説明

内燃機関の吸排気装置

【課題】ターボチャージャー11を備える内燃機関2の吸排気装置1において、ターボラグを低減する。
【解決手段】吸排気装置1は、タービン20と内燃機関2との間の排気路10に接続し、蒸発燃料を排気路10に供給する蒸発燃料供給路32と、制御手段12により動作を制御され、蒸発燃料供給路32の開度を変化させる制御弁33とを備える。これにより、制御弁33を開弁させることでタービン20の上流側の排気路10に蒸発燃料を供給することができる。このため、ターボラグ発生の虞が高いときに、タービン20の上流側の排気路10に蒸発燃料を積極的に供給して排気ガス中で蒸発燃料を酸化することで、排気ガスのエネルギーを高めることができる。この結果、排気ガスからタービン20に与えるエネルギーを早期に高めることができるので、ターボラグを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャーを備える内燃機関の吸排気装置に関するものであり、特にターボラグの低減に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関から排気される排気ガスのエネルギーによりタービンを回転させ、その回転トルクによりコンプレッサーを回転駆動することで、吸入空気を内燃機関へ圧送するターボチャージャーを備える内燃機関の吸排気装置が周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ターボチャージャーでは、いわゆるターボラグの発生が課題視されている。ここで、ターボラグとは、例えば、乗員によるアクセルの踏み込みから、ターボチャージャーによる吸入空気の圧送が本格的に始まるまでの時間差として考えることができ、吸入空気の圧送が本格的に始まるまでは、内燃機関から期待するほどのトルクや出力を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−358752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ターボチャージャーを備える内燃機関の吸排気装置において、ターボラグを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、内燃機関から排気される排気ガスによりタービンを回転させるとともに、タービンの回転トルクによりコンプレッサーを回転駆動することで、吸入空気を内燃機関へ圧送するターボチャージャーと、タービンと内燃機関との間の排気路に接続し、燃料タンクにおける燃料の気化により発生した蒸発燃料を排気路に供給する蒸発燃料供給路と、所定の制御手段により動作を制御され、蒸発燃料供給路の開度を変化させる制御弁とを備える。
【0007】
これにより、制御弁を開弁させることでタービン上流側の排気路に蒸発燃料を供給することができる。また、制御弁により蒸発燃料供給路の開度を操作することで、タービン上流側の排気路への蒸発燃料の供給量を調節することができる。このため、例えば、加速時のようにターボラグ発生の虞が高いときに、タービン上流側の排気路に蒸発燃料を積極的に供給して排気ガス中で蒸発燃料を酸化することで、排気ガスのエネルギーを高めることができる。この結果、排気ガスからタービンに与えるエネルギーを早期に高めることができるので、ターボラグを低減することができる。
【0008】
なお、蒸発燃料は、通常、キャニスタに吸着され、キャニスタから吸気路にパージされて内燃機関で燃焼する(例えば、特許文献1参照)。これに対し、請求項1の手段では、タービン上流側の排気路に蒸発燃料を供給できるようにして、吸気路にパージされる通常の蒸発燃料の処理系とは別の処理系を構成してターボラグの低減を図るものである。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路に配置され、排気路から排気ガスが蒸発燃料供給路を逆流するのを阻止する逆止弁を備える。
これにより、制御弁の応答性が低くても排気ガスの逆流を阻止することができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路の接続部とタービンとの間の排気路に配置される発熱体を備える。
これにより、例えば、軽負荷時のように排気ガスの温度が低く、蒸発燃料の酸化反応が起こりにくいときでも、蒸発燃料や排気ガスの温度を上げて酸化反応を促進し、排気ガスのエネルギーを高めることができる。このため、排気ガスの温度が低いときでもターボラグを低減することができる。
【0011】
なお、内燃機関の始動時に、蒸発燃料を排気路に導入するとともに発熱体により蒸発燃料の酸化反応を促進することで、排気ガスの温度を上げて触媒の暖気時間を短縮することができる。
【0012】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路に配置され、蒸発燃料の排気路への供給をアシストするポンプを備える。
これにより、排気脈動等により排気路の圧力が燃料タンク内の圧力よりも高い正圧になったときでも、ポンプのアシストによって蒸発燃料を排気路に供給することができる。
【0013】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、燃料タンクに貯留された燃料を加熱する加熱手段を備える。
これにより、例えば、吸気路への蒸発燃料のパージ頻度が高く、燃料タンクの気相部に蒸発燃料が少なくなる虞が高いときに、液相部の燃料を加熱して蒸発燃料の発生を促進することができる。このため、燃料タンクの気相部に蒸発燃料が少なくなる状態を回避して、充分に蒸発燃料を排気路に供給することができる。
【0014】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段によれば、蒸発燃料供給路は、蒸発燃料を一時的に吸着して保持するキャニスタを経由することなく、燃料タンクから蒸発燃料を排気路に供給する。
これにより、燃料タンクから排気路に向かう蒸発燃料の流路抵抗を下げることができるので、より円滑に蒸発燃料を排気路に供給することができる。
【0015】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段によれば、制御手段は、内燃機関の加速状態に応じて制御弁の動作を制御する。
これにより、加速状態に応じて、排気路への蒸発燃料の供給量を調節することができる。例えば、内燃機関のトルクや出力が小さい加速初期には、蒸発燃料供給路の開度を大きくして排気路に積極的に蒸発燃料を供給するとともに排気ガスのエネルギーを高め、内燃機関のトルクや出力の上昇を促進する。
【0016】
そして、内燃機関のトルクや出力の上昇に応じて、蒸発燃料供給路の開度を小さくして排気路への蒸発燃料の供給量を低減する。
このように、加速状態に応じて、排気路への蒸発燃料の供給量を調節することで、ドラビリを高めることができる。
【0017】
〔請求項8の手段〕
請求項8の手段によれば、制御手段は、排気ガスを浄化する触媒の温度に応じて制御弁の動作を制御する。
これにより、例えば、排気ガスの温度が低く触媒の温度が低い内燃機関の始動時に、排気路に蒸発燃料を供給して排気ガスの温度を高めることができる。このため、温度の高い排気ガスを早期に触媒に通すことができるので、より早く触媒を活性化することができる。
【0018】
〔請求項9の手段〕
請求項9の手段によれば、制御手段は、内燃機関への燃料の供給量を内燃機関の運転状態に応じて制御し、蒸発燃料供給路を通じて排気路に蒸発燃料を供給しているときには、内燃機関への燃料の供給量を蒸発燃料の供給量に応じて低減する。
これにより、排気路で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
【0019】
〔請求項10の手段〕
請求項10の手段によれば、内燃機関の吸排気装置は、タービンと内燃機関との間の排気路に接続し、排気路に空気を供給する空気供給路を備える。
これにより、排気路で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
【0020】
〔請求項11の手段〕
請求項11の手段によれば、内燃機関は、燃料が燃焼室に直接供給される直噴型である。そして、制御手段は、内燃機関が吸気行程であり、内燃機関に吸入される直前の吸入空気の圧力が所定の閾値よりも高く、かつ、蒸発燃料供給路を通じて排気路に蒸発燃料を供給しているときに、内燃機関の排気バルブを蒸発燃料の供給量に応じて開弁させる。
これにより、いわゆるスカベンジング効果により、排気路で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例1)。
【図2】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例2)。
【図3】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例3)。
【図4】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例4)。
【図5】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例5)。
【図6】(a)はスロットル開度の時間推移を示すタイムチャートであり、(b)は蒸発燃料供給路の開度の時間推移を示すタイムチャートであり、(c)は蒸発燃料の供給量の時間推移を示すタイムチャートであり、(d)は排気ガスのエネルギーの時間推移を示すタイムチャートであり、(e)は内燃機関の出力の時間推移を示すタイムチャートである(実施例6)。
【図7】(a)は蒸発燃料供給路の開度の時間推移を示すタイムチャートであり、(b)は蒸発燃料の供給量の時間推移を示すタイムチャートであり、(c)は排気ガスの温度の時間推移を示すタイムチャートである(実施例7)。
【図8】(a)は吸入空気の流量の時間推移を示すタイムチャートであり、(b)は蒸発燃料供給路の開度の時間推移を示すタイムチャートであり、(c)は蒸発燃料の供給量の時間推移を示すタイムチャートであり、(d)は内燃機関への燃料の供給量の時間推移を示すタイムチャートである(実施例8)。
【図9】内燃機関の吸排気装置の構成図である(実施例9)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態1の内燃機関の吸排気装置は、内燃機関から排気される排気ガスによりタービンを回転させるとともに、タービンの回転トルクによりコンプレッサーを回転駆動することで、吸入空気を内燃機関へ圧送するターボチャージャーと、タービンと内燃機関との間の排気路に接続し、燃料タンクにおける燃料の気化により発生した蒸発燃料を排気路に供給する蒸発燃料供給路と、所定の制御手段により動作を制御され、蒸発燃料供給路の開度を変化させる制御弁とを備える。
【0023】
また、内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路に配置され、排気路から排気ガスが蒸発燃料供給路を逆流するのを阻止する逆止弁を備える。
【0024】
実施形態2の内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路の接続部とタービンとの間の排気路に配置される発熱体を備える。
実施形態3の内燃機関の吸排気装置は、蒸発燃料供給路に配置され、蒸発燃料の排気路への供給をアシストするポンプを備える。
実施形態4の内燃機関の吸排気装置は、燃料タンクに貯留された燃料を加熱する加熱手段を備える。
【0025】
実施形態5の内燃機関の吸排気装置によれば、蒸発燃料供給路は、蒸発燃料を一時的に吸着して保持するキャニスタを経由することなく、燃料タンクから蒸発燃料を排気路に供給する。
実施形態6の内燃機関の吸排気装置によれば、制御手段は、内燃機関の加速状態に応じて制御弁の動作を制御する。
【0026】
実施形態7の内燃機関の吸排気装置によれば、制御手段は、排気ガスを浄化する触媒の温度に応じて制御弁の動作を制御する。
実施形態8の内燃機関の吸排気装置によれば、制御手段は、内燃機関への燃料の供給量を内燃機関の運転状態に応じて制御し、蒸発燃料供給路を通じて排気路に蒸発燃料を供給しているときには、内燃機関への燃料の供給量を蒸発燃料の供給量に応じて低減する。
【0027】
実施形態9の内燃機関の吸排気装置は、タービンと内燃機関との間の排気路に接続し、排気路に空気を供給する空気供給路を備える。
実施形態10の内燃機関の吸排気装置によれば、内燃機関は、燃料が燃焼室に直接供給される直噴型である。そして、制御手段は、内燃機関が吸気行程であり、内燃機関に吸入される直前の吸入空気の圧力が所定の閾値よりも高く、かつ、蒸発燃料供給路を通じて排気路に蒸発燃料を供給しているときに、内燃機関の排気バルブを蒸発燃料の供給量に応じて開弁させる。
【実施例】
【0028】
〔実施例1の構成〕
実施例1の吸排気装置1の構成を、図1に基づいて説明する。
吸排気装置1は、内燃機関2に吸入空気を吸入させるとともに内燃機関2から排気ガスを排出させるものであり、例えば、図1に示すように、新気の吸入口3からエアクリーナ4やスロットル弁5を経て内燃機関2に吸入空気を導く吸気路6と、内燃機関2から触媒7およびマフラ8を経て排気口9に排気ガスを導く排気路10と、排気ガスのエネルギーを利用して吸入空気を圧縮するとともに内燃機関2に送り込むターボチャージャー11と、スロットル弁5等の各種機器の動作を制御する制御手段12とを備える。
【0029】
ここで、スロットル弁5の下流側の吸気路6には、キャニスタ14に吸着された蒸発燃料をパージするためのパージ路15が接続している。ここで、キャニスタ14とは、燃料タンク16における燃料の気化により発生した蒸発燃料を一時的に吸着して保持するものである。そして、パージ路15には、キャニスタ14の下流側にパージ制御弁17が組み込まれ、制御手段12は、パージ制御弁17の開閉を制御することでキャニスタ14に保持された蒸発燃料を吸気路6に吸入させて内燃機関2で燃焼させる。
【0030】
ターボチャージャー11は、排気ガスの熱エネルギーや運動エネルギーを回転軸19の回転エネルギーへ変換するタービン20と、回転軸19から伝わる回転トルクにより吸入空気を圧縮して内燃機関2に送り込むコンプレッサー21とを有し、排気ガスのエネルギーを利用してタービン20の羽根車を高速回転させ、その回転トルクでコンプレッサー21の羽根車を回転駆動することにより吸入空気を圧縮して内燃機関2に送り込む。
【0031】
なお、コンプレッサー21により圧縮された吸入空気は、インタークーラ22により冷却されてからスロットル弁5を経て内燃機関2に吸入される。
また、排気路10には、ターボチャージャー11による吸入空気の圧送が過剰になったり、排気ガスの流速が音速に達して排気量がタービン20で規制されたりする事態を回避するため、タービン20を迂回する迂回路23、および迂回路23を開閉するウェストゲートバルブ24が備わっている。
【0032】
制御手段12は、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムや各種データを保存する記憶装置、入力回路、出力回路等の機能を含んで構成される周知構造のマイクロコンピュータを含むものであり、各種センサから入力される検出信号に応じて、スロットル弁5やパージ制御弁17等の機器を制御する。
【0033】
ここで、制御手段12に検出信号を出力する各種センサとは、例えば、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ26、内燃機関2の回転数を検出する機関回転数センサ27、スロットル弁5の下流側で吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ28、スロットル弁5の下流側で吸入空気の流量を検出する吸気量センサ29、タービン20下流側や触媒7の下流側等で排気ガスの温度を検出する排気温センサ30、スロットル弁5の開度を検出するスロットル開度センサ31等である。
【0034】
なお、制御手段12は、吸排気装置1が備える機器等の制御に合わせて、内燃機関2に燃料を供給する燃料供給装置(図示せず)が備える機器等への制御を行なっている。すなわち、制御手段12は、内燃機関2の運転状態を示すセンサ(例えば、アクセル開度センサ26や機関回転数センサ27等)からの検出信号に応じて、燃料供給装置の各機器へ指令を与え、内燃機関2への燃料の供給量を制御する。
そして、吸排気装置1は、ターボチャージャー11のターボラグを低減するため、以下のような構成を具備する。
【0035】
すなわち、吸排気装置1は、タービン20と内燃機関2との間の排気路10に接続し、蒸発燃料を排気路10に供給する蒸発燃料供給路32と、制御手段12により動作を制御され、蒸発燃料供給路32の開度を変化させる制御弁33と、制御弁33よりも下流側の蒸発燃料供給路32に配置され、排気路10から制御弁33に向かって排気ガスが蒸発燃料供給路32を逆流するのを阻止する逆止弁34とを備える。ここで、蒸発燃料供給路32は、キャニスタ14とパージ制御弁17との間のパージ路15から分岐して排気路10に接続しており、パージ路15とは別に蒸発燃料を処理することができる流路である。
【0036】
〔実施例1の効果〕
実施例1の吸排気装置1は、タービン20と内燃機関2との間の排気路10に接続し、蒸発燃料を排気路10に供給する蒸発燃料供給路32と、制御手段12により動作を制御され、蒸発燃料供給路32の開度を変化させる制御弁33とを備える。
これにより、制御弁33を開弁させることでタービン20の上流側の排気路10に蒸発燃料を供給することができる。また、制御弁33により蒸発燃料供給路32の開度を操作することで、タービン20の上流側の排気路10への蒸発燃料の供給量を調節することができる。
【0037】
このため、例えば、加速時のようにターボラグ発生の虞が高いときに、タービン20の上流側の排気路10に蒸発燃料を積極的に供給して排気ガス中で蒸発燃料を酸化することで、排気ガスのエネルギーを高めることができる。この結果、排気ガスからタービン20に与えるエネルギーを早期に高めることができるので、ターボラグを低減することができる。
【0038】
また、吸排気装置1は、蒸発燃料供給路32に配置され、排気路10から排気ガスが蒸発燃料供給路32を逆流するのを阻止する逆止弁34を備える。
これにより、制御弁33の応答性が低くても排気ガスの逆流を阻止することができる。
【0039】
〔実施例2〕
実施例2の吸排気装置1は、図2に示すように、蒸発燃料供給路32の接続部32aとタービン20との間の排気路10に配置され制御手段12により発熱を制御される発熱体37を備える。
これにより、例えば、軽負荷時のように排気ガスの温度が低く、蒸発燃料の酸化反応が起こりにくいときでも、蒸発燃料や排気ガスの温度を上げて酸化反応を促進し、排気ガスのエネルギーを高めることができる。このため、排気ガスの温度が低いときでもターボラグを低減することができる。
【0040】
なお、内燃機関2の始動時に、蒸発燃料を排気路10に導入するとともに発熱体37により蒸発燃料の酸化反応を促進することで、排気ガスの温度を上げて触媒7の暖気時間を短縮することができる。
なお、発熱体37として、例えば、グロープラグを採用することができる。
【0041】
〔実施例3〕
実施例3の吸排気装置1は、図3に示すように、蒸発燃料供給路32に配置され、蒸発燃料の排気路10への供給をアシストするポンプ39を備える。また、ポンプ39は、蒸発燃料供給路32において、パージ路15との分岐部15aと制御弁33との間に組み込まれている。
これにより、排気脈動等により排気路10の圧力が燃料タンク16内の圧力よりも高い正圧になったときでも、ポンプ39のアシストによって蒸発燃料を排気路10に供給することができる。
【0042】
〔実施例4〕
実施例4の吸排気装置1は、図4に示すように、燃料タンク16に貯留された燃料を加熱する加熱ヒータ41を備える。
これにより、例えば、パージ路15を通じて行なわれる蒸発燃料のパージ頻度が高く、燃料タンク16の気相部に蒸発燃料が少なくなる虞が高いときに、液相部の燃料を加熱して蒸発燃料の発生を促進することができる。このため、燃料タンク16の気相部に蒸発燃料が少なくなる状態を回避して、充分に蒸発燃料を排気路10に供給することができる。
【0043】
〔実施例5〕
実施例5の吸排気装置1によれば、図5に示すように、蒸発燃料供給路32は、パージ路15から分岐するのではなく、燃料タンク16の気相部と排気路10とを直接的に接続する。すなわち、蒸発燃料供給路32は、蒸発燃料を一時的に吸着して保持するキャニスタ14を経由することなく、燃料タンク16から蒸発燃料を排気路10に供給する。
これにより、燃料タンク16から排気路10に向かう蒸発燃料の流路抵抗を下げることができるので、より円滑に蒸発燃料を排気路10に供給することができる。
【0044】
〔実施例6〕
実施例6の吸排気装置1によれば、制御手段12は、例えば、スロットル開度センサ31の検出信号に応じて制御弁33の動作を制御する。すなわち、制御手段12は、内燃機関2の加速状態に応じて制御弁33の動作を制御する。
これにより、加速状態に応じて、排気路10への蒸発燃料の供給量を調節することができるので、例えば、内燃機関2のトルクや出力が小さい加速初期には、蒸発燃料供給路32の開度を大きくして排気路10に積極的に蒸発燃料を供給するとともに排気ガスのエネルギーを高め、内燃機関2のトルクや出力の上昇を促進する(図6の期間L1参照。)。
【0045】
そして、内燃機関2のトルクや出力の上昇に応じて、蒸発燃料供給路32の開度を小さくして排気路10への蒸発燃料の供給量を低減する(図6の期間L2、L3参照。)。
このように、加速状態に応じて、排気路10への蒸発燃料の供給量を調節することで、ドラビリを高めることができる。
【0046】
〔実施例7〕
実施例7の吸排気装置1によれば、制御手段12は、例えば、排気温センサ30の検出信号に応じて制御弁33の動作を制御する。すなわち、制御手段12は、触媒7の温度に応じて制御弁33の動作を制御する。
例えば、排気ガスの温度が低く触媒7の温度が低い内燃機関2の始動時に、図7に示すように、制御弁33を開弁して蒸発燃料供給路32を開放する。これにより、内燃機関2の始動時に、排気路10に蒸発燃料を供給して排気ガスの温度を高めることができる。このため、温度の高い排気ガスを早期に触媒7に通すことができるので、より早く触媒7を活性化することができる。
【0047】
〔実施例8〕
実施例8の吸排気装置1によれば、制御手段12は、蒸発燃料供給路32を通じて排気路10に蒸発燃料を供給しているときには、内燃機関2への燃料の供給量を蒸発燃料の供給量に応じて低減する(図8参照。)。例えば、制御手段12は、内燃機関2への燃料の供給量の指令値を求める際に、アクセル開度センサ26や機関回転数センサ27等の内燃機関2の運転状態を示すセンサの検出信号ばかりでなく、蒸発燃料供給路32の開度や制御弁33の開弁時間等の蒸発燃料の供給量を示すパラメータを考慮する。
【0048】
そして、制御手段12は、蒸発燃料供給路32が開放されているときに、例えば、内燃機関2の運転状態を示すセンサの検出信号から求めた供給量の指令値を、蒸発燃料の供給量を示すパラメータに応じて低減補正する。つまり、制御手段12は、蒸発燃料の供給量が多いと見込む場合、供給量指令値の低減幅を大きくし、蒸発燃料の供給量が少ないと見込む場合、供給量指令値の低減幅を小さくする。
これにより、排気路10で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
【0049】
〔実施例9〕
実施例9の吸排気装置1は、図9に示すように、タービン20と内燃機関2との間の排気路10に接続し、排気路10に空気を供給する空気供給路43を備える。ここで、空気供給路43は、吸気路6においてコンプレッサー21とインタークーラとの間に接続しており、コンプレッサー21により圧縮された空気を排気路10に導く。また、空気供給路43は、排気路10において蒸発燃料供給路32の接続部32aと内燃機関2との間に接続している。
【0050】
これにより、空気供給路43を介して吸気路6から排気路10に空気を供給することができるので、排気路10で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
なお、空気供給路43には、制御手段12により制御されて空気供給路43の開度を変化させる制御弁44が組み込まれている。
【0051】
〔実施例10〕
実施例10の吸排気装置1によれば、内燃機関2は、燃料が燃焼室(図示せず)に直接供給される直噴型である。そして、制御手段12は、内燃機関2が吸気行程であり、内燃機関2に吸入される直前の吸入空気の圧力が所定の閾値よりも高く、かつ、蒸発燃料供給路32を通じて排気路10に蒸発燃料を供給しているときに、内燃機関2の排気バルブ(図示せず)を蒸発燃料の供給量に応じて開弁させる。
【0052】
すなわち、制御手段12は、内燃機関2が吸気行程であるときに、吸気圧センサ28から得られる検出信号に基づく吸入空気の圧力が所定の閾値よりも高いか否か、および、蒸発燃料供給路32が制御弁33により開放されているか否かを判定する。そして、制御手段12は、吸入空気の圧力が閾値よりも高く、かつ、蒸発燃料供給路32が開放されている場合、排気バルブを開弁させる。
【0053】
このとき、制御手段12は、蒸発燃料供給路32の開度や制御弁33の開弁時間等の蒸発燃料の供給量を示すパラメータに応じて、排気バルブの開弁時間を設定する。つまり、制御手段12は、蒸発燃料の供給量が多いと見込む場合、排気バルブの開弁時間を長く設定し、蒸発燃料の供給量が少ないと見込む場合、排気バルブの開弁時間を短く設定する。
これにより、いわゆるスカベンジング効果により、排気路10で蒸発燃料を酸化するための酸素を確保することができる。
【0054】
〔変形例〕
内燃機関2の吸排気装置1の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例2〜10に示した蒸発燃料の酸化促進策等に関し、それぞれ単独で吸排気装置1に採用してもよく、任意に選択した2つ以上の対策を吸排気装置1に採用してもよい。
また、実施例の吸排気装置1によれば、逆止弁34は、制御弁33よりも下流側の蒸発燃料供給路32に配置されていたが、制御弁33よりも上流側の蒸発燃料供給路32に逆止弁34を配置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 吸排気装置
2 内燃機関
7 触媒
10 排気路
11 ターボチャージャー
12 制御手段
14 キャニスタ
16 燃料タンク
20 タービン
21 コンプレッサー
32 蒸発燃料供給路
32a 接続部(蒸発燃料供給路の接続部)
33 制御弁
34 逆止弁
37 発熱体
39 ポンプ
41 加熱ヒータ(加熱手段)
43 空気供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気される排気ガスによりタービンを回転させるとともに、このタービンの回転トルクによりコンプレッサーを回転駆動することで、吸入空気を前記内燃機関へ圧送するターボチャージャーと、
前記タービンと前記内燃機関との間の排気路に接続し、燃料タンクにおける燃料の気化により発生した蒸発燃料を前記排気路に供給する蒸発燃料供給路と、
所定の制御手段により動作を制御され、前記蒸発燃料供給路の開度を変化させる制御弁とを備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記蒸発燃料供給路に配置され、前記排気路から排気ガスが前記蒸発燃料供給路を逆流するのを阻止する逆止弁を備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記蒸発燃料供給路の接続部と前記タービンとの間の前記排気路に配置される発熱体を備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記蒸発燃料供給路に配置され、前記蒸発燃料の前記排気路への供給をアシストするポンプを備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記燃料タンクに貯留された燃料を加熱する加熱手段を備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記蒸発燃料供給路は、前記蒸発燃料を一時的に吸着して保持するキャニスタを経由することなく、前記燃料タンクから前記蒸発燃料を前記排気路に供給することを特徴とする内燃機関の吸排気装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の加速状態に応じて前記制御弁の動作を制御することを特徴とする内燃機関の吸排気装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記制御手段は、排気ガスを浄化する触媒の温度に応じて前記制御弁の動作を制御することを特徴とする内燃機関の吸排気装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関への燃料の供給量を前記内燃機関の運転状態に応じて制御し、前記蒸発燃料供給路を通じて前記排気路に前記蒸発燃料を供給しているときには、前記内燃機関への燃料の供給量を前記蒸発燃料の供給量に応じて低減することを特徴とする内燃機関の吸排気装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記タービンと前記内燃機関との間の前記排気路に接続し、前記排気路に空気を供給する空気供給路を備える内燃機関の吸排気装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の内のいずれか1つに記載の内燃機関の吸排気装置において、
前記内燃機関は、燃料が燃焼室に直接供給される直噴型であり、
前記制御手段は、前記内燃機関が吸気行程であり、前記内燃機関に吸入される直前の吸入空気の圧力が所定の閾値よりも高く、かつ、前記蒸発燃料供給路を通じて前記排気路に前記蒸発燃料を供給しているときに、前記内燃機関の排気バルブを前記蒸発燃料の供給量に応じて開弁させることを特徴とする内燃機関の吸排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7292(P2013−7292A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139074(P2011−139074)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】