説明

入退室管理システム

【課題】入退可能エリアのセキュリティ強度を向上することができる入退室管理システムを提供する。
【解決手段】入退室管理システム20は、認証媒体の情報を読み取り、読み取った情報を認証する認証制御機器2〜5、認証制御機器を管理する管理サーバ14を備え、管理サーバ14は、認証制御機器2〜5に対して、管理区域のセキュリティ区分毎に認証する前記認証媒体の種別を設定する。管理サーバ14は、認証制御機器2〜5に対して、複数の前記認証媒体の種別を設定する際に、認証制御機器2〜5は、設定される前記認証媒体の種別の情報を読み取るマルチカードリーダ6〜9を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、マンションなどの入退可能エリアのセキュリティ強度を向上することができる入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル、マンションなどの入退室管理システムの入退可能エリアの設定仕様として、認証媒体のID毎(個人毎)に入退可能エリアの設定がサーバ側で実施され、入退可能エリアに応じたセキュリティ運用がされている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】“RFID応用入退室システム“、[online]、[平成19年10月2日検索]、インターネット<URL:http://www.hitachi-ies.co.jp/solution/seigyo/nyutai.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ビル、マンションなどの入退室管理システムにおいて、特定社員(特別エリアの入退可能な社員)、一般社員、パートタイマ、アルバイトなど複数の労働者が存在する場合、パートタイマ、アルバイトは、入社/退社の出入りが激しいため、ID管理の登録・削除が頻繁に繰り返される。
【0004】
非特許文献1によれば、セキュリティを確保するには、各個人を各グループ(特定社員、一般社員、パートタイマ、アルバイトなど)に設定する必要があり、個人毎のID管理が必要となる。すなわち、入退可能エリアの設定仕様として、個人毎に認証媒体のID管理が必須となる。
【0005】
また、同一方式の認証媒体を用いる場合、IDのみでの認証作業となるため発行管理も厳重に実施する必要がある。また、セキュリティ強度を向上させるには、メモリ拡大、暗号対応など、認証媒体仕様が複雑となりコストもかかる問題がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、入退可能エリアのセキュリティ強度を向上することができる入退室管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、ビル、マンションなどの入退室管理システムのセキュリティエリア設定仕様として、マルチカードリーダを使用し、認証媒体毎に入退可能なエリアを区切ることで、エリア設定を可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入退可能エリアのセキュリティ強度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態による入退室管理システムを示す構成図である。入退室管理システム20は、認証媒体種別による入退エリア設定機能をもったシステムであり、エリア設定を実現するために複雑なID管理、発行業務を行うことなく、認証媒体毎に入退可能なエリアを設定できる。ここでは、入退エリアを4つのエリア(エリアA、エリアB、エリアC、およびエリアD)として説明する。
【0010】
図1に示すように、入退室管理システム20は、エリアA,B,C,Dの入退を認証する認証制御機器2〜5と、それに接続された出入口部のマルチカードリーダ6〜9および電気錠10〜13が接続され、HUB1を介して、入退室管理用の認証データ(例えば、ID情報、暗証番号)を一括管理する管理サーバ14と、カード登録/削除/閲覧を行う管理端末15とが接続される。エリアA,B,C,Dと、マルチカードリーダ6〜9との関係を、図2を参照して説明する。
【0011】
図2は、エリアのセキュリティを示す説明図である。エリアAは、全員通行可能エリアである。エリアBは、パートタイマ/一般社員/特定社員の通行可能エリアであり、アルバイトの通行不可のエリアである。エリアCは、一般社員/特定社員の通行可能エリアであり、パートタイマ/アルバイトの通行不可のエリアである。エリアDは、特定社員のみの通行可能エリアである。各エリアの入口には、通行人が携帯するIDカード(認証カード)を読み取るマルチカードリーダ6〜9が設置されている。ここでは、入口側に設置されているが、出口側にも設置されていてもよい。
【0012】
なお、パートタイマおよびアルバイトは、期間契約労働者の一種であり、厳密な定義はない。一般的には、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者よりも労働時間が短い労働者」である。ここでは、所定業務に関し、所定期間以上のものをパートタイムと称し、所定期間以下の不定期のものをアルバイトと称している。
【0013】
図1に戻り、システム管理者は、システム運用開始時に管理端末15を用いて、利用者のカード登録を管理サーバ14に実施する。
【0014】
利用者へのカード割り当ては、一般社員に対しては、他サービスとの連携も考え、第1のカード(例えば、FeliCa(登録商標))を適用する。また、最重要エリア(例えば、エリアD)のセキュリティ強度を上げるためには、第1のカードのユーザエリアへの特定コードの書き込みと暗号化を実施することで擬似カード発行を困難にする形式をとることとする。なお、第1のカードおよび第2のカードは、図1においては第1/第2カードと図示している。
【0015】
一方、人の入れ代わりが激しい従業員(アルバイト、パートタイマ)に対しては、発券費用が安価である第2のカード(例えば、μチップ(登録商標)カード)を割り当てる。
【0016】
なお、FeliCa(登録商標)は、非接触型ICカードのための通信技術として開発されている。非接触型ICカードは、リーダ・ライタからキャリアを送信して電磁誘導によりICカードに電力を供給し、キャリアの変調によりリーダ・ライタとカード間で通信を行う。同様に、μチップ(登録商標)は、超小型の無線ICチップであり、128ビットの読み出し専用データを記録する。
【0017】
図3は、職制と認証媒体との関係を示す説明図である。職制には、アルバイト、パートタイマ、一般社員、特定社員の4つの区分がある。アルバイトとパートタイマには、第2のカード(第2カード)が割当られ、一般社員と特定社員には、第1のカード(第1カード)が割当てられている。
【0018】
図1に戻り、管理サーバ14は、認証データを管理サーバ14へ登録すると同時に、カード情報(例えば、認証制御機器2〜5の識別情報とカード種別との関係情報)と認証データである登録データとを認証制御機器2〜5に配信する。認証制御機器2〜5は、エリア毎に適用しているカード種別の登録データのみをダウンロードする。具体的には、認証制御機器2〜5には、IPアドレス、号機番号などで区別をし、そこにカード種別が設定関係づけられているので、該当するカード種別の登録データのみをダウンロードする。ここでは、認証制御機器2および認証制御機器3は、第1のカードと第2のカードに対応する登録データをダウンロードし、認証制御機器4および認証制御機器5は、第1のカードに対応する登録データのみをダウンロードする。
【0019】
マルチカードリーダ6〜9は、種々のカードを読み取ることができるカードリーダであり、例えば、μチップ(登録商標)、Mifare(登録商標)、FeliCa(登録商標)がある。マルチカードリーダ6〜9は、認証制御機器4,5がダウンロードしたカード情報に対応するIDカードのみを読み取ることができる。
【0020】
次に、認証処理について図4および図5を参照して説明する。
図4は、第1/第2のカード対応マルチカードリーダを用いた認証処理を示すフローチャートである。第1/第2のカード対応マルチカードリーダとは、例えば、FeliCa(登録商標)/μチップ(登録商標)のカード対応のマルチカードリーダである。エリアAおよびエリアBの入口には、第1/第2のカード対応のマルチカードリーダ6,7が設置されている(図2参照)。
【0021】
第1/第2のカード対応のマルチカードリーダ6,7は、IDカードを読み込むと、まず第1のカードの有無検出を行い(ステップS1)、第1のカードの検出をしなければ(ステップS1,無)、第2のカードの有無検出を行う(ステップS2)。第2のカードの検出をしなければ(ステップS2,無)、ステップS1に戻る。
【0022】
第1/第2のカード対応のマルチカードリーダ6,7は、第1のカードを検出すると(ステップS1、有)、認証制御機器2,3は、カード情報が登録されたIDか否かを照合する(ステップS3)。登録データであれば、電気錠制御を行う(ステップS5)。認証データが無ければ(ステップS3,無)、認証の不可(認証NG)(ステップS6)となる。
【0023】
同様に、第1/第2のカード対応のマルチカードリーダ6,7は、第2のカードを検出すると(ステップS2、有)、認証制御機器2,3は、カード情報が登録されたIDか否かを照合する(ステップS4)。登録データであれば、認証制御機器2,3は、各々の電気錠10,11に対して、開錠の制御指令を行う(ステップS5)。認証データが無ければ(ステップS4,無)、認証の不可(認証NG)(ステップS6)となる。
【0024】
図5は、第1のカード対応マルチカードリーダを用いた認証処理を示すフローチャートである。第1のカード対応マルチカードリーダとは、例えば、FeliCa(登録商標)カード対応のマルチカードリーダである。エリアCおよびエリアDの入口には、第1のカード対応のマルチカードリーダ8,9が設置されている(図2参照)。
【0025】
第1のカード対応のマルチカードリーダ8,9は、第1のカードの有無検出を行い(ステップS1)、第1のカードの検出をしなければ(ステップS1,無)、第1のカードの有無検出から繰り返し行う。第1のカードを検出すると(ステップ1,有)、認証制御機器4,5は、カード情報が登録されたIDか否かを照合する(ステップ3)。登録データであれば、認証制御機器4,5は、各々の電気錠12,13に対して、開錠の制御指令を行う(ステップS5)。認証データが無ければ(ステップS3,無)、認証の不可(認証NG)となる(ステップS6)。
【0026】
さらなる実施形態を、マンションの入退室管理を例に説明する。
IDカードの管理者は、マンションの住居人には、FeliCa(登録商標)に対応したIDカードを、宅配業者、新聞業者などの提携業務会社の担当者には、μチップ(登録商標)対応のIDカードを発行する。マンションの一般玄関には、FeliCa(登録商標)およびμチップ(登録商標)対応のカードリーダを設置し、また、各住居への最終集合玄関には、FeliCa(登録商標)対応のカードリーダを設置する。宅配ロッカや新聞受けなどのポストは、一般玄関と最終集合玄関との間に配置されている。
【0027】
前記のマンションの住居人は、一般玄関および最終集合玄関を、FeliCa(登録商標)対応のカードをカードリーダに提示することにより通行することができる。これに対し、宅配業者、新聞業者などの提携業務会社の担当者は、一般玄関を、μチップ(登録商標)対応のカードをカードリーダに提示することにより通行することができるが、最終集合玄関を通行することができない。
【0028】
以上説明したように、ビル、マンションなどの入退室管理システムにおいて、特定社員(特別エリアの入退可能な社員)、一般社員、パートタイマ、アルバイトなど複数の労働者が存在する場合、パート、バイトは入社/退社の出入りが激しいため、ID管理が面倒な業務となるが、入退室管理を強化する必要がある。
【0029】
本実施形態の入退室管理システム20は、認証媒体の情報を読み取り、読み取った情報を認証する認証制御機器(認証機器)2〜5と、認証制御機器2〜5を管理する管理サーバ14を備え、管理サーバ14は、認証制御機器に対して、管理区域のセキュリティ区分毎に認証する前記認証媒体の種別を設定する。
【0030】
また、管理サーバ14は、認証制御機器2〜5に対して、複数の前記認証媒体の種別を設定する際に、認証制御機器2〜5は、設定される前記認証媒体の種別の情報を読み取るマルチカードリーダ(読取部)6〜9を有する。さらに、認証制御機器2〜5は、設定された前記認証媒体の種別に関連する認証情報を、管理サーバ14からダウンロードする。
【0031】
本発明によれば、認証媒体毎に入退エリアを限定させることでセキュリティ強度を強化することができる。また、発行業務が多いため、低価格媒体を適用することで運用コストの低減を図ることができる。逆に特定社員(特別エリアの入退可能な社員)は、専用フォーマットかつ暗号化などに対応可能なコスト高の媒体を使用し、セキュリティ強化を図ることができる。
【0032】
このように、エリア設定仕様として、認証制御機器の構成要素としてマルチカードリーダを使用し、認証媒体毎に入退可能なエリアを区切ることで、認証媒体自体でエリア設定を可能としセキュリティ強度を向上させることができる。
【0033】
特定社員(特別エリアの入退可能な社員)、一般社員、パートタイマ、アルバイトなど複数の労働者が存在するビル、マンションなどの入退室管理システムにおいて、職制毎に認証媒体を区別することで、発行/削除の管理が頻繁でかつ大勢の職員(例えば、パートタイマ、アルバイト)に対しては、低価格な媒体を用いることで低価格な運用コストで入退室管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による入退室管理システムを示す構成図である。
【図2】エリアのセキュリティを示す説明図である。
【図3】職制と認証媒体との関係を示す説明図である。
【図4】第1/第2のカード対応マルチカードリーダを用いた認証処理を示すフローチャートである。
【図5】第1のカード対応マルチカードリーダを用いた認証処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 HUB
2 認証制御機器(エリアA)
3 認証制御機器(エリアB)
4 認証制御機器(エリアC)
5 認証制御機器(エリアD)
6,7,8,9 マルチカードリーダ(読取部)
10,11,12,13 電気錠
14 管理サーバ
15 管理端末
20 入退室管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証媒体の情報を読み取り、読み取った情報を認証する認証機器と、前記認証機器を管理する管理サーバとを備える入退室管理システムであって、
前記管理サーバは、前記認証機器に対して、管理区域のセキュリティ区分毎に認証する前記認証媒体の種別を設定する
ことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
前記管理サーバが、前記認証機器に対して、複数の前記認証媒体の種別を設定する際に、前記認証機器は、設定される前記認証媒体の種別の情報を読み取る読取部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記認証機器は、設定された前記認証媒体の種別に関連する認証情報を、前記管理サーバからダウンロードする
ことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項4】
入退室を管理する管理サーバを有する入退室管理システムであって、
第1の管理区域への入室の際に、認証媒体の情報を読み取り、読み取った情報を認証する第1の認証機器と、
第2の管理区域への入室の際に、認証媒体の情報を読み取り、読み取った情報を認証する第2の認証機器と、を備え、
前記管理サーバは、前記第1の認証機器に対して、認証する第1の認証媒体および第2の認証媒体の種別を設定し、前記第2の認証機器に対して、認証する第1の認証媒体の種別を設定する
ことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項5】
前記管理サーバが、前記第1の認証機器に対して、複数の認証媒体の種別を設定する際に、前記第1の認証機器は、設定される前記第1の認証媒体および前記第2の認証媒体の種別の情報を読み取る読取部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の入退室管理システム。
【請求項6】
前記認証媒体は、IDカードである
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−140298(P2009−140298A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316846(P2007−316846)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】