説明

内燃機関の制御装置

【課題】従来のものよりも早期に吸気管圧の減圧作用を生じさせることができ、ブローオフバルブを用いない場合であっても過過給の発生を抑えることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】電動機制御装置40は、エンジン制御装置41からのスロットル開度及び吸気管圧力の情報に基づいて、吸気管圧上昇推定値を演算し、電動機14をフィードバック制御する。電動機制御装置40は、検出されたスロットル開度の時間微分値を算出する。電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値が負の値であることを確認した場合には、現在の吸気管圧力から吸気管圧上昇推定値を算出する。電動機制御装置40は、算出された吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を超える場合は過過給と判断し、吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を上回った値に応じて、吸気管圧の減圧制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転状態と吸気管圧とに応じて、電動過給機の駆動を制御する機能を有する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の制御装置には、内燃機関の出力を増大させるために、吸気通路上に設けられた電機過給機の電動機の駆動を制御して、シリンダ内に吸入される吸気の圧力(以下、吸気管圧)を増大させ、吸気を過給するものがある。なお、近年では、従来の出力向上という目的に加えて低燃費化を目的として、エンジンの小排気量化が可能となるように電動過給機が用いられる。
【0003】
ここで、内燃機関の高出力時において、電動過給機のコンプレッサによる圧縮状態のときに、コンプレッサの下流に配置されたスロットルが閉じられた場合には、吸気管圧が極端に高い状態、即ち過過給になってしまう。この過過給によって、吸気系の部品が破損する可能性がある。
【0004】
これに対して、上記のような電動過給機の過過給による影響を軽減するため、スロットルが閉じられた場合にも対応するように、電動機の駆動がフィードバック制御される。例えば、特許文献1に示すような従来の内燃機関の制御装置では、タービン・コンプレッサと同軸に電動機が設けられ、そのタービン・コンプレッサと同回転数である電動機の回転数を監視する。そして、吸気管圧の上昇に先行してタービン・コンプレッサの回転数が上昇することを利用し、電動機の回転数に基づいて、電動機の駆動がフィードバック制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−23816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の内燃機関の制御装置では、図5の従来例に示すように、スロットルバルブが全閉状態となったことにより、吸気管圧が上昇する。そして、スロットルバルブが全閉状態となった時点から、機械的な遅延分の時間(矢示X)をおいた後に、吸気管圧の上昇の影響を受けて電動機回転数も上昇する。この後、電動機回転数が所定の減圧制御開始値に達したことにより(矢示Y)、減圧制御が開始され、吸気管圧が減圧される。このように、特許文献1に示すような従来の内燃機関の制御装置では、図5に示すような比較的大きなdelayが発生する。
【0007】
従って、特許文献1に示すような従来の内燃機関の制御装置では、フィードバック制御が電動機の回転数に基づくものであるため、図5の矢示Zのように、フィードバック制御の作用が生じるまで、吸気管圧の上昇は避けられない。このため、特許文献1に示すような従来の内燃機関の制御装置でも、過過給によって、コンプレッサ、スロットルバルブ及び吸気管等の吸気系の部品が破損する可能性がある。
【0008】
また、このような過過給を抑えるためには、コンプレッサとスロットルとの間の空気を、大気開放させるか、又は吸気上流に環流させるブローオフバルブを内燃機関の吸入側に設ける必要がある。このため、従来のものでは、部品点数が増加していた。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、早期に吸気管圧の減圧作用を生じさせることができ、ブローオフバルブを用いない場合であっても過過給の発生を抑えることができる内燃機関の制御装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の吸気通路に回転可能に設けられ、回転することにより前記内燃機関の吸気を過給するコンプレッサホイールと、前記コンプレッサホイールの回転を駆動する電動機とを備える電動過給機に接続されたものであって、吸気管圧に応じた信号を生成する吸気管圧検出手段と、前記吸気通路に設けられたスロットルバルブのスロットル開度に応じた信号を生成するスロットル開度検出手段と、前記吸気管圧検出手段及び前記スロットル開度検出手段を介して前記吸気管圧及び前記スロットル開度を監視し、前記電動機の駆動を制御する電動機制御部とを備え、前記電動機制御部は、監視している前記スロットル開度に基づいて、前記スロットルバルブの単位時間あたりの変位量を算出し、算出した前記変位量から前記スロットルバルブの閉方向への変位を検出した際には、その時点の前記吸気管圧と前記変位量とに基づいて、所定時間後の吸気管圧の推定値である吸気管圧上昇推定値を算出し、算出した前記吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を越えていることを確認した際には、過過給が生じると判断し、前記電動機の駆動を前記吸気管圧の減圧側へ制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る内燃機関の制御装置によれば、電動機制御部は、スロットルバルブの単位時間あたりの変位量からスロットルバルブの閉方向への変位を検出した際には、吸気管圧と変位量とに基づいて、吸気管圧上昇推定値を算出し、吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を越えていることを確認した際には、過過給が生じると判断し、電動機の駆動を吸気管圧の減圧側へ制御するので、スロットルバルブの閉方向への変位を契機に吸気管圧の減圧側へのフィードバック制御が開始されることにより、従来のものよりも早期に吸気管圧の減圧作用を生じさせることができ、ブローオフバルブを用いない場合であっても過過給の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1による内燃機関を示す構成図である。
【図2】図1の電動機制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】動作条件を説明するための説明図である。
【図4】図1の電動機制御装置の動作タイミングを説明するための説明図である。
【図5】従来の内燃機関の制御装置の動作タイミングを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による内燃機関を示す構成図である。
図1において、内燃機関1は、4気筒のガソリンエンジンであり、4つのシリンダをもつシリンダブロック2を有している。また、内燃機関1は、電動過給機10によって各シリンダ内への吸気が過給されることにより、高出力化とともに低燃費化を実現するものである。
【0014】
各シリンダの吸入口には、インテークマニホールド3が接続されている。また、各シリンダの排出口には、エギゾーストマニホールド4が接続されている。インテークマニホールド3の反シリンダ側には、吸気管が接続されており、その吸気管及びインテークマニホールド3によって吸気通路5が形成されている。エギゾーストマニホールド4の反シリンダ側には、排気管が接続されており、その排気管及びエギゾーストマニホールド4によって排気通路6が形成されている。
【0015】
吸気通路5と排気通路6との間には、電動過給機10が設けられている。電動過給機10は、タービンホイール11、回転軸12、コンプレッサホイール13及び電動機14を有している。タービンホイール11及びコンプレッサホイール13は、それぞれ回転軸12の一端部及び他端部に取り付けられている。即ち、タービンホイール11及びコンプレッサホイール13は、互いに同軸上に配置されている。
【0016】
タービンホイール11は、シリンダブロック2の各シリンダで発生した排気ガスを受けて回転する。また、タービンホイール11は、排気エネルギの伝達効率を調節するためのタービン可変ベーン11aを有している。コンプレッサホイール13は、タービンホイール11とともに回転する。また、コンプレッサホイール13は、回転することにより、吸気を圧縮する。さらに、コンプレッサホイール13は、圧縮空気量を調節するためのコンプレッサ可変ベーン13aを有している。
【0017】
電動機14は、回転軸12を回転駆動する。電動機14には、回転軸12の回転数に応じた信号を生成する回転数検出手段(図示せず)が取り付けられている。また、電動機14は、回転軸12及びコンプレッサホイール13を正方向(回転軸12の周方向の一方)へ回転駆動する場合には、吸気通路5の吸気管圧を加圧し、シリンダ内に吸入される吸気を過給する。これとともに、電動機14は、回転軸12及びコンプレッサホイール13を逆方向(回転軸12の周方向の他方)へ回転駆動する場合には、吸気管圧を減圧する。
【0018】
なお、電動過給機10の基本的な動作としては、内燃機関1の低回転時には、電動機14の回転駆動によって吸気を過給し、内燃機関1の高回転時には、タービンホイール11の排気エネルギによる回転によって吸気を過給するものである。しかしながら、電動過給機10の動作は、この例に限定するものではなく、内燃機関1の回転数によらず電動機14の回転駆動による過給と、排気エネルギによる過給とが重畳してもよい。
【0019】
また、吸気通路5における電動過給機10の上流側(反内燃機関1側)には、吸入空気量に応じた信号を生成するエアーフローセンサ20(吸気量検出手段)が設けられている。さらに、吸気通路5における電動過給機10の下流側には、電動過給機10の下流側の吸気管圧に応じた信号を生成する吸気管圧センサ21(吸気管圧検出手段)が設けられている。
【0020】
また、吸気通路5における吸気管圧センサ21の下流側には、吸気を冷却するインタークーラ22が設けられている。さらに、吸気通路5におけるインタークーラ22の下流側には、吸気通路5を流れる吸気の流量を調節するスロットルバルブ23が設けられている。スロットルバルブ23には、スロットルバルブ23を開閉駆動するスロットルバルブアクチュエータ24が接続されている。
【0021】
スロットルバルブアクチュエータ24は、スロットルバルブ23の開度に応じた信号を生成する。また、スロットルバルブアクチュエータ24は、スロットル開度検出手段(図示せず)を内蔵しており、スロットル開度検出手段は、スロットルバルブ23の開度に応じた信号を生成する。
【0022】
ここで、排気通路6は、タービンホイール11へ排気ガスを導くタービン側通路6aと、タービンホイール11を迂回するバイパス通路6bとに分岐している。排気通路6における分岐点には、バイパス通路6bへの開口を開閉するウェストゲートバルブ30と、ウェストゲートバルブ30を開閉駆動するウェストゲートバルブアクチュエータ31とが取り付けられている。
【0023】
次に、内燃機関1の吸気通路5に取り込まれた吸気が排気通路6から排出されるまでの流れについて説明する。まず、大気中から吸気通路5に取り込まれた吸気は、エアクリーナ(図示せず)によって塵埃が除去される。続いて、塵埃が除去された吸気はエアーフローセンサ20を経て、電動過給機10のコンプレッサホイール13の回転によって圧縮される。
【0024】
次に、圧縮された吸気は、圧力上昇によって温度が上昇し膨張する。このため、内燃機関1の吸気充填効率を向上させるために、圧縮された吸気は、インタークーラ22によって冷却される。続いて、冷却された吸気は、スロットルバルブ23の開度に応じて流量が調節される。そして、ポート噴射エンジンの場合には燃料と混合されて混合気となり、シリンダブロック2の各シリンダ内に吸入される。
【0025】
この後、シリンダ内に吸入された混合気は着火され、シリンダ内のピストン(図示せず)が押し下げられる。続いて、クランク(図示せず)によってピストンの上下運動が回転運動に変換され、混合気の燃焼によって生じたエネルギは、車両の推進力となる動力として利用される。
【0026】
また、シリンダ内での燃焼によって発生した排気ガスは、エギゾーストマニホールド4を通ってシリンダ内から排出される。続いて、シリンダ内から排出された排気ガスは、ウェストゲートバルブ30が閉じている場合には、タービン側通路6aを通ってタービンホイール11へ導かれ、タービンホイール11を回転させる。
【0027】
これに対して、排気ガスは、ウェストゲートバルブ30が開いている場合には、バイパス通路6bへ導かれる。そして、タービンホイール11を回転させた排気ガスとバイパス通路6bを通った排気ガスとは合流し、排気ガス浄化触媒等が一体化されたマフラ(図示せず)により浄化され、大気中に排出される。
【0028】
次に、内燃機関1及び電動過給機10の制御系について説明する。電動過給機10の電動機14には、電動機制御装置40(電動機制御部)が接続されている。電動機制御装置40には、エンジン制御装置41が接続されている。なお、電動機制御装置40及びエンジン制御装置41は、それぞれCPU、RAM及びROM等を有するハードウェア(算術論理演算可能回路)である。
【0029】
また、エンジン制御装置41は、電動機14、エアーフローセンサ20及び吸気管圧センサ21を介して、それぞれ電動機回転数、吸入空気量及び吸気管圧を監視する。さらに、エンジン制御装置41は、スロットルバルブアクチュエータ24からのスロットル開度の信号、ウェストゲートバルブアクチュエータ31からのウェストゲートバルブ開度の信号、タービン可変ベーン11aからのタービン可変ベーンの開度の信号、及びコンプレッサ可変ベーン13aからのコンプレッサ可変ベーン開度の信号をそれぞれ受ける。
【0030】
また、エンジン制御装置41は、タービン可変ベーン11a、コンプレッサ可変ベーン13a、スロットルバルブアクチュエータ24及びウェストゲートバルブアクチュエータ31のそれぞれの駆動を制御する。さらに、エンジン制御装置41は、スロットル開度及び吸気管圧力の情報を電動機制御装置40に送る。
【0031】
また、電動機制御装置40は、エンジン制御装置41からのスロットル開度及び吸気管圧力の情報に基づいて、吸気管圧上昇推定値(吸気管圧力上昇予測値)を演算し、電動機14をフィードバック制御する。具体的には、電動機制御装置40は、検出されたスロットル開度の時間微分値を算出する。即ち、電動機制御装置40は、スロットルバルブ23の単位時間あたりの変位量を算出する。
【0032】
そして、電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値が負の値であることを確認した場合(スロットルが閉じられる方向に動く場合)には、現在の吸気管圧力とスロットルバルブ23の単位時間あたりの変位量とに基づいて、現在から所定時間後の吸気管圧の推定値である吸気管圧上昇推定値を算出する。電動機制御装置40は、算出した吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を超えていることを確認した場合には、過過給が生じると判断し、吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を上回った値(差分)に応じて、吸気管圧の減圧制御を行う。
【0033】
ここで、吸気管圧の減圧制御とは、電動機14の回転制御、ウェストゲートバルブ30の開度制御、タービン可変ベーン11aの開度制御、及びコンプレッサ可変ベーン13aの開度制御である。具体的に、電動機制御装置40は、減圧制御を行う際に、電動機14にタービン・コンプレッサの回転を制動させる。これとともに、電動機制御装置40は、エンジン制御装置41を介して、(過過給が生じると判断した時点のそれぞれの状態を基準に)ウェストゲートバルブ30の開度を増加させ、タービン可変ベーン11a及びコンプレッサ可変ベーン13aの開度を減少させる。
【0034】
なお、電動機14にタービン・コンプレッサの回転を制動させる際には、電動機14を過給方向とは逆方向に駆動制御してもよく、又は電動機14を回生制御してもよい。つまり、電動機14を逆方向への駆動制御、又は回生制御することにより、電動機14の駆動を吸気管圧の減圧側へ制御する。この場合、逆方向に駆動制御する方が、回生制御するよりも、より効果的な制動制御が可能となる。
【0035】
次に、電動機制御装置40の動作の一例について説明する。図2は、図1の電動機制御装置40の動作の一例を示すフローチャートである。図2において、まず、電動機制御装置40は、エンジン制御装置41から車両パラメータを取得する(ステップS1)。具体的に、電動機制御装置40は、エンジン制御装置41から、電動機回転数、スロットルバルブ23の開度、吸入空気量及び吸気管圧力の情報を取得する。
【0036】
ステップS2では、電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値を算出し、時間微分値の正負を判定する。ここで、スロットル開度の時間微分値は、スロットルバルブ23の回動方向と同義であり、時間微分値が正の場合にはスロットルバルブ23が開方向に動いたことを意味し、時間微分値が負の場合にはスロットルバルブ23が閉方向に動いたことを意味する。
【0037】
ステップS2において、電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値が正(即ち、NO方向)であることを確認した場合には、図2の動作を終了する。他方、ステップ2において、電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値が負(即ち、YES方向)であることを確認した場合には、吸気管圧力上昇推定値を算出する(ステップS3)。
【0038】
ここで、吸気管圧力上昇推定値は、現在における吸気管圧力とスロットル開度の時間微分値から算出される吸気管圧力上昇差分値との合算値となる。この吸気管圧力上昇差分値は、現在の吸気管圧力に基づいて算出可能であるが、推定精度向上のために、吸気管圧力とともに電動機回転数及び吸入空気量の少なくともいずれか一方を用いてもよい。図3に吸気管圧力上昇推定の一例を示す。なお、図3では、吸気管圧力、スロットル開度の時間微分値(の絶対値)、電動機回転数及び吸入空気量のそれぞれの大小により、吸気管圧力上昇差分値の大小を決定できることを示す。
【0039】
続いて、電動機制御装置40は、推定された吸気管圧力上昇推定値によって、過過給状態に陥る可能性があるか否かを判定する(ステップS4)。このときに、電動機制御装置40は、吸気管圧力上昇推定値が所定の閾値よりも小さい(即ち、ステップS4のNO方向)ことを確認した場合には、過過給状態に陥る可能性はないと判断し、図2に示す動作を終了する。
【0040】
一方、ステップS4において、電動機制御装置40は、吸気管圧上昇推定値が所定の閾値よりも大きいことを確認した場合(即ち、ステップS4のYES方向)には、過過給状態に陥る可能性があると判断し、電動機14の制動制御(減圧制御)を行うべくステップS5に移行する。
【0041】
ここで、電動機14の制動力は、吸気管圧上昇推定値と所定の閾値との差圧に応じたものである。この制動力は、電動機14の逆駆動制御によって、あるいは電動機14の回生制御によって得られるものとする。なお、吸気管圧上昇推定値と所定の閾値との差圧が、回生制御によって得られる制動力よりも大きい場合には、電動機14の逆駆動によって制動力を得るものとする。
【0042】
従って、電動機制御装置40は、スロットル開度の時間微分値を用いて、スロットルバルブ23の単位時間(微小時間)あたりの変化量から、過過給が発生するか否かを予測し、過過給の発生を予測した場合には、減圧方向へ駆動制御する。
【0043】
上記のような実施の形態1の内燃機関の制御装置によれば、電動機制御装置40は、スロットルバルブ23の単位時間あたりの変位量からスロットルバルブ23の閉方向への変位を検出した際には、吸気管圧と変位量とに基づいて、吸気管圧上昇推定値を算出する。そして、電動機制御装置40は、吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を越えていることを確認した際には、過過給が生じると判断し、電動機14の駆動を吸気管圧の減圧側へ制御する。この構成により、スロットルバルブ23の閉方向への変位を契機に吸気管圧の減圧側へのフィードバック制御が開始されることにより、従来のものよりも早期に吸気管圧の減圧作用を生じさせることができ、ブローオフバルブを用いない場合であっても過過給の発生を抑えることができる。
【0044】
ここで、図4は、図1の電動機制御装置40の動作タイミングを説明するための説明図である。電動機制御装置40は、図4に示すように、矢示Aの時点で、電動機14のフィードバック制御(制動制御)を開始することから、電動機制御装置40における吸気管圧の上昇の推定に要する時間、即ち過過給が生じると判断するまでのdelay(矢示B)が、図5の従来例に比べて短くなっていることがわかる。この結果、電動機制御装置40では、図4の矢示Cのように、図5の従来例に比べて、吸気管圧の上昇が抑制される。
【0045】
なお、実施の形態1では、電動過給機10が吸気通路5と排気通路6との間に設けられ、タービンホイール11とコンプレッサホイール13とが回転軸12によって互いに接続されていた。しかしながら、この例に限定するものではなく、電動過給機10は、吸気通路5に設けられたコンプレッサホイール13と電動機14とを有し、電気エネルギのみで吸気を過給するいわゆる電動コンプレッサであってもよい。このように、実施の形態1のタービンホイール11を省略した場合であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、電動過給機10のみでなく、吸気通路5及び排気通路6における電動過給機10の後段又は前段に機械式過給機をさらに設けて、いわゆるツインチャージャーを構成してもよい。この場合であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
さらに、実施の形態1では、電動機制御装置40とエンジン制御装置41とが異なるハードウェアによってそれぞれ構成されていた。しかしながら、この例に限定するものではなく、例えばエンジン制御装置41等に機能を集約できる場合には、電動機制御装置40は電動機14を駆動する単純なドライバ(駆動電力発生手段)として機能してもよい。この場合も、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、実施の形態1では、タービンホイール11がタービン可変ベーン11aを、コンプレッサホイール13がコンプレッサ可変ベーン13aをそれぞれ有していた。しかしながら、これらのタービン可変ベーン11a及びコンプレッサ可変ベーン13aを省略してもよい。
【0049】
さらに、実施の形態1では、4気筒のガソリンエンジンについて説明した。しかしながら、この発明は、4気筒のガソリンエンジン以外の気筒数及び燃料種別の内燃機関についても、適用することができる。また、この発明が適用される内燃機関の燃焼方式についても制限はなく、この発明は、シリンダ内に燃料を直接噴射する直噴エンジンにも適用することができ、スロットルバルブ23の下流側のインテークマニホールド3に燃料を噴射するポート噴射エンジンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 内燃機関、5 吸気通路、10 電動過給機、11 タービンホイール、11a タービン可変ベーン、12 回転軸、13 コンプレッサホイール、13a コンプレッサ可変ベーン、14 電動機、20 エアーフローセンサ(吸気量検出手段)、21 吸気管圧センサ、24 スロットルバルブアクチュエータ、30 ウェストゲートバルブ、31 ウェストゲートバルブアクチュエータ、40 電動機制御装置(電動機制御部)、41 エンジン制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に回転可能に設けられ、回転することにより前記内燃機関の吸気を過給するコンプレッサホイールと、
前記コンプレッサホイールの回転を駆動する電動機と
を備える電動過給機に接続された内燃機関の制御装置であって、
吸気管圧に応じた信号を生成する吸気管圧検出手段と、
前記吸気通路に設けられたスロットルバルブのスロットル開度に応じた信号を生成するスロットル開度検出手段と、
前記吸気管圧検出手段及び前記スロットル開度検出手段を介して前記吸気管圧及び前記スロットル開度を監視し、前記電動機の駆動を制御する電動機制御部と
を備え、
前記電動機制御部は、
監視している前記スロットル開度に基づいて、前記スロットルバルブの単位時間あたりの変位量を算出し、
算出した前記変位量から前記スロットルバルブの閉方向への変位を検出した際には、その時点の前記吸気管圧と前記変位量とに基づいて、所定時間後の吸気管圧の推定値である吸気管圧上昇推定値を算出し、
算出した前記吸気管圧上昇推定値が所定の閾値を越えていることを確認した際には、過過給が生じると判断し、前記電動機の駆動を前記吸気管圧の減圧側へ制御する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記電動機の回転数に応じた信号を生成する回転数検出手段と、
前記吸気通路内の吸気量に応じた信号を生成する吸気量検出手段と
の少なくともいずれか一方をさらに備え、
前記電動機制御部は、前記吸気管圧上昇推定値を算出する際に、前記吸気管圧及び前記変位量とともに、前記吸気通路内の吸気量と前記電動機の回転数との少なくともいずれか一方を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記電動機制御部は、前記電動機の駆動を前記吸気管圧の減圧側へ制御する際に、前記電動機を過給方向に対する逆方向に駆動させて、前記コンプレッサの回転に対する制動トルクを前記電動機から発生させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記電動機制御部は、前記電動機の駆動を前記吸気管圧の減圧側へ制御する際に、前記電動機を回生状態とすることによって、前記コンプレッサの回転に対する制動トルクを前記電動機から発生させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記電動過給機は、前記内燃機関の排気通路に設けられ前記コンプレッサホイールとともに回転するタービンホイールをさらに備え、
前記内燃機関の排気通路は、前記コンプレッサホイールを通るタービン側通路と、前記コンプレッサホイールを迂回するためのバイパス通路とに分岐されており、
前記電動機制御部は、前記タービン側通路と前記バイパス通路との分岐箇所に設けられ前記バイパス通路への開口を開閉するウェストゲートバルブの開度を制御し、過過給が生じると判断した際に、前記ウェストゲートバルブの開度を、過過給が生じると判断した時点の状態から増加させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記タービンホイールは、排気エネルギの伝達効率を調節するためのタービン可変ベーンを有し、
前記電動機制御部は、前記タービン可変ベーンの開閉を制御し、前記吸気管圧上昇推定値が前記所定の閾値を越えていることを確認した場合に、過過給が生じると判断した際に、前記タービン可変ベーンの開度を、過過給が生じると判断した時点の状態から減少させる
ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記コンプレッサは、圧縮空気量を調節するためのコンプレッサ可変ベーンを有し、
前記電動機制御部は、前記コンプレッサ可変ベーンの開閉を制御し、過過給が生じると判断した際に、前記コンプレッサ可変ベーンの開度を、過過給が生じると判断した時点の状態から減少させる
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−1844(P2011−1844A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144043(P2009−144043)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】