説明

内燃機関の排気微粒子測定装置に関する。

【課題】機関の運転状態に影響を与えずに測定精度を維持できる内燃機関の排気微粒子測定装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置され、酸化触媒73と、酸化触媒73を加熱して酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させるヒータ71と、酸化触媒73の温度を検出する温度センサ72と、を含むPMセンサ70と、PMの燃焼時における酸化触媒73の温度に基づいてPMの堆積量を推定するECU4とを備え、ヒータ71の作動中に排気をPMセンサ70から迂回されるバイパス通路36b、切替弁71を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気微粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気微粒子(Particulate Matter、以下「PM」と称する。)を検出するためのセンサが知られている(特許文献1乃至4参照)。
このようなセンサは、PMが含まれる排気中に酸化触媒を配置し、ヒータなどにより酸化触媒を加熱して酸化触媒に堆積したPMを燃焼させ、その燃焼時の温度上昇に基づいて、酸化触媒に堆積したPMの量を測定するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−221759号公報
【特許文献1】特開2005−337782号公報
【特許文献1】特開2005−226547号公報
【特許文献1】特願2006−135602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなセンサを、内燃機関の排気中に含まれるPMの量を測定するために、内燃機関の排気通路に配置すると、堆積したPMが燃焼されている間に、排気中のPMが新たに堆積する場合があり、PMの測定精度が低下する恐れがある。
この問題を解決するために、エンジンから排出されるPM量が少ないタイミングで測定を実行すれば、PMの測定精度の低下を抑制することができる。例えばディーゼルエンジンにおいては、パイロット噴射を禁止することにより、PMの排出量を抑制でき、筒内噴射弁とポート噴射弁とを備えたガソリンエンジンでは、筒内噴射弁による燃料噴射からポート噴射弁による燃料噴射へと切り替えることにより、PMの排出量を抑制できる。
しかしながら、パイロット噴射を禁止すると、騒音が問題になるおそれがある。また、筒内噴射弁による燃料噴射からポート噴射弁による燃料噴射へと切り替えると、エンジンの出力が抑制されるおそれがある。
【0005】
したがって本発明の目的は、機関の運転状態に影響を与えずに測定精度を維持できる内燃機関の排気微粒子測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関の排気通路に配置され、酸化触媒と、前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、を含むPMセンサと、前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、前記加熱手段の作動中に排気を前記PMセンサから迂回させるバイパス手段を有している、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置によって達成できる。
この構成により、加熱手段の作動中に排気が前記PMセンサから迂回されるので、加熱手段の作動中、即ち酸化触媒に堆積した排気微粒子が燃焼している間に、排気中の排気微粒子が更に酸化触媒に堆積することを抑制できる。従って、排気微粒子の測定精度を維持できる。また、排気をPMセンサからバイパスすることによって、機関の運転状態を変更しなくとも測定精度が維持される。
【0007】
また、上記構成において、前記バイパス手段は、前記PMセンサが配置された主通路を迂回した副通路と、排気の流路を前記主通路又は副通路に切り替える切替弁とを含む、構成を採用できる。
このような構成により、機関の運転状態に影響を与えずに測定精度を維持できる。
【0008】
また、上記構成において、排気が前記PMセンサから迂回されているときに前記PMセンサに酸素を供給する酸素供給手段を備えている、構成を採用できる。
排気が迂回されているときには、PMセンサには酸素が供給されにくい状況となるが、酸素供給手段を設けることによって、PMセンサの酸化触媒に堆積した排気微粒子の燃焼を促進させることができる。
【0009】
また、上記構成において、前記切替弁は、前記PMセンサを挟むように前記主通路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された一対の切替弁からなり、前記酸素供給手段は、前記一対の切替弁の間の前記主通路に形成された通気孔と、前記通気孔を開閉する開閉弁とを含む、構成を採用できる。
このような構成により、切替弁は、PMセンサを挟むように主通路に配置された一対の切替弁からなるので、バイパス時は、PMセンサを排気から遮断することができる。また、酸素供給手段は、一対の切替弁の間の主通路に形成された通気孔と、通気孔を開閉する開閉弁とを含むため、バイパス時に、開閉弁により通気孔を開放することによって、PMセンサに大気を導入することができる。また、一対の切替弁により、バイパス時にはPMセンサを排気から遮断することができるので、開閉弁により通気孔を開放することによって、バイパスされた排気が、通気孔から排出されることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機関の運転状態に影響を与えずに測定精度を維持できる内燃機関の排気微粒子測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係るエンジンシステムの構成を示した模式図であり、自動車に搭載された多気筒ガソリンエンジン(以下「エンジン」と略す)2及びその電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略構成を示している。図1では1つの気筒の構成を中心として示している。
ここでエンジン2の出力は変速機(図示略)を介して最終的に車輪に走行駆動力として伝達される。エンジン2には、燃焼室10内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁12と、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁11と、この噴射された燃料に点火する点火プラグ14とがそれぞれ設けられている。
【0013】
燃焼室10に接続している吸気ポート16は吸気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。吸気ポート16に接続された吸気通路20の途中にはサージタンク22が設けられ、サージタンク22の上流側にはスロットルモータ24によって開度が調節されるスロットルバルブ26が設けられている。
【0014】
このスロットルバルブ26の開度(スロットル開度TA)により吸気量が調整される。スロットル開度TAはスロットル開度センサ28により検出され、サージタンク22内の吸気圧PMは、サージタンク22に設けられた吸気圧センサ30により検出されて、ECU4に読み込まれている。
また、吸気通路20にはエアフロメータ21が配置されて、吸入空気量をECU4に出力する。
【0015】
燃焼室10に接続している排気ポート32は排気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。排気ポート32に接続された排気通路36には、排気ガス中の未燃成分(HC,CO)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを行い、酸素吸蔵、放出機能を有する三元触媒であるスタートキャタリスト38が設けられている。また、排気通路36には、スタートキャタリスト(以下、単に「触媒」という。)38の下流にNOx吸蔵還元触媒40が設けられている。
【0016】
また、排気通路36には、触媒38の上流側に、空燃比センサ64が、触媒38とNOx吸蔵還元触媒40との間に酸素センサ66が、それぞれ配置されている。空燃比センサ64として、触媒38に流入する排気ガスの空燃比に応じた電圧信号を出力するリニア空燃比センサが使用されている。酸素センサ66は、それぞれ排気ガス中の残留酸素濃度に基づき空燃比が理論空燃比よりもリッチかリーンかを感知するセンサである。
【0017】
また、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ41が設けられ、検出したエンジン冷却水温度は、ECU4に出力される。
【0018】
また、NOx吸蔵還元触媒40の下流側には、排気中のPM量を測定するPMセンサPMセンサ70が配置されている。また、PMセンサ70を排気から迂回させるためのバイパス通路36b、切替弁81とを備えている。PMセンサ70は、メイン通路36aに配置され、バイパス通路36bは、メイン通路36aを迂回するように設けられている。切替弁81、バイパス通路36bは、バイパス手段として機能する。PMセンサ70、切替弁81などの詳細については後述する。
【0019】
ECU4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成され、エンジン全体の作動を制御する。
このECU4は、スロットル開度センサ28及び吸気圧センサ30以外に、アクセルペダル44の踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ56からの信号を入力している。更に、ECU4は、クランク軸54の回転からエンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ58、空燃比センサ64、酸素センサ66からそれぞれ信号を入力している。
【0020】
ECU4は、上述した各種センサからの検出内容に基づいて、筒内噴射量、ポート噴射量、噴射時期、及びスロットル開度TAを適宜制御する。
【0021】
ECU4は、触媒38の酸化・還元能力を高めるために、触媒38に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射量を、空燃比センサ64の出力、或いはその出力と酸素センサ66の出力とに基づいてフィードバック制御する。
【0022】
次に、PMセンサ70について詳細に説明する。
図2は、PMセンサ70の構成を示した模式図である。
PMセンサ70は、図2に示すように、ヒータ71、温度センサ72、酸化触媒73、等から構成される。
ヒータ71は、酸化触媒73を加熱するための加熱手段として機能する。ヒータ71は、ECU4によってその作動が制御される。
温度センサ72は、ヒータ71と酸化触媒73との間に配置されて酸化触媒73の温度を検出し、その検出値をECU4に出力する。
【0023】
酸化触媒73は、触媒コート74、基材75から構成される。触媒コート74は、基材75の表面に形成されている。基材75は、セラミックにより形成され、触媒コート74は、白金や、パラジウムなどの金属から形成される。また、触媒コート74には、排気ガス中の酸素を吸蔵、放出機能を有するセリアが添加されている。
【0024】
図2に示すように、ヒータ71は、PMを捕集するための凹部が形成され、この凹部が排気ガスの上流側を向くように、PMセンサ70は、排気通路36に配置される。
【0025】
従って、PMセンサ70は、酸化触媒73が排気ガス中のHC、CO成分を酸化(酸素と反応)してCO、HOに変換することができると共に、排気ガス中のPMを捕集することができる。また、酸化触媒73は、前述したように酸素吸蔵、放出機能を有するので、酸化触媒73における酸素吸蔵量が十分である場合に、ヒータ71を作動させることにより、酸化触媒73が加熱されて活性化し、堆積しているPMが酸化触媒73に吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU4は、このときの温度センサ72からの出力に基づいてPMの堆積量を推定することができる。
【0026】
図3は、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
ヒータ71が作動すると、酸化触媒73が加熱されるため、図3に実線で示すように、ヒータ温度が上昇するのに伴って、温度センサ72が検出した酸化触媒73の温度が比例して上昇する。このとき、酸化触媒73にPMが堆積していると、酸化触媒73の温度がPMを燃焼可能な温度までに上昇した時点で、このPMが燃焼する。このPMの燃焼により、図3に示した一点鎖線で示すように、温度センサ72が検出した酸化触媒73の温度が急激に上昇する。そして、PMが全て燃焼すると、温度センサ72の検出温度が急激に低下する。
従って、PMセンサ70の酸化触媒73にPMが堆積した期間の吸入空気量と、このときの温度上昇量とに基づいて、所定のマップを用いてECU4は、PMの堆積量を推定することができる。これにより、排気ガス中に含まれるPM量を測定することができる。
【0027】
次に、このようなPMセンサを用いてPMを検出する際に起こり得る問題点について簡単に説明する。
前述したように、PMセンサ70は、酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させ、そのときの温度上昇に基づいてPMの堆積量を推定するものである。従って、PMを燃焼させているときに、排気ガス中に含まれるPMが新たに酸化触媒73に堆積すると、PM量の測定精度が低下する。
【0028】
図4は、PM燃焼中に更にPMが堆積した場合の、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
図4に示すように、一点鎖線で示した酸化触媒73の温度が上昇してピークを迎えた後に、温度は下降するはずであるが、新たに酸化触媒73にPMが堆積すると、その新たに堆積した分のPMが燃焼し始め、再び酸化触媒73の温度は上昇する。このような状況は、PMの排出の多いエンジン運転領域でPM量の測定を行った場合に発生しうる。従って、実施例1に係るエンジンシステムは、上記問題を解消すべく、排気ガスをPMセンサ70からバイパスさせるバイパス手段を有している。
【0029】
図5は、実施例1に係るPMセンサ70周辺の拡大図である。
PMセンサ70は、図5に示すように、メイン通路36aに配置されている。また、メイン通路36aであって、PMセンサ70よりも上流側であり、メイン通路36aとバイパス通路36bとの分岐点よりも下流側に、切替弁81が設けられている。切替弁81は、ECU4によってその作動を制御され、排気が通過する通路をメイン通路36a又はバイパス通路36bに切り替える。
PMセンサ70は、メイン通路36aに配置され、メイン通路36aとバイパス通路36bとの分岐点より下流側であり、メイン通路36aとバイパス通路36bとの合流点よりも上流側に配置されている。
【0030】
図5(a)は、切替弁81が、バイパス通路36bを遮断した状態を示しており、排気はメイン通路36aを通過する。図5(b)は、切替弁81が、メイン通路36aを遮断し、バイパス通路36bを開放している状態を示しており、排気は、バイパス通路36bを通過してPMセンサ70から迂回される。
【0031】
次に、ECU4が実行するPM量測定処理について説明する。
図6は、ECU4が実行するPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
【0032】
ECU4は、エンジンの運転状態がフューエルカット後であるかどうかを判定し(ステップS1a)、フューエルカット後である場合には、フューエルカット中の酸素量が基準値Cを上回ったかどうかを判定する(ステップS1b)。
これは、ガソリンエンジンの場合、PMセンサ70の酸化触媒73が酸素吸蔵、放出機能を有する場合であっても、ディーゼルエンジンと異なり、排気ガス中に酸素が十分存在しているわけではないため、酸化触媒73に十分酸素が吸蔵させたうえで、PMを燃焼させるのが好ましいからである。また、後述するように、PM燃焼中は、切替弁81により、PMセンサ70と排気ガスの接触は遮断されるため、酸化触媒73に酸素が吸蔵されていることが必要だからである。尚、フューエルカット中の酸素量は、エアフロメータ21に基づいて算出する。
【0033】
フューエルカット中の酸素量が、所定の基準値Cを上回った場合、切替弁81を切り替えて、バイパス通路36bへ排気を流入させる(ステップS1)。これにより、PMセンサ70は、排気ガスから遮断される。
【0034】
次に、ECU4は、ヒータ71を作動させ(ステップS2)、酸化触媒73に堆積したPMの燃焼が終了したかどうかを判定する(ステップS3)。PMの燃焼終了の判定は、図3に示したように、温度センサ72の出力に基づいて判定する。
【0035】
燃焼が終了した場合には、ECU4は、ヒータ71の作動を停止する(ステップS4)。以上の処理により、酸化触媒73に既に堆積したPMを燃焼除去することができる。
次に、温度センサ72の出力値が、規定値以下まで低下したかどうかを判定する(ステップS5)。ここで規定値とは、PMが燃焼不能な温度をいい、PMが燃焼可能な温度と十分な差がある値をいう。
【0036】
温度センサ72の出力値が規定値以下にまで低下すると、ECU4は、切替弁81を切り替えて、PMセンサ70側(メイン通路36a側)に排気ガスを流入させ(ステップS6)、吸入空気量の積算を開始する(ステップS7)。具体的には、ECU4は、エアフロメータ21により検出された吸入空気量を積算する。
吸入空気量の積算を開始し、吸入空気量の積算値Σgaが、予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する(ステップS8)。小さい場合には、ECU4は、吸入空気量の積算を継続する(ステップS9)。
【0037】
吸入空気量の積算値Σgaが、所定値Aを超えた場合、ECU4は、エンジンの運転状態がフューエルカット後であるかどうかを判定し(ステップS9a)、フューエルカット後である場合には、フューエルカット中の酸素量が基準値Cを上回ったかどうかを判定する(ステップS9b)。フューエルカット後ではない場合、または、フューエルカット中の酸素量が基準値Cを上回っていない場合には、上記ステップS9a、S9bの処理を実行する。
このように、ステップS9a、S9bにおいて、前述したステップS1a、S1bと同様の処理を実行することにより、酸化触媒73に再び十分な酸素を吸蔵させ、PMの燃焼を確実に行うためである。
【0038】
フューエルカット後であり、フューエルカット中の酸素量が基準値Cを上回っている場合には、ECU4は、切替弁81を切り替えて、バイパス通路36b側に排気ガスが流入するように制御する(ステップS10)。
【0039】
次に、ECU4は、ヒータ71を作動させ(ステップS11)、酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させる。そして、このときの温度センサ72の出力温度と、吸入空気量の積算値とに基づいて、ECU4は、酸化触媒73へのPMの堆積量を算出する(ステップS12)。
【0040】
次に、酸化触媒73に堆積したPMが完全に燃焼したかどうかでPM量の算出処理が終了したかどうかを判定する(ステップS13)。この場合、酸化触媒73に堆積したPMが燃焼することで酸化触媒73の温度が急激に上昇した後に、酸化触媒73の温度が低下し、図3に実線で示す変化に戻ることにより判定することができる。そして、PM量の算出処理が終了するまで、ECU4は、上記ステップS11、S12、の処理を実行する。
【0041】
その後、PM量の算出処理が終了した場合には、ECU4は、ヒータ71の作動を停止して(ステップS14)、温度センサ72の出力値が規定値以下であるかどうかを判定する(ステップS15)。規定値以下の場合には、ECU4は、切替弁81を切り替えて、排気ガスをPMセンサ70側へと流入させる(ステップS16)。
【0042】
このように、ECU4は、ステップS1、S10、で実行した処理のように、切替弁81を切り替えることにより、ヒータ71の作動中に排気ガスをPMセンサ70から迂回させる。このような構成により、ヒータ71の作動中、即ち酸化触媒73に堆積したPMが燃焼している間に、排気ガス中のPMが更に酸化触媒73に堆積することを抑制できる。従って、PMの測定精度を維持できる。また、排気ガスをPMセンサ70からバイパスすることによって、機関の運転状態を変更しなくとも測定精度が維持される。
【0043】
また、ECU4は、ステップS5で実行した処理のように、温度センサ72の出力値を基準として、吸入空気量の積算を開始する。例えば、本実施例のようにバイパス手段がない場合に、温度センサ72の規定値を低く設定された場合、即ち、PMが燃焼可能な温度を低く設定されると、吸入空気量積算開始時には、酸化触媒73に燃焼温度の高いPMが既に堆積している恐れがある。このように吸入空気量積算開始時に既にPM量が堆積していると、PM量の測定の際に、誤差が生じる恐れがある。また、逆に温度センサ72の規定値を高く設定された場合には、吸入空気量積算開始後であっても、排気ガス中のPMが酸化触媒73に堆積して燃焼する恐れがある。
【0044】
しかしながら、本実施例に係るエンジンシステムでは、上述したように、温度センサ72の出力値が十分に低い値となってから、切替弁81を切り替えてPMセンサ70側に排気ガスを流入させて吸入空気量の積算を開始するため、上記のような問題は解消される。
【0045】
次に、ECU4が実行する実施例1に係るPM量測定処理の変形例について説明する。図7は、ECU4が実行する実施例1に係るPM量測定処理の実施例を示したフローチャートである。
【0046】
尚、実施例1に係る変形例の処理は、上記で説明した処理と異なり、ガソリンエンジンを前提とするものではなく、ディーゼルエンジンを前提とするものである。ディーゼルエンジンの場合には、図1に示したガソリンエンジンの構成と一部分で異なり、ポート噴射弁11、点火プラグ14、三元触媒として機能する触媒38は設けられていない。
【0047】
図7に示すように、ECU4は、ディーゼルエンジンの場合には、図6に示した処理と異なり、フューエルカット後であるか、及びフューエルカット中の酸素量が所定値Cを上回ったかどうかを判定することなく、PM量の測定処理を開始する。
【0048】
この理由は、ディーゼルエンジンの場合、ガソリンエンジンと比較して排気ガス中に含まれる酸素濃度が高いため、酸化触媒73が酸素吸蔵、放出機能を有している場合には、酸化触媒73にPMが堆積している間に、酸素を吸蔵することができるからである。従って、ディーゼルエンジンの場合には、常時PM量の測定が可能となる。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に係るエンジンシステムについて説明する。
図8は、実施例2に係るエンジンシステムのPMセンサ70周辺の拡大図である。
【0050】
図8に示すように、メイン通路36aには、PMセンサ70への酸素供給手段として機能するエアポンプ80が配置されている。エアポンプ80は、切替弁81よりも下流側であり、PMセンサ70よりも上流側に配置されている。
【0051】
エアポンプ80は、排気がPMセンサ70から迂回されているときにPMセンサ70に酸素を供給する。排気がPMセンサ70から迂回されているときは、ヒータ71が作動してPMを燃焼させているが、この場合には、切替弁81により排気が迂回されているため、PMセンサ70に酸素が供給されにくい状況となる。しかしながら、エアポンプ80によって酸素が供給されるため、PMセンサ70の酸化触媒73に堆積したPMの燃焼を促進することができる。これにより、エンジンの運転状態に影響を与えずに、常時PMの測定を行うことができる。
【0052】
尚、エアポンプ80は、大気中の空気を取り込んで、PMセンサ70に酸素を供給するように構成してもよいし、酸素ボンベと接続されて、PMセンサ70に酸素を供給するように構成してもよい。エアポンプ80の動作については以下に述べる。
【0053】
次に、ECU4が実行する実施例2に係るPM量測定処理について説明する。
図9は、ECU4が実行する実施例2に係るPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
尚、本処理は、ディーゼルエンジンであっても、ガソリンエンジンであっても適用できる。また、酸化触媒73は酸素吸蔵、放出機能を有していないことを前提として説明する。
まず、ECU4は、切替弁81を作動させて、排気をバイパス通路36b側に流入させる(ステップS1)。
【0054】
次に、ECU4は、エアポンプ80を作動させて、PMセンサ70に酸素を供給し(ステップS2a)、温度センサ72の検出温度の変化率が所定値B未満であるかどうかを判定する(ステップS2b)。
温度センサ72の検出温度の変化率が所定値B未満である場合とは、温度センサ72の検出温度が略一定となった場合をいう。これは、エアポンプ80から供給される酸素によって、PMセンサ70の温度が低下し始めるが、一定時間が経過すると、PMセンサ70の温度は略一定となり、ECU4は、この状態を判定している。具体的には、エアポンプ80の作動後、10秒間の温度センサ72からの出力温度の変化が、5℃以下となったら、ECU4は、以下の処理を実行する。
【0055】
温度センサ72の検出温度の変化率が所定値B未満の場合、ステップS2〜S4の処理を実行して、温度センサ72の出力値が規定値以下になった場合には(ステップS5)、ECU4は、エアポンプ80の作動を停止させる(ステップS6a)。
【0056】
次にステップS6、S7の処理を実行して、吸入空気量の積算値Σgaが、予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定し(ステップS8)、所定値Aよりも大きくなった場合には、切替弁81を制御してバイパス通路36b側へ排気を流入させると共に(ステップS10)、エアポンプ80を作動させる(ステップS11a)。そして、ECU4は、温度センサ72の検出温度の変化率が所定値B未満であるかどうかを判定する(ステップS11b)。所定値B未満でない場合には、ECU4は、エアポンプ80による酸素の供給を継続する(ステップS11a)。
【0057】
所定値B未満の場合には、ECU4は、ステップS11〜S14の処理を実行して、PM量の測定を終了した後にヒータ71の作動を停止させた後に、温度センサ72の出力値が規定値以下であるかどうかを判定する(ステップS15)。規定値以下の場合には、ECU4は、エアポンプ80の作動を停止させる(ステップS16a)。その後に、ECU4は切替弁81の作動させて、排気をPMセンサ70側に流入させる(ステップS16)。
【0058】
上記ステップS5、S6a、S15、S16aで実行した処理のように、温度センサ72の出力値が規定値以下となるまで、エアポンプ80を作動させることによって、ヒータ71の冷却時間を短縮することができる。これにより、PM量を測定するために必要な時間を短縮することができ、PM量の測定頻度を増やすことができる。
【0059】
また、ステップS2a、S2b、S11a、S11bで実行した処理のように、エアポンプ80によってPMセンサ70に酸素が供給されてから、温度センサ72の出力が安定した後に、ヒータ71を作動させる。
PMセンサ70に酸素が供給され始めて、温度センサ72の出力が安定しないうちにヒータ71を作動させた場合には、PMが燃焼中における温度センサ72の出力も不安定となる恐れがあり、PMの測定精度が低下する恐れがある。しかし、PMセンサ70に酸素が供給されてから、温度センサ72の出力が安定した後にヒータ71を作動させることによって、燃焼中での温度センサ72の出力も安定し、PMの測定精度の低下を防止できる。
【0060】
次に、ECU4が実行する実施例2に係るPM量測定処理の変形例について説明する。
図10は、ECU4が実行する実施例2に係るPM量測定処理の変形例についてのフローチャートである。
尚、酸化触媒73は、酸素吸蔵、放出機能を有していることを前提として説明する。
【0061】
ECU4は、ステップS1〜S4の処理を実行し、ステップS5において、温度センサ72の出力温度が、規定値以下になった場合には、ECU4は、エアポンプ80による供給空気量の積算を開始する(ステップS6b)。
【0062】
次に、ECU4は、エアポンプ80による供給空気量が、酸化触媒73に十分に酸素が吸蔵されるために必要となる空気量を上回ったかどうかを判定する(ステップS6c)。尚、酸化触媒73の最大酸素吸蔵量は、触媒コート74に添加されたセリアの量に基づいて算出でき、この算出結果に基づいて、エアポンプ80の供給空気量が設定されている。
【0063】
供給空気量が十分である場合、即ち、酸化触媒73に十分に酸素が吸蔵された場合には、ECU4は、エアポンプ80の作動を停止させる(ステップS6d)。
【0064】
次に、ECU4はステップS7〜S16の処理を実行して、PM量を測定する。ここで、ステップS7〜S16までの処理においては、ECU4は、エアポンプ80を作動させることなく、ヒータ71によりPMを燃焼させる。これは、ステップS6b、S6cの処理によって、酸化触媒73に十分な酸素が吸蔵されているため、ステップS11においてPMを燃焼させる際には、酸化触媒73に吸蔵されている酸素により、その燃焼が促進されることになる。従って、切替弁81によりPMセンサ70が排気ガスから遮断されている場合であっても、PMを燃焼させることができる。
【0065】
また、ステップS11を実行する際にエアポンプ80を作動させると、エアポンプ80によってPMセンサ70が冷却されるので、酸化触媒73へのPMの堆積量の差によらずに、温度センサ72の出力値の差が小さくなるおそれがある。温度センサ72の出力値の差が小さいと、PM量を誤検出する恐れがある。
また、エアポンプ80によってヒータ71も冷却されるため、ヒータ71の電力消費が増加する恐れがある。更に、エアポンプ80を作動させることによっても電力消費は増加する。
従って、PM量を測定中においては、エアポンプ80を作動させないことにより、PM量の測定精度の低下を抑制でき、電力消費の増大も抑制できる。
【実施例3】
【0066】
次に、実施例3に係るエンジンシステムについて説明する。
図11は、実施例3に係るエンジンシステムのPMセンサ70周辺の拡大図である。
尚、本実施例において、切替弁81を便宜上、第1切替弁81として説明する。
【0067】
図11に示すように、メイン通路36aには、第1切替弁81に加えて、第2切替弁82、開閉弁83が配置されている。
第2切替弁82は、メイン通路36aとバイパス通路36bとの合流点よりも上流側に配置されている。第2切替弁82は、第1切替弁81とにより、PMセンサ70を挟み込むように配置されている。
また、第1切替弁81と第2切替弁82との間には、開閉弁83が配置されている。開閉弁83は、図11(b)に示すように、メイン通路36aに形成された通気孔84を開閉する。通気孔84は、大気と連通している。開閉弁83は、PMセンサ70よりも若干上流側に配置されている。通気孔84も、同様の位置に形成されている。
【0068】
ECU4は、ヒータ71を作動させて、PMを燃焼させている間は、図11(a)に示した状態から、図11(b)に示した状態へと切り替える。即ち、ECU4は、第1切替弁81及び第2切替弁82によって、メイン通路36aを閉鎖してPMセンサ70を排気ガスから遮断する。これにより、排気ガスは、バイパス通路36bへと流入する。そして、ECU4は、開閉弁83を作動して通気孔84を開放することにより、大気が通気孔84を介して、メイン通路36aに流入する。この大気には通常、酸素が含まれているため、PMセンサ70に酸素が供給される。これにより、排気ガスがPMセンサ70からバイパスされている場合であっても、PMを燃焼させることができる。
【0069】
また、ヒータ71を作動させている間は、第2切替弁82もメイン通路36aを閉鎖するため、バイパス通路36bを通過した排気ガスが、メイン通路36aとバイパス通路36bとの合流点を介して、メイン通路36aの上流側に進み、通気孔84から排出されることを防止できる。これにより、通気孔84から排気が逃げ出して騒音が発生することを防止できる。即ち、第2切替弁82を設けたことによって、排気ガスをマフラー90に案内することができる。
【0070】
次に、ECU4が実行する実施例3に係るPM量測定処理について説明する。
図12は、ECU4が実行する実施例3に係るPM量測定処理の一例を示したフローチャートである。
【0071】
ECU4は、第1切替弁81を作動させ、排気をバイパス通路36b側に流入させる(ステップS1c)。次に、第2切替弁82を作動させ、PMセンサ70を排気ガスから遮断する(ステップS1d)。次に、ECU4は、開閉弁83を作動させて、通気孔84を開放して、大気をメイン通路36aへと流入させる(ステップS1e)。
これにより、PMセンサ70から排気ガスが遮断されると共に、大気を供給することができる。
【0072】
次に、ステップS2b〜S5の処理を実行した後、開閉弁83を作動させて、通気孔84を遮断し(ステップS6e)、第2切替弁82を作動させ、バイパス通路36bの下流側を閉鎖し(ステップS6f)、第1切替弁81を作動させて、メイン通路36aの上流側を閉鎖する(ステップS6g)。その後に、ステップS7以降の処理を実行する。これにより、PMセンサ70へPMを堆積させることができる。
【0073】
次に、ステップS8、S9の処理を実行した後、ステップS1c〜1dの処理と同様に、ステップS10a〜S10sの処理を実行する。これによって、ステップS11においてPMが燃焼している間に、通気孔84から酸素が供給される。
【0074】
次に、ステップS11〜S15の処理を実行した後、ステップS6e〜S6gと同様に、ステップS16b〜S16dの処理を実行する。
【0075】
このように、ヒータ71の作動時には、通気孔84から酸素を供給することができるので、酸化触媒73に酸素吸蔵、放出機能を有していない場合であってもPMを燃焼させることができる。これにより、PMセンサ70のコストを抑制することができる。また、実施例2に係るエンジンシステムのように、エアポンプ80を設ける必要はないので、これによってもコストを抑制することができる。
【0076】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1に係るエンジンシステムの構成を示した模式図である。
【図2】PMセンサの構成を示した模式図である。
【図3】ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
【図4】PM燃焼中に更にPMが堆積した場合の、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
【図5】実施例1に係るPMセンサ周辺の拡大図である。
【図6】ECUが実行するPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
【図7】ECUが実行する実施例1に係るPM量測定処理の変形例を示したフローチャートである。
【図8】実施例2に係るエンジンシステムのPMセンサ周辺の拡大図である。
【図9】ECUが実行する実施例2に係るPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
【図10】ECUが実行する実施例2に係るPM量測定処理の変形例についてのフローチャートである。
【図11】実施例3に係るエンジンシステムのPMセンサ周辺の拡大図である。
【図12】ECUが実行する実施例3に係るPM量測定処理の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
2 エンジン
4 ECU(堆積量推定手段)
10 燃焼室
11 ポート噴射弁
12 筒内噴射弁
14 点火プラグ
16 吸気ポート
20 吸気通路
22 サージタンク
24 スロットルモータ
26 スロットルバルブ
28 スロットル開度センサ
30 吸気圧センサ
32 排気ポート
36 排気通路
36a メイン通路(主通路)
36b バイパス通路(副通路)
38 触媒
40 NOx吸蔵還元触媒
41 水温センサ
44 アクセルペダル
54 クランク軸
56 アクセル開度センサ
58 エンジン回転数センサ
64 空燃比センサ
66 酸素センサ
70 PMセンサ
71 ヒータ
72 温度センサ
73 酸化触媒
74 触媒コート
75 基材
80 エアポンプ
81 切替弁、第1切替弁
82 第2切替弁
83 開閉弁
84 通気孔
90 マフラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置され、酸化触媒と、前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、を含むPMセンサと、
前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、
前記加熱手段の作動中に排気を前記PMセンサから迂回させるバイパス手段を有している、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項2】
前記バイパス手段は、前記PMセンサが配置された主通路を迂回した副通路と、排気の流路を前記主通路又は副通路に切り替える切替弁とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項3】
排気が前記PMセンサから迂回されているときに前記PMセンサに酸素を供給する酸素供給手段を備えている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項4】
前記切替弁は、前記PMセンサを挟むように前記主通路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された一対の切替弁からなり、
前記酸素供給手段は、前記一対の切替弁の間の前記主通路に形成された通気孔と、前記通気孔を開閉する開閉弁とを含む、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の排気微粒子測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−261322(P2008−261322A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106501(P2007−106501)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】