説明

光電気複合伝送モジュール及び光電気複合ケーブル

【課題】電気信号および光信号を1本で伝送できる細径ケーブルと、電気信号用配線を有する光導波路との接続の簡略化を図った光電気複合伝送モジュールを提供する。
【解決手段】ファイバコア12の外周にファイバクラッド13を有する光ファイバ14の外周に、電気信号を伝送するための金属被覆層15を有し、金属被覆層15の外周に絶縁被覆層16を有する光電気複合ケーブル11と、導波路コア3及び導波路クラッド4を有する光導波路5の表面に、電気信号用配線7を有する複合導波路2とを備え、導波路コア3にファイバコア12が接続されていると共に、電気信号用配線7に金属被覆層15が接続されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバと電気信号線を複合してなる光電気複合ケーブルと、電気信号用配線を有する光導波路とを接続した光電気複合伝送モジュール及び光電気複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDTV(高品位テレビ)などのデジタル家電向けのインターフェースの要求、ストレージの大容量化、コンピュータの処理速度の高速化、ディスプレイ、カメラの高精細化により、データ大容量伝送の要求が高まっている。大容量伝送が必要な大陸間、都市間通信系では既に光化が進んでいる。
【0003】
しかし、これまで電気で情報をやり取りしていたプロジェクターと映像再生機器間、液晶・プラズマテレビとコンピュータ間、液晶・プラズマテレビと映像再生機器間、短距離のサーバ間、ディスプレイとコンピュータ本体間などでも光化の要求が高まり、一部実用化されている。機器間通信においては、大容量伝送が必要なデータだけでなく、機器制御に用いる低速信号伝送も必要なことや、一部低速信号をパラレル伝送すること、さらに、機器間で電力伝送する必要もあることから、一部光電気の光電気複合ケーブルによる機器間インターコネクトが考えられている。
【0004】
このような光電気複合ケーブルとしては、例えば、図4(a)に示す従来のテープ形状の光電気複合ケーブル41aのように、コア42とクラッド43からなる光ファイバ44を被覆層45で覆った光ファイバ心線46と、導体51を絶縁層52で覆った電線53とを、それぞれ複数本並列に並べて上下に配置し、これを外部被覆層47で覆ったものがある。
【0005】
また、図4(b)に示す従来の丸形状の光電気複合ケーブル41bでは、電線53を複数本上下に配置し、その両側に光ファイバ心線46を複数本配置し、これを外部被覆層47で覆ったものもある。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0007】
【特許文献1】特許第2817778号公報
【特許文献2】特許第3378122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光電気複合ケーブル41a,41bでは、光信号を光ファイバ心線46で伝送し、電気信号を電線53で伝送するものであり、独立した1本の線で光信号と電気信号を伝送するものではない。
【0009】
このため、従来の光電気複合ケーブル41a,41bは、ケーブル自体が大容積になる(ケーブル外径が太くなる)という問題がある。
【0010】
また、これら光電気複合ケーブル41a,41bを光導波路に接続し、LD(半導体レーザ)やPD(フォトダイオード)などの光素子と共にケース内に収容して光モジュールを組み立てる場合、接続時に光配線と電気配線をそれぞれ個別に行う必要があり、ケーブルを接続するための基板も光配線用と電気配線用の2枚用意する必要もある。
【0011】
このため、光配線接続と電気配線接続を一括して行えるような光電気複合ケーブルや光伝送モジュールが臨まれているが、特に、光電気複合ケーブルと光導波路の接続技術はいまだ確立されていない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、電気信号および光信号を1本で伝送できる細径ケーブルと、電気信号用配線を有する光導波路との接続の簡略化を図った光電気複合伝送モジュールを提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、ケーブル外径が小さく、伝送損失が小さい光電気複合ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために創案された本発明は、ファイバコアの外周にファイバクラッドを有する光ファイバの外周に、電気信号を伝送するための金属被覆層を有し、前記金属被覆層の外周に絶縁被覆層を有する光電気複合ケーブルと、導波路コア及び導波路クラッドを有する光導波路の表面に、電気信号用配線を有する複合導波路とを備え、前記導波路コアに前記ファイバコアが接続されていると共に、前記電気信号用配線に前記金属被覆層が接続されている光電気複合伝送モジュールである。
【0015】
前記複合導波路は、端部に前記金属被覆層を設置するための溝を有し、前記溝に隣接させて前記光導波路の表面に前記電気信号用配線が形成されているとよい。
【0016】
前記光導波路は、前記溝の周辺部をSiで形成し、前記周辺部以外の部分を石英ガラスで形成してなるものでもよい。
【0017】
また本発明は、ファイバコアの外周にファイバクラッドを有する光ファイバと、前記光ファイバの外周に形成された電気信号を伝送するための金属被覆層と、前記金属被覆層の外周に形成された絶縁被覆層とを備え、前記金属被覆層の厚さが0.004〜0.3mmである光電気複合ケーブルである。
【0018】
前記金属被覆層は、平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子を焼結させてなるものでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気信号および光信号を1本で伝送できる細径ケーブルと、電気信号用配線を有する光導波路とを、簡単かつ確実に接続できる光電気複合伝送モジュールを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本発明の好適な本実施形態を示す光電気複合伝送モジュールの分解斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る光電気複合伝送モジュール1は、光電気複合ケーブル11と、その光電気複合ケーブル11が光学的かつ電気的に接続される複合導波路2とを備えて主に構成される。
【0023】
光電気複合ケーブル11は、上述した機器間通信において、例えば、データ、制御信号の2つを1本のケーブルでまとめて伝送するために使用される。この光電気複合ケーブル11は、ファイバコア12とファイバクラッド13からなる光ファイバ14の外周に、電気信号を伝送するための金属被覆層15を形成し、その金属被覆層15の外周に絶縁被覆層16を形成してなる。
【0024】
光ファイバ14としては、ファイバコア12およびファイバクラッド13が石英系材料からなるシングルモード光ファイバを用いる。伝送速度が10Gbps以下であったり、光ファイバ14の全長が500m以下であったりする場合には、光ファイバ14としてマルチモード光ファイバを使用してもよい。
【0025】
金属被覆層15は、Au,Ag,Cuなどの導電性が高い金属からなる。金属被覆層15の形成は、ファイバクラッド13の外周に、蒸着、無電解めっき、あるいは平均粒径100nm以下のAuナノ粒子、Agナノ粒子、Cuナノ粒子などの金属ナノ粒子を分散液中に分散させた溶液を光ファイバ14の表面に塗布し、焼結させることで行う。なお、分散液としては、例えば、1−デカノールなどの有機溶媒を用いるとよい。ここでいう平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子径の粒度分布を測定し、この粒度分布から求めた平均径で表したものである。
【0026】
金属被覆層15の厚さは、0.004〜0.3mmにするとよい。厚さが0.004mm未満であると金属被覆層15の電気抵抗が高くなり、厚さが0.3mmを超えるとケーブルの可とう性が劣るからである。金属被覆層15は、電気信号線としての役目があるので、電圧が約3〜10Vの交流あるいは直流信号を伝送させるように、その材質と厚さを決定しておく。
【0027】
絶縁被覆層16は、主として金属被覆層15に対する電気絶縁性と、光電気複合ケーブル11の可とう性を考慮して形成される。このため、絶縁被覆層16を形成する材料としては、高、中、低密度、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、シリコーンゴムのいずれかを用いるとよい。特に、各種ポリエチレンは耐摩耗性、耐水性、耐候性に優れ、押出被覆しやすく、長尺物の製造に適している。光電気複合ケーブル11を室内で使用する場合には、絶縁被覆層16を形成する材料として、ポリ塩化ビニルを用いてもよい。
【0028】
複合導波路2は、導波路コア3と導波路クラッド4からなる光導波路5を備える。本実施形態では、導波路クラッド4内の長手方向に沿った中央部に、導波路クラッド4の長手方向の一端部を除き、他端部まで横断面が矩形状の導波路コア3を形成した。これら導波路コア3と導波路クラッド4としては、石英ガラスあるいはポリマーからなるものを使用するとよい。
【0029】
導波路コア3や導波路クラッド4の材質に石英ガラスを用いる場合は、図示しない石英ガラス基板上に、導波路クラッド4の下部分を構成するアンダークラッドを形成し、そのアンダークラッド上に導波路コア3を形成し、その導波路コア3を、導波路クラッド4の上部分を構成するオーバークラッドで覆って光導波路5を形成する。
【0030】
導波路コア3や導波路クラッド4の材質にポリマーを用いる場合には、図示しない支持用基板上に、液状で未硬化のポリマーを塗布し、これを硬化させてアンダークラッドを形成し、以後同様にして導波路コア3、オーバークラッドを形成し、最後にアンダークラッドから支持基板を剥離して光導波路5を形成する。
【0031】
ポリマーとしては、UV(紫外線)硬化性アクリル系、フッ素化アクリル系、エポキシ系、感光性ポリイミド系などを用いる。支持基板としては、鏡面仕上げをした金属基板、石英ガラス基板、Si基板などを用いる。
【0032】
複合導波路2の一端部には、光電気複合ケーブル11の絶縁被覆層16が除去された端末部分を設置するための溝6が、複合導波路2の長手方向に沿って形成される。本実施形態では、金属被覆層15の外径よりやや大きい深さを有する横断面がほぼU字状の切り欠き溝を溝6とした。溝6の他端は、複合導波路2の厚さ方向に沿って起立した垂直面vsであり、この垂直面vsに導波路コア3の一端面が露出する。溝6は、切削加工やエッチング、あるいはポリマーからなる光導波路5の場合は型によって形成される。
【0033】
光導波路5の表面には、溝6に隣接させて回路パターンなどの電気信号用配線7が形成される。本実施形態では、導波路コア3に熱的悪影響を及ぼさないようにすべく、導波路コア3上に重ならないように、一端が溝6の上側端に垂直隣接し、折れ曲がった角部を経由して他端に向かって複合導波路2の長手方向に沿うように電気信号用配線7を形成した。
【0034】
この電気信号用配線7は、例えば、光導波路5の表面に、Au,Ag,Cuなどの導電性が高い金属を真空蒸着、スパッタリングして付着させたり、光導波路5の表面に導電性が高いAu箔、Ag箔、Cu箔などの金属箔Au箔、Ag箔、Cu箔を設け、その金属箔をフォトエッチングしたりして形成する。
【0035】
光電気複合伝送モジュール1の組み立ては、まず、光電気複合ケーブル11を端末処理し、溝6の長さ分だけ絶縁被覆層16を剥がし、金属被覆層15を露出させる。他方、複合導波路2を用意し、その溝6に露出した金属被覆層15を載置し、溝6の垂直面vsに金属被覆層15の端面(光ファイバ14の端面)を突き合わせる。
【0036】
そして、図2(a)〜図2(d)に示すように、半田Sを用いて、複合導波路2の電気信号用配線7に、光電気複合ケーブル11の金属被覆層15を半田接続する。この半田接続により、光電気複合ケーブル11と複合導波路2とが光学的にかつ電気的に接続されて固定され、光電気複合伝送モジュール1が得られる。
【0037】
半田接続は、共晶はんだ、鉛フリーはんだを半田ゴテで半田付けしたり、予め電気信号用配線7にクリームはんだを印刷などにより設けておき、リフローソルダリングを用いたりして行う。
【0038】
本実施形態の作用を説明する。
【0039】
光電気複合伝送モジュール1は、複合導波路2の導波路コア3に、光電気複合ケーブル11のファイバコア12を光学的に接続すると共に、複合導波路2の電気信号用配線7に、光電気複合ケーブル11の金属被覆層15を半田接続している。
【0040】
すなわち、光電気複合伝送モジュール1では、光電気複合ケーブル11の金属被覆層15と複合導波路2の電気信号用配線7を半田付けにより半田接続することで、複合導波路2に電気光複合ケーブル11を容易に固定することができ、光配線接続と電気配線接続を一括して行うことができる。光電気複合伝送モジュール1では、従来のような湿度に弱く、接続作業が難しい光学用接着剤が不要になるという利点もある。
【0041】
この電気光複合ケーブル11は、光ファイバ14の被覆を、内側の金属被覆層15と外側の絶縁被覆層16との2層構造の被覆にしているため、ファイバコア12を光信号伝送用に、金属被覆層15を電気信号伝送用に用いることができ、電気信号および光信号を独立した1本の線で伝送できる細径ケーブルである。
【0042】
したがって、光電気複合伝送モジュール1によれば、細径ケーブルである光電気複合ケーブル11と、電気信号用配線7を有する複合導波路2とを、簡単かつ確実に接続できる光電気複合伝送モジュールを実現できる。
【0043】
光電気複合伝送モジュール1では、複合導波路2の端部に溝6を形成し、その溝6に隣接させて光導波路5の表面に電気信号用配線7を形成している。このため、光電気複合伝送モジュール1では、接続時に複合導波路2への光ファイバ14の設置が簡単であり、光電気複合ケーブル11の位置決めを容易であり、しかも半田接続作業を誰でも簡単に行うことができる。
【0044】
石英ガラスからなる光導波路5を用いる場合は、光ファイバ14と同じ材質になるため、光電気複合伝送モジュール1の接続部分が熱変動に対して強くなり、ポリマーからなる光導波路5を用いる場合には、溝6の加工がしやすく、導波路コア3や導波路クラッド4の形状の自由度が高い。
【0045】
光導波路2として、溝6の周辺部をシリコン(Si)で形成し、その周辺部以外の部分を石英ガラスで形成したものを用いてもよい。この場合、半導体の製造技術やSiの結晶方向性を利用してより高精度な溝6を簡単に形成でき、これに隣接させる電気信号用配線7の形成もより簡単になる。
【0046】
ここでいう溝6の周辺部とは、溝6が形成される部分よりも若干大きい部分(光導波路2の内部に位置する溝6の周辺部の他端は、垂直面vsまで)や、これに加え、さらに電気信号用配線7が形成される部分よりも若干大きい部分である。
【0047】
また、光電気複合ケーブル11は、光ファイバ14の2層構造の被覆の内側が金属被覆層15であり、その金属被覆層15の外周に絶縁被覆層16を押出被覆するような場合でも、金属被覆層15が光ファイバ14を保護するため、光ファイバ14に側圧が加わることはなく、製造時や製造直後の光電気複合ケーブル11に損失増加の原因はない。
【0048】
さらに、光電気複合ケーブル11では、金属被覆層15が光ファイバ14のテンションメンバの役目や、金属被覆層15に大電流を流す場合には放熱部材としての役目をも果たす。
【0049】
次に、本実施形態に係る光電気複合ケーブルのより詳細な一例を図3(a)および図3(b)を用いて説明する。
【0050】
図3(a)に示すようなテープ形状の光電気複合ケーブル31aは、図1で説明した光電気複合ケーブル11を、複数本(図3(a)では、4本)並列に配置して束ねた集合ケーブル32aとし、これを外部被覆層33で覆ったものである。外部被覆層33を形成する材料は、図1の絶縁被覆層16と同じものを用いるとよい。
【0051】
また、図3(b)に示す丸形状の光電気複合ケーブル31aのように、電気複合ケーブル11を複数本(図3(b)では、3本)を束ねて集合ケーブル32bとし、これを外部被覆層33で覆ったものでもよい。
【0052】
これら光電気複合ケーブル31a,31bは、図4(a)で説明した従来の光電気複合ケーブル41aや、図4(b)で説明した従来の光電気複合ケーブル41bに比べると、ケーブル心線数を従来の1/2にでき、低コスト化、細径化が可能である。また、細径化が可能であるため、光電気複合ケーブル31a,31bはフレキシブル性も高い。
【0053】
前述した本実施形態に係る光電気複合ケーブル11,31a,31bの用途の1つとしてHDMI(High Definition Multimedia Interface)ケーブルがある。HDMIはデジタル家電向けのインターフェース規格で、非圧縮デジタル音声・映像を伝送するためのものである。
【0054】
HDMIケーブルは、映像信号および音声信号をデジタルのまま伝送でき、HDMI規格に適合する機器間(例えばプロジェクターと映像再生機器間)をデジタル信号のまま接続できるケーブルである。最近は家電製品にもHDMI端子搭載機器が増えてきており、今後はますます普及されると予測される。
【0055】
HDMI規格は、2002年に伝送速度4.95Gbps各色8bitのHDMI1.0が制定され、その後、HDMI1.1(Dolby Digital,DTS(Digital Theater System)音声伝送への対応/DVD Audioへの対応/PCディスプレイへの出力をサポート)、HDMI1.2a(機器間の制御機能なし)、HDMI1.3a(機器間の制御機能あり)が制定された。HDMI1.3ではフルスペックハイビジョンでさらにDeep Colorへ対応するために、伝送速度が最大で10.2Gbps(信号線1本あたり3.4Gbps)にまで高速化された(http://journal.mycom.co.jp/news/2006/11/10/420.html、2008/1/7)。
【0056】
HDMIケーブルは740Mbpsを超えるデジタル信号を伝送する場合、ケーブル長が1〜5m程度であればデジタル信号の劣化について特に問題とはならないが、ケーブル長が長くなる(例えば、ケーブル長が10mにもなる)とデジタル信号が劣化してしまう。
【0057】
そのため、長距離伝送用のHDMIケーブルでは、例えば、電気信号線からなるHDMIケーブル自体にイコライザを取り付けることにより、デジタル信号の劣化を抑制する方法があるが、イコライザ自体が高価であることからHDMIケーブルのコストが高くなってしまう。一方、イコライザをつけずにデジタル信号の劣化を抑制するには、伝送ロスを最小限にする必要があるが、この伝送ロスを最小限にする方法として、例えばHDMIケーブルに用いられる導体の外径を太くすることや、HDMIケーブルの内部にシールド層を設ける方法がある。
【0058】
しかし、これらの方法では、伝送ロスを抑制することは可能だが、ケーブル長が長くなるにつれてHDMIケーブルの外径が太くなってしまい、可とう性の低下や配線箇所においてコンパクトな配線が難しくなる場合がある。
【0059】
前述したように、光電気複合ケーブル11,31a,32bにおいては、いわば現行の電線のみからなるHDMIケーブルと光ファイバとを1本のケーブル内にコンパクトに収めた構造なので、ケーブル長が10m以上に長くなったとしてもイコライザを取り付ける必要がなく、また、小型・小径のケーブルで10.2Gbpsまでの伝送速度が可能であり、可とう性や布設性の低下も抑制することができる。
【0060】
本実施形態に係る光電気複合ケーブルにおいて、金属被覆層15のHDMIケーブルへの適用例;
HDMI(http://www.hdmi.org/manufacture/specification.aspx、2008/1/7)では、HDMI1.3aの規格にてコネクタ間抵抗を5Ωと規定している。よって、温度0℃にて5m、10mおよび50m伝送行うための金属被覆厚は、光ファイバ径を0.08mmと1mmとした場合、表1のAu,Ag,Cuの0℃時の電気抵抗を考慮し、表2に示すようになる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
また、本実施形態に係る光電気複合伝送モジュールは、システム装置内および装置間、あるいは光伝送モジュール間の信号を高速に伝送する技術である光インターコネクションへも適用できる。例えば、メディアコンバータやスイッチングハブの内部接続、ギガビットクラスのイーサネット(登録商標)信号を数十mの短距離で伝送する光トランシーバ、医療機器、テスト装置、ビデオシステム、高速コンピュータクラスタなどの装置内や、装置間の部品接続などに、本実施形態に係る光電気複合伝送モジュールを利用できる。
【0064】
光インターコネクションに適用できる本実施形態に係る光電気複合伝送モジュールの構成としては、複合導波路2の表面に、面発光レーザ(VCSEL)、VCSELアレイ、PD、PDアレイなどの光素子を搭載し、その光素子から垂直導波路、反射面、導波路コア3を介して光電気複合ケーブル11,31a,31bまで光路を形成したものがある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の好適な実施形態を示す光電気複合伝送モジュールの分解斜視図である。
【図2】図2(a)は図1に示した光電気複合伝送モジュールの主要部の平面図、図2(b)はその2B−2B線断面図、図2(c)は図2(a)の側断面図、図2(d)は図2(c)の2D−2D線断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の好適な実施形態である光電気複合ケーブルの一例を示す横断面図、図3(b)は別の例を示す横断面図である。
【図4】図4(a)は従来の光電気複合ケーブルの一例を示す横断面図、図4(b)は別の例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 光電気複合伝送モジュール
2 複合導波路
3 導波路コア
4 導波路クラッド
5 光導波路
6 溝
7 電気信号用配線
11 光電気複合ケーブル
12 ファイバコア
13 ファイバクラッド
14 光ファイバ
15 金属被覆層
16 絶縁被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバコアの外周にファイバクラッドを有する光ファイバの外周に、電気信号を伝送するための金属被覆層を有し、前記金属被覆層の外周に絶縁被覆層を有する光電気複合ケーブルと、導波路コア及び導波路クラッドを有する光導波路の表面に、電気信号用配線を有する複合導波路とを備え、前記導波路コアに前記ファイバコアが接続されていると共に、前記電気信号用配線に前記金属被覆層が接続されていることを特徴とする光電気複合伝送モジュール。
【請求項2】
前記複合導波路は、端部に前記金属被覆層を設置するための溝を有し、前記溝に隣接させて前記光導波路の表面に前記電気信号用配線が形成されている請求項1記載の光電気複合伝送モジュール。
【請求項3】
前記光導波路は、前記溝の周辺部をSiで形成し、前記周辺部以外の部分を石英ガラスで形成してなる請求項1又は2記載の光電気複合伝送モジュール。
【請求項4】
ファイバコアの外周にファイバクラッドを有する光ファイバと、前記光ファイバの外周に形成された電気信号を伝送するための金属被覆層と、前記金属被覆層の外周に形成された絶縁被覆層とを備え、前記金属被覆層の厚さが0.004〜0.3mmであることを特徴とする光電気複合ケーブル。
【請求項5】
前記金属被覆層は、平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子を焼結させてなる請求項4記載の光電気複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−222749(P2009−222749A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64085(P2008−64085)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】