや寄生容量、読出されるイメージ信号の増幅回路系(積分回路、相間二重サンプリング(CDS:Correlated Double Sampling)回路、マルチプレクサ回路など)の各要素固定バラツキ、TFTアクティブスイッチの特性バラツキなどに起因することが知られており、さまざまなノイズ低減、ノイズキャンセルの手法・工夫がなされている。
【0004】
一方、本来得るべきイメージ信号(シグナル信号成分)の向上についても、不断の努力により様々な手法が知られている。例えば、CMOSイメージセンサに見られるような、図8(a)に示すような画素内に読出し用増幅トランジスタを設けたアクティブピクセル方式が代表的である。
このアクティブピクセル方式では、図8(a)で示すように、各ピクセルに設けた例えばPINフォトダイオードでなる光電変換素子100で発生した電荷を光電変換素子の寄生容量もしくは、ダイナミックレンジ改善のために別途設ける補助容量101に蓄積し、このときの容量変化によって生じた僅かな電位量を各ピクセルに設けた増幅用トランジスタ102で増幅し、スイッチングトランジスタ103で信号線104に読出すことで、信号読出しの際の各ピクセルから読出ドライバまでの経路で発生するノイズ成分よりも大きな信号成分として読出ドライバに取出すことができる。なお、図8(a)において、105はスイッチングトランジスタのゲートを駆動する走査線、106はリセットトランジスタ、107はリセット線である。
【0005】
一方、大型FPDに用いられる大型のTFT基板(マイクロジャイアントデバイス)においては、多くの場合液晶装置で長年培われたa−SiのTFTプロセスを踏襲したもので、配線数や配線交差部を減らし、配線抵抗や配線容量を低減したり、画素構造及び引出し配線構造、実装端子を簡素にしたりすることでノイズ成分を極力低減するとともに、開口率の向上や歩留り向上も同時に図る目的から、図8(b)に示すように、各ピクセルに増幅用トランジスタを持たず、例えばPINフォトダイオードで構成される光電変換素子111とダイナミックレンジの仕様に応じた補助容量112とを並列に接続し、この並列回路の一端にバイアス電位Vbを与え、他端に行選択TFT113を介して信号線114を接続し、行選択TFT113のゲートに走査線115を接続した簡易な構成とした所謂パッシブピクセル方式が主流である。
【0006】
この場合、各ピクセルで光電変換によって生じ光電変換素子の寄生容量もしくは補助容量に蓄積された光信号電荷は、シフトレジスタ回路などによって構成された行選択駆動ドライバICによって行選択TFTスイッチを順次オンして行くことで、例えば各ピクセルの行選択TFT113を経由して信号線114を通り、各列に配置された読出アンプで積分/増幅され、マルチプレクサ回路により各列のアナログ信号がシリアル化された後、A/Dコンバータによって12〜16bit以上の映像信号にデジタルかされて所定の画像処理装置にデータ転送される。この読出し経路において読出される信号は、決めー時信号以外に読出経路に起因するノイズ信号成分を含んだものになるため、このまま増幅することは好ましくなく、例えば読出アンプに相間二重サンプリング回路を設け、画素から読出ドライバICまでの経路で生じるノイズ成分を別途読出し、その差分を取得することでノイズ信号成分をキャンセルしてイメージ信号を読出す手法が広く知られている。
【0007】
上記のような方法で読出経路のノイズを低減もしくはキャンセルする際には、光電変換素子もしくは別途付加された補助容量に蓄積された電荷の読み残しについても考慮する必要がある。例えば間接変換型FPDのようなX線撮像装置では、X線曝射要求信号によりX線源から放出されて検査対象物を透過したX線を、例えばナトリウムやタリウムがドープされたヨウ化セシウムCslや硫酸化ガドリニウムGOSからなるシンチレータ材によって透過X線量に応じた可視光量に変換し、この可視光を光電変換素子(例えばPINフォトダイオード)によって光量に応じた電荷量として蓄積した後、X線曝射を停止し、別途行選択駆動ドライバ(ゲートドライバ)ICによって、順次行選択TFTをオンして行き、各ピクセルに蓄積された電荷量をX線イメージ信号として読出すという操作が行なわれる。このとき、前回の撮像イメージが電荷として各ピクセルに残っていると、今回撮像イメージには前回撮像イメージが重畳されてしまい、正しいイメージを取得できなくなる。このため、例えばX線曝射前もしくはイメージ読出し後に1回もしくは複数回に分けて暗画像データを取得することで、各ピクセルのイニシャライズ(リセット)及びその暗画像データ分を差し引いてノイズ除去を行なう手法が知られている。
【0008】
しかし、このような手法は行選択TFTのオン抵抗とPIN容量もしくは補助容量により、残留電荷を暗画像として取り出すために時間がかかってしまい、とりわけ医療現場でX線曝射前に暗画像取得シーケンスを実施する際には、検査対象である患者に待ち時間を強いることになり好ましくない。蓄積画像の読出時間を短縮する方法として、例えば特許文献1に記載されているようにX線曝射による信号電荷蓄積前に、全走査線をオンにして、各画素の残留電荷を除去(リセット)する方法が示されている。
【0009】
前回の撮像イメージを読出しきれずに光電変換素子あるいは補助容量に残留蓄積された電荷を強制的にリセットする手法は、アクティブピクセル型CMOSイメージセンサでは一般的に使われている。最も基本的な例では、図8(a)に示すように、行選択トランジスタ103と増幅用トランジスタ102及びリセット用トランジスタ106の3つのトランジスタトランジスタとフォトダイオード100(及び必要に応じてこれに補助容量101を加える)で各ピクセルを構成するもので、リセット⇒露光(電荷蓄積)⇒読出をシーケンシャルに行なうことで、前回撮像画像の影響をピクセル単位で随時キャンセルしていくものである。最近ではこれを改良し4つのトランジスタで構成されたものも知られている。
【特許文献1】特開平9−131337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたパッシブピクセル方式の従来例にあっては、順次空読み方法に比べて早いというだけで、画素ごとに異なる蓄積電荷を均一に吐き出すことは難しいという未解決の課題がある。また、X線曝射後、イメージ読出後に暗画像を取得する場合でも、医師に待ち時間を強いることになり、やはり好ましくない。
一方、アクティブピクセル方式を採用する場合には、画素内に多くのトランジスタを配置する必要があり、CMOS−LSIプロセスのような微細加工が成熟したもので且つ読取ドライバICも内蔵した小型で画素ピッチも小さなイメージセンサの作成でこそ可能であるとともに大きいに意味がある。しかし、画素トランジスタとして電子移動度が0.1〜0.8cm/Vs程度のa−SiTFTを用いる第面積のFPDの場合、各TFTのWを小さくできないために画素レイアウトには必然的に制約が生じるとともに、大パネルで配線本数も増加するため、これによるノイズの増加、また歩留り的観点からこのようなアクティブピクセル方式を大型FPDに用いるのは容易でない。a−SiTFTの代わりにLTPSを用いることも考えられるが、結晶化過程に用いられる線状エキシマレーザービームの長尺幅の制約や、プリカーサa−Si膜へのレーザー照射エネルギバラツキなどによるTFT特性(閾値電圧Vthやオン電流、オフ電流、S値、電子移動度)バラツキが平面的に見てミクロ的にもマクロ的にも発生するため、大面積アクティブマトリックス基板を面内均一にLTPSで製造することは現実には容易ではない。また、工程数も多く、維持管理も含めて特殊な設備が必要なLTPSでは製造コスト的にも不利であり、安価なFPDを提供しづらくなるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、光電変換部を簡易な構成としながら残留電荷のリセットを確実に行うことができる光電変換装置及び放射線検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る光電変換装置は、光を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する光検出部を2次元的に配列した光電変換パネルと、該光電変換パネルの電荷蓄積部に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積部の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部とリセット部とを、前記光電変換パネルの異なる端部に配設した構成を有する。
この光電変換装置では、光電変換パネルの読出制御部を接続する読出信号ラインにリセット部を接続し、読出制御部とリセット部とを光電変換パネルの異なる端部に配設したので、リセット部によって電荷蓄積部の残留電荷を読出信号ライン単位で確実に除去することができる。また、読出制御部とリセット部とが離れた位置に配置されるので、リセット部でのリセット時のノイズが読出制御部に影響することを確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る光電変換装置は、前記リセット部を、前記読出制御部に対して前記光電変換パネルを挟んで反対側に配設した構成を有する。
この光電変換装置では、リセット部と読出制御部が光電変換パネルを介して対向配置されているので、両者間の距離を長くすることができ、リセット部で発生するノイズが読出制御部に与える影響をより小さくすることができる。
また、本発明に係る光電変換装置は、光を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する光検出部を2次元的に配列した光電変換パネルと、該光電変換パネルの電荷蓄積部に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積部の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部と前記リセット部とを異なる回路構成とした。
【0013】
この光電変換装置では、リセット部で、電荷蓄積部の残留電荷を確実に除去することができる。また、互いに読出信号ラインに接続される読出制御部とリセット部とを異なる回路構成としたので、リセット部で発生するノイズが読出制御部に影響を与えることを確実に防止することができる。
また、本発明に係る光電変換装置は、前記リセット部を、前記光電変換パネルに内蔵させた構成を有する。
この光電変換装置では、リセット部を光電変換パネルに内蔵させたので、この分全体の回路構成を簡易化することができる。
【0014】
また、本発明の光電変換装置は、前記光検出部は、光検出素子と電荷蓄積素子とが並列に接続された並列回路を有し、該並列回路は一端にバイアス電位が印加され、他端がスイッチング素子を介して前記読出信号ラインに接続された構成を有する。
この光電変換装置では、光検出部をパッシブピクセル方式の構成とすることで、光検出部の構成を簡易化して、全体の構成を小型化することができる。
また、本発明の光電変換装置は、前記リセット部は、前記読出信号ライン及びリセット電源との間に個別に介挿されたスイッチを有し、リセット時に各スイッチを同時にオン状態に制御する構成とした。
この光電変換装置では、リセット部が読出信号ライン及びリセット電源との間に個別にスイッチを介挿し、リセット時に各スイッチを同時にオン状態とするので、光電変換パネルの各光検出部における電荷蓄積部の残留電荷を短時間でリセットすることができる。
【0015】
また、本発明の光電変換装置は、前記バイアス電源及び前記リセット電源を共通化し、前記バイアス線及び読出信号ラインの長さを一致させた構成を有する。
この光電変換装置では、バイアス電源とリセット電源を共通化することができ、全体の回路構成を簡易化することができる。
また、本発明の光電変換装置は、前記バイアス電源の電位を前記リセット電源の電位より大きい電位に設定した構成を有する。
この光電変換装置では、バイアス電位をリセット電位より大きく設定することにより、光検出素子に順方向バイアスを与えて、電荷蓄積素子の残留電荷を速やかに吐き出させることができる。
【0016】
また、本発明の光電変換装置は、前記光検出素子はPIN素子及びMIS素子の何れかで構成されている。
この光電変換装置は、PIN素子及びMIS素子を光検出素子として適用するので、照射される可視光を確実に電気信号に変換することができる。
また、本発明の放射線撮像装置は、請求項1乃至9の何れか1項に記載の光電変換装置と、該光電変換装置の前記光電変換パネルの光検出面上に放射線を可視光に変換するシンチレータを配設した構成を有する。
この放射線撮像装置では、放射線をシンチレータで可視光に変換し、変換された可視光を光電変換装置の光電変換パネルで光電変換して蓄積電荷部に放射線画像に対応した電荷を蓄積することができ、この電荷蓄積部の電荷を読出制御部で読出すことにより、放射線撮像データを得ることができる。また、蓄積電荷部の残留電荷をリセット部で確実に除去することができ、前回の放射線撮像イメージが残留することを確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の放射線撮像装置は、放射線を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する放射線検出部を2次元的に配列した放射線検出パネルと、該放射線検出パネルの電荷蓄積素子に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積素子の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部及びリセット部は、前記放射線変換パネルの異なる端部に配設された構成を有する。
この放射線撮像装置では、放射線検出パネルの2次元的に配列された放射線検出部で曝射された放射線量に応じた電荷を電荷蓄積部に蓄積し、蓄積した電荷を読出制御部で読み出すことより、放射線画像データを読出すことができ、リセット部で電荷蓄積部の残留電荷を確実に除去することができる。このとき、リセット部で発生するノイズが読出制御部に影響することを確実に防止することができ、前回の放射線撮像イメージが残留することを確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明の放射線撮像装置は、前記リセット部を、前記放射線検出パネルに内蔵させた構成を有する。
この放射線撮像装置では、リセット部を光電変換パネルに内蔵させたので、この分全体の回路構成を簡易化することができる。
また、本発明の放射線撮像装置は、前記放射線検出部は、放射線検出素子と電荷蓄積素子とが並列に接続された並列回路を有し、該並列回路は一端にバイアス電位が印加され、他端がスイッチング素子を介して前記読出信号ラインに接続された構成を有する。
この放射線撮像装置は、光検出部をパッシブピクセル方式の構成とすることで、光検出部の構成を簡易化して、全体の構成を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を放射線撮像装置に適用した場合の一実施形態を示す平面図、図2は図1の回路構成を示すブロック図、図3は放射線撮像装置を収容する携帯型ケースの正面図である。
図1において、放射線撮像装置1は、光電変換パネル2と、この光電変換パネル2の上面に形成された光電変換領域3を覆う曝射される放射線(X線)を可視光に変換するシンチレータ4とを備えている。
光電変換パネル2に形成された読出信号ライン5には読出制御部としての読出ドライバIC6が接続され、光電変換パネル2に形成された行選択信号ライン7には行選択信号を出力する例えばシフトレジスタで構成されるゲートドライバIC8が接続されている。
【0020】
そして、読出信号ライン5の前記読出ドライバIC6とは光電変換領域3を挟んで反対側にリセット部としてのリセット回路9が接続されている。そして、読出ドライバIC6、ゲートドライバIC8及びリセット回路9がタイミングジェネレータ10からタイミング信号が供給されている。
光電変換パネル2は、図2に示すように、光電変換領域3内に、パッシブピクセル方式の画素11が2次元的にマトリックス状に配設されている。各画素11は、PINフォトダイオードPDと電荷を蓄積する電荷蓄積部としてのコンデンサCとが並列に接続された並列回路12を有する。この並列回路12は、その一端にバイアス電源13から所定のバイアス電位Vbがバイアスライン15を介して印加され、他端がTFTで構成されるスイッチングトランジスタ14を介して読出信号ライン5に接続されている。スイッチングトランジスタ14のゲートが行選択信号ライン7を介してゲートドライバIC8に接続されている。
【0021】
読出ドライバIC6は、図2に示すように、各読出信号ライン5の一端に読出スイッチ21を介して接続されたセンスアンプ22と、このセンスアンプ22の増幅出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路23と、このサンプルホールド回路23のサンプルホールド値がパラレル入力されてシリアル画像データとして出力するマルチプレクサ24と、このマルチプレクサ24のシリアル画像データをデジタル値に変換するA/Dコンバータ25とで構成されている。A/Dコンバータ25では12〜16bit以上のビット数のデジタル画像データを外部の画像表示装置(図示せず)に出力する。
【0022】
リセット回路9は、各読出信号ライン5の他端にリセットスイッチ31を介して接続されたリセット電位Vrが設定されたリセット電源32を有し、各リセットスイッチ31がタイミングジェネレータ10から供給されるタイミング信号によって、放射線の曝射前に同時にオン状態に制御されて、リセット電源32のリセット電位Vrが各読出信号ライン5に供給される。ここで、リセットスイッチとしては、低寄生容量にするためMEMSスイッチを適用することが好ましい。
この放射線撮像装置1は、図3に示すように把手80を有する携帯型ケース81内にシンチレータ4を透明保護シート82に対向させて収納されている。
【0023】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、図4に示すように、ベッド41に仰向けで寝ている被検査人42の例えば背中の下側に放射線撮像装置1を配置し、この放射線撮像装置1に対向する上方位置に放射線源43を配置し、放射線撮像装置1及び放射線源43をコントローラ44で制御する。
このとき、コントローラ44によって放射線源43をオフ状態に制御し、放射線撮像装置1のシンチレータ4に放射線が曝射されていない状態では、コントローラ44によって放射線撮像装置1のタイミングジェネレータ10に対して撮影待機信号を出力する。このため、放射線撮像装置1のタイミングジェネレータ10では、読出ドライバICの各読出スイッチ21がオフ状態に制御するととともに、リセット回路9のリセットスイッチ31をオフ状態に制御する。さらに、ゲートドライバIC8から出力される行選択信号の出力を停止させる。
【0024】
この状態から、放射線撮像を行うには、先ず、コントローラ44からリセット開始信号が放射線撮像装置1に出力する。このため、放射線撮像装置1では、タイミングジェネレータ10によって、リセット回路9の各リセットスイッチ31を同時にオン状態とするリセット信号が出力されるとともに、ゲートドライバICにもリセット信号が出力される。このため、リセット回路9では各リッセットスイッチが同時にオン状態に制御されるとともに、ゲートドライバIC8から全ての画素11を選択するように全ての行選択信号を出力する。
この結果、全ての画素11のスイッチングトランジスタ14がオン状態に制御されることにより、リセット電源32が各リセットスイッチ31、各読出信号ライン5を介し、全ての画素11のスイッチングトランジスタ14を介してPINフォトダイオードPDのカソード及びコンデンサCの一端に接続される。
【0025】
このため、PINフォトダイオードPDのカソード及びコンデンサCのスイッチングトランジスタ14側がリセット電位Vrとなる。一方、PINフォトダイオードPDのアノード及びコンデンサCの他端がバイアス電源13に接続されてバイアス電位Vbとされている。
この結果、全ての画素のPINダイオードPDの寄生容量及びコンデンサCの残留蓄積電荷の状態が同じなるため、読出しきれない残留電荷のある画素に起因するランダムなアーチファクトの発生を確実に防止することができる。このとき、読出信号ライン5の配線抵抗による電圧降下の影響により、リセット回路9から遠い画素11と近い画素とでリセット状態の電位が微小変化を生じることになるが、その影響は固定パターンノイズとなるので、画像処理などの手段により容易にキャンセルすることができる。
【0026】
ここで、各画素11の残留電荷を速やかに吐き出させるためには、リセット電源32のリセット電位Vrをバイアス電源13のバイアス電位Vbより小さくしてPINフォトダイオードPDに順方向バイアスをかけることが好ましい。この場合PINフォトダイオードPDに過剰な順方向バイアスをかけるのは好ましくないため、例えばバイアス電位Vb=−2Vとしたときには、リセット電位Vr=−2.1〜−3.0Vとして、PINフォトダイオードPDの両端に係る電位差を0.1V〜1V程度にすることが好ましい。
また、バイアス電位Vbとリセット電位Vrとを同一電位としてバイアス電源13及びリセット電源32を共通化する場合には、バイアス電源13から各画素11のPINフォトダイオードPD及びコンデンサCの並列回路12までのバイアスライン15の長さと、リセット電源32から各画素11の並列回路12までの信号線長さとを等しくすることが好ましい。
【0027】
このように、各画素11の残留蓄積電荷のリセットが完了すると、リセット回路9のリセットスイッチ31がオフ状態に復帰される。次いで、コントローラ44から放射線源43に対して放射線を放射する放射線放射指令を出力して所定時間放射線を被検査人42に放射させる。
このとき、被検査人42を透過した放射線がシンチレータ4に曝射されることになり、このシンチレータ4で、曝射された放射線量に対応した可視光量に変換され、光電変換領域3の画素11に照射される。
【0028】
このため、各画素11ではPINフォトダイオードPDで可視光量に応じた電荷が発生されて自身の寄生容量及びこれに並列に接続されるコンデンサCに蓄積される。このPINフォトダイオードPDの寄生容量及びコンデンサCに蓄積された蓄積電荷は、タイミングジェネレータ10から読出ドライバICに供給される読出開始信号によって各読出スイッチ21がオン状態に制御される。これと同時に、タイミングジェネレータ10からゲートドライバIC8に対して読出開始信号が出力されることにより、ゲートドライバIC8から順次行選択信号が出力されることにより、各行の画素11におけるスイッチングトランジスタ14がオン状態となって、PINフォトダイオードPDの寄生容量及びコンデンサCに蓄積された蓄積電荷が読出信号ライン5を介して読出ドライバIC6に供給される。
【0029】
このため、読出ドライバIC6のセンスアンプ22によって増幅されてサンプルホールド回路23でサンプルホールドされ、このサンプルホールド値がマルチプレクサ24によってシリアル放射線画像データとしてA/Dコンバータ25に供給されて、デジタル放射線画像データとして外部の画像表示装置(図示せず)に出力する。
このように、上記実施形態によれば、各画素11の読出信号ライン5にリセット回路9が接続され、このリセット回路9が読出ドライバIC6とは光電変換領域3を挟んで反対側に配設されている。このため、リセット回路9のリセットスイッチ31をオン・オフする際に生じるノイズの影響が読出ドライバIC6に影響することを確実に防止することができる。しかも、読出ドライバIC6とリセット回路9とが互いに分離された回路構成とされているので、リセット回路9のリセットスイッチ31をオン・オフする際に生じるノイズの影響が読出ドライバIC6に影響することをより確実に防止することができる。
【0030】
なお、上記実施形態においては、リセット回路9を独立した回路構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光電変換パネル2に内蔵させるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、リセット回路9を読出ドライバIC6とは光電変換パネル2を介して反対側に配置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように光電変換パネル2の例えばゲートドライバIC8とは反対側の端部に配置するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、光検出素子としてPINフォトダイオードPDを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、MIS素子を適用するようにしてもよい。
【0031】
さらにまた、上記実施形態においては、PINフォトダイオードPDと並列にコンデンサCを接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、PINフォトダイオードPDの寄生容量が電荷を蓄積可能な容量である場合には、コンデンサCを省略するようにしてもよい。
なおさらに、上記実施形態においては、X線を可視光線に変換するシンチレータ4を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、X線以外の放射線を光電変換装置が検知できる光に変換するシンチレータを用いることにより、放射線撮像装置以外の任意の撮像装置に適用することができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、本発明による光電変換装置を放射線撮像装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の等倍撮像装置等の任意の撮像装置の光電変換装置として適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、読出ドライバIC6とリセット回路9とを個別に設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光電変換領域3を挟んで両側に読出ドライバICを形成する場合には、これらの何れか一方をリセット回路専用として使用するようにしてもよい。
【0033】
さらにまた、上記実施形態においては、光電変換パネル2とシンチレータ4とで曝射される放射線を可視光に変換して、この可視光を光電変換して電荷を蓄積する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、シンチレータ4を省略して、放射線検出器50を適用してもよい。この放射線検出器50は、図6に示すように、入射X線を電気信号(電子eまたは正孔h)に変換する光導電層51、光導電層51により電子eまたは正孔hに変換された出力を、光導電層51に入射した入射X線の位置に関連付けて取り出すTFT回路基板52とを有する。光導電層51は、上部電極61と、上部電極61により大気と接することが抑制されたPbIでなる上部多結晶質光電変換膜62と、上部多結晶質光電変換膜62の下方に設けられたPbを含む導電性中間膜63と、導電性中間膜63の下方に設けられた非晶質のPbIでなる下部光電変換膜64とで構成されている。TFT回路基板52は、平板のガラスでなる保持基板71上に積層された相間絶縁膜72上に設けられたTFT回路層73を有する。TFT回路層73は、画素電極(ITO下部電極)74と、互いに直交された行選択信号ライン75及び読出信号ライン76と、夫々のライン75及び76の交差部に1組ずつ設けた薄膜トランジスタ(TFT)77と、任意の画素電極(ITO下部電極)74に流れ込んできた電荷をTFT77のゲート電極がオン状態になるまで保持する電荷蓄積部としてのコンデンサ78を有する。この放射線検出器50の内部等価回路は図7に示すように、各画素11が読出信号ライン76にTFT77を介して画素電極74とコンデンサ78の並列回路が接続され、TFT77のゲートが行選択信号ライン75に接続されている。その他、放射線検出素子としては、CdTe素子を適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を放射線撮像装置に適用した場合の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の放射線撮像装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】放射線撮像装置を収容した携帯型ケースを示す正面図である。
【図4】放射線撮像状態を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す放射線検出器の断面図である。
【図7】図5の放射線検出器の回路構成を示すブロック図である。
【図8】従来例の画素を示す回路図であって、(a)はアクティブピクセル方式の回路図であり、(b)はパッシブピクセル方式の回路図である。
【符号の説明】
【0035】
1…放射線撮像装置、2…光電変換パネル、3…光電変換領域、4…シンチレータ、5…読出信号ライン、6…読出ドライバIC、7…行選択ライン、8…ゲートドライバIC、9…リセット回路、10…タイミングジェネレータ、11…画素、12…並列回路、13…バイアス電源、14…スイッチングトランジスタ、15…バイアスライン、21…読出スイッチ、22…センスアンプ、23…サンプルホールド回路、24…マルチプレクサ、25…A/Dコンバータ、31…リセットスイッチ、32…リセット電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する光検出部を2次元的に配列した光電変換パネルと、該光電変換パネルの電荷蓄積部に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積部の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部とリセット部とを、前記光電変換パネルの異なる端部に配設したことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記リセット部を、前記読出制御部に対して前記光電変換パネルを挟んで反対側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
光を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する光検出部を2次元的に配列した光電変換パネルと、該光電変換パネルの電荷蓄積部に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積部の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部と前記リセット部とを異なる回路構成としたことを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
前記リセット部を、前記光電変換パネルに内蔵させたことを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記光検出部は、光検出素子と電荷蓄積素子とが並列に接続された並列回路を有し、該並列回路は一端にバイアス電位が印加され、他端がスイッチング素子を介して前記読出信号ラインに接続されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記リセット部は、前記読出信号ライン及びリセット電源との間に個別に介挿されたスイッチを有し、リセット時に各スイッチを同時にオン状態に制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記バイアス電源及び前記リセット電源を共通化し、前記バイアス線及び読出信号ラインの長さを一致させたことを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記バイアス電源の電位を前記リセット電源の電位より大きい電位に設定したことを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記光検出素子はPIN素子及びMIS素子の何れかで構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の光電変換装置と、該光電変換装置の前記光電変換パネルの光検出面上に放射線を可視光に変換するシンチレータを配設したことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
放射線を電荷として蓄積する電荷蓄積部を有する放射線検出部を2次元的に配列した放射線検出パネルと、該放射線検出パネルの電荷蓄積素子に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積素子の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部及びリセット部は、前記放射線変換パネルの異なる端部に配設されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
前記リセット部を、前記読出制御部に対して前記放射線検出パネルを挟んで反対側に配設したことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
電荷蓄積素子及び放射線検出素子を有する放射線検出部を2次元的に配列した放射線検出パネルと、該放射線検出パネルの電荷蓄積素子に蓄積された電荷を読出信号ライン単位で読出す読出制御部と、前記読出信号ラインに接続されて前記電荷蓄積素子の残留電荷を前記読出信号ライン単位で放電するリセット部とを備え、前記読出制御部と前記リセット部とを異なる回路構成としたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項14】
前記リセット部を、前記放射線検出パネルに内蔵させたことを特徴とする請求項13に記載の放射線検出装置。
【請求項15】
前記放射線検出部は、放射線検出素子と電荷蓄積素子とが並列に接続された並列回路を有し、該並列回路は一端にバイアス電位が印加され、他端がスイッチング素子を介して前記読出信号ラインに接続されていることを特徴とする請求項11乃至14の何れか1項に記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11033(P2010−11033A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167447(P2008−167447)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】