説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気系に設けられた排気浄化部の昇温処理を通じて白煙の発生を抑制しつつ、排気浄化部の昇温処理に利用される燃料等の昇温エネルギー源についてもその節約を図ることのできる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】制御手段20は、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量を推定する。制御手段20は、この推定する硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に到達したとき、硫黄化合物を放出可能でかつ同硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲にディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を昇温制御する。そして、制御手段20は、この昇温制御を通じた硫黄化合物の放出完了後に、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12のさらなる昇温を通じてDPF12に堆積された微粒子成分を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特にディーゼル機関の排気系に設けられて排気中の微粒子成分(PM:パティキュレートマター)を捕集する排気浄化部を有する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載エンジン等の内燃機関、特にディーゼル機関においては、その排気中に含まれる微粒子成分の大気への放出量を低減すべく、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)等のフィルタを排気系に設け、このフィルタによって排気中の微粒子成分を捕集するようにしている。そして、こうしたフィルタに捕集された微粒子成分を酸化作用によって燃焼させ、フィルタによる微粒子成分の捕集機能を維持するようにしている。また通常、こうしたDPFもしくはその上流には、排気中に含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化させて水(HO)及び二酸化炭素(CO2)に変換する酸化触媒コンバータ(DOC)が設けられている。
【0003】
一方、ディーゼル機関等で利用される燃料や潤滑油には一般に硫黄が含まれており、燃料の燃焼に伴ってこうした硫黄から生成される硫黄化合物(SOx)が上記DPFやDOCに吸着されると、DPFとしての微粒子成分の捕集機能やDOCとしての触媒機能が低下することともなる。そこで従来は、硫黄化合物等の被毒物質がDPFやDOCに吸着された場合にはこの被毒物質を除去して、その触媒機能の回復を図る処理を行うようにしている。なお、こうした被毒の回復処理においては、例えばポスト噴射等を通じてDPF及びDOCを所定温度にまで加熱することにより、DPF及びDOCに吸着されている被毒物質が同DOCから離脱、放出されるようになる。また、例えば、特許文献1に記載の排気浄化装置では、こうしたSOx等の被毒物質をDPF及びDOCから放出させるための昇温処理を、DPFに堆積されている微粒子成分を除去するための昇温処理とともに実行するようにしている。これにより、排気系に設けられたDOCやDPFに対する昇温処理が過剰に実行されることが抑制されるようになり、こうした昇温処理に利用される燃料も節約されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の排気浄化装置のようにDOCやDPFに対する昇温処理の頻度を減らすこととすれば、DPF及びDOCが昇温される機会、すなわちDPF及びDOCに蓄積されたSOxを除去する機会も減少することから、DPF及びDOCに蓄積されるSOxの蓄積量が自ずと増大することとなる。そして、SOxが大量に蓄積されたDPF及びDOCに対する昇温処理が特に内燃機関への吸入空気量が少ない状況下で行われるようなことがあると、DPF及びDOCから排出されるSOxの濃度が高まり、このSOxが視認可能な状態、すなわち白煙として大気中に放出されることとなる。また、こうした白煙の発生を抑制すべくDPF及びDOCに対する昇温処理の頻度を高めると、昇温処理に利用される燃料の使用量が無視できず、燃費の悪化は避けられない。
【0006】
なお、DOC及びDPFを排気系に備えた排気浄化装置のみならず、微粒子成分や硫黄化合物が堆積、吸着されるDPF等の排気浄化部が排気系に設けられた排気浄化装置にあっては、こうした課題も概ね共通したものとなっている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気系に設けられたDPF等の排気浄化部の昇温処理を通じて白煙の発生を抑制しつつ、排気浄化部の昇温処理に利用される燃料等の昇温エネルギー源についてもその節約を図ることのできる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車載内燃機関の排気系に設置されて排気ガス中に含まれる微粒子成分を捕集するとともに排気ガス中に含まれる硫黄化合物が蓄積される排気浄化部を再生処理しつつ排気の浄化を行う内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気浄化部に蓄積される前記硫黄化合物の蓄積量を推定するとともに、この推定される硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に到達したとき、前記硫黄化合物を放出可能でかつ同硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲に前記排気浄化部の温度を昇温制御する制御手段を備えることを要旨とする。
【0009】
上記硫黄化合物の放出特性は、同硫黄化合物が蓄積される排気浄化部の温度と相関があり、排気浄化部から放出可能でありながら大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲が存在することが発明者等によって確認されている。
【0010】
そこで、上記構成によるように、上記制御手段によって、排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を放出させる際に排気浄化部の温度を上記温度範囲に昇温制御する。このため、硫黄化合物の白煙化を抑制しつつも、排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を放出させ、排気浄化部を再生することが可能となる。そのため、排気浄化部に蓄積される硫黄化合物の蓄積量が例えば同排気浄化部の機能を維持する上で要求される放出要求量を超えるまでは、排気浄化部の昇温制御を行う必要がなく、排気浄化部の昇温回数を低減することが可能となり、昇温に用いられる燃料等の還元剤や昇温に要するエネルギー源の節約が図られるようになる。これにより、排気系に設けられた排気浄化部の昇温処理を通じて白煙の発生を抑制しつつ、排気浄化部の昇温処理に利用される燃料等の昇温エネルギー源についてもその節約を図ることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記排気浄化部の昇温制御に伴う硫黄化合物の放出が、前記温度範囲に到達したときに開始されてかつ、前記温度範囲を超えるまでの間は前記白煙化を抑制可能な低濃度状態で漸次放出される特性であることを要旨とする。
【0012】
上記硫黄化合物の放出特性とは、排気浄化部が上記温度範囲にあるときには、排気浄化部から放出されるものの単位時間当たりの放出量が少なく、白煙化を抑制可能な濃度で排出される特性を有している。一方、上記温度範囲を超えて排気浄化部の温度が上昇すると、単位時間当たりの放出量が増大し、白煙化を招く傾向にある。
【0013】
そこで、こうした放出特性に基づき上記温度範囲内で排気浄化部の昇温制御を実行することによって、硫黄化合物を低濃度状態で排気浄化部から放出させることが可能となり、硫黄化合物の放出に伴う白煙の発生を的確に抑制することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記硫黄化合物の放出に際しての前記排気浄化部の昇温制御を、「500℃」〜「550℃」の温度範囲で行うことを要旨とする。
【0015】
車両等の排気系に設けられる排気浄化部や燃料等の一般的な特性によれば、硫黄化合物の放出を可能としつつ、その白煙化を的確に抑制可能な温度範囲が約「500℃」〜「550℃」であることが発明者等によって確認されている。すなわち、排気浄化部の温度が約「500℃」よりも低いと排気浄化部では硫黄化合物が分解されず、蓄積された硫黄化合物が放出されない傾向にある。逆に、排気浄化部の温度が約「550℃」よりも高いと硫黄化合物の分解が促進され、排気浄化部から放出される硫黄化合物の濃度が高くなる傾向にある。
【0016】
そこで、上記構成によるように、硫黄化合物の放出に際し、排気浄化部の温度を「500℃」〜「550℃」とすることによって、排気浄化部からの硫黄化合物の放出と白煙化の抑制との好適な両立が図られるようになる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記排気浄化部の昇温制御に際し、前記内燃機関の高負荷運転に伴って前記排気浄化部の温度が前記温度範囲を超えて高まっているとき、前記推定する硫黄化合物の蓄積量を「0」として初期化することを要旨とする。
【0018】
上記内燃機関が高負荷運転状態にあるときには、これに伴って、排気系に設けられた排気浄化部の温度も上昇する。そして、排気浄化部の温度が高温となり、同温度が上記温度範囲を超えたときには、排気浄化部に蓄積されていた硫黄化合物の放出が短時間で完了され、排気浄化部に蓄積されていた大半の硫黄化合物が放出されたものと推定できる。
【0019】
よって、上記構成によるように、内燃機関の高負荷運転に伴って排気浄化部の温度が上記温度範囲を超えているときには、排気浄化部から硫黄化合物が既に放出されているとして、上記推定する蓄積量を初期化する。そのため、この推定される蓄積量に基づく排気浄化部の昇温制御は実行されず、昇温に用いられる燃料等が不要に使用されることもない。これにより、燃費のさらなる節約が促されるようになるとともに、排気浄化部の再生処理に伴う上記制御手段の演算負荷等も低減されるようになる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記排気浄化部の温度が「600℃」以上にあるとき、前記排気浄化部の温度が前記温度範囲を超えているとして前記初期化を実行することを要旨とする。
【0021】
上記硫黄化合物の放出特性とは、硫黄化合物が蓄積される排気浄化部の温度が約「600℃」以上となったときに急激に放出量が増大し、排気浄化部の昇温時間に依存することなく硫黄化合物が排気浄化部から略除去されることとなる。よって、上記構成によるように、排気浄化部の温度が約「600℃」以上であるときには、排気浄化部に蓄積されていた硫黄化合物が全て放出されたとして、上記推定する蓄積量を初期化する。そのため、排気浄化部に堆積されていた硫黄化合物の蓄積量が確実に「0」となっていることが推定される温度条件が満たされたことを条件に、上記初期化が実行されることとなる。これにより、硫黄化合物の蓄積量の推定を通じた昇温制御を実行する上で、その推定精度が高められるようになる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記排気浄化部の温度を昇温制御するモードとして、前記排気浄化部に堆積された微粒子成分の堆積量が該微粒子成分の除去要求量に到達したことを条件に微粒子成分を酸化して当該排気浄化部から微粒子成分を除去する酸化モードと、前記排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を当該排気浄化部から放出する硫黄放出モードとを有し、前記酸化モードの実行に先立ち前記硫黄放出モードを実行することを要旨とする。
【0023】
一般に、微粒子成分の除去に必要な温度とは、硫黄化合物の放出に必要な温度より高く、上記温度範囲を超える傾向にある。そこで、上記構成によるように、これら微粒子成分や硫黄化合物を除去、放出させるモードとして、酸化モードと硫黄放出モードとを設ける。そして、上記温度範囲を超える昇温を通じて実行される酸化モードに先立ち上記硫黄放出モードを実行することとすれば、微粒子成分の酸化時には、硫黄化合物が排気浄化部から既に放出された状態となっており、硫黄化合物の放出に伴う白煙の発生を招くこともない。これにより、排気浄化部に堆積、蓄積される微粒子成分の除去と硫黄化合物の放出とを通じて、排気浄化部の再生機能を維持しつつも、白煙の発生を的確に抑制することが可能となる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記硫黄放出モードにて前記排気浄化部の温度を前記温度範囲内に一定期間だけ維持したのち、前記排気浄化部のさらなる昇温を通じて前記硫黄放出モードから前記酸化モードに移行することを要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、上記硫黄放出モードにて、排気浄化部の温度が上記温度範囲内に一定期間維持される。これにより、排気浄化部に蓄積されている硫黄化合物は、排気浄化部から漸次放出されるようになる。そして、例えば硫黄化合物の蓄積量に応じた一定期間が経過すると、排気浄化部のさらなる昇温を通じて、硫黄放出モードから酸化モードに移行される。よって、硫黄化合物の放出に伴い昇温された排気浄化部をさらに昇温するだけで、硫黄化合物の放出に引き続き微粒子成分の除去を行うことが可能となる。これにより、微粒子成分の除去と硫黄化合物の放出とを段階的かつ連続的に行うことが可能となり、排気浄化部の再生処理の円滑化が図られるようになる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記硫黄放出モードにて前記排気浄化部を前記温度範囲の下限から上限にかけて漸次昇温したのち、前記硫黄放出モードから前記酸化モードに移行することを要旨とする。
【0027】
上記構成によれば、上記硫黄放出モードにて、排気浄化部の温度が上記温度範囲の下限から上限にかけて漸次昇温される。この間、排気浄化部に蓄積されている硫黄化合物の蓄積量は次第に減少する。また、排気浄化部の温度が上昇するにつれて、硫黄化合物の放出は段階的に促されるものの、硫黄化合物の蓄積量は経時的に減少することから、排気浄化部から放出される硫黄化合物の放出量を略一定に維持することが可能となり、硫黄化合物の白煙化を抑制できる。さらに、白煙化を抑制可能な範囲内で硫黄化合物の放出が促進されることにより、硫黄化合物の放出に要する時間の短縮化が図られることともなる。そして、排気浄化部の温度が漸次上昇する過程で硫黄化合物の放出が完了され、上記温度範囲の上限値を超えて以降は、漸次昇温された排気浄化部を僅かに昇温するだけで酸化モードに移行することが可能となる。このため、硫黄放出モードと酸化モードといった2つのモードを段階的に実行しつつも、硫黄放出モードから酸化モードへの切換を円滑に実行することが可能となり、排気浄化部に堆積されている微粒子成分についても円滑な除去が促されるようになる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記硫黄放出モードにおける例外処理として、前記排気浄化部に堆積された微粒子成分の堆積量が前記除去要求量に到達する以前に前記硫黄化合物の蓄積量が前記放出要求量に到達したとき、前記排気浄化部の昇温制御を通じて当該排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を放出させる処理を行うことを要旨とする。
【0029】
上記構成によれば、微粒子成分の堆積量が除去要求量に到達する以前に硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に到達したときには、硫黄化合物の放出を優先して実行すべく、排気浄化部の昇温制御が実行される。このため、排気浄化部の機能を維持する上で、酸化モードと硫黄モードとの2つのモードを設けつつも、硫黄化合物の放出の必要性が生じたときには、酸化モードの実行条件が満たされるまでもなく硫黄化合物が排気浄化部から放出される。これにより、硫黄化合物が排気浄化部に過剰に蓄積されることもなく、排気浄化部の機能をより的確に維持することが可能となる。
【0030】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記内燃機関で消費される燃料の消費量に基づいて前記排気浄化部に蓄積される硫黄化合物の蓄積量を推定することを要旨とする。
【0031】
内燃機関から排気系に排出される硫黄化合物の排出量とは、内燃機関で消費される燃料の消費量に相関するものであり、内燃機関で消費される燃料の総消費量が増大するほど、これに伴って、排気浄化部に蓄積される硫黄化合物の蓄積量も増大する。そこで、上記構成によれば、内燃機関で消費される燃料の消費量に基づいて上記硫黄化合物の蓄積量を推定することによって、硫黄化合物の蓄積量を的確に推定することが可能となり、この推定に基づく排気浄化部の昇温制御を的確に実行することが可能となる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記硫黄化合物の放出に際して前記排気浄化部の温度を前記温度範囲内に維持する昇温時間を、前記推定した硫黄化合物の蓄積量に応じて設定することを要旨とする。
【0033】
硫黄化合物の放出に際して排気浄化部の温度が上記温度範囲内に昇温されているときには、硫黄化合物の総放出量は昇温時間に相関して増大する。よって、排気浄化部に蓄積されている硫黄化合物の放出に必要な昇温時間だけ確保できれば、排気浄化部に蓄積された大半の硫黄化合物を放出させることは可能である。そこで、上記構成によるように、硫黄化合物の放出に際しての昇温時間を上記推定した硫黄化合物の蓄積量に応じて設定することとすれば、排気浄化部に蓄積された大半の硫黄化合物を放出させる上で必要な、また、必要十分な昇温時間を設定することが可能となる。これにより、排気浄化部に蓄積された硫黄化合物の確実な除去と、排気浄化部の昇温に要する燃料等のさらなる節約とが図られるようになる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記内燃機関がディーゼル機関であり、前記排気浄化部が、前記微粒子成分を捕集するディーゼル・パティキュレート・フィルタと、ディーゼル用酸化触媒とからなることを要旨とする。
【0035】
一般に、ディーゼル機関にあっては、燃料の燃焼に伴う微粒子成分の発生量が多く、この微粒子成分の大気中への放出を抑制すべく、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)が設けられていることが多い。また、こうしたDPFにあっては、燃料の燃焼に伴って同DPFに堆積される微粒子成分の堆積量が多いことから、同DPFの浄化性能を維持すべくその再生処理を的確に実行する必要がある。また一方、こうしたDPFには、排気中に含まれる硫黄化合物が蓄積されることから、その機能を維持する上で硫黄化合物を定期的に除去する必要がある。同様に、こうしたDPFとともに排気中に設けられるディーゼル用酸化触媒にも、上記硫黄化合物が蓄積されることから、その触媒機能を維持する上で硫黄化合物を定期的に放出させる必要がある。
【0036】
そこで上記構成によれば、こうしたDPFやディーゼル用酸化触媒を排気系に備える構成であれ、それらDPFやディーゼル用酸化触媒の再生を通じて浄化機能を維持しつつ、硫黄化合物の白煙化を的確に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第1の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の全体構成を模式的に示す図。
【図2】硫黄化合物の単位時間当たりの放出量をディーゼル用酸化触媒の温度毎に示すグラフ。
【図3】(a)は、ディーゼル用酸化触媒の昇温時における硫黄化合物の蓄積量の減衰推移の一例を示す図。(b)は、ディーゼル用酸化触媒から放出された硫黄化合物の放出量の推移例を示す図。
【図4】(a)は、本実施の形態の排気浄化装置により昇温制御される排気浄化部の温度推移の一例を示す図。(b)は、同昇温制御のもとに排気浄化部から排出される硫黄化合物の濃度推移の一例を示す図。
【図5】(a)は、従来の排気浄化装置により昇温制御される排気浄化部の温度推移の一例を示す図。(b)は、同昇温制御のもとに排気浄化部から排出される硫黄化合物の濃度推移の一例を示す図。
【図6】同排気浄化装置による排気浄化部の再生手順の一例を示すフローチャート。
【図7】本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第2の実施の形態について、同排気浄化装置による排気浄化部の再生手順の一例を示すフローチャート。
【図8】本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第3の実施の形態について、同排気浄化装置により昇温制御される排気浄化部の温度推移の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置を具体化した第1の実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施の形態の排気浄化装置は、ディーゼル機関を駆動源とした自動車等の車両に搭載されるものである。
【0039】
図1に示すように、ディーゼル機関1は、各気筒の燃焼室に対応する複数の燃焼室2を備えている。各燃焼室2には、それら燃焼室2内にそれぞれ燃料を噴射するための電子制御式の燃料噴射弁3が設けられている。
【0040】
また、ディーゼル機関1は、同ディーゼル機関1の内部に空気を取り込む吸気マニホルド4と、この吸気マニホルド4を介して取り込んだ空気を同ディーゼル機関1の外部に排出させる排気マニホルド5とを有している。
【0041】
吸気マニホルド4は、吸気抵抗を低減させる吸気ダクト6を介して、排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結されている。このコンプレッサ7aの入口は、エアクリーナ8に連結されている。
【0042】
吸気ダクト6内には、ステップモータにより駆動されるスロットル弁9が配置されている。また、この吸気ダクト6の周囲には、吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための吸気冷却装置(インタークーラ)10が配置される。そして、機関冷却水が吸気冷却装置10内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0043】
また、排気マニホルド5は、排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結されている。この排気タービン7bの出口に連結される排気管7cには、上記排気浄化部を構成するディーゼル用酸化触媒11及びパティキュレート・フィルタ・(DPF)12が内蔵されたケーシング13が設けられている。このケーシング13の出口は、排気管7cを介して、消音機能等を有したマフラ14に連結される。
【0044】
ケーシング13に内蔵されるディーゼル用酸化触媒11は、排気中に含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化させることによって、それら炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)をそれぞれ水(HO)及び二酸化炭素(CO2)に変換する。なお、ディーゼル機関1で利用される燃料や潤滑油には硫黄が含まれており、燃料の燃焼に伴ってこうした硫黄から硫黄化合物(SOx)が生成される。そして、この硫黄化合物は、排気とともに排気管7cに排出され、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12に蓄積されることとなる。一方、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12に蓄積される硫黄化合物が増大すると、ディーゼル用酸化触媒11の触媒機能やDPF12による微粒子成分の捕集機能が低下する。
【0045】
よって、本実施の形態では、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている硫黄化合物の蓄積量が所定量を超えたときに、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の機能を維持すべくディーゼル用酸化触媒11の再生処理が実行されるようになっている。なお、本実施の形態では、これらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12によって上記排気浄化部が構成されている。また、これらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12は、排気系に隣接して設けられていることから、同様の温度推移を示すようになっている。
【0046】
DPF12は、例えばコージェライトのような多孔質材料から形成されている。そして、ディーゼル機関1での燃料の燃焼に伴って発生し、排気ガスとともに排気マニホルド5から排出された微粒子成分は、DPF12を透過する際に同DPF12に捕集される。こうして、DPF12に捕集された微粒子成分の堆積量が多くなると、DPF12で圧力損失が発生する。このため、DPF12に堆積される微粒子成分の堆積量が増大すると、この圧力損失に起因してDPF12の前後で圧力差が生じるようになっている。そして、こうした圧力差の増大、換言すれば、微粒子成分の堆積量が増大すると、DPF12での圧力損失に起因して排気ガスの流通が阻害され、燃費の悪化等が発生する。よって、本実施の形態では、DPF12に堆積される微粒子成分の堆積量が所定量を超えると、燃費の悪化等を抑制すべく、DPF12に堆積された微粒子成分が除去される再生処理が実行されるようになっている。
【0047】
また、DPF12の排気下流にはDPF12を通過する排気ガスの温度を検出するための温度センサ18が取付けられる。さらに、ケーシング13には、DPF12の排気上流側と排気下流側との間の差圧を検出するための差圧センサ19が取付けられる。これら温度センサ18及び差圧センサ19の出力信号は、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温を通じてそれらの再生処理を実行する制御手段20に入力される。また、制御手段20には、排気マニホルド5内を流れる排気ガス中に例えば燃料等の添加剤を添加するために排気マニホルド5の集合部出口に設けられた燃料添加装置15や、上記燃料噴射弁3が電気的に接続されている。また、制御手段20には、スロットル弁9の駆動用ステップモータが電気的に接続されている。
【0048】
一方、各燃料噴射弁3は、燃料供給管16を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール17に連結される。このコモンレール17内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプPから燃料が供給され、コモンレール17内に供給された燃料は各燃料供給管16を介して燃料噴射弁3に供給される。
【0049】
制御手段20は、燃料噴射弁3から入力される信号をもとに、ディーゼル機関1で燃焼された燃料の消費量を算出する。そして、制御手段20は、この燃料の消費量に相関して発生する硫黄化合物の発生量を算出し、この算出した硫黄化合物の発生量に基づいて上記ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量を推定する。制御手段20は、この推定値に基づいてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量を監視する。
【0050】
本実施の形態の制御手段20は、この推定した硫黄化合物の蓄積量が予め定められた放出要求量を超えると、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を通じてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理を実行する。
【0051】
なお、こうしたディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御は、例えば、上記燃料添加装置15による排気系への燃料噴射や燃料噴射弁3によるポスト噴射等を通じて、排気管7cに設けられたケーシング13に燃料が添加されることによって行われる。
【0052】
また、放出要求量としては、例えば、ディーゼル用酸化触媒11による炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化機能を維持することのできる範囲内で最も多い値が設定されている。このように、放出要求量となるまでディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に硫黄化合物を蓄積させてからディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理を行うことにより、過昇温によるディーゼル用酸化触媒11やDPF12の溶損等を防止することが可能となっている。また、これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温に要する燃料等の昇温エネルギー源を消費するディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理の実行回数を少なくすることで燃費の節約が図られるようになる。
【0053】
また、制御手段20は、上記差圧センサ19から入力される信号に基づいて、DPF12に堆積されている微粒子成分の堆積量を推定する。そして、制御手段20は、この推定した微粒子成分の堆積量が予め定められた除去要求量を超えた場合に、DPF12を微粒子成分の燃焼温度まで昇温制御する。これにより、DPF12上に堆積している微粒子成分を燃焼・除去するDPF12の再生処理が行われ、微粒子成分の堆積によるDPF12の目詰まり等の発生が抑制されるようになる。
【0054】
なお、こうしたDPF12の昇温制御も、例えば、上記燃料添加装置15による排気系への燃料噴射や燃料噴射弁3によるポスト噴射等を通じて、排気管7cに設けられたケーシング13に燃料が添加されることによって行われる。
【0055】
また、除去要求量としては、例えば、DPF12を微粒子成分の燃焼温度にまで昇温させたとしてもDPF12上に堆積している微粒子成分が一気に燃焼してDPF12が過昇温してしまうことがない範囲内で最も多い値が設定されている。このように除去要求量となるまでDPF12に微粒子成分を堆積させてからDPF12の再生処理を行うことによっても、DPF12の過昇温によるDPF12の溶損等を防止することができると同時に、燃料等の昇温エネルギー源を消費するDPF12の再生処理の実行回数を少なくすることで燃費の節約が図られるようになる。
【0056】
こうして、ディーゼル機関1では、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12の再生処理を通じて、それらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の浄化機能が維持される。これにより、燃料の燃焼に伴って発生する排気ガスは、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12を透過する際に浄化されてからマフラ14を介して大気中に排出されるようになる。
【0057】
以下、上記ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の放出特性について図2及び図3を参照して説明する。
図2に、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の単位時間あたりの放出量と例えばディーゼル用酸化触媒11の温度との関係を示すように、ディーゼル用酸化触媒11の温度が例えば約500℃未満であるときには、ディーゼル用酸化触媒11から硫黄化合物が放出されない。
【0058】
一方、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「500℃」〜「550℃」の範囲にあるときには、低濃度状態で安定して放出される特性を示す。
これに対して、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「500℃」〜「550℃」の温度範囲を超えて上昇し、特に約「600℃」程度以上となったときには、硫黄化合物の単位時間あたりの放出量が急増する特性を示す。よって、ディーゼル用酸化触媒11の温度が「600℃」程度以上に昇温されると、ディーゼル用酸化触媒11に蓄積されていた硫黄化合物が一斉に放出されることとなる。なお、この特性を示す温度である約「600℃」とは、ディーゼル用酸化触媒11とともにケーシング13に内蔵されるDPF12に堆積された微粒子成分を燃焼するために必要な温度ともなっている。
【0059】
また、例えばディーゼル用酸化触媒11の温度毎の硫黄化合物の蓄積量の推移例を図3(a)に示すように、ディーゼル用酸化触媒11に蓄積される硫黄化合物の蓄積量は、ディーゼル用酸化触媒11の温度に相関して減少するようになる。
【0060】
例えば、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「300℃」程度であるときの硫黄化合物の蓄積量の推移を第1推移例L1として示すように、同温度条件下では、硫黄化合物の蓄積量が略維持される。
【0061】
一方、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「500℃」程度であるときの硫黄化合物の蓄積量の推移を第2推移例L2として示すように、同温度条件下では、硫黄化合物の蓄積量が漸次低減するようになる(期間T2)。同様に、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「550℃」程度であるときの硫黄化合物の推移を第3推移例L3として示すように、同温度条件下でも、硫黄化合物の蓄積量が漸次低減するようになる(期間T3)。
【0062】
これに対し、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「600℃」程度であるときの硫黄化合物の蓄積量の推移を第4推移例L4として示すように、同温度条件下では、硫黄化合物の蓄積量が短期間で急激に低減するようになる(期間T4)。
【0063】
また、この図3(a)に対応する図として、ディーゼル用酸化触媒11から排出される硫黄化合物の放出量の推移を図3(b)に示すように、例えば、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「500℃」であるときには、期間T2をかけて、低濃度の硫黄化合物が放出される。こうして、ディーゼル用酸化触媒11に蓄積されていた全ての硫黄化合物(S2)が漸次放出されることとなる。
【0064】
これに対し、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「600℃」であるときには、期間T4(T4≪T2)のもとに、ディーゼル用酸化触媒11に蓄積されていた全ての硫黄化合物(S4=S2)が一斉に放出されることとなる。この結果、ディーゼル用酸化触媒11の温度が約「600℃」以上であるときには、大気中での白煙化を招き得る高濃度状態でディーゼル用酸化触媒11から硫黄化合物が放出されることとなる。
【0065】
なお、こうした硫黄化合物の放出特性は、DPF12についても同様の特性を有するものとなっている。
そこで、本実施の形態では、こうした硫黄化合物の放出特性を踏まえてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に応じた各別の昇温制御を実行することによって、硫黄化合物の白煙化を抑制しつつ、それらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理を実行することとする。
【0066】
次に、このような前提のもとに本実施の形態の内燃機関の排気浄化装置の作用を図4を参照して説明する。
図4(a)に示すように、本実施の形態の制御手段20は、例えば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に達し、DPF12の微粒子成分の堆積量が除去要求量に達することで、それらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理を実行する。
【0067】
この再生処理に際してはまず、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上昇させる昇温制御が行われることにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」まで昇温され、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が一定時間Taだけ約「500℃」に維持される。これにより、DPF12に蓄積された微粒子成分の除去に先立って、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物のみを放出させる「硫黄放出モード」が実行される。
【0068】
この硫黄放出モードでは、例えば、温度センサ18によりディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の排気下流における排気ガスの温度が検出され、この温度センサ18の出力に基づいてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が推定される。そして、推定されるディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」に維持されるようにそれらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御が実行される。
【0069】
制御手段20は、例えば、ディーゼル機関1の燃焼室2に機関駆動用の燃料を噴射した後に少量の燃料をさらに燃焼室2に噴射し、その燃料を燃焼させずにそのまま燃焼室2から排出させるいわゆるポスト噴射を通じてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12を昇温させる。また、制御手段20は、例えば、上記燃料添加装置15によってディーゼル用酸化触媒11の上流の排気ガス中に燃料を添加する。そして、この排気ガス中に添加された燃料がディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に供給され、この燃料がディーゼル用酸化触媒11内やDPF12内で燃焼されることによってディーゼル用酸化触媒11及びDPF12が昇温される。なお、これに伴って、ディーゼル用酸化触媒11とともにケーシング13に収容されたDPF12も昇温されることとなる。
【0070】
そしてこのとき、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」に維持されていることから、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12から放出される硫黄化合物の濃度は、図4(b)に示すように、大気中に排出される硫黄化合物の濃度の低減化が図られ、硫黄化合物の白煙化が抑制される。
【0071】
なお、本実施の形態では、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている硫黄化合物の蓄積量に応じて、「硫黄放出モード」の実行時間、換言すれば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温時間Taが決定される。また、昇温時間Taには、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている全ての硫黄化合物を放出可能な範囲で最短となる時間が設定される。なお、昇温時間Taの設定に用いられるディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている硫黄化合物の蓄積量は、例えば、燃料噴射弁3によりディーゼル機関1に供給されて同ディーゼル機関1で消費された燃料の消費量をもとに算出される。
【0072】
そして、図4(a)に示すように、上記決定された昇温時間Taが経過すると、換言すれば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を通じて硫黄化合物の放出が完了すると、例えば、上記ポスト噴射や燃料添加装置15を通じてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に添加される燃料の添加量がさらに増大される。これによって、タイミングt1以降、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」から例えば約「600℃」へと昇温されることとなる。これにより、DPF12に堆積された微粒子成分を除去するための「酸化モード」が実行され、DPF12に堆積されている微粒子成分の燃焼、酸化を通じて、同微粒子成分が除去される(期間Tb)。
【0073】
そしてこのときには、酸化モードの実行に先立って硫黄放出モードが実行されていることにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されていた硫黄化合物の放出が完了されていることから、図4(b)に示すように、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12から放出される硫黄化合物の濃度は約「0%」程度となる。これにより、微粒子成分を除去可能な温度までDPF12を昇温しつつも、高濃度の硫黄化合物が放出されることが抑制され、硫黄化合物の大気中での白煙化が抑制されることとなる。
【0074】
そして、例えば、上記差圧センサ19により検出されるDPF12の排気上流側と排気下流側との間の差圧が所定値以下となったことにより微粒子成分の除去が完了したと推定されると、燃料噴射弁3や燃料添加装置15を通じた排気系への燃料の添加が終了され、酸化モードが終了される。こうして、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理が終了される。
【0075】
一方、図5(a)に示すように、従来の内燃機関の排気浄化装置では、DPF12に堆積された微粒子成分を除去する際には、硫黄化合物の放出特性を加味することなく、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が微粒子成分の除去に必要な約「600℃」まで昇温される。この結果、図5(b)に期間Tcとして示すように、高濃度の硫黄化合物が白煙となって大気中へと排出されることとなる。
【0076】
次に、本実施の形態の制御手段20による硫黄放出モード及び酸化モードの実行手順を図6を参照して説明する。
図6に示すように、ディーゼル機関1の運転開始後、ステップS11において、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が、例えば白煙化を抑制し得る温度範囲「500℃」〜「550℃」の上限値を超える温度であるT0(約「600℃」)よりも高いか否かが判定される。すなわち、ディーゼル機関1の高負荷運転等に伴いディーゼル機関1から排出される排気ガス等によって、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12が昇温されているか否かが判定される。
【0077】
そして、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「600℃」よりも高いときには(ステップS11:NO)、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されていた硫黄化合物の放出が既に完了されているとして、硫黄化合物の蓄積量の推定値Smが「0」に初期化される(ステップS13)。
【0078】
一方、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「600℃」未満であるときには(ステップS11:YES)、ディーゼル機関1で消費された燃料量に応じて推定値Smが加算される(ステップS12)。
【0079】
その後、DPF12に堆積されている微粒子成分の堆積量の推定値PMmが、例えば差圧センサ19の検出結果に基づいて算出される(ステップS14)。次いで、この算出された推定値PMmが除去要求量PM0以上であるか否かが判定され(ステップS15)、同推定値PMmが除去要求量PM0以上であるときには、さらに、硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S0以上であるか否かが判定される(ステップS16)。
【0080】
そして、硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S0以上であるときには(ステップS16:YES)、「硫黄排出モード」が実行されたのちに、推定値Smが一旦「0」に初期化され、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12のさらなる昇温を通じて「酸化モード」が実行される(ステップS17〜S19)。また、「酸化モード」の実行後には、DPF12の微粒子成分の推定値PMmが「0」に初期化される(ステップS20)。なお「硫黄排出モード」によるディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温時間には、例えば、先のステップS12で算出された硫黄化合物の蓄積量の推定値Smに応じて、この推定値Smによって示される硫黄化合物の全てを放出可能な昇温時間の中でも最低となる時間が設定される。
【0081】
また、ステップS16において硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S0未満であると判定されたときには、硫黄化合物の放出が不要であるとして「酸化モード」のみが実行され、「酸化モード」の実行後に推定値PMmが「0」に初期化される(ステップS19、S20)。
【0082】
一方、ステップS15において、微粒子成分の推定値PMmが除去要求量PM0未満であると判定されたときには、「硫黄放出モード」及び「酸化モード」のいずれもが実行されることなく、微粒子成分の推定値PMmが除去要求量PM0以上となるまでステップS11〜S15の処理が繰り返し実行されることとなる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態にかかる内燃機関の排気浄化装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量の推定値Smが放出要求量S0に到達したとき、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を、硫黄化合物を放出可能でかつ同硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲に昇温制御することとした。そのため、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量が放出要求量S0を超えるまでは、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を行う必要がなく、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温回数の低減を通じて昇温に用いられる燃料の節約が図られるようになる。また、蓄積された硫黄化合物の放出に際しても、上記温度範囲内でディーゼル用酸化触媒11及びDPF12が昇温されることから、硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制することが可能となる。これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温処理を通じて白煙の発生を抑制しつつ、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温処理に利用される燃料についてもその節約を図ることができるようになる。
【0084】
(2)上記ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御に伴う硫黄化合物の放出特性が、上記温度範囲に到達したときに開始されてかつ、同温度範囲を超えるまでの間は白煙化を抑制可能な低濃度状態で漸次放出される特性であることを踏まえて、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を行った。これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物を低濃度で放出させることが可能となり、硫黄化合物の放出に伴う白煙の発生を的確に抑制することが可能となる。
【0085】
(3)上記制御手段20による硫黄化合物の放出に際してのディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を、「500℃」〜「550℃」の温度範囲で行うこととした。これにより、硫黄化合物の放出を、硫黄化合物の放出濃度が安定する温度条件下で行わせることが可能になるとともに、硫黄化合物の的確な放出と白煙の発生の抑制との好適な両立が図られるようになる。
【0086】
(4)制御手段20によるディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御に際し、ディーゼル機関1の高負荷運転に伴ってディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」〜「550℃」の温度範囲を超えて高まっているとき、硫黄化合物の蓄積量の推定値Smを「0」として初期化することとした。そのため、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が上記温度範囲を超えているために硫黄化合物の放出が完了していることが推定されるときには、推定値Smに応じた昇温制御は実行されず、昇温に用いられる燃料等が不要に使用されることもない。これにより、燃費のさらなる節約が促されるようになるとともに、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理に伴う制御手段20の演算負荷等も低減されるようになる。
【0087】
(5)ディーゼル機関1の高負荷運転に伴ってディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が既に約「600℃」以上にあるとき、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が上記温度範囲を超えているとして推定値Smを初期化することとした。このため、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「600℃」以上であるときには、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されていた硫黄化合物が全て放出されたとして、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御が実行されない。これにより、硫黄化合物の蓄積量の推定を通じた昇温制御を実行する上で、その推定精度が高められるようになるとともに、この推定結果に応じた昇温制御を的確に実行することが可能となる。
【0088】
(6)上記制御手段20によるモードとして、酸化モードと硫黄放出モードとの2つモードを規定し、酸化モードの実行に先立ち硫黄放出モードを実行することとした。このため、酸化モードの実行時には、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されていた硫黄化合物の放出が既に完了された状態となっており、硫黄化合物の放出に伴う白煙の発生を招くこともない。これにより、DPF12の昇温制御を通じた微粒子成分の除去の図りつつも、白煙の発生を的確に抑制することが可能となる。
【0089】
(7)上記制御手段20により、硫黄放出モードにてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上記温度範囲内である約「500℃」に一定期間だけ維持したのち、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12のさらなる昇温を通じて硫黄放出モードから酸化モードに移行することとした。これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている硫黄化合物は、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12から漸次放出されるようになる。またこれにより、硫黄化合物の放出に際して昇温されたDPF12をさらに昇温するだけで、硫黄化合物の放出に引き続き微粒子成分の除去を実行することが可能となる。よって、微粒子成分の除去と硫黄化合物の放出とを段階的かつ連続的に行うことが可能となり、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理の円滑化が図られるようになる。
【0090】
(8)ディーゼル機関1で消費される燃料の消費量に基づいてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量の推定値Smを求めた。これにより、燃料の消費量に相関する硫黄化合物の蓄積量を的確に推定することが可能となり、この推定に基づくディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を的確に実行することが可能となる。
【0091】
(9)硫黄化合物の放出に際してディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上記温度範囲内に維持する昇温時間を、硫黄化合物の蓄積量の推定値Smに応じて設定することとした。このため、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された大半の硫黄化合物を放出させる上で必要な、また、必要十分な昇温時間を設定することが可能となる。これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物の確実な除去と、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温に要する燃料等のさらなる節約とが図られるようになる。
【0092】
(10)上記内燃機関としてディーゼル機関1を対象とし、上記排気浄化装置としてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12を対象とした。これにより、こうしたDPF12やディーゼル用酸化触媒11を排気系に備える構成であれ、それらDPF12やディーゼル用酸化触媒11の再生を通じて浄化機能を維持しつつ、硫黄化合物の白煙化を的確に抑制することが可能となる。
【0093】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第2の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、先の図6に対応する図である図7を参照して説明する。なお、本実施の形態にかかる排気浄化装置も、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、図7においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0094】
図7に示すように、本実施の形態では、ステップS15において、微粒子成分の推定値PMmが除去要求量PM0未満であると判定されたときには、ステップS21において、硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S1以上であるか否かが判定される。
【0095】
そして、硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S1以上であると判定されたときには(ステップS21:YES)、微粒子成分が除去要求量PM0に到達することを待つまでもなく、「硫黄放出モード」の例外処理として、「硫黄排出例外処理」が実行される(ステップS22)。「硫黄排出例外処理」では、「硫黄放出モード」と同様に、硫黄化合物の蓄積量の推定値Smに応じて、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」〜「550℃」の温度範囲で維持される。そして、推定値Smに応じた昇温時間が経過すると、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温が中止され、再び、ステップS15以降の処理が実行されるようになる。同様に、ステップS21において硫黄化合物の推定値Smが放出要求量S1未満であると判定されたときにも、再び、ステップS15以降の処理が実行されるようになる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態にかかる内燃機関の排気浄化装置によれば、前記(1)〜(10)の効果が得られるとともに、さらに以下の効果が得られるようになる。
(11)硫黄放出モードにおける例外処理として、DPF12に堆積された微粒子成分の堆積量が除去要求量PM0に到達する以前に硫黄化合物の蓄積量の推定値Smが放出要求量S1に到達したとき、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を通じて同ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物を放出させる処理を行うこととした。このため、酸化モードと硫黄モードとの2つのモードを設けつつも、硫黄化合物の放出の必要性が生じたときには、酸化モードの実行条件が満たされるまでもなく硫黄化合物の放出が促される。これにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に硫黄化合物が過剰に蓄積されることもなく、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の機能をより的確に維持することが可能となる。
【0097】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第3の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、図8を参照して説明する。なお、本実施の形態にかかる排気浄化装置も、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、図8においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0098】
図8に示すように、本実施の形態の制御手段20は、例えば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に達し、DPF12の微粒子成分の堆積量が除去要求量に達することで、それらディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の再生処理を実行する。
【0099】
そして本実施の形態の再生処理に際しては、まずディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上昇させる昇温制御が行われることにより、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」まで昇温される。その後、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「500℃」から約「550℃」にかけて漸次昇温される(期間Td)。これにより、DPF12に蓄積された微粒子成分の除去に先立って、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物のみを放出させる「硫黄放出モード」が実行される。
【0100】
そして、本実施の形態では、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12が漸次昇温されることから、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12から放出される硫黄化合物の白煙化を抑制可能なまでに低濃度としつつも、放出に要する昇温時間が短縮される。このため、本実施の形態では、先の第1の実施の形態よりも短時間で硫黄放出モードを完了することが可能となっている(期間Td<期間Ta)。なお、硫黄放出モードの実行時間は、例えば、先の図2に示したディーゼル用酸化触媒11(DPF12)の温度に応じた硫黄化合物の単位時間あたりの放出量と上記推定値Smとに基づいて決定される。
【0101】
そして、例えば、硫黄化合物の蓄積量に応じた昇温時間(期間Td)が経過すると、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「550℃」から約「600℃」へとさらに昇温され、上記酸化モードが実行されることとなる(期間Tb)。そして、本実施の形態では、硫黄放出モードの実行完了時には、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が約「550℃」まで高められていることから、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を約「50℃」昇温させるだけで、硫黄放出モードから酸化モードへと移行することが可能となっている。
【0102】
こうして、本実施の形態でも、硫黄放出モードと酸化モードとの段階的な実行を通じて、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物の放出とDPF12に堆積された微粒子成分の除去とが行われるようになる。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態にかかる内燃機関の排気浄化装置によれば、前記(1)〜(6)、(8)〜(10)の効果が得られるとともに、前記(7)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0104】
(7A)上記硫黄放出モードにてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を約「500℃」から約「550℃」にかけて漸次昇温したのち、硫黄放出モードから酸化モードに移行することとした。これにより、硫黄化合物の放出に要する時間の短縮化と、硫黄放出モードから酸化モードへの円滑な移行とが図られるようになる。
【0105】
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記第1の実施の形態では、硫黄放出モードにおいて、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上記温度範囲内である約「500℃」に一定期間だけ維持することとした。これに限らず、硫黄放出モードにおけるディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温温度とは、約「500℃」〜「550℃」の温度範囲内であればよく、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を例えば約「550℃」に維持するようにしてもよい。
【0106】
・上記各実施の形態では、燃料噴射弁3や燃料添加装置15から噴射される燃料の添加を通じてディーゼル用酸化触媒11やDPF12を昇温した。これに限らず、例えば、ディーゼル用酸化触媒11の吸入側に、同ディーゼル用酸化触媒11やDPF12に燃料を添加する専用の燃料添加弁を設ける構成としてもよい。また、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12に添加する還元剤とは、燃料に限らず、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積された硫黄化合物の放出やDPF12に蓄積された微粒子成分の除去を促進することができるものであればよい。
【0107】
・上記各実施の形態では、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12の昇温を、還元剤の添加を通じて行った。これに限らず、例えば、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12の上流に電気ヒータやグロープラグ等を設ける構成としてもよい。そして、これら電気ヒータやグロープラグを作動させることにより、ディーゼル用酸化触媒11やDPF12に吸入される排気ガスを昇温させ、この排気ガスが吸入されるディーゼル用酸化触媒11やDPF12を昇温するようにしてもよい。この場合には、放出要求量に達した硫黄化合物の放出に際し、これら電気ヒータやグロープラグを利用したディーゼル用酸化触媒11の昇温制御を上記温度範囲のもとに行うことにより、電気ヒータやグロープラグの作動に要する昇温エネルギーが節約されるようになる。
【0108】
・上記各実施の形態では、硫黄放出モードの実行時間として、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている全ての硫黄化合物を放出可能な範囲で最短となる昇温時間Taを設定した。これに限らず、硫黄化合物の確実な放出を期すべく、上記最短となる昇温時間Taを超えて硫黄放出モードを実行するようにしてもよい。要は、硫黄放出モードの実行時間(昇温時間)とは、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されている硫黄化合物を放出可能な時間であればよい。また、硫黄放出モードの実行時間として、上記放出要求量S0によって示される硫黄化合物の蓄積量を放出可能な時間を規定し、この規定した時間を固定するようにしてもよい。
【0109】
・上記各実施の形態では、ディーゼル機関1で消費される燃料の消費量に基づいてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量の推定値Smを求めた。これに限らず、例えば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に吸入される排気ガスの流量、ディーゼル機関1の運転状態や運転時間等に基づいてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積される硫黄化合物の蓄積量の推定値Smを求めるようにしてもよい。
【0110】
・上記第1の実施の形態では、硫黄放出モードにてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上記温度範囲内である約「500℃」に一定期間だけ維持したのち、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12のさらなる昇温を通じて硫黄放出モードから酸化モードに移行することとした。また、上記第2の実施の形態では、硫黄放出モードにてディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を約「500℃」から約「550℃」にかけて漸次昇温したのち、硫黄放出モードから酸化モードに移行することとした。これに限らず、硫黄放出モードとは、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を所定期間、約「500℃」〜約「550℃」の範囲内に維持するものであればよく、例えば、約「500℃」〜約「550℃」の範囲内でディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を上昇もしくは下降させることも可能である。
【0111】
・上記各実施の形態では、ディーゼル機関1の高負荷運転に伴ってディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が既に「600℃」以上にあるとき、硫黄化合物の蓄積量の推定値Smを初期化することとした。これに限らず、推定値Smの初期化を、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12に蓄積されていた大半の硫黄化合物の放出の完了が予測されるときには、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度が上記温度範囲の上限値を超える温度であることを条件に実行するようにしてもよい。また、推定値Smの初期化の条件とするディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度とは、例えば、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の仕様やディーゼル機関1で利用される燃料の性状等を加味して設定することも可能である。
【0112】
・上記各実施の形態では、上記制御手段20による硫黄化合物の放出に際してのディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を、「500℃」〜「550℃」の温度範囲で行うこととした。これに限らず、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12を昇温制御する際の温度範囲とは、昇温に伴って排出される硫黄化合物の濃度が白煙化を抑制可能な低濃度状態で漸次放出される特性を維持することさえできれば、例えば、約「500℃」未満とすることや約「551℃」以上とすることもできる。
【0113】
・上記各実施の形態では、上記ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御を、上記ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御に伴う硫黄化合物の放出特性が、上記温度範囲に到達したときに開始されてかつ、同温度範囲を超えるまでの間は白煙化を抑制可能な低濃度状態で漸次放出される特性であることを踏まえて行った。これに限らず、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の昇温制御とは、ディーゼル用酸化触媒11及びDPF12の温度を、硫黄化合物を放出可能でかつ同硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲で昇温するものであればよい。
【0114】
・上記各実施の形態では、上記排気浄化部としてケーシング13に内蔵されたディーゼル用酸化触媒11及びDPF12を対象とした。これに限らず、昇温制御の対象となる排気浄化部としては、排気中の微粒子成分を捕集可能でかつ、硫黄化合物が蓄積される排気浄化部であればよく、例えばDPFのみであってもよい。
【0115】
・上記各実施の形態では、上記内燃機関としてディーゼル機関1を採用することとした。これに限らず、燃料の燃焼に伴って微粒子成分と硫黄化合物とが発生する内燃機関であれば、上記排気浄化装置を設けることは可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…ディーゼル機関、2…燃焼室、3…燃料噴射弁、4…吸気マニホルド、5…排気マニホルド、6…吸気ダクト、7…排気ターボチャージャ、7a…コンプレッサ、7b…排気タービン、7c…排気管、8…エアクリーナ、9…スロットル弁、10…吸気冷却装置、11…ディーゼル用酸化触媒、12…DPF(パティキュレート・フィルタ)、13…ケーシング、14…マフラ、15…燃料添加装置、16…燃料供給管、17…コモンレール、18…温度センサ、19…差圧センサ、20…制御手段、P…燃料ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載内燃機関の排気系に設置されて排気ガス中に含まれる微粒子成分を捕集するとともに排気ガス中に含まれる硫黄化合物が蓄積される排気浄化部を再生処理しつつ排気の浄化を行う内燃機関の排気浄化装置であって、
前記排気浄化部に蓄積される前記硫黄化合物の蓄積量を推定するとともに、この推定される硫黄化合物の蓄積量が放出要求量に到達したとき、前記硫黄化合物を放出可能でかつ同硫黄化合物の大気中での白煙化を抑制し得る温度範囲に前記排気浄化部の温度を昇温制御する制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気浄化部の昇温制御に伴う硫黄化合物の放出が、前記温度範囲に到達したときに開始されてかつ、前記温度範囲を超えるまでの間は前記白煙化を抑制可能な低濃度状態で漸次放出される特性である
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記硫黄化合物の放出に際しての前記排気浄化部の昇温制御を、「500℃」〜「550℃」の温度範囲で行う
請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記排気浄化部の昇温制御に際し、前記内燃機関の高負荷運転に伴って前記排気浄化部の温度が前記温度範囲を超えて高まっているとき、前記推定する硫黄化合物の蓄積量を「0」として初期化する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記排気浄化部の温度が「600℃」以上にあるとき、前記排気浄化部の温度が前記温度範囲を超えているとして前記初期化を実行する
請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記排気浄化部の温度を昇温制御するモードとして、前記排気浄化部に堆積された微粒子成分の堆積量が該微粒子成分の除去要求量に到達したことを条件に微粒子成分を酸化して当該排気浄化部から微粒子成分を除去する酸化モードと、前記排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を当該排気浄化部から放出する硫黄放出モードとを有し、前記酸化モードの実行に先立ち前記硫黄放出モードを実行する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記硫黄放出モードにて前記排気浄化部の温度を前記温度範囲内に一定期間だけ維持したのち、前記排気浄化部のさらなる昇温を通じて前記硫黄放出モードから前記酸化モードに移行する
請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記硫黄放出モードにて前記排気浄化部を前記温度範囲の下限から上限にかけて漸次昇温したのち、前記硫黄放出モードから前記酸化モードに移行する
請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記硫黄放出モードにおける例外処理として、前記排気浄化部に堆積された微粒子成分の堆積量が前記除去要求量に到達する以前に前記硫黄化合物の蓄積量が前記放出要求量に到達したとき、前記排気浄化部の昇温制御を通じて当該排気浄化部に蓄積された硫黄化合物を放出させる処理を行う
請求項6〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記内燃機関で消費される燃料の消費量に基づいて前記排気浄化部に蓄積される硫黄化合物の蓄積量を推定する
請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記硫黄化合物の放出に際して前記排気浄化部の温度を前記温度範囲内に維持する昇温時間を、前記推定した硫黄化合物の蓄積量に応じて設定する
請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
前記内燃機関がディーゼル機関であり、
前記排気浄化部が、前記微粒子成分を捕集するディーゼル・パティキュレート・フィルタと、ディーゼル用酸化触媒とからなる
請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29038(P2013−29038A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164148(P2011−164148)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】