説明

内径測定装置

【課題】簡単な操作で内径を測定することができる内径測定装置を提供すること。
【解決手段】内径測定装置1によれば、プリズム4の反射面4aを、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線上に固設したことによって、測定対象物20を変更したり、測定する内周面の形状が変化した場合であっても、レーザ変位計3およびプリズム4の配置を調整するという操作が不要となり、簡単な操作で内径Dを測定することができる。また、プリズム4の反射面4aは、支持体6から突出するように配設されているので、測定対象物20の内周面20aの径が小さく、内周面20aの中に測定部2全体を案内できない場合でも、プリズム4の反射面4aを案内して、内周面20aの内径Dを測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物が有する内周面にレーザ光を照射し、その内周面から反射される反射レーザ光を受光して、測定対象物の内径を測定する内径測定装置に関し、特に、簡単な操作で内径を測定することができる内径測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象物が有する内周面にレーザ光を照射し、そのレーザ光が照射された内周面から反射される反射レーザ光に基づいて、測定対象物の内径を測定する内径測定装置が知られている。このような内径測定装置に関し、特許文献1に記載されている技術では、測定対象物の外に配置されるレーザ変位計から出力されるレーザ光を、測定対象物の内周面に挿入する反射面で反射させて内周面に照射する。予めレーザ光の焦点距離(ピント)が内周面に合うようにレーザ変位計および反射面の位置を調整して固定しておき、測定対象物を移動させて又は反射面を回転させて測定対象物の内径を測定する。
【特許文献1】特開2003−42725号公報(第0036段落など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、測定対象物を移動させるための昇降装置に測定対象物を取り付けてから、その測定対象物の内周に反射面を挿入してレーザ光の焦点距離を調整しなければならず、測定に至る調整の操作が煩わしいという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡単な操作で内径を測定することができる内径測定装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の内径測定装置は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、そのレーザ光出力部から出射され、測定対象物が有する内周面において反射される反射レーザ光を受光する反射レーザ光受光部と、前記レーザ光および前記反射レーザ光を反射する反射部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光と、前記反射レーザ光受光部により受光されたレーザ光との変位を測定する変位測定部と、前記レーザ光出力部および前記反射レーザ光受光部が固設されると共に、前記レーザ光が前記内周面に照射される配置であって、且つ、前記反射レーザ光が前記反射レーザ光受光部に受光される配置に前記反射部が固設される支持体とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の内径測定装置によれば、支持体には、レーザ光出力部および反射レーザ光受光部が固設されると共に、レーザ光が内周面に照射される配置であって、且つ、反射レーザ光が反射レーザ光受光部に受光される配置に反射部が固設されているので、測定対象物を変更したり、測定する内周面の形状が変化した場合であっても、レーザ光出力部の光軸と、反射レーザ光受光部の光軸と、反射部の配置とを調整するという操作が不要となり、簡単な操作で内径を測定することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における内径測定装置1の概略構成を示す概略構成図であり、図2は、測定部2の概略構成を示す概略構成図である。内径測定装置1は、筒状の内周面20aを有する測定対象物20の内径D(図2参照)をマイクロメートルのオーダーで測定するための装置である。
【0008】
図1に示すように、内径測定装置1には、測定部2と、回転中心調整器10と、回転軸11と、回転軸受け12と、回転モータ13と、測定部支持台14と、一軸ステージ15とが主に設けられている。
【0009】
ここで、図2を参照して測定部2について説明する。図2に示すように、測定部2には、レーザ変位計3と、プリズム4と、プリズム4が固定されるプリズム固定台5と、レーザ変位計3およびプリズム固定台5が固設される支持体6とが主に設けられている。
【0010】
レーザ変位計3は、レーザ光を一定の方向に発し、発したレーザ光と同一軸線上を戻った反射レーザ光との変位を検出する。プリズム4は、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の方向、および、測定対象物20から反射される反射レーザ光の方向を変化させる反射面4aが先端に設けられている。このプリズム4として、例えば、クロビット(登録商標)などを用いても良い。
【0011】
支持台6には、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線と、回転軸11(図1参照)の軸心とが一致するようにレーザ変位計3が固設され、また、プリズム4の反射面4aが、レーザ光の軸線に対して135度傾斜するようにプリズム4を支持するプリズム固定台5が固設されている。
【0012】
従って、レーザ変位計3から(反射面4aへ向けて)発せられたレーザ光は、プリズム4を通過してレーザ光の軸線に対して135度傾斜した反射面4aにおいて反射して、90度方向を変え、測定対象物20の内周面20aの軸線に対して垂直方向に進み、その内周面20aに垂直に照射される。
【0013】
そして、その内周面20aに照射されたレーザ光のうち、照射されたレーザ光の逆方向に反射される反射レーザ光は、反射面4aにおいて反射して90度方向を変え、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線上を逆方向に進みレーザ変位計3に戻る。
【0014】
ここで、図1に戻り説明をする。測定部2の支持台6の一面は、回転中心調整器10の一面に固定され、その回転中心調整器10の測定部2が固定された面の反対面には、回転軸11の一端が突設されている。回転中心調整器10は、測定部2のレーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線と、回転軸11の軸心とが一致する状態で測定部2を回転させるために、支持台6の固定位置を調整するものである。回転軸11は、回転軸受け12により回転可能に支持され、その他端が回転モータ13に連結されている。従って、回転モータ13の駆動力が、回転軸11を介して測定部2へ伝達され、測定部2が回転軸11の軸心を回転中心として回転させられる。
【0015】
一軸ステージ15には、可動部15aと、ベース部15bと、ステージ搬送モータ15cとが設けられている。測定部2、回転中心調整器10、回転軸11、回転軸受け12および回転モータ13が支持される測定部支持台14は、一軸ステージ15の可動部15aに結合されている。
【0016】
ステージ搬送モータ15cが駆動されると、可動部15aがベース部15bに対して相対的に、回転軸11の軸心方向の何れか一方向に搬送される。この可動部15aを搬送させることにより、測定部2を測定対象物20の内周面20a(図2参照)において、回転軸11の軸心と平行な方向へ案内し、その内周面20aの任意の位置で内径Dを測定することができる。
【0017】
この内径測定装置1では、予めプリズム4の反射面4aが、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線上に固設されているので、測定対象物20を変更したり、測定する内周面の形状が変化した場合であっても、レーザ変位計3およびプリズム4の配置を調整するという操作が不要となり、レーザ変位計3から出力されるレーザ光の焦点距離を調整するという簡単な操作で内径Dを測定することができる。
【0018】
また、プリズム4の反射面4aは、支持体6から突出するように配設されているので、測定対象物20の内周面20aの径が小さく、内周面20aの中に測定部2全体を案内できない場合でも、プリズム4の反射面4aを案内して、内周面20aの内径Dを測定することができる。
【0019】
次に、内径測定装置1を用いた内周面20aの内径Dの測定方法について説明する。ステージ搬送モータ15cを駆動し、測定部2を、測定対象物支持台21に支持される測定対象物20の内周面20aに案内して測定を開始する。
【0020】
測定が開始されると、レーザ変位計3からレーザ光が出力される。その出力されたレーザ光は、反射面4aに到達すると反射され、測定対象物20の内周面20aに照射される。そして、内周面20aから反射されたレーザ光が、反射面4aによりレーザ変位計3に向かって反射される。レーザ変位計3は、出力したレーザ光と受光した反射レーザ光との変位に基づいて、レーザ光が照射された位置における内周面2aの半径を算出する。
【0021】
そして、回転モータ13を駆動し、測定部2を一定角速度で回転させつつ、測定を繰り返すことにより、内周面20aの半径が連続的に算出されるので、その算出された複数の半径に基づいて内周面20aの内径Dを算出することができる。
【0022】
また、内周面20aにおけるある位置の内径Dを測定した後に、ステージ搬送モータ15cを駆動し、測定部2の位置を、内周面20aの軸線方向へ移動させ、内周面20aの内径Dを測定するという作業を繰り返せば、内周面20aの軸線方向の一端から他端までにわたる内径Dの測定を行うことができる。
【0023】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0024】
例えば、上記実施形態の内径測定装置1では、発するレーザ光と受光する反射レーザ光とが同一軸線上であるレーザ変位計3を用いているが、三角測量方式のレーザ変位計を用いてもよい。なお、本発明は、レーザ光による測定に限定するものではなく、例えば、赤外線などを用いた測定にも適用することができる。
【0025】
また、上記実施形態では、プリズム4の反射面4aにより、レーザ光を反射させているが、プリズムでなくても、レーザ光を反射可能な部材であれば良い。
【0026】
また、レーザ変位計3に代えて、カメラおよび照明を測定部2に設けることにより、内周面20aの画像を撮影できる内径検査装置を構成しても良い。即ち、レーザ変位計3が固設されていた場合に発せられるレーザ光の軸線と、カメラの光軸とが一致するようにカメラを測定部2に固設し、カメラの光軸に対して45度傾斜するようにハーフミラーを、プリズム4とカメラとの間に固設する。そして、照明から発せられる光の大部分が、ハーフミラーで反射された後に、プリズム4aの反射面4aに向かい、且つ、カメラの光軸上に位置するように、カメラの光軸に対して垂直に照明を固設する。即ち、照明から発せられた光は、ハーフミラーで90度反射して、カメラの光軸上をプリズム4の反射面4aに向かって進み、反射面4aにおいて90度反射して、内周面20aに垂直に照射される。そして、内周面20aに照射された光の一部が反射面4aに向かって反射して戻り、反射面4aにおいて反射して90度方向を変え、カメラの光軸上をハーフミラーに向かって戻る。その戻ってきた光がハーフミラーに到達すると、一部の光がハーフミラーを通過して、カメラに受光される。従って、カメラにより内周面20aを撮影することができる。なお、ハーフミラーは、プリズム4と一体に設けても良い。
【0027】
また、上記実施形態では、測定部2のプリズム4は、プリズム固定台5により固定されているが、レーザ変位計3から発せられるレーザ光の軸線を回転中心として、プリズム4を回転可能に構成しても良い。そうすることで、様々な形状の内周面20aを有する測定対象物20の内径Dを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態である内径測定装置の概略構成を示す概略構成図である。
【図2】測定部の概略構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 内径測定装置
2 測定部
3 レーザ変位計
4 プリズム
4a 反射面
5 プリズム固定台
6 支持体
10 回転中心調整器
11 回転軸
12 回転軸受け
13 回転モータ
14 測定部支持台
15 一軸ステージ
20 測定対象物
20a 測定対象物の内周面
21 測定対象物支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、
そのレーザ光出力部から出射され、測定対象物が有する内周面において反射される反射レーザ光を受光する反射レーザ光受光部と、
前記レーザ光および前記反射レーザ光を反射する反射部と、
前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光と、前記反射レーザ光受光部により受光されたレーザ光との変位を測定する変位測定部と、
前記レーザ光出力部および前記反射レーザ光受光部が固設されると共に、前記レーザ光が前記内周面に照射される配置であって、且つ、前記反射レーザ光が前記反射レーザ光受光部に受光される配置に前記反射部が固設される支持体とを備えていることを特徴とする内径測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−304407(P2008−304407A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153579(P2007−153579)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(597143960)テクノシステム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】