説明

内燃機関のアイドリング運転制御方法

【課題】車両用空調装置を備え、車両に搭載される内燃機関の駆動力が駆動力伝達手段を介して伝達されることにより車両用空調装置が冷房運転状態となるとともに、車両停止時に内燃機関の運転を停止する機能を有する車両において、乗り心地を損なうことなく燃費向上のためのアイドリングストップを有効に実施できる新たな方法を提供する。
【解決手段】車両1が停止するまでの間に駆動力伝達手段たるマグネットクラッチ13の切断時間T1を計測し、車両1が停止した時点で、車両用空調装置たるエアコンが冷房運転状態にあり、かつ計測した前記切断時間T1が所定時間T0以上である場合、内燃機関たるエンジンをアイドリング状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置を備え、車両停止時に内燃機関の運転を停止する機能を有する車両における内燃機関のアイドリング運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号等で車両に搭載されている内燃機関がアイドリング状態にあって車両が停止しているとき、燃費向上を図るべく、内燃機関の運転を自動的に停止させるとともに、発進時に内燃機関を自動的に再始動させて円滑に発進させるようにした、いわゆるアイドリングストップ制御なる手法が各種提案されている。
【0003】
しかしながら、上述したアイドリングストップ制御を行う場合、停車中に内燃機関の運転が停止すると、該内燃機関から駆動力の伝達を受け、伝達された駆動力により冷凍サイクルを作動し冷房運転状態となる車両用空調装置も停止するため、停車中には該車両用空調装置が冷房運転状態でなくなり車両室温が上昇することに伴い、乗員が不快に感じることがある。
【0004】
そこで、この不具合を解消すべく、車両室内に空気を送るブロアファンがON状態であるときに、外気温度と空気吹出温度と空気吸入温度を温度センサにより測定し、これらの測定結果に基づいて空調の必要性を判定し、アイドリング運転の停止を行うか否かを判定するようにしているものが考えられている。(例えば、特許文献1を参照。)
【特許文献1】特開2001−341515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コスト上の理由により、温度センサを備えない車両用空調装置を搭載する車両も多く存在する。このような車両においては、停車中に車両用空調装置が冷房運転状態でなくなり車両室温が上昇することに伴い乗員が不快に感じることを防ぐべく、特許文献1に示すような方法、すなわち温度センサを用いて空気吹出温度と空気吸入温度を測定し、この測定結果に基づき内燃機関の運転の停止を行うか否かを決定する方法を採用することができない。
【0006】
本発明は、上記のような車両においても、前記課題を解決すべく、燃費向上のための内燃機関の運転の停止を実施しつつ、停車中に該車両用空調装置が冷房運転状態でなくなり車両室温が上昇することに伴い乗員が不快に感じる事態の発生を防ぐための新たな方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る内燃機関のアイドリング運転制御方法は、車両用空調装置を備え、車両に搭載される内燃機関の駆動力が駆動力伝達手段を介して伝達されることにより車両用空調装置が冷房運転状態となるとともに、車両停止時に内燃機関の運転を停止する機能を有する車両において、車両停止時に内燃機関の運転を停止する車両において、車両が停止するまでの間に駆動力伝達手段の切断時間を計測し、車両が停止した時点で、車両用空調装置が冷房運転状態にあり、かつ計測した前記切断時間が所定時間以上である場合、内燃機関をアイドリング状態に維持することを特徴とする。
【0008】
このように制御を行えば、温度センサを備えない車両用空調装置を搭載した車両であっても、前記駆動力伝達手段の切断時間を計測することにより、車両室温を推定できる。なぜなら、前記駆動力伝達手段の切断中は内燃機関から車両用空調装置への駆動力の伝達が行われず、従って車両用空調装置は冷房運転状態でないので、車両室温が上昇するからである。すなわち、車両が停止した時点で前記切断時間が所定時間以上である場合には、車両室温が大きく上昇していて、内燃機関のアイドリング運転の停止により車両用空調装置が冷房運転状態でなくなり乗員が不快に感じる状況にあると予測することができる。そして、車両が停止した時点において、車両用空調装置が冷房運転状態にあり、前記切断時間が所定時間以上である場合には、内燃機関をアイドリング状態に維持することにより車両用空調装置を冷房運転状態に維持して前記状況の発生を予防するとともに、その他の場合には内燃機関の運転を停止するように切り替えることができ、快適性と燃費の両立を図ることが可能となる。
【0009】
特に、車両室温をより正確に推定できるようにするには、前記切断時間の計測を、車両が停止するまでの設定時間内において行うことが望ましい。このようにすると、車両が停止するまでの設定時間内における前記切断時間の割合に基づき内燃機関の運転を停止するか否かの判定を行うので、前記設定時間内における車両室温の上昇度を正確に推定することができるからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のような構成であるから、温度センサを用いることなく車両室温を推定することができる。すなわち、車両停止時の内燃機関の運転の停止に伴い車両用空調装置が冷房運転状態でなくなることにより車両室温が上昇し乗員が不快に感じる状況の発生を予測することができる。そして、前記予測がなされた場合には、内燃機関をアイドリング状態に維持し、車両用空調装置を冷房運転状態に維持することにより、前記状況の発生を予防できる。従って、温度センサを用いることなく、かつ乗り心地を損なうことなく燃費向上のための内燃機関のアイドリング運転の停止を有効に実施できる新規有用な方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る車両1は、図1に概略的に示すように、図示しない内燃機関たるエンジンと、車両用空調装置たるエアコンACと、前記エンジンの駆動力を前記エアコンACに伝達するマグネットクラッチ13と、車両1の走行に関する各種制御を行うとともにエアコンACやマグネットクラッチ13に接続されこれらの制御を行う電子制御装置14とを備えている。
【0013】
前記エアコンACは、前記図1に示すように、コンプレッサ12と、コンデンサ19と、ラジエータファン20と、レシーバタンク21と、エキスパンションバルブ22と、エバポレータ5と、ブロア4とを備えている周知の構成を有するものである。前記コンプレッサ12は、前記エンジンに駆動力伝達手段たるマグネットクラッチ13を介して機械的に接続され、前記エンジンからの駆動力の伝達を受ける。このエアコンACの冷凍サイクルは、前記エンジンからマグネットクラッチ13を介して前記コンプレッサ12に伝達された駆動力により冷媒を循環させることにより作動する。
【0014】
このエアコンACの冷凍サイクルについて以下に述べる。まず、冷媒がコンプレッサ12により圧縮される。次いで、圧縮された冷媒は、コンデンサ19に導入される。コンデンサ19近傍には、ラジエータファン20が配置されていて、コンデンサ19に導入された冷媒は前記ラジエータファン20からの空気により冷却されて一部が液化する。冷媒は一部が液化した状態でレシーバタンク21に導入され、レシーバタンク21により液層と気層に分離される。液化した冷媒はエキスパンションバルブ22に導入され、このエキスパンションバルブ22で急激に膨張し低温低圧の霧状となる。低温低圧の霧状冷媒はエバポレータ5に導入され、エバポレータ5内で空気吸入口近傍に配設したブロア4により車両1の外部又は車両室内1aから導入された空気10aから気化熱を奪い前記空気10aを冷却するとともに、冷媒はエバポレータ5内で気化する。そして、冷媒はコンプレッサ12に導入され、再び圧縮される。
【0015】
一方、ブロア4により車両1の外部又は車両室内1aから導入された空気10aは、前記冷媒に熱を奪われた後、車両室内1aに導かれ、該車両室内1aを冷却する。
【0016】
また、マグネットクラッチ13は、前記図1に示すように、電子制御装置14に電気的に接続されていて、後述するように該電子制御装置14から出力されるマグネットクラッチ駆動信号gにより制御される。マグネットクラッチ13は、前記エンジンと前記コンプレッサ12とを機械的に接続している状態、すなわちこのマグネットクラッチ13が接続された状態、又は前記エンジンと前記コンプレッサ12とを機械的に切断している状態、すなわちこのマグネットクラッチ13が切断された状態に制御される。
【0017】
電子制御装置14は、中央演算処理装置15、記憶装置16、入力インタフェース17、及び出力インタフェース18等を備えるようにした、いわゆるマイコン装置として一般に知られているものである。
【0018】
入力インタフェース17には、エアコン操作パネル11に設けた図示しないパネルスイッチからのエアコンACの操作スイッチのON/OFF状態を示すエアコン操作状態信号a、図示しない吸気圧センサから出力される吸気圧信号b、図示しない車速検知装置からの車速を示す車速信号c、及びブレーキペダル2からの該ブレーキペダル2の状態を示すブレーキ状態信号dを少なくとも入力するようにしている。この他には、マグネットクラッチ13からの接続/切断状態を示すマグネットクラッチ接続状態信号e、空気吸入口近傍に設けられた吸気温センサ6からの吸気温信号f等を入力している。
【0019】
一方、出力インタフェースから18は、マグネットクラッチ13にマグネットクラッチ駆動信号g、図示しないエンジンにアイドリング停止信号hを出力し、これらの制御を行うようにしている。さらに、出力インタフェースから18は、本実施形態では詳述しないが、ブロア4にブロア駆動信号j、エアミックスダンパ7にエアミックスダンパ駆動信号kを出力し、これらの制御も行うようにしている。
【0020】
そして、記憶装置16には、これらの信号に基づいて、マグネットクラッチ13に向けてマグネットクラッチ駆動信号gを出力インタフェース18から出力し、前記エンジンと前記コンプレッサ12との切断/接続制御を行うマグネットクラッチ制御プログラムを内蔵している。
【0021】
前記マグネットクラッチ制御プログラムは、具体的には、エアコンACの操作スイッチがON状態であることを示すエアコン操作状態信号aが電子制御装置14に入力されている場合は、前記マグネットクラッチ13を接続しエアコンACを冷房機能が働く状態である冷房運転状態にするとともに、エアコンACの操作スイッチがOFF状態であることを示すエアコン操作状態信号aが電子制御装置14に入力されている場合は、前記マグネットクラッチ13を切断し、エアコンACの冷房運転状態を解除する制御を行うプログラムである。また、エアコンACの操作スイッチがON状態である場合であっても、加速時や登坂時等、エンジンが高負荷運転状態にある場合には、エアコンACへの駆動力の伝達によりエンジンに車両1の走行に関係しない負荷がかかることに伴う走行性能の低下を防ぐべく、前記マグネットクラッチ13を切断し、走行性能を確保する制御を行う。そして、エアコンACの操作スイッチがON状態であり、エンジンの高負荷運転状態が解消された場合には前記マグネットクラッチ13を接続する制御を行う。前記マグネットクラッチ13の接続及び切断は、それぞれマグネットクラッチ13の接続及び切断を示すマグネットクラッチ駆動信号gをマグネットクラッチ13に向けて出力することにより行う。このマグネットクラッチ制御プログラムに基づき、前記マグネットクラッチ13を切断している間は、エンジンからエアコンACへの駆動力の伝達が行われないのでエアコンACの冷凍サイクルが停止する。このとき、エアコンACは冷房運転状態でないので車両室温が上昇する。
【0022】
なお、エンジンが高負荷運転状態にあることの判定は、本実施形態では、スロットルバルブの開度が例えば全開時の3分の2以上である場合に対応する吸気圧を、吸気圧信号bに基づき検出することにより行う。
【0023】
しかして本実施形態では、前記マグネットクラッチ制御プログラムによるマグネットクラッチ13の切断制御に伴いマグネットクラッチ13が切断される時間の長さである切断時間T1を計測し、車両1が停止状態となった時点で、計測された切断時間T1に基づきエンジンの運転を停止するか否かを判定するプログラムであるアイドリングストップ判定プログラムも記憶装置16に内蔵している。
【0024】
このアイドリングストップ判定プログラムは、具体的には、切断時間T1が長い、すなわち所定時間T0以上である場合には、車両1の停止時においてエンジンをアイドリング状態に維持しエアコンACを冷房運転状態に維持するとともに、前記切断時間T1が短い、すなわち所定時間T0未満である場合には、アイドリング停止信号hを出力インタフェース18から出力してエンジンの運転を停止するよう制御するプログラムである。
【0025】
なお、このアイドリングストップ判定プログラムにおいては、入力インタフェース17に入力される車速信号cが示す車速、及びブレーキ状態信号dが示すブレーキペダル2の状態を確認し、車速信号cが示す車速が0km/hである状態が一定時間、例えば1秒以上継続しているとともに、ブレーキ状態信号dがブレーキペダル2が踏まれていることを示している場合に車両1が停止状態にあると判定する。
【0026】
また、このアイドリングストップ判定プログラムは、エアコンACの操作スイッチがON状態である場合にのみ作動するようにしている。すなわち、車両1が停止状態となった時点でエアコンACの操作スイッチがON状態であり、エアコンACが冷房運転状態にある場合にのみ、前記アイドリングストップ判定プログラムによりエンジンの運転を停止するか否かの判定を行うようにしている。
【0027】
このアイドリングストップ判定プログラムの概略手順をフローチャートである図2を参照して説明する。
【0028】
まず、ステップS1において、切断時間T1を0にセットする。このステップS1の制御は、車両1の停止状態が解除された時点、又はエアコンACの操作スイッチがON状態であることを示すエアコン操作状態信号aが入力された時点で行われる。「停止状態が解除された時点」とは、本実施形態では車速が0km/hでなくなった時点あるいはブレーキが踏まれていないことを示すブレーキ信号dが入力された時点である。
【0029】
ステップS2においては、エンジンが高負荷運転状態にあるか否かの判定を行う。ステップS2においてエンジンが高負荷運転状態にあると判定した場合には、ステップS3に進む。一方、そうでない場合にはステップS4に進む。
【0030】
ステップS3においては、切断時間T1の計測を行う。すなわち、電子制御装置14内部において切断時間T1のカウントアップを行う。その後、ステップS5に進む。
【0031】
ステップS4においては、切断時間T1の計測を停止する。すなわち、電子制御装置14内部における切断時間T1のカウントアップを停止する。その後、ステップS5に進む。
【0032】
ステップS5においては、車両1が停止状態にあるか否かの判定を行う。ステップS5において車両1が停止状態にあると判定した場合には、ステップS6に進む。一方、そうでない場合にはステップS2に戻る。
【0033】
ステップS6においては、計測された切断時間T1が所定時間T0以上であるか否かの判定を行う。ステップS6において前記切断時間T1が所定時間T0以上であると判定した場合には、ステップS7に進む。一方、そうでない場合、すなわち切断時間T1が所定時間T0未満である場合にはステップS8に進む。
【0034】
ステップS7においては、エンジンをアイドリング状態に維持しておく制御を行う。そして、このアイドリングストップ判定プログラムを終了する。
【0035】
ステップS8においては、アイドリング停止信号hを出力し、エンジンの運転を停止する制御を行う。そして、このアイドリングストップ判定プログラムを終了する。
【0036】
すなわち、走行中において、車両1が高負荷運転状態にある場合には、ステップS2→S3→S5の順に各制御を行い、ステップS5の制御の後ステップS2に戻る。従って、この状態においては、切断時間T1の計測を行うようにしている。
【0037】
一方、走行中において、車両1が高負荷運転状態にない場合には、ステップS2→S4→S5の順に各制御を行い、ステップS5の制御の後ステップS2に戻る。従って、この状態においては、切断時間T1の計測を停止するようにしている。
【0038】
そして、車両停止状態であって、かつ切断時間T1が所定時間T0以上である場合には、ステップS2→S4→S5→S6→S7の順に各制御を行い、エンジンをアイドリング状態に維持する。すなわち、この場合、車両停止までの間にマグネットクラッチ13を長時間切断していたので車両室温が高くなっていて、エンジンの運転を停止するとエアコンACが冷房運転状態でなくなり車両室温がさらに上昇して乗員が不快に感じると予測し、この予測に基づきエンジンをアイドリング状態に維持し、エアコンACを冷房運転状態に維持するようにしている。
【0039】
また、車両停止状態であって、かつ切断時間T1が所定時間T0未満である場合には、ステップS2→S4→S5→S6→S8の順に各制御を行い、エンジンの運転を停止する。すなわち、この場合、車両停止までの間にマグネットクラッチ13を切断していた時間は短く、車両室温の上昇が小さいので、エンジンの運転を停止しても車両室温の上昇により乗員が不快に感じることはないと予測し、この予測に基づきエンジンの運転を停止し燃費の向上を図るようにしている。
【0040】
そして、前記記憶装置16には、前記アイドリングストップ判定プログラムによりエンジンの運転を停止した場合において、停止状態が解除された際にエンジンを自動的に再起動する制御を行うプログラムも内蔵していて、エンジンの運転を停止した後停止状態が解除された際にはこのプログラムが実行されるようにしている。
【0041】
以上のような制御を行うことにより、車両停止時にエンジンの運転を停止する制御を行う電子制御装置14を備える車両1において、次のような効果が得られる。
【0042】
すなわち、温度センサを用いなくても、エンジンを高負荷運転状態にしマグネットクラッチ13を切断して運転を行った時間である切断時間T1が所定時間T0以上であり、かつエアコンACが冷房運転状態である場合に車両1を停止すると、電子制御装置14が上述した制御を行うことにより、停車中の室内温度の上昇により乗員が不快に感じると予測する。そして、前記予測が行われた場合には、エンジンをアイドリング状態に維持しておくことにより、エンジンから駆動力の伝達を受けるエアコンACを冷房運転状態に維持し、乗員の快適性の確保を図ることができるとともに、該予測が行われなかった場合には、エンジンの運転を停止し、燃費の向上を図ることができる。
【0043】
すなわち、車両1の停止時に、エンジンの運転を停止することによる燃費の向上を図りつつ、乗員の快適性の確保を図ることもできる。
【0044】
次いで、本発明の第2実施形態を、図面を参照して説明する。なお、前記第1実施形態に対応する部位には同一の名称及び符号を付している。
【0045】
本実施形態に係る車両1及びエアコンACは、上述した第1実施形態に係るものと同様の構成を有する。すなわち、概略を前記図1に示すように、マグネットクラッチ13を介してコンプレッサ12がエンジンから駆動力の伝達を受け、該駆動力により冷凍サイクルが作動し、冷房機能が働く状態である冷房運転状態となる。また、電子制御装置14は上述した第1実施形態に係るものと略同様の構成を有する。さらに、マグネットクラッチ13は、本実施形態においても、電子制御装置14に電気的に接続されていて、加速や登坂などの高負荷時には、電子制御装置14が上述した第1実施形態におけるマグネットクラッチ制御プログラムを同様に実行し、マグネットクラッチ13を切断して走行性能を確保する制御を行うようにしている。
【0046】
電子制御装置14の記憶装置16には、上述した第1実施形態におけるマグネットクラッチ制御プログラムに加えて、エンジンの運転開始と同時に作動を開始し、エンジンの運転開始から区分時間T03経過するごとにマグネットクラッチ13の切断時間T1を記憶装置16に記憶するプログラムである切断時間記憶プログラムを内蔵している。
【0047】
前記切断時間記憶プログラムの概略手順をフローチャートである図3を参照して説明する。
【0048】
まず、ステップS101において、経過時間Tを0にセットする。それから、ステップS102に進む。
【0049】
次いで、ステップS102において、経過時間Tの計測を行う。具体的には、電子制御装置14内部における経過時間Tのカウントアップを行う。それから、ステップS103に進む。
【0050】
ステップS103においては、経過時間Tを0にセットしてからの経過時間Tが区分時間T03以上であるか否かを判定する。ステップS103において、前記経過時間Tが区分時間T03以上であると判定された場合には、ステップS104に進む。そうでない場合には、ステップS102に戻る。
【0051】
ステップS104においては、当該期間、すなわち経過時間Tを0にセットしてから区分時間T03が経過するまでの期間の切断時間T1を記憶装置16に記憶する。そして、ステップS101に戻る。この切断時間T1は、後述する切断時間計測プログラムにより計測されたものである。なお、記憶装置16には、区分時間T03経過するごとの各時間帯内における切断時間T1のうち、最新のものから数えて少なくとも11個を記憶するようにしている。
【0052】
また、前記記憶装置16には、エンジンの運転開始と同時に作動を開始するとともに、エンジンの運転開始から区分時間T03経過するごとに再び作動を開始し、この切断時間計測プログラムの作動開始からのマグネットクラッチ13の切断時間T1を計測するプログラムである切断時間計測プログラムを内蔵している。
【0053】
この切断時間計測プログラムは、具体的には、前記切断時間記憶プログラムにおけるステップS101の制御が行われると同時に作動を開始し、前記マグネットクラッチ制御プログラムによりマグネットクラッチ13が切断されている間、すなわちエンジンが高負荷運転状態にある間切断時間T1の計測を行うとともに、前記マグネットクラッチ制御プログラムによりマグネットクラッチ13の切断が解除されている間は切断時間T1の計測を停止する。そして、前記切断時間記憶プログラムにおけるステップS101の制御が行われる直前の切断時間T1の値が、前記切断時間記憶プログラムのステップS104の制御により経過時間Tを0にセットしてから区分時間T03が経過するまでの期間の切断時間T1として記憶装置16に記憶される。なお、エンジンが高負荷運転状態にあるか否かの判定は第1実施形態における場合と同様に行う。
【0054】
前記切断時間計測プログラムの概略手順をフローチャートである図4を参照して説明する。
【0055】
ステップS201においては、切断時間T1を0にセットする。その後、ステップS202に進む。なお、このステップS201の制御は、切断時間記憶プログラムにおけるステップS101の制御と同時に行う。
【0056】
ステップS202においては、エンジンが高負荷運転状態にあるか否かの判定を行う。ステップS202においてエンジンが高負荷運転状態にあると判定した場合には、ステップS203に進む。一方、そうでない場合には再度ステップS202の制御を行う。
【0057】
ステップS203においては、切断時間T1の計測を行う。すなわち、電子制御装置14内部における切断時間T1のカウントアップを行う。その後、ステップS204に進む。
【0058】
ステップS204においては、前記マグネットクラッチ接続状態信号eに基づき、マグネットクラッチ13が接続されているか否かの判定を行う。ステップS204においてマグネットクラッチ13が接続されていると判定した場合には、ステップS205に進む。一方、そうでない場合には再度ステップS204の制御を行う。なお、このステップS204においては、マグネットクラッチ接続状態信号eに基づく判定に替えて、エンジンが高負荷運転状態であるか否かの判定を行うようにし、エンジンが高負荷運転状態でないと判定した場合にステップS205に進み、エンジンが高負荷運転状態であると判定した場合に再度ステップS204の制御を行うようにしてもよい。
【0059】
ステップS205においては、切断時間T1の計測を停止する。すなわち、電子制御装置14内部における切断時間T1のカウントアップを停止する。その後、ステップS202に戻る。
【0060】
すなわち、走行中において、エンジンが高負荷運転状態にある場合には、ステップS202→S203→S204の順に各制御を行うとともに、マグネットクラッチ13が再度接続されるまではステップS204の制御を繰り返し行い、前記状態の継続中、切断時間T1の計測を行うようにしている。
【0061】
さらに、高負荷運転状態が終了し、マグネットクラッチ13が再び接続された際には、ステップS204→S205の順に各制御を行い、ステップS205の制御の後ステップS202に戻るようにしている。すなわち、マグネットクラッチ13が再び接続された時点で切断時間T1の計測を停止するようにしている。
【0062】
一方、走行中において、エンジンが高負荷運転状態にない場合には、車両1が高負荷運転状態になるまでステップS202の制御を繰り返し行う。すなわち、車両1が高負荷運転状態にない場合には、切断時間T1の計測を停止した状態を保つようにしている。
【0063】
なお、本実施形態では、上述したように前記切断時間記憶プログラムにおけるステップS101の制御と前記切断時間計測プログラムにおけるステップS201の制御とを同期させ、ステップS101〜S104の一連の制御及びステップS201〜S205の一連の制御をそれぞれ行うことにより、経過時間Tを0にセットしてから区分時間T03が経過するまでの期間の切断時間T1を前記切断時間計測プログラムにより計測し、計測した切断時間T1を前記切断時間記憶プログラムにより記憶装置16に記憶するようにしている。
【0064】
そして、前記記憶装置16には、車両1が停止状態になるまでの設定時間T01内においてマグネットクラッチ13が切断されている時間(以下設定時間内合計切断時間TTと記す)に基づき、車両が停止状態となった時点で、設定時間内合計切断時間TTに基づきエンジンの運転を停止するか否かを判定するプログラムであるアイドリングストップ判定プログラムも内蔵している。なお、前記設定時間T01は、前記区分時間T03の10倍に設定している。
【0065】
前記アイドリングストップ判定プログラムは、具体的には、設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02以上である場合に、エンジンのアイドリング運転の停止によってエアコンACが冷房運転状態でなくなることに伴う室内温度の上昇により乗員が不快に感じることを予測してエンジンをアイドリング状態に維持するとともに、設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02未満である場合には、アイドリング停止信号hを出力インタフェース18から出力してエンジンの運転を停止するよう制御するプログラムである。
【0066】
このアイドリングストップ判定プログラムは、エアコンACの操作スイッチがON状態である場合にのみ作動する。すなわち、車両が停止状態となった時点でエアコンACの操作スイッチがON状態でありエアコンが冷房運転状態である場合にのみ、このアイドリングストップ判定プログラムによるエンジンの運転を停止するかの判定を行うようにしている。
【0067】
このアイドリングストップ判定プログラムの概略手順をフローチャートである図5を参照して説明する。
【0068】
まず、ステップS301において、車両1が停止状態にあるか否かを判定する。ステップS301において車両1が停止状態にあると判定された場合には、ステップS302に進む。そうでない場合には、再びステップS301の処理を行う。車両1が停止状態にあるか否の判定は、第1実施形態における場合と同様に行う。
【0069】
ステップS302においては、設定時間内合計切断時間TTを求める。具体的には、ステップS101〜S104の処理において、設定時間T01の10分の1である区分時間T03が経過するごとに記憶装置16に記憶された切断時間T1のうち、新しく記憶されたものから数えて10個の合計値、すなわち車両1が停止状態になる直前の設定時間T01内の切断時間T1の合計を算出し、算出された合計値を設定時間内合計切断時間TTとする。
【0070】
ステップS303においては、前記設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02以上であるか否かを判定する。ステップS303において前記設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02以上であると判定された場合は、ステップS304に進む。そうでない場合には、ステップS305に進む。
【0071】
ステップS304においては、エンジンをアイドリング状態に維持する。そして、ステップS301に戻る。
【0072】
ステップS305においては、アイドリング停止信号hを出力インタフェース18から出力し、エンジンの運転を停止する。そして、ステップS301に戻る。
【0073】
すなわち、前記設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02以上である場合には、ステップS301→S302→S303→S304の順に各制御を行い、エンジンをアイドリング状態に維持する制御を行った後ステップS301に戻る。すなわち、この場合、停止する直前の所定時間T01内において、マグネットクラッチ13が切断されている時間の割合が大きいので車両室温が高くなっていて、エンジンの運転を停止するとエアコンACが冷房運転状態でなくなり車両室温がさらに上昇して乗員が不快に感じると予測する。そして、この予測に基づきアイドリングストップを禁止してエンジンをアイドリング状態に維持し、エアコンACを冷房運転状態に維持するようにしている。
【0074】
一方、前記設定時間内合計切断時間TTが所定時間T02未満である場合には、ステップS301→S302→S303→S305の順に各制御を行い、エンジンの運転を停止した後ステップS301に戻る。すなわち、この場合、停止する直前の所定時間T01内においては、マグネットクラッチ13が切断されている時間の割合は小さく、従って車両室温の上昇が小さいので、エンジンの運転を停止しても車両室温の上昇により乗員に不快感を与えることはないと予測し、この予測に基づきエンジンの運転を停止して燃費の向上を図るようにしている。
【0075】
そして、前記記憶装置16には、前記アイドリングストップ判定プログラムによりエンジンの運転を停止した場合において、停止状態が解除された際にエンジンを自動的に再起動する制御を行うプログラムも内蔵していて、エンジンの運転を停止した後停止状態が解除された際にはこのプログラムが実行されるようにしている。
【0076】
以上のような制御を行うことにより、車両停止時にエンジンの運転を停止する制御を行う電子制御装置14を備える車両1において、次のような効果が得られる。
【0077】
すなわち、車両1が停止状態になるまでの設定時間T01内に合計して所定時間T02以上エンジンを高負荷状態にした、すなわちマグネットクラッチ13を切断した後車両1を停止すると、電子制御装置14が、上述した制御を行うことにより、停車中の室内温度の上昇により乗員が不快に感じると予測することができる。そして、前記予測が行われた場合にはエンジンをアイドリング状態に維持することによりエンジンから駆動力の伝達を受けるエアコンACを冷房運転状態に維持し、乗員の快適性を確保できる。また、該予測が行われなかった場合には、エンジンの運転を停止し、燃費の向上を図ることができる。従って、上述した第1実施形態と同様に、快適性と燃費の両立を図ることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、車両1が停止状態になるまでの設定時間T01内においてマグネットクラッチ13が切断されている時間、すなわち設定時間内合計切断時間TTに基づきエンジンの運転を停止するか否かの判定を行うので、短時間の間に車両の発進と停止が繰り返されるような場合であっても、前回の車両停止時点から今回の車両停止時点までの経過時間に関係なく、設定時間内合計切断時間TTが設定時間T01に対して占める割合に基づいて車両室温をより正確に推定することができ、快適性をより適切に確保することが可能となる。
【0079】
なお、各部の具体的構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々に変形してよい。
【0080】
例えば、上述した第2実施形態において、ブロア4の空気吸入口近傍に備えた吸気温センサ6から入力される吸気温信号fが示す吸気温の上昇につれて、所定時間T02を短く設定する態様も考えられる。この態様においては、代表的な外部からの吸気の温度と所定時間T02との対応を所定時間対応テーブルとして記憶装置16に記憶しておき、車両が停止するごとに吸気温信号fが示す外部からの吸気の温度及び前記所定時間対応テーブルに基づき、所定時間T02を補間計算により求めるとよい。このようにすれば、吸気温信号fが示す外気温ないし車両室温の上昇につれて、エンジンをアイドリング状態に維持し、車両停止中にエアコンACを冷房運転状態に維持する回数を増やすことができ、さらに好適に快適性と燃費の両立を図ることが可能となる。
【0081】
加えて、高負荷運転状態にあるか否かの判定は、スロットルバルブの開度を示す開度信号を出力するスロットル開度センサを電子制御装置に接続し、前記開度信号が示すスロットルバルブの開度が所定値以上、例えば全開時の3分の2以上であるか否かにより判定するようにしてももちろんよい。また、吸気圧信号又は前記開度信号に基づき、スロットルバルブの開度が全開状態である場合に高負荷運転状態にあると判定するようにしてももちろんよい。
【0082】
そして、車両が高負荷運転状態となるごとに駆動力伝達手段の切断状態の開始時刻を記憶するとともに、駆動力伝達手段の切断時間を計測して高負荷運転状態が終了した時点で前記切断時間を前記時刻に対応付けて記憶し、車両が停止した時点で、車両が停止した時刻と、該時刻から設定時間だけさかのぼった時点の時刻との間に開始した駆動力伝達手段の切断制御に伴う駆動力伝達手段の切断時間を合計し、この合計値が所定時間以上であれば内燃機関をアイドリング状態に維持するようにしてもよい。さらに、車両が停止した時点の時刻から設定時間だけさかのぼった時点の時刻以前に開始し前記時刻以後に終了した駆動力伝達手段の切断状態があれば、車両が停止した時点の時刻から設定時間だけさかのぼった時点の時刻から前記駆動力伝達手段の切断状態の終了時刻までの時間を、前記駆動力伝達手段の切断時間の合計にさらに加えて新たな合計値を求め、この合計値が所定時間以上であれば内燃機関をアイドリング状態に維持するようにするとなおよい。このようにしても、上述した第2実施形態と同様に、車両が停止するまでの設定時間に計測された切断時間の合計値に基づき内燃機関の運転を停止するか否かの判定を行うことができ、従って車両室温を正確に推定することができる。
【0083】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両及びエアコンを示す概略図。
【図2】同実施形態に係るアイドリングストップ判定プログラムを示すフローチャート。
【図3】本発明の第2実施形態に係る切断時間記憶プログラムを示すフローチャート。
【図4】同実施形態に係る切断時間計測プログラムを示すフローチャート。
【図5】同実施形態に係るアイドリングストップ判定プログラムを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0085】
1…車両
AC…エアコン(車両用空調装置)
12…コンプレッサ
13…マグネットクラッチ(駆動力伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置を備え、車両に搭載される内燃機関の駆動力が駆動力伝達手段を介して伝達されることにより車両用空調装置が冷房運転状態となるとともに、車両停止時に内燃機関の運転を停止する機能を有する車両において、
車両が停止するまでの間に駆動力伝達手段の切断時間を計測し、
車両が停止した時点で、車両用空調装置が冷房運転状態にあり、かつ計測した前記切断時間が所定時間以上である場合、内燃機関をアイドリング状態に維持することを特徴とする内燃機関のアイドリング運転制御方法。
【請求項2】
前記切断時間の計測を、車両が停止するまでの設定時間内において行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のアイドリング運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37860(P2006−37860A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219829(P2004−219829)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】