光電気混載基板およびその製法
【課題】光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れており、かつ、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットを設けるものであっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない光電気混載基板およびその製法を提供する。
【解決手段】光導波路ユニットWは、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された突起部4を備え、その突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。電気回路ユニットEは、突起部4が嵌合する嵌合孔15と光学素子10とを有する折り曲げ部14を備え、嵌合孔15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そして、突起部4が嵌合孔15に嵌合した状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合し、光電気混載基板を構成している。
【解決手段】光導波路ユニットWは、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された突起部4を備え、その突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。電気回路ユニットEは、突起部4が嵌合する嵌合孔15と光学素子10とを有する折り曲げ部14を備え、嵌合孔15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そして、突起部4が嵌合孔15に嵌合した状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合し、光電気混載基板を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを備えた光電気混載基板およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。すなわち、電気配線が形成された電気回路基板に、電気信号を光信号に変換する発光素子や光信号を電気信号に変換する受光素子等の光学素子が実装された電気回路ユニットと、上記光信号を伝送する光配線として光導波路が形成された光導波路ユニットとを備えた光電気混載基板が、上記電子機器等に組み込まれている。
【0003】
上記光電気混載基板として、例えば、図15に示すように、電気回路ユニットE0 の光学素子実装面の裏面側に、その電気回路ユニットE0 と並列状に、光導波路ユニットW0 を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなタイプのものは、光導波路ユニットW0 のコア52(光配線)の一端面52aが45°の傾斜面に形成され、そのコア52の傾斜面が光反射面に形成されている。すなわち、コア52の一端面(傾斜面)52aで光を反射して光路を90°変換し、コア52と光学素子10との間で光伝達が可能な状態になっている(図示の一点鎖線L参照)。なお、図15において、符号51はアンダークラッド層、符号53はオーバークラッド層、符号61は光路用の貫通孔である。
【0004】
上記光電気混載基板では、発光素子から発光された光を、上記光導波路ユニットW0 のコア52の一端面(傾斜面)52aで反射させ、また、上記コア52の他端面(光出口)から出射した光を、受光素子に受光させる必要がある。そのため、上記光学素子(発光素子,受光素子)10とコア52とを調芯する必要がある。
【0005】
そこで、上記光学素子とコアとの調芯方法が、従来より提案されている。その一例として、光導波路ユニットを固定し、その光導波路ユニットのコアの一端面(光入口)に対して、発光素子から光を発光させた状態で、その発光素子の位置を変化させつつ、上記コアの他端面(光出口)から出射した光の強度をモニタリングし、その強度が最大となった位置を、調芯位置として決定する方法がある(特許文献2参照)。また、他の例として、位置決め用の孔部が形成されたコネクタを光導波路ユニットに取り付け、上記孔部に嵌合する位置決め用のピンを電気回路ユニットに取り付け、上記孔部とピンとを嵌合することにより、光学素子と光導波路ユニットのコアとを自動的に調芯する方法がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−192883号公報
【特許文献2】特開平5−196831号公報
【特許文献3】特開2009−223063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の調芯方法では、高精度な調芯が可能であるものの、手間と時間とを要し、量産性に欠ける。また、上記特許文献3の調芯方法では、孔部とピンとの嵌合という簡単な方法で位置合わせが可能であるものの、コネクタおよびピンそれぞれの作製の際の寸法誤差だけでなく、光導波路ユニットに対するコネクタの取り付け位置の位置ずれ,電気回路ユニットに対する位置決め用のピンの取り付け位置の位置ずれ等も生じるため、それら寸法誤差および位置ずれが累積することで、調芯精度が悪化する。そこで、調芯精度を高めようとすると、上記寸法誤差や位置ずれが発生しないよう、寸法精度の管理が必要となるため、コストが高くなるとともに、量産性に欠けたものとなる。
【0008】
しかも、先に述べたように、前記特許文献1のように、電気回路ユニットの光学素子実装面の裏面側に、その電気回路ユニットと並列状に、光導波路ユニットが設けられたものでは、コアと光学素子との間で光伝達を可能とするために、コアの一端面を精度良く45°の傾斜面(光反射面)に形成し、光路を90°変換する必要がある。しかし、これでは、上記傾斜面を形成する必要性から、生産性に欠ける。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れており、かつ、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットを設けるものであっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない光電気混載基板およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、上記アンダークラッド層および上記オーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された電気回路ユニット位置決め用の突起部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上に実装された光学素子と、上記電気回路基板の光学素子実装部分を折り曲げてなる折り曲げ部と、この折り曲げ部に形成され上記突起部が嵌合する嵌合孔とを備え、上記光導波路ユニットの上記突起部が、上記コアの光透過面に対して所定位置に位置決め形成され、上記電気回路ユニットの上記光学素子が、上記折り曲げ部の所定位置に位置決め実装され、その折り曲げ部に形成された上記嵌合孔が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させた状態でなされている光電気混載基板を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させる上記光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアを形成する工程と、上記コアを被覆するようオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層を形成する工程および上記オーバークラッド層を形成する工程の少なくとも一方の工程において、上記コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、上記電気回路基板を形成する工程において、上記光学素子の実装予定位置に対して位置決めされた所定位置に、上記突起部を嵌合させる嵌合孔を形成することが行われ、上記光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた、上記光学素子および上記嵌合孔を含む所定部分を折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させることにより行われる光電気混載基板の製法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光電気混載基板は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、並列状に結合させたものとなっている。そして、上記光導波路ユニットでは、コアの光透過面と、電気回路ユニット位置決め用の突起部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットでは、折り曲げ部が形成され、この折り曲げ部の所定位置に、光学素子が位置決め実装されているとともに、この光学素子に対して所定位置に、上記突起部が嵌合する嵌合孔が形成されている。そのため、上記光導波路ユニットの突起部が、上記電気回路ユニットの嵌合孔に嵌合した状態、すなわち、光導波路ユニットと電気回路ユニットとが結合した状態では、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とが、自動的に調芯された状態になる。さらに、上記嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(上記折り曲げ部)でなされており、光学素子とコアの光透過面とが対面した状態となっている。そのため、本発明のような、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットが設けられた光電気混載基板であっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。しかも、上記光導波路ユニットの突起部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の所定部分が延設されたものであり、上記電気回路ユニットの嵌合孔は、その電気回路ユニットに形成されたものであることから、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯は、高精度になっている。そして、本発明の光電気混載基板は、以上のように、上記電気回路ユニットの光学素子実装部分を折り曲げ、その折り曲げ部の嵌合孔に上記光導波路ユニットの突起部を嵌合させるという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯される構造となっていることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品が不要であることから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0013】
特に、上記光導波路ユニットが、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定されている場合には、その台材により、光導波路ユニットを適正な高さ位置に設定することができる。また、上記台材により、光電気混載基板の強度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の光電気混載基板の製法は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、並列状に結合させることにより行われる。そして、上記光導波路ユニットを作製する工程では、コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設している。また、上記電気回路ユニットを作製する工程では、光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記光導波路ユニットの突起部を嵌合させる嵌合孔と上記光学素子とを含む折り曲げ部を形成している。そのため、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させると、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とを、自動的に調芯することができ、調芯を容易に行うことができる。さらに、上記嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられ(上記折り曲げ部が形成され)、光学素子とコアの光透過面とを対面させた状態で行われる。そのため、本発明のような、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットを設ける光電気混載基板の製法であっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。しかも、上記光導波路ユニットの突起部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の所定部分を延設して形成され、上記電気回路ユニットの嵌合孔は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板の一部に形成されることから、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しない。したがって、本発明の光電気混載基板の製法によれば、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積が生じず、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯が、高精度になる。また、上記のように、コアと光学素子とが自動的に調芯され、しかもコネクタ等の他の部品を不要にできることから、量産性に優れている。
【0015】
特に、上記光導波路ユニットを、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定する場合には、その台材により、光導波路ユニットを適正な高さ位置に設定することができる。また、上記台材により、光電気混載基板の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光電気混載基板の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、上記光電気混載基板を構成する光導波路ユニットを模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面の要部を拡大した断面図である。
【図3】上記光電気混載基板を構成する電気回路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、上記光電気混載基板の製法における光導波路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板の製法における電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、図5に続く、上記電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図7】上記光電気混載基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の光電気混載基板の第2の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図9】(a),(b)は、上記光導波路ユニットに形成された、電気回路ユニット位置決め用の突起部の変形例を模式的に示す正面図である。
【図10】(a)〜(d)は、上記光導波路ユニットの他の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図11】(a)〜(d)は、上記光導波路ユニットの他の形態の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図12】上記光導波路ユニットの他の形態を模式的に示す斜視図である。
【図13】上記光導波路ユニットのさらに他の形態を模式的に示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図14】上記光電気混載基板の第3の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図15】従来の光電気混載基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の光電気混載基板の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。この光電気混載基板は、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を有する光導波路ユニットWと、その突起部4が嵌合する嵌合孔15を有する電気回路ユニットEとを、個別に作製し、上記光導波路ユニットWの上記突起部4を、上記電気回路ユニットEの上記嵌合孔15に嵌合することにより、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを結合して一体化したものとなっている。そして、上記電気回路ユニットEには、折り曲げ部14が形成されており、この折り曲げ部14に、上記嵌合孔15が形成されているとともに、光学素子10が実装されている。この電気回路ユニットEの表面には、台材Sを介して、上記光導波路ユニットWが、上記電気回路ユニットEと並列状に載置されている。なお、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとは、上記台材Sを介して、必要に応じて、接着剤または粘着テープ等により固定してもよい。
【0019】
ここで、光導波路ユニットWにおいて、上記突起部4は、コア2の光透過面(一端面)2aに対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に光導波路ユニットWの光透過面2aが電気回路ユニットEの光学素子10と対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。また、上記電気回路ユニットEにおいて、上記突起部4が嵌合する上記嵌合孔15は、光学素子10に対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に電気回路ユニットEの光学素子10が光導波路ユニットWの光透過面2aと対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。このため、上記光電気混載基板では、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合により、コア2の光透過面2aと光学素子10とが、自動的に、適正に位置決めされ、調芯された状態になっている。また、上記台材Sにより、光導波路ユニットが適正な高さ位置に設定されているとともに、光電気混載基板の強度が向上している。
【0020】
より詳しく説明すると、上記光導波路ユニットWは、その斜視図を図2(a)に、そのA−A断面での要部拡大断面図を図2(b)に示すように、アンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンの線状に形成された光路用のコア2と、このコア2を被覆した状態で上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とを備えている。そして、この光導波路ユニットWの一端縁(図2では下端縁)では、コア2の存在しない、上記アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分が、コア2の軸方向に沿って延長され、その延長部分が、電気回路ユニット位置決め用の上記突起部4に形成されている。この突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記突起部4の配置は、コア2の両側(2個所)に形成されており、上記突起部4の形状は、厚み(アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層方向の厚み)が一定で、幅が延長方向にいくにつれて徐々に狭くなる平面視台形状に形成されている。
【0021】
一方、上記電気回路ユニットEは、その斜視図を図3に示すように、基板11と、この基板11の表面(図では下面)に形成された絶縁層(図示せず)と、この絶縁層の表面(図では下面)に形成された電気回路(図示せず)と、この電気回路の一部分を構成する光学素子実装用パッドに実装された光学素子10とを備えている。そして、この電気回路ユニットEには、上記光学素子10の実装部分が、上記基板11に対し直角に起立状に折り曲げられ、長方形板状の折り曲げ部14に形成されている。この折り曲げ部14は、上記基板11と絶縁層との積層部分の一部分が、コ字状に切り込まれ、そのコ字状の切り込みで囲まれる舌片状部分が、上記積層部分と直角に起立形成されたものである。また、その折り曲げ部14には、上記光導波路ユニットWの突起部4〔図2(a)参照〕が嵌合する嵌合孔15が形成されている。上記折り曲げ部14および上記嵌合孔15は、上記光学素子10に対して、所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記嵌合孔15の配置は、上記光学素子10の両側(2個所)に形成されており、上記嵌合孔15の形状は、長方形状に形成されている。
【0022】
なお、上記絶縁層は、上記基板11のうち嵌合孔15を除く表面に形成されている。そして、その絶縁層の表面には、上記光学素子実装用パッドを含む電気回路とともに、上記嵌合孔15を位置決め形成する際の目印として利用される嵌合孔位置決め用回路(図示せず)、および上記折り曲げ部14を位置決め形成する際の目印として利用される折り曲げ部位置決め用回路(図示せず)が形成されている。上記嵌合孔位置決め用回路は、上記嵌合孔15の周縁に、枠状に形成されている。上記折り曲げ部位置決め用回路は、上記折り曲げ部14となる上記舌片状部分を形成する上記コ字状の切り込みに沿って、形成されている。さらに、これら光学素子実装用パッド,電気回路,嵌合孔位置決め用回路,折り曲げ部位置決め用回路の表面には、めっき層(図示せず)が形成されている。上記光学素子10は、この実施の形態では、ワイヤーボンディングタイプの素子が用いられており、その発光部または受光部は、光学素子10の表面(図3では右面)に形成されている。
【0023】
そして、上記光電気混載基板は、図1に示すように、上記光導波路ユニットWの上記突起部4が、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部14の嵌合孔15に嵌合されている状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが並列状に結合されている。ここで、先に述べたように、光導波路ユニットWに形成された上記突起部4は、予め、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。また、電気回路ユニットEに形成された嵌合孔15は、予め、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そのため、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合により、コア2の光透過面2aと光学素子10とは、適正に位置決めされ、自動的に調芯された状態になる。さらに、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(折り曲げ部14)でなされており、光学素子10とコア2の光透過面2aとが対面した状態となっている。そのため、この実施の形態のように、電気回路ユニットEと並列状に光導波路ユニットWが設けられた光電気混載基板であっても、コア2の端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。
【0024】
しかも、この実施の形態では、光導波路ユニットWの上記突起部4が台形状に形成されているため、電気回路ユニットEの上記長方形状の嵌合孔15の開口長さを所定値に設定することにより、上記台形状の突起部4の対向する傾斜面を、上記長方形状の嵌合孔15の対向する両面に当接させて、上記突起部4の嵌合量(嵌合深さ)を適正に設定することができ、それにより、光導波路ユニットWの一端面(コア2の光透過面2a)と、電気回路ユニットEの光学素子10との間の距離を適正に設定することができる。また、上記突起部4の幅や上記嵌合孔15の開口長さ等に寸法収縮等が発生しても、上記台形状の突起部4の対向する傾斜面を利用することにより、上記突起部4と上記嵌合孔15とは、同軸的に嵌合し、コア2と光学素子10との調芯ずれを防止することができる。なお、図1では、理解を容易にするため、上記嵌合孔15の大きさを、上記突起部4の大きさに対し大きめに図示しているが、実際は、同等ないし僅かに大きい程度である。
【0025】
上記光電気混載基板は、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光導波路ユニットWを作製する工程〔図4(a)〜(d)参照〕。
(2)上記電気回路ユニットEを作製する工程〔図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)参照〕。
(3)上記光導波路ユニットWを上記電気回路ユニットEに結合する工程(図7参照)。
【0026】
〔(1)光導波路ユニットWの作製工程〕
上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程について説明する。まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基台20〔図4(a)参照〕を準備する。この基台20の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。また、基台20の厚みは、例えば、20μm〜1mmの範囲内に設定される。
【0027】
ついで、図4(a)に示すように、上記基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、その一端縁の2個所に平面視台形状の突起片1aが形成されたアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、感光性エポキシ樹脂等の感光性樹脂が用いられる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0028】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア2を形成する。このとき、コア2の光透過面(一端面)2aを、アンダークラッド層1の表面のうち、上記2個所の突起片1aの間の部分において、上記2個所の突起片1aに対して所定位置に位置決めする。このコア2の位置決めは、上記2個所の突起片1aを基準に形成されたフォトマスクを、上記フォトリソグラフィ法によりコア2を形成する際に、上記2個所の突起片1aを基準に配置した状態で、上記フォトマスクを介して露光することにより行われる。
【0029】
上記コア2の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層1およびオーバークラッド層3〔図4(c)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。コアの数は、1本でも複数本でもよい〔図4(b)では1本〕。コア2のパターンは、例えば、直線状,分岐状,交差状等があげられ、それらが混在していてもよい〔図4(b)では直線状〕。コア2の厚みは、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。コア2の幅は、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。
【0030】
そして、図4(c)に示すように、上記コア2を被覆するよう、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層3を形成する。このとき、上記アンダークラッド層1の突起片1a上にも、その突起片1aと同形状の突起片3aを形成する。上記オーバークラッド層3の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられる。上記オーバークラッド層3の厚み(アンダークラッド層1の表面からの厚み)は、例えば、コア2の厚みを上回り1000μm以下の範囲内に設定される。
【0031】
ここで、上記アンダークラッド層1の突起片1aと、その上に形成された上記オーバークラッド層の突起片3aとの積層部分が、電気回路ユニット位置決め用の前記突起部4となる。そして、先に述べたように、コア2の光透過面2aが、上記アンダークラッド層1の突起片1aに対して所定位置に位置決め形成されていることから、その突起片1aに上記オーバークラッド層の突起片3aを積層してなる上記突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。上記突起部4の寸法は、例えば、突出量が300〜5000μmの範囲内、幅が100〜5000μmの範囲内にそれぞれ設定される。
【0032】
ついで、図4(d)に示すように、アンダークラッド層1の裏面から基台20〔図4(c)参照〕を剥離する。これにより、アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3を備え、上記アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分に電気回路ユニット位置決め用の突起部4が延設された光導波路ユニットWを得る。この光導波路ユニットWの厚みは、例えば、30〜1150μmの範囲内に設定される。このようにして、上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程が完了する。
【0033】
〔(2)電気回路ユニットEの作製工程〕
つぎに、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程について、図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)を用いて説明する。これら図5,6の各(a)〜(c)には、左右に2つの図を示しており、左側の図が平面図、右側の図がその中心線での縦断面図である。
【0034】
まず、前記基板11〔図5(a)参照〕を準備する。この基板11の形成材料としては、例えば、金属,樹脂等があげられる。なかでも、加工容易性および寸法安定性の観点から、ステンレス製基板が好ましい。また、上記基板11の厚みは、例えば、0.02〜0.1mmの範囲内に設定される。
【0035】
ついで、図5(a)に示すように、上記基板11の表面の所定領域に、絶縁層12に形成する。この絶縁層12の形成は、例えば、感光性ポリイミド樹脂等の、絶縁層形成用の感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、必要に応じて、それを加熱処理して乾燥させ、絶縁層形成用の感光性樹脂層を形成する。そして、その感光性樹脂層を、フォトマスクを介して紫外線等の照射線により露光することにより、所定形状の絶縁層12に形成する。絶縁層12の厚みは、例えば、5〜15μmの範囲内に設定される。
【0036】
つぎに、図5(b)に示すように、上記絶縁層12の表面に、光学素子実装用パッド13aを含む電気回路(図示せず)と、枠状の嵌合孔位置決め用回路13bと、コ字状の折り曲げ部位置決め用回路13cとを、同時に形成し、電気回路基板を作製する。これら電気回路等の形成は、例えば、セミアディティブ法により行われる。
【0037】
すなわち、まず、上記絶縁層12の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により金属層(厚み60〜260nm程度)を形成する。この金属層は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記基板11,絶縁層12およびシード層からなる積層体の両面に、ドライフィルムレジストを貼着した後、上記シード層が形成されている側のドライフィルムレジストに、フォトリソグラフィ法により上記電気回路等のパターンの孔部を同時に形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、電解めっき層(厚み5〜20μm程度)を積層形成する。そして、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層部分をソフトエッチングにより除去し、残存した電解めっき層とその下のシード層とからなる積層部分を上記電気回路等に形成する。このようにして、上記基板11,絶縁層12、光学素子実装用パッド13aを含む電気回路,嵌合孔位置決め用回路13b,および折り曲げ部位置決め用回路13cからなる電気回路基板を得る。
【0038】
そして、その電気回路基板を露光機にセットし、表面側(電気回路側)と裏面側(基板11側)とをカメラで撮影し、その画像を基に、上記表面側の枠状の嵌合孔位置決め用回路13bを目印として、上記裏面側における嵌合孔形成予定部(上記枠状の嵌合孔位置決め用回路13bの枠内に対応する部分)の位置を適正に位置決めするとともに、上記表面側の折り曲げ部位置決め用回路13cを目印として、折り曲げ部形成予定部(舌片状部分14A)の裏面側の位置を適正に位置決めする。ついで、その裏面側のうち、上記嵌合孔形成予定部,および舌片状の上記折り曲げ部形成予定部を形成するためのコ字状の切り込み予定部を除く部分を、ドライフィルムレジスト(図示せず)で覆う。つぎに、図5(c)に示すように、露呈している上記嵌合孔形成予定部および上記コ字状の切り込み予定部の基板11の部分を、塩化第2鉄水溶液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、その除去部分11a,11bから上記絶縁層12の部分が露呈する。
【0039】
ついで、図6(a)に示すように、上記露呈した絶縁層12の部分を、ケミカルエッチング液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、上記嵌合孔形成予定部を嵌合孔15に形成するとともに、上記コ字状の切り込み予定部をコ字状の切り込み16に形成する(コ字状の貫通状態にする)。上記嵌合孔15およびコ字状の切り込み16は、上記セミアディティブ法により光学素子実装用パッド13aと同時に形成した枠状の嵌合孔位置決め用回路13bおよび折り曲げ部位置決め用回路13cを基準に形成されているため、上記嵌合孔15およびコ字状の切り込み16は、上記光学素子実装用パッド13aに対して所定位置に位置決め形成される。上記嵌合孔15の開口長さおよび開口幅は、その嵌合孔15に嵌合する上記光導波路ユニットの突起部4(図1参照)の嵌合部分の幅および厚みと同等ないしそれよりも僅かに(例えば1〜100μm程度)大きく設定される。
【0040】
つぎに、電解めっき処理を施すことにより、上記光学素子実装用パッド13aを含む電気回路,嵌合孔位置決め用回路13b,および折り曲げ部位置決め用回路13cの表面に、めっき層(図示せず)を形成する。その後、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。なお、上記めっき層の成分としては、金,ニッケル等があげられる。また、そのめっき層の厚みは、通常、0.2〜0.5μmの範囲内に設定される。
【0041】
そして、図6(b)に示すように、光学素子実装用パッド13aの表面に、上記めっき層を介して、上記光学素子10を実装する。その後、必要に応じて、上記光学素子10およびその周辺部を、樹脂封止(図示せず)する。
【0042】
つぎに、図6(c)に示すように、上記コ字状の切り込み16〔図6(b)参照〕で囲まれ、上記光学素子10が実装された舌片状部分14Aを、上記電気回路基板と直角に垂下状に折り曲げ、折り曲げ部14に形成する。すなわち、上記光学素子10は、この折り曲げ部14の所定位置に実装されている。これにより、上記嵌合孔15および上記折り曲げ部14を有する電気回路ユニットEを得る。ここで、先に述べたように、図6(a)の工程で形成された上記嵌合孔15が、上記光学素子実装用パッド13aに対して所定位置に位置決め形成されているため、その光学素子実装用パッド13aに実装した光学素子10と上記嵌合孔15とは、互いに位置決めされた位置関係になっている。このようにして、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程が完了する。
【0043】
〔(3)光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程〕
つぎに、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程について説明する。この結合は、図7〔図6(c)に示す電気回路ユニットEを上下逆に図示している)に斜視図で示すように、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部14の光学素子10と、上記光導波路ユニットWのコア2の光透過面2aとを対面させた状態で、上記光導波路ユニットWの突起部4を、上記折り曲げ部14の嵌合孔15に嵌合させ、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを一体化する。その後、必要に応じて、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合部を接着剤で固定する。そして、上記電気回路ユニットEの表面に、台材S(図1参照)を介して、上記光導波路ユニットWを載置する。その後、必要に応じて、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを、上記台材Sを介して、接着剤または粘着テープ等により固定してもよい。このようにして、上記(3)の光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程が完了し、目的とする光電気混載基板が完成する。
【0044】
ここで、先に述べたように、上記光導波路ユニットWでは、コア2の光透過面2aと電気回路ユニット位置決め用の突起部4とが互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記光学素子10が実装された電気回路ユニットEでは、光学素子10と上記突起部4が嵌合する嵌合孔15とが互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記のように、上記突起部4を上記嵌合孔15に嵌合させて、上記光電気混載基板を作製すると、コア2の光透過面2aと光学素子10とが、自動的に調芯される。その結果、上記光電気混載基板の作製には、手間と時間とを要する調芯作業が不要となる。すなわち、上記光電気混載基板は、量産性に優れたものとなっている。
【0045】
しかも、上記光導波路ユニットWの突起部4は、その光導波路ユニットWを構成するアンダークラッド層1およびオーバークラッド層3の所定部分が延設されたものである。また、上記電気回路ユニットEの嵌合孔15は、その電気回路ユニットEを構成する電気回路基板に形成されたものである。すなわち、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットWのコア2と電気回路ユニットEの光学素子10との調芯は、高精度になっている。また、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要となっており、この点からも、量産性に優れている。
【0046】
さらに、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(折り曲げ部14)でなされており、光学素子10とコア2の光透過面2aとが対面した状態となっている。そのため、この実施の形態のように、電気回路ユニットEと並列状に光導波路ユニットWを設ける光電気混載基板の製法であっても、コア2の端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。
【0047】
なお、上記実施の形態において、通常、光学素子10の大きさは、光導波路ユニットWの厚みに対して大きいため、上記のように、光学素子10が実装された折り曲げ部14において、コア2の光透過面2aと光学素子10とが調芯された状態では、電気回路ユニットEと光導波路ユニットWの間に隙間が形成される。上記台材Sは、その隙間を埋めるために、すなわち、電気回路ユニットEに対する光導波路ユニットWの高さ調整のために設けられている。
【0048】
図8は、本発明の光電気混載基板の第2の実施の形態を模式的に示す斜視図である。この実施の形態では、電気回路ユニットEの折り曲げ部14が、図示のように、4本の平行な折り曲げ線17a〜17dで折り曲げられることにより形成されている。そのため、隣り合う折り曲げ線17a〜17dの間の平板部分18A〜18Cが3個所形成されている。そして、それら3個所の平板部分18A〜18Cのうち、真ん中の平板部分18Bの所定位置に、上記第1の実施の形態と同様に、光学素子10が実装されているとともに、光導波路ユニットWの突起部4が嵌合する嵌合孔15が形成されている。その真ん中の平板部分18Bは、電気回路ユニットEの基板11に対し直角になっている。
【0049】
この第2の実施の形態では、上記折り曲げ線17a〜17dが、光学素子10に対して所定の位置に位置決め形成されている。そして、それら折り曲げ線17a〜17dで折り曲げて上記折り曲げ部14を形成することにより、電気回路ユニットEにおける、光導波路ユニットWの載置面の高さ位置を、所定の高さ位置に設定することができる。そのため、光導波路ユニットWの突起部4と電気回路ユニットEの嵌合孔15とが嵌合し、コア2の光透過面2aと光学素子10とが調芯された状態において、電気回路ユニットEと光導波路ユニットWの間に隙間を形成しないようにすることができる。そのため、この第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態で設けられている台材S(図1参照)は、設けられていない。それ以外の電気回路ユニットEの部分および光導波路ユニットWは、図1に示す上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。そして、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0050】
この第2の実施の形態において、電気回路ユニットEの折り曲げ部14を形成するための上記所定の折り曲げ線17a〜17dは、電気回路ユニットEの基板11をエッチングする工程〔図5(c)参照〕において、光学素子実装用パッド13aを基準とした所定の位置に、上記基板11をハーフエッチングすることにより、形成することができる。
【0051】
図9(a),(b)は、上記電気回路ユニット位置決め用の突起部4の変形例を模式的に示す正面図である。すなわち、図9(a)では、上記突起部4が三角形状に形成されている。この場合は、図1に示す台形状の突起部4と同様、三角形状の傾斜面を利用して、光導波路ユニットWの一端面(コア2の光透過面2a)と、電気回路ユニットEの光学素子10との間の距離を適正に設定することができ、また、コア2と光学素子10との調芯ずれを防止することもできる(図1参照)。図9(b)では、上記突起部4が段部状に形成されている。この場合は、上記突起部4が嵌合孔15(図1参照)に嵌合した後は、突起部4が抜け難くなっている。上記以外にも、例えば、上記突起部4を半円状等に形成してもよい。
【0052】
図10(a)〜(d)は、光導波路ユニットWの作製おいて、突起片3aを含むオーバークラッド層3〔図4(c)参照〕の他の作製工程(作製方法)として、型成形による方法を模式的に示している。すなわち、上記各実施の形態では、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3の形成をフォトリソグラフィ法により形成したが、型成形により形成してもよい。その形成は、つぎのようにして行われる。
【0053】
すなわち、まず、図10(a)に示すように、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3の形状に対応する型面31を有する凹部が、その上面に形成されている成形型30を準備する。ついで、図10(b)に示すように〔図4(b)と同様にして〕、基台20の表面に、突起片1aを有するアンダークラッド層1を形成し、このアンダークラッド層1の表面にコア2を所定パターンに形成する。そして、図10(c)に示すように、上記成形型30の凹部に、オーバークラッド層形成用の樹脂を満たした後、その樹脂内に上記コア2が浸かるよう〔図10(b)に図示したものを上下逆にし〕、上記成形型30の上面に、基台20の表面を密着させる。このとき、上記成形型30の、上記突起片3aに対応する型面部分31aを、アンダークラッド層1の突起片1a上に位置決めする。ついで、上記樹脂が感光性樹脂の場合は、上記成形型30を通して紫外線等の照射線を露光した後に加熱処理を行い、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、加熱処理を行う。これにより、上記オーバークラッド層形成用の樹脂が硬化し、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3が形成される。そして、脱型し、図10(d)に示すように〔図10(c)に図示した状態から脱型したものを上下逆に図示している〕、図4(c)と同様のものを得る。このようにして形成してもよい。
【0054】
図11(a)〜(d)は、光導波路ユニットWの他の形態の作製工程を模式的に示している。すなわち、上記各実施の形態では、光導波路ユニットWにおける電気回路ユニット位置決め用の突起部4を、アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分を延設したものとしたが、〔図4(c)参照〕、オーバークラッド層3のみを延設したものとしてもよい。そのような光導波路ユニットWの作製工程(作製方法)は、つぎのようにして行われる。
【0055】
すなわち、まず、図11(a)に示すように、基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、上記突起片1a〔図4(a)参照〕のないアンダークラッド層1を形成する。ついで、図11(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア2を形成する。つぎに、図11(c)に示すように、突起部4を含むオーバークラッド層3の形状に対応する型面31を有する凹部が、その上面に形成されている成形型30を準備する。そして、図11(d)に示すように、上記成形型30の凹部に、オーバークラッド層形成用の樹脂を満たした後、その樹脂内に上記コア2が浸かるよう、上記成形型30の上面に、基台20の表面を密着させる。このとき、上記成形型30の、上記突起部4に対応する型面部分31aを、コア2の光透過面2aに対して位置決めする。その後は、図10(c)で説明した上記方法と同様にして、上記突起部4を含むオーバークラッド層3を形成する。そして、脱型し、図12に示すように、基台20の表面に、オーバークラッド層3のみに上記突起部4が延設された光導波路ユニットWを得る。または、上記オーバークラッド層3の形成は、上記型成形〔図11(c)〜(d)参照〕に代えて、フォトリソグラフィ法により行ってもよい。
【0056】
なお、上記形態〔図11(a)〜(d)参照〕では、オーバークラッド層3のみに、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を延設したが、アンダークラッド層1のみに、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を延設してもよい。そのような光導波路ユニットWの作製工程(作製方法)は、基台20の表面に、突起片1aを有するアンダークラッド層1が形成され、このアンダークラッド層1の表面にコア2が所定パターンに形成された状態〔図4(b)と同様の状態〕において、型成形またはフォトリソグラフィ法により、上記突起片3a〔図4(c)参照〕のないオーバークラッド層3を形成することにより、作製することができる。
【0057】
図13(a),(b)は、光導波路ユニットWのさらに他の形態を模式的に示している。この実施の形態では、図13(a)に正面図、図13(b)に図13(a)のB−B断面図で示すように、オーバークラッド層3がアンダークラッド層1よりも、一回り大きく形成されている。このような光導波路ユニットWも、先に述べた型成形またはフォトリソグラフィ法により作製することができる。
【0058】
上記のように〔図10(a)〜(c)、図11(a)〜(d)、図13(a),(b)参照〕、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を型成形により形成すると、その突起部4の厚みを厚く形成することが可能となり、その突起部4を電気回路ユニットEの嵌合孔15に嵌合した状態において、その嵌合部分の強度を向上させることができる。また、上記型成形の場合、上記成形型30の、上記突起部4に対応する型面部分31aを変形することにより、上記突起部4の厚みを、延長方向にいくにつれて徐々に薄く形成してもよい。
【0059】
なお、上記各実施の形態では、光学素子10として、ワイヤーボンディングタイプの素子を用いたが、フリップチップタイプの素子を用いてもよい。このフリップチップタイプの素子を用いる場合は、発光部または受光部が、光学素子10の実装面(裏面)に形成されているため、図14に示すように、光導波路ユニットWは、光学素子10が実装されていない側から電気回路ユニットEに嵌合され、上記発光部または受光部に対応する電気回路ユニットEの部分には、光通過用の貫通孔19が形成されている。
【0060】
また、上記各実施の形態では、光電気混載基板の一端部について説明したが、他端部においても、上記各実施の形態と同様の構成としてもよい。この場合は、上記光学素子10として、例えば、一端部側に発光素子、他端部側に受光素子を実装することにより、その発光素子からの光を、コア2を介して、上記受光素子で受光するようにすることができる。
【0061】
さらに、上記各実施の形態では、電気回路ユニットEの作製工程において、電気回路,光学素子実装用パッド13a,嵌合孔位置決め用回路13b,折り曲げ部位置決め用回路13cの表面に、めっき層を形成したが、このめっき層は、必要に応じて形成されるものであり、不要な場合は、形成しなくてもよい。
【0062】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0063】
〔アンダークラッド層,オーバークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)100重量部。
成分B:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部。
これら成分A,Bをシクロヘキサノンに溶解することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0064】
〔コアの形成材料〕
成分C:O−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐡化学社製、YDCN−700−10)100重量部。
この成分Cと上記成分B1重量部とを乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0065】
〔実施例1〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記アンダークラッド層,コア,オーバークラッド層の各形成材料を用い、上記第1の実施の形態〔図2(a),(b)参照〕と同様にして、電気回路ユニット位置決め用の等脚台形状の突起部を有する光導波路ユニットを作製した。上記等脚台形状の突起部の寸法は、底辺(長い方の辺)の幅を2.5mm、頂辺(短い方の辺)の幅を1.0mm、高さ(突出長さ)を3.0mm、隣り合う突起部の中心間距離を6.5mmとした。
【0066】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記第1の実施の形態(図3参照)と同様にして、折り曲げ部に、光学素子が実装されているとともに、上記電気回路ユニット位置決め用の突起部を嵌合させる長方形状の嵌合孔が形成された電気回路ユニットを作製した。その嵌合孔の寸法は、開口長さを2.5mm、開口幅を0.1mm、隣り合う嵌合孔の中心間距離を6.5mmとした。なお、光学素子として、ワイヤーボンディングタイプの発光素子(ULMフォトニクス社製、ULM850−10−CO0104U)を実装した。
【0067】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットの突起部を、上記電気回路ユニットの嵌合孔に嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。また、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの間に台材を設けた。
【0068】
〔光伝播試験〕
上記実施例1の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、光電気混載基板のコアの他端部から光が出射されることを確認した。
【0069】
〔実施例2〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、電気回路ユニット位置決め用の等脚台形状の突起部を有する光導波路ユニットを作製した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0070】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1と同様の電気回路ユニットを作製した。さらに、上記実施例1の電気回路ユニットにおいて、発光素子に代えて、ワイヤーボンディングタイプの受光素子(albis社製、PDCA04−70−GS)を実装したものを作製した。
【0071】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例1と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0072】
〔信号伝送試験〕
上記実施例2の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、その光が受光素子で受光されていることを確認した。
【0073】
上記実施例1,2の結果から、上記製法では、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子(発光素子,受光素子)との調芯作業をしなくても、得られた光電気混載基板は、適正に光伝播することがわかる。
【0074】
なお、上記第2の実施の形態(図8参照),図9〜14に示すように形成した光電気混載基板でも、上記実施例1,2と同様、調芯作業をしなくても、適正に光伝播するという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の光電気混載基板は、音声や画像等のデジタル信号を高速で伝送,処理する情報通信機器,信号処理装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
W 光導波路ユニット
E 電気回路ユニット
2 コア
2a 光透過面
4 突起部
10 光学素子
14 折り曲げ部
15 嵌合孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを備えた光電気混載基板およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。すなわち、電気配線が形成された電気回路基板に、電気信号を光信号に変換する発光素子や光信号を電気信号に変換する受光素子等の光学素子が実装された電気回路ユニットと、上記光信号を伝送する光配線として光導波路が形成された光導波路ユニットとを備えた光電気混載基板が、上記電子機器等に組み込まれている。
【0003】
上記光電気混載基板として、例えば、図15に示すように、電気回路ユニットE0 の光学素子実装面の裏面側に、その電気回路ユニットE0 と並列状に、光導波路ユニットW0 を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなタイプのものは、光導波路ユニットW0 のコア52(光配線)の一端面52aが45°の傾斜面に形成され、そのコア52の傾斜面が光反射面に形成されている。すなわち、コア52の一端面(傾斜面)52aで光を反射して光路を90°変換し、コア52と光学素子10との間で光伝達が可能な状態になっている(図示の一点鎖線L参照)。なお、図15において、符号51はアンダークラッド層、符号53はオーバークラッド層、符号61は光路用の貫通孔である。
【0004】
上記光電気混載基板では、発光素子から発光された光を、上記光導波路ユニットW0 のコア52の一端面(傾斜面)52aで反射させ、また、上記コア52の他端面(光出口)から出射した光を、受光素子に受光させる必要がある。そのため、上記光学素子(発光素子,受光素子)10とコア52とを調芯する必要がある。
【0005】
そこで、上記光学素子とコアとの調芯方法が、従来より提案されている。その一例として、光導波路ユニットを固定し、その光導波路ユニットのコアの一端面(光入口)に対して、発光素子から光を発光させた状態で、その発光素子の位置を変化させつつ、上記コアの他端面(光出口)から出射した光の強度をモニタリングし、その強度が最大となった位置を、調芯位置として決定する方法がある(特許文献2参照)。また、他の例として、位置決め用の孔部が形成されたコネクタを光導波路ユニットに取り付け、上記孔部に嵌合する位置決め用のピンを電気回路ユニットに取り付け、上記孔部とピンとを嵌合することにより、光学素子と光導波路ユニットのコアとを自動的に調芯する方法がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−192883号公報
【特許文献2】特開平5−196831号公報
【特許文献3】特開2009−223063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の調芯方法では、高精度な調芯が可能であるものの、手間と時間とを要し、量産性に欠ける。また、上記特許文献3の調芯方法では、孔部とピンとの嵌合という簡単な方法で位置合わせが可能であるものの、コネクタおよびピンそれぞれの作製の際の寸法誤差だけでなく、光導波路ユニットに対するコネクタの取り付け位置の位置ずれ,電気回路ユニットに対する位置決め用のピンの取り付け位置の位置ずれ等も生じるため、それら寸法誤差および位置ずれが累積することで、調芯精度が悪化する。そこで、調芯精度を高めようとすると、上記寸法誤差や位置ずれが発生しないよう、寸法精度の管理が必要となるため、コストが高くなるとともに、量産性に欠けたものとなる。
【0008】
しかも、先に述べたように、前記特許文献1のように、電気回路ユニットの光学素子実装面の裏面側に、その電気回路ユニットと並列状に、光導波路ユニットが設けられたものでは、コアと光学素子との間で光伝達を可能とするために、コアの一端面を精度良く45°の傾斜面(光反射面)に形成し、光路を90°変換する必要がある。しかし、これでは、上記傾斜面を形成する必要性から、生産性に欠ける。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れており、かつ、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットを設けるものであっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない光電気混載基板およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、上記アンダークラッド層および上記オーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された電気回路ユニット位置決め用の突起部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上に実装された光学素子と、上記電気回路基板の光学素子実装部分を折り曲げてなる折り曲げ部と、この折り曲げ部に形成され上記突起部が嵌合する嵌合孔とを備え、上記光導波路ユニットの上記突起部が、上記コアの光透過面に対して所定位置に位置決め形成され、上記電気回路ユニットの上記光学素子が、上記折り曲げ部の所定位置に位置決め実装され、その折り曲げ部に形成された上記嵌合孔が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させた状態でなされている光電気混載基板を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させる上記光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアを形成する工程と、上記コアを被覆するようオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層を形成する工程および上記オーバークラッド層を形成する工程の少なくとも一方の工程において、上記コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、上記電気回路基板を形成する工程において、上記光学素子の実装予定位置に対して位置決めされた所定位置に、上記突起部を嵌合させる嵌合孔を形成することが行われ、上記光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた、上記光学素子および上記嵌合孔を含む所定部分を折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させることにより行われる光電気混載基板の製法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光電気混載基板は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、並列状に結合させたものとなっている。そして、上記光導波路ユニットでは、コアの光透過面と、電気回路ユニット位置決め用の突起部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットでは、折り曲げ部が形成され、この折り曲げ部の所定位置に、光学素子が位置決め実装されているとともに、この光学素子に対して所定位置に、上記突起部が嵌合する嵌合孔が形成されている。そのため、上記光導波路ユニットの突起部が、上記電気回路ユニットの嵌合孔に嵌合した状態、すなわち、光導波路ユニットと電気回路ユニットとが結合した状態では、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とが、自動的に調芯された状態になる。さらに、上記嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(上記折り曲げ部)でなされており、光学素子とコアの光透過面とが対面した状態となっている。そのため、本発明のような、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットが設けられた光電気混載基板であっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。しかも、上記光導波路ユニットの突起部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の所定部分が延設されたものであり、上記電気回路ユニットの嵌合孔は、その電気回路ユニットに形成されたものであることから、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯は、高精度になっている。そして、本発明の光電気混載基板は、以上のように、上記電気回路ユニットの光学素子実装部分を折り曲げ、その折り曲げ部の嵌合孔に上記光導波路ユニットの突起部を嵌合させるという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯される構造となっていることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品が不要であることから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0013】
特に、上記光導波路ユニットが、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定されている場合には、その台材により、光導波路ユニットを適正な高さ位置に設定することができる。また、上記台材により、光電気混載基板の強度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の光電気混載基板の製法は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、並列状に結合させることにより行われる。そして、上記光導波路ユニットを作製する工程では、コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設している。また、上記電気回路ユニットを作製する工程では、光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記光導波路ユニットの突起部を嵌合させる嵌合孔と上記光学素子とを含む折り曲げ部を形成している。そのため、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させると、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とを、自動的に調芯することができ、調芯を容易に行うことができる。さらに、上記嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられ(上記折り曲げ部が形成され)、光学素子とコアの光透過面とを対面させた状態で行われる。そのため、本発明のような、電気回路ユニットと並列状に光導波路ユニットを設ける光電気混載基板の製法であっても、コアの端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。しかも、上記光導波路ユニットの突起部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層およびオーバークラッド層の少なくとも一方の所定部分を延設して形成され、上記電気回路ユニットの嵌合孔は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板の一部に形成されることから、上記突起部と上記嵌合孔との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しない。したがって、本発明の光電気混載基板の製法によれば、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積が生じず、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯が、高精度になる。また、上記のように、コアと光学素子とが自動的に調芯され、しかもコネクタ等の他の部品を不要にできることから、量産性に優れている。
【0015】
特に、上記光導波路ユニットを、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定する場合には、その台材により、光導波路ユニットを適正な高さ位置に設定することができる。また、上記台材により、光電気混載基板の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光電気混載基板の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、上記光電気混載基板を構成する光導波路ユニットを模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面の要部を拡大した断面図である。
【図3】上記光電気混載基板を構成する電気回路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、上記光電気混載基板の製法における光導波路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板の製法における電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、図5に続く、上記電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図7】上記光電気混載基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の光電気混載基板の第2の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図9】(a),(b)は、上記光導波路ユニットに形成された、電気回路ユニット位置決め用の突起部の変形例を模式的に示す正面図である。
【図10】(a)〜(d)は、上記光導波路ユニットの他の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図11】(a)〜(d)は、上記光導波路ユニットの他の形態の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図12】上記光導波路ユニットの他の形態を模式的に示す斜視図である。
【図13】上記光導波路ユニットのさらに他の形態を模式的に示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図14】上記光電気混載基板の第3の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図15】従来の光電気混載基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の光電気混載基板の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。この光電気混載基板は、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を有する光導波路ユニットWと、その突起部4が嵌合する嵌合孔15を有する電気回路ユニットEとを、個別に作製し、上記光導波路ユニットWの上記突起部4を、上記電気回路ユニットEの上記嵌合孔15に嵌合することにより、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを結合して一体化したものとなっている。そして、上記電気回路ユニットEには、折り曲げ部14が形成されており、この折り曲げ部14に、上記嵌合孔15が形成されているとともに、光学素子10が実装されている。この電気回路ユニットEの表面には、台材Sを介して、上記光導波路ユニットWが、上記電気回路ユニットEと並列状に載置されている。なお、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとは、上記台材Sを介して、必要に応じて、接着剤または粘着テープ等により固定してもよい。
【0019】
ここで、光導波路ユニットWにおいて、上記突起部4は、コア2の光透過面(一端面)2aに対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に光導波路ユニットWの光透過面2aが電気回路ユニットEの光学素子10と対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。また、上記電気回路ユニットEにおいて、上記突起部4が嵌合する上記嵌合孔15は、光学素子10に対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に電気回路ユニットEの光学素子10が光導波路ユニットWの光透過面2aと対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。このため、上記光電気混載基板では、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合により、コア2の光透過面2aと光学素子10とが、自動的に、適正に位置決めされ、調芯された状態になっている。また、上記台材Sにより、光導波路ユニットが適正な高さ位置に設定されているとともに、光電気混載基板の強度が向上している。
【0020】
より詳しく説明すると、上記光導波路ユニットWは、その斜視図を図2(a)に、そのA−A断面での要部拡大断面図を図2(b)に示すように、アンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンの線状に形成された光路用のコア2と、このコア2を被覆した状態で上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とを備えている。そして、この光導波路ユニットWの一端縁(図2では下端縁)では、コア2の存在しない、上記アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分が、コア2の軸方向に沿って延長され、その延長部分が、電気回路ユニット位置決め用の上記突起部4に形成されている。この突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記突起部4の配置は、コア2の両側(2個所)に形成されており、上記突起部4の形状は、厚み(アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層方向の厚み)が一定で、幅が延長方向にいくにつれて徐々に狭くなる平面視台形状に形成されている。
【0021】
一方、上記電気回路ユニットEは、その斜視図を図3に示すように、基板11と、この基板11の表面(図では下面)に形成された絶縁層(図示せず)と、この絶縁層の表面(図では下面)に形成された電気回路(図示せず)と、この電気回路の一部分を構成する光学素子実装用パッドに実装された光学素子10とを備えている。そして、この電気回路ユニットEには、上記光学素子10の実装部分が、上記基板11に対し直角に起立状に折り曲げられ、長方形板状の折り曲げ部14に形成されている。この折り曲げ部14は、上記基板11と絶縁層との積層部分の一部分が、コ字状に切り込まれ、そのコ字状の切り込みで囲まれる舌片状部分が、上記積層部分と直角に起立形成されたものである。また、その折り曲げ部14には、上記光導波路ユニットWの突起部4〔図2(a)参照〕が嵌合する嵌合孔15が形成されている。上記折り曲げ部14および上記嵌合孔15は、上記光学素子10に対して、所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記嵌合孔15の配置は、上記光学素子10の両側(2個所)に形成されており、上記嵌合孔15の形状は、長方形状に形成されている。
【0022】
なお、上記絶縁層は、上記基板11のうち嵌合孔15を除く表面に形成されている。そして、その絶縁層の表面には、上記光学素子実装用パッドを含む電気回路とともに、上記嵌合孔15を位置決め形成する際の目印として利用される嵌合孔位置決め用回路(図示せず)、および上記折り曲げ部14を位置決め形成する際の目印として利用される折り曲げ部位置決め用回路(図示せず)が形成されている。上記嵌合孔位置決め用回路は、上記嵌合孔15の周縁に、枠状に形成されている。上記折り曲げ部位置決め用回路は、上記折り曲げ部14となる上記舌片状部分を形成する上記コ字状の切り込みに沿って、形成されている。さらに、これら光学素子実装用パッド,電気回路,嵌合孔位置決め用回路,折り曲げ部位置決め用回路の表面には、めっき層(図示せず)が形成されている。上記光学素子10は、この実施の形態では、ワイヤーボンディングタイプの素子が用いられており、その発光部または受光部は、光学素子10の表面(図3では右面)に形成されている。
【0023】
そして、上記光電気混載基板は、図1に示すように、上記光導波路ユニットWの上記突起部4が、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部14の嵌合孔15に嵌合されている状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが並列状に結合されている。ここで、先に述べたように、光導波路ユニットWに形成された上記突起部4は、予め、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。また、電気回路ユニットEに形成された嵌合孔15は、予め、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そのため、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合により、コア2の光透過面2aと光学素子10とは、適正に位置決めされ、自動的に調芯された状態になる。さらに、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(折り曲げ部14)でなされており、光学素子10とコア2の光透過面2aとが対面した状態となっている。そのため、この実施の形態のように、電気回路ユニットEと並列状に光導波路ユニットWが設けられた光電気混載基板であっても、コア2の端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。
【0024】
しかも、この実施の形態では、光導波路ユニットWの上記突起部4が台形状に形成されているため、電気回路ユニットEの上記長方形状の嵌合孔15の開口長さを所定値に設定することにより、上記台形状の突起部4の対向する傾斜面を、上記長方形状の嵌合孔15の対向する両面に当接させて、上記突起部4の嵌合量(嵌合深さ)を適正に設定することができ、それにより、光導波路ユニットWの一端面(コア2の光透過面2a)と、電気回路ユニットEの光学素子10との間の距離を適正に設定することができる。また、上記突起部4の幅や上記嵌合孔15の開口長さ等に寸法収縮等が発生しても、上記台形状の突起部4の対向する傾斜面を利用することにより、上記突起部4と上記嵌合孔15とは、同軸的に嵌合し、コア2と光学素子10との調芯ずれを防止することができる。なお、図1では、理解を容易にするため、上記嵌合孔15の大きさを、上記突起部4の大きさに対し大きめに図示しているが、実際は、同等ないし僅かに大きい程度である。
【0025】
上記光電気混載基板は、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光導波路ユニットWを作製する工程〔図4(a)〜(d)参照〕。
(2)上記電気回路ユニットEを作製する工程〔図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)参照〕。
(3)上記光導波路ユニットWを上記電気回路ユニットEに結合する工程(図7参照)。
【0026】
〔(1)光導波路ユニットWの作製工程〕
上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程について説明する。まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基台20〔図4(a)参照〕を準備する。この基台20の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。また、基台20の厚みは、例えば、20μm〜1mmの範囲内に設定される。
【0027】
ついで、図4(a)に示すように、上記基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、その一端縁の2個所に平面視台形状の突起片1aが形成されたアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、感光性エポキシ樹脂等の感光性樹脂が用いられる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0028】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア2を形成する。このとき、コア2の光透過面(一端面)2aを、アンダークラッド層1の表面のうち、上記2個所の突起片1aの間の部分において、上記2個所の突起片1aに対して所定位置に位置決めする。このコア2の位置決めは、上記2個所の突起片1aを基準に形成されたフォトマスクを、上記フォトリソグラフィ法によりコア2を形成する際に、上記2個所の突起片1aを基準に配置した状態で、上記フォトマスクを介して露光することにより行われる。
【0029】
上記コア2の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層1およびオーバークラッド層3〔図4(c)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。コアの数は、1本でも複数本でもよい〔図4(b)では1本〕。コア2のパターンは、例えば、直線状,分岐状,交差状等があげられ、それらが混在していてもよい〔図4(b)では直線状〕。コア2の厚みは、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。コア2の幅は、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。
【0030】
そして、図4(c)に示すように、上記コア2を被覆するよう、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層3を形成する。このとき、上記アンダークラッド層1の突起片1a上にも、その突起片1aと同形状の突起片3aを形成する。上記オーバークラッド層3の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられる。上記オーバークラッド層3の厚み(アンダークラッド層1の表面からの厚み)は、例えば、コア2の厚みを上回り1000μm以下の範囲内に設定される。
【0031】
ここで、上記アンダークラッド層1の突起片1aと、その上に形成された上記オーバークラッド層の突起片3aとの積層部分が、電気回路ユニット位置決め用の前記突起部4となる。そして、先に述べたように、コア2の光透過面2aが、上記アンダークラッド層1の突起片1aに対して所定位置に位置決め形成されていることから、その突起片1aに上記オーバークラッド層の突起片3aを積層してなる上記突起部4は、コア2の光透過面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。上記突起部4の寸法は、例えば、突出量が300〜5000μmの範囲内、幅が100〜5000μmの範囲内にそれぞれ設定される。
【0032】
ついで、図4(d)に示すように、アンダークラッド層1の裏面から基台20〔図4(c)参照〕を剥離する。これにより、アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3を備え、上記アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分に電気回路ユニット位置決め用の突起部4が延設された光導波路ユニットWを得る。この光導波路ユニットWの厚みは、例えば、30〜1150μmの範囲内に設定される。このようにして、上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程が完了する。
【0033】
〔(2)電気回路ユニットEの作製工程〕
つぎに、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程について、図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)を用いて説明する。これら図5,6の各(a)〜(c)には、左右に2つの図を示しており、左側の図が平面図、右側の図がその中心線での縦断面図である。
【0034】
まず、前記基板11〔図5(a)参照〕を準備する。この基板11の形成材料としては、例えば、金属,樹脂等があげられる。なかでも、加工容易性および寸法安定性の観点から、ステンレス製基板が好ましい。また、上記基板11の厚みは、例えば、0.02〜0.1mmの範囲内に設定される。
【0035】
ついで、図5(a)に示すように、上記基板11の表面の所定領域に、絶縁層12に形成する。この絶縁層12の形成は、例えば、感光性ポリイミド樹脂等の、絶縁層形成用の感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、必要に応じて、それを加熱処理して乾燥させ、絶縁層形成用の感光性樹脂層を形成する。そして、その感光性樹脂層を、フォトマスクを介して紫外線等の照射線により露光することにより、所定形状の絶縁層12に形成する。絶縁層12の厚みは、例えば、5〜15μmの範囲内に設定される。
【0036】
つぎに、図5(b)に示すように、上記絶縁層12の表面に、光学素子実装用パッド13aを含む電気回路(図示せず)と、枠状の嵌合孔位置決め用回路13bと、コ字状の折り曲げ部位置決め用回路13cとを、同時に形成し、電気回路基板を作製する。これら電気回路等の形成は、例えば、セミアディティブ法により行われる。
【0037】
すなわち、まず、上記絶縁層12の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により金属層(厚み60〜260nm程度)を形成する。この金属層は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記基板11,絶縁層12およびシード層からなる積層体の両面に、ドライフィルムレジストを貼着した後、上記シード層が形成されている側のドライフィルムレジストに、フォトリソグラフィ法により上記電気回路等のパターンの孔部を同時に形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、電解めっき層(厚み5〜20μm程度)を積層形成する。そして、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層部分をソフトエッチングにより除去し、残存した電解めっき層とその下のシード層とからなる積層部分を上記電気回路等に形成する。このようにして、上記基板11,絶縁層12、光学素子実装用パッド13aを含む電気回路,嵌合孔位置決め用回路13b,および折り曲げ部位置決め用回路13cからなる電気回路基板を得る。
【0038】
そして、その電気回路基板を露光機にセットし、表面側(電気回路側)と裏面側(基板11側)とをカメラで撮影し、その画像を基に、上記表面側の枠状の嵌合孔位置決め用回路13bを目印として、上記裏面側における嵌合孔形成予定部(上記枠状の嵌合孔位置決め用回路13bの枠内に対応する部分)の位置を適正に位置決めするとともに、上記表面側の折り曲げ部位置決め用回路13cを目印として、折り曲げ部形成予定部(舌片状部分14A)の裏面側の位置を適正に位置決めする。ついで、その裏面側のうち、上記嵌合孔形成予定部,および舌片状の上記折り曲げ部形成予定部を形成するためのコ字状の切り込み予定部を除く部分を、ドライフィルムレジスト(図示せず)で覆う。つぎに、図5(c)に示すように、露呈している上記嵌合孔形成予定部および上記コ字状の切り込み予定部の基板11の部分を、塩化第2鉄水溶液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、その除去部分11a,11bから上記絶縁層12の部分が露呈する。
【0039】
ついで、図6(a)に示すように、上記露呈した絶縁層12の部分を、ケミカルエッチング液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、上記嵌合孔形成予定部を嵌合孔15に形成するとともに、上記コ字状の切り込み予定部をコ字状の切り込み16に形成する(コ字状の貫通状態にする)。上記嵌合孔15およびコ字状の切り込み16は、上記セミアディティブ法により光学素子実装用パッド13aと同時に形成した枠状の嵌合孔位置決め用回路13bおよび折り曲げ部位置決め用回路13cを基準に形成されているため、上記嵌合孔15およびコ字状の切り込み16は、上記光学素子実装用パッド13aに対して所定位置に位置決め形成される。上記嵌合孔15の開口長さおよび開口幅は、その嵌合孔15に嵌合する上記光導波路ユニットの突起部4(図1参照)の嵌合部分の幅および厚みと同等ないしそれよりも僅かに(例えば1〜100μm程度)大きく設定される。
【0040】
つぎに、電解めっき処理を施すことにより、上記光学素子実装用パッド13aを含む電気回路,嵌合孔位置決め用回路13b,および折り曲げ部位置決め用回路13cの表面に、めっき層(図示せず)を形成する。その後、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。なお、上記めっき層の成分としては、金,ニッケル等があげられる。また、そのめっき層の厚みは、通常、0.2〜0.5μmの範囲内に設定される。
【0041】
そして、図6(b)に示すように、光学素子実装用パッド13aの表面に、上記めっき層を介して、上記光学素子10を実装する。その後、必要に応じて、上記光学素子10およびその周辺部を、樹脂封止(図示せず)する。
【0042】
つぎに、図6(c)に示すように、上記コ字状の切り込み16〔図6(b)参照〕で囲まれ、上記光学素子10が実装された舌片状部分14Aを、上記電気回路基板と直角に垂下状に折り曲げ、折り曲げ部14に形成する。すなわち、上記光学素子10は、この折り曲げ部14の所定位置に実装されている。これにより、上記嵌合孔15および上記折り曲げ部14を有する電気回路ユニットEを得る。ここで、先に述べたように、図6(a)の工程で形成された上記嵌合孔15が、上記光学素子実装用パッド13aに対して所定位置に位置決め形成されているため、その光学素子実装用パッド13aに実装した光学素子10と上記嵌合孔15とは、互いに位置決めされた位置関係になっている。このようにして、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程が完了する。
【0043】
〔(3)光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程〕
つぎに、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程について説明する。この結合は、図7〔図6(c)に示す電気回路ユニットEを上下逆に図示している)に斜視図で示すように、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部14の光学素子10と、上記光導波路ユニットWのコア2の光透過面2aとを対面させた状態で、上記光導波路ユニットWの突起部4を、上記折り曲げ部14の嵌合孔15に嵌合させ、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを一体化する。その後、必要に応じて、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合部を接着剤で固定する。そして、上記電気回路ユニットEの表面に、台材S(図1参照)を介して、上記光導波路ユニットWを載置する。その後、必要に応じて、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを、上記台材Sを介して、接着剤または粘着テープ等により固定してもよい。このようにして、上記(3)の光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程が完了し、目的とする光電気混載基板が完成する。
【0044】
ここで、先に述べたように、上記光導波路ユニットWでは、コア2の光透過面2aと電気回路ユニット位置決め用の突起部4とが互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記光学素子10が実装された電気回路ユニットEでは、光学素子10と上記突起部4が嵌合する嵌合孔15とが互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記のように、上記突起部4を上記嵌合孔15に嵌合させて、上記光電気混載基板を作製すると、コア2の光透過面2aと光学素子10とが、自動的に調芯される。その結果、上記光電気混載基板の作製には、手間と時間とを要する調芯作業が不要となる。すなわち、上記光電気混載基板は、量産性に優れたものとなっている。
【0045】
しかも、上記光導波路ユニットWの突起部4は、その光導波路ユニットWを構成するアンダークラッド層1およびオーバークラッド層3の所定部分が延設されたものである。また、上記電気回路ユニットEの嵌合孔15は、その電気回路ユニットEを構成する電気回路基板に形成されたものである。すなわち、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットWのコア2と電気回路ユニットEの光学素子10との調芯は、高精度になっている。また、上記突起部4と上記嵌合孔15との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要となっており、この点からも、量産性に優れている。
【0046】
さらに、上記突起部4と嵌合孔15との嵌合は、光学素子実装部分が折り曲げられた状態(折り曲げ部14)でなされており、光学素子10とコア2の光透過面2aとが対面した状態となっている。そのため、この実施の形態のように、電気回路ユニットEと並列状に光導波路ユニットWを設ける光電気混載基板の製法であっても、コア2の端面を光反射用の傾斜面に形成する必要がない(光路を90°変換する構造に形成する必要がない)。
【0047】
なお、上記実施の形態において、通常、光学素子10の大きさは、光導波路ユニットWの厚みに対して大きいため、上記のように、光学素子10が実装された折り曲げ部14において、コア2の光透過面2aと光学素子10とが調芯された状態では、電気回路ユニットEと光導波路ユニットWの間に隙間が形成される。上記台材Sは、その隙間を埋めるために、すなわち、電気回路ユニットEに対する光導波路ユニットWの高さ調整のために設けられている。
【0048】
図8は、本発明の光電気混載基板の第2の実施の形態を模式的に示す斜視図である。この実施の形態では、電気回路ユニットEの折り曲げ部14が、図示のように、4本の平行な折り曲げ線17a〜17dで折り曲げられることにより形成されている。そのため、隣り合う折り曲げ線17a〜17dの間の平板部分18A〜18Cが3個所形成されている。そして、それら3個所の平板部分18A〜18Cのうち、真ん中の平板部分18Bの所定位置に、上記第1の実施の形態と同様に、光学素子10が実装されているとともに、光導波路ユニットWの突起部4が嵌合する嵌合孔15が形成されている。その真ん中の平板部分18Bは、電気回路ユニットEの基板11に対し直角になっている。
【0049】
この第2の実施の形態では、上記折り曲げ線17a〜17dが、光学素子10に対して所定の位置に位置決め形成されている。そして、それら折り曲げ線17a〜17dで折り曲げて上記折り曲げ部14を形成することにより、電気回路ユニットEにおける、光導波路ユニットWの載置面の高さ位置を、所定の高さ位置に設定することができる。そのため、光導波路ユニットWの突起部4と電気回路ユニットEの嵌合孔15とが嵌合し、コア2の光透過面2aと光学素子10とが調芯された状態において、電気回路ユニットEと光導波路ユニットWの間に隙間を形成しないようにすることができる。そのため、この第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態で設けられている台材S(図1参照)は、設けられていない。それ以外の電気回路ユニットEの部分および光導波路ユニットWは、図1に示す上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。そして、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0050】
この第2の実施の形態において、電気回路ユニットEの折り曲げ部14を形成するための上記所定の折り曲げ線17a〜17dは、電気回路ユニットEの基板11をエッチングする工程〔図5(c)参照〕において、光学素子実装用パッド13aを基準とした所定の位置に、上記基板11をハーフエッチングすることにより、形成することができる。
【0051】
図9(a),(b)は、上記電気回路ユニット位置決め用の突起部4の変形例を模式的に示す正面図である。すなわち、図9(a)では、上記突起部4が三角形状に形成されている。この場合は、図1に示す台形状の突起部4と同様、三角形状の傾斜面を利用して、光導波路ユニットWの一端面(コア2の光透過面2a)と、電気回路ユニットEの光学素子10との間の距離を適正に設定することができ、また、コア2と光学素子10との調芯ずれを防止することもできる(図1参照)。図9(b)では、上記突起部4が段部状に形成されている。この場合は、上記突起部4が嵌合孔15(図1参照)に嵌合した後は、突起部4が抜け難くなっている。上記以外にも、例えば、上記突起部4を半円状等に形成してもよい。
【0052】
図10(a)〜(d)は、光導波路ユニットWの作製おいて、突起片3aを含むオーバークラッド層3〔図4(c)参照〕の他の作製工程(作製方法)として、型成形による方法を模式的に示している。すなわち、上記各実施の形態では、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3の形成をフォトリソグラフィ法により形成したが、型成形により形成してもよい。その形成は、つぎのようにして行われる。
【0053】
すなわち、まず、図10(a)に示すように、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3の形状に対応する型面31を有する凹部が、その上面に形成されている成形型30を準備する。ついで、図10(b)に示すように〔図4(b)と同様にして〕、基台20の表面に、突起片1aを有するアンダークラッド層1を形成し、このアンダークラッド層1の表面にコア2を所定パターンに形成する。そして、図10(c)に示すように、上記成形型30の凹部に、オーバークラッド層形成用の樹脂を満たした後、その樹脂内に上記コア2が浸かるよう〔図10(b)に図示したものを上下逆にし〕、上記成形型30の上面に、基台20の表面を密着させる。このとき、上記成形型30の、上記突起片3aに対応する型面部分31aを、アンダークラッド層1の突起片1a上に位置決めする。ついで、上記樹脂が感光性樹脂の場合は、上記成形型30を通して紫外線等の照射線を露光した後に加熱処理を行い、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、加熱処理を行う。これにより、上記オーバークラッド層形成用の樹脂が硬化し、上記突起片3aを含むオーバークラッド層3が形成される。そして、脱型し、図10(d)に示すように〔図10(c)に図示した状態から脱型したものを上下逆に図示している〕、図4(c)と同様のものを得る。このようにして形成してもよい。
【0054】
図11(a)〜(d)は、光導波路ユニットWの他の形態の作製工程を模式的に示している。すなわち、上記各実施の形態では、光導波路ユニットWにおける電気回路ユニット位置決め用の突起部4を、アンダークラッド層1とオーバークラッド層3との積層部分を延設したものとしたが、〔図4(c)参照〕、オーバークラッド層3のみを延設したものとしてもよい。そのような光導波路ユニットWの作製工程(作製方法)は、つぎのようにして行われる。
【0055】
すなわち、まず、図11(a)に示すように、基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、上記突起片1a〔図4(a)参照〕のないアンダークラッド層1を形成する。ついで、図11(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア2を形成する。つぎに、図11(c)に示すように、突起部4を含むオーバークラッド層3の形状に対応する型面31を有する凹部が、その上面に形成されている成形型30を準備する。そして、図11(d)に示すように、上記成形型30の凹部に、オーバークラッド層形成用の樹脂を満たした後、その樹脂内に上記コア2が浸かるよう、上記成形型30の上面に、基台20の表面を密着させる。このとき、上記成形型30の、上記突起部4に対応する型面部分31aを、コア2の光透過面2aに対して位置決めする。その後は、図10(c)で説明した上記方法と同様にして、上記突起部4を含むオーバークラッド層3を形成する。そして、脱型し、図12に示すように、基台20の表面に、オーバークラッド層3のみに上記突起部4が延設された光導波路ユニットWを得る。または、上記オーバークラッド層3の形成は、上記型成形〔図11(c)〜(d)参照〕に代えて、フォトリソグラフィ法により行ってもよい。
【0056】
なお、上記形態〔図11(a)〜(d)参照〕では、オーバークラッド層3のみに、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を延設したが、アンダークラッド層1のみに、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を延設してもよい。そのような光導波路ユニットWの作製工程(作製方法)は、基台20の表面に、突起片1aを有するアンダークラッド層1が形成され、このアンダークラッド層1の表面にコア2が所定パターンに形成された状態〔図4(b)と同様の状態〕において、型成形またはフォトリソグラフィ法により、上記突起片3a〔図4(c)参照〕のないオーバークラッド層3を形成することにより、作製することができる。
【0057】
図13(a),(b)は、光導波路ユニットWのさらに他の形態を模式的に示している。この実施の形態では、図13(a)に正面図、図13(b)に図13(a)のB−B断面図で示すように、オーバークラッド層3がアンダークラッド層1よりも、一回り大きく形成されている。このような光導波路ユニットWも、先に述べた型成形またはフォトリソグラフィ法により作製することができる。
【0058】
上記のように〔図10(a)〜(c)、図11(a)〜(d)、図13(a),(b)参照〕、電気回路ユニット位置決め用の突起部4を型成形により形成すると、その突起部4の厚みを厚く形成することが可能となり、その突起部4を電気回路ユニットEの嵌合孔15に嵌合した状態において、その嵌合部分の強度を向上させることができる。また、上記型成形の場合、上記成形型30の、上記突起部4に対応する型面部分31aを変形することにより、上記突起部4の厚みを、延長方向にいくにつれて徐々に薄く形成してもよい。
【0059】
なお、上記各実施の形態では、光学素子10として、ワイヤーボンディングタイプの素子を用いたが、フリップチップタイプの素子を用いてもよい。このフリップチップタイプの素子を用いる場合は、発光部または受光部が、光学素子10の実装面(裏面)に形成されているため、図14に示すように、光導波路ユニットWは、光学素子10が実装されていない側から電気回路ユニットEに嵌合され、上記発光部または受光部に対応する電気回路ユニットEの部分には、光通過用の貫通孔19が形成されている。
【0060】
また、上記各実施の形態では、光電気混載基板の一端部について説明したが、他端部においても、上記各実施の形態と同様の構成としてもよい。この場合は、上記光学素子10として、例えば、一端部側に発光素子、他端部側に受光素子を実装することにより、その発光素子からの光を、コア2を介して、上記受光素子で受光するようにすることができる。
【0061】
さらに、上記各実施の形態では、電気回路ユニットEの作製工程において、電気回路,光学素子実装用パッド13a,嵌合孔位置決め用回路13b,折り曲げ部位置決め用回路13cの表面に、めっき層を形成したが、このめっき層は、必要に応じて形成されるものであり、不要な場合は、形成しなくてもよい。
【0062】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0063】
〔アンダークラッド層,オーバークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)100重量部。
成分B:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部。
これら成分A,Bをシクロヘキサノンに溶解することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0064】
〔コアの形成材料〕
成分C:O−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐡化学社製、YDCN−700−10)100重量部。
この成分Cと上記成分B1重量部とを乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0065】
〔実施例1〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記アンダークラッド層,コア,オーバークラッド層の各形成材料を用い、上記第1の実施の形態〔図2(a),(b)参照〕と同様にして、電気回路ユニット位置決め用の等脚台形状の突起部を有する光導波路ユニットを作製した。上記等脚台形状の突起部の寸法は、底辺(長い方の辺)の幅を2.5mm、頂辺(短い方の辺)の幅を1.0mm、高さ(突出長さ)を3.0mm、隣り合う突起部の中心間距離を6.5mmとした。
【0066】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記第1の実施の形態(図3参照)と同様にして、折り曲げ部に、光学素子が実装されているとともに、上記電気回路ユニット位置決め用の突起部を嵌合させる長方形状の嵌合孔が形成された電気回路ユニットを作製した。その嵌合孔の寸法は、開口長さを2.5mm、開口幅を0.1mm、隣り合う嵌合孔の中心間距離を6.5mmとした。なお、光学素子として、ワイヤーボンディングタイプの発光素子(ULMフォトニクス社製、ULM850−10−CO0104U)を実装した。
【0067】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットの突起部を、上記電気回路ユニットの嵌合孔に嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。また、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの間に台材を設けた。
【0068】
〔光伝播試験〕
上記実施例1の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、光電気混載基板のコアの他端部から光が出射されることを確認した。
【0069】
〔実施例2〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、電気回路ユニット位置決め用の等脚台形状の突起部を有する光導波路ユニットを作製した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0070】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1と同様の電気回路ユニットを作製した。さらに、上記実施例1の電気回路ユニットにおいて、発光素子に代えて、ワイヤーボンディングタイプの受光素子(albis社製、PDCA04−70−GS)を実装したものを作製した。
【0071】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例1と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0072】
〔信号伝送試験〕
上記実施例2の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、その光が受光素子で受光されていることを確認した。
【0073】
上記実施例1,2の結果から、上記製法では、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子(発光素子,受光素子)との調芯作業をしなくても、得られた光電気混載基板は、適正に光伝播することがわかる。
【0074】
なお、上記第2の実施の形態(図8参照),図9〜14に示すように形成した光電気混載基板でも、上記実施例1,2と同様、調芯作業をしなくても、適正に光伝播するという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の光電気混載基板は、音声や画像等のデジタル信号を高速で伝送,処理する情報通信機器,信号処理装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
W 光導波路ユニット
E 電気回路ユニット
2 コア
2a 光透過面
4 突起部
10 光学素子
14 折り曲げ部
15 嵌合孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、上記アンダークラッド層および上記オーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された電気回路ユニット位置決め用の突起部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上に実装された光学素子と、上記電気回路基板の光学素子実装部分を折り曲げてなる折り曲げ部と、この折り曲げ部に形成され上記突起部が嵌合する嵌合孔とを備え、上記光導波路ユニットの上記突起部が、上記コアの光透過面に対して所定位置に位置決め形成され、上記電気回路ユニットの上記光学素子が、上記折り曲げ部の所定位置に位置決め実装され、その折り曲げ部に形成された上記嵌合孔が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させた状態でなされていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記光導波路ユニットが、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定されている請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させる請求項1記載の光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアを形成する工程と、上記コアを被覆するようオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層を形成する工程および上記オーバークラッド層を形成する工程の少なくとも一方の工程において、上記コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、上記電気回路基板を形成する工程において、上記光学素子の実装予定位置に対して位置決めされた所定位置に、上記突起部を嵌合させる嵌合孔を形成することが行われ、上記光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた、上記光学素子および上記嵌合孔を含む所定部分を折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させることにより行われることを特徴とする光電気混載基板の製法。
【請求項4】
上記光導波路ユニットを、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定する請求項3記載の光電気混載基板の製法。。
【請求項1】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、上記アンダークラッド層および上記オーバークラッド層の少なくとも一方の部分に延設された電気回路ユニット位置決め用の突起部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上に実装された光学素子と、上記電気回路基板の光学素子実装部分を折り曲げてなる折り曲げ部と、この折り曲げ部に形成され上記突起部が嵌合する嵌合孔とを備え、上記光導波路ユニットの上記突起部が、上記コアの光透過面に対して所定位置に位置決め形成され、上記電気回路ユニットの上記光学素子が、上記折り曲げ部の所定位置に位置決め実装され、その折り曲げ部に形成された上記嵌合孔が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させた状態でなされていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記光導波路ユニットが、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定されている請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを並列状に結合させる請求項1記載の光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアを形成する工程と、上記コアを被覆するようオーバークラッド層を形成する工程とを備え、上記アンダークラッド層を形成する工程および上記オーバークラッド層を形成する工程の少なくとも一方の工程において、上記コアの光透過面に対して位置決めされた所定位置に、電気回路ユニット位置決め用の突起部を延設することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、上記電気回路基板を形成する工程において、上記光学素子の実装予定位置に対して位置決めされた所定位置に、上記突起部を嵌合させる嵌合孔を形成することが行われ、上記光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた、上記光学素子および上記嵌合孔を含む所定部分を折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記突起部を、上記電気回路ユニットの上記嵌合孔に嵌合させることにより行われることを特徴とする光電気混載基板の製法。
【請求項4】
上記光導波路ユニットを、上記電気回路ユニットの表面に、台材を介して固定する請求項3記載の光電気混載基板の製法。。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−208305(P2012−208305A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73618(P2011−73618)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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