説明

共焦点内視鏡システム

【課題】共焦点観察画像が持つ高倍率や高解像度と言った特徴を活かしつつも計測情報の表示を可能とする共焦点内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】共焦点内視鏡システムは、電子内視鏡とプロセッサから構成され、電子内視鏡は、照明光を生体組織に対して照射して、該生体組織からの光のうち特定の位置からの光のみを抽出する共焦点光学ユニットを有しており、プロセッサは、共焦点光学ユニットからの光に基づき、2次元画像データを生成する2次元画像生成部を少なくとも有する画像処理手段と、表示画像に所定の計測情報が少なくとも一つ表示されるように、画像データに計測情報を重畳する計測情報合成手段とを有し、計測情報合成手段によって計測情報が重畳された合成画像データを外部に出力するように構成されており、計測情報合成手段は表示画像に含まれる計測情報の表示態様を共焦点光学ユニットの撮像範囲に基づいて決定する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体腔内に挿入され、該体腔内の生体組織の断層像を高倍率で観察することができる共焦点内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者の体腔内に挿入したプローブにより生成された画像データに、計測情報としてスケールデータを重畳して単一の画像として表示させることにより、術者の診療の便宜に資することを目的とする装置が提案されている。該提案としては、以下の特許文献1がある。特許文献1では、体腔内からの反射超音波に基づき生成された該体腔内の画像上にスケールを表示させる超音波診断装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3396165号公報
【0004】
近年、通常の観察光学系によって得られる像よりも高倍率かつ高解像度な像を観察することができる共焦点光学系を備えた、いわゆる共焦点内視鏡システムが知られている。共焦点内視鏡システムは、体腔内の生体組織に対して照明光を照射する。そして、生体組織からの光のうち該システムの焦点位置と共役の位置にあるピンホールを介した光のみを受光し、その強度に応じた信号に基づいて、従前よりも遙かに高倍率かつ高解像度な画像を観察することが可能になる。
【0005】
また、共焦点内視鏡システムは、必要に応じて光軸方向(つまり観察部位の深さ方向)における焦点位置を微小にずらすことができ、生体組織表面から250μm程度までの深さにある組織の観察を行うことができる。このように照明光の照射範囲はずらすことなく焦点位置を深さ方向にシフトすることにより得られた複数枚の観察画像に基づき、さらに該照射範囲における画像を3次元表示したいという要望がある。
【0006】
上記のような共焦点内視鏡システムが実用化されるにあたって、術者がより迅速かつ精確に画像から患部を特定するためには、患部と想定される生体組織の一部のサイズを明確に計測できることや生体組織の深さ方向の断面像が要求される。しかし、特許文献1の開示内容は、あくまで構成および使用態様が極めて特殊な超音波診断装置にのみ好適に使用されるものである。そのため、特許文献1に記載されているスケール表示が可能な従来のシステムを、高倍率かつ高解像度な画像を提供することができ、さらには2次元表示や3次元表示といった表示態様を任意に切り替えることができる共焦点内視鏡システムにそのまま適用することはできず、さらなる改善が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み、共焦点光学ユニットを介して得られた画像に対して、該画像が持つ高倍率や高解像度と言った特徴を活かし、該画像の表示態様に対応した計測情報の表示や3次元画像の構築を可能とする共焦点内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る共焦点内視鏡システムは、電子内視鏡とプロセッサから構成され、電子内視鏡は、照明光を生体組織に対して照射して、該生体組織からの光のうち特定の位置からの光のみを抽出し、プロセッサに伝送する共焦点光学ユニットを有しており、プロセッサは、共焦点光学ユニットからの光に基づき、2次元画像に関する画像データを生成する2次元画像生成部を少なくとも有する画像処理手段と、表示画像に所定の計測情報が少なくとも一つ表示されるように、画像処理手段から出力された画像データに計測情報を重畳する計測情報合成手段と、を有し、しかも計測情報合成手段によって計測情報が重畳された合成画像データを外部に出力するように構成されており、計測情報合成手段は、表示画像に含まれる計測情報の表示態様を、共焦点光学ユニットの撮像範囲に基づいて決定していることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、共焦点光学ユニットの光学性能に応じた計測情報を画像に重畳することができる。つまり、共焦点光学ユニットによって得られた高倍率かつ高解像度な画像に対応した計測情報を表示させることができる。
【0010】
より具体的には、計測情報合成手段は、表示画像に含まれる計測情報の表示態様を、共焦点光学ユニットの倍率および共焦点光学ユニットにより形成される撮像面での像高に基づいて決定する(請求項2)。
【0011】
請求項3に記載の共焦点内視鏡システムによれば、電子内視鏡に、共焦点光学ユニットを該ユニットの光軸方向に沿って移動させるユニット移動手段と、該ユニット移動手段の移動量を検出する移動量検出手段を設けることができる。これにより、画像処理手段は、2次元画像に関する画像データおよび移動量検出手段からの検出結果に基づいて、3次元画像に関する画像データを生成する3次元画像生成部を有することができる。
【0012】
請求項4に記載の共焦点内視鏡システムによれば、3次元画像において観察可能な深さを設定する観察深さ設定手段をさらに設けることができる。これにより、3次元画像生成部は、3次元画像が観察深さ設定手段により設定された深さを有するように、3次元画像に関する画像データを加工することができる。
【0013】
さらに請求項5に記載の共焦点内視鏡システムによれば、画像処理手段は、3次元画像に関する画像データに基づき、所定の断面により切断された断面画像に関する画像データを生成する断面画像生成部を有することができる。
【0014】
請求項6に記載の共焦点内視鏡システムによれば、所定の断面位置を設定する断面位置設定手段をさらに有することが望ましい。
【0015】
請求項7に記載の共焦点内視鏡システムによれば、画像処理手段と計測情報合成手段の間に配設され、画像処理手段から出力された各画像データのうち計測情報合成手段に出力する画像データを択一的に選択する出力画像制御手段を有する。
【0016】
請求項8に記載の共焦点内視鏡システムによれば、出力画像制御手段によって択一的に選択される画像データを指示する画像データ選択手段をさらに有することが望ましい。
【0017】
また、請求項9に記載の共焦点内視鏡システムによれば、出力画像制御手段に計測情報の表示の有無を指示する計測情報表示指示手段をさらに設けることができる。そして、計測情報表示指示手段から計測情報を表示するという制御信号を受信すると択一的に選択した画像データを計測情報合成手段に出力し、計測情報表示指示手段から計測情報を表示しないという制御信号を受信すると択一的に選択した画像データを計測情報合成手段を介さずに外部に出力するように、出力画像制御手段を構成することができる。
【0018】
請求項10に記載の共焦点内視鏡システムによれば、外部に出力される画像データに所定の倍率でデジタルズーム処理を施す、デジタルズーム手段をさらに有することが望ましい。
【0019】
請求項11に記載の共焦点内視鏡システムによれば、上記所定の倍率を設定する倍率設定手段をさらに設けることにより、術者等の利便性の向上が図れる。
【0020】
請求項12に記載の共焦点内視鏡システムによれば、表示画像における計測情報は、上記所定の倍率に対応した単位を表すように構成される。
【0021】
術者等の便宜に資する観点から、例えば、ユニット移動手段の移動ピッチを設定するピッチ設定手段をさらに設けることも可能である(請求項13)。
【0022】
請求項14に記載の共焦点内視鏡システムによれば、表示画像における計測情報の表示態様に関する操作をするための操作手段をさらに有し、計測情報合成手段は、操作手段における操作に応じて前記画像データに所定の計測情報を重畳することが望ましい。
【0023】
上記の計測情報としては、スケールやグリッドが例示される。計測情報としてスケールを採用する場合、上記操作には、例えば、表示画像において表示されるスケールの数に関する設定、スケールの回転、スケールの移動、の少なくとも一つが含まれる。
【0024】
請求項18に記載の共焦点内視鏡システムによれば、共焦点光学ユニットは、レーザー光を生体組織に対して照射し、特定の位置からの蛍光のみを抽出するように構成することができる。
【0025】
また、請求項19に記載の共焦点内視鏡システムによれば、共焦点光学ユニットは、照明光を生体組織に対して二次元で移動させる走査型のユニットとして構成しても良い。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明に係る共焦点内視鏡システムによれば、共焦点内視鏡システムにより得られる観察画像が持つ高倍率や高解像度といった特徴に対応した計測情報の表示を行うことができる。また、本発明によれば、上記観察画像に関する、次元の違いといった表示態様の変化にも柔軟に対応した計測情報の表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本実施形態の共焦点内視鏡システム500の構成を示す図である。共焦点内視鏡システム500は、体腔内に挿入されて当該体腔内の画像を撮像する電子内視鏡100、電子内視鏡100が接続される第一プロセッサ200、第二プロセッサ300、各プロセッサ200、300に接続され、各プロセッサ200、300から出力される画像を表示する第一モニタ200M、第二モニタ300Mを有する。
【0028】
電子内視鏡100は、例えばCCDなどの固体撮像素子を用いて体腔内の生体組織を撮像する通常観察機能と、共焦点光学系により生体組織内部の画像情報を取得する共焦点観察機能とを有している。電子内視鏡100は、可撓性を持ち体腔内に挿入される挿入部可撓管10およびその先端11、鉗子などの各種処置具がセットされる処置具挿入口12、術者が電子内視鏡100操作時に把持する把持部13、術者が電子内視鏡100を操作する為の各種ボタンやレバーが配置された内視鏡側操作部14、各プロセッサ200に接続される第一ケーブル15、第二ケーブル16を有する。
【0029】
第一プロセッサ200は、共焦点観察時に使用されるものである。第一プロセッサ200は、画像形成・処理部210と光源部220、操作部230を有する。第二プロセッサ300は、通常観察時に使用されるものである。なお、操作部230は、図1では、フロントパネルに配設されている各種スイッチ等を想定しているが、キーボードやマウスといった外部入力機器であっても良い。
【0030】
図2は、電子内視鏡100の可撓管先端11の内部の構成を示した概略構成図である。可撓管先端11は、共焦点光学ユニット50と通常観察ユニット90を有する。共焦点光学ユニット50は、シングルモード光ファイバ(以下、単に光ファイバという)20、対物光学系30、カバーガラス31、圧電素子40A、40B、圧電素子駆動部40Cを有する。光ファイバ20、対物光学系30、カバーガラス31、圧電素子40A、40Bは、円筒状の枠体61に保持されている。枠体61は、該枠体61の径よりも若干大きめの径を持つ円筒状の金属パイプ63内にスライド自在に保持されている。
【0031】
なお、図2において、対物光学系30の光軸方向をZ方向、Z方向と直交し、かつ互いに直交する方向をそれぞれX方向、Y方向とする。つまり、X方向とY方向は光軸に直交する面(X−Y面)を規定する。
【0032】
光ファイバ20は、第一プロセッサ200の発光部220と対物光学系30との間に配設される導光部材である。圧電素子40A、40Bは、光ファイバ20の射出側端面21近傍であって、X−Y面内において変位する方向が互いに直交する二方向(ここではX方向とY方向)となるように配設されている。圧電素子駆動部40Cは、信号線40Dを介して第一プロセッサ200から伝送された制御信号に基づき、各圧電素子40A、40Bに所定の電圧を印加する。各圧電素子40A、40Bは、電圧が印加されると、それぞれX方向やY方向に光ファイバ20の射出側端面21近傍を押圧し、各方向へ移動させる。これにより、射出側端面21は、実質的にX−Y平面上を移動する。なお、厳密には、射出側端面21の軌跡は、射出側端面21から照射される光束の主光線の延長線と対物光学系30の光軸との交点を曲率中心とする曲面となる。しかし、射出側端面21の移動量は微量であるため、該曲面は実質的にX−Y面と略一致すると考えられる。射出側端面21から照射される光束は、該移動に伴って生体組織Sの表面を2次元に走査する。つまり、本実施形態では、共焦点光学ユニット50として、走査型のユニットを想定している。
【0033】
また、枠体61の外壁62と金属パイプ63の内壁64間には、圧縮コイルバネ70と形状記憶合金80が取り付けられている。外壁62と内壁64は、Z方向に略直交する(つまり、X−Y平面上にある)。形状記憶合金80は、常温下で外力を加えると変形し、一定温度以上に加熱されると記憶している状態に収縮する機能を有する。より具体的には、形状記憶合金80は、加熱によりZ方向に収縮するように配設されている。圧縮コイルバネ70は、自然長から圧縮された状態で取り付けられている。つまり、圧縮コイルバネ70は、枠体61を可撓管先端前方(カバーガラス31に近づく方向)に付勢した状態にある。
【0034】
印加電圧により加熱作用を受けると、形状記憶合金80は収縮する。形状記憶合金80の収縮する力は、圧縮コイルバネ70の張力よりも大きく設計されている。よって、枠体61は、カバーガラス31と逆の方向、換言すれば内視鏡先端部後方(カバーガラス31から離れる方向)にスライドする。これにより、光ファイバ21から照射され、対物光学系30を介した光束の集光位置がZ方向に若干ずれる。つまり、Z方向の走査が可能になる。
【0035】
共焦点内視鏡システム500において、共焦点観察ユニット50を用いた生体組織Sの画像形成に関する処理について具体的に説明する。光ファイバ20は、発光部からのレーザー光束を電子内視鏡100内に導き、射出側端面21から照射する。つまり、光ファイバ20の射出側端面21は二次的な点光源として機能する。上述したように、圧電素子40A、40Bにより、射出側端面21は、実質的にX−Y面上を移動する。レーザー光は、励起光として作用する波長を有する。
【0036】
実質的にX−Y面上を移動中の射出側端面21から照射された光束は対物光学系30、カバーガラス31を介して生体組織Sに集光する。ここで、カバーガラス31は生体組織Sに当接されている。レーザー光によって照射されたことにより生体組織Sで生じた蛍光は、カバーガラス31、対物光学系30、射出側端面21の順に戻る。そのため、対物光学系30と光ファイバ20は、対物光学系30の前側焦点位置に射出側端面21が位置するように配置される。つまり、実質的にX−Y面内の所定位置にある射出側端面21には、該所定位置にある射出側端面21から照射され、生体組織Sにおける射出側端面21と共役な集光点からの蛍光のみが入射するように配置構成される。これにより、射出側端面21は、二次的点光源として機能するだけでなく、生体組織Sにおける照射光束の集光点からの蛍光のみを抽出する共焦点ピンホールとしても機能する。
【0037】
射出側端面21に入射した反射光は、光ファイバ20を介して第一プロセッサ200に導かれる。そして該反射光は、例えばファイバカプラ等によって発光部220からの光と分離され、第一プロセッサ200の画像形成・処理部210により受光される。画像形成・処理部210は、順次受光する反射光に基づいて点像を形成し、該点像を光の走査位置に対応する位置に並べることにより1フレーム分の画像(静止画像)を形成する。本実施形態の共焦点内視鏡システム500では、共焦点光学ユニット50により形成される画像の表示態様としては、2次元表示、3次元表示、さらには3次元表示に基づき任意の断面状態を表示する断面表示がある。画像形成・処理部210は、操作部230からの指示に対応する表示態様で画像が表示されるように所定の処理を施した後、モニタ200Mに出力する。術者は、モニタ200Mに表示される、高倍率、高解像度な画像に基づき、生体組織の診断等を行う。
【0038】
なお、図2に示す通常観察ユニット90は、図示しないものの、第二プロセッサ300から伝送される白色光を生体組織Sに照射させる対物光学系や照射された生体組織を撮像する撮像素子等を備える。
【0039】
通常観察時、第二プロセッサ300から照射された光は、対物光学系を介して生体組織Sを照明する。生体組織Sからの反射光は、通常観察ユニット90内の撮像素子で受光される。該撮像素子は、受光した光に対応する画像信号を第二プロセッサ300に送信する。第二プロセッサ300は、該画像信号に所定の画像処理を施した後、モニタ300Mに該画像信号を出力し、撮像画像を表示させる。
【0040】
次に本発明の主たる特徴である、共焦点内視鏡システム500における、共焦点観察画像に対するスケール表示処理について詳説する。
【0041】
図3は、共焦点内視鏡システム500におけるスケール表示処理を説明するためのブロック図である。なお、図3において、各処理部やメモリ211〜219は図1に示す画像形成・処理部210に含まれるものとし、各設定部や選択部230A〜230Gは図1に示す操作部230に含まれるものとする。
【0042】
まず2次元の共焦点観察画像に関するスケール表示処理を説明する。生体組織Sからの反射光であって共焦点光学ユニット50から伝送された光は、プロセッサ200の前段画像処理部211内にあるイメージセンサ(不図示)により受光される。そして上記の通り、順次受光する反射光に基づいて点像を形成し、該点像を光の走査位置に対応する位置に並べることにより1フレーム分の画像(2次元画像)を生成する。生成された2次元画像に関するデータ(2次元画像データ)は、2次元画像用記憶部212に一時的に記憶される。
【0043】
出力画像制御部216は、画像形成・処理部210を構成する複数の処理部を統括して制御する。また、出力画像制御部216は、術者等の操作によって、画像選択部230Eから送信される制御信号に従い、外部に出力する画像の表示態様の切換を行う。つまり、ここでは、術者等は、2次元の共焦点観察画像が表示されるように、画像選択部230Eを操作していることになる。2次元の共焦点観察画像を表示することを指示する制御信号を受信している場合、出力画像制御部216は、所定のタイミング、例えばモニタ200Mの周期に対応して2次元画像用記憶部212から2次元画像データを読み出して、スケール合成手段217に出力する。
【0044】
スケール合成部217は、出力画像制御部216を介して2次元画像データが入力すると、スケール用メモリ218からスケールデータを読み出す。そして、2次元画像データにスケールデータを重畳してスケールが合成された合成画像データを生成する。ここで、スケール用メモリに格納されているスケールデータは、共焦点観察画像の撮像範囲に基づいて予め決定されたサイズを持つスケールに関するデータである。該撮像範囲は、共焦点光学ユニット50の倍率および撮像面における像高に基づき決定される。従って、本実施形態においてモニタ200Mに実際に表示される画像中にあるスケールは、該画像、つまり共焦点光学ユニット50によって得られる画像に好適なサイズを備えている。
【0045】
なおスケール合成部217には操作部230の一部をなすスケール設定部230Fが接続されている。術者等は、スケール設定部230Fを操作することにより、2次元画像におけるスケールの表示個数や表示位置を設定することができる。
【0046】
合成処理により生成された合成画像データは、次いでデジタルズーム部219に入力する。デジタルズーム部219は、術者等がズーム設定部230Gを介して設定した所定の倍率まで拡大、縮小して画像が表示されるようにズーミング処理を行う。なお、ズーミング処理はデジタルカメラ等の分野において周知の処理であるためここでの詳説は省略する。デジタルズーム部219から出力された合成画像データは、モニタ200Mに出力され、表示される。このように、スケール重畳後の画像データにズーミング処理を施すことにより、スケール自体も画像の表示倍率に対応して拡大あるいは縮小される。よって、ズームの如何にかかわらず精確な計測が可能になる。
【0047】
図4(a)は、上記のスケール表示処理を経てモニタ200Mに表示された2次元画像の一例を簡略化して示す図である。図4(a)に示す2次元画像では、二つのスケールS1、S2が表示されている。なお、術者等は、モニタ200Mに表示された2次元画像を観察しつつ、スケール設定部230Fを操作することにより、各スケールS1、S2に関し、表示位置の移動、回転、表示個数の変更を実行することが可能である。例えば、図4(a)に示すスケールS1が初期状態(つまり、スケール設定部230Fを介して何らの操作もなされなかった状態)での表示態様と仮定すると、スケールS2は、スケール設定部230Fを介して移動および回転操作が実行された後の表示態様である。
【0048】
なお、スケールS1、S2はいずれも互いに直交する二本の軸から構成されているが、一本の軸のみからなる構成であっても良い。
【0049】
また、本実施形態の共焦点観察画像に表示されるスケールは、単位の異なる複数種類の目盛りを有する。ここで、共焦点観察画像の視認性を維持しつつも、生体組織の精確な採寸を可能とする必要がある。そこで、本実施形態のスケールデータは、デジタルズームの倍率に応じて採寸に好適な目盛りが表示されるように、各種類の目盛りの長さと太さが異なるように構成されている。
【0050】
具体的には、目盛りの長さと太さを大きな単位の目盛りから順に短くかつ細く設定しておく。これにより、単位の小さな目盛りは、低倍率時には表示されているものの肉眼視できない状態にあるが、高倍率時には画像とともに拡大表示される。これに対し、単位の大きな目盛りは、倍率が高くなるにつれ観察画面から外れていくため、観察の妨げにはならない。
【0051】
例えば、図4(a)がモニタ200Mに表示されている場合に、術者等がズーム設定部230Gを介してデジタルズーム倍率を上げて、図4(a)中領域pが拡大表示されたとする。領域pの拡大表示を図4(b)に示す。
【0052】
上記の通り、スケールデータ自体は、異なる複数種類の単位の目盛りを有している。従って、厳密には、デジタルズーム倍率の如何を問わず、いずれの単位の目盛りも表示されることになる。しかし、図4(a)に示すように、低倍率で画像が表示されている場合、スケール(ここではS2)は、あたかも大きい単位の目盛り(例えば、L1、L2)のみが付されているような表示状態にある。つまり、目盛りL1、L2よりも小さな単位の目盛りは視認されない。そして、図4(b)に示すように、高倍率で画像が表示されるにつれて、スケール自体も拡大表示される。これにより、大きい単位の目盛りL1、L2間に、小さな単位の目盛りL11〜L19が視認可能な状態で表示されるようになる。
【0053】
なお、上記説明では、デジタルズーム倍率に応じた、単位の異なる二種類の目盛りの表示態様の変化について説明した。しかし、実際の共焦点内視鏡システム500では、単位は二種類に限定されるものではない。例えば、図4(b)において、互いに隣接する目盛りL11〜L19間にさらに微小な単位の目盛りを設けておき、倍率を上げることにより、該微小な単位の目盛りが目視できる程度に表示されるように構成されていても良い。
【0054】
以上が2次元の共焦点観察画像に関するスケール表示処理の説明である。ここで、前段画像処理部211によって所定の画像処理を経た2次元画像データを2次元画像用記憶部212に記憶させることなく、直接、出力画像制御部216、デジタルズーム部219を介して外部に出力することも可能である。これにより、共焦点光学ユニット50を用いて得られた画像をリアルタイムで観察することができる。
【0055】
次に、3次元画像に関するデータ(3次元画像データ)の生成、およびスケール表示処理について説明する。
【0056】
共焦点光学ユニット50をZ方向に微小移動させる形状記憶合金80は、ユニット駆動部81により駆動制御される。詳しくは、ユニット駆動部81は、術者等が移動ピッチ設定部230Aを介して設定するピッチに従って、共焦点光学ユニット50のZ方向の移動量(つまり、形状記憶合金80に印加する電圧の量)を制御する。ここで、ピッチを細かく設定すると、3次元画像データにおけるZ方向の解像度を高めることができる。また、ピッチを粗く設定すると、3次元画像を生成する際に使用されるデータ量が軽減され、処理の迅速化が達成される。
【0057】
共焦点光学ユニット50の移動量は、ユニット移動量検出部82によって検出される。ユニット移動量検出部82は、例えば抵抗値の変化等から移動量を検出する。そして、検出結果に対応する信号(検出信号)をプロセッサ200の信号処理部213に出力する。
【0058】
信号処理部213は、ユニット移動量検出部82からの検出信号に基づき、該検出信号受信時における現在の共焦点光学ユニット50の位置情報を生成する。そして、2次元画像用記憶部212に一時的に記憶された2次元画像データを読み出し、該位置情報と2次元画像データを関連づける処理を行う。なお、信号処理部213には、観察深さ設定部230Bが接続されている。観察深さ設定部230Bは、モニタ200Mに表示される3次元画像における深さ方向換言すれば光軸方向の長さ、つまり3次元画像における厚みを術者等が設定するために操作する設定部である。信号処理部213は、観察深さ設定部230Bからの信号に基づいて、設定された観察深さに対応する2次元画像データに対して上記関連づけ処理を行う。
【0059】
出力画像制御部216は、画像選択部230Eから3次元画像を選択する制御信号を受信すると、信号処理部213に制御信号を送信する。該制御信号を受信すると、信号処理部213は、位置情報が関連づけられた2次元画像データを、順次、3次元画像生成部214に出力する。
【0060】
3次元画像生成部214は、順次入力する位置情報が関連づけられた2次元画像データに基づいて3次元画像データを生成する。そして、生成した3次元画像データを、該生成部214内にある一時メモリに記憶する。また、生成された3次元画像データは、後段の3次元画像用記憶部215に記憶される。出力画像制御部216は、上記2次元画像に関する処理時と同様に、所定のタイミングで3次元画像生成部214から3次元画像データを読み出して、スケール合成手段217に出力する。スケール合成部217は、上記2次元画像に関する処理時と同様の処理を3次元画像データに施す。但し、ここでスケール合成部217がスケール用メモリ218から読み出すスケールデータは、3次元表示態様に対応したデータであり、上記2次元画像データに重畳するスケールデータとは異なる。
【0061】
スケール合成部217によりスケールデータを合成された3次元合成画像データは、デジタルズーム部219によって所定の倍率に拡大、縮小された後、モニタ200Mに出力される。
【0062】
図5は、上記の一連の処理を経てモニタ200Mに表示された3次元画像の一例を簡略化して示す図である。図5に示すスケールS3は、図4(a)、(b)に示すスケールS1、S2と同様にスケール設定部230Fを操作することにより、任意の個数表示可能であり、かつ任意の位置に移動させたり、回転させたりすることが可能である。
【0063】
また、図5に示すスケールS3は、互いに直交する三本の軸により構成されているが、これに限定されるものではなく、一本あるいは互いに直交する二本の軸のみからなる構成であっても良い。
【0064】
モニタ200Mに図5に示すような3次元画像が表示されている状態において、術者等は画像選択部230Eを操作することにより、該3次元画像における任意の位置での断面画像を観察することが可能になる。以下、断面画像に関する画像データ(断面画像データ)の生成、および該データに対するスケール表示処理について説明する。
【0065】
断面画像を表示させるにあたり、術者等は上記画像選択部230Eに関する操作を行うだけでなく、図5に示すような3次元画像を観察しつつ、断面位置設定部230Cを操作して、どの断面を画像として表示するかを設定する。詳しくは、出力画像制御部216は、画像選択部230Eから断面画像を選択する制御信号を受信すると、図5に示す3次元画像に、断面位置を示す破線領域Cを表示する。術者等は、断面位置設定部230Cを操作して、任意の断面位置を設定する。
【0066】
断面位置設定部230Cは、断面位置の設定に関する信号を3次元画像用記憶部215に出力する。3次元画像用記憶部215は、断面位置設定部230Cから該信号を受信すると、記憶している3次元画像データから該信号に対応する断面画像データのみを抽出し、出力画像制御部216に出力する。
【0067】
出力画像制御部216は、断面画像データをモニタ200Mの周期等所定のタイミングに同期してスケール合成部217に出力する。スケール合成部217は、上述した2次元画像データに対する合成処理と同様の処理を断面画像データに施す。
【0068】
スケール合成部217によりスケールデータを合成された断面合成画像データは、デジタルズーム部219によって所定の倍率に拡大、縮小された後、モニタ200Mに出力される。図6に上記の一連の処理を経てモニタ200Mに表示された断面画像の一例を簡略化して示す。図6に示す断面画像は、例えば図5に示す3次元画像と並べて表示することも可能である。
【0069】
以上が各表示態様に応じたスケール表示処理の説明である。なお、上記の各処理は、術者等によってスケールON/OFF設定部230DがONに設定されているときに有効に行われる処理である。スケールON/OFF設定部230DがOFFに設定されているとき、出力画像制御部216は、画像選択部230Eの選択に対応する画像データを直接デジタルズーム部219に出力する。よって、上述した一連のスケール表示処理は行われず、モニタ200Mに表示される画像にはスケールは表れない。
【0070】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0071】
例えば、上記説明では、計測情報としてスケールを共焦点観察画像に重畳して表示すると説明した。計測情報はスケールに限定されるものではなく、微細な正方形の升目からなるグリッドであってもよい。
【0072】
また、上記では、光ファイバ20の射出側端面21を二次元に移動させることにより生体組織Sを二次元走査する、走査型の共焦点光学ユニット50を想定して説明したが、本発明に係る共焦点内視鏡システムの共焦点光学ユニットは、走査型に限定されるものではない。例えば、単一の光ファイバを二次元に移動させる代わりに複数の光ファイバを二次元配列する構成であっても良い。
【0073】
また、上記では、レーザー光を励起光として使用し、生体組織からの蛍光を用いて画像生成していると説明したが、本発明に係る共焦点内視鏡システムは、一般的な照明光の生体組織からの反射光を用いて画像生成する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態の共焦点内視鏡システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態の電子内視鏡の可撓管先端の内部の構成を示した概略構成図である。
【図3】実施形態の共焦点内視鏡システムにおけるスケール表示処理を説明するためのブロック図である。
【図4】図4(a)は、実施形態のスケール表示処理を経てモニタに表示された2次元画像の一例を簡略化して示す図である。図4(b)は、2次元画像をズームした画像の一例である。
【図5】実施形態のスケール表示処理を経てモニタに表示された3次元画像の一例を簡略化して示す図である。
【図6】実施形態のスケール表示処理を経てモニタに表示された断面画像の一例を簡略化して示す図である。
【符号の説明】
【0075】
20 光ファイバ
21 射出側端面
30 対物光学系
50 共焦点観察ユニット
100 電子内視鏡
200、300 プロセッサ
210 画像形成・処理部
216 出力画像制御部
217 スケール合成部
219 デジタルズーム部
500 共焦点内視鏡システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡とプロセッサから構成され、
前記電子内視鏡は、
照明光を生体組織に対して照射して、該生体組織からの光のうち特定の位置からの光のみを抽出し、前記プロセッサに伝送する共焦点光学ユニットを有し、
前記プロセッサは、
前記共焦点光学ユニットからの光に基づき、2次元画像に関する画像データを生成する2次元画像生成部を少なくとも有する画像処理手段と、
表示画像に所定の計測情報が表示されるように、前記画像処理手段から出力された前記画像データに計測情報を重畳する計測情報合成手段と、を有し、
前記計測情報合成手段によって前記計測情報が重畳された合成画像データを外部に出力するよう構成され、
前記計測情報合成手段は、前記表示画像に含まれる計測情報の表示態様を、前記共焦点光学ユニットの撮像範囲に基づいて決定していることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記計測情報合成手段は、前記表示画像に含まれる計測情報の表示態様を、前記共焦点光学ユニットの倍率および前記共焦点光学ユニットにより形成される撮像面における像高に基づいて決定していることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記電子内視鏡は、
前記共焦点光学ユニットを該ユニットの光軸方向に沿って移動させるユニット移動手段と、
前記ユニット移動手段の移動量を検出する移動量検出手段をさらに有し、
前記画像処理手段は、前記2次元画像に関する画像データおよび前記移動量検出手段からの検出結果に基づいて、3次元画像に関する画像データを生成する3次元画像生成部を有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項4】
請求項3に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記3次元画像において観察可能な深さを設定する観察深さ設定手段をさらに有し、
前記3次元画像生成部は、前記3次元画像が前記観察深さ設定手段により設定された深さを有するように、前記3次元画像に関する画像データを加工することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記画像処理手段は、前記3次元画像に関する画像データに基づき、所定の断面により切断された断面画像に関する画像データを生成する断面画像生成部を有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項6】
請求項5に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記3次元画像における前記所定の断面の位置を設定する断面位置設定手段をさらに有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記画像処理手段と前記計測情報合成手段の間に配設され、前記画像処理手段から出力された各画像データのうち前記計測情報合成手段に出力する画像データを択一的に選択する出力画像制御手段を有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項8】
請求項7に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記出力画像制御手段によって択一的に選択される画像データを指示する画像データ選択手段をさらに有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記出力画像制御手段に計測情報の表示の有無を指示する計測情報表示指示手段をさらに有し、
前記出力画像制御手段は、前記計測情報表示指示手段から計測情報を表示するという制御信号を受信すると択一的に選択した前記画像データを前記計測情報合成手段に出力し、前記計測情報表示指示手段から計測情報を表示しないという制御信号を受信すると択一的に選択した前記画像データを前記計測情報合成手段を介さずに外部に出力することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
外部に出力される画像データに所定の倍率でデジタルズーム処理を施す、デジタルズーム手段をさらに有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項11】
請求項10に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記所定の倍率を設定する倍率設定手段をさらに有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
表示画像における前記計測情報は、前記所定の倍率に対応した単位を表していることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記ユニット移動手段の移動ピッチを設定するピッチ設定手段をさらに有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記表示画像における前記計測情報の表示態様に関する操作をするための操作手段をさらに有し、
前記計測情報合成手段は、前記操作手段における操作に応じて前記画像データに所定の計測情報を重畳することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記計測情報は、スケールであることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記計測情報は、グリッドであることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項17】
請求項14を引用する請求項15に記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記操作には、前記表示画像において表示される前記スケールの数に関する設定、前記スケールの回転、前記スケールの移動、の少なくとも一つが含まれることを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記共焦点光学ユニットは、レーザー光を前記生体組織に対して照射し、前記特定の位置からの蛍光のみを抽出することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれかに記載の共焦点内視鏡システムにおいて、
前記共焦点光学ユニットは、前記照明光を前記生体組織に対して二次元で移動させる走査型であることを特徴とする共焦点内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−275220(P2007−275220A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104029(P2006−104029)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】