説明

内燃機関の制御装置

【課題】バネ上制振制御と排気系の故障診断制御とを高い次元で両立し、故障診断の検出機会の確保および診断精度の向上を図る。
【解決手段】OBDパラメータ検出部22は、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出する。マップ選択部30は、Cmaxと触媒劣化度合との関係を記憶したマップとして、ばらつき幅の狭い触媒劣化度合をとる第1の触媒劣化度合マップ32と、ばらつき幅の広い触媒劣化度合をとる第2の触媒劣化度合マップ34とを記憶している。そして、バネ上制振制御の非実行中は第1の触媒劣化度合マップ32を選択し、バネ上制振制御の実行中は第2の触媒劣化度合マップ34を選択する。劣化度合算出部24は、選択されたマップを用いて、検出されたCmaxに対応する触媒劣化度合を算出する。劣化判定部26は、算出された触媒劣化度合が劣化基準値を含む場合に、当該触媒の劣化を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2006−69472号公報に開示されているように、ドライバ操作外乱や路面外乱等の影響を抑圧して、車両姿勢や車両特性を安定化させる車両安定化制御システムが提案されている。このシステムでは、車体振動モデルにより車両バネ上の各種振動を推定し、車体バネ上の振動の1つであるピッチング振動を抑えるように、要求駆動力に相当する要求エンジントルクを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−69472号公報
【特許文献2】特開2007−8422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の排気通路に配置された三元触媒や排気ガスセンサが劣化すると、正常な空燃比フィードバック制御を実行することができず、エミッション特性が悪化してしまう。そこで、これらの三元触媒や排気ガスセンサの異常を早期に発見することを目的として、排気系の故障診断制御(OBD)が行われる場合がある。排気系のOBDでは、より具体的には、内燃機関の制御目標空燃比を変化させて、その変化の前後における各種排気系部品の状態量の変化がパラメータとして算出される。そして、当該パラメータに基づいて、劣化度合が検出される。例えば、三元触媒のOBDでは、三元触媒の上流の空燃比を強制的にリッチ或いはリーンに変化させることで、最大酸素吸蔵量が算出される。そして、その最大酸素吸蔵量に基づいて、三元触媒の劣化度が検出される。
【0005】
ここで、上記従来のシステムのような車両バネ上の振動を抑制するバネ上制振制御を実行すると、その最中は要求トルクが変動によって空燃比が大きく荒れてしまう。このため、上述した排気系のOBDの実行中に当該バネ上制振制御が実行されると、排気空燃比を所望の値に維持することができず、故障診断のパラメータを精度よく算出することができないことが想定される。このように、上記従来のシステムでは、バネ上制振制御の実行中に排気系の故障診断制御を高精度に実行することができず、故障診断の検出機会の確保および診断精度の点で未だ改善の余地を残すものであった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、バネ上制振制御と排気系の故障診断制御とを高い次元で両立し、故障診断の検出機会の確保および診断精度の向上を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両のバネ上振動を抑制するバネ上制振制御を実行可能な内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気ガスセンサの出力信号の変化に基づいて、前記内燃機関の故障診断に使用されるパラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記パラメータに、故障度合を表す所定の中間変数を関連付けたデータを記憶した記憶手段と、
前記パラメータ取得手段により取得されたパラメータに対応する中間変数と所定の基準値との比較に基づいて、前記内燃機関の故障の有無を判定する故障判定手段と、を備え、
前記中間変数は、所定のばらつき幅を有する変数であって、
前記記憶手段は、前記パラメータに対応する中間変数としてばらつき幅の小さい第1のデータとばらつき幅の大きい第2のデータとを記憶しており、
前記故障判定手段は、前記バネ上制振制御の非実行中は、前記第1のデータを選択して前記内燃機関の故障を判定し、前記バネ上制振制御の実行中は、前記第2のデータを選択して前記内燃機関の故障を判定することを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の排気通路に設けられた触媒の劣化度合に関連するパラメータを取得することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の空燃比を所定のリッチ空燃比と所定のリーン空燃比との間で変化させた場合に前記触媒に吸蔵される最大酸素吸蔵量を、前記パラメータとして算出することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の空燃比を所定のリッチ空燃比と所定のリーン空燃比との間で変化させた場合の前記排気ガスセンサの応答性に関するパラメータを算出することを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、
前記内燃機関は複数気筒を有し、前記排気ガスセンサとしての空燃比センサが、各気筒にそれぞれ設けられ、
前記パラメータ取得手段は、前記空燃比センサのインバランス量に関連するパラメータを取得することを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、
前記パラメータ取得手段は、前記バネ上制振制御による空燃比変化を利用して、前記パラメータを算出することを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、
前記バネ上制振制御は、前記パラメータ取得手段を実行する場合に主として空燃比変化に基づいて要求トルクを実現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、バネ上制振制御が実行されている間に内燃機関の故障診断を実行する場合には、当該バネ上制振制御が実行されていない場合に比して、故障度合を表す中間変数のばらつき幅が大きくされる。バネ上制振制御が実行されている最中は、当該バネ上制振制御の要求によって空燃比が大きく変化する。このため、排気ガスセンサのセンサ出力を用いて算出される故障診断のパラメータは、当該空燃比の変化の影響を受けてばらついてしまう。本発明によれば、バネ上制振制御が実行されている最中は、故障度合を表す中間変数のばらつき幅が大きく設定されるので、パラメータにばらつきが発生した場合であっても、故障を正常と診断する誤正常判定を有効に抑止することができる。これにより、バネ上制振制御を実行している間であっても、内燃機関の異常診断を精度よく実行することができるので、当該異常診断の検出機会を有効に確保することができる。
【0015】
第2の発明によれば、バネ上制振制御を実行している間であっても、排気通路に設けられた触媒の劣化度合を有効に診断することができる。
【0016】
第3の発明によれば、内燃機関の空燃比を所定のリッチ空燃比とリーン空燃比との間で変化させた場合の、触媒の最大酸素吸蔵量がパラメータとして算出される。このため、本発明によれば、当該最大酸素吸蔵量をパラメータとして、触媒の劣化度合を正確に判定することができる。
【0017】
第4の発明によれば、バネ上制振制御を実行している間であっても、排気ガスセンサの応答性を有効に診断することができる。
【0018】
第5の発明によれば、バネ上制振制御を実行している間であっても、空燃比センサのインバランス量を有効に診断することができる。
【0019】
第6の発明によれば、バネ上制振制御の実行による空燃比変化を利用して、パラメータの取得が行われる。このため、本発明によれば、空燃比を積極的に変化させることなく、パラメータの検出機会を有効に得ることができる。
【0020】
第7の発明によれば、パラメータの検出を行う場合に、バネ上制振制御による要求トルクの実現が、主として空燃比変化に基づいて行われる。このため、本発明によれば、当該バネ上制振制御による空燃比変化を大きくすることができるので、パラメータの検出機会を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1としての内燃機関の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】触媒劣化度合を算出するためのマップの一例を示す図である。
【図3】2つの触媒劣化度合マップを比較して示す図である。
【図4】空燃比センサのOBDに使用されるマップの一例を示す図である。
【図5】気筒別空燃比インバランスのOBDに使用されるマップの一例を示す図である。
【図6】触媒の異常診断制御およびバネ上制振制御の実行状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
本実施の形態にかかる内燃機関は、車両に搭載された火花点火式の内燃機関であって、後述するバネ上制振制御を実行可能なシステムを有している。また、当該内燃機関は、上記バネ上制振制御とは独立して、排気系に設けられた触媒の劣化診断制御(OBD)を実行可能なシステムを有している。本実施の形態においてこれらの制御を行うシステムは、図1のブロック図にて示すように構成されている。図1ではシステムの各要素をブロックで示し、ブロック間の信号の伝達(主なもの)を矢印で示している。以下、図1を参照して本実施の形態のシステムの全体の構成と、その特徴について説明する。
【0024】
図1に示すとおり、本実施の形態のシステムは、内燃機関の搭載された車両のバネ上振動を抑制するためのトルク制御を行うバネ上制振制御部10を備えている。バネ上制振制御部10は、要求生成部12と、要求実現部14とで構成されている。要求生成部12は、車両のバネ上振動の情報に基づいて、当該振動を抑制するための要求パラメータを生成する。要求パラメータとしては、要求トルクの他、例えば要求パワー、要求空気量、要求噴射量等が挙げられる。また、要求実現部14は、要求生成部12において生成された要求パラメータに基づいて、当該要求(例えば要求トルク)を実現するためのアクチュエータ信号を算出する。アクチュエータ信号としては、例えば、スロットル開度、点火時期、空燃比等が挙げられる。内燃機関は、これらのアクチュエータ信号に基づいて、バネ上制振制御の要求トルクを実現する。
【0025】
また、本実施の形態のシステムは、排気系に設けられた触媒の劣化診断(OBD)を行う触媒劣化診断部20を備えている。触媒劣化診断部20は、OBDパラメータ検出部22と、劣化度合算出部24と、劣化判定部26と、を備えている。OBDパラメータ検出部22は、所定の検出条件が成立した場合に、触媒の劣化を判定するためのパラメータとして、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出する。より具体的には、先ず、触媒の上流における制御目標空燃比をストイキに対してリッチ側からリーン側に変更する。変更直後は、触媒の下流の酸素センサの出力はリッチに維持されるが、その後リッチからリーンに反転することになる。システムは、この反転に要する時間、すなわち、触媒の上流における制御目標空燃比がストイキに対してリッチ側からリーン側に変化させてから触媒の下流の酸素センサの出力が反転するまでの時間を取得する。そして、この反転所要時間と、ストイキ空燃比に対する上流側の制御目標空燃比(この場合にはリーン側の値になる)の空燃比偏差と、吸入空気量とに基づいて、最大酸素吸蔵量Cmaxを算出する。
【0026】
また、劣化度合算出部24は、OBDパラメータ検出部22において検出された最大酸素吸蔵量Cmaxに対応する触媒劣化度合をマップから算出する。図2は、触媒劣化度合を算出するためのマップの一例を示す図である。この図における真値は、最大酸素吸蔵量Cmaxの実際値に対応する触媒劣化度合を示している。また、ばらつき幅は、最大酸素吸蔵量Cmaxに検出誤差が重畳した場合に想定される触媒劣化度合のばらつき幅を示している。つまり、このマップでは、例えば、検出された最大酸素吸蔵量Cmax(=α)に対応する触媒劣化度合の真値はβ1であるが、最大酸素吸蔵量Cmaxの検出誤差を考慮すると、触媒劣化度合はβ2からβ3までばらつく可能性があることを示している。システムは、このようなマップを予め記憶している。劣化度合算出部24は、検出された最大酸素吸蔵量Cmaxに対応する触媒劣化度合を、上述したばらつき幅を有する値として算出する。
【0027】
更に、劣化判定部26は、劣化度合算出部24において算出された触媒劣化度合と所定の劣化基準値とを比較する。所定の劣化基準値は、当該触媒の劣化を判定するためのしきい値であり、予めシステムに記憶されている。そして、劣化判定部26は、劣化度合算出部24において算出された触媒劣化度合が当該劣化基準値を含む場合に、当該触媒の劣化を判定する。
【0028】
[実施の形態1の特徴的動作]
次に、図1乃至図3を参照して本実施の形態の内燃機関のシステムの特徴的動作について説明する。本実施の形態のシステムでは、車両のバネ上振動を検出した場合に、上述したバネ上制振制御が実行される。このバネ上制振制御の実行中は要求トルクが変動する。このため、かかる制御期間は、空気量の変動およびそれに伴う空燃比の変動が生じ、その結果空燃比が安定せずに荒れた状態になってしまう。
【0029】
ここで、触媒のOBDは、上記バネ上制振制御を実行しているか否かに係わらず、所定の検出条件が成立した場合に開始される。このOBDでは、上述したとおり、制御目標空燃比をストイキに対してリッチ側からリーン側に変更して、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出する。このため、上記バネ上制振制御の実行中に最大酸素吸蔵量Cmaxの検出が行われた場合には、内燃機関の空燃比が荒れの影響を受けて、最大酸素吸蔵量Cmaxと触媒劣化度合との関係が、マップ規定されたばらつき幅以上にばらつくおそれがある。この場合、本来であれば触媒の劣化を判定すべきところを誤って正常と判定してしまう誤正常判定を招くおそれがある。
【0030】
そこで、本実施の形態のシステムでは、触媒劣化度合を算出する場合に、バネ上制振制御の実行状態に応じて、ばらつき幅の異なる触媒劣化度合マップを使用することとする。より具体的には、マップの選択はマップ選択部30で行う。マップ選択部30は、ばらつき幅の狭い第1の触媒劣化度合マップ32と、ばらつき幅の広い第2の触媒劣化度合マップ34と、を有している。
【0031】
図3は、2つの触媒劣化度合マップ32,34を比較して示す図である。図3において、同一の最大酸素吸蔵量Cmaxで比較した場合、よりばらつき幅の狭い触媒劣化度合をとるのが第1の触媒劣化度合マップ32である。第1の触媒劣化度合マップ32では、内燃機関の通常制御時、すなわち、バネ上制振制御が実行されていない場合の触媒劣化度合として設定されている。
【0032】
これに対して、同一の最大酸素吸蔵量Cmaxで比較した場合、よりばらつき幅の広い触媒劣化度合をとるのが第2の触媒劣化度合マップ34である。この第2の触媒劣化度合マップ34では、空燃比の荒れが大きい場合、すなわち、バネ上制振制御の実行中の触媒劣化度合として設定されている。
【0033】
マップ選択部30は、使用する触媒劣化度合マップ32,34を選択するための選択部36と、選択部36に対して選択の切り替えを指示する切り替え指示部38とを備えている。切り替え指示部38は、バネ上制振制御部10から入力される当該バネ上制振制御の実行状態に応じて、選択すべきマップを選択部36に指示する。選択部36は、切り替え指示部38からの指示に従って2つの触媒劣化度合マップ32,34の何れか一方を選択する。劣化度合算出部24は、選択部36によって選択されたマップを用いて、触媒劣化度合を算出する。
【0034】
以上説明したとおり、本実施の形態のシステムによれば、空燃比荒れの影響が大きいバネ上制振制御の実行中には、当該制御を実行していない通常制御時よりもばらつき幅の広い触媒劣化度合マップが選択される。これにより、触媒OBDにおける誤正常判定を有効に抑制することができる。また、本実施の形態のシステムによれば、バネ上制振制御の実行中であっても、触媒の劣化判定制御を実行することができるので、当該触媒劣化制御の実行機会を有効に確保することができる。
【0035】
ところで、上述した実施の形態1のシステムでは、触媒OBDの検出パラメータとして、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出することとしているが、当該OBDに使用可能なパラメータはこれに限られない。すなわち、触媒の劣化度合と関連を有するパラメータであれば、他の公知のパラメータを用いることとしてもよい。
【0036】
また、上述した実施の形態1のシステムでは、排気系のOBDとして触媒のOBDを実行することとしているが、本発明を適用可能なOBDはこれに限られない。すなわち、空燃比変化を利用するOBDであれば、他の公知のOBDとして、例えば、空燃比センサのOBDに適用することとしてもよいし、また、気筒毎に空燃比センサを備える内燃機関においては、気筒毎空燃比インバランスのOBDに適用することとしてもよい。
【0037】
図4は、空燃比センサのOBDに使用されるマップの一例を示す図である。このマップでは、空燃比センサ応答時定数やセンサ軌跡長等の空燃比センサのOBDパラメータに対して、センサ劣化度合(応答性)が所定のばらつき幅をもって関連付けられている。より具体的には、このマップには、通常制御時(バネ上制振制御の非実行中)に選択される、ばらつき幅の狭いセンサ劣化度合をとるマップと、空燃比荒れが大きいとき(バネ上制振制御の実行中)に選択される、ばらつき幅の広いセンサ劣化度合をとるマップとが設定されている。空燃比センサのOBDでは、かかるマップを用いることで、バネ上制振制御の実行中の誤正常判定を有効に抑制することができる。
【0038】
また、図5は、気筒別空燃比インバランスのOBDに使用されるマップの一例を示す図である。このマップでは、空燃比センサの軌跡長や触媒下流側の酸素センサのフィードバック学習値等の気筒別空燃比インバランスOBDパラメータに対して、インバランス量が所定のばらつき幅をもって関連付けられている。より具体的には、このマップには、通常制御時(バネ上制振制御の非実行中)に選択される、ばらつき幅の狭いインバランス量をとるマップと、空燃比荒れが大きいとき(バネ上制振制御の実行中)に選択される、ばらつき幅の広いインバランス量をとるマップとが設定されている。気筒別空燃比インバランスのOBDでは、かかるマップを用いることで、バネ上制振制御の実行中の誤正常判定を有効に抑制することができる。
【0039】
尚、上述した実施の形態1では、OBDパラメータ検出部22が前記第1の発明の「パラメータ取得手段」に、OBDパラメータ検出部22が前記第1の発明の「パラメータ取得手段」に、劣化判定部26が前記第1の発明の「故障判定手段」に、第1の触媒劣化度合マップ32が前記第1の発明の「第1のデータ」に、第2の触媒劣化度合マップ34が前記第1の発明の「第2のデータ」に、それぞれ相当している。
【0040】
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
上述した実施の形態1のシステムでは、所定の検出条件が成立した場合に、触媒の上流における制御目標空燃比をストイキに対してリッチ側からリーン側に変更して、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出することとしている。ここで、上述したバネ上制振制御の実行中においては、要求トルクの変動によって空燃比がリッチ−リーン間で上下する。
【0041】
そこで、本実施の形態2のシステムでは、バネ上制振制御の実行による空燃比変化を利用して、OBD検出パラメータを検出することとする。図6は、触媒のOBDおよびバネ上制振制御の実行状態を示すタイミングチャートである。この図に示す例では、触媒OBDの検出条件の1つとして、バネ上制振制御を実行している期間であることを含めている。このため、この図に示すタイミングチャートでは、バネ上制振制御の実行中の一部期間において、OBD検出条件が成立し、OBDパラメータの検出が実施されている。これにより、バネ上制振制御による空燃比変化を利用して、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出することができるので、積極的に空燃比変化を与えることなく最大酸素吸蔵量Cmaxを検出することが可能となる。これにより、OBDパラメータ検出機会を増やすことができるとともに、検出精度を向上させることができる。
【0042】
尚、上述した制御において、最大酸素吸蔵量Cmaxを検出している期間は、要求トルクを空燃比主体で制御することが好ましい。より具体的には、図6に示すとおり、OBDパラメータの検出を実施している期間は、噴射量および点火時期を主体に要求トルクを実現し、それ以外の期間は、空気量と点火時期を主体に要求トルクを実現することが好ましい。これにより、OBDパラメータの検出時の空燃比変化量を大きくすることができるので、該OBDパラメータの検出機会を有効に増やすことが可能となる。
【0043】
ところで、上述した実施の形態2のシステムでは、排気系のOBDとして触媒のOBDを実行することとしているが、本発明を適用可能なOBDはこれに限られない。すなわち、空燃比変化を利用するOBDであれば、例えば、実施の形態1において上述した空燃比センサのOBDや、気筒毎空燃比インバランスのOBDに適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 バネ上制振制御部
12 要求生成部
14 要求実現部
20 触媒劣化診断部
22 パラメータ検出部
24 劣化度合算出部
26 劣化判定部
30 マップ選択部
32 第1の触媒劣化度合マップ(狭)
34 第2の触媒劣化度合マップ(広)
36 選択部
38 切り替え指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバネ上振動を抑制するバネ上制振制御を実行可能な内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気ガスセンサの出力信号の変化に基づいて、前記内燃機関の故障診断に使用されるパラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記パラメータに、故障度合を表す所定の中間変数を関連付けたデータを記憶した記憶手段と、
前記パラメータ取得手段により取得されたパラメータに対応する中間変数と所定の基準値との比較に基づいて、前記内燃機関の故障の有無を判定する故障判定手段と、を備え、
前記中間変数は、所定のばらつき幅を有する変数であって、
前記記憶手段は、前記パラメータに対応する中間変数としてばらつき幅の小さい第1データとばらつき幅の大きい第2のデータとを記憶しており、
前記故障判定手段は、前記バネ上制振制御の非実行中は、前記第1のデータを選択して前記内燃機関の故障を判定し、前記バネ上制振制御の実行中は、前記第2のデータを選択して前記内燃機関の故障を判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の排気通路に設けられた触媒の劣化度合に関連するパラメータを取得することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の空燃比を所定のリッチ空燃比と所定のリーン空燃比との間で変化させた場合に前記触媒に吸蔵される最大酸素吸蔵量を、前記パラメータとして算出することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記パラメータ取得手段は、前記内燃機関の空燃比を所定のリッチ空燃比と所定のリーン空燃比との間で変化させた場合の前記排気ガスセンサの応答性に関するパラメータを算出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は複数気筒を有し、前記排気ガスセンサとしての空燃比センサが、各気筒にそれぞれ設けられ、
前記パラメータ取得手段は、前記空燃比センサのインバランス量に関連するパラメータを取得することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記パラメータ取得手段は、前記バネ上制振制御による空燃比変化を利用して、前記パラメータを算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記バネ上制振制御は、前記パラメータ取得手段を実行する場合に主として空燃比変化に基づいて要求トルクを実現することを特徴とする請求項6記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196210(P2011−196210A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62315(P2010−62315)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】