内燃機関の制御装置
【課題】多気筒内燃機関の各気筒の空燃比を正確に検出できる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】排気通路125に空燃比センサ126が設けられた多気筒内燃機関の制御装置において、予め取得された、前記空燃比センサの出力振幅ΔPaekに対する前記各気筒の空燃比ばらつきΔA/Fの関係を示す第1特性式と、各気筒の空燃比ばらつきに対する感度が前記第1特性式より低い第2特性式とを記憶した記憶手段11と、前記空燃比センサの出力から出力振幅を求め、前記第1の空燃比特性式を用いて空燃比ばらつきを求めるばらつき検出手段11を備える。
【解決手段】排気通路125に空燃比センサ126が設けられた多気筒内燃機関の制御装置において、予め取得された、前記空燃比センサの出力振幅ΔPaekに対する前記各気筒の空燃比ばらつきΔA/Fの関係を示す第1特性式と、各気筒の空燃比ばらつきに対する感度が前記第1特性式より低い第2特性式とを記憶した記憶手段11と、前記空燃比センサの出力から出力振幅を求め、前記第1の空燃比特性式を用いて空燃比ばらつきを求めるばらつき検出手段11を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直噴式多気筒エンジンの各気筒の実空燃比を一つの空燃比センサ(酸素センサを含む)で検出する技術として、各気筒の燃焼間隔と空燃比センサに到達するまでの遅れ時間を考慮し、各気筒のサンプル周期に応じた空燃比センサの出力変化から実空燃比を推定するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各気筒のサンプル周期に対して空燃比センサの応答速度が不足すると、最もリーンな気筒と最もリッチな気筒との間の気筒の検出値は前後のピーク値の影響により不正確となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、多気筒内燃機関の各気筒の空燃比を正確に検出できる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空燃比センサの出力振幅に対する各気筒の空燃比ばらつきの関係を示す、互いに感度が異なる少なくとも2つの特性式を予め取得しておき、空燃比ばらつきを検出する場合は感度が高い特性式を用いることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め取得した2つの特性式のうち感度が高い特性式を用いて空燃比ばらつきを検出するので、空燃比センサの応答速度に拘らず正確な空燃比を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した内燃機関の制御装置を示すブロック図である。
【図2】図1の空燃比センサの出力の一例を示すグラフである。
【図3】図1のエンジンコントロールユニットに格納される特性式を示すグラフである。
【図4】図3の特性式を取得する際に観察された空燃比センサの出力の類型を示すグラフである。
【図5】図1のエンジンコントローラで実行される空燃比補正の一例を示すグラフである。
【図6】図1のエンジンコントローラで実行される空燃比補正において可変動弁機構による作動角との関係を示すグラフである。
【図7】図1のエンジンコントローラで実行される制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態を適用した直噴型多気筒エンジンEGを示すブロック図であり、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0011】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ117が設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ117はアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0012】
燃料噴射バルブ118は、燃焼室123に臨ませて設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を筒内に直接噴射する。
【0013】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0014】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであっても良いし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0015】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。
【0016】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、空燃比センサ126の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のために)、下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行なわせるだけで良い場合には、酸素センサ128を省略することができる。
【0017】
なお、図1において129はマフラである。
【0018】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、機関回転速度Neを検出することができる。
【0019】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0020】
図2は排気通路125に設けられた空燃比センサ126の出力の一例を示すグラフであり、V型6気筒エンジンの一方の排気通路に設けられた空燃比センサにより第1気筒(#1)、第3気筒(#3)及び第5気筒(#5)の空燃比(酸素濃度)出力信号を示す。
【0021】
背景技術の欄で触れたとおり、同図の横軸に示すサンプル周期に対し空燃比センサは少なからず応答速度の遅れなどを含んでいるが、本発明者らが探求したところ以下の事項が判明した。
【0022】
図3は、上記V型6気筒エンジンの一方の排気通路125に空燃比センサ126を設け、種々の運転条件を設定することで3つの気筒、すなわち第1気筒(#1)、第3気筒(#3)及び第5気筒(#5)間に故意に空燃比ばらつきを生じさせ、そのときの空燃比センサ126の出力振幅ΔPeak(図2の最大出力と最小出力との長さ)をプロットしたものである。
【0023】
これによると、図4(A)および(B)に示すように3つの気筒のうち1つの気筒の空燃比が他の2つの気筒の空燃比に比べて異なる類型は、図3に示す第1特性式に従った。これに対し、3つの気筒の空燃比の差が互いに近似して極端に大きくなく、同図(C)に示すように徐々に増加するか、同図(D)に示すように徐々に減少するかといった類型は、図3に示す第2特性式に従った。
【0024】
すなわち、図4(A)に示すようにリーンな気筒#1とリッチな気筒#5との間の気筒#3や、同図(B)に示すようにリーンな気筒#1とリッチな気筒#3との間の気筒#5の検出値は、前後のピーク値の影響により不正確となりがちであるが、図3の結果から、同図(A)及び(B)に示すような類型であっても空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakは空燃比ばらつきΔA/Fに対して感度が高いことが判明した。
【0025】
したがって、図3のように予めその内燃機関の各気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fに対する空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakの関係を実験やシミュレーションにより求め、これを制御マップとして利用すれば、空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakから各気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを正確に求めることが可能となる。
【0026】
次に制御手順を説明する。
【0027】
図7は本例の制御手順を示すフローチャートであり、吸気バルブ121の作動角を可変とする可変動弁機構を備える内燃機関であるとして説明する。なお、可変動弁機構は作動角、リフト量、位相等を連続的に変更可能な公知の機構を採用することができる。
【0028】
ステップS1では、気筒別空燃比の検出を許可するか否かを判定する。許可条件としては、たとえばアイドルスイッチがON(アイドル状態である)または加速状態ではない、エンジン回転数が所定値以下、吸排気弁の作動角が所定範囲内、空燃比のλコントロール実行中、キャニスタからの燃料パージが非作動、および失火判定なし等の条件が全て成立したときに許可を出すことができる。
【0029】
ステップS2では、図6に示すように可変動弁機構を駆動して吸気バルブ121の作動角を初期位置に設定する。この初期位置は作動角が相対的に大きい位置である。
【0030】
ステップS3では、空燃比センサ126からの信号を取り込み、図2に示すようにその出力波形から出力振幅ΔPeakを算出する。
【0031】
ステップS4では、ステップS3で算出された出力振幅ΔPeakを図3の第1特性式に代入することで気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを算出する。
【0032】
ステップS5では、ステップS4で算出されたΔA/Fが所定閾値αより小さいか否かを判定し、小さい場合はステップS6〜S9の空燃比補正をすることなくステップS10へ進む。
【0033】
ステップS5にてΔA/Fが所定閾値αより大きい場合はステップS6へ進み、ステップS3にて算出した出力振幅ΔPeakを図3に示す第2特性式に代入することで気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを算出する。
【0034】
ステップS7では、点火プラグ124の点火タイミングと空燃比センサ126の出力タイミングとから補正すべき気筒を判定する。
【0035】
ステップS8では、算出されたΔA/Fから補正すべき燃料量に相当するΔパルス幅を気筒ごとに算出し、ステップS9にて各気筒に対しパルス補正を加える。
【0036】
このとき、図5に示すように、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが目標A/Fに対してリーン側である場合は補正量の変化率を大きくして、できる限り短時間で目標A/Fに達するように制御する。これに対し、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが目標A/Fに対してリッチ側である場合は補正量の変化率を相対的に小さくしてリーン側へのオーバーシュートを回避することが望ましい。
【0037】
以上により、図6に示す作動角が初期位置における空燃比の補正処理が終了するので、ステップS10にて作動角が目標値に達していなければステップS11へ進み、図6に第2学習で示すように作動角を減少させたのちステップS3へ戻り、以上の処理を繰り返す。
【0038】
以上のとおり、本例によれば、既存の空燃比センサ126をそのまま利用して気筒毎の空燃比ばらつきを精度良く検出することができる。その結果、燃焼安定度および触媒転換率を改善することができる。
【0039】
特に出力振幅ΔPaekに対して各気筒の空燃比ばらつきの感度が高い第1特性式を用いて空燃比ばらつきを検出するので、ばらつきの過小判定を抑制することができる。
【0040】
一方で、出力振幅ΔPaekに対して各気筒の空燃比ばらつきの感度が低い第2特性式を用いて空燃比ばらつきを補正するので、過補正を抑制することができる。
【0041】
また、ステップS9にて空燃比を補正する場合には、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが補正目標値よりリッチ側である場合は、リーン側である場合に比べ、補正量の変化率を小さく設定する。これにより、空気量が少なく燃焼耐力が弱いリーン側へオーバーシュートさせないので、失火を防止することができる。
【0042】
また、可変動弁機構を有する場合には、気筒別の空燃比判定を作動角が大きい方から段階的に実施する。これにより、空燃比ばらつきが大きい極小作動角から開始したときの失火を防止することができる。
【0043】
なお、本例のエンジンコントロールユニット11が、本発明の記憶手段、ばらつき検出手段、ばらつき補正手段に相当する。
【符号の説明】
【0044】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントローラ
111…吸気通路
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
117…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
134…温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直噴式多気筒エンジンの各気筒の実空燃比を一つの空燃比センサ(酸素センサを含む)で検出する技術として、各気筒の燃焼間隔と空燃比センサに到達するまでの遅れ時間を考慮し、各気筒のサンプル周期に応じた空燃比センサの出力変化から実空燃比を推定するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各気筒のサンプル周期に対して空燃比センサの応答速度が不足すると、最もリーンな気筒と最もリッチな気筒との間の気筒の検出値は前後のピーク値の影響により不正確となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、多気筒内燃機関の各気筒の空燃比を正確に検出できる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空燃比センサの出力振幅に対する各気筒の空燃比ばらつきの関係を示す、互いに感度が異なる少なくとも2つの特性式を予め取得しておき、空燃比ばらつきを検出する場合は感度が高い特性式を用いることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め取得した2つの特性式のうち感度が高い特性式を用いて空燃比ばらつきを検出するので、空燃比センサの応答速度に拘らず正確な空燃比を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した内燃機関の制御装置を示すブロック図である。
【図2】図1の空燃比センサの出力の一例を示すグラフである。
【図3】図1のエンジンコントロールユニットに格納される特性式を示すグラフである。
【図4】図3の特性式を取得する際に観察された空燃比センサの出力の類型を示すグラフである。
【図5】図1のエンジンコントローラで実行される空燃比補正の一例を示すグラフである。
【図6】図1のエンジンコントローラで実行される空燃比補正において可変動弁機構による作動角との関係を示すグラフである。
【図7】図1のエンジンコントローラで実行される制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態を適用した直噴型多気筒エンジンEGを示すブロック図であり、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0011】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ117が設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ117はアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0012】
燃料噴射バルブ118は、燃焼室123に臨ませて設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を筒内に直接噴射する。
【0013】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0014】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであっても良いし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0015】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。
【0016】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、空燃比センサ126の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のために)、下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行なわせるだけで良い場合には、酸素センサ128を省略することができる。
【0017】
なお、図1において129はマフラである。
【0018】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、機関回転速度Neを検出することができる。
【0019】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0020】
図2は排気通路125に設けられた空燃比センサ126の出力の一例を示すグラフであり、V型6気筒エンジンの一方の排気通路に設けられた空燃比センサにより第1気筒(#1)、第3気筒(#3)及び第5気筒(#5)の空燃比(酸素濃度)出力信号を示す。
【0021】
背景技術の欄で触れたとおり、同図の横軸に示すサンプル周期に対し空燃比センサは少なからず応答速度の遅れなどを含んでいるが、本発明者らが探求したところ以下の事項が判明した。
【0022】
図3は、上記V型6気筒エンジンの一方の排気通路125に空燃比センサ126を設け、種々の運転条件を設定することで3つの気筒、すなわち第1気筒(#1)、第3気筒(#3)及び第5気筒(#5)間に故意に空燃比ばらつきを生じさせ、そのときの空燃比センサ126の出力振幅ΔPeak(図2の最大出力と最小出力との長さ)をプロットしたものである。
【0023】
これによると、図4(A)および(B)に示すように3つの気筒のうち1つの気筒の空燃比が他の2つの気筒の空燃比に比べて異なる類型は、図3に示す第1特性式に従った。これに対し、3つの気筒の空燃比の差が互いに近似して極端に大きくなく、同図(C)に示すように徐々に増加するか、同図(D)に示すように徐々に減少するかといった類型は、図3に示す第2特性式に従った。
【0024】
すなわち、図4(A)に示すようにリーンな気筒#1とリッチな気筒#5との間の気筒#3や、同図(B)に示すようにリーンな気筒#1とリッチな気筒#3との間の気筒#5の検出値は、前後のピーク値の影響により不正確となりがちであるが、図3の結果から、同図(A)及び(B)に示すような類型であっても空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakは空燃比ばらつきΔA/Fに対して感度が高いことが判明した。
【0025】
したがって、図3のように予めその内燃機関の各気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fに対する空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakの関係を実験やシミュレーションにより求め、これを制御マップとして利用すれば、空燃比センサ126の出力振幅ΔPeakから各気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを正確に求めることが可能となる。
【0026】
次に制御手順を説明する。
【0027】
図7は本例の制御手順を示すフローチャートであり、吸気バルブ121の作動角を可変とする可変動弁機構を備える内燃機関であるとして説明する。なお、可変動弁機構は作動角、リフト量、位相等を連続的に変更可能な公知の機構を採用することができる。
【0028】
ステップS1では、気筒別空燃比の検出を許可するか否かを判定する。許可条件としては、たとえばアイドルスイッチがON(アイドル状態である)または加速状態ではない、エンジン回転数が所定値以下、吸排気弁の作動角が所定範囲内、空燃比のλコントロール実行中、キャニスタからの燃料パージが非作動、および失火判定なし等の条件が全て成立したときに許可を出すことができる。
【0029】
ステップS2では、図6に示すように可変動弁機構を駆動して吸気バルブ121の作動角を初期位置に設定する。この初期位置は作動角が相対的に大きい位置である。
【0030】
ステップS3では、空燃比センサ126からの信号を取り込み、図2に示すようにその出力波形から出力振幅ΔPeakを算出する。
【0031】
ステップS4では、ステップS3で算出された出力振幅ΔPeakを図3の第1特性式に代入することで気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを算出する。
【0032】
ステップS5では、ステップS4で算出されたΔA/Fが所定閾値αより小さいか否かを判定し、小さい場合はステップS6〜S9の空燃比補正をすることなくステップS10へ進む。
【0033】
ステップS5にてΔA/Fが所定閾値αより大きい場合はステップS6へ進み、ステップS3にて算出した出力振幅ΔPeakを図3に示す第2特性式に代入することで気筒間の空燃比ばらつきΔA/Fを算出する。
【0034】
ステップS7では、点火プラグ124の点火タイミングと空燃比センサ126の出力タイミングとから補正すべき気筒を判定する。
【0035】
ステップS8では、算出されたΔA/Fから補正すべき燃料量に相当するΔパルス幅を気筒ごとに算出し、ステップS9にて各気筒に対しパルス補正を加える。
【0036】
このとき、図5に示すように、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが目標A/Fに対してリーン側である場合は補正量の変化率を大きくして、できる限り短時間で目標A/Fに達するように制御する。これに対し、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが目標A/Fに対してリッチ側である場合は補正量の変化率を相対的に小さくしてリーン側へのオーバーシュートを回避することが望ましい。
【0037】
以上により、図6に示す作動角が初期位置における空燃比の補正処理が終了するので、ステップS10にて作動角が目標値に達していなければステップS11へ進み、図6に第2学習で示すように作動角を減少させたのちステップS3へ戻り、以上の処理を繰り返す。
【0038】
以上のとおり、本例によれば、既存の空燃比センサ126をそのまま利用して気筒毎の空燃比ばらつきを精度良く検出することができる。その結果、燃焼安定度および触媒転換率を改善することができる。
【0039】
特に出力振幅ΔPaekに対して各気筒の空燃比ばらつきの感度が高い第1特性式を用いて空燃比ばらつきを検出するので、ばらつきの過小判定を抑制することができる。
【0040】
一方で、出力振幅ΔPaekに対して各気筒の空燃比ばらつきの感度が低い第2特性式を用いて空燃比ばらつきを補正するので、過補正を抑制することができる。
【0041】
また、ステップS9にて空燃比を補正する場合には、検出された空燃比ばらつきΔA/Fが補正目標値よりリッチ側である場合は、リーン側である場合に比べ、補正量の変化率を小さく設定する。これにより、空気量が少なく燃焼耐力が弱いリーン側へオーバーシュートさせないので、失火を防止することができる。
【0042】
また、可変動弁機構を有する場合には、気筒別の空燃比判定を作動角が大きい方から段階的に実施する。これにより、空燃比ばらつきが大きい極小作動角から開始したときの失火を防止することができる。
【0043】
なお、本例のエンジンコントロールユニット11が、本発明の記憶手段、ばらつき検出手段、ばらつき補正手段に相当する。
【符号の説明】
【0044】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントローラ
111…吸気通路
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
117…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
134…温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に空燃比センサが設けられた多気筒内燃機関の制御装置において、
予め取得された、前記空燃比センサの出力振幅に対する前記各気筒の空燃比ばらつきの関係を示す第1特性式と、各気筒の空燃比ばらつきに対する感度が前記第1特性式より低い第2特性式とを記憶した記憶手段と、
前記空燃比センサの出力から出力振幅を求め、前記第1の空燃比特性式を用いて空燃比ばらつきを求めるばらつき検出手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記ばらつき検出手段による空燃比ばらつきが所定閾値より大きい場合は、前記第2特性式により空燃比ばらつきを求め、当該空燃比ばらつきに応じて空燃比の補正量を求めるばらつき補正手段、をさらに備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記第1特性式及び前記第2特性式は、前記各気筒の配置と各空燃比ばらつきの大きさに相関することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記ばらつき補正手段は、ばらつき検出手段により検出された空燃比ばらつきが補正目標値よりリッチ側である場合は、リーン側である場合に比べ、補正量の変化率を小さく設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の作動角を可変とする可変動弁機構を備え、
前記空燃比ばらつきの検出及び前記空燃比ばらつきの補正を、前記作動角を段階的に変化させながら実行する制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は、前記作動角を大きい方から小さい方へ段階的に変化させながら実行することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
排気通路に空燃比センサが設けられた多気筒内燃機関の制御装置において、
予め取得された、前記空燃比センサの出力振幅に対する前記各気筒の空燃比ばらつきの関係を示す第1特性式と、各気筒の空燃比ばらつきに対する感度が前記第1特性式より低い第2特性式とを記憶した記憶手段と、
前記空燃比センサの出力から出力振幅を求め、前記第1の空燃比特性式を用いて空燃比ばらつきを求めるばらつき検出手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記ばらつき検出手段による空燃比ばらつきが所定閾値より大きい場合は、前記第2特性式により空燃比ばらつきを求め、当該空燃比ばらつきに応じて空燃比の補正量を求めるばらつき補正手段、をさらに備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記第1特性式及び前記第2特性式は、前記各気筒の配置と各空燃比ばらつきの大きさに相関することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記ばらつき補正手段は、ばらつき検出手段により検出された空燃比ばらつきが補正目標値よりリッチ側である場合は、リーン側である場合に比べ、補正量の変化率を小さく設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の作動角を可変とする可変動弁機構を備え、
前記空燃比ばらつきの検出及び前記空燃比ばらつきの補正を、前記作動角を段階的に変化させながら実行する制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は、前記作動角を大きい方から小さい方へ段階的に変化させながら実行することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−203311(P2010−203311A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49061(P2009−49061)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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