説明

内向きリブ付き閉断面フレーム

【課題】この発明は、高い曲げ抗力を発揮できるものを生産性良く得ることができる内向きリブ付き閉断面フレームを提供することを目的とする。
【解決手段】金属板10を、略矩形状をなす閉断面が長手方向に連続するようロールフォーミングしてその両端部を溶接してなる中空フレーム体であって、曲げ力を受けて圧縮される側の前記閉断面の辺部10aの一部を、前記中空フレーム体の長手方向にわたって山形に重なるように折り畳んで、前記閉断面内で反対側の辺部10cに向けて突出する内向きのリブ゛部10eに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板を、略矩形状をなす閉断面が長手方向に連続するようロールフォーミングした後にその両端部を溶接することによって中空フレーム体が形成された内向きリブ付き閉断面フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両等に使用されるフレーム部材としては、略断面ハット状をなす金属板を他の金属板とフランジ部で接合することによって略矩形状をなす閉断面を形成した中空フレーム体が広く使用されている。
【0003】
しかしながら、このような中空フレーム体では、捻れ方向に大きな力が加わった時、略断面ハット状に形成された金属板500のフランジ部501が、図22にて二点鎖線で示すようにその根元部分で他方の板材600から離反し、これによって溶接部が開いてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、近年では、金属板を巻回するように折り曲げ加工した後、その両端部を接合することによって長手方向に連続する閉断面を形成する、いわゆるロールフォーミング成形が提案されている。この場合、ロールフォーミング成形の手法により、閉断面の外周部にフランジ部のないフレーム体を生産性よく得ることができ、上述した捻りによる溶接部の開きの問題を解消することが可能になる。
【0005】
また、換言すれば、フレーム重量が同じである場合、上述したフランジ部のないフレームは、フランジ部を設けたものに対し、捻れ方向の力に対してより高い耐久性を有していることから、結果としてフランジ部を設けた場合に比べ構造体の軽量化を実現できる。
【0006】
ところが、このロールフォーミング成形により閉断面フレームを成形した場合、フランジ部がない分、高い曲げ抗力を得ることができず、例えば、折れ曲がりが生じるまでに加えることができる最大の荷重(最大荷重)、及び折れ曲がりにより吸収できる荷重エネルギー(エネルギー吸収量)が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、このような問題を解決するために、例えば、下記特許文献1では、閉断面フレームの辺部の一つに突起部を形成し、この突起部を閉断面内で対向する辺部に向けて略矩形状に突出させたものが提案されている。
【0008】
この場合、フレームの辺部には、長手方向に延びる折れ線が複数形成されるため、フレーム体の曲げ抗力が向上し、上述した最大荷重及びエネルギー吸収性能を改善することが可能になる。
【0009】
そして、この場合、理論上では、上述した突起部の数を増やす程最大荷重及びエネルギー吸収性能をより向上させることが可能と考えられる。しかしながら、実際には、フレームの辺部の寸法との関係上、多数の突起部を一つに辺部に形成することは困難であり、その数には限界があるという問題がある。
【0010】
さらに、突起部を形成することにより、最大荷重及びエネルギー吸収性能を上述したようにより向上させることが可能になるものの、その反面捻りに対する剛性が、突起部のない単純な矩形閉断面状とした場合に比べて低下するという問題があった。
【0011】
また、近年では、例えば下記特許文献2に開示されているように、ロールフォーミング成形を施したフレームの辺部の一つに、金属板の端部同士をかしめたカシメ継手を配し、長手方向にわたってこのカシメ継手を対向する他の辺部に向けて突出させたものが提案されている。
【0012】
この場合、カシメ継手は、フレームの長手方向に交差する方向において金属板の端部同士を折り畳むようにして形成されるものであるため、前記フレームの長手方向に交差する方向において幅を短く形成することができる。従って、断面形状としては、単純な矩形断面形状とした場合と大きな違いはなく、それ故剛性の低下を抑制することができるという利点がある。
【特許文献1】国際公開第2002/064284号パンフレット
【特許文献2】特開2000−263169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記特許文献2では、同文献にて開示されている第2曲げ試験(同文献の図9参照)のように、フレームの折れ曲がり時においてカシメ継手の一部に緩みが生じるという問題があり、これが曲げ抗力、つまりは最大荷重、エネルギー吸収性能を低下させる要因となる虞がある。
【0014】
さらに、前記特許文献2では、曲げ力を受けて圧縮される側の辺部と隣り合う上辺部または下辺部に上述したカシメ継手を形成しているが、本発明者は、鋭意研究の結果、曲げ力を受けて圧縮される側の辺部と隣り合う辺部に突起部やカシメ継手等を配置したとしても高い曲げ抗力を十分に発揮することができないことを見出した。
【0015】
この発明は、高い曲げ抗力を発揮できるものを生産性良く得ることができる閉断面フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の内向きリブ付き閉断面フレームは、金属板を、略矩形状をなす閉断面が長手方向に連続するようロールフォーミングしてその両端部を溶接してなる中空フレーム体であって、曲げ力を受けて圧縮される側の前記閉断面の辺部の一部を、前記中空フレーム体の長手方向にわたって山形に重なるように折り畳んで、前記閉断面内で反対側の辺部に向けて突出する内向きリブ゛部に形成したものである。
【0017】
この構成によれば、中空フレーム体の折れ曲がり時において圧縮方向の荷重を受ける側の辺部にリブ部を配置することで、前記辺部に圧縮方向の荷重が作用しても、これに対して山形に二枚合わせで重なるように折り畳まれたリブ部が大きな抵抗力を発揮する。このため、フレーム全体として高い曲げ抗力を発揮することができる。
さらに、ロールフォーミング成形の過程においてリブ部を形成することにより、外周の辺部の肉厚の2倍の厚みを有する、継ぎ目のない連続したリブ部を生産性よく得ることができる。
そして、リブ部が、ロールフォーミング成形によって継ぎ目のない連続したものとされていることにより、上述した圧縮方向の荷重が作用したとしてもリブ部では破断が生じにくくなり、これにより、フレームは安定して高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記内向きリブ部を、前記中空フレーム体の長手方向に交差する方向に離間して平行に2つ設け、前記金属板両端部の溶接部は、前記曲げ力を受けて圧縮される側の辺部における前記2つの内向きリブ部の間の部位で前記中空フレーム体の長手方向に延在するものである。
【0019】
この構成によれば、ロールフォーミング成形において、金属板の両端部寄りでリブ部を成形することにより、成形用のローラ部材の幅よりも大きな間隔をリブ部間に形成することができ、これによってロールフォーミング成形を容易に行うことができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記内向きリブ゛部を、前記中空フレーム体の長手方向に交差する方向に離間して平行に複数設け、前記金属板両端部の溶接部は、前記内向きリブ部が対向する反対側の辺部において前記中空フレーム体の長手方向に延在するものである。
【0021】
この構成によれば、ロールフォーミング成形の過程において、金属板の両端部を折り曲げ部から離間させることができる。つまり、折り曲げ部における剛性(金属板の戻り)の影響を前記両端部に及ぼすことを抑制でき、これによって、前記両端部を対向させた時の位置関係のずれを抑制し、前記両端部の溶接の工程において、両者を略真っ直ぐな姿勢で接合することが可能になる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記内向きリブ部の突出方向の高さが、前記内向きリブ部を設けた辺部と隣り合う辺部の長さの1/5以上かつ1/3以下に設定されているものである。
【0023】
この構成によれば、高さの短いリブ部でありながら、曲げ抗力を十分に発揮するフレームを得ることができ、リブ部の高さを上述した範囲内で適切に設定することにより、フレームの軽量化を実現することができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、前記内向きリブ部の外周側に臨む谷部を溶接したものである。
【0025】
この構成によれば、閉断面フレームが折れ曲がろうとする時、圧縮方向の荷重によって谷部が開くことを抑制することができ、その結果より高い曲げ抗力を発揮させることができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記内向きリブ部を設けた辺部と隣り合う辺部の一部に、さらに内向きリブ部を形成したものである。
【0027】
この構成によれば、複数の方向から作用する衝撃荷重に応じていずれにおいても高い曲げ抗力を発揮することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、中空フレーム体の折れ曲がり時において圧縮方向の荷重を受ける側の辺部にリブ部を配置することで、前記辺部に圧縮方向の荷重が作用しても、これに対して山形に二枚合わせで重なるように折り畳まれたリブ部が大きな抵抗力を発揮する。このため、フレーム全体として高い曲げ抗力を発揮することができる。
さらに、ロールフォーミング成形の過程においてリブ部を形成することにより、外周の辺部の肉厚の2倍の厚みを有する、継ぎ目のない連続したリブ部を生産性よく得ることができる。
【0029】
そして、リブ部が、ロールフォーミング成形によって継ぎ目のない連続したものとされていることにより、上述した圧縮方向の荷重が作用したとしてもリブ部では破断が生じにくくなり、これにより、フレームは安定して高い曲げ抗力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本実施形態に係る閉断面フレームを示す斜視図である。図1に示すように、閉断面フレーム1(以下、単にフレーム1と略記する。)は、略矩形状をなす閉断面が長手方向に連続するいわゆる中空フレーム体であり、高張力鋼板等の金属板10により構成されている。
【0031】
フレーム1は、1枚の金属板10が巻回するように折り曲げられていることにより、その断面において、縦横計4つの辺部10a、10b、10c、10dが形成されるとともに、そのうち1つの辺部10aには、フレーム1の長手方向にわたって、閉断面の反対側の辺部10cに向けて山形に二枚合わせで重なるように折り畳まれた内向きのリブ部10eが複数箇所(図では2箇所)平行に形成されている。
【0032】
一方、図1に示すフレーム1では、リブ部10eが形成された辺部10aと反対側の辺部10cにおいて、フレーム1(金属板10)の長手方向に交差する幅方向の両端部が近接して配置されている。そして、この端部同士が接合されて溶接部11が長手方向に延在している。
【0033】
次に、図2を参照して、図1に示すようなリブ部10eを有するフレーム1を成形する方法について説明する。まず、図2(a)に示すような平板の状態から、図2(b)に示すように、幅方向略中央部を複数箇所(ここでは2箇所)所定の間隔を隔てて山形に折り曲げることにより、フレーム1の材料となる金属板10に複数の突部10e′を形成する。
【0034】
そして、山形に折り曲げられた突部10e′をさらに尖らせる方向に押圧することで、これを図2(c)に示すように二枚合わせで重なるように折り畳み、幅方向に離間して平行にリブ部10eを2つ成形する。
【0035】
ここで、図2に示す成形工程では、例えば、前記特許文献2に開示されているような閉断面フレーム用の製造設備が用いられ、図2(a)〜(c)の工程では、長尺状の金属板10をローラ搬送等により下流側へ搬送する過程において、他のローラ部材を適宜の角度で金属板10に当接させ、押圧することにより図示のような成形がなされる。
【0036】
ここで、金属板10をさらに下流側へ搬送すると、さらに他のローラ部材により、金属板10の幅方向両端部が、下方かつ側方から押圧され、図2(d)に示すように、前記両端部が上方に向かって起立する方向に折り曲げられる。
【0037】
さらに、図2(e)の工程では、図2(d)の工程で起立した両端部が、その途中でさらに他のローラ部材によって内側に向かって折り曲げられる。この図2(e)に示す工程により、図1に示す辺部10a、10b、10dが略成形されるとともに、辺部10cを構成する幅方向両端部同士が略対向する位置関係となる。
【0038】
そして、図2(f)の工程では、レーザー溶接やアーク溶接等、直線状の溶接が可能な適宜の方式により、互いに対向した状態にある前記両端部を接合して溶接部11を形成する。そして。この端部同士が一直線上に連続した状態で固定されることにより、辺部10cが成形される。
【0039】
このように、図2に示す成形方法は、1枚の金属板を巻回するようにして折り曲げることにより、複数の辺部10a〜10dを形成しながら、略矩形状の閉断面を形成するいわゆるロールフォーミング成形であり、この成形方法により、フランジのない中空フレーム体をなすフレーム1が得られる。
【0040】
また、このロールフォーミング成形の過程においてリブ部10eを成形することにより、外周の辺部10a〜10dの肉厚の2倍の厚みを有する、継ぎ目のない連続したリブ部10eを生産性よく得ることができる。
【0041】
そして、押出成形等のような成形方法とは異なり、辺部10aを二枚重ねに折り畳むことによってリブ部10eを形成するため、金属板10としてあらゆる素材を用いることができ、例えば、上述したように高張力鋼板を用いることも可能となる。
【0042】
また、リブ部10eが形成された辺部10aと反対側の辺部10cにおいて、金属板の両端部を近接して配置し、該端部同士を接合した溶接部11をこの辺部10cに形成していることにより、上述したロールフォーミング成形の過程において、金属板10の前記両端部を折り曲げ部から離間させることができる。
【0043】
つまり、金属板10を折り曲げた後、その剛性の大きさ次第では、金属体10が平板の状態に戻ろうとする場合があるが、金属板10の折り曲げ部から前記両端部を離間させることにより、折り曲げ部における剛性(金属板10の戻り)の影響を前記両端部に及ぼすこと抑制できる。このため、前記両端部を対向させた時の位置関係のずれを抑制でき、図2(f)における溶接の工程において、両者を略真っ直ぐな姿勢で接合することが可能になる。
【0044】
次に、図3〜図11を参照して、フレームに荷重を加えてこれを折り曲げた時の曲げ抗力特性について説明する。
本発明者は、図1に示すようなフレーム1を開発するにあたり、リブ部の向き、数、及び高さ等を様々に変化させながら、フレームの長手方向一端側から荷重を加える実験を行い、その時に現れる曲げ抗力特性を測定して、様々な解析を行った。
【0045】
図3は、フレームの曲げ抗力特性の測定実験を説明するための図である。本実験では、後述するいずれの比較例、実施例においても、図3に示すフレーム1のような、横辺部(辺部10a、10cに対応)、縦辺部(辺部10b、10dに対応)がそれぞれ長さAの長辺部、長さBの短辺部とされ、かつ略長方形状の閉断面が長さCにわたって連続しているものを用いた。そして、各例においてフレームの長手方向一端側に図3(a)にて二点鎖線で示すような板材Wを配置し、フレームの他端側を固定した状態で、板材Wに対し、上辺部(図3では辺部10aに対応)から長さBよりもはるかに長い距離Dだけ上方に離間した位置Oで衝撃荷重(オフセット荷重)Fを加えることとした。そして、該衝撃荷重Fを加えた時に、図3(b)に示すような折れ曲がりが生じるまでに加えることができる最大の荷重(ここでは最大荷重F′maxという)、及び折れ曲がりにより吸収できる荷重エネルギー(ここではエネルギー吸収量という)を測定し、これら最大荷重F′max、及びエネルギー吸収量を、曲げ抗力特性の優劣を評価する目安とした。
【0046】
ところで、フレーム1のような長尺物が折れ曲がる時には、一般的に、図4(a)で示すように、先ず長手方向において湾曲した状態となり、このような湾曲状態の時、折れ曲がりの内周側では、図4(b)で示すように長手方向両端から圧縮方向の荷重を受ける一方、折れ曲がりの外周側では、長手方向両端から引張方向の荷重を受ける。
【0047】
ここで、本発明者は、鋭意研究の結果、フレームが、図4(a)に示す湾曲状態から、図3(b)に示すように、長手方向の途中で折れ曲がるまでの過程、及びその後の折れ曲がりが進行していく過程では、その折れ曲がりの開始時期や、折れ曲がりの進行の度合いが、折れ曲がりの内周側、即ち圧縮方向の荷重を受ける側の曲げ抗力の大きさに主に依存しており、この曲げ抗力が大きい程、折れ曲がりの開始時期は遅くなり、かつ折れ曲がりの進行の度合いも鈍化することを見出した。
【0048】
従って、フレーム1のように、リブ部10eを、中空フレーム体の折れ曲がりの内周側、即ち圧縮方向の荷重を受ける側の辺部10aに配置することで、該辺部10aに上述したような圧縮方向の荷重が作用しても、これに対して山形に二枚合わせで重なるように折り畳まれたリブ部10eが大きな抵抗力を発揮し、その結果フレーム1全体として高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0049】
さらに、リブ部10eが、ロールフォーミング成形によって継ぎ目のない連続したものとされていることにより、上述した圧縮方向の荷重が作用したとしてもリブ部10eでは破断が生じにくくなり、これにより、フレーム1は安定して高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0050】
そこで、本発明者は、図3に示す測定実験において、フレームのリブ部を、図3に示すリブ部10eのように、折れ曲がりの内周側、即ち圧縮方向の荷重を受ける側に配置し、リブ部の形成による曲げ抗力特性の変化について評価を行うこととした。
【0051】
図5は、フレームの長手方向一端側から衝撃荷重を加えた時の、該衝撃荷重に対する反力と、荷重作用点ストロークとの関係を示すグラフである。本発明者は、図3に示す測定実験において、図3(a)に示す点Oに衝撃荷重Fを加えた後、この衝撃荷重Fに対して発生するフレームの反力F′と、フレームの湾曲及び折れ曲がりに伴って変化する衝撃荷重作用点Pの位置(これを荷重作用点ストロークδという)とを測定し、図5に示すように両者の関係をグラフ化した。
【0052】
図5では、測定実験の一例として、リブ部の高さ、方向を同じにして、その数のみを変化させた場合の測定結果を示しており、図中実線で示すグラフは、リブ部が形成されていないものを用いた場合、破線で示すグラフは、リブ部が1本形成されたものを用いた場合、一点鎖線で示すグラフは、リブ部が2本形成されたものを用いた場合、二点鎖線で示すグラフは、リブ部が3本形成されたものを用いた場合を示している。
【0053】
ここで、いずれのグラフにおいても、荷重作用点ストロークδ(以下、単にストロークδと略記する。)が増加する途中で、反力F′の値にピークが現れており、それ以降は、この反力F′の値がストロークδの増加に伴って徐々に減少していく傾向を示している。
【0054】
図5に示すグラフでは、フレームの湾曲状態において、衝撃荷重Fを徐々に大きくした時、上述したピークが生じる前では、衝撃荷重Fが大きくなるにつれて反力F′も徐々に大きくなっていることを示しており、他方、ピークが生じた後では、フレームにて既に図3(b)に示すような折れ曲がりが生じてしまっており、折れ曲がりの進行によって衝撃荷重Fに対する反力F′が低下していることを示している。
【0055】
ここで、図5に示すグラフのピークにおける反力F′の値は、図3(b)に示すような折れ曲がりが生じるまでに加えることができる最大荷重F′maxを示しており、図5では、リブ部の有無及びその数の変化に応じて、F′maxの値が異なっており、リブ部の増加に応じてその値が増加する傾向となっている。
【0056】
また、図5に示すグラフでは、ストロークδの座標軸とグラフとで囲まれた領域の面積SEAによって、フレームの折れ曲がりにより吸収できる荷重エネルギー(エネルギー吸収量)を求めることができる。図5では、リブ部の有無及びその数の変化に応じてSEAの値が異なっており、リブ部の増加に応じてその値が増加する傾向となっている。
【0057】
図6では、曲げ抗力特性の優劣を評価する目安となる最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化に着目して、その測定結果を示している。そして、図6では、リブ部が形成されていない単純な矩形断面を有するフレームを比較例1として、これを用いた場合の最大荷重の値F′max0、エネルギー吸収量SEA0(図5にてハッチングで示した部位参照)に対する測定値の比を示すことにより、各例において相対的な評価を行うこととした。
【0058】
また、リブ部の数や高さ等により、フレームの重量が変化することとなるが、フレームの重量が増加すれば、最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの値は必然的に上昇するものと考えられる。また、車両等、軽量化が要求されている分野においては、可及的に軽量でより大きな曲げ抗力を発揮するものが好ましいとされている。そこで、フレームの重量の違いに関わりなく曲げ抗力の優劣を公平に評価するため、図6では、上述した最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの比をフレームの重量で除した数値を、性能重量効率と称して示している。図7では、リブ部の方向、数、高さを変化させた時の性能重量効率の変化を棒グラフで示している。
【0059】
図8は、リブ部の方向を変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフである。図8では、比較例1と、閉断面に対して外向きのリブ部が上面部に2箇所形成された比較例2と、閉断面に対して内向きのリブ部が上面部に2箇所形成された実施例1との間で曲げ抗力特性を比較している。なお、比較例2及び実施例1において形成されているリブ部の高さはいずれもB/4である。
【0060】
図8に示す比較結果によれば、図8(a)に示すように、リブ部を形成しない場合に比べ、リブ部を形成した方がその方向に関わらず最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAが向上しているものの、図8(b)に示すグラフでは、比較例1、2に比べ、実施例1のほうがエネルギー吸収量SEA及びその性能重量効率が良好なものとなっている。
【0061】
例えば、車両の車体フレームの場合、車両衝突時に作用する衝撃荷重を車室内へ伝達させないように、これをいかに車体フレームで吸収するかが重要とされている。従って、このような観点からずれば、エネルギー吸収量SEA等の数値が良好な実施例1が最も好適であることが分かる。
【0062】
図9は、内向きのリブ部の数を変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフである。図8を参照して説明した比較結果では、リブ部の方向を内向きとするのが好適であることを見出したことから、図9では、形成されている内向きのリブ部の高さを同じB/4とした上で、各実施例1〜3においてその数を変化させ、それぞれの曲げ抗力特性を比較している。
【0063】
図9に示す比較結果によれば、図9(a)に示すように、リブ部の数が増えるに従い、最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAが向上し、さらには、図9(b)のグラフで示すように、エネルギー吸収量SEAの性能重量効率も向上している。このため、内向きリブ部を増やす程、より曲げ抗力特性の良好なフレームが得られることが分かる。
【0064】
ここで、本発明に係るフレーム1では、上述したように、山形に二枚合わせで重なるように折り畳んでリブ部10eを形成していることから、1つの辺部において多数のリブ部10eを形成することができ、その分曲げ抗力特性をより向上させたフレームを得ることが可能になる。
【0065】
但し、図9(b)に示すグラフでは、リブ部の数を2本とした実施例1と、3本とした実施例3とを比較すると、最大荷重F′maxの性能重量効率がそれぞれ2.07、2.06であり、略同等かむしろ厳密には実施例3のほうが若干低下してしまっている。これは、リブ部が増えると、その分リブ部10eの外周に臨む谷部(例えば図1、図3の部位10f参照)も増えてしまうことが要因と考えられる。
【0066】
例えば、フレーム1が折れ曲がる時には、図3(b)に示すように、谷部10fが開いて、それ以降フレーム1の折れ曲がりが進行することとなるが、リブ部10eが増えることに伴って谷部10fが増えると、その分折れ曲がり時に開く箇所が増えることになり、それが結果的に最大荷重F′maxの性能重量効率の低下を引き起こしていると考えられる。
【0067】
図10は、内向きのリブ部の高さを変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフである。図10では、形成されているリブ部の数をいずれも2本とした上で、各実施例1、4、5においてリブ部の高さを変化させ、それぞれの曲げ抗力特性を比較している。
【0068】
図10に示す比較結果によれば、図10(a)に示すように、リブ部の高さが増えるに従い、最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAが向上している。但し、これは、リブ部の高さが長くなることに伴ってフレーム全体の重量が増加しているためであり、図10(b)では、エネルギー吸収量SEAの性能重量効率は向上しているものの、高さB/4の実施例1と高さB/2の実施例5との間では、その上昇の度合いが鈍化している。さらに、実施例1と実施例5とを比較した場合、リブ部を高くすると最大荷重F′maxの性能重量効率が2.07から1.84へと低下してしまっている。
【0069】
ここで、図10に示す比較結果から、本発明者は、リブ部の高さを、該リブ部を設けた横辺部(長辺部)と隣り合う縦辺部(短辺部)の高さBの1/5以上かつ1/3以下の範囲に設定するのが好適であることを見出した。この場合、高さの短いリブ部でありながら、曲げ抗力を十分に発揮するフレームを得ることができ、リブ部の高さを上述した範囲内で適切に設定することにより、フレームの軽量化を実現することができる。
【0070】
図11は、折れ曲がり時の圧縮側のみに内向きのリブ部を形成した場合と、圧縮側、引張側の両側に内向きのリブ部を形成した場合とにおける、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフである。図11では、形成されているリブ部の数をいずれも2本、高さをB/4とした上で各実施例1、6においてそれぞれの曲げ抗力特性を比較している。
【0071】
図11に示す比較結果によれば、図11(a)に示すように、最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAに大きな変化はなく、図11(b)では、両側にリブ部を形成した実施例6のほうが、最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの性能重量効率が低下している。
【0072】
このように、図11に示す比較結果から、リブ部を少なくとも折れ曲がり時の圧縮側に形成すればよいことが分かる。
【0073】
次に、上述した実験結果に基づいて得られた本発明のフレームを、車両の車体フレームに適用した例について説明する。
図12は、本発明に係るフレームをバンパレインフォースメントに適用した場合の車体前部構造を斜め後方から見た斜視図であり、図13は、斜め前方から見た斜視図、図14(a)は、図13のX1−X1線矢視断面図、14(b)は、X2−X2線矢視断面図である。
【0074】
図12に示す車両の車体前部構造では、主に左右一対の車体前後方向に延びるフロントフレーム20、20と、そのフロントフレーム20、20の前方にて車幅方向に延び、管状のクラッシュカン21、21を介してフロントフレーム20、20の前端部を連結するバンパレインフォースメント22と、フロントフレーム20、20の後方で車幅方向かつ上下方向に広がってエンジンルームERと車室23とを仕切るダッシュパネル24とを備えている。
【0075】
このダッシュパネル24には、略断面ハット状をなす2つのダッシュアッパクロスメンバ24a、ダッシュロアクロスメンバ24bが取付けられ、それぞれダッシュパネル24とにより車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0076】
また、上述のダッシュパネル24の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル25を連設しており、これらダッシュパネル24の下部と、フロアパネル25とは、上方かつ前方に傾斜するキックアップパネル26を介して連結されている。
【0077】
また、フロアパネル25及びキックアップパネル26には、車体の底部中央部を車両の前後方向に延びる上凸形状(上方へ突出する形状)のフロアトンネル25a、26aを設けている。
【0078】
また、フロントフレーム20、20の後方では、これに連続するように、フロントフレームキックアップ部(以下、単にキックアップ部と略記する。)27、27が、キックアップパネル26の下方に配設され、キックアップ部27、27が、キックアップパネル26の下面に対し、レーザー溶接等、連続的な溶接痕(線)28(図中太い破線で示す)を形成することができる溶接方法で接合されている。
【0079】
また、キックアップ部27、27の後方では、さらにこれに連続するように、フロアフレーム29、29がフロアパネル25の下方に配設されており、車幅方向両端に形成されたフランジ部29a、29aが、フロアパネル25の下面に対し、図中×印で示す位置でスポット溶接により接合されている。
【0080】
また、ダッシュパネル24の車幅方向側方には、上下方向に延びるフロントヒンジピラー30が配設され、フロアパネル25の車幅方向側方にて車両前後方向に延設されたサイドシル31に連続している。
【0081】
なお、図13において二点鎖線で示され、フロントフレーム20、20の中間部外側側方で略上下方向に立設する部材32は、サスペンションタワーであり、このサスペンションタワー32の上端外側側方で車体前後方向に延びる部材33は、エプロンレインフォースメントである。
【0082】
ここで、図12〜図14に示す車体前部構造では、バンパレインフォースメント22が、図1等に示すフレーム1と同様の構成をなす閉断面フレームとされており、このバンパレインフォースメント22では、長辺部22a、22c及び短辺部22b、22dにより略矩形状閉断面が形成されるとともに、長辺部22aには、複数(ここでは3箇所)のリブ部22e及び谷部22fが形成され、この長辺部22aが、車両前側に配置されている。
【0083】
なお、バンパレインフォースメント22において、長辺部22a、22cの長さは約120mm、短辺部22b、22dの長さは約80mmとされ、リブ部22eの高さは、該リブ部22eを設けた辺部22aと隣り合う辺部22b、22dの長さの1/4となる約20mmとされている。
【0084】
また、長辺部22aに対向する他方の長辺部22cでは、上述したロールフォーミング成形の過程において金属板の幅方向両端部が接合された溶接部22gが形成されており、これにより、バンパレインフォースメント22は、フランジ部のない中空フレーム体とされている。
【0085】
なお、バンパレインフォースメント22は、図14(b)に示すように、その車幅方向両端部において、クラッシュカン21の前端部の上下に形成されたフランジ部21aと接合されることにより、所定位置に固定されている。
【0086】
このように、バンパレインフォースメント22を、本発明に係る閉断面フレームとすることで、例えば、車両前突時において、バンパレインフォースメント22に対し前方から衝撃荷重Fが加わり、図13図にて二点鎖線で示すようにバンパレインフォースメント22が折れ曲がった時、車両前側のリブ部22eによってバンパレインフォースメント22は、高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0087】
特に、バンパレインフォースメント22の折れ曲がり時には、折れ曲がりの内周側、即ち圧縮方向の荷重が作用する側が車両前側の面になるため、図示のようにリブ部22eを車両前側に配置することにより、効果的に高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0088】
次に、本発明のフレームを、車両の車体構造を構成するフレーム部材としてのフロントフレームキックアップ部に適用した例について説明する。図15は、本発明に係るフレームをフロントフレームキックアップ部に適用した場合の車体前部構造を斜め後方から見た時の斜視図であり、図16は、同側面図、図17は、図16のY−Y線矢視断面図である。なお、図15〜図17において、図12〜図14に示す適用例と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。また、図示の便宜上、図15においては、フロアフレーム29、29の図示を一部省略している。
【0089】
図15〜図17に示す車体前部構造では、キックアップ部127が、図1等に示すフレーム1と同様の構成をなす閉断面フレームとされており、このキックアップ部127では、長辺部127a、127c及び短辺部127b、127dにより略矩形状閉断面が形成されるとともに、長辺部127aには、複数(ここでは3箇所)のリブ部127e及び谷部127fが形成され、この長辺部127aが上側に配置されている。
【0090】
また、長辺部127aに対向する他方の長辺部127cでは、上述したロールフォーミング成形の過程において金属板の幅方向両端部を接合している溶接部127g(図17参照)が形成されており、これにより、キックアップ部127は、フランジ部のない中空フレーム体とされている。
【0091】
なお、図12〜図14に示す適用例では詳細な説明を省略したが、キックアップ部27、127は、キックアップパネル26との接合の他にも、その前端部が、フロアフレーム20後端部の閉断面内に挿入され、アーク溶接による接合がなされるとともに、その後端部が、フロアフレーム29前端部の閉断面内に挿入され、アーク溶接またはレーザー溶接等による接合がなされている。
【0092】
ここで、キックアップ部127を、本発明に係る閉断面フレームとすることで、例えば、車両前突時において、前方から衝撃荷重Fが加わり、図16にて二点鎖線で示すようにキックアップ分127が折れ曲がった時、上側のリブ部127eによってキックアップ部127は、高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0093】
特に、図16にて二点鎖線で示すように、フロントフレーム20が座屈変形しながらその前端が後退した時には、キックアップ部127が前方かつ上方に向かって傾斜していることにより、キックアップ部127の前端部は図示のように上方に立ち上がり、その結果折れ曲がりの内周側、即ち圧縮方向の荷重が作用する側が必然的に上側の面となる。従って、図示のようにリブ部127eを上側に配置することにより、キックアップ部127は高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0094】
ところで、キックアップ部127の上方には、図16に示すように、一般的に車室23において乗員の足αを置く足置きスペースが形成されており、特に運転席側では、ブレーキペダル34等が配設される。ここで、キックアップ部127が上述したように高い曲げ抗力を発揮することにより、その前端部が車室23内へ侵入することを抑制でき、乗員の足αに対する傷害値を軽減することができる。
【0095】
なお、図15〜図17に示す適用例では、キックアップ部127の上側の長辺部127aのみにリブ部127eを形成することとしたが、例えば、図18、図19(図19は、図18のZ−Z線矢視断面図。)に示すキックアップ部227のように、辺部127aと隣り合う車外側側部の辺部127bにおいてさらにリブ部227h(及び谷部227i)を形成してもよい。なお、図18、図19において、図15〜図17に示す適用例と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。また、図示の便宜上、図18においては、フロアフレーム29、29の図示を一部を省略している。
【0096】
この場合、車両前突時において前方から衝撃荷重Fが加わった時には、キックアップ部227がキックアップ部127と同様高い曲げ抗力を発揮するとともに、車両側突時において、図18にて二点鎖線で示すように、キックアップ部227が衝撃荷重Fを受けて車幅方向内側に折れ曲がろうとしたとしても、図示のように車外側側部の辺部227b、227dにおいてリブ部227hを配置することにより、高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0097】
このように、隣り合う辺部においてリブ部127e、227hを形成することにより、複数の方向から作用する衝撃荷重に応じて、いずれにおいても高い曲げ抗力を発揮することができる。
【0098】
ところで、前記特許文献1に開示されているように、閉断面内で対向する辺部に向けて略矩形状に突出する突起部を形成したものにおいて、図18、図19に示す適用例のように、隣り合う辺部に突起部を設けることが考えられる。しかしながら、この場合、一方から荷重が作用した時、他方の突起部がフレームの折れ曲がりを促進するように作用してしまうという問題がある。これに対し、図18、図19に示す適用例では、二枚合わせで重なるように折り畳んだリブ部227hとしているため、上述したような問題が生じることはない。
【0099】
なお、上述した各適用例では、本発明に係るフレームをバンパレインフォースメントに適用した場合と、キックアップ部に適用した場合とをそれぞれ別々に説明したが、本発明に係るフレームをバンパレインフォースメント及びフロントフレームキックアップ部の双方に適用した車体前部車体構造としてもよく、この場合、車両前突時において、衝突荷重の車室側への伝達をより確実に抑制することができる。
【0100】
ところで、上述したフレーム1では、リブ部10eが形成された辺部10aと反対側の辺部10cにおいて、金属板の幅方向両端部が近接して配置されこれら端部同士が辺部10cにて接合される構成となっているが、この場合、予め設定されているリブ部10e同士の間隔がローラ部材の幅よりも狭い場合、フレーム1の成形が困難になるという問題が生じ得る。
【0101】
そこで、例えば、図20に示すフレーム301のように、リブ部310eが形成された辺部310aにおいて、リブ部310eの間に金属板の幅方向両端部を近接して配置し、該端部同士をリブ部310eの間で接合する構成としてもよい。
【0102】
次に、図20を参照して、リブ部310eを有するフレーム301を成形する方法について説明する。まず、図20(a)に示すような平板の状態から、図20(b)に示すように、フレーム301(金属板310)の長手方向に交差する幅方向の両端部寄りで複数箇所(ここでは2箇所)を山形に折り曲げることにより、フレーム301の材料となる金属板310に突部310e′を形成する。
【0103】
そして、山形に折り曲げられた突部310e′をさらに尖らせる方向に押圧することで、これを図20(c)に示すように、二枚合わせで重なるように折り畳み、幅方向に離間して平行にリブ部310e(及び谷部310f)を2つ成形する。
【0104】
次に、金属板310をさらに下流側へ搬送すると、他のローラ部材により、金属板310の幅方向両端部が、下方かつ側方から押圧され、図20(d)に示すように、両端部が上方に向かって起立する方向に折り曲げられる。
【0105】
さらに、図20(e)の工程では、図20(d)の工程で起立した両端部が、その途中でさらに他のローラ部材によって、内側に向かって折り曲げられる。この図20(e)に示す工程により、図20に示す辺部310b、310c、310dが略成形されるとともに、辺部310aを構成する幅方向両端部同士が、リブ部310eを含んだ状態で略対向する位置関係となる。
【0106】
そして、図20(f)の工程では、レーザー溶接やアーク溶接等、直線状の溶接が可能とな適宜の方式により、互いに対向した状態にある前記両端部を接合して溶接部311を形成する。そして、この端部同士が一直線上に連続した状態で固定されることにより、辺部310aが成形される。
【0107】
このように、図20に示す成形方法においても、1枚の金属板を巻回するようにして折り曲げることにより、複数の辺部310a〜310dを形成しながら、略矩形状の閉断面を形成するロールフォーミング成形がなされており、この成形方法により、フランジのない中空フレーム体をなすフレーム1が生産性よく得られる。
【0108】
また、この場合、図示のように、溶接部311を2つの内向きリブ部310eの間の部位で中空フレーム体の長手方向に延在させるように構成したことで、ロールフォーミング成形の過程において、金属板310の両端部寄りでリブ部310eを成形することができる。このため、成形用のローラ部材の幅よりも大きな間隔をリブ部310e、310e間に形成することができ、これによってロールフォーミング成形を容易に行うことができる。
【0109】
なお、本発明に係るフレームを成形する場合には、金属板を折り曲げた時の剛性や、ローラ部材の幅等を考慮して、図2に示す成形方法、図20に示す成形方法のいずれかを適宜選択すればよい。
【0110】
また、図21に示すフレーム401のように、その谷部10fをアーク溶接またはレーザー溶接等の溶接方法によって線状に接合することにより溶接部412を形成してもよい。なお、図21において、図1に示すフレーム1と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0111】
図21に示すフレーム401では、これが折れ曲がろうとする時、圧縮方向の荷重によって、谷部10fが開くことを抑制することができ、折れ曲がり時の最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAを向上させ、その結果より高い曲げ抗力を発揮させることができる。
【0112】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、内向きリブ部は、リブ部10e、22e、127e、227h、310eに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】この発明の実施形態に係る閉断面フレームを示す斜視図。
【図2】リブ部を有するフレームを成形する方法を説明するための図。
【図3】フレームの曲げ抗力特性の測定実験を説明するための図。
【図4】フレームの折れ曲がり現象を説明するための図であり、(a)フレームの湾曲状態を示す斜視図、(b)側面図。
【図5】フレームの長手方向一端側から衝撃荷重を加えた時の、該衝撃荷重に対する反力と、荷重作用点ストロークとの関係を示すグラフ。
【図6】曲げ抗力特性の優劣を評価する目安となる最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの測定結果を示す図。
【図7】リブ部の方向、数、高さを変化させた時の性能重量効率の変化を示すグラフ。
【図8】リブ部の方向を変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフ。
【図9】内向きのリブ部の数を変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフ。
【図10】内向きのリブ部の高さを変化させた時の、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフ。
【図11】折れ曲がり時の圧縮側のみに内向きのリブ部を形成した場合と、圧縮側、引張側の両側に内向きのリブ部を形成した場合とにおける、(a)最大荷重F′max及びエネルギー吸収量SEAの変化、(b)性能重量効率の変化を示すグラフ。
【図12】本発明に係るフレームをバンパレインフォースメントに適用した場合の車体前部構造を斜め後方から見た斜視図。
【図13】本発明に係るフレームをバンパレインフォースメントに適用した場合の車体前部構造を斜め前方から見た斜視図。
【図14】(a)図13のX1−X1線矢視断面図、14(b)X2−X2線矢視断面図。
【図15】本発明に係るフレームをフロントフレームキックアップ部に適用した場合の車体前部構造を斜め後方から見た時の斜視図。
【図16】本発明に係るフレームをフロントフレームキックアップ部に適用した場合の車体前部構造を示す側面図。
【図17】図16のY−Y線矢視断面図。
【図18】本発明に係るリブ部をフロントフレームキックアップ部において隣り合う2つの辺部に設けた場合の車体前部構造を斜め後方から見た時の斜視図。
【図19】図18のZ−Z線矢視断面図。
【図20】リブ部を有するフレームを成形する他の方法を説明するための図。
【図21】この発明の他の実施形態に係る閉断面フレームを示す斜視図。
【図22】従来の閉断面フレームを示す断面図。
【符号の説明】
【0114】
1、301、401…閉断面フレーム
10e、22e、127e、227h、310e…リブ部
10f、22f、127f、227i…谷部
11、22g、127g、310f…溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を、略矩形状をなす閉断面が長手方向に連続するようロールフォーミングしてその両端部を溶接してなる中空フレーム体であって、
曲げ力を受けて圧縮される側の前記閉断面の辺部の一部を、前記中空フレーム体の長手方向にわたって山形に重なるように折り畳んで、前記閉断面内で反対側の辺部に向けて突出する内向きリブ゛部に形成した
内向きリブ付き閉断面フレーム。
【請求項2】
前記内向きリブ部を、前記中空フレーム体の長手方向に交差する方向に離間して平行に2つ設け、
前記金属板両端部の溶接部は、前記曲げ力を受けて圧縮される側の辺部における前記2つの内向きリブ部の間の部位で前記中空フレーム体の長手方向に延在する
請求項1記載の内向きリブ付き閉断面フレーム。
【請求項3】
前記内向きリブ゛部を、前記中空フレーム体の長手方向に交差する方向に離間して平行に複数設け、
前記金属板両端部の溶接部は、前記内向きリブ部が対向する反対側の辺部において前記中空フレーム体の長手方向に延在する
請求項1記載の内向きリブ付き閉断面フレーム。
【請求項4】
前記内向きリブ部の突出方向の高さが、前記内向きリブ部を設けた辺部と隣り合う辺部の長さの1/5以上かつ1/3以下に設定されている
請求項2または3記載の内向きリブ付き閉断面フレーム。
【請求項5】
前記内向きリブ部の外周側に臨む谷部を溶接した
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内向きリブ付き閉断面フレーム。
【請求項6】
前記内向きリブ部を設けた辺部と隣り合う辺部の一部に、さらに内向きリブ部を形成した
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内向きリブ付き閉断面フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−149174(P2010−149174A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332663(P2008−332663)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】