説明

内燃機関の制御装置

【課題】排気通路に供給する2次空気の筒内への逆流を抑制できる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関EGの排気通路125に空気を噴射する空気噴射手段135,136と、前記内燃機関の排気弁122の開閉位相を変更可能とする排気弁位相可変手段60とに対し、制御信号を出力する制御装置11であって、前記内燃機関の運転状態を検出する検出手段131,113と、前記空気噴射手段により空気を噴射している間は、前記検出手段により検出された運転状態に応じて前記排気弁の開閉位相を変更する信号を前記排気弁位相可変手段へ出力する制御手段11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷機状態における排気浄化性能を向上させるため、燃焼後の排気ガスに2次空気を供給し、排気通路での後燃えを促進することで排気浄化触媒の温度を上昇させる内燃機関が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−120961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気通路に2次空気を常時供給すると、燃焼室に2次空気が逆流して筒内の空燃比が変動するといった問題があり、この逆流する2次空気量はエンジンの回転数や負荷により変動する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、排気通路に供給する空気の筒内への逆流を抑制できる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、排気通路に空気を供給している間は、内燃機関の運転状態に応じて排気弁の開閉位相を調整することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の回転数や負荷といった運転状態に応じた排気弁の開閉位相に調整されるので、排気通路へ供給した空気が筒内へ逆流するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した内燃機関を示すブロック図である。
【図2】図1の内燃機関の排気弁の可変動弁機構を示す斜視図である。
【図3】図2の可変動弁機構の位相可変機構によるバルブリフト特性の位相変化を示す特性図である。
【図4】図2の可変動弁機構のリフト・作動角可変機構を示す断面図である。
【図5】図2の可変動弁機構のリフト・作動角可変機構によるリフト・作動角の特性変化を示す特性図である。
【図6】図1のエンジンコントローラで実行される主たる制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図1のクランク角と排気バルブを通過するガス流量との関係を示すグラフである。
【図8A】図1の吸排気バルブのバルブタイミングダイヤグラム(その1)である。
【図8B】図1の吸排気バルブのバルブタイミングダイヤグラム(その2)である。
【図9】エンジン回転数、負荷に対する2次空気供給、排気バルブの開閉位相を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態を適用したエンジンEGを示すブロック図であり、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0011】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ117が設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ117はアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0012】
また、コレクタ115から各気筒に分岐した吸気通路111aに臨ませて、燃料噴射バルブ118が設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を吸気通路(以下、燃料噴射ポートともいう)111a内に噴射する。なお、本例では、燃料噴射バルブ118を燃料噴射ポート111aに臨ませることに代えて燃焼室123に臨ませ、当該燃焼室123に直接燃料を噴射する、いわゆる直噴型燃料噴射とすることもできる。
【0013】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0014】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであっても良いし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0015】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。
【0016】
排気通路125の排気バルブ122の近傍には、空気(以下、2次空気とも言う。)を排気通路125に供給するための空気圧送用電動ポンプ135と、この空気を排気通路125に向けて噴射する空気噴射ノズル136が設けられている。これら空気圧送用電動ポンプ135と空気噴射ノズル136は、燃焼後の排気ガスに2次空気を供給し、排気通路125での後燃えを促進することで排気浄化触媒127の温度を上昇させるものである。空気圧送用電動ポンプ135は、エンジンコントローラ11からの指令信号によりポンプ135に対する印加電圧が制御される。その動作については後述する。
【0017】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、空燃比センサ126の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のために)、下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行なわせるだけで良い場合には、酸素センサ128を省略することができる。
【0018】
なお、図1において129はマフラである。
【0019】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、機関回転速度Neを検出することができる。
【0020】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0021】
本例のエンジンEGの排気バルブ122には可変動弁機構60が設けられ、エンジンコントロールユニット11からの指令信号により排気バルブ122の開閉位相が可変とされている。
【0022】
図2は、この可変動弁機構60の一例を示す斜視図である。本例の可変動弁機構60は、排気バルブ122のリフト・作動角を変化させるリフト・作動角可変機構61と、そのリフトの中心角の位相(クランク軸130に対する位相)を進角もしくは遅角させる位相可変機構62とを組み合わせたものである。
【0023】
位相可変機構62は、同図に示すように、駆動軸621の前端部に設けられたスプロケット622と、このスプロケット622と駆動軸621とを、所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用油圧アクチュエータ624とから構成されている。
【0024】
スプロケット623は、図示しないタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランク軸130の駆動に連動する。位相制御用油圧アクチュエータ624への油圧供給は、エンジンコントロールユニット11からの制御信号に基づき制御される。
【0025】
この位相制御用油圧アクチュエータ624への油圧制御によって、スプロケット623と駆動軸621とが相対的に回転し、図3に示すように、リフト中心角が遅進する。図3は、位相可変機構62によるバルブリフト特性の位相変化を示す特性図である。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。また、この変化は連続的に得ることができる。
【0026】
なお、位相可変機構62としては、同図に示す油圧式のものに限られず、電磁式アクチュエータを利用したものなど、種々の構成が可能である。
【0027】
図4は、リフト・作動角可変機構61のみを示す断面図であり、図2および図4に基づいて、リフト・作動角可変機構61の概要を説明する。
【0028】
本例のリフト・作動角可変機構61は、シリンダヘッド161に図示しないバルブガイドを介して摺動自在に設けられた排気バルブ122に対し、シリンダヘッド161上部のカムブラケット163に回転自在に支持された中空状の駆動軸621と、この駆動軸621に、圧入等により固定された偏心カム611と、駆動軸621の上方位置に同じカムブラケット163に回転自在に支持されるとともに駆動軸621と平行に配置された制御軸612と、この制御軸612の偏心カム部612aに揺動自在に支持されたロッカアーム613と、各排気バルブ122の上端部に配置されたタペット164に当接する揺動カム614と、を備える。
【0029】
偏心カム611とロッカアーム613とはリンクアーム615によって連結されており、ロッカアーム613と揺動カム614とは、リンク部材616によって連結されている。
【0030】
駆動軸621は、既述したとおりタイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランク軸130によって駆動される。
【0031】
偏心カム611は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸621の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム615の環状部615aが回転可能に嵌合している。
【0032】
ロッカアーム613は、略中央部が偏心カム部612aによって支持され、その一端部に、リンクアーム615の延長部615bが連結するとともに、他端部に、リンク部材616の上端部が連結している。偏心カム部612aは、制御軸612の軸心から偏心しており、従って、制御軸612の角度位置に応じてロッカアーム613の揺動中心は変化する。
【0033】
揺動カム614は、駆動軸621の外周に嵌合して回転自在に支持され、側方へ延びた端部614aに、リンク部材616の下端部が連結している。この揺動カム614の下面には、駆動軸621と同心状の円弧をなす基円面617aと、該基円面617aから上記端部614aへと所定の曲線を描いて延びるカム面617bと、が形成されており、これらの基円面617aならびにカム面617bが、揺動カム614の揺動位置に応じてタペット164の上面に当接するようになっている。
【0034】
すなわち、基円面617aはベースサークル区間として、リフト量が0となる区間であり、揺動カム614が揺動してカム面617bがタペット164に接触すると、徐々にリフトしていくことになる。なお、ベースサークル区間とリフト区間との間には若干のランプ区間が設けられている。
【0035】
制御軸612は、図2に示すように、一端部に設けられたリフト・作動角制御用電動アクチュエータ618によって所定回転角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用電動アクチュエータ618への電流供給は、エンジンコントロールユニット11からの制御信号に基づき制御される。なお、アクチュエータ618は、このアクチュエータ618の駆動電源がOFFの条件において、排気バルブ122を小リフト・小作動角側に付勢するよう構成されている。
【0036】
本例のリフト・作動角可変機構61の作用を説明すると、駆動軸621が回転すると、偏心カム611のカム作用によってリンクアーム615が上下動し、これに伴ってロッカアーム613が揺動する。このロッカアーム613の揺動は、リンク部材616を介して揺動カム614へ伝達され、該揺動カム614が揺動する。この揺動カム614のカム作用によって、タペット164が押圧され、排気バルブ122がリフトする。
【0037】
ここで、リフト・作動角制御用電動アクチュエータ618を介して制御軸612の角度が変化すると、ロッカアーム613の初期位置が変化し、ひいては揺動カム614の初期揺動位置が変化する。
【0038】
たとえば、偏心カム部612aが図の上方へ位置しているとすると、ロッカアーム613は全体として上方へ位置し、揺動カム614の端部614aが相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム614の初期位置は、そのカム面617bがタペット164から離れる方向に傾く。したがって、駆動軸621の回転に伴って揺動カム614が揺動した際に、基円面617aが長くタペット164に接触し続け、カム面617bがタペット164に接触する期間は短くなる。この結果、リフト量が全体として小さくなり、かつその開時期から閉時期までの角度範囲、つまり作動角も縮小する。
【0039】
逆に、偏心カム部612aが図の下方へ位置しているとすると、ロッカアーム613は全体として下方へ位置し、揺動カム614の端部614aが相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム614の初期位置は、そのカム面617bがタペット164に近付く方向に傾く。したがって、駆動軸621の回転に伴って揺動カム614が揺動した際に、タペット164と接触する部位が基円面617aからカム面617bへと直ちに移行する。この結果、リフト量が全体として大きくなり、かつその作動角も拡大する。
【0040】
上記の偏心カム部612aの位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、バルブリフト特性は、図5に示すように連続的に変化する。図5は、リフト・作動角可変機構61によるリフト・作動角の特性変化を示す特性図である。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。特に、このものでは、リフト・作動角の大小変化に伴い、排気バルブ122の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
【0041】
なお、本発明に係る制御において排気バルブ122の開閉時期を制御する場合に、上述した位相可変機構62とリフト・作動角可変機構61の両方を備える必要はなく、開閉位相を調節できる動弁機構であればよいので、機構61を省略することもできる。
【0042】
次に制御手順を説明する。
【0043】
図6はエンジンコントローラ11で実行される主たる制御手順を示すフローチャートである。
【0044】
まずステップS1にてエンジンEGが始動すると、ステップS2にて空気圧送用電動ポンプ135による排気通路125への2次空気の供給要求があるか否かを判定する。排気通路125へ2次空気を供給する条件としては、たとえば冷機状態など排気浄化触媒127が活性温度に達していない状態を挙げることができる。冷機状態であるか否かは水温センサ133や図示しない排気浄化触媒127の温度を検出する温度センサにより判定することができる。
【0045】
排気浄化触媒127が活性温度に達していない状態では、一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化処理と窒素酸化物NOxの還元処理が不充分となるため、たとえば燃料噴射バルブ118によりストイキよりリッチな混合気を燃焼室123に送り込み、排気通路125に2次空気を定常的・連続的に供給することで排気通路125において後燃えを促進する。これにより、排気浄化触媒127を活性温度にまで素早く上昇させることができる。
【0046】
ステップS2にて2次空気の供給要求がされている場合はステップS3へ進み、2次空気を供給する場合に設定された排気バルブの位相マップにしたがって排気バルブ122が作動するように、可変動弁機構60を制御する。この制御はステップS4に示すように2次空気の供給要求が終了するまで継続する。
【0047】
一方、ステップS2にて2次空気の供給要求がされていない場合はステップS5へ進み、2次空気を供給しない場合に設定された排気バルブの位相マップにしたがって排気バルブ122が作動するように、可変動弁機構60を制御する。
【0048】
ここで、ステップS3の2次空気を供給する場合に設定された排気バルブの位相マップについてさらに詳細に説明する。
【0049】
上述したとおり、排気通路125に空気圧送用電動ポンプ135及び空気噴射ノズル136を用いて2次空気を定常的・連続的に供給すると、排気バルブ122の開閉タイミングによっては燃焼室123に2次空気が逆流し、筒内の空燃比が変動するといった問題がある。特に、2次空気は排気バルブ122の近傍の排気通路125に供給することが後燃えを促進する観点から好ましいといえるが、そうすると筒内への逆流はより顕著となるおそれがある。
【0050】
また、本発明者らが検討したところ、この逆流する2次空気の流量はエンジンEGの回転数に最も影響を受け、次に負荷、特に吸入空気量に影響を受けることが判明した。
【0051】
図7はクランク角と排気バルブ122を通過するガス流量との関係を示すグラフであり、縦軸の上側は燃焼室123から排気通路125へ向かうガス流量を示し、下側は排気通路125から燃焼室123へ逆流するガス流量を示す。
【0052】
膨張行程から排気行程への移行領域、すなわち下死点BDCの前にて排気バルブ122を開くと(EVO)、燃焼室123から排気通路125へ大量のガスが流出するが、ピストンの膨張行程での下降による逆流Aが発生する。また、排気行程から吸気行程への移行領域、すなわち上死点TDCの後にて排気バルブ122を閉じると(EVC)、ピストンの吸気行程での下降による逆流Bが発生する。
【0053】
ここで、エンジン回転数が比較的低回転の場合には、下死点BDCの前に排気バルブ122を開くとピストンの膨張行程での下降による逆流ガスの流量が多いことから、排気バルブ122の開動作EVOを遅角させて下死点BDCより後に設定する。図8Aはエンジン回転数が比較的低回転の場合に設定される吸排気バルブのバルブタイミングダイヤグラムであり、排気バルブ122については、開動作EVOが下死点より遅角側に設定されている。
【0054】
一方、エンジン回転数が比較的高回転の場合には、下死点BDCの前に排気バルブ122を開いてもピストンの膨張行程での下降による逆流ガスが筒内に入る前に排気バルブ122が閉じることから、排気バルブ122の開動作EVOを遅角させる必要性は少ない。したがって、逆流Bを抑制するために排気バルブ122の閉動作EVCを進角させて上死点TDCより前に設定する。図8Bはエンジン回転数が比較的高回転の場合に設定される吸排気バルブのバルブタイミングダイヤグラムであり、排気バルブ122については、閉動作EVCが上死点より進角側に設定されている。
【0055】
こうした排気バルブ122の開閉動作の位相を変更する制御を図6のステップS3で実行する。
【0056】
なお、エンジンEGに対する負荷の変動は、アクセルペダル開度に基づくスロットルバルブ114の開度の変動に相関し、このスロットルバルブ114の開度の変動は吸気量に相関する。したがって、エンジン回転数が等しい場合に、負荷が大きい場合と小さい場合を比較すると、負荷が大きい方が吸気量も大きくなるので、図7に示す逆流Aの流量が大きくなる。このため、負荷が比較的大きい場合は、逆流Aを抑制するために、図8Aに示すように排気バルブ122の開動作EVOを遅角させて下死点BDCより後に設定する。逆に、負荷が比較的小さい場合は、逆流Bを抑制するために、図8Bに示すように排気バルブ122の閉動作EVCを進角させて上死点TDCより前に設定する。
【0057】
以上の制御により2次空気を定常的・連続的に供給しても逆流を抑制することができ、燃焼室123内の混合気の空燃比の変動を抑制することができる。
【0058】
なお、図9はエンジン回転数、負荷に対する2次空気供給、排気バルブの開閉位相を示すタイムチャートであり、走行の一例を示すものである。同図に示すように、車両が、停車→定速走行→加速→減速→停車といった走行モードで走行し、たとえばエンジン回転数はN→N1→N2→N3→N、負荷は停車→アイドル→ドライブレンジ→加速→停車と変動したとすると、空気圧送用電動ポンプ135をONして2次空気を供給している間は、エンジン回転数に応じて排気バルブ122の開閉位相を制御する。
【0059】
すなわち、エンジン回転数がN,N1,N2といった比較的低回転である場合は排気バルブ122の開閉位相を遅角させる一方で、エンジン回転数がN3のように比較的高回転である場合は排気バルブ122の開閉位相を進角させる。
【0060】
なお、図1のエンジンEGを、燃料噴射バルブ118を燃焼室123に臨ませた直噴型エンジンで構成した場合に、図9の2次空気の供給期間ONにおいて、燃焼室123における燃焼条件をいわゆる成層燃焼と均質燃焼とを切り換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントローラ
111,111a…吸気通路
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
117…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
135…空気圧送用電動ポンプ
136…空気噴射ノズル
60…可変動弁機構
61…リフト・作動角可変機構
62…位相可変機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に空気を噴射する空気噴射手段と、前記内燃機関の排気弁の開閉位相を変更可能とする排気弁位相可変手段とに対し、制御信号を出力する制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態を検出する検出手段と、
前記空気噴射手段により空気を噴射している間は、前記検出手段により検出された運転状態に応じて前記排気弁の開閉位相を変更する信号を前記排気弁位相可変手段へ出力する制御手段と、を備える内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記検出手段は前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を含み、
前記制御手段は、前記検出された回転数に応じて前記排気弁の開閉位相を変更する信号を出力する内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は、前記検出された回転数が低いほど前記排気弁の開閉位相を遅角させる信号を出力する内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記検出手段は内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段を含み、
前記制御手段は前記検出された負荷に応じて前記排気弁の開閉位相を変更する信号を出力する内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は、前記検出された負荷が小さいほど前記排気弁の開閉位相を進角させる信号を出力する内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−185301(P2010−185301A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28619(P2009−28619)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】